CoC界隈で活動している黒江による、クトゥルフ関係の制作物置き場。

1.はじめに
本シナリオは、クトゥルフ神話TRPGのサプリメントである『クトゥルフ2010』に収録されているサンプルシナリオ、『奇妙な共闘』を下敷きにしたもので、奇妙な共闘の数年後に発生した事件という設定となっている。
このシナリオテキストにおいても、セッションをおこなうために必要な最低限の説明をしているが、キーパーはできることならば奇妙な共闘の内容をある程度詳しく知っている方が望ましい。
また多くの設定をクトゥルフ2010から借用しているため、キーパーは手元にこのサプリメントを持っておいた方がいいだろう。
プレイヤーに対しても本シナリオが奇妙な共闘を下敷きとした物語であるということを周知しておくのが好ましい。
あるいはこのシナリオをプレイした後に奇妙な共闘をプレイすることで、違った楽しみが生まれるかもしれない。もちろん何も知らずにシナリオをプレイしても問題なく作ってある。
本シナリオの目標は第一に、自分の正体がわからない記憶喪失者と、それに巻き込まれながらも強かに立ち回る人間をロールプレイすることである。
第二にはタイトルとも関連するが、『シールド(楯)』という名前の自衛隊特殊部隊が解散したあと、社会に冷遇されながら、図らずも敵味方に分かれた元隊員達の微妙な関係や感情を描くことである。
プレイヤーは堅実だったり狡猾だったりする探索者を演じてもよいし、敵の兵士に共感しつつもドラマティックに引導を渡す探索者を演じてもよい。
探索者、特にシナリオの主人公格となる記憶喪失者を演じる探索者は、自分が物語上どのような立ち位置であるかを見定めて、少し難しいロールプレイをすることが求められるだろう。

2.シナリオの概要
本シナリオには二種類のハンドアウトが存在する。一つ目は過去に存在した自衛隊特殊部隊シールドの元隊員、という出自を持つ探索者である(HO1)。
本シナリオでは悪意のある陰謀によってとあるウィルスの被験体となり、それが原因で記憶喪失を発症、捕われていた場所を半ば自失状態で脱出する。
そして追われる身となり、否応なしにシナリオで起きている事件への関与を強いられる。
二つ目のハンドアウトは東京にある架空の歓楽街『冠城町』を拠点とする、タフなトラブルシューターという立場の探索者達である。
探偵、情報屋、便利屋、用心棒などといった職業の人間、あるいはその助手や協力者である。
この探索者は街の有力な組織から依頼を受けて敵対組織の動向を探る過程で、シナリオで起きている事件に関わることになる。
肉体的な危険や、少々の法律違反に対して尻込みをしない人物である方が良いが、最低限仁義や情を持っている人間であることが望ましい。

3.シナリオの背景
シナリオ開始時点を遡ること数年前。東京では先祖返りした一人の強力な蛇人間が『白蛇(はくじゃ)の家』という宗教団体を作り、
そこで開かれる『木曜会』という会合と支配血清を利用して政府要人を取り込んでいた。
蛇人間は自衛隊を裏から操り、対テロ都市部隊であるシールドを結成した。
そして東京の地下に巣食ったグール達を一掃し、太古の蛇人間達が作り上げた複数の地下遺跡を奪還、その魔術的な力場を利用して邪神ツァトゥグァを招来しようとしたのである。
しかしグールの指導者と勇敢な人間の一グループが共闘することで白蛇の家が襲撃され、計画は頓挫。蛇人間に操られた防衛省幹部は失脚、シールドも解散して東京に一時の安寧が訪れた。
ここまでの内容は奇妙な共闘のものであるため、詳細を知りたい場合は当該サプリメントを参照してほしい。
『白蛇の家』がなくなったことによって、蛇人間とそれに与する人間の影響力は一時的に弱まったが、完全に一掃されるには至らなかった。
数年後、新たに力を付けた蛇人間達と『木曜会』に所属していた人間達は、また別の方法で勢力を伸ばし始めたのだ。本格的な侵攻の下準備として、彼らは二つの計画を実行していた。
一つ目は、蛇人間が用いている支配血清という毒の改良である。これは摂取した人間を蛇人間の命令に従いやすくするものだが、一定期間ごとに服用し直さなければならないという欠点があった。
これでは大人数の人間を支配下に置くことができない。その欠点を補うべく開発されたのが、人間の言語で『VoT(ヴォット)』と呼ばれるウィルスである。
感染者は支配血清を服用したのと同様の状態に陥り、なおかつウィルスであるがゆえ、代謝によって効果が消失することはないという恐るべきものであった。
二つ目の計画は、資金と物理的な領域(テリトリー)を確保するために裏社会の人間に接近するというものである。彼らが目を付けたのは日本最大級の歓楽街『冠城町』であった。
この街は指定暴力団『九頭竜会』の二次団体である『鯨組』という組織の縄張りである。
旧木曜会の人間は、同じ九頭竜会系列でありながら鯨組と反目する『蛟竜一家』の若頭に接近してこれを取り込んだ。
そして東西暴力団の大規模抗争によって鯨組が勢力を減じたのに追い打ちをかけるようにして、警視庁による『冠城町浄化キャンペーン』をおこない、鯨組が後ろ盾となっている店舗を摘発していった。
それによる間隙に食い込む形で蛟竜一家が勢力を伸ばし、蛇人間達はそのおこぼれに預かっていたのである。
蛟竜一家の支配力強化に際しては、解散したシールドの元隊員が利用された。
数年前の事件以降、政治的に警戒され不遇を託っていた彼らは、また名誉ある任務に就けるかもしれないというエサに誘われたのだった。
彼らは既に自衛隊内外に散っていたが、ある者は蛟竜一家に取り込まれてその尖兵となり、ある者はVoTの被験体となった。
後者の一人が、本シナリオで重要な役割を持つ探索者というわけである。
そして鯨組も情報戦での不利を自覚し、遅まきながら外部のトラブルシューターに依頼を持ち込むことになった。
かくして冠城町には陰謀渦巻く不穏な空気が醸成され、探索の準備が整った。

4.シナリオの舞台
物語の舞台となる冠城町は東京にある架空の街であり、600m四方の面積に4000以上の店舗が密集するアジア有数の歓楽街である。
観光客や種々の欲望を満たしたいと考える人間が多く集う活気ある場所であるとともに、暴力団、マフィア、麻薬密売組織などが跳梁跋扈する犯罪多発地帯でもある。
この街は現実にある歌舞伎町をモデルにしているため、キーパーが奇妙な共闘で出てくるような現実の地名を用いるのが好ましいと考えるならば、必要に応じて改変しても問題ない。
冠城町は直交する二つの大通りによって分けられる四つのエリア、および地下空間に分かれている。



