wiki復活ツールをポケットから取り出しておもむろに作業を始めた。

小型種のヨツボシヒメアシナガグモ・ヒメアシナガグモは湿地の草むらにおいて前者は徘徊中のもの、後者は地上数センチの所での営巣が見られた。
前者は晩秋に山間部の葉上で時々見られ冬季には川の水際の枯れ草の下の湿所にアオバアリガタハネカクシなどとともに見られる。
後者は草むらから出てきて浜辺を歩いてるのを見ることもある。

ヨツボシヒメアシナガグモをそのまま大きくしたような風貌のアゴブトグモは、 秋には水田地帯の水路脇の草の葉裏などで卵嚢を保護してるのが見られる。
幼体はヨツボシヒメアシナガグモによく似る。
飼育下の幼体は網のようなものを張る。
名称の元となってる大きな牙で獲物を手早く片付け、食欲は旺盛。
このクモについては、稲作の渡来と共にやってきた史前帰化種のかもしれない。
水田地帯では見るもののそこから近い河川敷ではまったく見かけないクモで、草刈前に産卵し刈られた草と共に卵嚢ごと積み藁となりそのまま越冬してるのだろう。

湿性種が多いアシナガグモの仲間のでも高地に多いミドリアシナガグモは、一見水には結びつかなさそうな風通しのよい尾根などでメガネドヨウグモの仲間とともに優占して見られる。
このような環境は朝露や雨雲も発生しやすく、年間を通じて湿性環境が保たれてるものと思われる。
名前から連想されるような平地で見られるミドリのアシナガグモは大体がウロコアシナガグモなどで、ミドリアシナガグモは名前とは違って黄色っぽく見えることが多い。


             普遍種のウロコアシナガグモ

キンヨウグモ、アシナガグモ、シロカネグモ類は気分で体色を変えるようで、検鏡するとイカのように色素細胞の収縮拡大などで色が変わってるようだ。
斑紋パターンが現れたり消えたりする現象はカラオニグモやエビグモ類などでも見られる。

これもキンヨウグモだということは意外と知られてない。(オス亜成体)
この後の最終脱皮で脚が更に長くなる。
同じ場所でチクニドヨウグモとヤマジドヨウグモが見られた。
あとは誰かが新種を発見したときにモクヨウグモと名付けるのを待つばかり。


 カラオニグモを飼育してるとたまにどす黒く体色が変わることがある。
 機嫌があまりよくないのかもしれない。(昨日はこんなクモではなかった・・)
  → 画像の個体は後のチェックで結局オガタになった。
   
平野部でよく見られるトガリアシナガグモはシコクアシナガグモと並んで明るい水辺を好む。
ヤリグモのように腹端がとがった形状が特徴的だが、極端に腹端が突出した個体やあまり突出してない個体など個体差も大きい。
河川では水位の下がる冬季は水の流れに近いところに移動してるようだ。
シコクアシナガグモは幼体のうちは他のクモと間違いやすい。

ヤサガタアシナガグモとアシナガグモは、幼体の時期から前者は腹端の形状が横から見てやや角ばっており、また下面糸器周辺の明瞭な黄白斑の存在、後者はより腹端がスリムで斑はさほど顕著でないことなどで大雑把に識別できる。
本格的に見分ける場合は、成体の鋏角の刺の配列や雌の交尾器開口部の位置などで見分ける。
同所的に見られる場合、成体は前者が後者より一回り小さいが餌選択のサイズ的な棲み分けが成立してるのかもしれない。
なお若令幼体は体が丸っこくて他のグループのクモと間違いやすい。
最近は南方系の種といわれるヒカリアシナガグモも本州各地で発見されてる。
アシナガグモの仲間の最大の特徴は鋏角の発達と思われるけど、交尾時にメスの鋏角にオスが自分の鋏角をからませて動きを封じるのがみられる。
アシナガグモは他のクモの網の枠糸を便乗利用するのがよく見られ、ジョロウグモの網の枠糸に小さなアシナガグモが網を張っているのがしばしば見られる。
渓流では夕方から夜にかけて、カゲロウやカワゲラなどの水生昆虫の成虫が羽化する(ハッチアウト)ため水面上に網を張ると多くの餌が容易に得られる。
そのような場所ではタニマノドヨウグモなど渓流の両岸の広いスパンに造網できる種が中央を占め、アシナガグモはその透間に網を張る。
富栄養化した側溝のように多くの双翅類の発生するところや明かりの下など虫が集まってくる場所では、網を張らずに直接に虫を捕まえる場合もある。
アシナガグモの仲間は水辺を好むだけ合って一般的に水の上を歩行するのがうまい。

