最終更新:ID:QuBeaMhWZA 2015年12月05日(土) 18:40:14履歴
・四人の工房主
四人の男性が机を囲みワインを味わっていた
「伝統は守らなければならない、そうだろう諸君」
頭頂部が禿げ上がった老人が呟く
「そうだなドニ、フランス随一のワイン工房の名に汚さない様にせねばな」
「うん?寝言は寝て言えよ、コンスタン、フランス一のワイン工房はウチだろ」
「はは、冗談が旨いなコランタン、ワインは糞不味いが冗談は一級品だ」
「上等だ、表出ろコンスタン」
小太りの壮年の男性二人が言い合いを始める
「オジェ工房さんとオジエ工房さん、もう良い歳なんですからそこまでにして下さいよ
オダン工房さんも何とか言って下さいよ」
若い男が二人を宥める
「け、エローの若造が抜かしおるわ」
「アンドレ君、エローの御当主、つまり君の父親は如何したのかね?彼を呼んだのだが・・・」
「親父は歳食ったので引退しました、今は俺が当主です」
「エマニュエルが隠居?時代は移り変わったなぁ・・・」
「時代は変わっても、伝統は守らなければならない、そうだろ諸君」
「・・・ドニよ、同じ事繰り返してなんだ?ボケたか?」
「そうでは無いよ、コンスタン、フランスの中でも有名なワイン工房の我々は今こそ団結せねばならない時が来たのだ」
「団結・・・ね」
「えーと・・・オダン工房さん、一体何の話ですか?」
「これだ」
ドニと呼ばれた老人が懐中電灯を机の上に出す
「・・・何だこりゃ?」
「コンスタンに同意するのは癪だがやっぱりボケたか?」
「違う、これはマイク・エンターテイメント・カンパニーが造り出した『伝統電灯』と言う物だ」
「まいく・えんたーていめんと・かんぱにー?」
「ああ、知ってます、この間変なワインを全日本ワイン品評会に出したっていう会社ですよね?」
「日本人にワインの何たるかが分かるわきゃあない、ドニよ、お前心配し過ぎだ」
ヘラヘラ笑うコランタン、しかしドニと呼ばれた老人の目は真剣そのものだ
「この電灯は照らした物を自然な時間経過の様な劣化、風化させる効果が有る」
「・・・・・・・・・・だから?」
「今日は良くコンスタンに同意する日だな、だから如何したんだよ」
「なるほど、つまりこう言いたいのですね?『この技術を応用すればワインの急速な熟成が出来るんじゃないか』と?」
「そうだ、そうなれば我々フランスのワイン工房が衰退する可能性が有る!!
我々の様な伝統有るフランスの中で上位のワイン工房は生き残るだろうが、小さなワイン工房は立ち消える!!
我々フランスの伝統が掻き消えてしまう!!」
ドニはそこまで言うと肩で息をし始めた
「だ、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だ、兎に角我々フランスのワイン工房は何とかせねばならないのだ!!」
「具体的な案は有るのかよ」
「抗議運動をしよう」
「何て?」
「我々の伝統を守る為にこの『伝統電灯』の発売中止を訴える抗議集会を開く!!」
「あー・・・俺はパスだ」
「コンスタンに同意したくないが俺もパス」
「な、何故だ!?」
「何故って、今日どの位手紙出した?」
「・・・何の話だ」
「とぼけんなよ、俺達三つの工房だけじゃないだろ?もっと大勢の工房に連絡した筈だ」
「・・・・・・・だから何だ」
「お前何で他の連中来てないか知らないのか?お前最近評判悪いぞ?」
「そうそう、聞いたぜ?外国人に高級ワインと偽って安物のワイン売って
『外国人風情がフランスの味が分からんとは恥を知れ!!』とか」
「何で伝統あるワインを外国人に呑ませなければならない!!」
「そういう客を選んでいるのが駄目なんだよ、帰るわ」
「俺も、じゃな」
コンスタンとコランタンが帰っていく
「・・・アンドレ君、君は如何思う?」
「・・・・・俺みたいな若造じゃ大した力になれませんよ・・・」
「・・・・・呑もうか」
「・・・はい」
老人と若者はワインを酌み交わした
・コンスタン・オジェのワイン造り
翌日フランスの有名なワイン工房であるオジェ工房に大量の懐中電灯が配達された
「あのー・・・コンスタンさん、何ですかこの大量の懐中電灯は?」
「これはな伝統電灯と言ってだな、照らした物を時間経過による劣化、風化させる効果が有る電灯なんだ」
コンスタンは自分のワイン工房の従業員ににこやかに話す
「はぁ・・・それでコレを如何するつもりで?」
「いやワイン造りに活かせると思ってな、これを使って上手く行けば
普通より早く熟成させる事が可能じゃないか、ってな」
「・・・大丈夫なんですか?」
「まぁ物は試しだよ、やって見よう」
コンスタンは机の上にワイングラスを置いてワインを注いで伝統電灯の光を当てた
「これ位で良いかな、じゃ頂きまーす・・・うん、旨くなってる!!」
コンスタンは満面の笑みで自身の成功を喜んだ
「本当ですか?」
「本当だとも!!飲んでみろ!!」
従業員にも先の手順を繰り返し飲ませてみた
「あ・・・本当だ美味しい・・・」
「な!!俺の言ったとおりだろ!!」
「でも、アレですよね、コレ樽の中で熟成させた方がもっと旨くなりますよね」
「そうだな、高級ワインなら環境が悪く無ければほっといても旨くなるが、やはり熟成した物を出して行きたいな!!」
「じゃあ如何言う風にやります?」
「ワインの樽の中に電気付けたまま突っ込め!!」
「いや懐中電灯壊れますよ!?」
「日本製だから大丈夫!!」
「ええー・・・・・」
10分後、そこには無残に故障した伝統電灯が!!
