雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - タイムスリップの1
195 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/05(月) 00:08:12.43 0

休日が重なると予定を何もいれず昼まで同じベッドで過ごしていた数年前。
狭いベッドの中、背中から抱きしめられながら眠っていた。
日差しの眩しさに少し意識が覚醒する頃。
それを待っていたかのようにいたずらに素肌に触れようと怪しい動きをする手。
それを掴まえて指を絡める。
また後ろから聞こえてくる微かな寝息。
それにつられてまた微睡む。
そんな懐かしい夢。
やけに現実的で夢だとわかっているのに起きたくない。
それに背中に感じる温もりが心地が良くて。
せっかく少し浮上した意識がまた沈みそうになる。
耳元で鳴っているアラーム。
オフにするのを忘れたことに後悔。
手探りでそれを止めて気付く。
体にかかった僅かな重みと明確な他人の体温。

ありえない

自分以外は誰もいないはずの自宅。
恐怖に体が凍りつく。
急速に醒めていく意識。
喉元まで出かかった悲鳴は聞こえてきた小さな声で止まった。
聞き覚えのあるその声。
胸の近くで自分の手と絡まった小さい手。
懐かしいその温もり。
夢ではなかった。
不審者ではない。
むしろ数年前までは今の状態は日常だった。
それでも今、同じベッドに寝ているのはありえない。
わけのわからない現状。
なんで、どうしてばかりが頭を駆け回る。
しかしそれもその小さい手の不穏な動きで切り替わる。
明らかに服の中に潜り込もうとしている手。
胸に触れる寸前にその腕を捕まえた。

196 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/05(月) 00:09:21.04 0

「ちょっもも」

止めるために掴んだ腕。
それに違和感を覚える。
少し違う肌の質感。
それに腕の太さや硬さも何か違う。
その事に気がとられそうになる。
そんな事よりもなんで桃子が自分のベッドに寝ているのか。
問い詰めようと少し身を起こして思考が停止した。
肩にかかるぐらいの短めの髪。
少し鋭さのある顔つき。
それは明らかに高校生ぐらいの時の桃子の姿。

「なんでもも若返ってんの!」

ここにいる事よりもはるかに上回る疑問。
想像以上に大きい声。

「もーみーやんうるさい」

半分以上眠たげに閉じられていた目はそのままに掴んでいた腕に逆に力を入れられ倒される。
また元の体勢。
桃子の腕は掴んだままなのに器用に外されていくボタン。

「今日は一日好きにしていいって約束なんだから大人しくしててよ」

そんな約束してない。
それにこんな事をする関係性ではもうない。

「待ってもも。やめて。ちゃんと起きて」

力を入れて桃子の腕を引き剥がそうとする。
意外にもあっさり離れたと思ったら肩を押され桃子に覆い被さられた。
首筋に埋められた桃子の顔をぐっと押す。

「もーみーやん大人しくし…」

不快そうに片手で手を払われる。
そこで今日初めて桃子と目が合った。

「えっみーやんふ…」

急に口を噤んだ桃子。
キョロキョロと彷徨う目線。
先ほどまでとは違う手つき。
確認するようにペタペタと触られる。
動揺しているのがよく伝わってくる。
そして口から小さく漏れた『ふ』という一文字。
慌てたようにまた口を引き結んだ。
ふの続きは何なのか。
この際、それは努めて気にしない事にする。
体に置かれた桃子の手を退けて起き上がる。
動揺している桃子を見ていると少し落ち着いてくる。

197 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/05(月) 00:10:15.24 0

「なんでももがいるの?」

「なんでって昨日の夜からずっと…」

言いかけた言葉は部屋を見た途端に切れた。

「えっここどこ」

「みやの家」

「えっ?」

せわしなく動く桃子の視線。

「引っ越した?」

「一年前にね。てかもも来た事あるのに何言ってんの?」

また戸惑うように落ち着きなく視線が彷徨う。
その視線が一ヶ所に止まりストンと表情が抜け落ちた。

「八年後…」

ポツリと呟かれる。
まるで時が止まったかのように動きを止めた桃子。
あまりにも動かない桃子の肩を軽く叩く。
一点を凝視していた視線が動きまじまじと見つめられた。
そして納得したかのような表情。