アシナガグモに似たものとしてシロカネグモの一群があるが、平地ではコシロカネグモやチュウガタシロカネグモ。山間部や渓流沿いにはオオシロカネグモが見られる。
チュウガタシロカネグモについては海岸付近の林縁で垂直に近い円網を張ってるのを見ることも多く、網の縦横だけでは判断は出来ない。
逆に通常は垂直円網を貼るオニグモの仲間が水平円網を張ることもあり、虫を捕らえる効率や風の動きが関係してるのだろう。
鳥が接近すると網から飛び降りて逃げることもあり、水平円網はそういう面で有利なようだ。
キララシロカネグモはとりわけ美しいクモで、同じような美しさを持つコガネヒメグモと共に目立つ色から地味な色に体色変化することがある。
同じような系統の体色のクモではキンヨウグモも同様な体色変化が見られる。
河川敷の木立の中に群生してることがあり、他のシロカネグモとは多少違う環境に現れるようだ。


コシロカネグモの庭での発生量は庭木の伐採にも影響されてるようだ
    

後ろ脚の付け根付近の産毛?は生まれた時から持ってる形質で、メガネドヨウグモなどの腹部下面班同様幼体を他のクモと識別するのに使える。
この毛は逃避行動で特に役に立つ振動をキャッチする感覚器官なのかもしれない。
行動で時々見られるのが?ほかのクモの巣に侵入しての居候もしくは盗み食いで、似たような配色のクモの巣で見る気もする。
これがすこやか産毛レーダーだとすると家主から逃げるのに役立ちそう。

他にもPardosaやササグモ類は足刺が目立つけど、一足踏むごとにハリゲコモリグモ類がわさわさっと地上を歩行するのがよく見られる。
ハリゲの交尾を記述したメモのなかにオスの足刺がすごく立ってるという記述があったけど、なにかのセンサー機能を持ってるのだろうか?
足刺が寝てることもある。
全部の足刺を立てると音源の方向とか位相差から正確に捉えられそうな気もする。
ササグモの方は特にガなどの羽根の柔らかい系の虫の捕獲時のキープ力には貢献してそうで、あとは草むらの立体軌道で足刺の微妙な空気抵抗が役立ちそう。
通常クモでは縦は2-3列の眼域が1対ずつ4列っぽいのも瞬間的に距離を計測する立体視には役立ってそう。
興味深い形質をいろいろ備えてる割にはあまり興味を持たれないようだ。
誰かクモの足刺の切除実験など。。
触肢の色変えちゃうぞ実験とか、腹部の上面下面のアレンジペイントしてみましたとか。

毛といえばサラグモの小型種には額や背甲のどっかに局所的な微毛が生えてる種類が結構あって、この毛の「生え具合」が漢の魅力度につながってるのかも。
同様にオスの背甲のどっかが変形してる種類も多い。
これらの毛は除去実験を行うと、ほんとに何か役割があるのかまーべつになんでもないただの形態なのかわかると思う。
頭の毛の薄いおじさんがいつも帽子をかぶってることについて、初めは頭が寒いのかと思ってたら夏もかぶってるので別の意味があることに気がついた。
どうやら紫外線をカットしてるらしい。

