最終更新: naminagares 2018年06月23日(土) 08:31:00履歴
したらば現行で連載を行っていた「錬金術師の経営難」シリーズ。
それらを今の作風でリメイクしたものです。
ワンシーンずつ抜粋して紹介します(従来のストーリーと、新規ストーリーをそれぞれ紹介します)
【開幕より】
とある国の、山々に囲まれた町アップルタウン。その外れに、一軒のお店が建っていた。
木造平屋の小さなお店。
外から見えるガラス戸の棚には、一風変わった商品がずらりと並んでいる。
ただ、ほとんどの商品が埃の被ったせいで廃屋とよく見間違えられてるそうだが、よく見て欲しい。
ガラス戸から中を覗くと、狭い店内の一番奥のカウンターには、真っ白な衣装<ローブ>を身に纏った若い男性が一人、だるそうにして店番をしているようだから。
「……ふぁぁ」
大きな欠伸をした店番をする青年の名は、アルク。
先月25歳を迎えたばかりの若き青年にして、この店『アルケミスト』を経営する、錬金術師兼、店長である。
顔立ちは整ってるほうだが、何事も面倒な性格のせいで、耳に掛かるくらいの黒のミディアムヘアはボサボサとしていて、全てを台無しにしている。
「やれやれ、暇だな……ふぁぁ……」
そんな彼は、虚ろな目をしてもう一度欠伸をすると、小汚いテーブル椅子に掛けたまま、だるそうに小皿に盛ったバターピーナツを一つばかり頬張った。
ぽり……ぽり……。
「今日も客が来ねぇなぁ。この町に錬金術師店を開店して早3年……。俺の今のささやかな楽しみは、このバターピーナツを食べることだけだってな」
……ごくん。
ああ、旨い。こってりしたバターと香ばさのあるピーナツだけが俺の楽しみだ、と。
アルクは、ぼけーっとしたまま、ガラス戸から望める青空を見つめていた。すると、唐突に店の玄関の木扉が、ガランガランと音を立てて開いた。
おっと、客が来たのだろうか。
「っと、いらっしゃいませ! 」
慌てて椅子から立ち上がる。
しかし店に現れたのは、雇っていた部下の女性店員『リゼ』だった。
「私だってば、店長。言われてた品物の届けを終わって帰ってきただけだよ」
『リゼ・クライン』
オープン当初からアルケミストに在籍する女性店員で、年齢は二十歳<はたち>。
茶色のセミロングヘアに、淡い黒と赤み掛かったの瞳。端麗な顔立ちは、まぁ可愛らしい。性格はやや男勝りで、勝ち気な感じ。普段の格好は、ショップ店員らしく、白いシャツに青のパンツとシンプルな格好で、ねずみ色のエプロンを着用していた。
「……ああ、何だお前か」
アルクが彼女を見ると、眠そうに言う。
リゼは「ちょっと」と、テーブルに手を乗せた。
「私が帰ってきて、随分不満そうにするってどういうことですか」
「別に。客だと思って上がったテンションが、お前だって分かって下がっただけだ」
「人の顔見てテンション下がるのもいけ好かないですけど。……てか、私は仕事してきたんですよ」
「あっ、そうだったな。錬精品を届けてくれたんだっけ」
リゼはエプロンのポケットから用紙を取り出して、店長アルクに手渡し見せた。
「……売上は5,000ゴールドかよ」
町民から依頼された魔石のランプ修理では、やはりそんなものか。
お小遣い程度にしかならない売上明細をくしゃくしゃに纏めて、近くのゴミ箱に投げ捨てた。
「はー、やれやれ。もう少し売上が出ないもんかねぇ」
「腕はあるのに、こんな小さな町にお店を出してるのが原因じゃないですか」
「厳しいこと言うね」
「でも、大きい街に出ても競争に負けて閉店するかもしれませんけど」
「おい」
それじゃ、どっちみち俺の店は閉店じゃねえか。
アルクがツッコミを入れると、リゼはバターピーナツを摘みつつ、当然の言葉を口にした。
「じゃあ真面目に働いたほうが良いんじゃないですか」
「結構真面目に働いてるだろ、俺は」
「昼間からバタピー食べて居眠りする店長がどこにいるんですか! 」
「……ここにいる! 」
アルクは胸を張って言う。その張った胸に、リゼは右手でゴスッ、とチョップを入れた。
「あでっ! 」
「威張って言う事じゃないですよね。このままじゃ本当に閉店しちゃうよ? 」
「つっても、ある程度テキトーにやっても何だかんだ上手くいってきたしなー」
「あのね……」
リゼは、店長と思えない言葉にガッカリする。とはいえ、こんな日常をもう3年も繰り返してきたわけだし、心の奥底では、そこまで心配はしていなかった。
そう、こんな面倒事が嫌いでテキトーな店長でありながら、この錬金術店アルケミストは、結局最後に何とかなってしまう、妙な運に恵まれた店だったのだ。
…………
…
【抜粋2/新規ストーリーネタ】
