雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - 隠しごと
638 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/01(木) 21:39:27.76 0

4年ぶりの単独コンサートが終わり、ステージに立った皆で打ち上げを行った。
お酒も入り、盛り上がる宴席。そんな中、ソフトドリンクを飲みながら食事をいただいていると、隣からグラスを寄せられる。

「かんぱーい」

乾杯を求めてきた主は、みやだった。本日何度目の乾杯か分からないが、飽きずにグラスを重ねる。

「あ、もも。これ飲みなよ。美味しいよ」
「えー、お酒でしょ?飲めないよ」
「違うよ、これジュース。ほんとに!」

渋々受け取って口にすると、桃の味がして甘くて美味しかった。

「これ、美味しいね」
「でしょ?いやーほんと今日は楽しかったなあ」

念願叶って武道館に立った後の高揚感で気持ちいい。みやも、充実した表情をしていた。
少し赤くなった頬が、可愛い。なぜだか、いつもよりもドキドキする鼓動がうるさくて、まともにみやの顔を見られなかった。
このままじゃ、気持ちがバレてしまいそうだから。

639 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/01(木) 21:40:02.33 0


頭痛と吐き気。ぼんやりした記憶を振り払うように目を開けると、見慣れない天井があった。
隣を見ると、人がいる。血の気が引くような感覚と共に、目が一気に覚める。ここはどこ、この人は誰−−
暗がりに目が慣れてきて、隣にいる人がみやだということ、そして−−お互い服を着ていないことに気付く。

漫画やドラマでよく見るアレだ。真っ先にそう思った。
寝起きの回らない頭じゃ、何が起こっているか理解ができない。これはきっと夢だ。寝てしまおうと目を瞑ろうとしたとき、みやが身じろぎをした。

「んん…おきたぁ?」

寝起きで掠れた、甘えた声。思わず心臓が跳ねる。さらに、熱い手のひらが私の腰に回って、体が密着する。胸は痛いくらいに高鳴った。

「ね、ねえ、みや」
「んー?」
「あの…その…昨日、何があったの?」

この不可解な状況を解明したい。そう思い尋ねた一言だったが、返事がない。
部屋が暗いため、表情までは読めない。動かず、何も話さないみやに、戸惑うばかりだった。

640 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/01(木) 21:40:41.89 0

「覚えてないんだ」

静寂を破ったのは、咎めるような、拗ねたような、悲しんでるような、からかっているような、諦めたような。どんなようにも取れるような、感情が読めない言葉。
その返答に、焦りは増した。そもそも、私はなんで覚えていないんだろう。昨日、Buono!のライブがあって、その後打ち上げで…

「打ち上げがあったことまでは覚えてるんだけど…」

記憶を失うなんて、お酒を飲んだわけじゃあるまいし。…いや、まさか。

「みや、ももにお酒飲ませた?」
「うん」
「……お酒じゃないって言ったじゃん」

肩を押すと、腕を掴まれる。いたずらっぽい笑みに、ときめきを抑えられなかった。距離が近すぎて、上手く息が出来ない。

「なんかもも、変なこと言ってた?」
「変なことは言ってないよ」
「『変なことは』って何!」

641 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/01(木) 21:41:03.21 0

昨日何があったのか。気になってしょうがない。だって、私はお酒で記憶を失ってて、お互い裸でベッドに寝てて。そんなの、一つしかないでしょ。
でも、ただ暑くて服脱いだだけかもしれないし。本当のことは分からない。知りたいよ。
だって、都合のいいように考えたくないもん。

「教えてよ…」

私の腕を掴んだ手は、気付けば私の手を握っていた。するりと指が絡まる。

「教えてあげないよ。忘れる方が悪い」
「忘れる方が悪いって、お酒飲ませたのはみやじゃん。飲めないのわかってて」
「知らなーい。みや明日早いから寝るね」

絡んだ指は解けて、背中を向けられた。置いてけぼりをくらった子どものような気持ちになる。寝ないでよ、みや。教えてよ。何があったのか、みやは何を思っているのか。

私たちは、どこへ行くのか。

684 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/02(金) 20:34:05.34 0

次に目が覚めた時には、部屋にみやの姿はなかった。今自分がいる場所が自宅じゃなく、見慣れない場所であることから、夢ではなく現実だと悟る。
ベッドから降りると、ミニテーブルの上にメモが置いてあった。

