wiki復活ツールをポケットから取り出しておもむろに作業を始めた。

キハダカニグモやコカニグモ類は体が偏平でよく樹皮の隙間などから発見される。
同所的にキハダエビグモもよく見られる。
キハダカニグモはデーニッツハエトリなどの越冬中のハエトリグモを捕食してるようだ。
同様の環境でムナボシヒメグモが他のクモを襲ってるのも見られる。
これらが見られる環境のなかでも長期的にかく乱されなかったような適湿の照葉樹林では、ケヤキの大木などの樹皮下で冬季にドウシグモが見られる。

樹皮下で活動するクモも越冬するクモも主要な天敵は小型の冬鳥と思われる。
小型の鳥が盛んに幹にくちばしを突っ込んでるのが見られる一方で、主のいなくなったフクログモやハエトリグモなどの越冬シェルターを見かける。

ガザミグモ、ワカバグモなどは草や木の葉上にいることが多い。
ハナグモやアヅチグモは、よく花の基部に定位して花に飛来する大型の虫を待ち伏せてる。良好な狩場を占有してるアズチグモのメスは1センチに達することもある。
白色系のクモは人間の目には比較的目だって見えるものの、昆虫では主流となってる紫外線の帯域で隠蔽色となってるのだろう。
アズチグモのメスで顕著な眼域の着色については適度に光を吸収して逆光条件でも獲物を見やすくしてるのかもしれない。
ガザミグモ,シロスジグモ,アズチグモなどは待ち伏せ捕獲に特化してるようで、発達した前腕に比べ後脚が短く、逃げる敵を追いかけていく能力は低い。 前腕の強い脚刺はガザミ類のように確保能力が高く大型の蝶などのそこそこの飛翔能力をもった獲物もガッチリキープする。
移動速度は遅いものの前脚を閉じる動作だけはトラバサミのように非常に速い。
アズチグモは雌雄差が大きいことが最大の特徴で、サイズの違いは脱皮回数の違いによる。
南方系のシロスジグモは黒潮の影響の見られる地域で偶発的に幼体が見られるがバルーニングによる死滅回遊かもしれない。
シロスジグモはハナグモ、ヤミイロカニグモの仲間、アズチグモなどとともにススキなどの茂る海岸草地に出現することがある。

ヤミイロカニグモでは脚の先端の爪がクシのような構造をしてるが、これも確保能力に役立ってるのだろう。
一方、各足が満遍なく発達してるワカバグモやシャコグモなどは地表を徘徊してるのも時折見られる。
他にアマギエビスグモがハエトリグモのように地上でジャンプしてるのを山間部で見かける。
山地ではアマギエビスグモが広く見られるが、標高が上がって亜高山針葉樹林帯になるとタカネエビスグモに入れ替わってくる。
シラビソやコメツガなどの幼樹の上でよく見られ、同じ環境にはタカネヒメグモやクロテナガグモの1種、サザナミサラグモ、コシロブチサラグモなども多く見られる。
幼体は色彩的多型だが、飼育中に色の揃った成体となった覚えがある。(これは勘違いかもしれない)
     
   
      タカネエビスグモ(アマギエビスグモに似る)

カニグモ科に近縁のエビグモ科は全体的に俊敏で、同じ待ち伏せ戦略でも葉の裏に潜み、太陽光で透けて見えてる葉の表に休憩しに来た虫の影を確認するとすばやく表に回って捕獲する・・などの機動力を生かした捕食戦略が見られる。

アシナガカニグモは草地で見られるものの、白っぽい微毛の生えた植物体の上などでは動かない限りは見つけるのは容易ではない。
このことが比較的稀な種類とされる原因と思われる。
河川敷にぽっかり開いた芝地のような環境で丹念に探すとポツポツ見つかることがある。
脚が長いというよりもむしろ毛の長さが印象的。割と都市近郊の生活圏の間近で見られるクモで、採集中は犬の糞と戦うこともしばしば。
よく探せばちょっとした空き地などでも見つかるものなのかもしれない。
マスカット味の駄菓子のようなこのクモの幸せは、目立たないので自然保護のシンボルとして利用されることもないことだろうか。

  
  アシナガカニグモは夏越しが難しいのでちょっとやる気を失ってる。
 (6月下旬頃のペアリング中のお見合いの様子)
  最大の興味は、生まれたばかりの子グモがどんな姿なのかということ。