「八年後だねぇ」

「八年後って何が?」

一人で納得されても困る。

「私がいた時間?から?」

「ごめん、意味わかんない。どういうこと?」

「たぶんタイムスリップしたんだと思う。だからここにいる嗣永桃子は高校三年生ってことだよ」

198 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/05(月) 00:11:10.31 0

淡々とした口調。
やけに冷静な桃子とは違い混乱する。
あまりに現実的でない。
そう言われれば目の前の桃子は確かに高校生の頃の桃子にしか見えない。
顔つきや体つきだけではない。
その表情や雰囲気が今の桃子とは違う。
若返るのもありえないけれどタイムスリップなんて到底、理解の及ぶ範疇ではない。
そろでも確かに存在している。
目の前の何を考えているのか読み取らせない高校生の頃の桃子。
受け入れ難い現実に痛みを訴え出す頭。
これは夢なんだと現実逃避しようとしたところで声をかけられた。

「ところで今みーやんには恋人いるの?」

なんの脈略もない問いかけ。

「いないけど」

「だったら問題ないよね」

にっこり笑う桃子。
懐かしいその笑顔は大体ロクでもない事をする時に浮かべられるもの。
近かった距離がゼロになる。
真っ白になる頭。
何をされているのか理解した時には目尻から涙が伝っていた。
意外だった。
自分の中ではもう桃子への気持ちは整理がついていたと思っていたのに。

「やめて」

自分で聞いても考えられないほど弱々しい声。
じっと観察するような視線を投げかける桃子。
そして気のせいでなければ少し楽しそうで。

「なんでこんなことするの?」

「大人になったみーやんもかわいいなあって」

また読めない表情。
本当なのかどうかなんてさっぱりわからない。

199 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/05(月) 00:13:00.37 0

「もうこういう事はしないで」

「なんで?」

「なんでってももとはもう付き合ってないから。こういう事する理由がないし、したくない」

「ふーん、まあいいや。気をつける」

「ねぇ、八年前の何月から来たの?」

「ちょうど今から八年前かな」

ちらっとカレンダーを見て返ってきた答え。
関係が解消されたのは桃子が高校を卒業した時。
それの十ヶ月前。
それなのに付き合ってないという言葉に微塵も動揺がみられなかった。
わかってはいてもあの頃の痛みが胸の奥で疼くように蘇った。

「そういえば今の私はどうなってるのかな?」

タイムスリップって二人同時に存在したらとかなんとか続く言葉は耳が勝手に聞き流していた。
何故それを一番最初に確認しなかったのか。
現在の桃子がどうなっているのか。
それこそ目の前の桃子は実は若作りした現在の桃子で盛大なドッキリを仕掛けられているのかもしれない。
馬鹿みたいな事を考えながらスマホに手を伸ばし桃子に電話をかける。

『もしもし?』

まだ朝早いのにワンコールもしないうちに繋がった電話。
聞き慣れた桃子の声。

「もも…」

目の前の桃子をまじまじと見つめてしまう。
はーいと戯けたような調子で反応を返してくる目の前の桃子。

『どうしたの?何かあった?』

電話の向こうからは心配そうな声。

「ごめん。寝ぼけて間違えてかけたみたい」

『そう?それならいいけど』

少し早口で慌ただしそうな気配が電話の向こうから漂ってくる。

「今、忙しかった?」

『ごめんね、今ちょっとたてこんでて』

またねと電話は切れた。

201 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/05(月) 00:17:49.90 0

スマホと目の前の桃子をまだ信じられない思いで何度も見てしまう。
何度見ても頬をつねってみても痛いだけで変わらない。
今ここに居る桃子は認めたくはないけれど本当にタイムスリップしてきた高校生の桃子なのだろう。

「ところでみーやん仕事は?」

「今日は休み。なんでももはそんなに落ち着いてんの?」

「どうしようもないから。原因もわかんないし解決策なんてないだろうから。もしかしたらまた寝て起きたら元に戻ってるかもしれないし」

肩をすくめてお手上げというジェスチャーをした。

「暫くみーやんのところに居させてよ」

「それはまぁいいんだけど」

むしろこの桃子をどこかに追い出すなんて選択肢は存在しない。
ただこの桃子と一緒にいると落ち着かない。
仕舞い込んだはずのあの頃の記憶が胸を騒つかせる。

「よかった。どれくらいになるかわからないけどよろしくねみーやん」

ふあっと一つあくびをしてまたベッドに横になる桃子。

「じゃおやすみ」

本当に眠かったのかすぐに寝息が聞こえてきた。
ベッドに腰掛けたまま今日の友人との予定をキャンセルする。
誰に相談すればいいのかもわからない事態。
あっさり寝てしまった桃子が少し恨めしい。
桃子の言った通り寝て起きたら元に戻っていたらいいのに。
現実逃避するように自分も寝転んで目を閉じた。