雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - 君のオブリガート
240名無し募集中。。。2018/11/27(火) 13:55:05.080



その日、3月6日は年が明けるまであと300日になる日。
え?そうだけどそれじゃないって?じゃあ春の全国火災予防運動の…
これも違う……?あ!子供の予防接種運動かー。
大事だよね。最後のワクチンはちゃんと受けとかないとってCMでもやってたよ!
なにこれも当たりじゃないの?折角ググったのに。なんだよー。
あー、世界一周記念日でもあるってよ。え?連れてってくれるのって?
ヤダよ何で私が桃子さんと行かなきゃなんないの。大体今が大事な時期でしょ。
それにそういうのは好きな人とか家族と行って下さーい。

昨年はそんな下らないやり取りを電話越しに繰り返して、最後におめでとうって言ったのはもしかすると、
やっと同い年になってくれたあいつに対する複雑な気持ちだったんだと思う。
面白いし真面目な話も出来るし好きだけどやっぱり少し苦手。
それが私にとっての彼女に対する普通なのだから。


「3月6日はももの誕生日。みやが一番おめでとうって言ってももを抱き締めて良い日なんだって」
「どうしたの。……佐紀ちゃん、変なのでも食べた?熱でもある?」

クルクルと砂糖を溶かすスプーンの動きを止めて、私のおでこに右手を当てて心配そうな顔で覗き込む。
ももがまだ食欲無いからってじゃあまずはここで良いかと喫茶店に入ったのも今思うと変な感じがする。
さっきの私は2軒目にでも行く気で居たんだろうか。

【みや】って聞こえて一瞬強張った顔をまたそうやって誤魔化すんだから。
佐紀ちゃんとご飯なんて久し振りって表面上は楽しそうにしてたももには悪いけど、
未だ心ここにあらずな状態のままでいられちゃ誘った意味も無いしそろそろ本題に入って良いだろうか。
今日は場合によっては本気で喧嘩しに来たんだから、こっちとしてもそう簡単に引く気はない。
私の頼んだラテアートはまだ来た時のまま可愛いウサギさんが笑っている。

「違う。みやが昔ね、2人が付き合い出してすぐ、だったかな。
 こうなっちゃう前に。そんな事を嬉しそうに言ってたなーって思い出したの」
「……そっか」
「私とみやとの思い出の一つ。……ももの方が一杯あるでしょ。てか、されなかったの?」

243名無し募集中。。。2018/11/27(火) 14:01:35.580

だとしたら本当にこのままで良いの?って視線をももに投げかける。
来年は今年のようなお互いの温かさが無くて、まだ不安定なこの子達は大丈夫なんだろうか。
みやの話をすると途端に悲しくて寂しそうな目をする位大好きな癖に。

みやからももと別れたって事実を聞いたのはつい2週間前のこと。
最近元気ないねぇ、どした?って話を聞いている内に泣き出してしまったみやに驚いた。
今迄恋愛なんか引きずるタイプじゃなかったのに。それで本気なのが痛い程分かってしまった。
ももからもたった今、半ば無理矢理に聞き出したところだ。

おかげで仕事以外でほとんど笑わなくなったみやの顔。みやの話をすると寂しそうなももの顔。
2人共好きだけど、やっぱり私はそういう2人のままならどっちもあんまり好きじゃないんだよね。

「さっきも言ったじゃん。……終った事だから。もう良いんだって。……忘れてって言われたし」
「は?忘れて?なに、ももが振ったんじゃないの?」
「違うよ、……そんな訳無いもん。ももは別れたいなんて思ってない」

じゃあ何で別れるんだよ。あれだけ引っ張っておいてやっとくっついたくせに。
何が佐紀ちゃんは一番の理解者だ。
みやはともかく、こももちゃんの事なんて話こうやって直接聞き出すまで全然分かんなかったっての。
後輩たちにつきっきりになってしまって小さな相談にもすぐ乗ってあげられなかった自分を悔やんだ。

「ったく。なんでそうなるかなぁ……」
「知らないよ、突然過ぎて訳分かんないのはこっちの方だし」

ボロボロ泣いてたみやの声と姿が頭から離れなくて、つい口から出てしまう。
こうやってみやの事で泣きそうになっても不貞腐れて我慢するももを見るのは久しぶりだ。

「昔みたいなただの喧嘩なら、まだ良かったんだけど。今度のは、そうじゃなかった、から」
「どういう事?」
「みやに、拒絶されて。みやの事が分かんなくなって。……はじめて、全然目を合わせてくれなかった」