求愛時には脚のスパンを見せびらかしてメスを誘惑してるようだ。
飼育してたものはオスの必死なアピールがメスをドキドキさせることはなかった。
前脚の先端のほうの節付近が黒ずんでることで広げ具合とかスパンが見やすくなってるのかも。
求愛行動のときに使う冗長な形態の器官が最後の脱皮で一気に大きくなるのは効率がよさそう。
外骨格の硬い生き物ではそういう戦略をとりにく、地形に引っ掛かったりジャマになることも多いようだ。
オスの冗長な器官には

・別種との闘争
・種内闘争(交尾縄張りの確保、メスをめぐる争いなど)
・交接ガード
・メスの捕獲
・魅力ポイント
・その他

こんな感じの要素があって相互に関連しあってることも多い。
あとメス(または子供を保護養育する性)が産卵後の子供のガードのために
なんらかの器官が長大化する可能性もある。
他にコモリグモのように背中に子供を乗せたりする生き物の場合は
脚力アップも重要かもしれない。

クマダハナグモはヤミイロカニグモの個体差や成長過程のように見えることも多く、都市部では落ち葉の積もる地表にヤミイロカニグモ類、樹木を含め植物上にクマダハナグモが見られることが多い。
冬場、公園のツツジの植え込みにぽつぽつ見られた年もあった。

セマルトラフカニグモは都市部の緑地の樹木上などで見られるクモで、民家の庭木などにもいるようだ。
暗色の個体は一見すると、樹皮を生息圏とするキハダエビグモのオスのように見えることもあるが、動きが比較的緩慢なので識別できる。
近縁にヤギヌマノセマルトラフカニグモというのもあるが、識別は難しい。
トラフカニグモは山野において非常に多く見られるところがある。
トラフカニグモ類はアリを捕食することで知られるが、〜カニグモとつくものは概ねアリに対しては強い傾向がありヤミイロカニグモ類もアリを襲うのを頻繁に見る。

カニグモの中でもXysticus属は識別が難しく、背甲の色彩が異なるオビボソカニグモや明らかに巨大なカラカニグモなどを除くと生殖器の検鏡での同定が基本になる。
また外雌器の開口部の経時変化みたいなものがあるので馴れも必要かも。
指でチョンとひっくり返すとそのまま固まるので、一応生きたまま外雌器を確認できる。
広食性のようで様々な甲虫を捕食しているシーンがよく見られる。
オオヤミイロカニグモがあまり大きくないのが最大の落とし穴になってる。
このグループは成熟には2年かかるようだ。

カラカニグモは大きさだけでなく外雌器でも他種との識別は容易。
カラは他の類似種との棲み分けははっきりしないようで、小型のものは隠蔽種のような状態になってるのかな。
薄暗い環境では見たことない。
図鑑ではオオヤミイロやヤミイロの体長の範囲が〜10ミリとなってるけど、1センチ近いのは見たことない。
暖かい地方では巨大化してるんだろうか?
似た種類との識別は、オオヤミイロのオスは触肢自体も小さいうえカニの爪先の様な部分が小さいのでわかりやすい。      
カニグモのオスはメスと比べて腹部が小さい(=軽量化)反面脚が発達することで機動力を稼いでるようで、意外とすばやいので体の小さい人は捕食されないように注意。
腹部が小さくなる進化の方向があるとすると、恐らく最終形態は胸部の下面に矮小化した腹部が折りたたまれて張り付く形態で・・・・それなんてカニさん?
カニは前方を攻撃しながらの撤退や横方向への逃避は得意だけど、後方への瞬間的な逃避は苦手で後方への移動は岩の隙間に隠れるとか砂に潜るとかが主かな。
身近に見られるもので最高速は水中ではトゲアシガニの仲間で、水上はスナガニ(海外ではゴーストクラブ)の仲間あたり。
水中のアシダカグモことトゲアシガニの捕獲にはコツがあって、網を使うとかえって難しくなるので軍手をして不意打ちのように背中をすっと岩に押し付けると捕まえられる。
ポイントはトゲが軍手の目に引っかかりやすいってとこと、二次元星人なので岩の表面から離脱して別のとこに逃げることが意外とないこと。