〈飲食・繁華街エリア〉
この場所には居酒屋やカラオケ店などが軒を連ねる。各国料理のレストランはもちろん、洒落たカフェやカラオケ店、ドラッグストア、ディスカウントショップなど各種小売店が出そろう。
訪れる客層としてはサラリーマンや学生が多く、またもっとも人通りの多い区画でもある。
探索者達が食事やそれにともなう作戦会議、物品の購入を行う場合は、このエリアを利用することになるだろう。

〈歓楽・風俗街エリア〉
飲食・繁華街エリアで満たされなかった欲望はここに集結する。
煌びやかなクラブ、派手な外観のキャバクラ、違法スレスレのソープランド、その他さまざまな種類の性風俗店が立ち並ぶエリアである。
その中には高級なものもあれば廉価なものもあり、国籍や趣向も多様である。
その店の多くは暴力団等の後ろ盾(いわゆるケツ持ち)を持っており、もし騒ぎを起こせばすぐに彼らが飛んでくるだろう。この街の裏社会を代表するエリアである。

〈住宅・ホテル街エリア〉
ラブホテルやビジネスホテル、またある程度格式の高いホテルがここに集っている。
あまり住むのに適した場所とは思えないが、数少ない住宅やアパートの類もこのあたりにある。
猥雑な冠城町にあって比較的閑静な場所ではあるが、必ずしも安全と言うことはできない。

〈行政・ビジネス街エリア〉
比較的小奇麗、かつ高層な建物が立ち並ぶエリアである。他のエリアに比べ落ち着いた雰囲気であり、また治安も良い。
図書館や郵便局、区役所などの各種行政サービスもここに集積しており、探索者達が図書館で情報収集をする場合はこのエリアを利用することになるだろう。

二つの大通りが交差する中央交差点のそばには、この街で最も高い建築物であり、商業施設、文化施設、ビジネスオフィスや居住区が入る冠城ヒルズがある。
シナリオ内で暴力団員や警察官、不良などを登場させる場合は、以下のステータスを参考にするとよい。

【一般的な暴力団員・警察官・不良】
STR12 DEX10 INT11 アイデア55
CON10 APP10 POW10 幸運50
SIZ13 SAN50 EDU12 知識60
HP12 MP10 回避20 DB+1d4
武器 こぶし 60% 1d3+1d4
(小型ナイフ 30% 1d4+1d4)
(38口径リボルバー 25% 1d10)

〈地下空間〉
この街には地下街、下水道、地下鉄の他、グールによって掘削された迷宮のような地下坑道、そして古代蛇人間の遺構が存在している。
数年前にシールドが実施した掃討作戦によってその数は減ったものの、未だ相当数のグールが地下に潜み、死肉を漁っている。
なんの準備もせずに侵入することは極めて無謀な行為である。さらに地下深くには、クトーニアンや無形の落とし子、原ショゴスなど、より危険な存在が潜んでいる可能性もある。
このシナリオで探索者達が立ち入る可能性があるのは、ごく浅い領域に留まる。

5.シナリオ内勢力
このシナリオには多くの勢力が存在するため、その概要を下記に記す。その勢力を統率する人間や構成員にはそれぞれの目的があり、原則としてそれに沿って行動する。

〈九頭竜会〉
東京に本拠に関東全域に影響力を持つ指定暴力団。傘下の団体を含めた構成員は約6000人。
本シナリオの舞台である冠城町はこの九頭竜会の支配下にあり、多くの店の後ろ盾がこの九頭竜会である。
戦前より存在しており、仁義を重んじる古風な任侠団体である。戦後の治安維持や冷戦時代の共産主義勢力への対抗など、必要悪としての側面も備えている。
近年発生した東西暴力団の抗争によって少なくないダメージを受けた。鯨組および蛟竜一家を傘下団体としている。

〈鯨組〉
九頭竜会の傘下団体にして、冠城町を縄張りとする任侠団体。
店舗からのみかじめ料の対価として、店舗で発生したトラブルの解決、フロント企業を通した金銭の融資や不動産投資、水商売や賭博に関係する人材の斡旋が主なシノギである。
久慈昌平という男を若頭に据え、構成員150名を数えるが、先般発生した東西暴力団の抗争によって多くの人員が検挙され、往年に比べ弱体化している。
本シナリオでの目的は権益の保持と敵対勢力からの組織防衛。

〈蛟竜一家〉
九頭竜会内の有力勢力にして古参の傘下団体。近年は東京南東部の高級商店街・繁華街を主な縄張りとしている。
構成員200名超で、資金力は九頭竜会随一。直近の抗争ではうまく立ち回り、被害は僅少。本シナリオでは旧木曜会のメンバーと結託し、影響力を低下させた鯨組の縄張りを切り取ろうとしている。
鯨組とは縁戚関係であり、蛟竜一家若頭の水地英宗と鯨組若頭の久慈もかつて付き合いがあったが、主に水地の対抗意識により両者の関係は険悪となっている。
二十人弱の準構成員からなる『牙』という名前の実力部隊を保持しており、元シールド隊員を教官・指揮官として実力を高めようとしている。

〈蛇人間と旧木曜会〉
蛇人間には、太古からの休眠から目覚めたスリーパーと呼ばれる個体、先祖返りしてスリーパーに匹敵する能力を持つ個体、退化して小さく弱くなってしまった個体がいる。
本シナリオの時点では、奇妙の共闘で登場したような突出した個体がいるわけではない。
しかし狡猾で知能の高い先祖返りの数個体が巧みに潜伏しつつ、再び世界に蛇人間の威光を取り戻すため、策謀を巡らせている。
その蛇人間達と協力関係にあるのが、旧木曜会のメンバーである。
思想的には民族主義や体制変革を標榜する新右翼に属するが、基本的には自らの権力拡大と私利に目が眩み、蛇人間達にいいように操られている。
支配血清で操られている者もいれば、そうでない者もいる。
本シナリオで直接探索者達の前に姿を現すことはないが、都議会議員や防衛省、警察庁・警視庁の部長クラスを中心として十数名程度が暗躍している。
彼らが元々持っている権力は政府主流派も無視できないほどに大きく、それが蛇人間やVoTによってさらに強まりつつある。

〈グール達〉
東京地下に棲む数百匹規模の集団。リーダーによって統率されることもあるが、全体が組織として動くことはほとんどなく、普段はバラバラに散らばって生活している。
多くのものは人間に敵意と食欲を抱いているため、安易に接触するのは危険である。目的は特にないが、必要があれば潜在的なものも含めた外敵の排除をおこなう。

