雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - 〜みやもも奥様劇場2〜
601名無し募集中。。。2018/08/10(金) 23:28:49.970

〜みやもも奥様劇場2〜

「暑かったでしょう」
雅の前にグラスを置きながら、ゆったりとした口調で桃子は言った。
雅はバッグから取り出したハンカチで額を押さえた。自然とため息のような笑いが漏れる。
「汗止まんない」
「エアコン強くする?」
「ううん、大丈夫」
「飲みなよ」
「ありがとう」
雅はグラスを手に取った。口をつけ、一気に半分ほど飲む。
視線をやると、桃子はテーブルの傍らに立ったまま薄く微笑んだ。
「ママ」
駆け寄ってきたミヤが、桃子の体にぶつかるように抱きついた。
さっき挨拶した時は広げた絵本に夢中で「ちゃんとご挨拶しなさい」と桃子に叱られてから
拗ねたように奥の部屋に逃げていた。
雅が微笑みかけるとミヤは恥ずかしそうに目を伏せ、桃子のスカートを握りしめた。
「ごめんね。急に来ちゃったから」
「気にしないで。最近こうなの」
「ママ、ミヤも飲みたい」
「麦茶だよ」
「うん」
桃子がキッチンに向かうと、ミヤは一瞬雅の顔を見上げて笑い、すぐにその後ろを追いかけて行った。
随分女の子らしくなった。雅はそう思いながら再びグラスに口をつけた。

近くに住んでいるわけでもない。特に会う口実もない。
思い出しては躊躇い、二の足を踏んでいた時期はずいぶん長かったと思うのに
いざ連絡を取ってみれば、あっと言う間に訪ねる段取りがついていた。
「いつでも来てよ。散らかしてるけど」
その桃子の言葉はまるで旧知の親しい友人に向けるような気取りのないもので
何に肩肘を張っていたのだろうと、雅は拍子抜けした。
嬉しい気もしたし、嬉しくないような気もした。
駅までの迎えを断り、教えてもらった地図を確認しながら向かう道すがら、雅は考え続けた。
私は、何をしに行くんだろう。
しっくりとくる答えは落ちてこなかった。

603名無し募集中。。。2018/08/10(金) 23:32:34.530

「おもたせですみません」
ミヤはそう言ってから、きょろ、とした瞳で雅を見つめ、言えたことに満足した様子でテーブルの上にお皿を置いた。雅が手土産に持参したゼリーが3つ置かれている。
「ミヤちゃんどれがいい?」
雅がそう訊くと、ミヤは後ろに立っている桃子を見上げた。
「好きなのもらいなよ」
「これがいい」
ミヤが手を伸ばした赤いゼリーの器を桃子はひょいと取り上げた。
「どこで食べるの。ここで?それともあっちのソファで食べるの?」
うーん、と考え込む顔が可愛らしく、雅は思わず笑う。
「ここで一緒に食べよ」
そう言って手を伸ばすと、ミヤは一瞬びっくりした顔してから「うん」と言って顔をほころばせた。
頭をそっと撫でる。細く柔らかい髪。
「髪のばしてるの?似合うね」
「毎日結んであげないとぐずって大変なんだから」
桃子はそう言いながら、雅の向かい側の椅子に腰を下ろし、隣の椅子の前に取り上げたゼリーを置いた。
「毎日可愛くしてあげるの楽しいじゃん。髪留め選んであげたり」
「みやならもっと可愛くやってあげれそう……ねえ、ちゃんと座って。こぼさないように食べて」
「確かに。毎日可愛くしてあげたい」
ふふ、と桃子は笑い、雅の方へ向き直るとテーブルの皿を見ながら身を乗り出した。
「おいしそう。どっちにしよう」
ミヤは椅子に座り、手元に持ったゼリーに顔を寄せている。白い肌と長い睫毛は桃子譲りだ。
ふと顔を上げた桃子と目が合った。
「……みやは」
「どっちでもいい。白桃でも葡萄でも」
「ふぅん。じゃあ、桃あげる」
「え?」
「これピオーネでしょ。前に旦那の実家からもらっておいしかった気がする」
「そうなんだ。じゃあ、ぜひ」
「ありがとう。いただきまぁす」
雅もゼリーを手に取った。
「おいしいね、よかったねえ」などと言い合う桃子とミヤを見ながらスプーンで一口含んだが
何故だか味がしなかった。