                           挑戦を磯にて待つ

カニと比べるとエビは後方への逃避は一流で、シラタエビのように遊泳力を駆使してトビウオのように水上を飛び跳ねて逃げるエビもいる。

カラカニのメスは開口部がミスドとかダンキンドーナツとかそういう感じ。
ヤミイロのメスの開口部は指でハートマークを作るとそういう感じ。
チシマはこれらの種類との違いを認識するのに時間がかかると思う。
チシマについては大きさはおおむねヤミイロと一致するかな。
互いに斑紋の似通ってるXysticusだけど、ヤミイロとチシマカニグモなど特に見分けがつかない隠蔽色のものについては実は彼らの視覚系だと隠ぺい色にはなっておらず、2種それぞれで別の斑紋が見えてるってとこを想像してみた。
エビグモの仲間はある程度識別子のような斑紋があるけど、ヤミイロの系統では少なくともヒトには識別できない。
交尾の時に返り討ちに合うこともあるオスがメスに接近するときの危険性を考えると、なんらかの識別子はあるものと思われる。
通常は臭いのような化学信号か動きなどのパターン、発音などが主を識別するコードになるわけだけど・・・
特定のパターンが隠蔽色によってマスキングされてたのが、紫外線とか何らかの帯域でコードが浮かび上がってくるとか、ヤミカニとチシマカニで色覚系における周波数特性のピークが異なるとか・・いろいろ想像は尽きない。
チシマとヤミイロの混生実験については・・・一応チシマが集中的に発生してる場所があるので、そこで捕えたものとヤミイロが主に出現してるとこで捕えたものとをペアリングさせて反応を見ることもできるけど、オスがメスにいつ捕食されるかわからないってとこでちょっと敷居が高くなってる。
また複数個体の混生の場合は片方に修正インクででもマーキングしとかないと難しいかな。


ヤミイロとチシマで彼らから見るとこんなだったり・・   


ヤミイロカニグモの外雌器開口部     


  左はカラカニグモのメス / 右はオオヤミイロカニグモのメス


    笹の葉の裏で卵嚢を保護するカラカニグモ

      
    某図鑑のバー表示はカユイ所に手が届く

  上からいずれもカラカニで、小さいのはニッポンオチバカニグモのメス

   メス同士で親睦を深めてるとこ。


  オビボソカニグモの生息状況。中央やや右上に見える。
  他のパッチに現れるヤミイロカニグモなどと比べると、スギの分解物との保護色がよく成立してるために局所的に生存率が上がってるっぽい。
 
 
枯れかかった沢からちょっとだけ高いとこに一本だけ太いスギがあると、その根元が狙い目になる。
こういうとこは日中も薄暗いので現地で見つけるのは困難。
土壌だけ持ち帰ってお日様の元でシフティングすると、ひっくり返ってお腹の黄色っぽいのが目立つのであっさり見つかる。
明るいとこでシフティングして撮影したら土と個体は元の場所に戻すのもいいかも。
よく獲れるとこでは湿重量?1kgあたり1匹くらいのペースで見つかる。
根元以外にもいるのかもしれないけど、沢沿いということで小石が多過ぎて調べるのは難しい。
スギ植林地の林床は寡雪地では落葉樹林と比べると着雪しにくいようだけど、これが環境条件になってるかどうかはわからない。
生息環境をチェックしてるときに「交尾する樹が大体決まっててクリスマスになると亜成体のステージで集結する物語」を思いついてイイハナシダナーと思ったので、以降同じ場所での採集は1年以上の間隔が開くように気をつけてる。
たまに採集行為が圧力になって、ものすごい勢いで生き物が激減してしまうことがあって人間の物欲というのは侮りがたい。

春になるといなくなるので、冬は地上で越冬中の虫を捕食して暖かくなって虫が増えてきたらそのまま樹を登ってってイヅツさんと一緒に樹冠で暮らしてるのかな?
排他的なのか同所的には他のカニグモ類を見かけない。
スギの植林地は生物相が貧しそうに言われることもあるけど、土壌生物は質・量ともに豊富なようで木々が近接しすぎてることは空中での移動が容易になることと結びついており、落下した枝が立体的な空間を形成することなどからもクモにとっては良好な環境なのかもしれない。
特に林床にシダがよく見られるとこなんかは、年間を通じて湿度が保たれるという安定した環境(プレデターな生き物から保護されてる?)なので少しは見直されてもいいかも。
  