『ももへ

おはよ〜♪
お仕事行ってきます♡
寝坊すんなよ!
鍵はポストに入れといてね〜

みや』

こんなメモ書き一つでも、みやが書いたものだと思うととても嬉しくなる。読み終わると同時に、慌てて時計を見た。9時。今日は午後から仕事のはずだから一旦帰っても間に合いそうだ。

ここは、みやの部屋だったようだ。部屋一面、みやの匂いでいっぱいで、胸が苦しくなる。
落ちた衣服を拾い、身につけた。ベッドの布団を綺麗にして、忘れ物はないか確認をする。
鍵を手に取り、立ち上がる。

しかし、ここを出たら、何もなかったことになってしまいそうで、なかなか動けない。
シングルのリリースを控えているので、Buono!での仕事はひと段落したわけではないが、あと数日はない。しばらくは会えないが、何か忘れ物でもすれば、会う口実が作れるだろうか−−

少しの逡巡の後、何もすることなく、部屋を出た。打算的なことはしたくなかった。

685 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/02(金) 20:34:37.15 0

−−−

あれから数日が経ち、みやと顔をあわせる日が来た。行きの電車の中で、みやへメッセージを送る。

"今日、仕事終わり話せる?"

何度も送ろうとしては躊躇ってを繰り返し、やっとの思いで送信ボタンを押した。送ってしまった。張り詰めていた気が緩み、ため息がこぼれる。
返事が来るのが怖くて、携帯をカバンへしまった。前もって日にちを決めて会おうとはせず、当日に連絡をしたのは、断ってほしいと心のどこかでは思っていたから。
いつまでも曖昧なままにしておきたくないという気持ちと、本当のことを知りたくないという気持ち。それらが共存して、自分でもどうしたいか分からない。

でもやっぱり、このままではいけないな。一つ息をつき、覚悟を決めた。

686 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/02(金) 20:36:35.88 0

「えー…二人ともお仕事あるの?」

眉を八の字にして落ち込む愛理に、胸が痛む。三人での撮影を終えて、愛理はこれで今日の仕事が終わりらしい。
本当は私たちも終わりなんだけど、この後二人で会う約束をしているため、仕事だと嘘をついた。

「そうなの。ごめんね。また次の仕事の時ごはんでもいこ?」

そう言いながらみやは愛理の頭をぽんぽんと叩いた。しぶしぶ頷いて、愛理は帰っていく。ステージではあれだけかっこよくても、Buono!の中では末っ子だ。可愛いなと思わず頬が緩む。

愛理の足音が遠のいてしばらく経ってから、私たちは視線を合わせ、それを合図に立ち上がった。

「いこっか」

普段通りの声でみやは言う。何もなかったかなようなその態度に、胸がチクリと痛んだ。
こんなにも毎日みやのことばかり考えているのは、私だけなんだと実感してしまう。

−−−

夜の公園は人気がない。あまり人に聞かれたくない話をするにはもってこいだ。
一歩出す度にじゃりじゃりと鳴る音を聞きながら、ベンチへと向かう。

「ここ、ちーと撮られた公園じゃん」
「あー、そんなこともあったね」
「ももがフライデーに撮られたって聞いた時はめっちゃ焦ったよ」

当の私が一番焦った。いくらやましいことがないとは言え、「撮られた」という事実だけを聞かされるのは心臓に悪い。

涼しく、風が吹いて気持ちがいい。風が、私の心の中のもやもやした気持ちを、すべて吹き飛ばしてくれたらいいのにと思った。

731 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 00:46:51.73 0

「あのね」

緊張で喉がかわく。声が震えていないか、不安になりながら言葉を繋げた。

「あの日…武道館が終わった日、何があったのか教えてほしい」

みやの顔を見るのが怖くて、つま先を見ながら話す。あの日も同じことを尋ねたけど、忘れた方が悪いって、教えてくれなかった。
でも、覚えてないことは思い出せるわけがない。真実はみやしか知らないんだ。だったら聞くしかない。