6.主要NPC

【日比谷 秋志(ひびや しゅうじ)】27歳 男性
元シールド隊員、陸上自衛隊隊員
STR12 DEX15 INT13 アイデア65
CON11 APP11 POW11 幸 運55
SIZ12 SAN50 EDU15 知 識75
H P12 M P11 回避30 ダメージボーナス0
回避:76% 武道立ち技系(自衛隊徒手格闘):70% キック:70%
こぶし:70% ライフル:66% 機械修理:61% 電気修理:61% 
応急手当:56% 運転〈自動車〉:56% 目星:50% 聞き耳:50% 
武器 コンバットナイフ:25% 1d4+2

HO1の探索者。高校を卒業して陸上自衛隊に入隊。士長に昇任後、近接格闘能力の高さを買われ、新設された特殊部隊であるシールドの隊員となる。
地下でグール集団との苛烈な戦闘が発生した際に負った爪による裂傷が、今でも右大腿部に残っている。シールド解散後は左遷同然の人事によって普通科に移り、日々を過ごしていた。
ある日の訓練中事故に巻き込まれ負傷、そのとき旧木曜会の息が掛かった者により確保され、VoTに感染させられる。
ところがウィルスと身体の相性によってVoTはうまく効果を発揮せず、記憶喪失を主とした精神症状を発症。朦朧としつつ捕われていた場所を脱出した。シナリオ開始時の階級は三曹。
なおこのプロフィールはあくまでもサンプルであり、細かい部分を変更したり、補足したりといったことは自由にやってよい。
シナリオ開始時は記憶を失っているため、名前、年齢、修めた武道の名称などはプレイヤーに伏せておく方が、雰囲気が出ていいだろう。

【津島 丈治(つしま じょうじ)】28歳 男性
元シールド隊員、蛟竜一家準構成員
STR13 DEX15 INT12 アイデア60
CON14 APP9 POW10 幸運50
SIZ13 SAN50 EDU14 知識70
HP14 MP10回避30 DB+1d4
こぶし:90% ナイフ:75% 武道立ち技系(自衛隊徒手格闘):75% 
聞き耳:62% キック:60% ライフル:65% 拳銃:60%
回避:60% 組み付き:40% 運転(自動車):40%
他の言語(英語):20%
武器 こぶし 90% 1d3+1d4(2d3+1d4)
   キック 60% 1d6+1d4(2d6+1d4)
   組み付き 40% 特殊
   コンバットナイフ 75% 1d4+2
   ノーリンコT-54 60% 1d8

日比谷と同じく近接格闘に卓出した兵士で、元シールド隊員。最終階級は三曹。
部隊の解散後は上官に対する暴力事件を起こして除隊し、海外のPMC(民間軍事会社)に所属して中東やアフリカを転戦した。
最近日本に呼び戻され、蛟竜一家が保持する実力部隊で人員の訓練と不法行為の実行を担っている。
命のやり取りに喜びを見出す危険な人間であり、低くない能力を持ちながら一般社会にうまく適応できないという悲哀を持つ人物でもある。
PMCにおいても現在においても『闘争からロマンが失われてしまった』と不満を持っており、シールド所属時代を懐かしむような様子を見せる。

【水地 英宗(みずち えいしゅう)】41歳 男性
九頭竜会蛟竜(こうりょう)一家若頭
STR11 DEX11 INT15 アイデア75
CON10 APP10 POW12 幸運60
SIZ13 SAN48 EDU16 知識80
HP12 MP12 回避22 DB0
言いくるめ:74% 法律:62% 経理:60% 心理学:61% 
聞き耳:55% 運転〈自動車〉:55% 値切り:49% 拳銃:40%
人類学:38% 薬学:26%
武器 ベレッタM85F 40% 1d10

九頭竜会蛟竜一家若頭。蛟竜一家は九頭竜会内における有力勢力であり、その組長は次期会長候補の一人となる。
水地は将来の会長就任を見据えて勢力の拡大を目指している。その為には手段を選ばず、旧木曜会と協力し、久慈の失脚を狙った工作をおこなっている。
他者を利用することを躊躇わない冷徹な策略家で、およそ義侠心というものを持ち合わせていない。 

【久慈 昌平(くじ しょうへい)】38歳 男性
九頭竜会鯨組若頭
STR14 DEX13 INT16 アイデア80
CON10 APP14 POW13 幸運65
SIZ15 SAN65 EDU12 知識60
HP13 MP13 回避26 DB+1d4
言いくるめ:80% 心理学:80% 値切り:65%
日本刀:65% 居合:65% 拳銃:50% 目星:50% 聞き耳:46%
武器 日本刀 65% 1d10+1d4
   44口径マグナムリボルバー 50% 2d6+2 

九頭竜会鯨組若頭。中学卒業と同時に部屋住みとなり、威圧的な見た目や能力とは裏腹に、交渉術と駆け引きのうまさ、人物としてのカリスマで現在の立場に着いた裏社会の実力者。
東西暴力団の抗争により弱体化した鯨組であるが、それでもなお冠城町における事実上の盟主である。
勢力の縮小に責を負う立場であり、蛟竜一家の水地をはじめとして、彼の失脚を願う人間も多い。
愛銃はコルト・アナコンダ6インチモデル。本シナリオでは探索者達に調査を依頼する。

【〈リンドウ〉安田 公子(やすだ きみこ)】30歳 女性
関東公安調査局主任調査官
STR14 DEX7 INT15 アイデア75
CON14 APP14 POW10 幸運50
SIZ11 SAN50 EDU16 知識80
HP13 MP10 回避12 DB+1d4
心理学:70% 信用:70% 説得:70% 法律:58% 
組み付き:65% 隠れる:60% 応急手当:58% 忍び歩き:52%  
他の言語〈英語〉:44% 武道組み技系〈柔道〉:30%
武器 組み付き 65% 特殊

公安調査庁関東公安調査局に所属する主任捜査官。旧木曜会に浸食された警察とは別個に、蛇人間達や旧木曜会の動向を追っている。
数年前に発生した蛇人間達にまつわる事件についてもある程度の情報を保持している。
本シナリオにおいて比較的自由に動くことのできるキャラクターであり、情報収集や探索者の補助などの役割を担うことができる。基本的に身分を秘匿し、リンドウと名乗る。

【オーガー】
グールの頭目
STR21 DEX10 INT14 アイデア70
CON16 APP- POW14 幸運70
SIZ20 SAN- EDU16 知識80
HP18 MP14 回避20 DB+2d6
武器 かぎ爪 75% 1d6+2d6 隻腕のため1回攻撃
   噛みつき 60% 1d10+牙でいたぶる(1d6)
装甲 1ポイントの筋肉。また火器と飛び道具はロールで出た値の半分のダメージしか与えない

