雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ - Y
120 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/17(月) 02:36:48.11 0

「これから違う世界に生きるみやとは、きっともう一緒に居られない。」


そう言って別れ話を始めたのは、ももからだった。
6月30日のベリキューでの打ち上げ終わり。
二人きりの帰り道で、それは突然告げられた。
あまりにも急なことで、何を言っているのか全く頭に入って来なかった。

うちが芸能界に居ることと、ももが一般人に戻ること。
それと別れることがうちの頭ではイコールにはならなくて。
うちのこと嫌いになったなら、わかる。
他に好きな人が出来たのなら、わかる。

でも。

どんなに忙しくても毎朝おはようと毎晩おやすみなさいのLINEはしよって約束して。
会える時は極力会って。
夜更けまで愛を確かめ合う日もあれば、お互いの仕事を相談しあうこともあった。
昨日だって、うちはその胸に抱かれていたのに。

「何…言ってんの……?」

絞り出した言葉とともに何か温かいものが頬を伝うのを感じて、自分が泣いてることに気がついた。

うちのこと、嫌いになった?
他に好きな人ができた?

ボソボソと震える声で尋ねても、ももは首を振るばかり。

悪いところあったら言って、直すから。

まさか自分が言うとは思わなかった、どこかで聞いたことのあるような陳腐な台詞。
それにもももは首を振る。

「違うんだよ、みや。そうじゃない。」

「今までとは違うんだよ。これからは。
取り巻く環境も、生活スタイルも。
ももはみやの力になってあげられないし、みやの足手まといになる。」

一見優しい顔つき。
うちはこの顔が怖かった。
誰かを説き伏せるとき、時折見せる柔らかな表情。
しかしその時のももの意思は見た目とは裏腹に鋼のように硬く、絶対に曲がらなくて。
だからこそ、怖かった。

こんな時にそんな顔しないでよ。
そんなの気にならないよ、とか。
愛さえあれば乗り越えられるよ、とか。
どうせももの意思を動かすことなんて出来ない言葉が浮かんでは消えて。
何も言えなくなったうちにももはごめんね、と一言残し目の前を去った。

121 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/17(月) 02:37:46.84 0

それからは。

本格的になり始めた自身のグループの活動。
しばらくの間は余計な雑念を抱かないようにと一層仕事に熱を傾けていた。
それが功を奏したのか、確実に活動が軌道に乗りだした。
そんな中で聞いたどうやら大学院に行きはじめたらしいという、ももの噂。
噂とは凄まじいものであの黒髪を染めたらしいとか、
この前どっかの地方で発表したらしいとか嘘だか本当だかよくわからないことばかり。
それでも一つ一つにももの姿を重ねあわせては、それはないでしょと思ったり、だろうなと思ったりしていた。

ある日、ついに彼氏が出来たらしいと聞いた時には心臓を掴まれたような感覚に陥った。
騒ぐ胸音を落ち着かせるために、深呼吸を繰り返す。
真偽のわからない噂でも、生きる世界が違うっていうのは確かにこういうことなんだと実感させられた。

そう。
もう、生きる世界が違う。

いつしかそんな感覚にも慣れるくらいの時が流れていた。
どんな風の噂を聞いても、元気にしてるんだなとむしろ安心するくらいになった。
突然届いた結婚式の招待状にも、一呼吸置いてから開けられるくらいにはなっていた。

163 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/17(月) 14:56:59.51 0

ネイビーのドレスにシルバーのボレロ。
首元にパールのネックレス。
足元には黒のパンプス。
髪はもちろんアップにして。

式場にはBerryzの皆が既に座っていて、まさかももが一番乗りなんてねと談笑していた。
ていうか、うちら普通待ち合わせくらいしない?と茉麻が突っ込めば
相変わらず淡々とした自分たちの付き合いに懐かしささえ感じる。
めっちゃ太ってたりして、とふざける千奈美の声を最後に神父からの挨拶が始まった。

その後すぐに目の前に現れたのはあの日から抜け出したかのような、変わらないももの姿だった。
変わったのは、純白のドレスに身を包まれているということだけで。
もうきっと高まることはないと思っていた心臓が、再びバクバク動き出す。
周りがカメラや携帯を取り出し撮影し始める中、気づけばただただ突っ立ってももの姿を見つめていた。
式の最中、うちの頭の中であの日のことが何度も何度も繰り返される。


『今までとは違うんだよ。これからは。
取り巻く環境も、生活スタイルも。
ももはみやの力になってあげられないし、みやの足手まといになる。』


あの時は冷静になれなくて、わからなかったけど。
今ならわかってあげられるかもしれない。

ももと話したことがある。
いつかできれば子どもが欲しいねって。
女の子同士は今の科学技術じゃ無理だろうから未来の科学に期待しよって。
同じベッドの上で、同じ毛布に包まれながら囁いた戯言。

生きる世界が変わらなければ、戯言は戯言のままで変わらなかったかもしれない。
だけど、現実は違う。

生きる世界が違えば。

みやはももの力になってあげられないし、ももの足手まといになる。
好きとかそんな気持ちだけじゃ、どうしようもないものが確かにそこにあって。

164 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/17(月) 14:57:33.93 0

あの日からずっと探してたパズルのピースがぴたっと嵌った。

なんだ、そんなこと。

腑に落ちた途端、涙が止まらなくなった。
結局披露宴の会場に移動するまで、ずっと泣いていた。
みや泣きすぎだよと佐紀ちゃんに背中を擦られ、自分を取り戻す。
鼻を啜って、もう大丈夫って笑った。
披露宴が始まる頃にはメイク直しもバッチリ。
再び現れたももの花嫁姿に、素直に綺麗だと思える自分がいた。

各テーブルに挨拶に来る新郎新婦。
もちろんうちらのテーブルも例外じゃない。
テーブル一人一人に話しかけていくももが、うちの前に立ち止まる。

「もも、結婚おめでとう。」
「ありがとう…来てくれないかと思った。」
「何言ってんの。ちゃんと祝いに来るに決まってるじゃん。」
「ほんと、ありがと。」

にこりと笑ったその後一瞬。
見間違えじゃなければ。
聞き間違えじゃなければ。
黙り込んだうちを置いて去ったあの日と同じ目をして、聞こえるか聞こえないかの声でごめんねと言った。

ねぇ、どうしてそんな目で見つめたの。
どうして今、謝ったの。

うちより先に結婚したから?
それとも結局、男を選んだから?

見縊らないでほしい。
そんなことで謝らないで。

うちはももが大好きだったし、間違いなく今でも愛していて。
愛してるからこそ、ももの選択を責める気なんて起きなかった。
それはあの時も、今も。
ただ、その選択を変えられるほどの自分でなかったことだけが悔しかった。

165 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/17(月) 14:58:05.64 0

幸せになってね。
そうじゃなきゃ、張り合いがないじゃない。
みやと別れたこと後悔するくらい、良い女になってやるから。


生きる世界が違っても。
うちのことちゃんと見ててよ、もも。


その日着た衣装は全部捨てて。
次の日からはもう泣かなかった。