MTG初心者ルールQ&A - 製品と構築フォーマット
「スタンダード」「モダン」など、MTGの構築フォーマットの種類をご紹介します。

構築フォーマット

MTGの公式大会やMagic Onlineでは、デッキに使って良いカードの範囲に関する規定が何種類かあって、規定ごとに対戦が行われます。
この規定を「フォーマット」と言います。他のTCGでよくレギュレーションと呼ばれているものです。
過去に発売されたすべてのカードが使えてしまうと、単に昔からやっている古参の人が強いだけのゲームになってしまい、新しい人が参入しづらくなります。これを防ぐため、新しいカードのみ使えるフォーマットを設けて、古参も新規参入者も同一土俵下で戦えるようにしているのです。一方で、古くて強力なカードも使えるフォーマットも設けて、ベテランの人も過去のコレクションを眠らせることなくカード資産の有利を楽しめるようにしています。

公式大会ではなく、仲間内で楽しむことをカジュアルと言いますが、カジュアルだからと言っても何でもありでは、やはりカード資産の差が出るため気まずいこともあるかもしれません。そのような場合専用に、非公式フォーマット(ローカルルール、ハウスルール)も広まっています。このサイトでは詳しく紹介しませんが、有名な非公式フォーマットとして2サイクル(2CHD、Choose Your Own Standardとも)、Penny Dreadful、SilverBlack(レアなし構築)などがあります。

MTG製品の発売サイクル

構築フォーマットのための新しいカード、古いカードというものを定義するために、まずMTG製品の発売サイクルから紹介します。
カードセット
MTGでは、必ず複数のカードが一組になって発売されます。これを「カードセット」(または単に「セット」)と呼びます。
セットには「通常セット」「特殊セット」があり、通常セットは年4回、特殊セットは不定期に、新しいものが発売されます。
通常セット
毎年1月、4月、7月、10月*1に通常セットが発売されます。この内、7月に発売されるセットは翌年を冠した「基本セット」です。例えば2018年7月に「基本セット2019」、2019年7月に「基本セット2020」、2020年7月に「基本セット2021」が発売されました*2
エキスパンション・セット
基本セット以外の通常セットが「エキスパンション・セット」(または単に「エキスパンション」)です。
ただし、基本セットの発売がない年もあったことや、セットを識別するマークのことを基本セットも含めて「エキスパンションシンボル」と呼ぶことから、通常セットのことを全てエキスパンションと呼ぶ方も多いと思います。
特殊セット
通常セットではない商品、「デュエルデッキ ○○vs○○」や、「プレインチェイス○○」「統率者○○」「From the Vault:○○」「アーチエネミー○○」「コンスピラシー○○」「バトルボンド」「ギルドキット」「○○マスターズ」(「ダブルマスターズ」など)は特殊セットです。
これらにしか収録されたことがないカードは、後述のスタンダードやモダンのフォーマットでは使えません。これらには特定の遊び方(追加ルール)に特化した効果を持つカードや、あるテーマに沿った大昔のカード、発売前の次期セットからの先行収録などが混じっています。「ブースターパック」「プレインズウォーカーデッキ」「デッキビルダーセット」は、発売直後に買えば間違いなく全部スタンダードで使えますが、デュエルデッキなどテーマを持った構築済みデッキ商品をスタンダード構築のデッキに転用しようとするときは要注意です。
また近年発売され大きな話題となった「モダンマスターズ○○」「モダンイベントデッキ」「モダンホライゾン○○」の収録カードは、名前が示す通り全てモダンで使えますが*3、その中にはスタンダードで使えるカードはほとんどありません。スタンダードからマジックを始める場合は、コレクションとかそういう目的を除けばしばらく縁のない商品です。

このページのすべての構築フォーマットに共通のルール

共通のルールは「デッキは60枚以上で作ること」「基本土地以外の同一名称のカードはデッキに最大4枚まで」です。

スタンダード

最もポピュラーなフォーマットである「スタンダード」は、「おおむね2年以内」に発売された通常セットのカードが使えるフォーマットです。
ただし例外の時期があるので、より正確に説明すると次のようになります。
全ての通常セットは、発売と同時にスタンダードで使用可能になります。そのままだと使えるカードがどんどん増えていきますが、実際には毎年10月のセットが発売されるたび、2年前〜1年3か月前に発売されたセットのカードが使えなくなる切り替えが発生します。この切り替えのことを「ローテーション」と言い、ローテーションによって使えなくなるカードのことをスタン落ち、スタンダード落ち(「絶版」もほぼ同義)と言います。