東京地下に棲むグールの一派閥を率いるリーダー的な個体。数年前シールドとの戦闘に参加し、日比谷の銃撃で右腕を肘の先あたりから喪失している。
また日比谷の脚にある傷を付けた個体でもある。物事に深く拘らない性格であるらしく、特別日比谷や人間への復讐に燃えているわけではない。
しかし再度グール達の住処が脅かされることを心配しており、ホームレスから新聞や雑誌などを受け取って情報を収集している。
他のグールに比べて身体がずば抜けて大きく、鼻面が長く、毛深い。

7.導入 ヾ躙韻憤様
舞台は現代日本の歓楽街冠城町。季節はいつでもよい。
HO2の導入として、街で優れたトラブルシューターとして仕事を請け負っている探索者達が、約束の依頼人を待っているところから物語が始まる。
その依頼人は久慈昌平という名前で、街の有力な暴力団である鯨組の若頭である。
もしかすると探索者達は、かつて彼や彼が所属する組織からの依頼を遂行して、久慈と一定の信頼関係を築いているかもしれない。
探索者は彼を待つ間、新聞、雑誌、テレビ、インターネットのニュースサイトなどで以下の情報を得る。

『冠城町浄化キャンペーン』(最近のニュース)
X日、警視庁の生活安全部は冠城町内にある風俗店2店舗を風営法違反で摘発し、両店を経営する男性(45)を逮捕したと発表した。
先月より組織犯罪対策部と生活安全部が共同で実施している『冠城町浄化キャンペーン』が一定の成果を挙げている形で、キャンペーン開始時より7店舗で15名が逮捕されている。
警視庁幹部は冠城町を本拠とする指定暴力団に言及し、「前時代的な暴力団組織を冠城町から一掃する」と意欲をにじませている。

少しして訪れた久慈は、やや疲れた様子である。普段は堂々として威圧感のある彼の雰囲気からすると、あまりらしくない姿であると言える。
あまり勘の良くない探索者でも、彼の心労が冠城町浄化キャンペーンに関わるものであると推察するのは簡単だろう。
久慈が探索者達に依頼する仕事の内容も、キャンペーンに少なからず関わりがある。仕事の種別としては情報収集だと前置いて、久慈は自らの組織を取り巻く状況について語る。
以下がその概要である。

『調査依頼の背景』(久慈昌平の話)
鯨組の運営については数年来順調だったが、少し前に発生した関西暴力団との抗争によって人員や店舗が被害を受けた。
冠城町に侵攻してきた勢力の撃退には成功したものの、鯨組は体制の立て直しを迫られていた。それを狙い撃ちするように降りかかったのが今回のキャンペーンである。
鯨組は暴力団とはいえ、地域の顔役的な立ち位置でもある古参の組織であり、住民や商店主、地域警察との関係はそこまで悪くない。
しかしおそらくは内部事情に詳しい者によると思われる情報のリークがあり、それが傘下店舗の摘発に繋がっている可能性もある。
また同じ九頭竜会系暴力団の蛟竜一家がキャンペーンを掻い潜って不自然に勢力を拡大しており、この組織が鯨組の縄張りを切り取る策謀の一端を担っているのではないか、と久慈は睨んでいる。

もちろん組織としても造反者や敵対者を調べているが、若頭として組を預かる立場である久慈はキャンペーンへの対応に忙殺されており、またそもそも調査に長けた人間が組にはいない。
そこで優れたトラブルシューターである探索者達のもとに話を持ち込んできた、というわけである。
具体的な依頼内容としては、冠城町における蛟竜一家の情報を調査し、報告すること、というものになる。
期間はさしあたり一週間。報酬は400万円である。この金額は〈値切り〉によって600万円まで引き上げることができる。
また久慈は蛟竜一家についての基本的な情報として以下の事を話す。

『蛟竜一家』(久慈昌平の話)
九頭竜会の二次団体。東京南東部の高級商店街・繁華街を主な縄張りとしている。構成員200名超で、資金力は九頭竜会随一。
冠城町における活動実態は不明だが、組員や準構成員が組織的に行動しているとの情報がある。現在組の実質的な運営者は若頭の水地英宗という人物である。
権謀術数に長けた41歳の冷徹な男で、ゆくゆくは九頭竜会の会長候補と目されている。鯨組と蛟竜一家は縁戚関係であるが、近年の関係は良くない。
準構成員からなる実力部隊を保持しているという噂もある。

水地の顔についても、画像か何かを見せられたことにして、覚えておいた方がいいだろう。
調査の開始にあたっては、探索者側で残務があったり、冠城町で警視総監の巡視があったりということで、翌日からとした方が探索者同士の合流に都合がいい。
依頼に関する話を終えると、久慈は直通の連絡先を探索者達に伝え、組事務所へと戻っていく。

8.導入◆ゝ憶喪失の男
HO2が依頼を受け、その夜に事務所を閉めるか閉めないか、といった時間帯にHO1導入のシーンが開始される。
探索者は冠城町から少し東にある旧木曜会管理下にある施設から脱出したところである。
脱出するまでの経緯もそれなりの冒険行だが、シナリオの都合上詳しいシーンは省略する。
探索者は手にしたコンバットナイフでライトバンの運転手を脅しつつ、冠城町付近まで辿りついた、というところから始めるのがスムーズだろう。
探索者はVoTの影響で意識が混濁しており、かなり広範な記憶喪失が生じている。逃げてきた経緯も、自分の名前や職業も解らず、またそれが解るような所持品も持っていない。
ただ本能的な危機感に突き動かされてここまで逃げてきたのである。実はこの運転手は蛟竜一家の構成員であり、探索者が逃走すれば責を負う立場にある。
そのため、探索者がやや朦朧としているスキを狙って襲い掛かってくる。戦闘処理で進行してもいいし、簡単に叩き伏せられたとしてしまってもいい。
探索者は高い戦闘能力を持っているので、拳銃も持たない暴力団員一人に苦戦することはないはずだ。敵の能力値は【一般的な暴力団員・警察官・不良】を参照すること。
暴力団員をのした後、探索者は相手の身分を訝るに違いない。相手はジャージのようなラフな格好だが、ポケットに代紋のバッジを忍ばせている。
探索者がそれを漁るか、そうしないならば偶然転げ落ちるかして見つけさせるといいだろう。記憶喪失である探索者には、その代紋がどのような組織のものか解らない。
探索者は(財布などと一緒に)バッジを持って行ってもいいし、その図柄を覚えておくことも難しくはない。
探索者は車を奪ってもっと遠くに行きたがるかもしれないが、探索の舞台は冠城町であるし、また合流の都合もあるのでそれはあまり望ましくない。
探索者の意識が再び混濁し、また乱闘があって耳目が集まってきたということで、それとなく車で逃げる選択肢を遠ざけて、探索者を冠城町内に向かわせること。
フラフラと、しかしなるべく目立たないように移動するうち、探索者はHO2と偶然出会うか、拠点にたどり着く。途中で行き倒れて、HO2の探索者に発見されるというのもいいかもしれない。
たとえ口で説明できなくとも、HO2の探索者達は、HO1が蛟竜一家と何らかの因縁を持っているという事実(あるいは持っているバッジ)に興味を持つだろう。

