GURPSよろず - 〈多足のもの〉

目次

〈多足のもの〉

 土の元素と結びついた種族で、ルナルの地中深くの洞窟に生息する。見た目はヤドカリそのもので、発声器官が退化してしまったため、脚で地面を踏み鳴らす音で会話する。神の力によって、機械テクノロジーがいびつな発展をした種族であり、近代的な銃器やコンピュータ、果ては人工知能などを開発・運用する力を持つ。しかし種族的に怠惰であり、それらを共有して社会全体を豊かにしようという発想がないため、作った発明品は1代限りの使い切りである。そして、それら超技術による他種族への侵略行為などを行う意思もないようである。雌雄同体であり必要に迫られて性別を変える。
身体形状:岩のような殻と、そこからでたらめに突き出した多数の触手や蟹の脚。
支配領域:地底。ごく稀に、はぐれ者は地上近くに出てくる事も。リアドでは南西部の無限回廊山脈やグラダスのスティニアに多い。
使用言語:<多足のもの>語(足で地面を叩いて会話するため、異種族が音声で話す事は不可能。異種族の場合、太鼓など楽器を用いる必要がある。)
社会形態:地下洞窟や地底都市で暮らし、徹底した個人主義社会。イメージとしては研究所の研究員のごとく、普段はそれぞれがバラバラで好きな事をやっているが、何か目標が出来た時は一時的に団結して成功を目指してみんなでがんばる学生運動やクラブ活動のノリの延長。社会全体に関わる決断が必要な場合は、〈組み合わされた頭脳〉と呼ばれる複数の思考を1つの機械内部に搭載した行政マシーンが思考と決断を行う。種族の性格からして工業が発達しているものと見られるが、それぞれが好きな物をバラバラに作っていると思われるため、特定の充実した産業などはないと思われる。
家族制度:人間と同じく一夫一婦(両性具有だが)で結婚を行うが、責任の共有は生じない。子供も放任状態で育つ。
一般的性向:好奇心の赴くままに活動するが、自分が動くような面倒事を嫌う。異種族から見ると支離滅裂。
長所:硬い殻。赤外線視覚。酸の唾による攻撃。壁や天井を自在に這い回る脚。高度な技術を持ち、しもべとして機械を使う。種族の8割以上が「魔法の素質」を持って生まれるため、大半の個体が地の元素魔法を用いる。
短所:好奇心が激しいくせに怠惰。高度な発明を行っても「面倒だから」広めようとも考えない。発声器官を持たない。引き籠り体質なため異種族との関わりが極度に乏しく、他者との精神的な共感は難しい。
命名法則:音による固有の名前を持つが、普段は「自分」「配偶者」「子供」「他人」で済ませてしまう。
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レポート Raid the Moon ■第3版完訳版キャラクター作成ルール

■<多足のもの>基本セット改(+100cp)

知力+1、生命力+1(20cp)。
財産/富裕(20cp) 初期の所持金は5000ムーナ。

石の体L4(24cp)
受動防御1、防護点2。移動力が80%に減少(端数切上げ)。パンチ、キックのダメージ+2。音波や振動による攻撃に対しては、防護効果が一切無視される。
物質透過/土、岩(20cp)
生命力を1点永久に減少させることで、1分間の間、土や岩を透過できる。
体表呼吸(20cp)
体表全体から酸素を取り込む。首の概念がないので首絞めで窒息しない。水中でも酸素が含まれるなら窒息しない。ただし真空や土中など酸素がない場所では窒息する。
雌雄同体(5cp) オスにもメスにも自由に変更可能。
過剰睡眠(-10cp) 12時間の睡眠が必要。

複数の触手(0cp)
人間の指に相当する部分がそれぞれ独立した触手になっており(左右で合計10本)、人間の手や腕と全く同じ性能を発揮する。実質ペナルティなし。
複数の足(20cp+6cp)
足が10本存在。移動力+1。3本以下で移動力ボーナスなし。<多足のもの>は発声ができないため、この足を踏み鳴らすリズムで「会話」を行う。
はりつき(25cp)
天井や壁を移動力の半分の速度で這い回れる。ペナルティなし。

