雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - 黒い猫、白い猫(クリスマス編)
163名無し募集中。。。2018/12/25(火) 02:09:12.560

目の前の光景に頭が真っ白になった。
半分開いたドアの先、ニャアニャア鳴く二匹をどれくらい見続けたのだろう。
二匹に気付かれることもなく餌皿を持ったまま呆然と立ち尽くした。
この部屋には入れないよう努力した日々は水の泡。
柵をしっかり閉めていなかった自分の行動を後悔してももう遅い。
人間、衝撃が強すぎると何の反応もできなくなるんだなとどうでもいいことに思考を飛ばしだし現実逃避。
でもそれは長く続かず部屋の中、一層激しくなった鳴き声に現実逃避は中断させられる。
若干悲痛な色を帯びたその鳴き声に餌皿をそっと床に置き部屋の中へと足を踏み入れた。

「あー…」

廊下から見えた状態よりも格段に悪い状態に気の抜けた声しか出ない。
ピンク色の中に埋もれる白と黒。
カゴに入れていた毛糸玉までいつの間にか落下してごちゃごちゃに絡まっていた。
さっきまでは編みかけのものを引っ張り合っていただけに見えたのに実際はそれにつながっていた毛糸や新たに落ちた毛糸を巻き込んでの大惨事。
その毛糸の中で足掻く二匹を落ち着かせようと手を伸ばすも威嚇される。
一旦諦めて遠くの方からほどこうと手にするものの毛糸がわれていくだけ。
少しも解けないうちに自分には無理だとわかってしまう。
二匹の足元から胴にかけて被さっている編みかけのそれはもう完全にボロ雑巾と化していた。
白と黒の毛にまみれごちゃごちゃになったそれは完全に修復不能に思える。
一つ深呼吸をして気持ちを切り替え、ハサミを手にした。
断腸の思いで毛糸にハサミを入れる。
目の前に落ちた毛糸を見て完全に諦めがつき、無心で次の絡まりをハサミで切り落としていく。
ただシャキシャキという音だけが室内に響く。
二匹も何か感じたのか大人しくしていてくれたおかげで思ったよりも手間取らずに処理できた。
一先ず切り刻まれた毛糸を袋にまとめ端に避けると、廊下から餌皿を持って部屋に戻る。
二匹よりも少し離れた所に餌皿を置くと目論見通りボロ雑巾と化したそれから退いてくれた。
ここ最近からしたら考えられないほど大人しく餌を食べる二匹を尻目にボロ雑巾と化したそれを拾い上げるとため息が一つこぼれた。

164名無し募集中。。。2018/12/25(火) 02:11:43.680

きっかけは病院の待合室で見るともなしに眺めていたテレビ番組。
いとも簡単そうに出来上がっていくマフラーになんとなく面白そうだなと好奇心を刺激され、見続けているうちに何故かできそうと妙な確信を持ってしまった。
その勢いのまま帰り道に手芸店に寄り一式買ってその日のうちに躓いた。
まず作り目が上手くいかない。
やめようかと思ったけれど投じた金額がもったいなくて無理だった。
どうにか立ち上がりは作れても次に出てくるよくわからない記号に大苦戦。
結局、一日目は少しも進まないうちに終わってしまった。
二日目、予防接種に連れて行ったせいかまるで拾ってきた当初のような反応の二匹に手を焼き何も進まず。
翌日もまた近づけば威嚇され餌だけねだられ他は無視。
そんな二匹に翻弄される日が続きながらもどうにか投げ出さずそれらしく編めるようになったのはしばらく経ってから。
編み図がわかるようになってあまり詰まることなくスイスイと進めるようになりセンスあるかもなんて調子に乗っていたのがまずかった。
毛糸を使い切ってできたそれは編み目の数と力加減のミスでガタガタだった。
確認を怠った結果の長さだけはしっかり長いよくわからない代物。
それでも解いて編み直すのはなんだかもったいない気がして再び毛糸を購入したのが二週間前。
今度は何度も編み直しながら丁寧に編み進めてそれなりに綺麗な状態でできていた。
クリスマスには出来上がりそうなそれにプレゼントにしちゃえなんて思っていたのに。
段の途中までほどけ、あちこち爪に引っ掛けたらしくほつれ、白い毛と黒い毛が至る所に絡まったそれはもう到底プレゼントにならない。
意気消沈しながらさっき集めた毛糸の細切れと一緒にゴミ箱に放り込む。
椅子に座りぼうっとしていたら足元に久しぶりの感触がやってきた。
スルッと足元にまとわりつき体を擦り付けるみや。
それに気を取られていたらなんとも表現できない音が部屋に響く。
何事かと見回すとゴミ箱に埋まっているもも。
慌ててゴミ箱から出すと抗議するかのように鳴き再度、ゴミ箱に頭を突っ込みマフラーの残骸をひっぱり出した。

「欲しいの?」

つい願望混じりに問いかけた声に肯定するように鳴くもも。
それならばと糸始末だけしてしまい与えるとまた二匹で引っ張りあい遊びだした。
まあゴミになるよりましかと落ち込んでいた気分が少し浮上する。

165名無し募集中。。。2018/12/25(火) 02:13:26.340

遊ぶ二匹を眺めながらクリスマスプレゼントをどうするか悩む。
目に入るピンクの塊。
それを手に取り広げてみてやっぱりないなと確信する。
出していたラッピングの袋の横にその最初に作ったマフラーもどきを投げて考え直す。
いくら考えても今から作れるものはない。
諦めて餌皿を回収して部屋から出るとインターホンが鳴った。
モニターを確認するとそこには雅がいて首をかしげる。
約束の時間はまだ先のはずなのに。
戸惑っているうちに合鍵で入ってくる雅に慌てる。

「あっもも起きてんじゃん。そこにいるなら開けてよ」
「いやいやみや早くない?」
「時間通りだけど?」

雅に見せられたスマホは確かに約束の時間。
いつの間にそんなに時間が経っていたのか。
愕然としている間にももちゃん達の様子見せてねと奥に入って行く雅。
掃除ができなかったせいか雅のくしゃみが聞こえてきた。
大急ぎで仕舞ってあった掃除機を引っ張り出し部屋に戻る。
一歩部屋に踏み入れた途端に後でいいからと掃除機を奪われ雅によって不恰好なマフラーが二人に巻かれた。

「えっ!?」
「こうしたらお揃いじゃない?」

なんて言って笑う雅が指す先には引っ張りあった結果かマフラーに巻かれてる状態の二匹。
見ようによってはカップル巻きに見えなくもない。
二匹ともコケたような状態につい笑いがもれる。
そうだと急にスマホを取り出し写真撮ろうと二匹と一緒に写るために屈む雅に引っ張られる。
撮るよと雅がシャッターを押そうとした瞬間、またくしゃみを一つ。
遅れて聞こえたシャッター音。
画面には二匹と同じような構図になった私達が写っていた。
これはこれでいいかもとどこか満足気な雅。
立ち上がる雅にまた引っ張られるように立ち上がる。
それがなんだかおかしくて二人で笑い合った。

「あっ」
「何?」
「そういえばこれもらっていいんだよね」

不恰好なマフラーを指してそう言う雅に首肯した。