以下は導入が終了し、本格的な探索が始まることを示すナレーションであるが、牙に毒を持つ蛇人間を暗示するような内容にもなっている。

無機質な陰で空を削る摩天楼の下
幾多の欲望と罪を代謝させ、堆積させながら蠢く退廃の都
この場所に生じた淀みはやがて毒となり
留まる者の魂を速やかに浸潤する
それは自律と節制を溶解させる出血毒であり
悲哀と寂寞を麻痺させる神経毒でもある
好んで摂取する者、知らずに注入される者、自らそれを撒き散らす者
そして収集し、混合し、濃縮することで新たな毒を作り出す者
善悪、美醜、賢愚を問わず、もし効き目を侮り、処置を怠ったならば
その毒は遅かれ早かれ、必ずや
犠牲者の心臓を止めるだろう

9.合流と探索の流れ
HO1は着の身着のまま、財布や携帯電話といったものも所持していない。
どこか危険な場所から逃走してきたという認識はあるが、どうやって逃げてきたかはもちろん、自分の名前や職業、親しい関係の他者などに関する記憶もほとんどすべて失っている。
しかし一般常識や固有名詞のようなものに関する知識は消失しておらず、またこれまでに習得した技能も適切に使用することができる。
しかし社会的に孤立した勢力であるということに変わりなく、そこにHO2と協力する動機がある。
HO2は蛟竜一家を調査するという依頼を受けているので、HO1が不穏な背景を持っていようとも、蛟竜一家と因縁があればこちらに抱き込んでおこうという意図が生じるだろう。
共闘を成立させた探索者達は、冠城町において調査を進めていくことになる。物語の中盤までは、いくつかのイベントが並列して発生しうるが、発生する順番は基本的に問わない。
冠城町内で聞き込みをおこなう場合は、〈信用〉〈説得〉〈言いくるめ〉などの技能が役に立つ。
場所や方法、対象によっては、〈値切り〉〈法律〉〈経理〉〈APP*5〉といったロールも有効だろう。この行動には成否に関わらず3時間がかかる。
安楽椅子探偵のようにダイナミックさにかけるかもしれないが、ある程度まではインターネットによる調査を認めてもいいかもしれない。
情報通や警察関係の協力者がいてもよいが、基本的には地道に泥臭く調査することを勧めたい。
HO1の探索者については、VoTによる精神症状が出ることがあるかもしれないが、その場合は探索が阻害されることによって、プレイヤーがストレスを感じないように注意する。

10.蛟竜一家について調べる

・危険な敵
キーパーは探索のなるべく早い段階でこのイベントを発生させる。HO2の探索者達が拠点にいるか、もしくは聞き込みをしている際、一人の男性に声を掛けられる。
服装などは普通だが、極めて油断のない立ち居振る舞いをするその人物は、元シールド隊員であり、現在は蛟竜一家の預かりで牙と呼ばれる実力部隊の指導をしている津島丈治である。
街で普通に聞き込みをする際の彼は、違法な武器を何も所持していない。津島は日比谷秋志という名前と顔写真(画像)を表示させて、探索者達に彼を知らないかと尋ねる。
このイベントはなるべくHO1がいないか、あるいはすぐさま隠れられるような状況で発生させるのが望ましい。
なぜなら津島は日比谷を探していて、見つかれば強引に連れ戻すか、すぐさま殺害せよという命令を受けているからだ。
この時点では、何か危険そうな人物が日比谷を探している、という印象を与えるぐらいで十分だろう。
〈人類学〉、あるいは〈人類学〉と〈心理学〉の組み合わせに成功すれば、彼がただのチンピラではない、より純度の高い戦闘を生業にしてきた人間であり、おそらく殺人の経験もあることが分かるだろう。
〈マーシャルアーツ〉と〈アイデア〉、もしくは〈武道〉と〈アイデア〉を組み合わせることで、彼の実力が推し量れるかもしれない。
もしHO1の探索者が津島に気付かれないように顔を見る機会があれば、もしかすると知り合いだったかもしれない、ということを思い出せるだろう。
津島は日比谷が自分の元同僚で、失踪してしまったから探しているのだと嘯くが、その心配するような口振りと、津島が放つ危険な雰囲気はかなりちぐはぐなものに映るだろう。
探索者達がシラを切れば、津島はそれほど疑うことなくどこかへ去っていく。

・牙の隊員、制裁の現場
このイベントは、探索者達が事件の全容をぼんやり掴んできたタイミングで発生させる方が望ましいだろう。
蛟竜一家の冠城町における活動実態ということについて聞き込みをおこなうと、
「牙とかいう名前の若者グループが、蛟竜一家の名前を出して一般人を威嚇したり、乱暴を働いたりすることがある」という情報が手に入る。
それをもとに〈飲食・繁華街エリア〉か〈歓楽・風俗街エリア〉で探索を続行すると、裏路地の方から男性のくぐもった悲鳴が聞こえてくる。
そこで探索者達が目にするのは、津島が規律違反を起こした牙のメンバーを制裁の為に締め上げているところである。
その態度は怒りに任せてというよりも多分に無機質で、むしろ背筋が寒くなるようなものである。隊員の顔には一発殴られたような痕があり、唇を切って血を流している。
制裁の理由は「断りなく蛟竜一家の名前を出した」とか「一般人に無用に暴行を働いた」とかいうものである。探索者達は事態の動向を見守ってもいいし、津島に話しかけてもいい。
もし制裁の邪魔をするようであれば、津島の態度は一気に敵対的なものになるだろう。直前に記載したイベントで津島と顔を合わせた探索者がいれば、津島はその探索者の行動を訝るかもしれない。
制裁が終われば隊員は逃げるようにその場を離れ、津島も少し間を置いてからそのようにする。探索者達は隊員か津島を尾行することができる。
もし津島を尾行する場合、探索者の服装、天候、時間帯にもよるが〈隠れる〉の半分、もしくは〈隠れる〉と〈忍び歩き〉の組み合わせロールに成功する必要がある。
失敗した場合、津島は誰かに尾行されていることに気付き、拠点に戻ることなくタクシーや店に入ってしまう。
もし96以上の目を出した場合は、何のつもりだと直接詰め寄られることがあるかもしれない。
尾行に失敗してしまった場合、また時間を置いて〈幸運〉に成功すれば、殴られて頬に腫れがある隊員を見つけることができる。
隊員か津島が戻る場所は、〈行政・ビジネス街エリア〉にある『日計(ひばかり)興業ビル』という建物である。

