最終更新: tyounekogami 2024年02月27日(火) 09:41:32履歴
多元世界キャンペーンは、プレイヤーの選択肢を大幅に増加させます。プレイヤーは複数の世界やジャンルを“同じキャラクターを演じながら”経験できます。もし現在の世界に飽きたら、GMは新しいものに活動の舞台を移せばよいのです。これにより、衰えつつあったキャンペーンに活気を取り戻すことができます。
しかし、多元世界キャンペーンはGMの仕事量を増やします。1つの世界を詳細に設計しなければならない代わりに、多数の世界を作成しなければなりません。さらに、GMは世界間を移動する仕組みに取り組まなければなりません。それは世界を設計するのと同じほどの仕事になるかもしれません!
またGMは、別の問題が起こる可能性にも備える必要があります。キャンペーンが次の世界に移ったとき、それまでの労働の成果が失われてしまうとプレイヤーが感じたりしたら、彼らはたいてい1つの世界での目標をそれほど熱心に追いかけなくなります。これは感情移入を阻害し、ゲームを崩壊させる危険があります。これを防ぐために、GMは世界にまたがる物語をしっかり作ってキャンペーンの連続性を強めなければなりません......これは、さらに多くの仕事を追加するでしょう。
すべてのGMは、自分の時間と能力の限界を知っておくべきです。そして、事前にプレイヤーと相談すべきです。これは世界を股にかけるキャンペーンを行ないたいGMにとっては、いつも心に留めておくべき真実です。
[[いくつものゲーム世界を渡り歩く>他の次元世界#Travel_Between_Game_Worlds]]ガープスがデザインされた目的の1つとして、プレイヤーがそのたびに新しいルールをまるごと覚えなくても、複数のゲーム世界で遊べるということがあげられます。1人のプレイヤーが違う世界、違う時間を舞台にした複数のキャンペーンに参加でき、キャンペーンごとにそれぞれのキャラクターを使ってプレイします。それぞれのキャラクターは自分自身の世界にとどまるのがふつうです。しかし、望むなら“それぞれが同一のキャラクターとして、別のゲーム世界に移動することもできます。これには3つの方法があります。
- 1:プレイヤーは1つの世界でキャラクターを作成して、そのキャラクターを別の世界にもちこみます。たとえば中世の魔法使いが、呪文を使って数百年未来に旅立ったとすると、第二次世界大戦時代の冒険が待っていることになります。
- 2:キャンペーンを1つまるごと別の世界に移動させます。たとえばパーティは全員星間通商船の乗組員だったとします。船は事故を起こして未開の惑星に不時着します。なんとかして宇宙港を建設するまでは、パーティは12世紀相当の世界で冒険を続けることになります。
- 3:1つのキャンペーンは複数のゲーム世界を含んでおり、相互に行き来できるようにデザインすることができます。「他の次元世界」参照。
[[ゲーム世界の差>他の次元世界#Differences_in_Worlds]]一般的に、2つの世界の差が大きいほど、PCをそこと往き来させるのには慎重でなければなりません。ゲーム世界の大きな差とは
- 魔法中心の世界と科学技術中心の世界
- 文明レベルのとても低い世界と文明レベルのとても高い世界
- ほとんど人間ばかりの、あるいは人間だけの世界と、いくつもの種族が暮らす世界
- 戦争で荒廃したり、疫病で破滅した世界と、平和で退廃的な世界
- ファンタジー世界と歴史に忠実な“リアルな”世界
1つの惑星の中でもこれらの違いが存在することもあるでしょう。しかし、それらの地域はすぐ隣りにあるわけではありません。
これと同じように、違う特徴をもった世界に移動することはかなり難しいはずです。しかし、これを行なうことができれば、ゲーム上すばらしく貴重な効果があります。リアリズム、プレイアビリティの両面からです。プレイヤーにとって“ルールの変更”は、前もって気をつけるだけですむのですから。
異なる世界へ旅するときには、通常の地形による障害がつきものです。高い山脈、広い大洋、はてしない砂漠や広野、沼だらけのジャングルなどです。介在する敵意をもった国や魔法の障壁もよくある話です。またGMは文字どおり“異世界”に属す異なる世界を背景に設定してもかまいません。文明レベルが低い場合、惑星間飛行は“手軽に利用できない”という問題を抱えていますが、強力な魔法を使えばどんな問題も解決してしまいます。もちろん、そんな強力な魔力をPCの手にゆだねるわけにはいきませんが......。
[[もう1つの地球>他の次元世界#Alternate_Earths]]「もう1つの地球」というのは、地球によく似た世界です......しかしどこか異なっています。違いは小さいかもしれません(10セント硬貨にケネディが描かれています――われわれの世界では50セント硬貨ですが)、大きいかもしれません(ケネディは今や西半球の国王です)、あるいは信じられないかもしれません(地球は私たちと同じ文化・言語・政治をもった知性あるトカゲによって支配されています)。この“納得のできる”もう1つの歴史は、“パラレルワールド(並行世界)”とも呼ばれます。パラレルワールドを考えることは、すばらしい知的ゲームです。それに近づく1つの方法は、歴史上のできごとをとりあげて、「もしこれが違っていたらどうなっていたか?」を考えることです。もしリンカーンがブースの襲撃を生き延びたらどうなったでしょう? もしチェンバレンがヒトラーに対抗していたら? もし赤毛のエリックが16歳のとき、喧嘩で死んだらどうなっていた?