オビボソを狙うときは民家の脇を抜けてコソコソと名もなき林道に入ってくのがコツで、現地の人に何か聞かれたらオビワンケノービサガシニキタと言うと林道のゲートが開く。
色彩的には彼らは似たとこあって、このようなケースを収斂進化というらしい。
オビワンが生き延びたのはうまく背景に溶け込む偽装をすることによって、天敵による被食をうまく回避した結果のようだ。
こうしてオビワン最強伝説が生まれた。
オビワンを飼育するときは腐った果実などで発生させたショウジョウバエを与えるのが手っ取り早いけど他にもいろいろなものを食べる。
ケノービという小種名にもあるとおり餌を与えすぎると毛が伸びやすくなる。
湿度が下がるとやる気なくすので要注意だけど、日本の夏の高温多湿はあまり好まないようだ。
海外の研究者によるとイングランドの気候のほうがあってるらしい。
多少手足を失っても数度の脱皮で復元するらしいけど見たことない。
フォースを使うと手乗りになる。
この状態になったら極めたと言ってよい。

      
        囚われの身に。     

  
 
  オビボソカニグモは背甲の色型に特徴がある。


  オビボソカニグモは腹部下面は色が明るい


    オビボソオス亜成体(亜成体で越冬)

  上のものと色合いがよく似てるのが・・・ 

    クロスジオチバカニグモの幼体(まだ斑紋の特徴には乏しい) 

    サイズは1ミリ台だったような・・・

  
    チシマカニグモ♂亜成体(ここまではメスと同色)    
    オオヤミイロカニグモのオス成体でこういう感じの色型のものを時々見かける。
       

  チシマカニグモの交接(画像上がオスで下がメス)。オスの触肢に特徴的なくちばしのような突起は外雌器の開口部に引っ掛けて使う物っぽい。
  鍵と鍵穴がマッチする必要があるようでメスは種によって開口部の形状も異なる。
  チシマは類似の種類とはこの部分の形状が異なる。
  オスとメスの間で怪しく膨らんでるのが普段は触肢に内蔵されてる精子爆弾。
  逃げ場がない環境ではオスに対するメスの捕食圧は圧倒的で、どれだけ餌をやっても近寄ったオスが次々と捕食されていった。


  ヤミイロカニグモの「カニの爪」
  外雌器開口部の中にうまい具合に掴むとこでもあるのだろうか?


  ヤミイロカニグモのオス触肢(爪の脇に挟まってる米粒みたいのはダニ)

チシマは平地の河川敷やグラウンドでも見られるようだけど、夏はオオヤミイロとヤミイロばかりでチシマは見たことない。
陰湿な薄暗い植林地から明るい落葉樹林、明るい河川敷と特に環境は選ばないようだ。
河川敷のものは涼しくなってから通年繁殖してる山地から飛来してくるのかもしれない。
また地域によっては砂浜でも見つかるらしい。
これはちょっとした驚きだけど、砂浜に打ち上げられた海藻などの下では小型の昆虫とそれらの幼虫が大量発生しててクモもポツポツ得られる。
砂浜で見られるクモは主に周辺の草地、畑、林縁などで見られるクモが殆どのようで意外なものを見つけることも多い。
ヤミイロカニグモの仲間は甲虫を捕食してるのを時々見かけるので、海藻の下で大量発生してるエンマムシなどの小型甲虫もいい獲物なのだろう。
類似の景観の環境でも生物分布によってギルド内の構成メンバーが変わり、それに伴って種間関係に地域差が生じる可能性がある。
ある地域では競合種のいない環境aに進出してるけど、違う環境では競合種がいるために別の環境bを主な住処としてる・・っていう場合もあるかな。
微気候条件や植生区分よりも単純に環境の色彩的な面に対応してる場合もあるようだ。
この「環境の色彩」については季節変化があるので、繁殖サイクルとうまく同期する必要もある。
他にも二つの生物間で垂直分布の逆転が起こる可能性もある。
山地にはチシマやヤミイロに似たなんだかよくわからないものもいる。
妊娠中で困ってるメスということにしておいた。