モダン

モダンは、2003年頃、MTGのカードが今の形の枠*4のデザインになってから以降の、基本セットかエキスパンションセットに収録されたカードがすべて使えるフォーマットです。つまり「第8版」以降の基本セット*5と、「ミラディン」以降のエキスパンションセットのカードが使えます。モダンにはローテーションというものはなく、今後新しいカードがいくら発売されても、第8版やミラディンのカードが使えなくなることはありません。

レガシー

レガシーは、過去に発売されたほぼ全カードが使えるフォーマットです。モダンよりもさらに昔のカードや、特殊セットである「統率者○○」「プレインチェイス○○」「コンスピラシー○○」にしか収録歴がないカードも使えます。

パイオニア

パイオニアは2019年10月に作られた最も新しいフォーマットです。2012年「ラヴニカへの回帰」以降に発売された通常セットのカードが使えます。基本セットで言うと「基本セット2014」以降となります。
スタンダードとモダンの間を埋める、中間的なフォーマットと言えるでしょう。モダン同様ローテーションというものはなく、今後新しいカードが発売されても、ラヴニカへの回帰のカードが使えなくなる予定はありません。

ヒストリック

ヒストリックはデジタルゲーム「Magic: the Gathering Arena」(MTGアリーナ)限定のフォーマットです。アリーナ実装済の全カードが使えます。
アリーナではモダンやパイオニアの範囲のカードはまだ全て実装されていません。それまでの期間、スタンダードで使えなくなったカードで遊べるフォーマットと位置付けられています。

Pauper

Pauperとは貧困者という意味で、レアリティがコモンのカードだけを使えるフォーマットです*6。普通のPauperは大昔のカードもコモンなら使えますが、スタンダードと同じ範囲のカードセットで、さらにコモンのカードしか使えない「Standard Pauper」というフォーマットも別にあります。

その他のフォーマット

その他、「ヴィンテージ」などのフォーマットもありますが、省略します。
また「レガシー」と「ヴィンテージ」を合わせて「エターナル」と総称することがあります。モダンはエターナルには含まれません。
また「準公式」ともいえるカジュアルフォーマットとして「統率者戦」(EDH、Commanderとも)というものがありとても人気がありますけれども、他の構築フォーマットとはルールがかなり違うため、ここでは省略します。
また、昔は「ブロック構築」「エクステンデッド」というフォーマットもありましたが、廃止されました。

再録の扱い

昔のカードセットに収録されていたのと同じ名前のカードが、新しいカードセットにも収録されることがあります。これを「再録」と言います。再録の際、カードのイラスト(絵)やフレーバー・テキストやレアリティが変わる場合も、変わらない場合もありますが、名前が同じなら同じカードとして扱います。
このとき、フォーマットの範囲から外れる古いセットに収録されたカードも、新しいセットの同名のカードとして使えます。
例えば《呪文貫き》というカードが「神河:輝ける世界」に収録されていますが、2009年発売の「ゼンディカー」にも収録されています。そこで、13年前のゼンディカー版《呪文貫き》を、現在のスタンダードでも使用できます。
MTGでは、すべての強いカードが固有の奇抜な性能を持っているわけではなく、効果は単純でも使いやすい強力カードが多数あります。それらの多くは以前のセットから再録されます。そのとき、仮にスタンダード構築のために毎年同じカードを買い直さなければならないとしたら、出費が大変でなかなか続けられません。しかし、再録のカードは持っていれば買い直さずにそのまま使えるので安心です。

基本土地と基本でない土地の扱い

基本土地は基本セットに必ず収録される他、エキスパンション・セットにも世界観に合った独自イラストでほぼ毎回収録されます。したがって、「基本土地が使えない構築フォーマット」は存在しません。そして上の再録で説明したように、古い《島》も新しい《島》もカード名《島》は同じですから、私がお気に入りの絵が描かれている「基本セット2011」や2010年「エルドラージ覚醒」の《島》を2021年「イニストラード・真夜中の狩り」の《島》と全く同様に使えます。
「基本でない土地」は、デッキに4枚までという共通の制限は受けますし、スタンダードなどの構築フォーマットの制限も受けます。例えば2010年「ミラディンの傷跡」に収録された基本でない土地《黒割れの崖》や《銅線の地溝》は、今のスタンダードの範囲には収録されていないため使えません。