GMとして、あなたはどんな種類の「もう1つの地球」でも考えることができます。基本的な点はどれだけ違っていてもかまいません。しかし、1つの変更からどんな論理的な結果を導き出せるかを確かめるのも面白いことです。どのような歴史的出来事を選んでも結構です――大きいものでも小さいものでもそこから自問自答してください。「もしこれが違っていたらどうなっていたのか?」「もう1つの地球」の例を使ったキャンペーン設定全体については、第20章を見てください。
[[物理的現実>他の次元世界#Physical_Realities]]他の国や惑星を訪れるのと同じように、実際に――肉体で、あるいは精神で―訪れることができる物理的な他次元世界です。そのような領域を定義する特徴は、「訪問者が滞在している間に、物理的な肉体を所有する」というものです。これは彼らの普通の肉体かもしれません......あるいは、その領域内でのみ実体を持つ“霊体(spirit body)”かもしれません。
エラッタ修正:【誤】精神の肉体 【正】霊体もっともよくある「物質的現実世界(physical reality)」は、「もう一つの現実(alternate world)」(「もう一つの歴史(alternate history)」「もう一つの時間軸(alternate timeline)」とも呼ばれます)です。これはPC本来の世界とほとんど同じです。しかしこの世界では、歴史がある極めて重要なできごとで分岐して、異なる現実を生み出しました(「もう1つの地球」上記参照)。
他によくあるものとして「鏡の世界」があります。鏡の世界はPC本来の世界とまったく同じように見えますが、似ているのは見た目だけです。歴史の変化を並べるだけでは、違いについて合理的に説明することができません。妖精の世界がよい例です。それは私たちの世界とそっくりに見えます。しかし、実際には強力な妖精によって支配されている魔法の領域です。また別のよくある例としては「邪悪な並行世界(evil parallel)」があります。世界に関する多くのものが類似しています。しかし人の性格や政府は“反対”です。共和制は独裁制になります。聖人は悪魔になります......などなど。
さらに奇妙な物理的現実世界があるかもしれません。よくて、われわれの宇宙にある異星と同じくらい違っているかもしれません。悪いと、物理法則が異なっていたり、停止していたりするかもしれません。人間はそこで生き残ることができないでしょう!
