雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - なっさんともーさん 11
759名無し募集中。。。2018/12/06(木) 22:00:47.820

唇を合わせた瞬間、私たちは世界から切り離された。
ほんの少し、唇を離すと、もーさんは言った。
「なっさんのね、仕事に敬意持ってるところが好きで人に優しいとこが好き」
もっと屈んで、と背中を叩かれ、私はもーさんが爪先立ちしてることに気付いた。
「それから、行動力のあるとこ、プライド持ってるとこが
自信持ってて、けど自信なくて、強そうに見えて、弱いとこが好き」
背中をきつく抱きすくめられて抱き返す。
バスローブ越しの小さな体。唇。髪を抱く。引き寄せながら乱暴に梳くと、甘い香りが立った。
「あとね、正義漢だけどロマンチストで女の子らしい乙女心あって、可愛いとこが好き」
もーさんは、私を抱きしめたままベッドに押し倒した。
「……思うけど、恋って、後先のない、ただの無責任な欲情だね」
私の目を覗き込みながら、一瞬真顔でそんなことを言う。
「そんな風に思うんだ」
「違うかな」
それが、合ってるか合ってないかなんてどうでもいい。
怖いから、そんないっぱい喋ってんだよね。
大丈夫。ここにいるよ。
向けられる全ての言葉を吸い込む。全ての言葉を愛おしく思う。
何度も小さなキスを繰り返した。
ようやく顔を離すと、手のひらで頰を撫でられる。
「言い忘れてた。あとね、顔が好き」そう言ってふと笑う、その手を握りしめる。
「私の顔好きなんだ」
「そうだよ。なっさんは?私の顔好き?」
「好き。可愛いと思う」
「あとは?」
「あとは……」
「じゃあいいよ、それだけでも」
優しい瞳が、見下ろしている。それだけじゃないけど、上手く言えない。
「考えないでいいよ」ともーさんは言った。「考えないで」
その言葉は私の頭を蕩かして、求めていた思いだけが浮き上がった。
今、ずっと望んでいたものが、与えられる。
隠していたその欲情を全部、私に向けて欲しい。
首筋に顔を埋められ、熱い唇が押し当てられた。髪を優しく撫でる。何度も、優しく
不意に聞こえてきた、ほとんど吐息だけの掠れた声に
私は閉じていた目を見開いた。天井が揺れる。
みやび
性急な、甘くて苦しい疼き。抱きしめると全身が震えた。
はぐらかすことも、断って終わりにすることもできたのに、そうしなかったのは
私に、触りたかったんだよね?

761名無し募集中。。。2018/12/06(木) 22:04:50.720

狂いましょう。
耳に、吐息が落ちてくる。
「今ここで、一緒に死んでもいいって言ってみて?」
答える前に唇を塞がれる。考える前に頭の中がぐちゃぐちゃに溶ける。
さんざん、人の舌に吸い付いて、弄んで、唇を離すと「つまんない女だ」とか言ってくる。
伸し掛かってくる体にしがみついて転がり、仰向けにする。
「それ、自分に対して思ってることじゃん」
そう言ってやるとトロトロに溶けそうな顔ではにかんだ。すぐに伸ばされた手が私の髪を掴む。
私は少しの間、されるがまま
「ねー、ここがそんなに好き?」って、優しく撫で回されて「好き」って言うと、違うところへ。
唇に含まれて、転がされて、噛まれる。あちこちの鋭い刺激が一瞬置いて甘く広がる。
「すごいきれい、きれいな肌」そう言いながら、きつく吸うから、たくさんの痕がついていく。
「こんなことしたかったの?」って聞いたら「うん」って言うから
めちゃくちゃ嬉しくなって
私は両手で頭を抱いて、いろんなところを食べさせる。
「一回イって?」って言うから、私は体を預けた。嘘みたいにあっけなく果てる。
早いよ。って言われて口だけで笑う。
「死んでもいい」って言ったら「まだ駄目」って言われた。
うん。わかった。まだ死なない。
擦り付けてくる体を叩いて引っ張り上げた。
ここまでいい子にしてたんだから、いい加減私にも触らせて。
触ってないとこがないくらい、全てに触れなきゃいけない。
どこがいい?どこが好き?どこが一番感じる?聞いてんだから答えろコラ。
「わかってる。なんでもいいんでしょ」って、音を立てて舐めてあげたら、ぎゅって閉じた睫毛が震えて
ああ、我慢するんだ。いいよ、してみて。
なんて小さくて柔らかいんだろう。
いつかこの肌に触れる、見知らぬ男にめちゃくちゃに嫉妬して
私はおかしくなる。
ねえ、私のことも誰にも渡したくないって思って
思ってる?
苦しそうに、恨めしげに、見上げてくる、その目を見て私は笑う。
バカなの?こうしようって言い出したのはそっちじゃん。
いっぱい後悔すればいい。後悔させたい。
許し合おうね。
優しく、そっとキスをした。優しくそっと抱き締められる。
ため息が首筋をくすぐって、愛おしい指が背中を撫でる。
やっぱり、幸せになって欲しい。この人に、誰からも祝福される幸せな未来が訪れますように。
真っ白なドレスを着て、誰と腕を組むの?見上げて、あなたは嬉しそうに笑うだろう。
「10回イって?」って私は言った。
自分で数えて。ほら、ここに手を置いて。左手から指折ってあげるから。
丸めた両手をきつく握りしめて見下ろす。
滑らかな白い肌が、目の前で何度も波打ち、震える。
あんまり綺麗で、私は見惚れた。
そう、この美しさと引き換えに、私も未来を手に入れる。
つまらない女と、笑えばいい。