「・・・うーむ・・・照らした所にしか効果無いからな・・・若干ムラになりそうだが仕方ない
上から照らす様にやるか、あ、そうだ、かき混ぜ続ければいけるか?」
「俺を含めた従業員達の負担が増加しますが・・・」
「大丈夫だ!!混ぜる専用の機械を買って来た!!」
「売ってるんですか」
・特ダネ
コンスタンが伝統電灯を買ってから三日後、ドニは自宅で取材を受けていた
ドニとインタビュアーが椅子に座り向かい合いながら取材を始めた
「始めまして、私、天上天下唯我独尊天衣無縫天下無双空前絶後最強無敵新聞フランス支社の特派員の暮 真太郎と申します
本日はフランスのワインの名門オダン工房のドニ・オダン氏にお呼ばれされて光栄です」
「あー、うん、よろしく頼む、君のその・・・何新聞だっけ?」
「天上天下唯我独尊天衣無縫天下無双空前絶後最強無敵新聞です」
「ず、随分と長い名前だね、日本の新聞は皆そんなに長い名前なのかい?」
「いえ、ずば抜けて長いのです」
「そ、そうなのか・・・えぇと君の新聞社はマイク・エンターテイメント・カンパニーをとても悪く言う事で評判だと聞いたのだが」
「それは違います!!我が社は真実のみを語っているのです!!
他の新聞社やマスコミはマイク・エンターテイメント・カンパニーが圧力をかけて騙させているのです!!」
「わ、分かった真太郎君、落ち着いてくれ」
「申し訳有りません」
真太郎は頭を下げた
「それでオダンさん、我々の新聞に一体何をして欲しいと?」
「ああ、実はマイク・エンターテイメント・カンパニーの商品で伝統電灯と言う物が有るのを知っているか?」
「存じ上げております、あの商品は色々と詐欺に使われるのでは無いかと言う問題提訴をする記事を掲載されています」
「ふむ、知っているのならば話は早い、実は私を始めとしたワイン工房ではこの商品を使う事で
『この技術を応用すればワインの急速な熟成が出来るんじゃないか』『そうなれば我々の工房は立ち行かなくなるんじゃないのか?』
『フランスのワイン産業の衰退が起こるのではないか』と危惧している」
「つまりマイク・エンターテイメント・カンパニーがワイン産業を潰そうとしている・・・と?」
「その通りだ!!」
「ふむ・・・ワイン産業が無くなったフランス・・・なるほど読めましたよ、マイク・エンターテイメント・カンパニーの狙いが!!」
真太郎は立ち上がった
「ね、狙い?」
「ええ!!ハッキリとしました!!マイク・エンターテイメント・カンパニーはワイン産業を潰す事で
フランス人の誇りと伝統の一つを潰し!!更に続けて様々な誇りと伝統を潰し!!その後に自分達が何か商品を持ち込み
『フランスと言えばコレ!!』と言う価値観を植え付け!!その後何やかんやでフランスを牛耳り!!フランスを拠点に欧州での市場を確立し!!そして」
「ま、待ってくれ、ちょっと話が飛躍し過ぎじゃないのか?」
「奴等ならやるっ!!オダンさん、この件についてもっと詳しく御説明出来ますか?」
「せ、説明?」
「ええ、マイク・エンターテイメント・カンパニーの国家転覆計画を!!」
「い、いや私はワイン産業がマイク・エンターテイメント・カンパニーに侵されていると言う現状をだな」
「ワインの転覆はフランスの転覆!!違いますか!?」
「・・・まぁ確かにそう言えなくもないが・・・」
「そうでしょう!!では早速」
トントン、とドアがノックされた
「・・・まさかマイク・エンターテイメント・カンパニーの刺客!?」
『旦那様!!大変で御座います!!』
「ああ、使用人だよ、入って来てくれ」
ドアが開かれ使用人が現れた
「旦那様!!オジェ工房が大変です!!」
「オジェ工房?」
「有名なワイン工房の一つだ、一体何が有ったんだ?」
「じ、実は・・・」
・コランタン・オジエのワイン造り
オジェ工房が物理的に崩壊した翌日フランスの有名なワイン工房であるオジエ工房に大量の懐中電灯が配達された
「あのー、コランタンさん、何ですかこの大量の懐中電灯は?」
「これはな伝統電灯と言ってだな、照らした物を時間経過による劣化、風化させる効果が有る電灯なんだ」
コランタンは自分のワイン工房の従業員ににこやかに話す
「え、でもコレをオジェ工房が使って大損したんじゃあ・・・」
「その通りだ、コンスタンに先に買い占められた時はどうなるかと思ったが、まさか失敗とは嬉しい限り、お陰でこの失敗を活かせる」
「失敗を活かす?」
「ああ、きちんと熟成具合を頻繁に確かめて慎重を期すんだ」
「なるほど・・・それならば問題は無いと思いますが・・・コレを使ってワインの熟成が出来るんですか?」
「コンスタンが実験して出来たらしい、問題無いだろうと思うが物は試しだ」
コランタンは机の上にワイングラスを置いてワインを注いで伝統電灯の光を当てた
「これ位で良いかな、じゃ頂きまーす・・・うん、旨くなってる!!」
コランタンは満面の笑みで自身の成功を喜んだ
「本当ですか?」
「本当だとも!!飲んでみろ!!」
従業員にも先の手順を繰り返し飲ませてみた
「あ・・・本当だ美味しい・・・」
「コンスタンはもういない、これで俺がワイン業界を牛耳ってやるぜぇ・・・」
「そんな事出来るんですか?」
「出来るさ、簡単にヴィンテージワインを作れるんだ」
「・・・ん?」