[[相互浸入次元>他の次元世界#Interpenetrating_Planes]]2つかそれ以上の次元が相互に重なっています。1つの世界にあるすべての場所は、他の世界の同様の位置に対応して存在します。このような世界は、ふつうそれぞれはっきりと区別されており、お互いの世界の住人の目には見えません。しかし才能のある人々、例えば霊媒や予言者は、同時に複数の現実を知覚できるかもしれません。おそらく普通の人々も、ときおり他の世界の住人に会うことがありますが、それを幽霊とみなします。
これはフィクションで「夢(dream)」「幻(phantom)」「霊(spirit)」の領域として理解されることがよくあります。こうした次元を訪れる旅人は“どこにも行なっていない”ことがあります。旅人は知覚手段を変えるだけなのです。
- 用語:位相
位相の例としては、「非実体化」をもっているキャラクターが、物理的な障害を通過して歩くときのエーテル状態があげられます。他の例としては、SFでよくある“超空間(hyperspace)”です。超光速の星間宇宙船が星間ドライブを発動するときに進入する“空間(space)”です。
- 用語:間隙
フィクションにおける間隙は、海や宇宙空間のように他のどんな目的より1つの目的のために機能する劇的な装置です。それは旅行の媒体となります――この場合は次元間旅行です。例えば「アストラル界(astral plane)」の一般的な解釈は、魔法や超能力を使用して現実間を旅行する場合に、旅行者が通り抜けなければならない間隙ということになっています。
[[世界内世界>他の次元世界#Worlds_Within_Worlds]]このモデルでは、現実は別の現実の中に入っています――タマネギの層のように。もう1つの世界や相互浸入次元世界は、この階層のどこかのレベルで前後するような、ほとんど同じ土台をもっているかもしれません。キャンペーンにおける本当に大切なことは、1つのレベルを横に動くのではなく、常にこうした階層の上下移動になるということです。
この構造によって、GMは秘密の中に秘密を隠すことができます。また、多くの超自然的能力や存在への、古典的な説明を提供できます。「彼らは高位の次元からやってきた」です。その結果、これは超常的雰囲気を強く持つ多元世界キャンペーンに適合します。
例:ファンタジーのキャンペーンはいかにもよく目にする物理的現実世界で行われます――山脈、海洋、空の星などをもつ世界です。この世界の“内部(Inside)”に「エーテル界(Ethereal Plane)」と呼ばれる位相があります。これがテレポーテーションや壁を通り抜ける魔法の効果を説明します。物理世界が包んでいるのは内側の間隙「霊界(Spirit World)」――ゴーストの領域です。精神界は物質界に重なってはいません。そうではなく、死者の魂(や強力な魔法使い!)が「アストラル界(Astral Plane)」と呼ばれる外側の間隙にいくために横断しなければならない層です。そしてアストラル界は、悪魔、神、その他高位存在がいる、別の“物理的な(physical)”現実に旅行することを可能にします。
エラッタ修正:【誤】精神界 【正】霊界
[[パラレルワールド>他の次元世界#Parallel_Worlds]]この宇宙論の特徴は、多数の物理的現実が並列しているということです。ほとんどはもう1つの現実ですが、鏡の世界もいくつかあるかもしれません。いくつかは“互いにくっつくほど押しあっている”ために、相互浸透次元になっているかもしれません。こうした特徴は、世界の内部にも、間にも、囲むようにも世界は存在していないということです。すべての現実は同等に存在しています。また行き来は、介在するある種の次元を通ってのものではなく、直接の移行(シフト)というものかもしれません。
この構造は神秘的な次元間旅行を排除して、旅行を加速し、不思議なできごとに理性的な説明を与えてくれます(「ゴースト」は単に非常に近い現実の住人です。「悪魔」は単に醜い次元間旅行者です)。こうした特徴は次元を移動して貿易するSFキャンペーンにふさわしくなります。
この構造は、概念としては単純です。しかしGMは、望むだけ複雑に作ることができます。旅行者は“隣接した(adjacent)”世界だけを訪れることができるのかもしれません......ただ“隣接(adjacent)”を満足のいくように定義しようとしても、科学者のあくなき努力をも無に帰すようなものかもしれないのです。いくつかの世界に移動するためには、複数回の跳躍が必要かもしれません。あるいは、世界の連なりは、輪や他の単純なパターンを形成しているかもしれません。その一方でGMは、人間や最高のコンピュータでも解析できない、頭が破裂しそうな幾何学模様を示していることにしてもよいのです。想像力を使ってください!