「もも、もしかしたらみやに嫌な思いさせたかもしれないって思うと、不安で…」

酔った勢いでムリヤリ襲っちゃったのかなとか、思わず気持ちを伝えてしまったりしてないかなとか。考えれば考えるほど、怖くなった。

「嫌な思いなんかしてないよ」

みやの方を向くと、まっすぐに見つめられた。暗がりの中で、街灯だけに照らされるみやはとても綺麗で、どきどきと胸が鳴った。

「もも、みやに隠してたことあったでしょ」
「え?」

見つめられたまま、尋ねられる。思い返してみても、隠し事なんてした記憶はない。というより、隠し事をするほどお互いのことを知らないという方が正しいのかもしれない。
この数日、今まで以上にずっとみやのことを考えていた。初めて二人きりで朝を迎えて、距離が近付いたように感じたけれど、それが余計に私たちの距離を実感させた。
私はみやについて、知らないことばかりだ。恋人がいるかどうかすら、分からない。

「ずーっと、みやに言ってなかったことあるでしょ。それをももが教えてくれたんだよ」

ずっと、みやに言ってなかったこと。ずっとみやに隠していたこと。
一つだけある。これから先も伝えるつもりのなかった気持ち。

「うわあぁ…ほんとに…?」
「うん、ほんと」

言ってしまっていたんだ。
恥ずかしさと、後悔とが押し寄せてきて、手で顔を覆った。お酒って怖い。もう二度と飲まない。飲みたくて飲んだわけじゃないけど。

「なんて言ったの?もも」
「んっとね…」

732 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 00:47:38.62 0

−−−

ももは昔からどんな場でもお酒を飲まない。だから、酔ったらどうなるんだろうとは前から思っていた。そんな好奇心から、ジュースだと偽ってカクテルを飲ませてみた。
一口飲んだら、美味しいねと好評で、次はこれを飲みたいと言ったから注文した。
頼んだグラスが空になる頃には、ももはべろべろになってしまっていた。

「みやぁ〜」
「はいはい、もう帰るよ」

まともに歩くこともできないももを抱えながら、タクシーに一緒に乗り込む。
もうこうなったら、私の家に泊めてしまおうと思った。飲ませたのは私だ。責任は私にある。
タクシーでぐっすり眠るももの横顔は綺麗で、思わず見惚れる。
目的地に到着して、またももを抱えながら歩く。

「ねえ、みやぁ」
「んー?」
「ももねー、ずっとね、みやのこと好きだったの」

甘えた声が紡いだのは、予想もしない言葉だった。みやのことが好き?何かの聞き間違いだろうか。

「え?なんて?」
「だーかーらー、みやのことが好きなの!」

ここが街中だということは気にもせず大胆な告白をされた。まずは早く家へ帰ろう。ももを抱える力を強め、歩く速度を速めた。

733 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 00:49:04.35 0

−−−

「ってな感じ」

顔から火が出そうとはこのことか。でも、恥ずかしさよりも自分の大胆さに驚く気持ちの方が強いかもしれない。
中々顔を上げられないでいると、みやが私の肩を叩く。

「ねえ、もう一回聞かせてよ」

みやの方を振り向くと、思いの外顔が近くて驚く。いたずらっぽく笑う顔は、何歳になっても変わらないななんて見とれそうになり、我に返る。
知らないうちに、ずっと秘めていた想いを伝えてしまっていたのだ。その事実だけでもこれ以上ないくらい恥ずかしいのに、もう一度なんて言えるわけがない。
それに、みやは私の気持ちを知っているけど、私はみやの気持ちを知らない。ただからかっているだけなら、やめてほしい。