・二つ目の特ダネ
コランタンが伝統電灯を買ってから三日後、ドニは自宅で取材を受けていた
ドニとインタビュアーが椅子に座り向かい合いながら取材を始めた
「どうも、私、天上天下唯我独尊天衣無縫天下無双空前絶後最強無敵新聞フランス支社の特派員の暮 真太郎と申します
本日はフランスのワインの名門オダン工房のドニ・オダン氏に再度お呼ばれされて光栄です」
「うん、よろしく、先日のオジェ工房の事件は如何だった?反響は有ったかね?」
「ええ!!先日オダンさんが話したマイク・エンターテイメント・カンパニーの欧州征服計画で今本社は持ち切りです!!」
「ちょ、ちょっと待て、私じゃなくて君がその話を言い出したんじゃないか」
「一を聞いて十を知ると言う諺が日本には有りまして」
「君のそれは完全に話が飛躍している、十どころか百超えて千はいっている!!」
「名門オダン工房のオーナーにそこまで褒めて頂けるとは光栄です」
「褒めてない!!兎に角私発信でそんな話を出さないでくれ!!」
「・・・分かりました、フランスの名門ワイン工房オーナーの問題提訴と言う題で特集を出します、名前は伏せさせて頂きます」
「いや、私が言った訳じゃあ・・・」
頭を抱えるオダン
「・・・兎に角だ、先日のオジェ工房の記事の評判を聞きたいんだ、何で君のトンデモ理論の話を聞かなくちゃならない」
「先日のオジェ工房が伝統電灯で壊滅した話ですよね?実は少々問題が有りまして」
「問題?」
「ええ、実際に伝統電灯でワインが旨くなったと言う話が持ち上がりまして
これではマイク・エンターテイメント・カンパニーに打撃を与えられないじゃないかと本社から通知が・・・」
「・・・・・別にマイク・エンターテイメント・カンパニーに打撃を与えたい訳じゃ無い
我々フランスの名門ワインの伝統を私は守りたいのだ、何とかして伝統電灯にネガティブなイメージを付けられないだろうか」
「もう一回伝統電灯絡みで事件が起これば排斥運動を出しても良いと思います」
「・・・ならば大丈夫かもしれないな」
「それは如何言う・・・」
トントン、とドアがノックされた
「・・・まさかマイク・エンターテイメント・カンパニーの刺客!?」
『旦那様!!大変で御座います!!』
「だから使用人だよ、入って来てくれ」
ドアが開かれ使用人が現れた
「旦那様!!オジエ工房が大変です!!」
「オジェ工房なら既に大変な事に・・・」
「いやオジエ工房だ、オジェ工房とは別の有名なワイン工房の一つだ
この二つの工房の経営者は中は悪いが名前も似ている似た物同士でな、伝統電灯を片方が使えばもう片方も同じ事をするだろうと思った訳だよ
それでオジエは一体どんなヘマをしたんだ?」
「じ、実は・・・」
・伝統の未来
コランタン・オジエが逮捕されてから2日後アンドレ・エローは自宅で一人客を待っていた、今日は人払いをし使用人も居ない
父親は病院で精密検査で今日一日は帰ってこない
「・・・・・遅いな、まだか?」
アンドレは時計を見て時間を確認した、そしてドアがノックされた
「!!は、はい!!どうぞ!!」
ドアを開けて二人の男と若い女性が入って来た
「こんにちわ、マイク・エンターテイメント・カンパニー代表取締役社長のキンバリー・リーです
後ろの二人は我が社の営業部長と私のビジネス・パートナーです」
「エロー工房のオーナーのアンドレ・エローです、今日は御足労頂き有難う御座います」
「お気になさらず、では早速商談に移りたいのですが」
「え、ええ、とりあえず席にどうぞ」
「・・・・・」
若い女性は椅子を眺め、暫く考えた後座った
「君達も座って」
男二人も椅子に座った
「それでどの様な取引を御所望ですか?」
「ええ、ウチのワインをマイク・エンターテイメント・カンパニーを経由して販売したいのです」
「それはまた一体如何して?」
「先日オジエ工房の経営者が逮捕されました、彼は父の知り合いでして
オジエ工房で働いている従業員を露頭に迷わせるのは忍びないと言う事でオジエ工房を吸収合併して事業拡大をする事にしたんです
しかし一度信頼を失ったオジエ工房のワインの販売経路の確保が難しく
それならばマイク・エンターテイメント・カンパニーさんで販売して貰おうかと
フランス内での悪評もフランスの外へ飛び出せば問題は無いと思います」
「なるほど、売れないならば場所を変えて見るのは良いアイデアだと思います
ですがフランスの名門ワイン工房の方々は我々マイク・エンターテイメント・カンパニーを毛嫌いしていると言う噂を聞きます
先日も名門のオダン工房を筆頭に伝統電灯の販売中止と我が社へのネガティブキャンペーンをするワイン工房経営者の団体が作られたとか・・・」
「あの爺さん方か・・・気にする事は無いですよ、アイツ等に有るのは自分の御先祖様が作ってくれた伝統だけ
その伝統を守ろうと変なプライドや意地を張っているだけですよ、人を批判しているだけで業績が上向きになるとは思えない、何れ衰退しますよ
オジエ工房とオジェ工房の失敗は商品の悪用で有って商品に罪は無いと思います」
「伝統を軽んじるのはいけませんよ」
女性が窘める
「何故ですか?」
「伝統と言うのはそれだけ長く続いていると言う信頼の証明にもなります
信頼が商売において重要な要素なのは痛感して頂いていると思います」
