雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - ヒメゴト
376名無し募集中。。。2019/05/21(火) 01:56:02.780

目を覚ましたのは、何がきっかけだったのか。
雅がぼんやりと目をやったベッドサイドのデジタル時計は、午前2時を示していた。
もぞもぞと体を丸めた雅は、ふとあるはずのものがなくなっていることに気がつく。

「……もも?」

昨晩、確かに腕の中にいたはずの桃子がいない。
ああ、自分のベッドに戻ったのか。
そう思いながらゆるゆると体を起こしてみたが、隣のベッドのシーツは皺一つない。

「あ、れ?」

伸びを一つして、改めて隣のベッドに目を凝らしてみる。
だが、やはりベッドは使われた形跡がなかった。

地方のコンサートのために宿泊したホテルの一室。
珍しく、昨晩はBerryz工房のメンバーが勢揃いしていた。
パジャマパーティーさながらに盛り上がっていた中、誰かの携帯から怪談話が流れ始めて。
怖い物見たさで聞いていた者も、平気そうな顔をしていた者もいる中で、桃子は部屋の隅で小さくなっていた。
雅と桃子は同室で、「先に戻ってれば」と声をかけると桃子は拗ねた顔で首を振った。
あまりに怯えた様子だったから、手まで繋いで一緒に部屋に戻ってきてやった。
すると、今度は「一人じゃ寝れない」と桃子から訴えられて。
雅も仕方ないなあ、という顔で両腕を広げてやり、二人で同じベッドに入ったのだった。

現在、午前2時。
こんな時間にどこへ行ってしまったのだろう。
疑問に思ったけれど、放っておけば帰ってくるような気もしていた。
まあいいか、と思いつつ雅は腰を上げる。
うがいの一つでもしてから寝よう。
そう考えてシャワールームのドアノブを掴みかけ、中から聞こえた声に雅の思考は停止した。

「……は、……ぁ……っ!」

抑えこもうとして、堪えて堪えて、思いがけず飛び出てしまったような声。
これはいわゆる、そういう行為の時の声ではないか。

「は……?」

雅自身、そういう知識がないわけではない。
けれど、自分に近しい人がそういう行為に及ぶなど、想像すらしなかった。
足下が力が抜けて、雅はその場に膝をつく。

「……っ、ん」

がこん、と重たい音が響いた。陶器の便座に何かがぶつかった音だ、と思った。
ドアの下に空いたわずかな隙間から、薄く光が差している。
桃子の荒い呼吸が、懸命に声を堪えているのが、雅の耳に絡みつく。
ドアの向こうの桃子を想像しただけで雅の心臓はどんどん速くなった。
何やってんの、とノックでもしてしまえば良かったのだろうか。
もしかしたら、ただ体調が悪いだけだったかもしれない。
けれど雅にできたことと言えば、こんがらがる思考を抱えたまま大人しくベッドに潜り込むことだけだった。

378名無し募集中。。。2019/05/21(火) 01:57:39.180


そんな出来事があってからも、雅に対する桃子の様子は特に変わらなかった。
当の桃子はバレていないと思っているのだろうから、当然ではあるけれど。

「みやー、どうした? なんか元気ないね?」

雅がぼんやりとスマホの画面を撫でていると、不意に正面に座る千奈美が声をかけてきた。
「そう?」と誤魔化すように笑いながら、雅は机の上に広げられた菓子の一つを手に取る。
ホワイトチョコレートに包まれたクッキーは、甘ったるく舌に溶けた。

「体調悪いとかじゃないなら良いけど」
「あーうん。そういうんじゃない」
「え、じゃあ何?」
「じゃあ、って」
「誰かと何かあったとか?」

そう言いながら、千奈美は雅が選んだのとは別の菓子を手に取る。
あの夜の出来事は、何かあったと言うべきなのか。
雅が答えあぐねていると、千奈美が目を小さく見開いて雅に顔を寄せてきた。

「……もしかして、うち?」
「いや。それはないけど」
「よかったぁ。無意識で何かしちゃったかと思った」

じゃ、何?
ほんの一瞬、千奈美の声が真面目な色を帯びる。
雅は手元の空になった菓子袋をいじりながら言葉を探した。

「ももってさ」
「もも?」
「うん。もも。ももって……何考えてるか分かんなくない?」
「え? ももが?」

予想もしていない名前だったのか、千奈美が素っ頓狂な声を上げる。
雅が人差し指を立てると、千奈美は慌てて体を小さくした。

「ももと何かあったの?」
「別に……何もないけど」
「えー、よく分かんない」

自分だってよく分かっていない。
そんなことは言えるはずもなく、雅は次の言葉を継ぐ。

「ちぃはさ、ももと二人部屋ってある?」
「そりゃあるけど」
「その時に、なんか……変なこと、あった?」
「変なことぉ?」
「いや……やっぱなんでもな、」
「だってもも大体すぐ寝ちゃわない?」
「ま、まあね」
「やっぱみや変、」
「変じゃないし」