【一般的な牙の隊員】
STR12 DEX12 INT11 アイデア55
CON12 APP10 POW10 幸運50
SIZ13 SAN50 EDU8 知識40
HP13 MP10 回避24 DB+1d4
武道立ち技系(自衛隊徒手格闘):10%
武器 こぶし 65% 1d3+1d4(2d3+1d4)
(コンバットナイフ 30% 1d4+2+1d4)
(ノーリンコT-54 35% 1d8)

10代後半から20代前半の若者が主で、街を徘徊する場合は、2人か3人で行動することが多い。
()内の武器は戦闘が予想されるときのみ装備している。

・日計興業ビルについて調べる
日計興業ビルは地上4階、地下1階の建物である。築20年程度の鉄筋コンクリート造で、周囲の建物と比べて目立ったところはない。
基本的な情報として、ビルを所有している日計興業は人材派遣業とリース業をメインとしている。
〈法律〉*2に成功すると、日計興業が蛟竜一家のフロント企業(企業舎弟)であることがわかる。
インターネット等の調査で〈経理〉に成功すると、なぜか事業とは関係ない医療機器や薬品の発注があることがわかる。
あるいは単純に周辺で張り込みや聞き込みをすることによって、医師らしき人物が出入りしたり、医薬品の卸売業者の車が停まっていたり、
「ホームレスが連れ込まれるところを見た」という証言が得られたりする。
その場合運が悪ければ、牙のメンバーに見咎められることがあるかもしれないが、運がよければ水地がビルに入っていくところを見られるかもしれない。
探索の中盤ではこのビルに侵入する必要があるので、なるべく重要な情報が詰まった悪の巣窟であるという雰囲気を演出しておきたい。

11.冠城町浄化キャンペーン、あるいはその背景に関する調査

・図書館での情報収集
〈行政・ビジネス街エリア〉には図書館があり、新聞や雑誌がバックナンバーを含めて保管されている。
冠城町浄化キャンペーンの背景や、現在の町の情勢について調べるために2時間かけて〈図書館〉に成功すると、ごく最近発行された週刊誌の記事として、以下の情報が手に入る。

『警視庁と新右翼の不穏な関係』(最近の記事)
先月より警視庁が主導している冠城町浄化キャンペーンは、一定の成果を挙げている。
しかしその背後には、過去に宗教団体との不正融資に関わって辞職した防衛大臣補佐官が所属していた政治グループの影がちらついている。
『木曜会』と呼ばれていたそのグループは思想的には新右翼に属し、毎週木曜の夜に会合をおこなっていたと当時の関係者は話す。
現在、表向きには解散したものの、旧木曜会グループはゆるやかな連帯のもと、政府主流派も無視できない勢力を保持している。
木曜会に関しては、一時新設が取り沙汰された対都市テロ特殊部隊に深く関わっているとされ、国際情勢が不安定化する昨今において、その動向を今後も注視する必要があるだろう。

この情報を得た探索者はさらに、『大臣補佐官の不正融資事件』と『幻の対都市テロ特殊部隊』というトピックについて〈図書館〉でロールすることができる。
4時間かけてそれに成功すると、かなり前に発行された2つの情報が手に入る。

『大臣補佐官の不正融資事件』(数年前の記事)
防衛大臣補佐官の増山敬一郎氏(40)に降って湧いたスキャンダルによって、防衛省に激震が走っている。
宗教法人『白蛇の家』から増山氏に為された融資が、政治資金規正法に違反するのではないかとして、X日、東京地検特捜部が捜査を開始したと複数の報道機関が発表した。
白蛇の家は度々政治グループの会合場所となっていたが、法人の代表者とは現在連絡が取れない状況であり、当局は併せて行方を追っている。
増山氏の代理人は本誌の取材に対し、「事実関係が確認できないのでコメントは差し控える」としている。

『幻の対都市テロ特殊部隊』(数年前の記事)
自衛隊内で、対都市テロ特殊部隊新設の動きがあったという話をご存じだろうか。
先日防衛大臣補佐官を辞職した増山敬一郎氏の肝いりで結成された小隊規模の部隊だが、未だ動きのない所を見ると、どうやら増山氏失脚と共に計画は立ち消えになり、解散してしまったようである。
隊員は中央即応集団から選り抜かれた精鋭で、全員が近距離戦闘のエキスパートであったという。
一部では、東京の地下で密かに訓練を積んでいた、事実上増山氏の私兵と化していた、などの噂もあり、軍事マニアの関心を集めている。

増山や白蛇の家といった名前については、奇妙な共闘の内容に深く関わるものであるが、本シナリオでは直接登場しないので、
探索者達がこの内容を深掘りすることに固執するようであれば、キーパーはやんわりとそれを伝えること。
上記の情報が全て出た段階で、次のイベントを発生させる。

・政府主流派の協力者
探索者が資料をしまっていると、声を掛けられる、同じ資料に興味を示すなどして、探索者は一人の女性と出会う。リンドウと名乗る理知的で、やや謎めいた雰囲気の女性である。
彼女もまた冠城町における蛟竜一家や旧木曜会の動向を調査しており、探索者達の態度如何によっては情報交換や相互の協力を提案する。
もちろん探索者達は彼女を信用せず、遠ざけてもいい。その場合はまた後に接触する機会を設ければよいだろう。
リンドウはなるべく落ち着けて機密が守られるような場所で、持っている情報の一部を探索者に提示する。
それは『白蛇の家事件』と彼女が呼んでいるものについての話である。概要を以下に示す。

『白蛇の家事件』(リンドウの話)
宗教法人白蛇の家は、教祖となる女性によって作られた当時5年程度の歴史しか持たない新興宗教団体であったが、おそらくは洗脳に近い手法で人々を取り込み、政府要人ともたやすくパイプを作った。
公にはされていないが、防衛大臣補佐官の増山が失脚する少し前、教団本部に暴力的な襲撃があった。
その直後に教祖が姿をくらませ、教団も不自然な形で消え去ってしまった。
それに伴い、増山を筆頭とした木曜会メンバーも一旦散り散りになったが、近年再集結して不穏な動きを見せている。
メンバーにはかつての増山ほどのポストに就いている者はいないが、都議会議員や中央省庁における部長級の人材がおり、影響力を保持している。

この話を聞いたあと、探索者達がリンドウと行動を共にしたいと望むならばそうしてよい。
別行動を取る場合は、都合の良いタイミングで登場・連絡させて、探索者達の手助けをするように動かすといいだろう。