水流のあるところではアシナガグモ、ドヨウグモ、シロカネグモがセットで見られることが多いが特に山麓で顕著になる。
これらのクモの腹部の下面を見ると、対になった縦の条線が見られることが多いがこれは交尾などのサインとなにか関係あるのかもしれない。
ドヨウグモの仲間は斜めに網を張ることが多いけど、中には谷筋と垂直に2本の巨大なサワグルミの大木の間に巨大な垂直円網を張り大きな虫を捕食してる巨大なものもいて、一見するとオニグモと間違える場合もある。

オオクマヒメドヨウグモは山麓の植林地などのリター層に営巣してる小型のクモで、幼体は周辺の他種に比べ明らかに巨大な目を持つ。
特徴は乏しいものの仕草などが他のドヨウグモに通じるので、サラグモやヒメグモ類から見分けられる。
網はとても美しいが屋外でははっきりとは確認できないことが多い。
   





薄暗い林床でシートを敷いて一寝入りするのがオオクマヒメドヨウグモを見つけるコツ。
(画像はまだ幼体)    


                      営巣の様子


             リター間営巣ってことで人目に付きにくい
  

タニマノドヨウグモは自然度の高い渓谷で見られる種類でドヨウグモの仲間ではもっとも環境変化には弱いらしい。
背甲の斑による識別はあまり確実でないように思われ、やはり交接器をチェックする必要はありそうだ。
流程の中ではシノビグモが現れる源頭エリアの下の多少流量のあるヤマメ帯に出現するように思われ、その下流にメガネドヨウグモの生息密度の高いエリアがあるようだ。 メガネドヨウグモによって谷間の奥地に封じ込められてしまったクモなのだろうか?
チクニドヨウグモはシノビグモとともに出現してるのが見られるが同定には交接器のチェックはかかせない。
これらと同所的にヤマジドヨウグモが出現することもあり、得てして周辺に大型のシダが見られる。




  沢沿いの植物の葉裏に産み付けられた卵嚢(ちょっと富士山風)
    

  ワラワラ出てくる。 


生まれたときから腹部下面のドヨウグモマークがある。


       ちょっと隠れてるつもり(チクニ♀)


  脱皮不全を起こさない程度のスペースがあれば飼育できるけど・・  


  平地の暑さには耐えられなかった。(画像はチクニ♀)

なお、メガネドヨウグモに背甲の眼鏡模様がつぶれて真っ黒になった上の画像のような個体がいるので要注意。
    
メガネドヨウグモはドヨウグモの中ではもっとも見る機会が多く、支糸を伝って隠れ家に避難するときの後ろ足を引きずるような姿勢が特徴的。
山間の観光地の古びた公衆トイレの中に営巣してることもある。
外見上はキタドヨウグモとは見分けが殆どつかない。
バルーニングによって都心や高山に飛来することもあるので他種と混同しやすい。


        寒くなると稀に庭に飛んでくるけど長居はしない

ヤマジドヨウグモはほとんどオニグモ類のように見えるクモで、オニグモ類に混じって似たような姿で営巣してることもある。
山間部の渓流でよく見られるが海岸付近の林中のシダが生い茂る湿所膝下にも多数生息してる。沿岸近くでは同所的にカレハヒメグモなどが見られた。
成体はオニグモっぽい一方で幼体はヒメグモ類に似る。
同じような環境でシロカネグモの仲間もよく見る。


          タニマノドヨウグモの営巣の様子


          左がタニマノで右がメガネ


          幼体の時期から両肩にかけての勾玉状の一対の暗斑など腹背の斑紋に特徴がある


          育てて♂成体になったもの

民家の裏手の小さい谷間にタニマノドヨウグモの集団を見っけたので周辺を調べると、ここはメガネドヨウグモやアシナガグモの類で出現するのはウロコ程度。
何度も来てる場所ながらドヨウグモに関心が低いせいでビーティングで落ちてきてもチェックせずに捨ててた。
沢沿いに張り出したシダを叩くとよく見るのがタニマノで優占種となってる。
分布してるのは水量が保たれる小さい沢同士の合流地点までで、そこから先はふっと途切れて得られなくなる。
ドヨウグモの仲間は網の資源量が少ない分餌が足りないとすぐに移動するので、餌の発生量の多いとこに移動してきたようだ。
ドヨウグモの仲間の頼りない網は少ない資源量で張れてすぐに捨てて他の場所に移動できる“身軽な網”だと思う。