赤外線視覚(15cp)
暗闇の戦闘でもペナルティは-1のみ。隠蔽物発見の視覚判定+2。過去1時間以内の追跡であれば、<追跡>に+3修正。
触手の口(-25cp)
触手の1本が口。酸の唾を吐けるが発声できない。「言語障害」の特徴として扱われる。
酸の唾(PL2)(2点疲労、射程短縮 -20%)(10cp)
触手の口から酸の唾(胃液)を発射して攻撃可能。準備1秒で呪文と同じタイミングで発射。使用時に2点疲労する。射程「生命力」メートル、ダメージは叩き2D-2。本来の用途は、食べ物にぶっ掛けてペースト状にして吸収するためのもので、疲労しながら大量に吐き出すような使い方はしない。

好奇心L2(-10cp)、 怠惰(-10cp)
強迫観念/機械技術に対する異様な興味(-15cp) 一日の大半はこれに費やされる。
熱狂/銀の月(-15cp) 銀の月の繁栄を最優先する。地の元素神だけでなく、銀の月の神全体に敬意を抱いている。

■<多足のもの>に多い特徴

 元素神から「発明家」の特徴を与えられた個体の多くは、神より下賜されたアイデアの再現に没頭するため、「放心」の特徴を持つ個体が多くみられます。
 また研究を邪魔されたくない(動きたくない)理由から、「専守防衛」の個体も多くみられます。社会秩序を乱される行為も、研究の邪魔になる事件のトリガーになりやすいため、とりあえず規則に従っとけば大丈夫とばかり「誠実」である個体も多いようです。

 <多足のもの>は人口の8割が「魔法の素質」を持って生まれ、その多くは「発明家」の特徴を持っていません(「発明家」の代わりに「魔法の素質」を与えられて生まれてくると考えてよいでしょう)。
 そういう個体は既存の技術レベル範囲内で「改造品」の開発に従事するか、魔法の品との組み合わせで新製品を編み出す事に活路を見出します。

 稀に「魔法の素質」と「発明家」の両方を備えた個体が誕生しますが、彼らはテクノロジーと魔法が混合した奇妙な魔法機械を作り出します(その多くは量産すらできず、作った当人すら修理も困難なシロモノですが)。

 さらにごく稀ですが、「素質」も「発明家」も持たない個体がいます。これら「落ちこぼれ」の中からグレた個体が発生し、地上付近まで上がってきて、街から無断で持ち出したTL7の器物で地上の知的生命体に対して悪さをする事が、ごく稀にあります。

 一般市民クラスの<多足のもの>は、「魔法の素質」を持って150cp程度で作られます。「発明家」で200cp以上になります。PCが使うには色々と足枷が多い割にハイテク文明の恩恵が受けにくいため、基本的にはNPC専用です。
 なお、地面を叩くリズムによる個別のネームを持ちますが、個人主義が強い<多足のもの>社会では、「自分」「配偶者」「子供」「他人」が識別できれば十分なため、固有の名前は滅多に使われません。
例:「煌めく青玉」「静寂なる金剛石」「暖かな紅玉」など(<多足のもの>語を無理やり他の言語に翻訳した例。宝石やレアメタルの名前を付けることが多い)。

■独自の特徴

「発明家」(30cp)
 この特徴を持つ<多足のもの>は、神より選ばれた神託者であり、生まれつき「後援者/銀の月の地の元素神(30cp/特殊能力持ち+10cp)/頻度:まれ」(20cp)を持っています。また、社会的にも敬意を払われる存在となるため、「聖職者」(10cp)を獲得し、同族からの反応が+1されます。

 神託者はときどき、現在のルナルの文明水準からかけ離れた科学理論を思いつき、それを元に様々な機械を設計する事が可能です(実際には神が与えた啓示です)。アイデア的には文明レベル8に相当しますが、<多足のもの>たちは発明は好きでも、量産には興味を持たないため、試作品の段階で止まってしまう事がほとんどなので、普及はしません。
 また、理論は思いついた(啓示を受けた)本人しか理解不可能なシロモノで、損傷して修理できるのも本人だけ、再生産は不可能というありさまです。材料をそろえるための生産ラインや、基礎理論の蓄積など全くない、文字通り「神からの賜りもの」なので当然ですが。

 それでも、アイデアの一部は解析されてモデル化され、他の機械を作る際の参考にされます(社会全体がTL7を維持できているのは、このためです)。
  <多足のもの>は徹底した個人主義ではありますが、群れて何かする場合は臨時でリーダー格が集団を統率します。リーダーには、この特徴を備えた個体が優先的に選ばれます。

「働き者」(10cp)
 ごく例外的に、「怠惰」でない<多足のもの>が存在します。こうした個体はほとんどの場合、機械技術に憧れて銀の月の信徒に転身した、生まれつきでない「他種族出身」の<多足のもの>です。