「・・・ああ、確かにそうですね」
「単純に伝統が有る=ブランドと短絡的に考える方も居ますが、ブランド好きな人間が多いのも事実です」
「うーん・・・ワインについての知識には自信が有るが私は経営者としてはまだまだ未熟ですね」
「経営について父に叩きこまれましたから、もしよろしければ我が社が経営にアドバイスを行う
『マイク経営コンサルタントサービス』へのご加入は如何でしょうか?」
「経営コンサルタントですか?」
「会社全体の大規模な経営アドバイスから商品の販売の相談まで様々なアドバイスを実施しています」
「商品の販売の相談?例えば?」
「営業文句や購買意欲をそそる商品写真の撮影などですね、加入は強制では有りませんが
加入するとしないとでは利益に数倍の差が生じますね」
「そ、そんなにですか?」
「ええ、我が社の優秀な営業達が全力でサポートします、お値段は御相談になりますが」
「で、ではウチのワインをそのコンサルタントサービスとやらでバックアップして貰いつつ販売をさせて頂いても?」
「ええ、勿論、では木曜部長、契約書類を」
「その前にアンドレさん、一つよろしいでしょうか」
沈黙を守っていた営業部長の木曜が口を開いた
「何でしょうか?」
「貴方は我が社から伝統電灯を購入しましたよね?それは一体何に使うおつもりですか?オジエ工房の様な事をならるおつもりならば」
「いえいえ違いますよ、個人用です」
「個人用?」
「伝統電灯でワインは旨くなるけど売るのは難しいだろうと思いまして、その証拠に一つしか買っていないでしょう?」
「なるほど、疑って申し訳御座いません」
「いえいえ、良いのですよ、あんな事が有ったのですから」
「・・・・・」
女性は思案するような表情を見せる
「如何かしましたか社長?」
「アンドレさん、それは止めた方が良いと思います」
「何故です?」
「ワインが旨くなると言う事はワインを飲む量が増えると言う事です、お酒の飲み過ぎは健康に悪影響が有ります、老化が早まると言う報告が・・・」
「ワインを飲まない人生など人生じゃないですよ」
「そうですか、では木曜部長、後の事は任せる、ではアンドレさん、詳しい契約内容は木曜部長に
私はこれから用事が有りますのでこれで失礼します」
「分かりました」
女性と男性は木曜部長を置いて部屋から出た
「あのアンドレとか言うのどう思うM?」
「良いんじゃないか?伝統にしがみつかず自分で歩いていて好感を持てたぞ」
「確かにそれは良い所だと思うよ、伝統電灯の効果で老化が早まるけどね」
「・・・なぁやっぱり怒ってる?」
「何が?」
「伝統電灯だよ」
「何で私がそれに怒らなければならない」
「・・・・・・・・・・」
「言い難いか、じゃあ代わりに言ってあげよう
『Kは老化で苦しい思いをした、だから自らそれを望む連中が憎いんじゃないのか?』」
「・・・如何なんだ?」
女性は立ち止まり、にこやかな笑顔で振り返って言った
「何て言って欲しい?」
四人の男性が机を囲みワインを味わっていた
「伝統は守らなければならない、そうだろう諸君」
頭頂部が禿げ上がった老人が呟く
「そうだなドニ、フランス随一のワイン工房の名に汚さない様にせねばな」
「うん?寝言は寝て言えよ、コンスタン、フランス一のワイン工房はウチだろ」
「はは、冗談が旨いなコランタン、ワインは糞不味いが冗談は一級品だ」
「上等だ、表出ろコンスタン」
小太りの壮年の男性二人が言い合いを始める
「オジェ工房さんとオジエ工房さん、もう良い歳なんですからそこまでにして下さいよ
オダン工房さんも何とか言って下さいよ」
若い男が二人を宥める
「け、エローの若造が抜かしおるわ」
「アンドレ君、エローの御当主、つまり君の父親は如何したのかね?彼を呼んだのだが・・・」
「親父は歳食ったので引退しました、今は俺が当主です」
「エマニュエルが隠居?時代は移り変わったなぁ・・・」
「時代は変わっても、伝統は守らなければならない、そうだろ諸君」
「・・・ドニよ、同じ事繰り返してなんだ?ボケたか?」
「そうでは無いよ、コンスタン、フランスの中でも有名なワイン工房の我々は今こそ団結せねばならない時が来たのだ」
「団結・・・ね」
「えーと・・・オダン工房さん、一体何の話ですか?」
「これだ」
ドニと呼ばれた老人が懐中電灯を机の上に出す
「・・・何だこりゃ?」
「コンスタンに同意するのは癪だがやっぱりボケたか?」
「違う、これはマイク・エンターテイメント・カンパニーが造り出した『伝統電灯』と言う物だ」
「まいく・えんたーていめんと・かんぱにー?」
「ああ、知ってます、この間変なワインを全日本ワイン品評会に出したっていう会社ですよね?」
「日本人にワインの何たるかが分かるわきゃあない、ドニよ、お前心配し過ぎだ」
ヘラヘラ笑うコランタン、しかしドニと呼ばれた老人の目は真剣そのものだ
「この電灯は照らした物を自然な時間経過の様な劣化、風化させる効果が有る」
「・・・・・・・・・・だから?」
「今日は良くコンスタンに同意する日だな、だから如何したんだよ」
「なるほど、つまりこう言いたいのですね?『この技術を応用すればワインの急速な熟成が出来るんじゃないか』と?」
「そうだ、そうなれば我々フランスのワイン工房が衰退する可能性が有る!!