12.失われた記憶の手掛かり

・勤勉なホームレス
街中で聞き込みをすると手に入る情報として、「街にいるホームレス風の男性が政治や経済に関する新聞や雑誌を集めたり、時には買ったりしている。
自分で読む風でもなく、まとめて誰かに届けているようでもある」というものがある。
さらに時間をかけて他のホームレスに尋ねるか、〈幸運〉に成功すれば偶然見つけることがあるかもしれない。
そのホームレスはミヅホさんと呼ばれる50代の小柄な男性で、過去にサラリーマンをやっていた時代があるという。
ホームレスは雑誌や新聞を収拾すると、〈飲食・繁華街エリア〉の裏路地に入っていく。
そしてトタン板で蓋をして隠された暗い地下空間から、紐で吊るされたビールケースのような籠を引き上げる。
そこには小銭や時計などのアクセサリーが入っている。それを回収したホームレスは、代わりに収集した雑誌類を籠の中に入れ、再び降ろして蓋を閉める。
実は彼は地下に潜むグールの一個体と親交を結び、定期的に地上の情報を届けているのだ。
見返りは死体や下水から修得された物品で大した価値はないが、ホームレスは定期的な習慣としてそれを長く続けている。
探索者達はホームレスに目星を付けてそれを追跡し、取引の現場を目撃してもいいし、話しかけて直接に協力を要請してもいい。
友人への裏切りになるかもしれないと渋るかもしれないが、〈信用〉〈説得〉で害意がないことを納得させられれば、彼は自分の行為について目的を含めて説明してくれるかもしれない。
グールは「オーガー」と呼ばれており、恐ろしい容貌だが悪い奴ではない、とホームレスは評する。
探索者達はあるいはまったくホームレスと交渉せず、彼が去った後こっそり地下に降りていくことも可能である。
その場合、初対面でのオーガーの心証は少し悪くなってしまうかもしれない。

・奇妙な再会
この場所には、なるべくHO1の探索者を連れてくることが望ましい。
というのも地下空間、そしてグールというシチュエーションは、探索者の失われた記憶を呼び起こす鍵となるからだ。
昼夜問わず穴の中に下りれば、そこは粗雑に掘り進められた狭いトンネルのような場所である。
時間を置かず、侵入者の気配を感じてオーガーが姿を現す。描写は以下を参考にすること。

闇の中からのっそりと、巨大な体躯を持った生き物が現れた。
姿は人に似ていなくもないが、その頭部はむしろ犬や狼に類似している。
黒ずんだ体表は毛皮とも苔ともつかない汚らしいものに覆われており、泥や腐汁らしきものがべったりと付着して悪臭を放っている。
その生物が持つ牙や爪は、明らかに闘争のためと思われる大きさと、鋭さを備えていた。
おそらく殺害、捕食される生物には、人間も含まれているであろう。嫌な想像と映像がよぎる。
この吐き気のするような異形を目撃した探索者達は、0/1d6の正気度を喪失する。

またHO1の探索者は、オーガーの姿と臭いで過去の記憶がフラッシュバックのように蘇る。

あなたはこの生物を見たことがある。
もっと言えば、この個体を目にしたことがある。
それどころか、あなたとこの個体はおそらく、過去に殺し合いの闘争を繰り広げたことがある。
この個体を良く見ると、右腕にあたる部分が半分ほど失われている。
あなたの蘇った記憶によれば、これはあなたが放った小銃弾によってちぎれたのだ。
あなたの右脚にある傷が疼く。それはこの個体の恐るべきかぎ爪によって付けられたものだ。
この数奇な再会に対して、あなたが何を感じるかに関わらず、精神的な動揺によって0/1d2の正気度を喪失する。

このことによって、HO1の探索者は記憶を断片的に取り戻す。
すなわち自らがなんらかの武装組織の一員であり、過去に任務の一環として地下空間でグールとの戦闘を経験した、ということである。
図書館での調査が済んでいれば、防衛大臣補佐官が発足させようとした対都市テロ特殊部隊と自らの繋がりについて直感的に理解できるだろう。
正気度の減少はこれ以上ないが、意識の混濁が発生するかもしれない。
邂逅は意外にも敵意のあるものではない。当時の隊員はヘルメットや暗視装置を装着していたため、オーガーは個人の顔まで覚えていない。
HO1が正体を明かせば面白いことになるかもしれないが、今このとき害意を露わにしなければ、殺し合いには至らないだろう。
彼らは人間を攻撃し、捕食することもある。それでも種族全体として完全に敵対している訳ではないのだ。
もし探索者が冷静な話し合いを望むならば、オーガーは地上の情報をもたらす存在として探索者達を歓迎し、自分たちの来歴や昨今の生活について話す。

『冠城町地下事情』(オーガーの話)
東京の地下には古代の魔術的な遺構がある。これは彼らの種族が作ったものではなく、また人間が作ったものでもない。
俗に蛇人間と呼ばれる種族の、滅び去った文明の残滓である。蛇人間たちの文明は既に失われたが、種族が絶滅したわけではない。
人間社会に潜伏した彼らは、人類が地上の覇権を確立した後も、帝国の栄光を取り戻すべく暗躍を続けている。
つい数年前も己が文明の遺構を奪還するために自衛隊を操ってシールドと呼ばれる部隊を投入し、グール達と苛烈な戦闘を繰り広げたところである。
戦闘はほとんど一方的に進み、グール達はあわや全滅の憂き目に遭ったが、優秀な指導者が人間の一グループと手を結び、蛇人間達の拠点を襲撃して敵の指導者を排除することに成功した。
地下には一時の平和が訪れたが、抗争の終了後、グールの指導者は地下の奥深くに引きこもり、数を減らしたグール達は再びバラバラになりつつある。
オーガーは小さなグループを率いる頭目として、再び人間が地下への侵攻を始める時の為に、地上の情報を収集しているのだ。

この話を聞いた探索者は0/1d3の正気度を喪失し、2%のクトゥルフ神話技能を得る。
ただし奇妙な共闘のシナリオを経験した探索者にとっては以前のものとかなり重複した内容なので、キーパーの判断で正気度の喪失や神話技能の獲得はないということにしてもいい。
もし彼に旧木曜会の暗躍と関連させて、地下世界に再び脅威が迫っていることを納得させれば、オーガーと彼が率いるグール達の協力を取り付けることができるかもしれない。
しかしそのためには多くのピースとなる情報が必要であり、それが集まるまで〈信用〉や〈説得〉などの交渉も用をなさない。
オーガーと十分友好的な関係を築くことに成功した場合、彼はどこかから汚れた小銃を持ち出し、HO1の探索者に渡す。

