雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - 誘い言葉
501 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/11/05(土) 23:55:09.88 0
「あのさ……」
その話題がももから振られたのは突然のことだった。
「みやって好きな人いる?」
レッスン帰りの電車の中、隣の席からなんの前触れもなく重い質問がのしかかってきた。
口につけていたペットボトルの緑茶を吹き出しそうになる。
どんな面をして質問をしてくるのかと隣をのぞき込んでみると……スマホをいじっていて画面を見たまま。
「……べつに」
「へぇ」
ももはあまり興味なさそうにそう反応した。
話が途切れて、ももからはそれ以上のレスポンスはなく、数分経過した。
「急にディープな質問しておいて、それはないでしょ」
「なにが?」
ももはスマホの画面を見たまま両手で操作している。どうやらゲームをしているようだった。
「せめてこっちを見てよ」
「ん?」
ももがゲームを中断してこっちをのぞき込んでくる。
「なんで視線をそらすの、みや?」
「そ、そんなの勝手でしょ!」
「ふーん」
ももは視線を再びスマホに落とした。
503 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/11/05(土) 23:56:10.36 0
「……ねぇ」
今度はこちらから話しかけてみた。
「ももは好きな人いるの」
「いるよ」
またスマホに視線を落したまま、あまり興味なさそうに即答された。
「はぁ!? ちょっと、なにそれ!! 好きな人ってなに!? いるの!? もしかして付き合って――」
「あの」
ももが視線を前方にあげた。
「なに!!」
「声大きい」
帰宅ラッシュの時間帯、前に立っている学生さんやおじさんやお姉さんの視線が痛い。
慣れない咳ばらいをし、こちらもスマホに視線を落として何事もなかったように装う。
数分経って、ほとぼりがさめたであろう頃にももに話しかけた。
504 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/11/05(土) 23:56:59.97 0
「さっき言ってた好きな人って誰?」
「気になる?」
「どうでもいいけど」
「そっか」
「……」
ももをにらみつける。
こちらを気にすることもなくゲームを続けている。
ため息をつき、眠いわけではないけれど目を閉じた。
しばらくすると、あたしが降りる駅にまもなくつくアナウンスが流れる。
「そうだ、みや。本当にどうでもいいことだけど」
本当にどうでもいいことだったら話しかけるなと心で叫びながら、平静を装う。
「今日、うちに誰もいないんだ。両親は結婚記念日の旅行、弟は修学旅行で。
一人でうちにいると心細くて、誰かに来てもらいたくなるじゃない」
そして電車が止まり、ドアが開いた。
「みや、バイバイ」
「またね」
505 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/11/05(土) 23:58:29.81 0
◆
駅のホームでしばらく立ち尽くしたあと。
『ちょっと、みや。電車に乗ってるの知ってて電話かけてこないでよ』
「あ、あのさ。ちょうどうちも誰もいなくて。両親は結婚記念日の旅行で、弟は修学旅行で」
『あれ、弟君はもう学校卒業したんじゃ』
「細かいことはどうでもいいの! ほら、千奈美や真野ちゃんよりもあたしの方が家が近いからすぐにいけるじゃない」
『そうだけど……それがどうしたの? で、なんで千奈美と真野ちゃんの名前が出てくるの』
「例えば!! 二人はあくまでも例えばだから。それに、心細いのはどうでもいいけれど、泥棒が入ったら大変だし、だから、その……」
『ごめん。さっきのウ、ソ。 ゆるしてにゃ――』
スマホを耳からはなし、通話終了を押そうとした。
『でも、うちに来たければいまから来ても――』
親指の急ブレーキをかけてみたものの間に合わずに通話終了を勢いで押してしまった。
数秒思い悩んだ結果。
『……まだ電車に乗ってるんですけど』
(おわり)