764名無し募集中。。。2018/12/06(木) 22:09:06.950

「合コンセッティングしてよ」
後ろから声をかけると、給湯室で冷蔵庫を開けていたしみはむはこっちを見た。
「やっとその気になったか」
「まあね。その気になって動かなきゃ、何も変わんないよね」
「そうだよ。棚から落ちてきたぼた餅なんて、美味しくないからね」
しみはむは私の二の腕を軽く叩き「任せといて」と柔らかい微笑みを浮かべた。
もーさんの腕枕でうとうととした。
手を探って指を絡ませるとぎゅっと握ってくれた。
松浦くんはグラスの氷を揺らしながら、私の顔を覗き込んだ。
「そういや聞いた?営業に派遣で来てたあの子、次の更新で切るみたいだぜ」
「え?知らない」
「上からのお達しだって。派遣にやらせてる仕事は新人にやらせろってさ」
「新人こそ手一杯じゃ」
「残業時間が嵩んで総務部に目を付けられてたらしいんだよな。
頼んでんのは営業の都合で、あの子に非はないんだろうなと思うけど
まあ、会社ってのは利益を追求しなきゃいけないからねぇ」
私が甘えて、ねだった分だけキスしてくれた。
離さないで。嫌だ、離さないでってうわ言みたいに、何回言っただろう。
「……できる人を手放すのと、利益追求って真逆だと思うけど」
「ほんとな。会社側は誰にでもできる仕事だと思ってんだよな」
誰にでもできる仕事。そうなんだけど、クオリティの話なんだよね。
奴らはいつだってなんにもわかっちゃいない。
本当のこと言うと私ね、強がったりもしたけど、もーさんに、抱かれたかったの。
全部わかってくれて、その腕に包まって、私は微睡んだ。なんて幸せな時間だったろう。
「要するに何が言いたいかってーと、こっちにも営業からの皺寄せが来るから覚悟しとこーぜって話」
よかったのかもしれない。と私は思う。
思い出すだけで、心が浮き、すぐに胸が締め付けられる。
その姿を一目でも見れば、全身の傷口が開いて、血が噴き出すだろう。
やり過ごしていこうと覚悟は決めていたけど
会えなくなるなら、それがいい。
私は、違う建物の、別部署の事情なんて知らない。
ただの日常を過ごす間に、いつの間にかいなくなってたみたい。それでいい。
末日付けで、辞めていくのかな。多分。わかんないけど。
旅行からの帰りの列車、2人、もう手にも触れなかった。仕事の話なんかした。
乗り換え駅で、私達は別れた。
振り返りもしないだろう。そんな予想を裏切って、もーさんは見送る私を振り返った。
あの笑顔が、最後でいい。