オビボソカニグモ、ヤミイロカニグモ、チシマカニグモのようにリター間で見られる物の中に更に小さなサイズの同型のクモが見られ、これらが土壌性のオチバカニグモの仲間。
地域的に細かく種類が分けられてゆく可能性もあるかもしれない。都市部のちょっとした緑地の土壌などでも見られる。
ニッポンオチバカニグモの場合はオス触肢の構造は見た目的にはきわめてシンプルでシンプルイズベストを地で行く。
   
  ニッポンオチバカニグモ   

上から 幼体/卵嚢保護中/メス/オスとメス/オスと色の淡いオス亜成体    


  触肢を切り離されながらもなんとか交尾は達成して力尽きたようだ。
  抱卵中に背中にカビが生えてくるけど、土壌性の大型のカニムシの腹背にも同じようなカビが生えることがある。
  これも擬態に役に立つのかも。
  このカビは生活する上では無問題なカビのようで、個体が弱ることはないようだ。
  最初は死んでるのかと思った。
  一番下は出嚢したての子グモ。  

ヤドカリグモ類はアズマキシダグモなどに混じって地上を徘徊してると、初見ではどういった種類のクモだかわからないこともある。
この場合、カニグモ類と共通の静止姿勢をとることで他の遠縁の徘徊種と容易に区別できる。

シャコグモは地上でも草の上でも見られるクモで、シャコシャコ走り回ってることも多い。
何故そこまでシャコシャコ走り回るのか聞いてみたくなるほどひたすらシャコシャコ奔走してることもある。
海産物のシャコはここまで走ることはなく、どちらかというともっさりとしてる。
よく言われるのがコガネグモダマシと非常によく似てることで、正直あれはシャコグモダマシだと思う。
適度な生息密度を保っているのか群生は見かけない。
エビグモ科でもヤドカリグモ・シャコグモ属は地表歩行にも適した体型をしてる。
それでもハシリグモにはかなわない。
シャコグモのオスは最後の脱皮で気持ち悪いほど不自然に脚が長くなる。
草地で体色が薄くてやけに脚が長いクモを見かけたらシャコグモのオスかハモンエビグモかもしれない。


   オス亜成体が脱皮すると・・・


   足が長くなってちょっとスリムになる。

クモの中でも動作が緩慢なものが多いカニグモ科と、もっとも素早い部類に入るエビグモ科は対照的。
待ち伏せ型の場合は、動かないことにより捕食者に対しても獲物に対しても見つかりにくいメリットを持つ。これは隠蔽色とセットになってることが多い。
素早く動き回るものは素早く捕獲することと素早く隠れること両方にたけてる。
この2つの戦略が同所的に発動してるのがキハダエビグモとキハダカニグモで、この2種はお互いにあまり争わないようで飼育中に相手の背中に乗ったりしてるのをしばしば見かけた。

コガネエビグモは平地でよく見られるキンイロエビグモやアサヒエビグモと比べるとはっきりと山地性のクモで、色合いは同所的に見られるアカギフクログモに似る。
色合いはそれほど安定しないものの腹部上面後端の両脇に一対のやや細い白と黒からなる目立たない斑紋があり、ここが識別ポイントになってる。
飼育中にケースの中に不規則網を張り巡らせて網をつくろったり、引っかかった餌を食べたり。
日もあたらない氷点下の空気の中で他のクモが樹皮下でほとんど仮死状態のようになってる中ゴソゴソと動いてたり、地味ながら意外性ナンバーワンの忍者である。
秋になると山の尾根筋の日当たりのよい低木の葉上に多数潜んでて、
枝に枯れ葉が残ってるとこではこればっかりということもある。

キエビグモは渓谷の低木などの葉上で多くのアサヒエビグモに混ざってることがあり、脚にはっきりとした縦の筋が見えることで見分けられる。
また河川中流域で他のエビグモとは排他的にススキの草地でまとまって見られたことがある。
エビグモ類は斑紋を浮かび上がらせたり消失させたりする行動が見られるので、安易に図鑑と絵合わせをすると間違いやすい。