 彼らは「発明家」が作り出した機械の構造解析に熱心だったり(技術の共有化)、あるいは他種族との外交を積極的に引き受けたりしてくれます。生まれつきの<多足のもの>はこうした事に無頓着なので、「働き者」の個体は仲間内からも重宝がられます。


「肉体のない脳」(-100cp)
 特に優秀な知能を持つ個体は、死に際に脳だけを取り出され、<多足のもの>社会を統治する「組み合わされた頭脳」の一部として組み込まれる事があります。脳は特殊な培養槽に格納されており、精神的に活動する事が可能です。

 この特徴を持つ者は体力の概念がなくなり、疲労点は知力が基準となります。敏捷力は、射撃呪文の命中判定などの際に使用します。生命力は呪文抵抗などに用いられますが、物理的には1点のダメージで意識を失い、2点のダメージで自動的に死亡します…培養槽自体がかなりの防護点とHPを持つため、早々に破壊されることはないでしょうが。
 また分泌腺をもたないため、激しい感情とは無縁です。理性的な悲しみや恐怖、友情などは感じます。恐怖判定に+5の修正があります。

 これは基本的にNPC用の特徴であり、PCが持つことはありません(持つような事態になったら、以後はNPC扱いでしょう)。

■特殊装備

 基本的に<多足のもの>のみが入手可能で、メンテナンスなども<多足のもの>の都市に行かねば不可能なので、他の種族が使う事はできません(稼働中の武器などを一時的に入手はできても、そもそも技能がないのであまり役に立たないでしょう)。

 ここに挙げる以外にも、無数のハイテク機器が存在します。ただし、流通していてお金を出せば誰でも手に入る品となると極端に制限されます(彼らは量産に興味がないからです)。GMが更なる追加を望むなら、「ガープス・サイバーパンク」などから引っ張ってこればよいでしょう。
★人造甲羅
 生得能力の石の甲羅の上に、さらに人工的に装甲を張り付けて強化できます。これらは装飾の意味合いも込められて、人間から見ても美しい造形をしています。
 防護点が+1されるごとに重量+5kg、価格$300かかります。防護点+2ごとに受動防御も+1されます。防護点に理論上の限界はありませんが、受動防御は最大で6です。
 なお、これはTL3で生産・運用可能な装備なので、人間やドワーフの鍛冶屋でも修理などを行う事は可能です。
★酸の杖
 採掘のために使用される酸投射装置ですが、武器としても使用できます。他種族には「黒い光沢のない物質でできた杖のような何か」に見えます。原理的には、内蔵された加速器を用いて酸を高速で噴射するというものです。形状や効果範囲は、現代のショットガンに似ており、両手で使います。
 狙った場所に当てやすいようにとの配慮か、レーザー照準器が付いてます。データの「抜撃ち」と「正確さ」は照準器を使ったのものとして計算されています。何らかの理由で照準器がオフの場合(例えば狙撃場所を隠したい場合など)、抜撃ち+2、正確さ-2として下さい。

 弾倉には再利用可能な瓶のカートリッジが付いており、瓶には強酸が入ってます。取り外し可能です。満タンのカートリッジ1つで、3発まで連続して撃てます。カートリッジの交換は「銃から空のカートリッジを取り外す」「ふところから新しいカートリッジを取り出す(<準備/弾倉>に成功すれば一瞬)」「銃にカートリッジを装填」で合計3秒(準備に成功すれば2秒)かかります。
 また、加速器とレーザー照準器を動かすためには電力が必要ですが、さほど消費はせず、合計5分の戦闘時間まで持ちます(管理が面倒なら、1回の戦闘で1分の使用として下さい)。バッテリーは銃の一部であり、取り外しはできません(そこまで効率化されてません)。充電は<多足のもの>の都市に行けば無料で行えます。

 基本的にこの装備は、必要体力が大きく<多足のもの>が扱うにはやや困難なシロモノなので、たいていはサーバント「グノーメ」(下記参照)の汎用型に持たせて運用するのが一般的です(普段は採掘に用い、戦闘時には射撃武器として使うパターン)。
 仮に、他種族がこれの鹵獲に成功しても、充電方法と強酸の代用品がない限り、利用する事は困難でしょう。一応、緊急手段として<多足のもの>が自分の胃液を瓶に3回分入れて、弾(の中身)を補填する事はできますが、武器として使う酸としては弱いので、銃の威力も半分(2D)に落ちます。