ぷるぷると震える手で助けを求める店長に、リゼは溜息を吐いて彼の手を握る。そのまま、勢い良く引っ張ると、力無かった店長はそのままリゼに抱き締めるよう覆い被さった。
「ちょ、ちょっと! こらぁーっ、店長!! 」
「わざとじゃなくて……いや本当に体力の限界なんだって……」
「自分の力で立って下さいよ! てか、背中を撫で回すなぁっ!」
店長は「はぁはぁ」と息を荒げていた辺り、この状況を誰かに見られたら勘違いも甚だしくなる。だが、そんな時に限って、そういうことは起こるものだ。
「……ゴホン。お二人は、そういう関係だったんですか」
今日はシックなスーツ衣装を身に纏う管理人ロック。いつの間にか二人の前に立っていた彼が、小さく咳払いした。
「あっ、あああっ、ロ、ロックさん!? どうしてここに!? 」
「人気のない山ならまだしも、ここは採掘場入り口ですよ。事務所からお二人の姿が見えたもので」
管理人がチラリと視線を別方向に向けると、近くには採掘場の本事務所があって、少し目を凝らせば、多くの人間が業務に従事していた。
リゼは目をグルグルと回して、違うんですよ! と叫ぶ。
「お二人がそういう関係なのは私に関係ない事ですが、公衆でイチャつかれるのはちょっと」
「ち、ちち、違います!それは 勘違いです、誤解です〜っ!! 」
「と、仰られても。そういう風にしか見えませんが……」
「ですから、それは本当にかんちが……ひゃうぅっ!? 」
急にリゼが、艶やかな甲高い声を出す。人が必死に言い訳をしているというのに、店長はどさくさに紛れてか、わざとか、リゼの背中に回していた両手を腰の方にサワサワと滑らせのだ。
「て、てんちょ……! な、何するんですかぁっ!! 」
さすがに人前だったり、やり過ぎだったり、恥ずかしさだの何だの、色々な感情が入り混じったリゼ。顔を真っ赤にして、店長を反射的に背負投げしたのだった。
どぉんッ! と、土が舞う。店長は背中の痛みに悶え、地面を転がり回る。
「あいっ……てぇぇっ!! ンノォォオンッ!? 」
「そ、それは天誅ですからぁっ!! 」
リゼは、薄っすらと涙目になって叫ぶ。
その様子に管理人は「凄い一本だ」と、思わず拍手した。
以上となります。
いつか公開ができれば、と考えております。
会える日があれば、こちらでご報告致しますので、気長にお待ち下さい。
それでは……。
以下、本編に続く(?)
それらを今の作風でリメイクしたものです。
ワンシーンずつ抜粋して紹介します(従来のストーリーと、新規ストーリーをそれぞれ紹介します)
【開幕より】
とある国の、山々に囲まれた町アップルタウン。その外れに、一軒のお店が建っていた。
木造平屋の小さなお店。
外から見えるガラス戸の棚には、一風変わった商品がずらりと並んでいる。
ただ、ほとんどの商品が埃の被ったせいで廃屋とよく見間違えられてるそうだが、よく見て欲しい。
ガラス戸から中を覗くと、狭い店内の一番奥のカウンターには、真っ白な衣装<ローブ>を身に纏った若い男性が一人、だるそうにして店番をしているようだから。
「……ふぁぁ」
大きな欠伸をした店番をする青年の名は、アルク。
先月25歳を迎えたばかりの若き青年にして、この店『アルケミスト』を経営する、錬金術師兼、店長である。
顔立ちは整ってるほうだが、何事も面倒な性格のせいで、耳に掛かるくらいの黒のミディアムヘアはボサボサとしていて、全てを台無しにしている。
「やれやれ、暇だな……ふぁぁ……」
そんな彼は、虚ろな目をしてもう一度欠伸をすると、小汚いテーブル椅子に掛けたまま、だるそうに小皿に盛ったバターピーナツを一つばかり頬張った。
ぽり……ぽり……。
「今日も客が来ねぇなぁ。この町に錬金術師店を開店して早3年……。俺の今のささやかな楽しみは、このバターピーナツを食べることだけだってな」
……ごくん。
ああ、旨い。こってりしたバターと香ばさのあるピーナツだけが俺の楽しみだ、と。
アルクは、ぼけーっとしたまま、ガラス戸から望める青空を見つめていた。すると、唐突に店の玄関の木扉が、ガランガランと音を立てて開いた。
おっと、客が来たのだろうか。
「っと、いらっしゃいませ! 」
慌てて椅子から立ち上がる。
しかし店に現れたのは、雇っていた部下の女性店員『リゼ』だった。
「私だってば、店長。言われてた品物の届けを終わって帰ってきただけだよ」
『リゼ・クライン』
オープン当初からアルケミストに在籍する女性店員で、年齢は二十歳<はたち>。
茶色のセミロングヘアに、淡い黒と赤み掛かったの瞳。端麗な顔立ちは、まぁ可愛らしい。性格はやや男勝りで、勝ち気な感じ。普段の格好は、ショップ店員らしく、白いシャツに青のパンツとシンプルな格好で、ねずみ色のエプロンを着用していた。