          多少不恰好なキエビグモ。

エビグモ科の中では冬季ハモンエビグモの擬死が見られることがある。
この擬死も長時間とかない気合の入ったもので、触っても弾いても何の反応もなくなり何かの種子のようになる。
この戦略は大量に飛来する小型の冬鳥に対しては有効かもしれない。
脅威が去ったと見るとその後の動きは非常に素早い。
関東平野ではオギ原が枯れ始める10月中旬から1月下旬に大河川中流域で大発生するようで、
突然準亜成体くらいのステージで出現するとこから見ると、気温の低下や台風や低気圧の通過にともなってバルーニングで飛来してるっぽい。
オギの葉が落ちる頃になると石の下などで稀に見られる程度まで減るようだけど、大部分が冬鳥に捕食されてしまうようだ。
高温にはあまり強くないので暖地で夏を越すことはないと思う。
最盛期は河原の各植物上で優占種となってるが、あまり水際からは離れないようで、少し陸側に移動すると急に見られなくなる。
大量発生地点からちょっと上流に移動すると同様に急に見られなくなるが、オギ原の存在に依存してるようだ。
夏になると同じ場所ではコクサグモが優占するようになる。


ハモンエビグモのやらせ写真。こういう状態になることはまずありません。


 アサヒエビグモなどよりは一回り大きい。


       別の角度から
   

      特技は死んだふり

近隣の山岳地域では見られず上流域でも見られない。
上流の山地で見るシロエビグモとコガネエビグモは山麓では見ない。
足を広げると他のクモよりも揚力が得られそうなので、とんでもない距離をバルーニングしてるのかも。それこそお隣の大陸から飛んできてる?
当初は渡り鳥にしがみついてるとこを妄想してみたりした。
微毛の撥水力が高いので海に不時着して休息をとりつつ再飛行することも出来そうな・・
形態の細部をチェックしてると夢は膨らむ。
http://yaiz.at.infoseek.co.jp/ine-unkahirai.html
ウンカでは60年代から研究されてて、ウンカを追いかけてクモが飛んでくるのもありかもしれない。
他にも「東シナ海々上で捕獲された飛行グモ」という古い研究がある。
飼育中にケースが18度くらいになったときに急にバタバタ死に始めたので
長期飼育にはドリンク用冷蔵庫(ガラス張りのやつ)などの冷却装置が必要なようだ。
通気性が悪かっただけかも。
春になるとどうがんばっても見つからなくなるけど

枯れ草の上で活動してる間に捕食圧で大幅に減少 → 寒くなって石の下に潜るようになったあとは・・ → 気温が上がってきて活性が上がってきたエビチャコモリグモとかゴミムシとかに捕食される → 最後の生き残も気温上昇に耐えらず死亡 

というプロセスが想像できる。
10〜12月くらいは強烈なライバルのいないとこで他のクモをバリバリ捕食してるようだ。
   
色々な図鑑で語られてる生態記述の指し示してるものはシロエビグモあたりか?
放してみると時々体に取り付いて部屋に侵入してくる。
しかし機動力の高さゆえ出て行くのも早い。
シロエビグモについては、いくつかの図鑑では別のクモの写真に利用されてて更なる混乱を招いてるようだ。
これはクモの専門家にエビグモに詳しい人がいないということを示してるんだと思う。
ハモンは北から南にガンガン進出してる過程の種なのかもしれない。
生物の世界では南から北へ分布を拡大してる種ばっかり強調して、北から南へ分布を広げてる種を過小評価するバイアスがかかってるようだけど、これは悪しき習慣だと思う。
沿岸浅海域だと、刺し網や底引き網などの破壊的な漁法の影響でパッチがあいてそこに北方系の生物が侵入して爆殖する場合もあるようだ。
風で拡散する場合は恒常風の影響で(日本の場合は)西から東のほうが拡散しやすい。
北からの風が卓越するのは主に冬季だけど、その時期は温度的に拡散不可能になる。
クモの場合も北方系と南方系の無効分散が予想される。
植物に満鮮要素という分布パターンがあるけど、九州北部で偶発的に記録されてるクモはその手のものかな?

