雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - また、来世
145名無し募集中。。。2020/05/04(月) 02:08:40.290

いつもの公園のジョギングコースを走り終え、公園から出ようとした所だった。
犬の散歩をしている高校生くらいの少女が目についた。
派手な髪色と服装は所謂、不良と分類される生徒たちと近い。
だからかなと思っても明らかにそれとは違う何かがあって視線が釘付けになる。
女子高生が少しずつこちらに近づいてくる。
それをただぼーっと見ていると曖昧な笑みを浮かべた女子高生がおはようございますと。
その声にやっと我に帰ってどうにかすれ違う寸前にどうにかおはようございますと返せた。

知り合いでもない女子高生をガン見するアラサー女。

不審者でしかない。
何だかどっと疲れのようなものが押し寄せてきてため息が出る。
せっかくの休日だけど今日はもう一日寝てしまおう。

「あの、大丈夫ですか?」

急にドアップで視界に入るさっきの女子高生の顔。
とやたら短足な犬。

「ひゃぁぁぁ」

不意打ちの犬のドアップに思わず大きくのけぞるとグキっと足首から嫌な音がしてガクッと体倒れていく。
ガンっと頭に走った衝撃は人生で味わった事のない強さで。
遅れてやってきた痛みと熱にこれはひょっとして終わった?なんて。

「…また…来世で…?」

不意に口からついて出た言葉。
自分で言っていて意味が変わらないけど何故かそれを伝えられた事で満足して。
女子高生の焦った声と犬の鳴き声を遠くに聞きながら間抜けな最期だったなと暗くなっていく視界に抗う事なく意識を失くした。

146名無し募集中。。。2020/05/04(月) 02:09:55.880

「また会えるから」

皺々な手で傍に座る二十代後半くらいの女性の頬に流れる涙を拭う。

「次も絶対、人間に生まれ変わってよね」
「それは難しいねぇ」
「根性で何とかして」
「無茶言わないでよ」

笑うと同時に咳がこみ上げてくる。
女性は優しい手つきで背中を摩ってくれる。

「だって前回はお互い飼い猫と飼い犬で滅多に会えなかったじゃん。しかも会った時にはもう老犬だったし」
「でも会えないよりいいでしょ」
「…そうだけど」
「まあ今回みたいのはもう嫌だけど」
「ほんとまさか大叔母が、だなんて思いもしなかったし」

不満そうに口にする女性は恨みがましい目で見てくる。

「次はもう少し年齢が近いといいねぇ」
「ほんと。てか血縁者はもう嫌かも。どうにかしといてよ」
「もう今はそんな力ないなぁ」

どこか申し訳なさそうな顔をする女性にどうにかしたくなるけれどもう今はただの人間で。
それに記憶が戻るのすら随分と時間が掛かるようになってきている。
せめて何代か前、妖に生まれ変わった時ならまだどうにかなったかもしれないけれど。

「ねぇ聞いてる?」
「ごめん。ちょっと考え事してて」

繋がれた手をギュっと握ろうとしてももうあまり力が入らない。
強い眠気が襲ってくる。

「おやすみ」
「うん、また…」

来世で。

147名無し募集中。。。2020/05/04(月) 02:11:32.420


一族の中で最も優れた力を持つものが妖狐の封印を受け継ぐ。
選定の儀で歴代随一と評され期待を一身に受けた時は幼いながらに誇らしかったのはよく覚えている。
例えそれによって定められた年までしか生きることができなくなるとわかっていても。
選定の儀から一年、滞りなく封印を引き継いだ。
会うのは引き継ぎの時の二度だけ。
そのはずなのに何故かこの妖狐は人間のフリをして何度も会いに来た。
封印が緩んでいるのかと丹念に術式を見直してもそんなことは無くて。
問いただすと、良質な力が何もしなくてももらえるから封印されたフリしてるだけと何とも腹立たしい答えが返ってきたのはもう随分と昔の話。
暇つぶしだと妖の調伏に行く時は一人の時は決まってついて来て、危なくなると力を貸してくれて。
修行の時も一人の時は必ず側に来て手伝ってくれているのか邪魔しているのかわからないが手を貸してくれて。
たまの休みに一人でいると暇だから街に行こうと連れ出される事、数知れず。
気が付けば危険だと言われていた妖狐に心惹かれていた。
そしてその想いは伝えていないけれど確かに通じ合っていて。
でももう残りの時間は僅か。
だからただいつも通り妖狐との心地良い時間を過ごす事ができればそれで良かったのに。

「あの娘は何だ?」

一族の長に呼び出されたのは次代のための選定の儀が行われた翌日。
ちょうど大物を調伏して力を消耗している時だった。

「あの娘とは?」
「あれは妖狐か?」

妖狐の封印された庵の前。
それはもう問では無く。

「随分と気を許していたようだが…」

続く叱責は耳を通り過ぎていく。
巧妙に隠されているが辺りに術式が張り巡らされているのがわかる。
封印を強固なものにし妖狐の力を強制的に搾り取る代物。
その術式の完成に使われるのは自分。
まだ長が話を続けているのはただの時間稼ぎ。

148名無し募集中。。。2020/05/04(月) 02:13:09.520

「みやびーいる?」
「んー?どした?」

呼びかけに答え妖狐が本来の姿のまま庵からゆったりと出てくる。
長の慌てる声が聞こえるけれどそんなもの関係ない。

「約束覚えてる?」
「どれ?」
「どんな我儘でも一個だけ聞いてくれるってやつ」
「あぁうん」
「あれ今、お願いしていい?」

ずっと一緒にいれたらいいのに

いつだったかポツリと漏らしたそれに返されたのは先の約束の言葉。
あの時はどんな我儘でもいいなら勿体無いから何をお願いするかは保留でなんて言って話を終わらせた。
でもあの後、戯れに作った術式は戯れであって戯れではなかった。
使った力の量の分だけ記憶を持って二人で何度でも転生するという代物。
妖狐の力も使えばまず間違いなく成功する。

「力貸してくれる?」

頷く妖狐のにそっと顔を近づける。
最初で最後の接吻。

「また来世で」

術式の発動と共に辺りは一面真っ白に染まった。


「っていう夢みたんだ。みやと一緒に寝ると絶対見るんだよ」

つい先日恋人になったばかりの桃子が朝食を食べながらそう言い放った。
それは視点こそ違えど自分自身も見ていた夢で。

「犬ってコーギー?」
「そうそう多分それ」
「妖は雪女?相手の猫はロシアンブルー?」
「うん、そう。…って、えっ?」
「…最後、出会った途端にさよならだったよね」
「「…もしかして…」」