GURPSよろず - 騎乗戦闘

第4版『ベーシックセット』2巻第13章「特殊な戦闘の状況」の章の「特殊な移動」より。
ここでいう「各キャラクターのターン」は「能動ターン」のことと思われる。

騎乗戦闘(MOUNTED COMBAT) B375P/2B55P


 騎士、カウボーイ、ネイティブアメリカン、および他の冒険者はしばしば鞍の上から戦います。乗騎(乗っている動物)は機動性を追加するだけではなく、その高さと勢いは騎士の攻撃をより効果的にします。また乗騎による突撃の衝撃は準備のできない敵をパニックに陥らせます。さらに、乗騎によっては自ら戦うものもあります。
 時にはラクダや象に乗るという例外もありますが、ふつうの騎兵たちは馬に乗っています。そこで以下のルールでも、馬に乗っているものとして扱います。馬と、ファンタジーやSFに登場するさまざまな乗用動物の差については、その動物の説明を参照してください。
 通常、戦闘用に訓練された乗騎は、乗り手が武器を使うために両手を離していても、声や足で圧力をかけることで操ることができます。しかし<騎乗>判定には、両手を離している場合は-3、片手で手綱を握っている場合は-1の修正があります。馬を御するのに両手が必要になれば、乗り手は手に持っている物を落とすことができます。馬が前脚を跳ね上げている時に武器を鞘に戻すには、敏捷力-3判定と「準備」の戦闘行動が必要です。判定でファンブルすると、武器を落としてしまいます!
GURPS Fantasyではこれを補完するテクニックとして【手放し騎乗】(No Hands Riding)が追加された。
 戦闘用の訓練を受けていない、知的でない乗馬(「戦闘用に調教された騎乗動物」参照)は、危険にさらされると“怯えて”しまいます。特に、大きな銃声が上がったり、同じ種類の動物が傷ついた場合は敏感に反応します! 戦闘訓練を受けていない馬は、戦闘中のすべての<騎乗>判定に、よく調教された馬で-3、完全に調教されていない馬なら-6以上の不利な修正を受けます。
 戦闘用に訓練された乗騎でなければ、障害物に突撃させたり、跳び越えさせたり、足場の悪いところへ行かせたり、ジャンプや急旋回のような危険を伴う行動をとらせたりするには、<騎乗>+2の判定が必要です! これは、乗騎自身の生命の危機に関わる場合は例外です。失敗すると乗騎は従いません。「怯え」を参照してください。

騎乗する(Mounting Up)

 馬などの動物に乗るには、2ターンの連続した行動が必要です。「移動」で背中に飛び乗ったり登ったりして、その後「姿勢変更」で座ります。-3の修正をうけて(あぶみがあればこの修正はありません)<騎乗><軽業><跳躍>のいずれかの判定に成功すれば、1ターンで飛び乗ることができます――ただし失敗すると落ちたことになります!
 上級戦闘ルールを用いている時には、乗り手は馬のような3ヘクスの生物なら真ん中、グリフォンのような2ヘクスの生物なら前の方に乗ります。象などのように背中の平らな乗騎については、乗り手はその上に立って歩くことができます。伝統的に象は乗り手(象使い)を首の上に乗せて、背中の象かごに数名の戦士を乗せます。

移動と行動(Movement and Maneuvers)

 さまざまな上記の移動については「乗用動物と荷役動物」を見てください。動物基本移動力は、それが歩いたり早足で進むことができるペースです。「高速移動」はギャロップ(全速駆け足)で、「高速での移動」のルールを用います。荷重ペナルティは通常通りに適用します(「荷重と移動」参照)。……ですが、並荷よりも重い荷重を進んで運ぶような乗騎は滅多にいません。
 戦闘では、乗騎はどんな行動をとることもできます。ただし高速での移動を行なっている場合は別で、その時は「移動」か「移動攻撃」しかできません。
 乗り手もどんな戦闘行動をとることもできます。まったく動いていないか、せいぜいステップしかしていない乗騎から安全に降りるには「姿勢変更」を使ってください。そうでなければ飛び降りるか、転落します。安全に飛び降りるためには「移動」か「移動攻撃」を選んで、<軽業>か<跳躍>判定に成功しなければなりません。失敗すると転落します!