[[複合させる>他の次元世界#Mixing_It_Up]]GMは好きなだけ工夫を加えることができます。例えば――
- 「世界内世界」で説明されている階層状の世界を基本にしますが、階層におけるある段階ではパラレルワールドが存在します。
- 「パラレルワールド」にあるように隣接する世界を基本にしますが、いくつかの「世界(worlds)」は単純な物理的現実の代わりに、完全に構築された階層状の世界になっています。
- 舞台とするすべての、あるいはいくつかの世界に、独特な位相を好きなだけ追加します(例:それぞれの物理的現実世界には、独特の「超空間(hyperspace)」と「エーテル界(ethereal plane)」が存在します)。
[[「一瞬」か「時間がかかる」旅か>他の次元世界#Instantaneous_vs_Time-Consuming_Travel]]世界間の移動は「ピー!着いた」という形かもしれません。これだとヒーローは呪文を唱えたり、ボタンを押したり、丘の下を歩いたり......というだけで済みます。あるいは、ゆっくりとした手順を踏むものかもしれません、海や宇宙を旅するのと同じように。どちらの方法にも利点と欠点があります。
一瞬の移動――「次元跳躍者」の有利な特徴や《異次元移動》の呪文のような――は、ヒーローとその敵が世界から次の世界へと移動する、猛烈な次元をまたにかけるアクションを可能にします。しかし、この方法ではプレイヤーが敵(あるいは「借金」「使命」)から逃げようと試みて、ドラマ性を増すのではなく弱めるでしょう。この種の旅行はまた、次元間の貿易を活発にします。これは非常に面白いのですが、キャンペーンの経済を破壊しかねません。一般に、次元間の移動が速やかであるほど、GMは移動の手段を見つけるのを困難にするべきです。また納得のいく危険を導入し(例:《異次元移動》に失敗すると手ひどい不意討ちをくらう)、旅行者が運べる物を制限し、一部の異世界は“危険”であると明らかにすべきです。
次元間の移動に時間がかかる場合、GMはどれだけの時間が経過するか決めなければなりません。そして、PC本来の時間と比べてどんな割合で進行するのかも決定しなければなりません。時間を消費する旅行の主な利点は、旅行それ自体が冒険であることです。一方で欠点は、旅行中に身動きがとれないかもしれないことです。キャラクターが目標を達成するために長い旅行をしなければならない場合、多くのプレイヤーが退屈するかもしれません。GMはこのオプションを選択したら、それぞれの旅行を冒険として構築するか、その時間をPCが学習・発明・魔化のような実りのある長期的計画のために費やせるよう準備するべきです。
[[「物理的旅行」と「投影体」>他の次元世界#Physical_Travel_vs_Projection]]次元旅行者は肉体ごと他次元を訪れることがありますが、これは唯一の選択肢ではありません。代わりに、他の現実へと向かう際、精神や魂で移動することもあります。
物理的な旅行(世界間のテレポート、ある種の乗り物で移動する、など)は、キャンペーンを制御するために金銭や肉体面の危険を課すという古典的な“仕掛け(hooks)”をGMが使えるようにします。記録の手間も少なくなります。PCは本来の世界と同じ能力を持っており、同じ装備をしているからです。しかし、物理的旅行はPCを肉体的に消失させます(おそらく装備品ごと)。これによって行動の結果から逃げることが可能になります。さらには商品取引も可能になり、好ましくない経済効果を及ぼすことがあります。GMはPCが行けるところならどこにでもついて行くことができる敵を作るよう注意しなければなりません。そして、旅行者が持ち運べる物理的な品物に対して、厳密な制限を導入することを考慮すべきです(例:「あなたは裸で到着しました」)。「投影体」というのは、肉体をあとにしたまま、精神や魂が別の世界に移動することを意味します。これは、世界をまたにかけるキャンペーンがもつ問題の多くを解決します。それぞれの世界に属するものは、その世界に留まります。世界間を移動するのは情報だけです――GMは、これなら簡単に制御できるでしょう。欠点は2つあります。まず、GMはPCの物理的な肉体と投影体の両方の記録を取らなければなりません(単に投影体はオリジナルと同じである、ということにもできます。しかし、それでは面白いドラマ的ツールを放棄することになります)。次に、プレイヤーは他の世界のことを“本物ではない”と感じがちにあり、そのように行動するかもしれません。これに対する解決策は......そうさせておいてください。それから、彼らの行動の結果を“現実の”世界に登場させるのです!
エラッタ修正:【誤】投射 【正】投影体
[[移動の方法>他の次元世界#Modes_of_Travel]]最後に、GMは次元間移動に使われる実際のメカニズムを決めなければなりません。以下のようなオプションがあります。
- 人工物:Artifacts
- 正しい時間、正しい場所:Right Time, Right Place
- だれでも別の次元に移動することができます。しかし、ある条件の下――夢の中で、特定の月日(星辰の位置が正しく並んだとき!)、特定の場所(妖精神話の“くほんだ丘(hollow hills)”や、深宇宙のワームホール)などのみでです。上記の2つ以上が条件になることもよくあります。
- 特殊なパワー:Special Powers
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