酸の杖 叩き4D 抜撃ち10 正確さ5 射程25/50m 重量5kg 連射1 弾数3 反動0 必要ST12 価格$4000
 *ボトル・カートリッジ 20ムーナ(中身の強酸だけ補充するなら10ムーナ) 1kg(空っぽの瓶は0.1kg)

★モーション・トラッカー
 電波の反射によって、周辺の移動物体をモニターに表示する大型懐中電灯サイズの機械です。通常は逆腕に持って使います。電気で稼働し、稼働中は装置を中心に半径50メートル範囲内に、毎秒<生命探知>の呪文を放っているのと同じ効果があります。
 ただし探知するのは生命体ではなく、あくまで「動体」なので、生き物でない自然現象の動きなどもモニタリングされます。基本的に壁は障害にならず、50メートル以内であれば大抵の動体は発見できます。
 あらかじめ無視すべき動き(例えば水や空気の流れ、パーティー内の味方など)を除外するようにフィルタリングを設定する事も可能です。設定や本体の修理は<電子機器/探知機>技能で行います。

 これを使う事により、何か発見するための「視覚判定」に+10のボーナス修正があります。本質的には電波感知なので、暗闇など照明のペナルティも一切受けません。少なくとも「完全な不意打ち」は避けられるでしょう。相手がこちらに気付いてなければ、こちらが先制攻撃を仕掛けられるでしょう。連続稼働時間は1時間ほどで、<多足のもの>の都市にいけば無料で充電できます。

モーション・トラッカー 1200ムーナ 5kg

★情報端末
 携帯用の小型端末で、計算機やスマフォのような小型デバイスです。腕時計のように手(触手?)に装着して持ち運べます。同じ端末同士で通信が行える(30km程度)他、「サーバント」(後述)への命令コマンドを遠隔で飛ばす際にも利用できます。
 また辞書機能も付随しており、調べものをする時に役立ちます。<調査>判定に成功すれば、必要な学術系技能の基本的な知識が得られます。ペローマ信仰の独自技能<博物学>を誰でも使えるもの、と考えて下さい。

 ただし、使用されている言語は<多足のもの>語なので、他の種族が見ても理解できないでしょう。簡単に表現すれば、モニターには画像とアイコンのみが並んでいて、検索をかける度にリズミカルな電子ドラム音が聞こえてくるというものです(他種族から見れば、音ゲーか何かで遊んでるように見えます)。
 動力は電気で、連続使用で2時間ほど持ちます。<多足のもの>の都市にいけば無料で充電できます。

 情報端末は、運用するだけならば技能は必要ありませんが、情報を更新したりコマンドを書き換えたりといった作業には<電子機器/コンピュータ>、ハードウェアの修理には<電子機器/通信機>が必要です。また、プログラムの大幅書き換えや新規のアプリケーション・ソフトの制作といった大がかりな改造は「開発」とみなされるので、<電子工学/コンピュータ>技能が必要です。以上の作業は、専門技能を持つ<多足のもの>の技術者の所に持ち込み、委託するのが普通です。

情報端末 600ムーナ 軽い

★サーバント
 <多足のもの>ならば誰でも購入可能なサーバントとして、元素獣と魔化系呪文<ゴーレム>を用いて作られた、魔法とテクノロジーのハイブリッド人造ゴーレムの亜種「グノーメ」と、完全にテクノロジー技術だけで作られたAI搭載警備ロボット「メスクリン」があります。
 これらは運用するだけならば特に技能は必要ありませんが、コマンドを追加したりする場合は<電子機器/コンピュータ>、物理的な修理は<電子機器/保安システム>が必要です。設定変更を行うの場合、通常は専門技術を持つ<多足のもの>の技術者の所に持ち込まれます。
・グノーメ(ルナル完全版p187) $2500(戦闘型は$5000)
 「汎用型」と「戦闘型」が存在し、「汎用型」は10CP分の技術系あるいは戦闘系技能を習得しています。技能に対するCP配分は、所有者たるキャラクターが自由に設定できます。なお、汎用型の武器は所有者が自前で用意する必要があります。戦闘型は装備やCP配分が固定であり、p187のデータをそのまま用います。
・メスクリン(ルナル完全版p187) $3000
 地底掘削作業と戦闘に特化したサーバントで、データは完全に固定されています。カスタマイズしたい場合は、GMと話し合いの下で行って下さい。