「……ああ、何だお前か」
アルクが彼女を見ると、眠そうに言う。
リゼは「ちょっと」と、テーブルに手を乗せた。
「私が帰ってきて、随分不満そうにするってどういうことですか」
「別に。客だと思って上がったテンションが、お前だって分かって下がっただけだ」
「人の顔見てテンション下がるのもいけ好かないですけど。……てか、私は仕事してきたんですよ」
「あっ、そうだったな。錬精品を届けてくれたんだっけ」
リゼはエプロンのポケットから用紙を取り出して、店長アルクに手渡し見せた。
「……売上は5,000ゴールドかよ」
町民から依頼された魔石のランプ修理では、やはりそんなものか。
お小遣い程度にしかならない売上明細をくしゃくしゃに纏めて、近くのゴミ箱に投げ捨てた。
「はー、やれやれ。もう少し売上が出ないもんかねぇ」
「腕はあるのに、こんな小さな町にお店を出してるのが原因じゃないですか」
「厳しいこと言うね」
「でも、大きい街に出ても競争に負けて閉店するかもしれませんけど」
「おい」
それじゃ、どっちみち俺の店は閉店じゃねえか。
アルクがツッコミを入れると、リゼはバターピーナツを摘みつつ、当然の言葉を口にした。
「じゃあ真面目に働いたほうが良いんじゃないですか」
「結構真面目に働いてるだろ、俺は」
「昼間からバタピー食べて居眠りする店長がどこにいるんですか! 」
「……ここにいる! 」
アルクは胸を張って言う。その張った胸に、リゼは右手でゴスッ、とチョップを入れた。
「あでっ! 」
「威張って言う事じゃないですよね。このままじゃ本当に閉店しちゃうよ? 」
「つっても、ある程度テキトーにやっても何だかんだ上手くいってきたしなー」
「あのね……」
リゼは、店長と思えない言葉にガッカリする。とはいえ、こんな日常をもう3年も繰り返してきたわけだし、心の奥底では、そこまで心配はしていなかった。
そう、こんな面倒事が嫌いでテキトーな店長でありながら、この錬金術店アルケミストは、結局最後に何とかなってしまう、妙な運に恵まれた店だったのだ。
…………
…
【抜粋2/新規ストーリーネタ】
ぷるぷると震える手で助けを求める店長に、リゼは溜息を吐いて彼の手を握る。そのまま、勢い良く引っ張ると、力無かった店長はそのままリゼに抱き締めるよう覆い被さった。
「ちょ、ちょっと! こらぁーっ、店長!! 」
「わざとじゃなくて……いや本当に体力の限界なんだって……」
「自分の力で立って下さいよ! てか、背中を撫で回すなぁっ!」
店長は「はぁはぁ」と息を荒げていた辺り、この状況を誰かに見られたら勘違いも甚だしくなる。だが、そんな時に限って、そういうことは起こるものだ。
「……ゴホン。お二人は、そういう関係だったんですか」
今日はシックなスーツ衣装を身に纏う管理人ロック。いつの間にか二人の前に立っていた彼が、小さく咳払いした。
「あっ、あああっ、ロ、ロックさん!? どうしてここに!? 」
「人気のない山ならまだしも、ここは採掘場入り口ですよ。事務所からお二人の姿が見えたもので」
管理人がチラリと視線を別方向に向けると、近くには採掘場の本事務所があって、少し目を凝らせば、多くの人間が業務に従事していた。
リゼは目をグルグルと回して、違うんですよ! と叫ぶ。
「お二人がそういう関係なのは私に関係ない事ですが、公衆でイチャつかれるのはちょっと」
「ち、ちち、違います!それは 勘違いです、誤解です〜っ!! 」
「と、仰られても。そういう風にしか見えませんが……」
「ですから、それは本当にかんちが……ひゃうぅっ!? 」
急にリゼが、艶やかな甲高い声を出す。人が必死に言い訳をしているというのに、店長はどさくさに紛れてか、わざとか、リゼの背中に回していた両手を腰の方にサワサワと滑らせのだ。
「て、てんちょ……! な、何するんですかぁっ!! 」
さすがに人前だったり、やり過ぎだったり、恥ずかしさだの何だの、色々な感情が入り混じったリゼ。顔を真っ赤にして、店長を反射的に背負投げしたのだった。
どぉんッ! と、土が舞う。店長は背中の痛みに悶え、地面を転がり回る。
「あいっ……てぇぇっ!! ンノォォオンッ!? 」
「そ、それは天誅ですからぁっ!! 」
リゼは、薄っすらと涙目になって叫ぶ。
その様子に管理人は「凄い一本だ」と、思わず拍手した。
以上となります。
いつか公開ができれば、と考えております。
会える日があれば、こちらでご報告致しますので、気長にお待ち下さい。
それでは……。
以下、本編に続く(?)
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