雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - 迷いの森のミヤビ 5
488名無し募集中。。。2018/03/07(水) 20:57:34.350

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「じゃあ一つずつ答えていくね。村からいなくなった理由は、私達にもよくわからないの」
サキは申し訳なさそうに答えた。

 
「状況は十分知ってると思うけど、かくれんぼでマイハが鬼になって、ウチらは隠れようとしてたんだ」

するといきなり風が吹き、それに飲み込まれるような感じで飛ばされてしまったのだとマーサは不思議そうに語った。

「ウチらも何回も戻ろうとしたんだよ。でもどれだけ歩いても辿り着かないんだよね、道は一本しかないのに」
「『迷いの森に入ったら二度と出られない』って話は本当なの」
チナミとユリナは申し訳なさそうに告げた。

「だから……ミヤがどこまで覚悟してここに来てくれたかわからないけど、村に帰してあげることも、一緒に戻ることもできないの。ごめんね」
「リサコが謝ることじゃない。戻れないこともミヤは覚悟はして来た。最悪、みんなに会える前に死んじゃう可能性も含めて」

家族にも別れを告げずに村を出てきたのだ。今更やっぱり戻りたいだなんて思うはずがなかった。

 
「ずっとひとりぼっちにさせてごめんね。また会えてよかった。無事でよかったよ」
サキの目は潤んでいた。そんなサキの肩を優しく抱き寄せるマーサの母のような温かさも、昔と変わらない。


「一緒に暮らそうよ!ここでさぁ、前みたいにみんなで!」
チナミは屈託のない笑顔で言った。明るく振る舞うことでミヤビを安心させようとしてくれているのだと感じた。

「暮らしたい。みんなと一緒にいたい」

それは紛れもなく本心だった。
もう引き戻ることができないからと妥協しているのではない。
失われた時間を取り戻すわけではないが、また以前のように一緒に暮らせるのなら本望だ。

490名無し募集中。。。2018/03/07(水) 21:02:31.790

・・・

「そういえば、ウチらがここに来てからのこと話してなかったよね」

マーサはこの森に来てからの生活を話し始めた。

「ここに初めて来た時は別の人達が住んでたんだ」
「先住民ってこと?」
「まぁそんな感じ。“エルダー”って呼ばれてたんだけど、その人達もここに家を建てて暮らしてたの」

マーサは壁に掛けられた写真を見つめていた。
今の丸太小屋の前は煉瓦造りの立派な家が建っていたそうで、その家の前で幼い6人が大人の女性たちと一緒に並んで写っている。

 
「エルダーの人の多くは畑で豆を栽培してたんだ。その豆からコーヒーって飲み物を作ってそれを売って生活してたの。他には養蜂とかね。ここに花が多いのはその名残なんだ」
「売るって……誰に? 他にこの森に住んでる人がいるってこと?」
「森の向こう、村とは逆側に別の世界があってそこに輸出してるの。この森にはウチら以外住んでないよ」
動物とかはいるけど、とユリナは付け足した。
その世界には、村では空想上の生き物とされているものが多数住み着いていて、ユリナが連れていた天馬はその世界からの贈答品らしい。

「私達もここに来てすぐは畑のお手入れとか豆を挽くのを手伝ってたの。でも2、3年経ったら『あとはよろしく』ってここを去ってしまって」

サキは一番年上ということで6人のまとめ役としてエルダーの人から森を任されたらしい。
その後6人は正式に森を引き継ぎ、建物も一度全て取り壊し、畑も一から耕したという。

 
「みんなは何を売ってるの?」
「果実をジャムにして売ってるの」
リサコは壁際に立つ大きな棚にずらりと並べられた空の瓶を見つめた。
「じゃむ?」
「果実を砂糖に漬けて煮詰めると保存食になるんだよ。そこの棚にある瓶に詰めて売ってるんだ」
そう言うとマーサは昨日詰めたばかりというジャムを味見させてくれた。瓶の中には艶々と輝く真っ赤な苺のジャムが入っていた。
「結構甘いんだ。あっ…ジャムを作ってるから台所が大きいのか」
「そういうこと!さすがミヤ」
チナミはミヤビの肩を小突いた。
 

なぜ果実を選んだのかと問えば、エルダーの人達が幼い6人を「まるで果実のよう」と譬えたからだと言っていた。そして、生では日持ちがしないので長く楽しんでもらえるように、とジャムとして売り出すことになったという。

「さっきユリナがここから村の様子がわかるって言ったでしょ。それもエルダーの人が教えてくれたんだ」
森の中の湖畔に大きな鏡があり、その前に立つと強く想う者の姿が見えるのだとサキが説明してくれた。

マイハが「みんなの声が聞こえた」と言ったのは、鏡の前からマイハの名前を呼んだためだろうとマーサは言っていた。
通常、声が届くことも聞こえることもないそうだが、想いの強さがマイハに声を届けたのではないか、というのがみんなの見解だ。
しかし、その後の村でのマイハの様子や状況を知り心を痛めた6人は、むやみな行動を慎むようになったのだという。

492名無し募集中。。。2018/03/07(水) 21:06:58.740

「そっか。マイハはやっぱり嘘なんてついてなかったんだね。良かった……いつかマイハに教えてあげたいな」
そうだね、と相槌を打ったユリナはどこか寂しげだった。

 
「ねぇ。鏡の前にいれば四六時中、村の様子とかがわかるの?」
「時間帯が決まってて……季節によって変わるの。春はあけぼの?…とかなんかあるでしょ」
「何それ。知らない」
リサコが何のことを言っているのかミヤビにはピンと来なかったが、枕草子というものを倣った仕掛けになっているらしい。

「お仕事もあるから頻繁には無理だけど、ウチらも行ける時は行ってるんだよ。村のみんなのこと知れるのあそこだけだしね。でもどんなに忙しくても毎日湖まで行く真面目な人もいるのよねぇ」
チナミは意味ありげにニヤついていた。誰のこと?と聞くと、すっとぼけた顔をした。

「もしかして、モモ?」
誰も返事をしなかった。その代わりに、リサコは髪の毛を指にくるくると巻きつけた。

「ねぇ。なんで今日モモだけいないの」
困ったように目を合わせたあと、サキが観念したように口を開いた。
「モモは家の中にいるよ。ミヤが来てることも知ってる」
「だってミヤがここに来るって情報仕入れてきたの、モモだかんね」
チナミはややぶっきらぼうに言った。

「あ、そうなんだ……」

それを聞いてミヤビは胸が熱くなるのを感じた。
モモコとミヤビの関係は一言でいえば複雑であった。
仲が良いのか悪いのかわからなくなるほど、近づいたり離れたりを繰り返していた。

例えば、性格は真逆で、ミヤビは朝から晩までずっと遊んでいたいと思うが、モモコはそうではない。
遊びに誘っても、「今日はお家で本を読みたい」と断られることがしばしばあった。また、お互い子供だったので、それが原因で喧嘩になることも珍しくはなかった。
 

あの日──6人が森へ消えたあの日も、ミヤビとモモコは喧嘩をしていたのだ。今思えば、本当にくだらない理由で。

あの時素直にマーサの誘いに乗って遊んでいればみんなと一緒に森に行くことができたのに、と何度思ったかわからない。
どうしてすぐに「ごめんね」と一言伝えられなかったのだろうと後悔していただけに、チナミの先ほどの発言は胸が躍るようだった。
単純にモモコが自分を気にかけてくれていたことが嬉しかった。