244名無し募集中。。。2018/11/27(火) 14:05:26.310

ポツリ、とつぶやいたきり、私から視線を外して窓の外を眺め出してしまった。現実を見ているようで見ていない。
心に穴が開いたままの悲しい顔してるくせにこのまま言われた通りにする気なのか。
子供みたいに泣いたり頼ってくれればこっちとしても分かりやすくて良いのに。

冷めかけた一口目のカフェラテは見た目通りフワフワとはしてたけどまるで味がしなかった。

「だって、桃子さんは子供が欲しいって言うから別れたって聞いたよ?」

みやとこのまま付き合うって事は子供がいないままだし、ももはみやじゃ駄目なんだって事だから、って。
それはキッカケに過ぎなくても、みやの中では重要な事だったんだろう。

「みやが誘っても全然ももが触ってくれないし、って。ももは好きじゃなくなったんだって」
「ちょ、ちょっと、待って佐紀ちゃん。それ……みやに聞いたの?」
「他に誰が居るってのよ」
「あー……うん。そうだよね」

半分は本当だけど、半分は嘘。正確には、ももはみやを好きじゃなくなったんだってみやは言っていた。
だけど原因にも心当たりがあるからなのか初めて動揺を見せてくれた。
ももの顔が白くてこのままだとどこかへ消えてしまいそうだ。
この賭けがお節介な事は百も承知だけど、当事者じゃない私から見たら失敗する気はしない。

だって私はいつまで経っても彼女達のお姉さんなんだもの。
イタズラしたりふざけたり、オシャレして笑って歌って、キラキラしてるいつものみやじゃないと嫌だ。
澄ました顔で気持ちを押し込んだままでいるももより構ってオーラ出しまくってるももじゃないと嫌だ。
片想いのままで良かったなんて友達のままで良かったなんて悲しい台詞を何度も聞きたいわけじゃない。

待たせてたもももももだし、珍しく待ってたみやもみやだけど幸せになれるなら良いかって思ってたのに。
色々あってもやっぱり大好きだし信頼している2人にも心の底から笑ってて欲しい。

245名無し募集中。。。2018/11/27(火) 14:11:29.500

「それで?ももはみやが好きなのに別れたの?」
「さっきから、そう言ってるじゃん」
「うーん」
「みやが悪いから別れてって、みやとの事は忘れてって。
 でも嫌いになったわけじゃないとか意味わかんない事言ってくるし。
 嫌いじゃないんならヤダとか言ってもこれ以上は無理なの、ってそれ以外の事は言ってくれなかった」

そっか。みやが自分の気持ちにも嘘をついたって事ね。
構って欲しくてすぐバレるような可愛い嘘をつく癖は昔からだったけど、
これは桃子さんもみや自身も、そして私も。皆が傷ついてしまうイケナイ嘘だ。

「話し戻すけど。みやから別れ話切り出されたって事だよね?」
「……うん。いつも通りみやのお家に遊びに行って、多分、いつも通りだったのに帰る時間になって。
 突然だったから、驚き過ぎて呼吸が苦しくなって、何が駄目だったのか急にみやの事が訳分かんなくなって」
「もも」
「みやのこと分かってた気でいただけだったのかなって、突き放された気がして」

ももの隣に移動してそっと抱きしめた。
普段だったらこんなこと絶対しないけど。、なんだかそうしなきゃいけない気がした。
こんなももは他の誰にも、……みやにも見せてはいけない。
握りしめて真っ白になってる手を解いてこっちを向かせる。

247名無し募集中。。。2018/11/27(火) 14:20:00.400

「最後にみやと何を話したのか、どうやって帰って、いつ寝たのか正直ハッキリと覚えてなくて」
「そっか、……苦しかったね」
「でも、別れてなんて言ってない」
「うん」
「思ってもないんだよ。そんなの」
「うん」
「……うーー」
「よしよし」

やっと泣いた。ももの悲しみを全部吐き出して少しでも楽になれば良い。
グズグズと私の服にしがみついたままの小さな背中を擦って、暫く落ち着くのを待つ。
本当に、おバカなんだからこの子達は。

「……子供も、さー」
「んー?」
「みやとの子供欲しいなーって、……実際は無理なんだけど。妄想してつい言っちゃってただけなの」
「うん」
「2人共昔から子供好きじゃない?それになんたってもぉとみやの子供だよ?もー、絶対可愛いし良い子だって」
「……んっ?」
「なんで佐紀ちゃんまでみやみたいに変な顔してんの。……でももう言えなくなっちゃった。
 ……やっぱりそういうの、妄想でも、重たくてみやは嫌だったのかな」
「ちょ、ちょっと。待ってもも。みやとの、って。みやともものってちゃんと言ってた?」
「えー?だって2人だけの時しか言ってないのに?」
「思い出してちゃんと。多分それ、簡単な事だけど大事な事だわ」