605名無し募集中。。。2018/08/10(金) 23:37:43.350

「お茶のお教室やめたときは、何だかおうちも大変そうだったけど、幸せそうで安心した」
たわいもない会話の後、雅がそう切り出すと、桃子は「ああ、うん。そうだね」と相槌を打った。
「あのときは旦那のお母さんが事故で腰を骨折して入院しててね」
「全然知らなかった」
「まあ、誰にも言ってなかったもん」
桃子はくしゃっと笑った。
「退院しても先がどうなるかわからなかったし、同居の話も出てたりしてなんか、余裕なかったんだよね」
「言ってくれれば何かできたかもしれないのに」
言いながら、雅は目を伏せた。何ができるかなど想像もつかなかったが
力になれたかもしれないのに、という思いで胸がちりちりと痛んだ。
「みやにはみやんちの生活があるでしょうが」
「そうだけど。別に、子どももいないし」
「気持ちだけで嬉しいよ。ありがとう」
「お義母さんはもう大丈夫なの」
「うん。リハビリも思った以上に順調で後遺症もなくって、今はめっちゃくちゃ元気」
「よかったね」
「ミヤも生まれたしね」
桃子は窓際に目をやった。リビングになっている一角のソファで、ミヤはちょっと前からまた絵本を読んでいた。
桃子の視線に気付くと顔を上げ「今日おばあちゃんちいく?」と声を上げた。
「行くよ。パパが帰ってきたらね」
「みやびちゃんも一緒にご飯食べるー?」
ミヤにそう訊かれて雅は慌てた。
「あっ、ううん、夜になるまえにおうちに帰らなきゃいけないの」
「あっ、そうだ、みや」
「ん?なに」
「ねえ、着物いらない?」
言うなり桃子は立ち上がると、廊下に向かいながら雅を手招きした。
雅は、お茶に通っていた当時桃子が着ていた、何枚かの小紋の色を思い出した。
それは、とても遠い昔のことのような気もした。

608名無し募集中。。。2018/08/10(金) 23:42:07.660

2階の小さい和室に案内される。
「物だらけのこんなとこ通してごめんね」
そう言いながら桃子は桐箪笥の前に膝をついた。
「今もう全然着てないの?」
「子育てしてると無理だよね。いや、着る人は着るんだろうけど」
「あ、その柄よく覚えてる。可愛かった」
「この歳でも全然着れると思うんだよなあ。縫い込み余裕あるから仕立て直ししてさ。どう?」
「え、いいの?でも」
「みや、着てみたいって言ってなかったっけ」
「じゃあ、買うよ」
「いいよそんなの」桃子は唇を尖らせた。
「もらってよ」
「でも」
「これなんかみや似合いそう」
見せられた青地縞の紗の小紋に雅の目は釘付けになった。その様子を見て桃子が笑む。
「よいでしょ」
「ほんとにほんとにいいの?」
「じゃあ、これ決まり。持って帰るのも荷物になるだろうし送るね」
「あ、でも着物なんてほんと全然着たことないし、いろいろ教えて欲しいかも」
「いいよ」
「また会える?」
「いつでも会えるよ」
「ほんとに?」
「どうして」
桃子の指先が雅の手の甲に触れた。
「ずっと、みやのこと思ってたのに」

「だめ、こんなの」
雅の潜めた声は思わず掠れた。
「だろうね」
背中に置かれた桃子の左手がきつく抱き寄せてくる。
頬に吐息を受け、堪え切れずに首を動かすと桃子の指が雅の唇を塞いだ。
こうして、抱き合いたくて来たのだと強く思いながら、雅は桃子の指を噛んだ。

〜みやもも奥様劇場2〜おわり