禁止カード

フォーマットごとに、使ってはならないカード=「禁止カード」が定義されることがあります。禁止カードの指定や解除は発売元のWOTCが決定し、告知します。告知のタイミングは通常セットの発売や世界規模の公式大会開催の一定期間前で、おおむね年4回ぐらいあります*7
禁止になるカードは、単に強すぎるから駄目という理由ではなく、フォーマットごとにさまざまな理由で選ばれます。例えば、複数のカードを組み合わせたときの処理が、公式大会の進行を著しく阻害するようなデッキが台頭した場合、その主犯的なカードが禁止されたりします。


補足:過去の制度

2018年以前の「大型・小型セット」
2018年「イクサランの相克」までの通常セットには、約270種類のカードからなる「大型セット」と、約170種類のカードからなる「小型セット」の区別がありました。「ドミナリア」発売以降の現在は、このような区別はなくなりました。
2018年以前の「エキスパンション・ブロック」
マジック誕生時から2018年「イクサランの相克」までの2つ〜3つの連続するエキスパンション・セットには、同じ背景ストーリー(世界観)の中に味付けされたカード達が収録されていました。このセットの組を合わせて「エキスパンション・ブロック」(または単にブロック)*8と呼んでいました。
例えば2015年10月と2016年1月にはそれぞれ「戦乱のゼンディカー」「ゲートウォッチの誓い」というセットが発売されました。これらはゼンディカーという同じ世界で、異形の大怪物「エルドラージ」とそれらに対抗する人間達他種族の戦いを描いた背景ストーリーに登場するカードが収録されています。この2セットを合わせて「戦乱のゼンディカーブロック」と呼びます。
また2016年4月と7月にはそれぞれ「イニストラードを覆う影」「異界月」が発売されました。これらはイニストラードという、吸血鬼やゾンビ、狼男が出没するゴシック・ホラーがモチーフの世界で、人間達を守護してきた天使が突如狂乱して人々を襲うようになった怪事件に主人公達が挑む背景ストーリーに関連するカードが収録されています。これらは「イニストラードを覆う影ブロック」です。
また、2016年10月と2017年1月にはそれぞれ「カラデシュ」「霊気紛争」が発売されました。これらは発明家が様々な機械装置を生み出すカラデシュという世界で、発明家達と彼らを抑圧しようとする支配者との都市国家内の陰謀と冒険を描いた背景ストーリーに登場するカードが収録されています。これら2セットを合わせて「カラデシュ・ブロック」と呼びます。
「ドミナリア」発売以降の現在は、エキスパンション・ブロックという概念はなくなりました。つまり、発売されるセット同士の間で、登場するキャラクターや取り巻く背景ストーリーや世界観は、連続することも、全く違うものになることも、全く不定期になります。
2014年以前のスタンダード・フォーマットとローテーション
2014年「タルキール覇王譚」以前のスタンダードは、ごく簡単には
  • 最新の基本セット
  • 最新のエキスパンション・ブロックに属するセット
  • 1つ前のエキスパンション・ブロックに属するセット
のカードが使えるフォーマットでした。ただし例外の時期があるので以下に補足します。

毎年基本セットやエキスパンション(セット)が発売されると、それらは発売と同時にスタンダードで使用可能になります。
そのままだと使えるカードがどんどん増えていきますが、実際には1年に一度10月にだけ、その年のエキスパンション・ブロックの開幕となるセットが発売されると同時に、古いカードが使えなくなる切り替えが発生します。
具体的には、
  • 2つ前つまり2年前の10月に発売が始まったエキスパンション・ブロックに属する3セット
  • 1つ前つまり前年7月発売の基本セット
のカードが使えなくなります。この切り替えのことをローテーションと言います。
またローテーションによってスタンダードで使えなくなるカードのことをスタン落ちスタンダード落ちと言います。
つまり、通常の期間は「最新の基本セット」と「最新から2つまでのエキスパンション・ブロックに属するセット」のカードを使えるのが、スタンダードというフォーマットです。ただし毎年7月から9月の間だけは、7月に発売された新しい基本セットと、前年7月に発売された1つ古い基本セットの両方が使える状態になります。