265名無し募集中。。。2018/11/27(火) 23:43:31.040

私に言ったように言っていたとしたら、問題は違う所なのかもしれない。
固まったももの肩を掴んで思い出すのを待つ間、少し計画を変更することにした。

「……みやには、子供欲しいなってしか言ってない、はず。これが簡単な事なの?」
「そう、ももにとってはね。でもみやにとっては大事な事。まあ、あとは自分で考えてよ」

そう言いながら頭を撫でる。ももの事甘やかすのは一体何年振りなんだろう。
ももは賢いから大丈夫って信じてるんだから今度こそしっかりして欲しい。
全部教えてしまったらももの意志じゃなくなるだろうから、私がヒントを与えるのはここまでだ。

「……佐紀ちゃん」
「なに?」
「みやは、私の事もう嫌いになっちゃったのかな。」

そんな訳無いじゃない。だったらももの事であんなに長い事悩んだり泣いたりしてない。
ももが居ないせいで笑う事を忘れたかのような、綺麗なだけの抜け殻になんてなってない。
相手の事が好き過ぎて想うあまりに別れた、なんてバカな話。みやじゃなきゃ納得できない所だし。

「それは、私にじゃなくて。直接訊かなきゃ。
 ももだって言わなきゃいけない事とか、しなきゃいけない事があるでしょ?」
「……うん、分かってる」

でもまだその勇気は出ない、か。
みやをどれだけ好きで、ショックだったかなんて事はももにしか分からない事だ。
別れたと知った時の私の何倍も、何十倍も。それ以上だったとは思うけれど。
それこそ千奈美や舞美が聞いたらみやの事一回ぶっ飛ばしに行ってくるとか言いかねない所だ。

267名無し募集中。。。2018/11/27(火) 23:54:54.400

「…仕方ないなー。じゃあ私からお願いって言うか、ももさんへの宿題があるんだけど」
「えっ?」

ももの口がへの字になってる。そりゃそうか、初めて付き合って初めて振られたんだから。
ちゃんと話せば大丈夫って言ってあげたいけど、出てくる言葉はももへのお願い。

「なっちゃんが仕事以外で心の底から笑わなくなった。絶対もものせいだから、早い所どうにかして」
「ど、どうにかって」
「ったく。もも、……自分から好きって愛してるって気持ちちゃんと行動で伝えてた?
 キスしたってのは聞いたけど、そっから先は?普段あんだけくっついててまさかなんも無かった訳無いでしょ?」

正直嫌な予感はしてた。雅ちゃんだし大丈夫って油断してた部分は確かにあった。
でも相手は鈍感と頑固と根性と真面目が服を着て歩いてるようなももだ。
何でももが良いのって聞いたらももだから良いのって返って来た日が懐かしい。

「好きとかはたまに言ってたけど、けど。キスもそんなに……最近してないかも」
「えっ。マジで?……一回も?ももからキスした事は?え。無いの?子供欲しいとか言ってたくせに?」

おいおい、嘘だろ桃子さん。あんなにイチャついてたのに。
それなのにエッチもしてない好きもキスもそんなにしてくれない相手がそんな事言ってたらそりゃ勘違いするわ。
今度はこっちが固まる番だった。

「だって、そんな、恥ずかしくって。ももからキスとか、してみようって頑張っても、
 ……みやの顔見てると好き過ぎて一杯で、ほっぺだけでももう無理ってなっちゃうのに」
「はあぁ?」

待て待て、メンバー同士でふざけてほっぺにチュー位とかだってみやに限らずしてたでしょうに。
自覚してない時は出来てたくせに自覚しちゃうとまるでダメとか本当なんなの。

「それに、ももは無理しなくて良いよって、みやが言うから、その。そのまま、一年経ったっていうか」
「……マジで。あんた一体今何歳だと思ってるんだよこももちゃん……」

268名無し募集中。。。2018/11/27(火) 23:57:17.180

なんて言うかもう聞いてるだけでキス以上手出し出来てなかったみやが可哀想になってきた。
子供欲しいなーなんて言ってる位だから、そういうのはとっくに済ませたんだと思って今迄聞いてたのに。
ももの照れとか気にしないでやっちゃえば良いんじゃないって半年前にも言ってたのに駄目だったとは。
優し過ぎるみやの方も問題だけど、やっぱりこの大人は一回位怒んないとダメか。