■独自の技能

 <多足のもの>のみが習得可能な技能です。
<<多足のもの>語>(精神/並)
 <多足のもの>が使用する言語で、地面を叩く時の音のリズムがそのまま言語としての意味を持ちます。モールス信号がそのまま独自言語になったものと考えて下さい。これは母語扱いなので、最初から知力に等しいレベルで習得しています。
 <多足のもの>にとっては難易度が「並」ですが、他種族が習得する場合は「至難」として扱います。
<地の元素語>(精神/並)
 銀の月が到来した初期に使用されていた言語です。元素獣は今でもこの言語で会話します(会話するだけの知能がなくとも理解はできます)。なお、この言語も<多足のもの>語と同じく音のリズムで現されます。呪文を詠唱する際に言語が必要な場合、これが使われます。元素獣の召喚後、交渉する場合もこの言語で行われます。
 とりあえず10レベル以上あれば、意思疎通に問題はありません。
<酸の唾>(肉体/易) 技能なし値:敏捷力-3
 酸の唾で射撃を行う場合の命中判定に使います。抜撃ち12、正確さ0として扱います。射程は「生命力」メートルです。ただし酸の唾は、一回使用するごとに2点疲労するため、そう何度も使える手ではありません。
<多足戦闘>(肉体/易) 技能なし値:敏捷力-3
 <多足のもの>は、触手を束ねてパンチを繰り出す事もできますが、発明家にとって器用な手や指はとても大事なものなので、戦闘などという野蛮な行為には使いたがりません。彼らは近接戦闘になると、たくさんある足を使って蹴りに特化した格闘技を行います。

 この技能でキックを行った場合、命中判定は<多足戦闘>技能そのままが目標値になります(<格闘>技能での蹴りのように命中判定に-2のペナルティがありません)。また、キックのダメージに、技能レベルの10分の1だけプラスされます(端数切捨て)。さらに生得能力として「石の体」を持つため、ダメージがさらに+2されます。キックの射程は「C、1」です(<空手>のように近接キックが可能)。

 ただしこの技能では、腕を使った戦闘は想定してないので、素手による「受け」は一切行えません。この技能は、足がたくさんある<多足のもの>が使う事を前提にした体術なので、人間(およびそれに類似した亜人)が習得する事はできません。
<銃器/酸の杖>(肉体/易) 技能なし値:敏捷力-4、他の銃器-4
 酸の杖を扱う技能です。知力10〜11で+1、知力12以上で+2の修正があります。採掘銃の修理を行う場合は<機械工/小型電動機>技能を使います。
<準備/弾倉>(肉体/易) 技能なし値:なし
 採掘銃の瓶型カートリッジをふところから取り出す技能です。判定に成功するとゼロ秒に短縮できます。失敗したら通常通り1ターンかかります。ファンブルすると落としてしまいます。なお、カートリッジの素材は頑丈なので、落とした程度では割れません。
修正:「戦闘即応」があれば+1。
<機械工/TL7>(精神/並) 技能なし値:知力-5、技師-4
 「発明家」が作り出した発明品の構造解析を行い、ある程度原理が判明していて流用できる部分の技術の集大成知識だと思って下さい。あくまで「経験則」に基づくものなので、化学的・物理学的な基礎理論は皆無です。「原理はよく分からないが」「過去の経験上、どういう構造が保たれていれば動くかくらいなら分かるので」「とりあえず使ってる」が基本です。
 この技能を使えば、機械の修理を行う事が可能です。以下のジャンルで専門化して下さい。

 蒸気機関/小型機器(時計などゼンマイ式)/小型電動機/大型電動機/ディーゼル機関/電気推進機関
<技師/TL7>(精神/難) 技能なし値:機械工-6(その分野においてのみ)
 複雑な機械の設計・製造を行う技能です。ジャンルごとに必ず専門化し、前提条件を取得して下さい。その多くは<機械工>が前提技能になっています。以下、ルナルっぽい主な分野の例を示しておきます。

 発電所(前提:機械工/蒸気機関orディーゼル機関)/地底採掘機械(前提:機械工/ディーゼル機関or電気推進機関および採掘)/採掘銃*(前提:機械工/小型電動機)/高速トロッコ(機械工/大型電動機)

 *「酸の杖」の事です。
<電子機器/TL7>(精神/並) 技能なし値:知力-5、電子工学-3
 こちらは電子機器における<機械工>の技能です。電子機器を修理したり改造したりできます。以下のジャンルで専門化して下さい。