落馬(Falling Off)
 もしジャンプ・急旋回・急減速などのために乗騎が敏捷力判定を行なわなければならなくなり、それに成功した場合、乗り手もまた<騎乗>判定を行なわなければなりません。失敗すると、乗騎はその行動に成功したにもかかわらず、乗り手は振り落とされてしまいます。もし乗騎が危険な行動に対する敏捷力判定に失敗した場合、「乗騎を御せなくなった場合のトラブル」の12の欄を見てください。


怯え(Spooked Mounts)

 乗騎が恐怖判定に失敗したり、ある特定の行動を行なうのを拒否した場合、“怯える”のが普通です。怯えた馬は、後ずさって前脚を跳ね上げます。乗り手は制御するために、毎ターン「準備」の行動を選択して、<騎乗>判定を行なわなければなりません。
 クリティカルで成功すれば、すぐに乗騎をなだめることができます。3回続けて判定に成功した場合も、結果は同じです。3回続けて判定に失敗したり、1回ファンブルした場合は、馬をまったく御せなくなったことになります(以下参照)。成功と失敗を繰り返している間は、敵ではなく自分の馬の相手をするのに手一杯になります。幸いにも、前脚を跳ね上げている馬や、その乗り手は「よけ」を行なうことができます。ただし他の能動防御はできません。


乗騎を御せなくなった場合のトラブル(Mount Loss of Control Table)

 乗騎を完全にコントロールできなくなった場合、サイコロを2個振って次の表を見ます。乗り手が投げ出された場合や、乗騎が転倒した場合などは、サイコロをふらずに適当な結果を参照します。
出目結果
2: 乗騎から投げ出されます。ダメージは3メートルの落下として扱います(非常に背が高かったり低かったりする乗騎については、適宜修正してください)。意識を失ったのでない限り、乗騎を呼び戻すために、すぐに<動物使役>-3判定を行なうことができます。判定に失敗した場合は、5分ごとに判定を試みることができます。
3: 手綱から手が離れて転落してしまいます。2メートルの落下ダメージをうけます。<跳躍>か<軽業>判定に成功するとダメージを無視できます。上の2と同じようにして馬を呼び戻すことができます。
4: 手に持っていた物を落としてしまいます。この表でもう一度振ります!
5: 乗騎が敵や危険に向かってまっすぐ突進してしまいます。
6、7: 乗騎は疲れてしまいます。数時間休息するまで、戦ったり、ゆっくりと歩く以上の速度で移動することはできません(移動力は2になります)。
8、9: 乗騎は、一見落ち着いたように思えますが、実際は気がたっています。戦闘中のすべての<騎乗>技能判定に-1されます。この修正は累積します。
10: 乗騎が敵や危険からまっすぐ遠ざかってしまいます。
11: 鞍が緩んでしまいます。乗騎から降りて、4D秒かけて革紐を締め直すまで、すべての<騎乗>技能判定と命中判定に-3されます。もし鞍なしで乗っている場合、3と同じ結果を適用します。
12: 乗騎が転倒してしまいます! 敏捷力+1判定に失敗すると、乗騎が脚を折ってしまいます。その結果に関わらず、乗り手は<騎乗>-2判定を行ないます。この判定に失敗すると、転落して3メートルの落下ダメージを受けます。成功した場合、もう一度<騎乗>判定を行ないます(荷重レベルがペナルティになります)。成功すれば、転倒する馬から飛び降りることができたことになり、3番と同じダメージをうけるだけですみます。2度目の判定に失敗した場合は、乗り手が馬の下敷きになって、乗騎の体力を基準とした突き/叩きダメージと、2メートルの落下ダメージを受けます。


乗騎の攻撃(Attacks by Mounts)

 戦闘用に訓練された乗騎は適切な戦闘行動をとった場合、自分で攻撃することができます。詳細は第16章「動物とモンスター」を読んでください。馬は噛みついたり、蹄で蹴ったり、踏みつけたりします。蹄鉄をつけているなら、蹴りと踏みつけダメージが+1されます。直前のターンに馬が攻撃していれば、乗り手の攻撃には-2のペナルティがあります。

パニック(Panic)
 もし騎乗した戦士が、騎兵に対して準備できていないNPC(GMの判断)にまっすぐに突進した場合、GMはそのNPCが立ち止まって戦闘を続けられるかどうか意志力判定を行なわせてかまいません。失敗すると、そのNPCは戦うのではなく逃げ出そうとします。「戦闘即応」があれば+6の修正があります。ただしNPCのサイズ修正が乗騎と同じかそれ以上の場合は逃げ出しません!