我々の様な伝統有るフランスの中で上位のワイン工房は生き残るだろうが、小さなワイン工房は立ち消える!!
我々フランスの伝統が掻き消えてしまう!!」
ドニはそこまで言うと肩で息をし始めた
「だ、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だ、兎に角我々フランスのワイン工房は何とかせねばならないのだ!!」
「具体的な案は有るのかよ」
「抗議運動をしよう」
「何て?」
「我々の伝統を守る為にこの『伝統電灯』の発売中止を訴える抗議集会を開く!!」
「あー・・・俺はパスだ」
「コンスタンに同意したくないが俺もパス」
「な、何故だ!?」
「何故って、今日どの位手紙出した?」
「・・・何の話だ」
「とぼけんなよ、俺達三つの工房だけじゃないだろ?もっと大勢の工房に連絡した筈だ」
「・・・・・・・だから何だ」
「お前何で他の連中来てないか知らないのか?お前最近評判悪いぞ?」
「そうそう、聞いたぜ?外国人に高級ワインと偽って安物のワイン売って
『外国人風情がフランスの味が分からんとは恥を知れ!!』とか」
「何で伝統あるワインを外国人に呑ませなければならない!!」
「そういう客を選んでいるのが駄目なんだよ、帰るわ」
「俺も、じゃな」
コンスタンとコランタンが帰っていく
「・・・アンドレ君、君は如何思う?」
「・・・・・俺みたいな若造じゃ大した力になれませんよ・・・」
「・・・・・呑もうか」
「・・・はい」
老人と若者はワインを酌み交わした
・コンスタン・オジェのワイン造り
翌日フランスの有名なワイン工房であるオジェ工房に大量の懐中電灯が配達された
「あのー・・・コンスタンさん、何ですかこの大量の懐中電灯は?」
「これはな伝統電灯と言ってだな、照らした物を時間経過による劣化、風化させる効果が有る電灯なんだ」
コンスタンは自分のワイン工房の従業員ににこやかに話す
「はぁ・・・それでコレを如何するつもりで?」
「いやワイン造りに活かせると思ってな、これを使って上手く行けば
普通より早く熟成させる事が可能じゃないか、ってな」
「・・・大丈夫なんですか?」
「まぁ物は試しだよ、やって見よう」
コンスタンは机の上にワイングラスを置いてワインを注いで伝統電灯の光を当てた
「これ位で良いかな、じゃ頂きまーす・・・うん、旨くなってる!!」
コンスタンは満面の笑みで自身の成功を喜んだ
「本当ですか?」
「本当だとも!!飲んでみろ!!」
従業員にも先の手順を繰り返し飲ませてみた
「あ・・・本当だ美味しい・・・」
「な!!俺の言ったとおりだろ!!」
「でも、アレですよね、コレ樽の中で熟成させた方がもっと旨くなりますよね」
「そうだな、高級ワインなら環境が悪く無ければほっといても旨くなるが、やはり熟成した物を出して行きたいな!!」
「じゃあ如何言う風にやります?」
「ワインの樽の中に電気付けたまま突っ込め!!」
「いや懐中電灯壊れますよ!?」
「日本製だから大丈夫!!」
「ええー・・・・・」
10分後、そこには無残に故障した伝統電灯が!!