さて・・・メガネとタニマノのパッチについて調べてみたかったので、山を越えて反対側の川の上流を調べてみることにする。
冬季の水量の少ない時期の夜間にウェーダーを履いて遡上してくと、沢に張り出した葉を落とした木々に幼体が巣をかけてるのが照らし出され、殆どが垂直円網なので首を曲げる必要もなく視認しやすい。
タニマノの独特の腹部の紋様は幼体期から比較的安定しててメガネとは識別しやすく、キタがいるとこにメガネが飛来する可能性や、幼体期のメガネとチクニは微妙〜みたいなことはない。
曲がりくねった沢沿いに移動してくと序盤はメガネばかりなのがポツポツタニマが混ざるようになって、時には沢山のメガネの中にポツンとタニマ・・・そこを10mほど進んだカーブの先にはタニマだけなど色々な状況が出現する。
水流の状況や周辺環境もポイントごとにチェックしたものの生息要件の違いはあんまりないようで、種間競争の真っただ中でおなじパッチを競い合うタニマがメガネに対して劣性って感じで、メガネを除去するとタニマが下流側に進出する可能性もあるものと思われる。
両岸の迫った陰湿な沢で渇水期にも水量が保たれてる辺りから出現し始める感じで、誰が名付け親なのか谷間のという名前通り。
渓流のイメージに結びつくのは(あまり正確なパッチは知らないけど)むしろチクニあたり。
冬・夜間・ウェーダーの条件追加で確認できる個体数が爆増するクモで、調査条件を変えるだけで市街地からちょっと外れたとこでも見つかる可能性がある。
環境の変化によって個体数が減るかどうかは不明ながら、伐採などで条件が変わるとメガネが更に優勢になってタニマが減る可能性はありそうだ。

ドヨウグモ類の飼育法は適当なケースに2ミリ程度水を張って乾いたら水を供給する程度で、餌は豆腐の容器などに果物屑を入れてショウジョウバエを沸かせる。
基本蓋の裏の隅の方に定位するので天窓の大きいものでないと作業しにくくて、衝立で仕切っても幼体の時期はその隙間から行き来しての捕食や脱走が頻繁に発生してなかなか難しい。
脱皮不全がどっかで発生するのである程度の個体数を確保しとく必要があるのと、1匹に対して一つ宛がうことになるので、冬場に捕獲してさっさと成体にして検鏡したい場合限定の飼育法になる。
キンヨウグモ、アシナガグモなど湿度を好む似たようなクモは基本放置できるこの飼育法は選択肢の一つ。
10匹スタートで成体になったのはオス1匹で、多くはサイズが小さい時期の脱走で蓋の閉め忘れが1匹。
脱走以外では水切れが死因の第一位でケースを2段重ねにした下段は生存、上段は水切れと明暗を分けてたので、蓋の上に適当なものを置いて蒸散速度を調整するとよさそうだ。
常時暖房環境でのこの飼育法だと採集してから成体になるまでが早くて12月に幼体を採集してから3ヶ月で成体になった。

胸部の暗斑のパターンと腹背のパターンの組み合わせで近縁種が混成した際に配偶者を識別できる可能性あり。
タニマノxメガネなど種間雑種は存在する? → 実験可能
タニマノ/メガネ/チクニ/キタ  


谷間の奥にて


フラッシュたくとこんな環境


川にせり出した樹ではこんなクモの営みが・・・・いくつみつけられるかな?


定番のサラグモ類


♂はこんな


サイドビューにて


下面はこんな


頭部から触肢にかけて


触肢の詳細

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