風変わりな(時に非日常的な)商品を販売する架空の通販会社『マイク・エンターテイメント・カンパニー』の共同創作サイトです。


価格: 8,941,031円  ※この商品は在庫切れです
出品者:元・超田共次

商品紹介

やあ、同僚・部下・上司諸君。
いや、「元」と付けるべきなのだろう。私の名前にもね。
私がこの通信文を送っている君達の時間的位置を計算に入れるならばだが。
組織は今――時制を君達に合わせて表現するなら――マイク・エンターテイメント・カンパニーという会社になっているようだね。
私を覚えているかい? 記録上は死亡扱いになっているんじゃないかな?
あれは2012年6月26日のことだった。次元異常現象の探査中、私は他の研究者たちの見ている前で肉体を分解された。
同僚達にはそのように見えていたはずだ。

もしそうなら訂正しておこう、死亡という表現は正しくない。
私は死者とは異なる存在だ。

君達と一緒に働いていた頃は、一般人が「幽霊」と呼んでいる存在を何体も捕獲したものだった。
まるでそれが我々の存在を防衛するための当然の権利であるかのように。
だが、生死の境目など……あの幽霊たちと、君ら生きている人間の違いなど、今の私からみれば無いも同然なのだ。
私はそんな微々たる差を遥かに超越した存在へと変換されたのだ。
思えば、その何の意味もない違いを大義名分に、私たちは大騒ぎしながら幽霊たちを捕獲したり排斥したりしていた。

100年前までの人類は肌の色を理由に、生者同士で排斥や捕獲を行っていた。
そして私自身も、ついこのあいだまで君達と一緒になって、死者たちに対して同じことをしていたのだ。
なんと愚劣で滑稽なことだったのだろう。

さて、私を今の状態にしたあの事故が、君達の技術的ミスによるものだとは分かっている。
人間であった頃の私から見てもごく低レベルな、単純な確認懈怠に過ぎなかった。
だが私は恨んではいない。今の状態もなかなか興味深いものでね。
むしろ君たちに面白いものを提供しようと思っている。
このプレゼントは君達の新しい事業の幅を広げてくれるはずだ。
だがせっかくだから、今の君達の流儀に従って提供することにしたい。

貨幣との交換だ。

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元・超田共次を名乗る者の出品商品落札の提案
                                        ――マイク社時空間異常研究エリア所長 T・S

「元・超田共次」のニックネームを用いたIDから出品申請のあった「次元間ベンダー」について、
当社偽装IDにて購入することを提案します。理由は以下の通りです。
                  記
1 出品者についての分析

 ・超田共次博士の失踪事情を出品者が知っているらしいことが文面から読み取れること。
 ・また商品価格が当時の超田博士の職員ナンバーと一致していること。

  以上2点の事実から、我々は「元・超田共次」が旧組織WMKTCOに在籍していた超田博士本人であるか、
 少なくとも深い関係がある可能性が十分に高いと判断しました。
  超田博士は時空間異常現象であるMKT-32の探査中に、その未知の作用により肉体が消滅、
 死亡したと考えられていました。ですが出品者の記述が真実であった場合、彼は通常の人間とは異なった
 何らかの状態に変換され、存在を維持していると考えられます。
  現在の超田博士がMKT-32を操作する能力を有しているのか、それとも内部に存在しているだけなのかは不明です。

2 アクセス手段解析
  サイトへのアクセス元を解析したところ、昨年行方不明になった○○××さん(17才女性 東京都)名義の
 スマートフォンであることが分かりました。○○さんの行方不明の原因は不明ですが、家出の動機や犯罪に遭遇した形跡もなく、
 また生前の超田博士との接点もありませんでした。おそらく彼女はMKT-32に取り込まれ、所持していたスマートフォンを
 博士に使用されているものと思われます。ただし彼女がMKT-32に取り込まれたこと自体は偶発的事故か、それとも超田博士の
 意思によるものかは、定かではありません。
  また、同IDに登録されたメールアドレスに対する超田博士へのメッセージ送信は、現時点では全て無視されています。

3 「元・超田共次」と名乗る存在が提示した金額はやや高額ですが、それを支払っても彼とコンタクトを試みる価値は十分と
 判断し、予算支出を申請します。
「次元間ベンダー」の落札結果について
                                                ――管理収集部IT課 Y・K

 標記について、以下のとおり報告します。
                            記
1 落札手続
  「元・超田共次」が当社通販サイトを用いてセールスした物品「次元間ベンダー」の落札手続きはサイト上、問題なく行われました。
 なお受取住所地は、商品が危険物であった場合を考え、当社不動産部門が所有する○○県山中の更地を指定しました。
 支払方法については超田博士との直接の接触機会になる可能性を期待し、代金引換を選択しました。
 サイトからは「商品は2・3日以内に配達されます」との通常の様式での購入受付メールが届きました。
  なお落札手続の終了直後、「次元間ベンダー」の商品ページは無事に削除されました。これにより、一般顧客からは「次元間ベンダー」
 はジョーク出品であったと自然に理解されることとなると考えられます。
2 商品受取状況
  管理収集部が警備部隊と共に待機していると、購入2日後に当たる○月×日午前11時32分、受取地に指定していた敷地のちょうど中心地に
 突如、直方体の物体が瞬間的に出現しました。我々が観察したところ、その物体は明らかに、一般的なコ○・コーラ社の飲料用自動販売機で
 一見して分かる数点の改造が加えられていました。