「・・・うーむ・・・照らした所にしか効果無いからな・・・若干ムラになりそうだが仕方ない
上から照らす様にやるか、あ、そうだ、かき混ぜ続ければいけるか?」
「俺を含めた従業員達の負担が増加しますが・・・」
「大丈夫だ!!混ぜる専用の機械を買って来た!!」
「売ってるんですか」
・特ダネ
コンスタンが伝統電灯を買ってから三日後、ドニは自宅で取材を受けていた
ドニとインタビュアーが椅子に座り向かい合いながら取材を始めた
「始めまして、私、天上天下唯我独尊天衣無縫天下無双空前絶後最強無敵新聞フランス支社の特派員の暮 真太郎と申します
本日はフランスのワインの名門オダン工房のドニ・オダン氏にお呼ばれされて光栄です」
「あー、うん、よろしく頼む、君のその・・・何新聞だっけ?」
「天上天下唯我独尊天衣無縫天下無双空前絶後最強無敵新聞です」
「ず、随分と長い名前だね、日本の新聞は皆そんなに長い名前なのかい?」
「いえ、ずば抜けて長いのです」
「そ、そうなのか・・・えぇと君の新聞社はマイク・エンターテイメント・カンパニーをとても悪く言う事で評判だと聞いたのだが」
「それは違います!!我が社は真実のみを語っているのです!!
他の新聞社やマスコミはマイク・エンターテイメント・カンパニーが圧力をかけて騙させているのです!!」
「わ、分かった真太郎君、落ち着いてくれ」
「申し訳有りません」
真太郎は頭を下げた
「それでオダンさん、我々の新聞に一体何をして欲しいと?」
「ああ、実はマイク・エンターテイメント・カンパニーの商品で伝統電灯と言う物が有るのを知っているか?」
「存じ上げております、あの商品は色々と詐欺に使われるのでは無いかと言う問題提訴をする記事を掲載されています」
「ふむ、知っているのならば話は早い、実は私を始めとしたワイン工房ではこの商品を使う事で
『この技術を応用すればワインの急速な熟成が出来るんじゃないか』『そうなれば我々の工房は立ち行かなくなるんじゃないのか?』
『フランスのワイン産業の衰退が起こるのではないか』と危惧している」
「つまりマイク・エンターテイメント・カンパニーがワイン産業を潰そうとしている・・・と?」
「その通りだ!!」
「ふむ・・・ワイン産業が無くなったフランス・・・なるほど読めましたよ、マイク・エンターテイメント・カンパニーの狙いが!!」
真太郎は立ち上がった
「ね、狙い?」
「ええ!!ハッキリとしました!!マイク・エンターテイメント・カンパニーはワイン産業を潰す事で
フランス人の誇りと伝統の一つを潰し!!更に続けて様々な誇りと伝統を潰し!!その後に自分達が何か商品を持ち込み
『フランスと言えばコレ!!』と言う価値観を植え付け!!その後何やかんやでフランスを牛耳り!!フランスを拠点に欧州での市場を確立し!!そして」
「ま、待ってくれ、ちょっと話が飛躍し過ぎじゃないのか?」
「奴等ならやるっ!!オダンさん、この件についてもっと詳しく御説明出来ますか?」
「せ、説明?」
「ええ、マイク・エンターテイメント・カンパニーの国家転覆計画を!!」
「い、いや私はワイン産業がマイク・エンターテイメント・カンパニーに侵されていると言う現状をだな」
「ワインの転覆はフランスの転覆!!違いますか!?」
「・・・まぁ確かにそう言えなくもないが・・・」
「そうでしょう!!では早速」
トントン、とドアがノックされた
「・・・まさかマイク・エンターテイメント・カンパニーの刺客!?」
『旦那様!!大変で御座います!!』
「ああ、使用人だよ、入って来てくれ」
ドアが開かれ使用人が現れた
「旦那様!!オジェ工房が大変です!!」
「オジェ工房?」
「有名なワイン工房の一つだ、一体何が有ったんだ?」
「じ、実は・・・」
マイク・エンターテイメント・カンパニーの甘い誘惑!!その誘惑の代償は高かった!!
マイク・エンターテイメント・カンパニーが発売した『伝統電灯』
この商品は伝統を付加する、と言う名目で物体を時間経過させる効果があると言う物で
当新聞ではこれは詐欺に使われるのではないかと言う警告を発していたが、この商品の犠牲者がついに出た
フランスの有名なワイン工房で有るオジェ工房にて、この伝統電灯を用いてワインの急速な熟成を行おうと試みた
しかし伝統電灯の光を当て過ぎてしまい、酸味が強くなったりとワインとは呼べない代物になってしまい
原料費の損失は計り知れず、更にマイク・エンターテイメント・カンパニーからの謝罪は無く