分散に風の力を殆ど利用しない地表からいわじわ分散していく生き物の場合は、

・大陸 → サハリン → 北海道 → 本州
・大陸 → 朝鮮半島 → 九州北部 → 本州

と2つのルートから合流して再び遺伝子交雑するパターンみたいのがあるそうな。
クモの分野だと北海道と九州におばさん門番がいる(いた)ので、どっちから責めてもおばさん達の標本庫送りになる。
そのゲートをすり抜けて本州に分布を拡大するのは難しそうだ。
種分化について興味ある人は↓こんなのをドゾ。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007034350
今のところ研究が割と散発だけど、色々な生物で並行的に詰められていきそうだ。

注意点としてはコガネエビグモのなかに体色だけはハモンエビグモみたいなやつがいるので気をつけましょう。(・・足の長さや斑型が明らかに違うので見分けられる)
コガネエビグモはササや樹木の葉上に多いけど、冬季は樹皮下で越冬してる。
そこそこの標高のヒノキの植林地で根元のほうの皮を剥くと、ヤハズフクログモなんかと一緒に見つかる。

シロエビグモはキハダエビグモの白バージョンのようなクモで腹部の斑型は類似種のブチエビグモとは異なる。
コガネは必ずしもこんがり焼けたような色ではない。
コガネは腹部のかなり後方に1対の特徴斑が見られる。(黒と白を並べたような小さな斑紋で、前方白・後方黒)
それ以外のところの斑紋が目立たないのが最大の特徴。
前から撮影するとこの同定ポイントが隠れてしまうので、後ろから撮影するとあとでチェックしやすい。
シロエビは腹部側方に前方が黒、後方が白の斜めに走る左右対になった細い斑紋が見えることが多く、腹背中央に一対の黒点があることが多い。
http://insects.exblog.jp/6100480/
生態のわかりやすい画像が紹介されてるblogもあるけど、エビグモのなかでも特に正体に行きつきにくいクモに陥ってるようだ。
ハモンも腹部後方の白黒が組み合わさったコントラスト斑が特徴になってる。
ネット画像でシロエビグモとされてるもののほとんどは草地や河川敷に多いキンイロエビグモの淡色型かと。
一方、ブチエビグモは明らかにブチっと暗色斑がある。
なお体色を変えて斑紋が不明瞭になってる場合があるかもしれない。
模様だけだとかっこいいキンイロエビグモを飼育してたら、ある日アサヒエビグモになってしまったことがあった。
オスについてはパルプチェックをするかあきらめましょう。
体の平たいブチエビ、シロエビ、キハダエビグモは樹皮擬態組みかな。

ブチ、シロ、コガネ、ハモンを図にしてみると・・・

    こんな感じ。
http://kumomushi.web.fc2.com/s_s/shiroebi.htm
これなんかはコガネエビグモの白色系って感じになる。(・・キツネ色以外の型に注意)

白黒のパターンが組み合わさってるのが特徴で、オスが配偶相手を識別する識別コードになってるのかな?
素早いエビグモ類の場合はある程度の距離で相互に識別できたほうがよさそうだし、後ろのほうから見てわかるというのはいいポイントかも。
エビグモさんたちの色覚系だと識別コードが浮き上がって、多くの捕食者が持つ多色型の色覚系だとあまり目立たないのかもしれない。
視覚については受容器だけの問題ではないし研究途上の分野なので、あと30年もすればいろいろなことが解明されてるのかと期待したい。
ある程度捕食者のターゲットが絞られてる迷彩色を「選択的迷彩色」と名付けてみた。
多色型やモノトーンの?視覚系両者に強い配色パターンというものもあるのかも。

隠蔽色の戦略を簡単に整理してみて・・
 a.体色を変える能力の獲得
 b.生得的に隠蔽色となってる
   - c.特定の環境と結びつく特定の隠蔽色
   - d.色彩的多型を伴う隠蔽色
    - e.成長過程で連続的に変化
    - f.成長過程でランダムに変化
こうまとめてみたときに,

aの場合は 記憶しやすい色彩 ←→ 目立たない色
  このパターンの体色変化で一瞬にして捕食者から姿をくらますことも出来る。
cは環境変化や植生遷移に伴って保護色が成立しなくなり、被食率が大幅に上がるリスクを持ってる。
dは餌のターゲットとして色覚の発達した生き物には記憶されにくいメリットがあって、cの場合はいったん餌として記憶されると(例えば鳥とかに)集中的に狙われる可能性もある。
eのなかには、子供のうち →  捕食者から目をくらますための隠蔽色。
        大人になると →  餌対象からうまく隠れるための隠蔽色。
と結局隠蔽色を卒業できない子もいる。
また排他的な分類ではないのでa-c-eと複合的に兼ね備えてる生き物も多い。
個人的にはfの戦略が餌として記憶されにくい最強戦略だと思う。
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