汎用的飛行魔法は、魔法研究初期から検討が行われているが、いっこうに解決されることがなかった。
その最大の理由は、魔法の「
事象干渉力」の性質にある。
空を自由に飛び回るということは、速度や加速度といった運動状態を何度も変更する、ということである。
したがって、空を自由に飛び回るためには、魔法で運動状態を何度も変更する必要がある。
しかし、
魔法式には必ず
終了条件?が記述され、
終了条件?が満足されるまでは事象改変は効力を持ち続けている。
ゆえに、空を自由に飛び回るためには、自身に既に作用している魔法に、別の運動状態に変更した魔法を上書きしなければならない。
ところが、魔法を別の魔法で上書きするためには、作用中の魔法を上回る
事象干渉力が必要となる。
したがって、運動状態を変更する度に、より大きな
事象干渉力の魔法を上書きし続けなければならない。
しかし、魔法の
事象干渉力には上限があって、したがって魔法の重ね掛けが可能な回数も上限がある。
一般的な
魔法師に可能な
事象干渉力の強度調節はせいぜい10段階程度であるため、10回の重ね掛けが限度となる。
それゆえ、汎用的飛行魔法は長い間実現することができていなかった。