「…みやの気持ちを知らないのに、言えないよ」
「言ってくれたら言うから」
「うそだ」

ほんとだよと言いながら私の右手を握るその手のひらはやっぱり温かくて、なんだか、泣きそうになる。なんていじわるな人なんだ。
でも、そんないじわるな人を好きになってしまったのは私だ。
覚悟を決めて、一つ息をつく。ずっとずっと、言えなかった想い。
気付けば好きになってて、気付いた瞬間から失恋したような気持ちで。
届くわけないと分かっているのに、不意に感じる温もりに、何度も勘違いしそうになって。
他の人を好きになろうと思ったことも何度もある。でも、みやより素敵な人はいなくて。
もう諦めようとするのをやめて、思う存分好きでいようと決めた。でも、伝える日が来るなんて思っていなかった。

736 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 00:50:36.87 0

「……みやが、好き」

震えそうになるのを堪えて、絞り出す。何年も暖めた想いが、空気を震わせた。

「ん?」
「ねえー…おこるよ?」

睨んでみせると、おかしそうに笑って、私を抱き寄せる。ふわっとみやの香りがする。こんなにも他人の温もりが切ないと感じたことはなかった。

「みやの気持ちは?」
「これが答えです」
「ちゃんと言葉にして言ってよ」

はいはいと子どもあやすみたいに背中をトントンと叩かれ、体が離れる。
これからみやの口から何が飛び出してくるか、怖くて逃げ出したくなる。グッと堪えて、みやの言葉を待った。

「もものこと好きかって聞かれると、よく分かんない。子どもの時からずっと一緒にいたわけだし。でも、ももに告白されて、嫌じゃなかった。メンバーだし、女の子なのに。でー、思ったの。ももと一緒に居たいなって」

以上!と手のひらを合わせて、みやの言葉は終わった。
期待しなかったと言えば嘘になる。告白してしまったというのに、こうして嫌がらず話を聞いてくれて。
でも、こんな言葉を聞けるなんて思っていなかった。

737 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 00:51:13.82 0

「それって…」
「もー、分かるでしょ」
「分かんないよ、言ってくれないと」

いじわるされた分、ちょっと仕返し。これでも全然足りないくらいだからね。
みやの顔を覗くと、恥ずかしいのか、目を背けられる。

「だから、アレじゃん。付き合う…的な?」
「的って何それ」
「照れ隠しだよ」

みやがそう言った瞬間、二人で笑った。

私たちの未来を、何度も想像した。夢の中でくらい両想いになってもいいのに、どうしてもそんな未来が浮かばなかった。
それくらい、私にとっては叶わない恋だった。
みやが、私と一緒に居たいって一度も想ってくれたなら、これ以上幸せなことはない。その事実だけで、これからも頑張っていける。
永遠なんて願わない。一日でも長く、あなたといられますように。

740 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/09/04(日) 00:52:04.61 0

−−−

「そういえばさ」
「ん?」
「あの日さ、そのー…あの。えっと……した?」

みやはすぐには私の言いたいことが分からなかったようで、少し考えた後に、納得した表情となる。

「してないよ」
「え?」
「そこ驚くんだ」

そう言って笑うみやの顔に、また見とれる。
だってさ、二人で裸でベッドにいるなんて、それ以外考えられないと思うんだけど。

「もも汗かいてたから、ベッドに入る前に拭いてあげたのね。その時にひらめいたの。これ、朝起きたとき二人とも裸だったらもも絶対びっくりするぞと思って」
「だからみやもわざわざ服脱いだの?」
「そう。起きたらチョー寒かった」
「ほんとみやってバカだよね」

いたずらっ子もここまでくるとタチが悪いぞなんて思いながらも、そんなところが好きだったりもする。
でも、ほっとした。記憶のないうちにそんなことまでしてたなんてシャレにならない。

みやとの思い出は、全部ちゃんと覚えていたいから。