 通信機/コンピュータ/医療機器/保安システム/探知機

<電子工学/TL7>(精神/難) 技能なし値:他の電子工学-4 前提:数学(共通)
 こちらは電子機器における<技師>の技能です。以下にいくつかジャンルを挙げておきますので、それぞれ専門化して下さい。前提条件はジャンルごとに異なる他、共通条件として<数学>技能が12レベル以上で必要です。

 情報端末(前提:電子機器/通信機およびコンピュータ)/サーバント(前提:電子機器/保安システムおよびコンピュータ)/統合電子頭脳*(前提:電子機器/医療機器およびコンピュータ)/モーション・トラッカー(前提:電子機器/探知機)

 *行政用の思考機械「組み合わされた頭脳」の事です。

<地の契約>(精神/難)
 元素獣相手に特化した<外交>技能です。またこの技能には、各元素獣の大よその生態知識も含まれています。元素獣は、それぞれの(元素界での)生態に応じた特殊な慣習や思考をしており、<源人>の子孫の常識や倫理は一切通用しないため、この技能による交渉でしか契約できません。

 <元素獣の召喚>の呪文(後述)によって召喚された元素獣は、召喚後にこの技能によって契約を行う事で、忠実に仕えてくれるようになります。契約が終わるまでは、相手は完全な自律意思を持って存在しているため、従わせることはできません。

 術者が同時に従えておける元素獣の数は、この技能レベルの5分の1(端数切り上げ)までとなります。また、元素獣の召喚コストに等しいレベルでこの技能を保有していないと、その元素獣との契約は成功しません(作成段階で元素獣を保持しておくための指標となります)。おおよその元素獣の召喚コストは8〜12なので、12レベルあればたいていは事足りるでしょう。
 なお、契約に必要な技能レベルは、どんなに召喚コストが高くても最大で20となります(火の元素獣フェニックス(召喚コスト200!)も、20レベルあれば契約成功というわけです)。

 元素獣との契約は、術者が契約を解約するまで有効であり続けます。距離は関係なくなり、例えば元素獣をどこか術者から離れた地に配置し、見張りをさせたり伝言を頼んだりすることも可能です。
 元素獣のHPがゼロ以下になると、毎ターンの始めに生命力基準の意識維持判定を行い、失敗すると元素界に帰ってしまいます。また、マイナス生命力値まで達し、生死判定が必要になった場合、自動的に元素界へと送還されてしまいます。ただしこれらは一時的なもので、HPが回復すれば再び呼び出せるようになります。HPの回復度合いは、1日に付き1D点となり、マイナス生命力以下でなければ、完治していなくとも召喚可能です。

修正:NPCへの反応修正がそのまま技能レベルに加算されます。「容貌(同性相手の反応)」「カリスマ」「美声」などが有効です。逆に「悪い容貌」「嫌な行動」などのマイナス修正も加わるので注意が必要です。ただし「名声」は異界の元素獣には何の意味も持たないため、基本的に無視します。(元素界に特化した名声などがあれば、それは有効になりますが…)

■習得可能呪文

 「魔法の素質」を持つ<多足のもの>は、地霊系、酸系、魔化系、物体操作系、防御/警戒系の5種の呪文を習得可能となります。系統外の呪文が前提条件に入っている場合、それらは無視できます。
 さらに、以下の独自呪文が習得可能です。

<元素獣の召喚> 特殊
 特定の元素獣1体を召喚します。呪文名は<ナルガンの召喚>とか<コーボルトの召喚>など、召喚する元素獣に対応する名称にして下さい。<多足のもの>の場合、地の元素獣に対応した召喚呪文を習得する事ができます。
 召喚コストは元素獣ごとに決められており、消費コスト1点ごとに集中1時間、召喚費用が50ムーナかかります。ゲーム開始時に召喚獣を保持しておきたい場合、召喚費用を財産から払っておく形となります。

 召喚儀式の判定に失敗しても、作った祭壇は無駄にはなりませんが、丸一日置かないと再度召喚を試みる事はできません(パワーが回復してないので自動失敗となります)。またファンブルした場合、召喚獣が現れますが祭壇を破壊し、元素界へと帰ってしまいます。その際、術者も攻撃を受ける可能性があります(処理が面倒なら、術者に3Dダメージを与えて帰ったという事にして下さい)。