騎兵用武器(Cavalry Weapons)

エラッタ修正:「Cavalry Weapons」は日本語版ベーシックにて訳語不統一になっている。2巻における「騎兵の武器」は1巻の「騎兵用武器」に訳語統一する。
白兵武器(Melee Weapons):
 乗り手は<白兵武器>技能か<騎乗>のどちらか低い方で、白兵武器を用います。したがって、乗り手として充分な訓練を積んでいっれば、騎上で手持ち武器を用いるのにペナルティはありません。もし敵と乗騎の相対速度が7以上である場合、命中には-1の修正がありますがダメージは+1されます。このルールは、オートバイや似たような開放式の乗り物に乗って戦う時にも使います(<騎乗>を<運転>と読み替えてください)。

ランス(Lances):
 <ランス>技能に解説されています。ランスを構えるには乗り手は鞍とあぶみを使わなければなりません。ランスのダメージは乗騎の質量と速度によって決まります。乗騎と目標が衝突した場合のダメージを計算してください――「(乗騎の体力)×(前のターンに移動した距離)÷100」個分サイコロ(端数切り捨て)。これにランス突き/刺しによるボーナスの+3を加えます。例:体力25、移動力8で突進した軍馬の突撃は2D+3の刺しダメージを与えます。


馬上槍試合(Jousting):
 試合用の槍は、先を鈍くした木製のランスを用います。これは激しく命中すると折れるように作られています。このランスは上記と同じダメージを与えますが、叩きダメージです。さらに16点以上のダメージが出たときにはランスが折れ、ダメージも15点しか与えません。


騎乗して長射程武器を使う(Using Ranged Weapons While Mounted)

攻撃:
 移動する動物からの射撃は、射撃と乗馬の技量を試すことになります。<騎乗>か武器技能のどちらか低い方で判定します。轟音をあげる武器(サイレンサーのない銃など)なら、撃つたびに<騎乗>判定を行ないます。この判定に失敗すると、乗騎が怯えた状態になります。「怯え」の項を見てください。ファンブルだった場合は、乗騎を御せなくなってしまいます(前記「乗騎を御せなくなった場合のトラブル」)。
狙い:
 騎上から長射程武器の狙いをつけることができます。ただし乗騎がステップを越える移動を行なった場合、移動している乗り物から射撃する場合と同じペナルティを受けます。余分に狙いをつけたり、スコープなどの照準システムによるボーナスを得ることはできません。

曲撃ち(Tricks):

●鞍上で振り返り、背後の敵を撃つ:【後方射ち】(Shoot Backward)が対応。
 武器技能に-4、さらにそのターンに行なわれるすべての<騎乗>技能判定に-1。

●乗騎に隠れるようにしてつかまり、乗騎越しに撃つ:【曲乗り射ち】(Shoot Over Mount)が対応。
 武器技能に-6、さらにそのターンに行なわれるすべての <騎乗>技能に-3。敵の射撃は狙える場所が頭蓋骨、片側のしかありません。敵が命中判定に失敗しても、失敗度が4以内だった時には乗騎に命中してしまいます。

騎乗しての防御(Mounted Defense)


 乗騎の防御は「よけ」しかありません。乗騎によっては防具をつけることができるものや(「馬用鎧表」参照)、自然のDRを持つものもいます。
 乗り手への攻撃の場合、乗り手自身が防御判定を行ないます。「よけ」「止め」「受け」が可能です。乗り手の<騎乗>技能が12レベル以上あれば、防御も通常の数値で行ないます。乗り手の<騎乗>技能が11以下なら、12に足りない分だけ能動防御の値が小さくなります(例えば、乗り手の<騎乗>技能のレベルが9なら、能動防御には-3の修正をうけます)。

高さの差(Height Difference)


 馬に乗っている騎兵は、直立状態の敵に対して1メートル高いところにいるとみなします。「異なる高さでの戦闘」を参照してください。

戦闘の結果(Mounted Combat Results)


 乗り手が朦朧状態になると、鞍から落ちずにいるためには<騎乗>-4判定に成功しなければなりません。「突き飛ばし」の効果を受けた乗り手は鞍とあぶみを使っていない限り自動的に転倒します。鞍とあぶみがある場合でも、突き飛ばしの距離1メートルごとに-4の修正をうけて<騎乗>判定に成功しなければなりません。
 乗り手を狙った攻撃が、目標値より1だけ大きい目で失敗した場合、乗騎が能動防御を行なって失敗すると乗騎に命中します。逆に、乗騎を狙った場合にも同じことが言えます。もちろん、意図的にどちらも狙うことができます。
 もし乗騎に打撃が命中すると、乗り手は、馬を怯えさせないでおくために、馬が受けた衝撃と同じだけの不利な修正をうけて<騎乗>判定を行なわねばなりません(怯えについては、前の項を見てください)。もし乗騎の部位が使えなくなって転倒した時には、「乗騎を御せなくなった場合のトラブル」の12番の結果を適用します。

複数の乗り手(Multiple Riders)


 馬サイズ以上の乗騎の場合、人間サイズ以下(サイズ修正参照)の小さな乗り手は、乗騎を制御している乗り手の後ろに乗ることができます。制御している乗り手は<騎乗>技能に-1の修正を受けます。乗員が転落するのを避けようとする判定では、すべて「制御する乗り手の技能レベル」と「本人の体力」のうち低い方を用いますが、-3の修正があります。

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