雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - いいふうふの日
262 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/11/22(火) 17:28:58.95 0

なんだか、幸せだねえ。
桃子が目を細めると、隣に座る雅も満足げに微笑んだ。

今日はなぜだかふわふわと心地の良い1日だった。
たまにはお酒でも飲む?と桃子が誘ったら、雅は目を丸くしていた。
缶チューハイと、ビールと、あとはおつまみをお好みで。
かつん、と乾杯をした後は、のんびりとした会話が続いていた。

何か特別なことがあったわけでもない、普通の平日。
いつもと違うことと言えば、我らがキャプテンの誕生日だったことくらい。
きちんとプレゼントを用意していた雅に対して、桃子は簡単なメッセージのやりとりのみ。
相変わらずだねえって笑われたけれど、もう15年近くこんなノリなのだ。
今さら改まって、プレゼントなんかを選ぶのも気恥ずかしい。

「ま、そんなとこも、ももらしいんじゃない?」
「でしょ?」
「あ、そーだ」

来年は一緒に選ぶ?と、提案する雅は楽しげだった。

「それ、単純に見せつけてるだけじゃない?」

その意味合いを分かって言っているのだろうか、苦笑しながら桃子は言う。

「えー、だって、あれじゃん。今日はいいふうふの日ってやつじゃん」
「……そう、だけど?」

雅の思考の転がる方向がつかめず、桃子はきょとんと首を傾げる。
そもそもお互いほろ酔いの状態で、まともな話なんてできるわけがないのだけれど。

「だからぁ、いいふうふの日なの」
「いや、それは分かったってば」
「もういいっ。せっかくももと一緒に選ぼうと思ったのに」

むう、と唇を尖らせた雅は、そのまま持っていたビールを一口。
ようは一緒に何かする口実が欲しかっただけなのだろうと察して、桃子は緩んだ表情のまま雅に寄りかかる。

「ちょ、重い」
「重くないー」

抵抗する雅に構わずぐいぐいと体を傾けると、不意に支えがなくなった。

「わっ」

バランスをとる暇さえなく、カーペットにぶつかることを覚悟していた体は予期せぬ柔らかさに受け止められた。

「……みや?」

仰向けにころんと転がった桃子の頭は、雅の太ももに乗っかっている。
いわゆる、これは膝枕というやつか、と思考がようやく追いついた。

「酔っ払いは寝てなよ」
「みやだって酔っ払いじゃん」
「っさい」

263 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/11/22(火) 17:30:12.19 0

気づけば雅の片手が桃子の髪の毛を梳いていて、空いた手でくい、とビールを傾ける姿はなぜか様になる。
こくり、とその喉が動きに見惚れていると、ふと雅の視線がこちらに注がれているのを感じた。

「けっこん、したい」
「……どうしたの、急に」
「どうしてもー!」

けっこんしたいー、と急に駄々をこねはじめる様子は、先ほどまでと打って変わって幼子のようで桃子は苦笑する。

「けっこんしたい、ももと」
「それはねぇ、難しいね」
「わかってるけどぉ」

アルコールに唆された雅の言葉は直球で、嬉しくて、くすぐったくて、どこか切ない。
どうしようもないと分かっていても、じたばたしたくなる時はある。きっと、お互いに。

「あー、そーだ」
「ん、何?」

ころころ、ころころ、まるで小さな鞠のように、雅の思考はどこまでも自由に転がり続ける。
今度はどうしたのだろうと思っていると、急に預けていた体重を持ち上げられた。

「みやっ、痛いってば」
「ちょっと邪魔ー」

半ば強引に座らせられて、何事かと桃子が文句を言う隙もなく雅は立ち上がっていて。
見れば、少し離れた場所に投げ出されていた鞄をごそごそとあさっている様子。
やがて目的のものを見つけたらしい雅は、はい、と桃子にそれを手渡した。

片手に収まる程度の小さなそれは、薄桃色のハート形。
表面は滑らかで手触りの良い生地に覆われていて、いかにも上に押し開けてくださいと言わんばかりの蓋。
これは、まるで。

「っ……?!」

それ以外にありえない、けれど、どうして?
予想外の事態で、目の前の光景が信じがたい。

264 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/11/22(火) 17:30:28.84 0

「……あけてみてよ」

雅の声に解かれて、固まっていた桃子の体はゆるゆると動きを取り戻した。
あけてみてと言われても、その先にあるものをどうしたって期待してしまう。
本当に、期待していいのだろうか、と雅をちらりと伺うと、早く、と急かされてしまった。

「……ちょ、まって、心の準備が」
「もー! 早くしなよ」

雅の言葉に構わず、深呼吸を数回くり返す。少しだけクリアになった頭で、もう一度手の中の小箱と向き合った。

「あけて、いいんだよね?」
「もちろん」

指をかけて少し力を入れると、ぱかり、と何の抵抗もなくその箱は開かれた。
果たしてそこに収まっている小さなリングに、桃子の心臓が大きく跳ねる。

「み、や……これ」
「……だから、けっこんしたいって」

言ってんじゃん、と口にしながら、どんどん赤くなっていく雅。
つられて、桃子も自分の頬の熱が上がっていくのを感じた。
こんな時に、こんなタイミングでなんて、ずるい。

「なんか、どうしよう」

うれしすぎて、困っちゃう。
心臓はどきどきと喜びに打ち震えているのに、なぜだか視界が歪んで、感情が渋滞を起こしている。
雅の腕がふわりと舞い降りて、温かさに包まれた。

「ね、つけていい?」
「うん」

きゅっと軽く二人で抱き合って、そっと距離が開いて。
小箱からリングを取り出した雅の指先は微かに震えていて、なんだ、同じなんだと気持ちがわずかに緩んだ。
少しだけ冷たい雅の掌に、そっと桃子の左手が支えられる。
薬指に、迷うことなく通されるリング。
あまりにもぴったりとはまったものだから、ついつい感嘆の声が漏れていた。

「……測ったの?」
「ナイショ」

雅に見つめられている左手だけが、薬指だけが、やけに熱い、と思った。
幾度となく行ってきた乙女チックシミュレーションなんて、軽く飛び越えてしまう状況。
言うべきことはたくさんあったのかもしれないけれど、どれも言葉にならなくて。

「……ありがと、みや」
「ん」

ちょっと素っ気ない、雅の返答。
ずっとシミュレーションしてきたんだろうかと思うと、目の前の彼女がひどくいじらしく感じられて、桃子から両手を広げる。
素直にそこへ飛び込んでくる体温を、桃子はしっかりと抱きしめた。