なおも首を傾げる千奈美の前で、「大丈夫だから!」と雅は大袈裟に両手を振ってみせた。

380名無し募集中。。。2019/05/21(火) 01:58:56.920


次のホテルで同じ部屋になってしまったのは、雅にとっては笑うしかなかった。
誰かに変えてくれと言うわけにもいかず、素直に荷物を部屋に運んだのが少し前のこと。
桃子は上機嫌なのか、鼻歌を歌いながら自分のベッドで歌詞カードを眺めている。
雅はそれを横目に化粧水や乳液で保湿を終えたところだった。
お互いが風呂上がりのせいか湿った部屋の空気は、雅をどこかいたたまれない気持ちにさせた。

「いーにおいする」

桃子がそう言ったのは、雅がボディクリームを腕に塗っている時だった。
気になっていて最近買ったばかりの、上品な石鹸の香りのクリームだった。

「ああ、これ?」

雅が瓶を振ってみせると、桃子がこくりと頷く。
つけてみる?と提案したのは、ただの気まぐれ。
良い匂いと言われたことが、単純に嬉しかったのかもしれない。

「えっ……いいの?」

桃子はといえば、予期せぬ言葉だったかのように素早く瞬きをした。
良いよ、と雅が手招くと、桃子はやけに素直に近づいてくる。

「手、出して」

雅の前に差し出される両手はふくふくと柔らかで、抜けるように白い。
優しく桃子の手を取って自分の手のひらに乗せてみて、雅は密かに驚いた。
しっとりとした桃子の肌は、まるで吸い付いてくるようだった。
ゆるく弧を描く桃子の手のひらに、そっと真っ白なクリームを絞り出してやる。
桃子が手のひらを擦り合わせると、柔らかな石鹸の香りが一気に辺りを包んだ。

「いいね、これ」
「でしょ?」

桃子は自分の手の甲に鼻を近づけ、満足そうに笑った。

381名無し募集中。。。2019/05/21(火) 02:00:11.560


雅には、その日の夜に決めていたことがあった。
寝たふりをして、桃子の行動を伺うこと。
いつまでも悶々と悩むのは性に合わない。だったら今日、はっきりさせてしまえば良い。
それが、ここ数日で雅が捻り出した答えだった。
果たして雅の読み通り、日付も変わった頃に桃子はそれを開始した。

「……ふ、ぁ……」

シーツが擦れ合う微かな音と共に、最初は控えめだった桃子の吐息が荒くなっていく。
薄暗い室内では桃子の影くらいしか認識ができないが、雅にとっては十分だった。
うつ伏せになった桃子が顔を枕に埋めていることも、軽く持ち上げられた尻がびくりと震えているのも、雅にはすぐ分かった。

「ぁ……ぃっ……み、ゃ……っ」
「……え?」

あっ、と飛び出た桃子の声が、枕の中に染み込んでいく。
スプリングが不規則に軋む音がして、桃子がくたりとベッドに横たわるのが見えた。
そのまま寝落ちてしまうのかと思いきや、しばらくすると桃子はゆるゆると風呂場へ向かった。
手を洗う音がして、桃子が風呂場から帰ってくる。
その足音は、雅の近くでぴたりと止まった。
まさか、バレたのか。
身を硬くする雅をよそに、桃子は雅へと手を伸ばし、そして雅の頭に触れた。
小さな子どもを寝かしつける母親のように、桃子の手のひらが雅の頭を優しく撫でる。
予想していなかった行動に雅が戸惑っている中、桃子は無言で隣のベッドに戻ってしまった。
布団に潜る音がして、程なくして桃子の心地よさそうな寝息が聞こえてくる。

「……なに、それ」

髪の毛に触れた優しい指の感触が、何度も何度も蘇る。
くしゃりと髪の毛を掴み、雅はブランケットの中に潜り込んだ。
桃子は一体なぜあんなことをしたのだろう。
その理由を考え始めると、今夜はとても眠れそうになかった。