「いくら優しいみやでも待たせた上にそんなに我慢させてたら不安になるの!言ってくれなきゃ勘違いするの!
 もー、あんだけ長く恋愛してたくせに、別れても、まーだ分かんないかな、このおバカ達は!」

バシッ。年だけは大人になってるくせに変に堅物過ぎる背中をブッ叩いた。
アイドルにこだわり続けた弊害なんてものはももから早く出てっちゃえば良いんだ。

「いったーー……佐紀ちゃん痛いよ」
「ももアタックよりは痛くない!」

全く、こっちは何回されてきたと思ってんだ。それくらい我慢しな。

「……頼むよ。今のみやを元気にさせるの、ももにしか出来ないんだから。
 ちゃんと信じて、笑わせてあげてよ、みやの事。大好きなんでしょ?愛してんでしょ?」
「佐紀ちゃん……」
「どうなの?みやの事、好き?」
「うん」
「抱き締めたいんでしょ?」
「うん」
「ならそうすれば良い」
「でも」
「恋ってさ、お互いに待ってるだけじゃ駄目なんだよ。ももだってみやだって、そう」
「……」

ももの目がまだ不安げに揺れてる。
頭では理解してくれたと思うけど、結局私では駄目なんだろう。

272名無し募集中。。。2018/11/28(水) 00:06:41.920

「他の人だったら絶対阻止するけど。ももだから任せるんだからね!分かった?」
「でも今更、もう会えないよ。忘れてって言われたのに」

みやの言う事を素直に聞こうとするのはそれはそれで、正しいかもしれない。
でもそれは。みやがももにそうして欲しいって思った事だけど、そうじゃない。

「……そんなこと無いでしょ。みやだって忘れるなんて出来ないくせに、ももの前だから強がっただけだよ。
 ああ、もう!みやの事はこの際どうでもいい。私を、キャプテンの事信じて覚悟決めて行ってこいって」

何の覚悟か、なんて教えなくてももう分かってくれたと信じてるけど、
無言の返事と彷徨う目線にまだ自信なさそうな所を見るともう一押しだろうか。

「だったらこのまま。悲劇のヒロインのままでいて、いつかみやが他人の恋人になっちゃってても良いの?
 他人ならまだマシかな?じゃあ……ももがこのままで良いってのなら、私がみやの事貰っちゃうよ?」
「えっ」
「そんで、毎日ももに自慢してあげる」
「……やだ」
「でしょ?」

私もそんな事したくない。

「まあ、もしもみやがこの先も、ももとは終わった事だって言い張り続けて聞かないって言うんなら、
 この目の前に居る超面倒な桃子さんと、祝!完全失恋!の慰めついでになし崩しに付き合ったって良いとも思ってるし」
「へ?ちょっと、佐紀ちゃん?」
「そういうレベルなの。私の君達への愛情は。どっちとかなく普通に付き合えるから」

もうちょっとからかってやろうかな、そうでもしないとももは思い切って行けない。

肩を抱いてももの耳元でそっと囁く。
こんな所みやに見られたら、ももに触るなって怒りそうだからそれはそれで良いんだけど。

「まあ、もしそうなったとしたら私は雅ちゃん程優しくないけどね?」
「っ」

あ、固まった。
この際だ。恥ずかしがってるももの方も少し壊してあげれば良い。

274名無し募集中。。。2018/11/28(水) 00:14:44.110

「なんならその日のうちに押し倒してあげるから。……ま、全部冗談だけど。そうなんないように頑張ってよ」
「うわ、びっくりしたー……佐紀ちゃんのけだものー」
「うっさいわ。この人じゃなきゃ駄目だと分かってるのに許さないのはもはや罪なの。自覚なさい」
「……佐紀ちゃん」
「別に欲望だらけのけだものでも良いんじゃないの。本当に好きなら。恋人なら全部見せれるでしょ」
「え」
「私じゃなくて、みやに」

あらま。何考えたのか真っ赤になっちゃった。……まあ、真っ白よりは良いか。

「まったく。未練だらけのくせに。
 ……ももはみやじゃなきゃ駄目だって、ちゃんと分ってるから。だから冗談も言えるの」
「そっか」

だから本当に冗談で済ませてよ2人とも。
そんな最終手段は私も切らずに済ませたいんだからさ。
ももがちょっとだけ笑った。それだけで良いやって思う位で私は良い。

「うん、その顔」
「え?」
「まだもう少し足りないけど、いつものももになって来た。そっちの方が良いよ」

私としてはいつも通りにみやの事が好きなももが好きだし、ももの事が好きなみやが好き。
きっと他の皆だってそうだし、それで良いんだから。

282名無し募集中。。。2018/11/28(水) 00:40:27.270

「で?なんかないの?みやに直接会いに行かないとダメな口実とか。まあ結局何でも良いんだろうけど」
「うーん……そう言われてもなぁ」
「みやから何か借りてたとか、ももの私物置き忘れてたとかさ」