・電源接続用のプラグその他、動力供給用と考えられる部品がありませんでした。
・コイン投入口は塞がれ、丸い押ボタンになっていました。
・飲料の取出口には、様々な既知および未知の言語でびっしりと短文が書かれており、既知の言語はすべて「お金を入れて下さい」の意でした。
・後方は全体が一枚の扉になっているようで、金属製の取手がありました。
・通常は飲料を陳列されているショーウィンドウ部分は窓になっており、覗くと中にはおよそ1辺およそ3mほどの装飾のない部屋が見えました。
 自動販売機の内部に見えるにもかかわらず、自動販売機の容積よりも明らかに広大でした。
・部屋についてさらによく観察した結果、内部の床にA4サイズほどの文書のようなものが発見できました。

  我々はこの物体こそ当社が購入した「次元間ベンダー」であると判断し、回収しました。

3 性質確認試行
 次元間ベンダーの回収後、当所実験室にて以下の性質確認試行を行いました。

(1)試行:後方の扉を開けてみる。
   結果:不成功。鍵穴もしくは施錠をコントロールするような装置は全く見当たらず。破壊提案がなされたが尚早として却下しました。

(2)試行:コイン投入口の位置にある押ボタンをプッシュしました。
   結果:反応なし。

(3)試行:「お金を入れてください」と書いてある飲料取出口に、要求通り金銭(通常の自販機で飲料を購入する金額)
     を投入、再度押しボタンをプッシュ。
   結果:100円、110円、120円……と増額してみたが反応なし。

(4)試行:サイト記載の価格である8,941,031円を投入し、押ボタンをプッシュ。
   結果:数秒後、次元間ベンダー内部に視認されていた紙が、前方約1メートルの地点に瞬時に出現しました。同時に次元間ベンダー
     内部の部屋からは紙が消失していました。

(5)試行:(1)を再度試行。
   結果:後方扉は簡単に開扉され、当初予測された通り、前方ウィンドウから見えていた部屋に繋がっていました。
次元間ベンダーが「販売」した紙片の記述内容

やあ元同僚・元部下・元上司諸君。
このたびは「次元間ベンダー」をこころよく購入してくれてどうもありがとう。
さて、次元間ベンダーとは、異世界に対して商品を販売できる自動販売機だと思ってくれ。
次元間ベンダーは、多元宇宙のどこか――分かりやすく言えば「別の世界」にあるもう一つの、まったく同じ型の次元間ベンダーと連動している。
君達が持っているベンダーをベンダーα、異世界にあるベンダーをベンダーβとしよう。
ベンダーβは、様々な異世界の、様々な場所へ、常に転移し続けている。ベンダーαの方は君達のところから勝手に出て行ったりはしないから
安心してくれたまえ。
さて、まずは後方扉から中の部屋に、なにか商品を入れてくれたまえ。君達の売りたいもの何でも良い。扉を閉めた瞬間、異世界にあるベンダーにβの
内部にも、同じ商品が出現する。もし異世界の誰かがベンダーβを使ってその商品を購入したら、ベンダーα内からも商品は消失する。そしてその代わりに
金銭投入口――ジュースが出て来るところを改造した部分だよ――の中にその代金が出現する。
直後にベンダーβはまた別の異世界へと転移しているから、君達はまた好きな商品をベンダーαに入れて、買われるのを待てばいいのさ。

なに?
異世界の者にも自動販売機の使い方が分かるのか、だと?
良いところに気付いたね。ベンダーβは、自動販売機の概念がない世界でも使われるよう、その使用法の理解を促進するテレパシー波を放射している。
が、残念ながらこの対策は不完全だ。多元宇宙の様々な世界には、テレパシーが有効でない種族もかなり存在する。その場合は、ベンダーβがその使い方を
理解してもらえる世界に転移するまで待ってもらうしかない。

大体の使い方は分かっただろう。
それでは君達の新しい事業の成功を祈っているよ。

元・超田共次より。

時空間異常研究エリア所長T・S












管理収集部IT課 Y・K
……果たして今の超田博士を信頼していて良いのだろうか?
確かに人間だったころの彼は善良な研究者だった。我が社を恨んでいないというのも本当かもしれない。
だが、超田博士が最初に連絡を取ってきた通販ページの内容をもう一度よく考えてみるべきではないか?
彼はこう言っている――幽霊つまり死んだ人間も、生きた人間も大して変わりはないと。
……なら、彼は我々を殺すことを躊躇うような心性を、本当にまだ持っているんだろうか?

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