「世界ナゼそこに?日本人」とカルトの問題について考えています。

「やらせ」とお詫び

「世界ナゼそこに?日本人」とカルトの問題が報道されるとネットで拡散され、その中には「やらせ」という批判が多くありました。

毎回この番組は取材スタッフが舞台となる国に到着する場面から始まります。
「日本人を知りませんか?」と道行く人に声をかけ、やがて家にたどりつきドアを叩いて、「あなたが日本人ですか?」「はい」というやりとりを経て、本編に突入します。

これは「演出」です。

事前に日本から電話やメールで綿密に取材し出演の許可を取りつけてから渡航し、ちゃんと挨拶して「では撮影を始めます」と断ってから改めてドアを叩いているはずです。
本サイトは、このような演出を問題視するほど原理主義ではありません。

それではカルト信者出演の回はどうだったでしょうか?

放送をみると、出演者とカルトのかかわりについて、そこを省略した回と、別の話をした回があります。
前者はなぜ移住したかの動機などに触れず曖昧にしていました。後者は合同結婚式で出会った夫婦なのに自由恋愛と主張していたものです。
つまり、隠蔽と虚偽です。

なんであれ、出演者は好きに話せばいいと思います。
テレビ東京は「公共の電波を預かり放送事業に携わるものとして、放送の公共的使命と報道機関としての責任を自覚し、新しい世代の育成や国民の福祉と文化の向上に貢献」すると宣言しているので、それを果たさなければなりません。

取材に際して、出演者の曖昧な発言を掘り下げなかったのならば、スタッフが無能です。出演者が嘘をついたのを信じたならば、スタッフが間抜けです。

もし仮にスタッフが「合同結婚式とかまずいんで、留学先で出会ったってことで」などと依頼していたのであれば、これこそが「やらせ」です。この番組でこれがあったかは不明です。

最も根深いのは、出演者がカルトとの関係性を語っているのに、編集でカットした場合です。これに該当する事例があることをスタッフが証言しています。
カットしてまで放送するならば、出演者が霊感商法や強引な勧誘に関与しておらず、洗脳もされずに納得して合同結婚式で配偶者を得て異国に移住していることをスタッフが確認しておくべきと思います。それらに該当する人は報道番組に回して取材すべきです。

番組プロデューサー・三沢大助氏は、「『殊更に個人的で、自由な価値観』については最大限尊重し、必要でない限り放送しない」と語っています。

番組の最大のテーマは「ナゼそこに?」ですから「必要でない」はずがありません。
仮にテレビ東京の偉い人が「たかが娯楽番組だ。全部ウソだよ。カルト被害者の苦悩とか見ても楽しくねえだろ」と声明を出せば、それはそれで清々しい姿勢です。

この編集方式は「隠蔽」ではありますが、「やらせ」と表現すべきかはわかりません。
「ないものをある」とするとやらせとして社会的な批判を受けますが、「あるものをない」とすることは編集権を口実に正当化されがちで、批判されにくいものです。


カルト出演に関してはやらせか否かの明言は避けますが、この番組では明らかなやらせをした事例があります。
番組公式サイトに3件の「お詫び」があります。
番組放送後におそらく出演者からの苦情があったために追記されたものです。
(出演者の氏名はぼんやり隠します)

事例1 2013年3月29日放送

出演者のサイトを見ると、この方は衛生管理に万全を期していたのにスタッフにバナナを食べるよう強要され、なおかつ騙し討ちで放送されてしまったことがわかります。文字通りの「やらせ」です。

また、番組DVDを受け取るのに相当な時間がかかったことと、製作会社ならびにテレビ局との交渉に時間がかかってしまったため、皆様にご報告差し上げるのが大変遅くなってしまいました。重ね重ね、お詫び申し上げます。

ご本人は「お詫び」をなさっていますが、番組の言葉はせいぜい「解説」にとどまっています。「交渉に時間がかかっ」たそうなので、番組側は自らの正当性を主張したのでしょう。

お詫び文を読めば、この方が真摯にアフリカでのチョコレート生産に取り組んでいらっしゃることが感じられます。世の中には責任と誇りを持って仕事に取り組み、妥協しない人がいます。
テレビ東京および制作会社は「バナナくらいいいじゃん」と思う人が集まる職場なのでしょう。

事例2 2013年9月6日放送

この回の出演者は日本で手掛けているビジネスの一環として海外出張していらしたので、あたかも仕事上のトラブルがあったような放送をされると信用に差し障ります。
文面からするとご本人でなくパートナーから苦情があったとも推測できますが、事実と相違があり、関係者に迷惑をかけたとのことで「お詫び」をしています。
これは分類するならば、「虚偽」でしょう。

事例3 2014年10月20日放送

この方は、まさに本サイトのような赤の他人にどうこう言われるのを嫌って番組に苦情を申し入れたに違いありません。
制作者は、聞き取りに基づいた再現映像を「わかりやすく」しすぎたのでしょう。
「虚偽」あるいは「誇張」です。

インターネットが普及したとはいえ、個人の情報発信力は小さく、テレビで放送されたことを訂正するのは極めて困難です。
事例2と3は出演者側から正確な事実を公開しにくい事情もあります。

特に事例3を放送すれば出演者の周囲に好ましくない影響を与えるのは、バカにでもわかります。それでも再現映像までつくったのは、誰かを傷つけてでも放送する価値があると判断したからでしょう。

遠い異国に暮らす人には、仕事や結婚や人道支援などさまざまな事情がありますが、テレビスタッフには毎週やってる番組の1回分で、しかも2度と会わない相手です。

批判を受けそうなカルト信者は慎重に隠蔽し、それ以外は誇張した見世物にして視聴率を稼ぐ。



「世界ナゼそこに?日本人」のAD牧佑馬さんも嘆くわけです。
(カルト問題発覚のきっかけになった人物。ツイッターアカウントは削除済み)
いずれ牧さんがテレビ界を改革してくださることを信じましょう。

ところで、統一教会信者であった出演者の方から「私の大切な信仰を無視するな」という苦情があったら、テレビ東京がどのように対応するのでしょうか。

どなたか申し入れてみてはいかがでしょうか?

追記
事例4 2016年11月14日放送
http://www.tv-tokyo.co.jp/nazesoko/backnumber/1611...


ちなみにこの回の予告もご覧ください。


番組の描写では○○さんが個人的な活動としてギニアビサウの支援をしているようにしか見えなかったのですが、実際は組織の業績であったようです。
これが虚偽に分類されるかは不明ですが、少なくとも「不適切な演出」と受け取り、抗議した人がいたのでしょう。
この短文は関係者へのお詫びと読めますが、「補足」としているところに制作陣の「いや、間違えてねえから」という抵抗が感じられます。一般的にまず本編があって、そのおまけとして補足があるものですが、このページには記事もなく写真もなく、ただ「補足」のみあるという異様な状態です。
「日本人が海外でがんばってる。偉いですね」という平凡な回でしたが、その放送後に触れてはならない事情が発生したのでしょう。
番組よりよほどドラマチックですね。

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