 召喚後、<地の契約>技能(上記)で契約を終えた元素獣は、普段は元素界に待機させておき、1ターンの集中で呼び出すことが可能です。その際、この呪文の判定が再び必要となります(通常呪文と同じく、呼び出す場所までの距離ヘクス数が判定時のマイナス修正になります)。召喚コストは、契約前に呼び出した時の半分だけ消費します。
 元素獣の呼び出しは1回に付き1体だけで、命令も1体ごとに行います。命令には最低1ターンかかります(「そこのドアを開けろ」「奴らを殺せ」など)。複雑な行動をさせる場合、人間に指示を与えるのと同等の時間がかかります。

■持続:1時間、維持不可 ●消費:元素獣ごとに固定 ◆準備:エネルギー1点ごとに1時間。これらは連続して行わなければならない。熟練によるコスト減少で準備時間も短縮される。 ★前提:素質1 ▲魔化:召喚する元素獣のイメージを刻んだ杖、錫杖、装身具など。必要エネルギー800。$1300相当の銀とプラチナが必要。
[召喚可能な地の元素獣]
★ナルガン(ルナル完全版p186) 召喚コスト:15
 岩の塊。破城槌として呼ばれ、壁にぶつけられる。
★コーボルト(ルナル完全版p186) 召喚コスト:8
 岩の小人。知能が非常に高く雑用向き。
★ガーゴイル(ルナル完全版p186) 召喚コスト:12
 岩でできた翼を持つ猿。拠点防衛用に向く。。
(酸系呪文)
 「ガープス・グリモア」に掲載されていますが、おそらく持ってない人の方が多数なので、簡単な代用手段を書いておきます。
 酸は水と同じ扱いですが、いくつかの点で火と同じ部分があります。基本的に火霊系呪文(一部、水霊系呪文)で酸系呪文を代用できます。以下のように置き換えて下さい。

 <酸作成>→<火炎>で代用。前提:素質1、<土作成>
 <防酸>→<防熱>で代用。前提:<酸作成>
 <酸噴射>→<火炎噴射>で代用。前提:素質2、<酸作成>
 <酸吹き>→<火吹き>で代用。前提:素質3、<酸噴射><防酸>
 <酸球>→<火球>で代用。前提:素質2、<酸作成>
 <酸の雨>→水霊系の<雹>(5倍消費の大きな雹)で代用。前提:素質2、<土作成>
 <聖酸>→水霊系の<聖水>で代用。ただし浴びると<火炎>の3倍ダメージ発生。基本消費コストは4リットルにつき8。前提:酸系呪文6種(つまり上記全て)。

 データの一部に違いはありますが、基本的に誤差の範囲で、ゲームの進行にほぼ影響しません。ちなみに<酸作成>で作られた酸を浴びると1D-3のダメージを負い、酸に満たされたヘクスで1ターン過ごすと1D-1点のダメージを負います。防護点は1ターンだけ有効です。
 なお、1ヘクス分の酸は合計8点のダメージ(<聖酸>のみ24点)を何らかの物体(生物)に与えると中和されてしまい、塩辛い水だけが残ります。
 <水浄化>を使うと真水になります。<水破壊>を使うと塩の小さな塊が残ります。

■ウィザードの扱い

 <多足のもの>にも素養者は生まれますが、生まれる場所が地底都市のため、他のウィザードに引き取られる機会がなく、そのまま<多足のもの>として育てられます。よほど「特殊な背景」がないと、<多足のもの>出身のウィザードなど存在し得ないでしょう。

★元ルールからの変更点 (2018年11月22日 最終更新)

 元ルールの基本種族セットはかなり大雑把だったので、大規模に構築しなおしています。生まれつき持ってる殻は「石の身体」で表現し、10本の足もきちんと再現しました。触手に関しても、指がそれぞれ独立して触手化したものとすれば、無数の「指」のためにCPを払わずに済むので、そういう設定にしました。
 触手の中には一本だけ口に相当する器官が混じっており、そこで食事したり唾を吐きかけたりします。その酸の唾ですが、ノーリスクで連打可能とか強すぎてバランス崩壊しているため、戦闘での使用を想定する場合は、一回使用するごとに2点疲労させることにしました。大量の体液をゲーゲーと吐き出して消耗しているのに、疲労しない方がむしろおかしいと言えます(笑)。なので、体力的に2〜3回噴射するのが限界でしょう。