オジェ工房のオーナーであるコンスタン・オジェ氏は途方に暮れている
天上天下唯我独尊天衣無縫天下無双空前絶後最強無敵新聞より抜粋
・コランタン・オジエのワイン造り
オジェ工房が物理的に崩壊した翌日フランスの有名なワイン工房であるオジエ工房に大量の懐中電灯が配達された
「あのー、コランタンさん、何ですかこの大量の懐中電灯は?」
「これはな伝統電灯と言ってだな、照らした物を時間経過による劣化、風化させる効果が有る電灯なんだ」
コランタンは自分のワイン工房の従業員ににこやかに話す
「え、でもコレをオジェ工房が使って大損したんじゃあ・・・」
「その通りだ、コンスタンに先に買い占められた時はどうなるかと思ったが、まさか失敗とは嬉しい限り、お陰でこの失敗を活かせる」
「失敗を活かす?」
「ああ、きちんと熟成具合を頻繁に確かめて慎重を期すんだ」
「なるほど・・・それならば問題は無いと思いますが・・・コレを使ってワインの熟成が出来るんですか?」
「コンスタンが実験して出来たらしい、問題無いだろうと思うが物は試しだ」
コランタンは机の上にワイングラスを置いてワインを注いで伝統電灯の光を当てた
「これ位で良いかな、じゃ頂きまーす・・・うん、旨くなってる!!」
コランタンは満面の笑みで自身の成功を喜んだ
「本当ですか?」
「本当だとも!!飲んでみろ!!」
従業員にも先の手順を繰り返し飲ませてみた
「あ・・・本当だ美味しい・・・」
「コンスタンはもういない、これで俺がワイン業界を牛耳ってやるぜぇ・・・」
「そんな事出来るんですか?」
「出来るさ、簡単にヴィンテージワインを作れるんだ」
「・・・ん?」
・二つ目の特ダネ
コランタンが伝統電灯を買ってから三日後、ドニは自宅で取材を受けていた
ドニとインタビュアーが椅子に座り向かい合いながら取材を始めた
「どうも、私、天上天下唯我独尊天衣無縫天下無双空前絶後最強無敵新聞フランス支社の特派員の暮 真太郎と申します
本日はフランスのワインの名門オダン工房のドニ・オダン氏に再度お呼ばれされて光栄です」
「うん、よろしく、先日のオジェ工房の事件は如何だった?反響は有ったかね?」
「ええ!!先日オダンさんが話したマイク・エンターテイメント・カンパニーの欧州征服計画で今本社は持ち切りです!!」
「ちょ、ちょっと待て、私じゃなくて君がその話を言い出したんじゃないか」
「一を聞いて十を知ると言う諺が日本には有りまして」
「君のそれは完全に話が飛躍している、十どころか百超えて千はいっている!!」
「名門オダン工房のオーナーにそこまで褒めて頂けるとは光栄です」
「褒めてない!!兎に角私発信でそんな話を出さないでくれ!!」
「・・・分かりました、フランスの名門ワイン工房オーナーの問題提訴と言う題で特集を出します、名前は伏せさせて頂きます」
「いや、私が言った訳じゃあ・・・」
頭を抱えるオダン
「・・・兎に角だ、先日のオジェ工房の記事の評判を聞きたいんだ、何で君のトンデモ理論の話を聞かなくちゃならない」
「先日のオジェ工房が伝統電灯で壊滅した話ですよね?実は少々問題が有りまして」
「問題?」
「ええ、実際に伝統電灯でワインが旨くなったと言う話が持ち上がりまして
これではマイク・エンターテイメント・カンパニーに打撃を与えられないじゃないかと本社から通知が・・・」
「・・・・・別にマイク・エンターテイメント・カンパニーに打撃を与えたい訳じゃ無い
我々フランスの名門ワインの伝統を私は守りたいのだ、何とかして伝統電灯にネガティブなイメージを付けられないだろうか」
「もう一回伝統電灯絡みで事件が起これば排斥運動を出しても良いと思います」
「・・・ならば大丈夫かもしれないな」
「それは如何言う・・・」
トントン、とドアがノックされた
「・・・まさかマイク・エンターテイメント・カンパニーの刺客!?」
『旦那様!!大変で御座います!!』
「だから使用人だよ、入って来てくれ」
ドアが開かれ使用人が現れた
「旦那様!!オジエ工房が大変です!!」
「オジェ工房なら既に大変な事に・・・」
「いやオジエ工房だ、オジェ工房とは別の有名なワイン工房の一つだ
この二つの工房の経営者は中は悪いが名前も似ている似た物同士でな、伝統電灯を片方が使えばもう片方も同じ事をするだろうと思った訳だよ
それでオジエは一体どんなヘマをしたんだ?」
「じ、実は・・・」
伝統電灯第二の犠牲者!!おのれマイク・エンターテイメント・カンパニー!!