仲直りするか、大失敗なのかそれはまだ私には分からない。
行かなくちゃ始まらないんだし、何かキッカケが欲しい所だ。

「あ」
「おっ?何か思い出した?」
「うん、うんうん、思い出した!」
「分かった、分かったから離して」

掴まれてブンブンと振られた左腕が痛い。
思い出せて興奮したのは良いけど相変わらずの馬鹿力なんだから。

「CD、みやに借りてたのがあるの」
「んっ?うん」
「ももの誕生日に、聞いてみてって」

なんだよ、みやの事になると優しい顔、出来るようになったじゃない。

「みやのグループの?」
「それとはまた違うんだけど。でも凄く、好きな曲で。まるでみやみたいって思ってて」
「うん」
「でもあの時、CDもだけど。……みやとの思い出も全部捨ててって言われた」
「あの時?」
「最後に、扉閉められた時」
「ふむ」
「でも、捨てられる訳無くて、そのままになってる」

287名無し募集中。。。2018/11/28(水) 00:52:36.560

まあ、ももが簡単に捨てられる訳無いのは以前のみやなら分かってたはずだ。
だとしたら。やっぱりみやを元に戻すのはももにしか出来ない事だ。

「…それがももの答えなんじゃないの」
「え?」
「もも。みやのところ、明日行っておいでよ」
「明日?でも、仕事とかあるしみやだって」
「終ってからすぐ行って、居なかったら待ってれば良いじゃん。それに、こういうのは早い方が良いの!ね?」
「うん?……分かった」

明日の夜はみやと遊ぶ予定を入れてたから、既にみやがオフなのは分かってるし。
今思うと私がももの気持ちを前もって確かめたかっただけなのかもしれない。
これでももが行かなかったら。みやにも同じ様にするつもりではあるけど、この分なら多分もう大丈夫。
もしも、万が一駄目だったらみやの事は慰めて喜んで引き取るつもりだし。
そんな事は言ってあげないけどね。

「まあもし突撃してみても駄目だったら今度こそ桃子さんの完全失恋パーティを後でしてあげるから!」
「ちょ、ちょっと!縁起でもない」
「だから、そうならないように頑張ってよ。みやの事はぜーんぶ、ももへの宿題」

私の顔を見ると瞬きを何回かして笑ってくれた。
100点の答案で帰ってくるって信じてるからねもも。

「ね?」
「なんか。ごめんね、佐紀ちゃん。もも達、心配かけてばっかりで」
「そうじゃないでしょ。今更遠慮しないで良いんだし」
「ありがと」
「ん」

294名無し募集中。。。2018/11/28(水) 01:09:02.940

ぐいぐい。ももが左腕に引っ付いてくる。
あー、懐かれた。だから苦手なんだよ。
こうなると暫く離れないし仕方ないから好きにさせとくかな。

「佐紀ちゃーん」
「なーに」
「佐紀ちゃーん」
「んー。重いかな」
「大好き」
「はーい。どうもありがとう」
「へへへー」
「うざ」
「ひどーい。さっきまでももの事口説いてたくせに」
「冗談だって言ったでしょ。やめてよ?他の皆に言うのとか」
「どーしよっかなー」
「ちょっと、もも」
「……言わないよ。分かってるって。お姉さんズだけの秘密、でしょ?」

やれやれ。
そういうちょっとズルイ所は結構好きなんだけどねぇ。

「まったく。ほら、そろそろ離れてよ。話してたらお腹空いちゃったし。今度こそなんか食べよ?」
「ほーい」
「お。良かった。今度はちゃんと食べられそう?」

メニューをももに向けて広げる。
パンケーキ位なら奢ってやろう、って言ったらそれで!って言ういつものももが帰って来た。

「佐紀ちゃん。もも、宿題、頑張るからね」
「そっか。それはマジで期待してる」
「舞台も出来たらこっそり見に行くね」
「ん。そっちはあんまり期待してないから安心して」
「もー、ひどーい」
「ふふふ。まあでも……ありがと、もも」

いつかで良いから2人で遊びに来てよ、折角だからさ。
そんな日が来るの私は楽しみにしてるよ。
私からみやへの宿題、次に会う時はそう言おう。