 その他、精神的な面は現行ルールに沿っています。彼らの崇める地の小神は頻繁に寝ている事から、その僕たる彼らにも「過剰睡眠」を持たせました。

 社会的側面から見ると、<多足のもの>たちは地の元素神より高度機械文明の恩恵を与えられており、それにより「財産」を標準的なルナルの住人より、はるかに多く持っています。これらの富は、機械技術によって作られた「サーバント」に、インフラを始めとする単純労働を代行させることで得られたもので、現実世界によくあるような「特定層の市民を奴隷の地位に貶めて酷使する」といったような、待遇格差によるディストピア社会に陥ることなく、それを達成しています。

 なお、地底都市のイメージですが、箱庭ゲーム「マインクラフト」のマルチサーバーにおける都市をイメージしています。マルチ鯖における建設物の大半は、「農作物を大量栽培する畑」と、「大量精錬を可能にする大量のかまど」、後は「資源ワールドから採取した物資を貯蔵するために拡張し続ける倉庫街」だけ。物資は溜まっていく一方で、使い手がいない状況です。
 これは、マイクラのユーザキャラが基本的に「生産者」サイドの人であり、消費を重視するスタイルのユーザが事実上いないためにこうなるわけですが、「全員がほぼ生産者」である<多足のもの>シティでも同様の現象が起きると想定し、発電施設とパワーストーンが立ち並ぶだけの機能都市をイメージしました。彼らは生産したエネルギーの使い道に乏しく、持て余しているため、装備の充電などは無料で行わせてくれます(むしろ消費者に飢えています(笑))。

 装備に関しては大幅に追加しました。「酸の杖」の元となったアイデアは、「ルナル・モンスター」のオーク種族のサンプルキャラの例文に「酸を発射する杖」という表記でちらっと出てきます(多分これ、酸を放つ銃の事かと思われます)。データ化の際に参考にしたのは、マインクラフトの「インダストリアルMOD(電力要素と科学製品の追加)」に登場する採掘レーザーガンですが。
 また、神から授かった神秘学めいた科学ということで、カバラ理論に基づくパソコン的な端末を携帯すればそれらしくなると思ったので、情報端末を設定しました。

 これらは全て電力で稼働していますが、「杖」の弾丸などは別途で補充が必要となります。

 独自の特徴「発明家」は元ルールそのままもってきましたが、内容を明確にしました。<多足のもの>の発明家があり得ない頻度で文明改革レベルの閃きを起すのは、やはり神が介在しているからとするのが妥当です。なので、アイデアを啓示の形で送り付けてくるのを表現するために、神さまを「後援者」に設定しています。

 独自技能に関しては、まず格闘技を足を使ったものに変更しています。科学者にとって、器用に動く手や指先は大事な部分なので、これを戦闘に用いるより、大量に余ってる足を使う方が合理的かと思われます(笑)。

 技術系技能に関しては、<化学>や<物理学>がTL7でないのに、<技師>や<電子工学>がTL7という奇妙な事になっています。これもまた、銀の月の元素神による「前置きもなしにいきなり最適解を寄越してくる」特性を示すものです。彼らは「どうしてそうなるのかよく分からないが、そのとおりにしたらちゃんと力を発揮するので、そのように作って使う」という、統計学に基づく経験論だけでこれらを運用しています…非常に危なっかしいことをやってるわけですが、そもそも銀の月の種族は「個」の命など屁とも思ってないので(笑)

 なお、<コンピュータ>や<プログラム>技能は存在しません。彼らが使う機械のソフトウェアに、共通フォーマットなどといった便利な概念がないからです(流通に興味がないので)。一部、保安装置と情報端末でプログラムの互換性がある程度です。
 そのため、マシンごとに別々の法則のプログラムを組むハメになり、別々の技能で修理、運用する非効率な状況になっています。誰かが意見調整してどうにかすればいいのでしょうが、そういう面倒な事をしないのが<多足のもの>なのです(苦笑)。

 呪文に関しては5系統に増やし、そのうち一つを「魔化系」呪文にしました。グノーメのような魔法寄りのサーバントを作る過程で<ゴーレム>の呪文が必要なはずなので、やはり魔化系を使わせないと不自然と判断し、そのようになりました。また、他の種族との交流がないため、魔化品をウィザードから購入する事ができません。なので独自の魔化技術を持っている方が自然なので、こうなりました。
 習得系統が大きく制限されているため、ウィザードほど豊富な魔化アイテムは作れません。メリットは、パワーストーンを独自で作り出せること、軽量かつ強靭な防具が用意しやすい事、ゴーレムを作れる事などでしょう。