マイク・エンターテイメント・カンパニーが発売した『伝統電灯』
この商品は伝統を付加する、と言う名目で物体を時間経過させる効果があると言う物で
当新聞ではこれは詐欺に使われるのではないかと言う警告を発し、この商品の犠牲者が先日出た
フランスの有名なワイン工房で有るオジェ工房がこの商品で甚大な被害を受けたのは記憶に新しいだろう、そしてまた新しい犠牲者が現れた
別のフランスの有名ワイン工房であるオジエ工房の経営者コランタン・オジエ氏が詐称で逮捕された
伝統電灯で時間経過させた物をヴィンテージワインとして販売していたのだ
マイク・エンターテイメント・カンパニーが伝統電灯を売らなければこんな悲劇は起こらなかった
マイク・エンターテイメント・カンパニーは一連の事件に対し一切のコメントを出していない
天上天下唯我独尊天衣無縫天下無双空前絶後最強無敵新聞より抜粋
・伝統の未来
コランタン・オジエが逮捕されてから2日後アンドレ・エローは自宅で一人客を待っていた、今日は人払いをし使用人も居ない
父親は病院で精密検査で今日一日は帰ってこない
「・・・・・遅いな、まだか?」
アンドレは時計を見て時間を確認した、そしてドアがノックされた
「!!は、はい!!どうぞ!!」
ドアを開けて二人の男と若い女性が入って来た
「こんにちわ、マイク・エンターテイメント・カンパニー代表取締役社長のキンバリー・リーです
後ろの二人は我が社の営業部長と私のビジネス・パートナーです」
「エロー工房のオーナーのアンドレ・エローです、今日は御足労頂き有難う御座います」
「お気になさらず、では早速商談に移りたいのですが」
「え、ええ、とりあえず席にどうぞ」
「・・・・・」
若い女性は椅子を眺め、暫く考えた後座った
「君達も座って」
男二人も椅子に座った
「それでどの様な取引を御所望ですか?」
「ええ、ウチのワインをマイク・エンターテイメント・カンパニーを経由して販売したいのです」
「それはまた一体如何して?」
「先日オジエ工房の経営者が逮捕されました、彼は父の知り合いでして
オジエ工房で働いている従業員を露頭に迷わせるのは忍びないと言う事でオジエ工房を吸収合併して事業拡大をする事にしたんです
しかし一度信頼を失ったオジエ工房のワインの販売経路の確保が難しく
それならばマイク・エンターテイメント・カンパニーさんで販売して貰おうかと
フランス内での悪評もフランスの外へ飛び出せば問題は無いと思います」
「なるほど、売れないならば場所を変えて見るのは良いアイデアだと思います
ですがフランスの名門ワイン工房の方々は我々マイク・エンターテイメント・カンパニーを毛嫌いしていると言う噂を聞きます
先日も名門のオダン工房を筆頭に伝統電灯の販売中止と我が社へのネガティブキャンペーンをするワイン工房経営者の団体が作られたとか・・・」
「あの爺さん方か・・・気にする事は無いですよ、アイツ等に有るのは自分の御先祖様が作ってくれた伝統だけ
その伝統を守ろうと変なプライドや意地を張っているだけですよ、人を批判しているだけで業績が上向きになるとは思えない、何れ衰退しますよ
オジエ工房とオジェ工房の失敗は商品の悪用で有って商品に罪は無いと思います」
「伝統を軽んじるのはいけませんよ」
女性が窘める
「何故ですか?」
「伝統と言うのはそれだけ長く続いていると言う信頼の証明にもなります
信頼が商売において重要な要素なのは痛感して頂いていると思います」
「・・・ああ、確かにそうですね」
「単純に伝統が有る=ブランドと短絡的に考える方も居ますが、ブランド好きな人間が多いのも事実です」
「うーん・・・ワインについての知識には自信が有るが私は経営者としてはまだまだ未熟ですね」
「経営について父に叩きこまれましたから、もしよろしければ我が社が経営にアドバイスを行う
『マイク経営コンサルタントサービス』へのご加入は如何でしょうか?」
「経営コンサルタントですか?」
「会社全体の大規模な経営アドバイスから商品の販売の相談まで様々なアドバイスを実施しています」
「商品の販売の相談?例えば?」
「営業文句や購買意欲をそそる商品写真の撮影などですね、加入は強制では有りませんが
加入するとしないとでは利益に数倍の差が生じますね」
「そ、そんなにですか?」
「ええ、我が社の優秀な営業達が全力でサポートします、お値段は御相談になりますが」
「で、ではウチのワインをそのコンサルタントサービスとやらでバックアップして貰いつつ販売をさせて頂いても?」
「ええ、勿論、では木曜部長、契約書類を」
「その前にアンドレさん、一つよろしいでしょうか」
沈黙を守っていた営業部長の木曜が口を開いた
「何でしょうか?」
「貴方は我が社から伝統電灯を購入しましたよね?それは一体何に使うおつもりですか?オジエ工房の様な事をならるおつもりならば」
「いえいえ違いますよ、個人用です」
「個人用?」
「伝統電灯でワインは旨くなるけど売るのは難しいだろうと思いまして、その証拠に一つしか買っていないでしょう?」
「なるほど、疑って申し訳御座いません」
「いえいえ、良いのですよ、あんな事が有ったのですから」
「・・・・・」
女性は思案するような表情を見せる
「如何かしましたか社長?」
「アンドレさん、それは止めた方が良いと思います」
「何故です?」
「ワインが旨くなると言う事はワインを飲む量が増えると言う事です、お酒の飲み過ぎは健康に悪影響が有ります、老化が早まると言う報告が・・・」
「ワインを飲まない人生など人生じゃないですよ」
「そうですか、では木曜部長、後の事は任せる、ではアンドレさん、詳しい契約内容は木曜部長に
私はこれから用事が有りますのでこれで失礼します」
「分かりました」
女性と男性は木曜部長を置いて部屋から出た
「あのアンドレとか言うのどう思うM?」
「良いんじゃないか?伝統にしがみつかず自分で歩いていて好感を持てたぞ」
「確かにそれは良い所だと思うよ、伝統電灯の効果で老化が早まるけどね」
「・・・なぁやっぱり怒ってる?」
「何が?」
「伝統電灯だよ」
「何で私がそれに怒らなければならない」
「・・・・・・・・・・」
「言い難いか、じゃあ代わりに言ってあげよう
『Kは老化で苦しい思いをした、だから自らそれを望む連中が憎いんじゃないのか?』」
「・・・如何なんだ?」
女性は立ち止まり、にこやかな笑顔で振り返って言った
「何て言って欲しい?」
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