766名無し募集中。。。2018/12/06(木) 22:12:13.820

「よーよー。おひさしう。元気にやってるかな?」
そんなことを言いながら、亀井さんは、私の隣の空いた席の背に手を置いた。
「この席誰?空いてる?」
「今、会議に」そう言うと、亀井さんはそのまま背を引いて椅子に腰掛けた。
「桃ちゃんが昨日までだったんだよね」
この馬鹿。と私は小さく唇を噛む。知りたくないことを。
私の表情を見て、亀井さんが「あー、やぁっぱそんな感じ?」と言い、私はドキっとする。
「そんな感じって、いうか」
「先に言っとくけど、俺は何も聞いてないですよ?
女同士のことには首突っ込まないことにしてるんですよね。俺わかんないし。
ただ、送別会も呼ばなくていいとか言うし、全然会ってない?」
私は頷いた。
亀井さんは、細いリボンのかかった小さな包みを私の前に置く。
「これ、桃ちゃんが最後に営業に配ってったお菓子。どーぞ」
私は、その包みをじっと見る。いらない。って、言えない。
「なんとなぁーくだけど、何こじらしたのか知んないけど
桃ちゃんの方が悪かったんじゃないかなって思ってんですよね。違う?
ほらあの子ヘンなとこ、意固地だったでしょう?」
私がちょっとだけ笑うと、亀井さんも一瞬だけきゅっと口角を上げた。
「俺が言うのもアレだけど、これ食べて、チャラにしてあげて」
それだけ言って立ち上がった横顔を見上げる。
「でもこれ、亀井さんの分じゃ」
「俺ね、それ食べる資格ないの。俺の妹だ〜なんつって口ばっかで、何もしてあげれなかったから」
そう言った亀井さんが何を思っているのか
その表情からはわからなかった。
優しい人。
ガラスのドアを押し開く。夜遅いラウンジは誰もいなくて、小さな照明だけが点いていた。
一緒にパンを食べたカウンター席に腰掛ける。外は真っ暗で、窓ガラスには自分の顔だけが映っていた。
自販機で買ってきたイチゴ牛乳にストローを刺し、もってきた包みを開ける。
クッキーが入っていた。
袋を開け、その端を口に入れた瞬間、私の頬を幾筋も、何粒もの涙が零れ落ちた。
嗚咽を押し殺すと吐く息が震え、肩に、背中に、静かに伝い落ちていく。
こんなに、好きだったのに
友人にも、恋人にも、なれなかった。
たった一人の、私の女の子。
彼女はたった一つの夜で、一生ものの鮮やかな影を私の胸に焼き付け、いなくなった。

769名無し募集中。。。2018/12/06(木) 22:16:11.410

私はチーム長になった。
入社前研修で内定者の世話を任されたスッペちゃんは
意外にもこれまで見たことない顔で張り切っていた。
これからだって何やらかすかわかんない。目は離せないけど
裏切られることにも、慣れていくだろう。
彼女に得意なものがあるなら、伸ばしてあげれるといいなと思う。
エレベーターで一緒になった流星Bが子供の入園式の画像を見せてきた。 
良いパパやってんじゃん。
「そんな可愛いお子さんがいるなら、女子社員の体触るのやめたらどうですか」
流星Bを残し、後ろでエレベーターのドアが閉まった。
言っちゃった。私は小さく舌を出す。
チーム長になったからって何が変わるのって思ってたけど
堂々と言えることとかちょっと増えた気がする。
そういえば、とポケットに手を入れる。取り出した紙を開くと〈末吉〉だった。
くまいちゃんはときどき、私の席におみくじを置いていく。
これが意外に、けっこう開く時ドキドキしちゃったりして
私もたまに作っては、こっそりくまいちゃんのバッグに忍ばせてたりする。
くまいちゃんのバカ。もうちょっといいのくれたっていいじゃん。
前から来たしみはむが私を見つけて、ニコニコしながら寄って来た。
「この間の飲み会でさ、なっさん、萩原って子とLINE交換した?」
「たぶん、したと思うけど」
「あたし、したつもりでしてなかったんだよね、連絡つけてくんないかな」
「年下趣味だったっけ」
「わかんないよ、わかんないけどさ」
「ちょっと待って」
私はLINEを立ち上げ、表示されたリストを指で繰った。
それは、通り過ぎる一瞬手前に、ちらりと目に入ったもの。
登録は消してないけど、色褪せたアドレス。
私はそれを拾い上げず目を閉じる。
傷は癒える。明日は必ず来る。お互いとびきり幸せになってやろうと、それだけ約束した。
約束は守る。たぶんね。そのつもり。
「あったよ。伝えとく」
「助かる」
「うまくいくといいねえ」
お互いね。なんて言われてちょっと照れる。手を振って別れる。
私は窓の近くで立ち止まり外に目をやった。
見下ろすと二つのビルを繋ぐ、隙間の小道が目に入る。
顔を上げれば、空は眩しいほど明るい春の日差しだった。
「後先ない、無責任な欲情だね」
そんなこと言ってたけど、もーさん。
桃子。
私は前を向きながら、これからも、何度でも思う。
情熱的で、ワガママで
不器用なあなたを、想う。