【89式5.56mm小銃(アサルトライフル)】
ダメージ2d8 初期技能値25% 基本射程110m 攻撃回数1/3/連射
装弾数7 耐久力11 故障ナンバー93

以前グール達がシールドと戦った際に鹵獲した物品。通称「ハチキュウ」。
対グール用の特殊弾頭(国際条約違反)が使用されており、通常より威力が高いが、残弾が減っており、整備不良のため故障ナンバーが増加している。
〈ライフル〉〈機械修理〉で整備すれば、故障ナンバーは97まで上昇する。HO1の探索者は、その使い心地も含めて馴染みのあるものに感じるだろう。

13.日計興業ビルへの侵入
ビルの1階はエントランスになっていて、雇われた警備員が1名常駐している。2階から4階は事務所になっていて、社員や構成員が勤務している。
一部違法な経済活動もおこなわれているが、大体は派遣業やリース業などの普通の仕事である。
探索者達にとっての本命は地下1階であるが、正面玄関には監視カメラもついており、地下への階段は施錠された扉によって封じられている。エ
レベーターもあるが、これは特殊なコマンドを入力しないと地下には停まらない。
もし地上から入りたいのならば、〈電気修理〉で監視カメラの機能を停止させたり、〈機械修理〉や〈鍵開け〉で扉を突破したりといったことができるかもしれない。
しかし最も簡単なのはオーガーに頼んで地下から潜入することだろう。オーガーは仲間を呼び寄せ、おおよそ6時間程度で日計興業ビルのトイレに通じる穴を開通させる。

〈ビル内部地下一階〉
南北に細長いフロア内に、四つの部屋がある。両方の端にエレベーター(EV)と非常階段があり、上階と行き来ができるようになっている。
騒ぎを起こせば、このどちらかから2d3Rで敵の増援が姿を現すだろう。探索者達は不潔なトイレ(WC)の床を破壊してこのフロアに侵入することになる。
全体の内装は、一昔前の病院に似た白く無機質な印象を与える簡素なものである。
部屋はどれも防音性に優れているため、〈聞き耳〉などで壁の向こうの気配を探ることは困難、ということにしてもいい。
地下から侵入した場合、2時間に1回程度、誰かがトイレに行くことで穴が発見されるリスクがある。



〈部屋A〉
ここはVoTの被験者に対する処置や検査をおこなう場所である。
簡易なベッドが二つと、一般的な薬品や医療器具等およびカルテらしきものが収められた棚、基礎的な検査をおこなうための機器等がある。
壁際には、部屋Cにある個室の扉を開くための鍵が掛けられている。最も奥まった場所には小型の冷蔵庫があり、本来ならば抗ウィルス薬が保管されているアタッシュケースのような箱がある。
しかし現在それは空になっており、中には「Y日(つい最近の日付)、より責任者保管」というメモがある。
事実、VoTの管理は警戒か、何かの交渉に備え、水地やその側近によって厳重におこなわれている。
棚を漁ると、VoTに関する資料が発見できる。ざっと全体を見るのに1時間経過するが、特別なロールは必要ない。
いくつかの資料をまとめた内容は以下のようになる。[黒塗り]と書いてある部分は塗りつぶされていて読むことができないが、元々は蛇人間と書いてある。

『VoT(Voice of Tsathoggua, ツァトゥグァの声)について』
『支配血清』と呼ばれる薬品の代替として開発された特殊なウィルス。
ウィルスが増殖する際に産生するタンパク質によって、感染者の[黒塗り]に対する服従行為を促進する。実験では血液感染および母子感染のみ確認。自然治癒の実例なし。
現在の課題は致死率の低下および抵抗を持つ者への対策。感染者の87%に十分な効果が見られるが、9%は抵抗を示し、意識の混濁や健忘(記憶喪失)といった精神症状を呈する。
残り4%では中枢神経系に重篤な障害が生じ、いずれのサンプルでも2週間以内に死亡した。
抗ウィルス薬を一定期間投与することで完全に治癒するが、後天的な抗体の形成は確認されない。

この他、画像や実験により感染させられた人間のデータが保管されている。実験体としての名簿には日比谷秋志の名前もあるが、津島の名前はない。
人を操るような恐るべきウィルスの人体実験がおこなわれていたことを知った探索者は0/1d3の正気度喪失。それに自分が感染していることを知ったHO1の探索者は1/1d4+1の正気度を喪失する。

〈部屋B〉
事務室あるいは資料室として使われている部屋である。四つの事務机とノートパソコン、キャビネットに入った紙の資料がある。
この場所では、蛟竜一家の活動、すなわち政府要人との内通や九頭竜会、鯨組に対する造反についての情報を得ることができる。
〈コンピューター〉に成功すれば、パスワードを解除して内部の情報を閲覧できる。
その情報には、違法な物品の購入、冠城町浄化キャンペーンの内部資料や、それについてのやりとりが含まれている。
VoTに感染しながらも実験体としてではなく、協力者として存在している政府要人の名簿もある。
キャビネットの資料に対して30分ほどかけて〈図書館〉を成功させることでも、同様の情報が手に入る。
もし失敗した場合はあまりスマートではないが、めぼしい資料や物品を根こそぎ持って行くのがいいだろう。

〈部屋C〉
VoTの被験者を監禁しておくための部屋である。扉を入って手前1/3と奥2/3は壁で区切られており、奥のスペースが個室となっている。
いくつかある覗き窓からは、個室内部の様子を見ることができる。中には入院患者のような服を着た中年男性がベッドに寝転んでいる。
彼は元々冠城町に住みついていたホームレスで、拉致されて被験者にされてしまったのである。
既にウィルスに感染している上、度重なる人体実験によって廃人同然となっている。
少なくない被験者が辿ったであろう悲惨な末路を想像した探索者達は、0/1d2の正気度を喪失する。
個室の扉は非常に頑丈で、部屋Aにあった鍵を使用するか、〈鍵開け〉に成功しなければ開けることができない。
探索者達はこの被験者を助けてやってもよいし、面倒になるからと見捨ててもよい。
これまでに何らかの原因で探索者達の一人やリンドウが生きたまま敵に拘束されてしまった場合、この部屋に監禁されているかもしれない。

〈部屋D〉
この部屋はビルを拠点としている牙の隊員が待機、あるいは起居する部屋である。
部屋の中央では合成革のソファが低いテーブルを囲み、奥にはカーテンで区切られた仮眠スペースがある。
壁際には荷物を置くロッカーがあり、構成員の武器や私物が置かれている。
ロッカーの鍵を〈鍵開け〉か〈機械修理〉でこじ開けると、ノーリンコT-54が2挺手に入る。

【ノーリンコT-54(拳銃)】
ダメージ1d8 初期技能値20% 基本射程15m 攻撃回数2
装弾数8 耐久力8 故障ナンバー98

ほとんどの場合、津島がこの部屋にいる。その他、正午から午前0時までの間には1d3人の牙隊員がおり、何らかの活動をしている。
それ以外の時間帯には1d3-1人の構成員がこの場所におり、津島を含めてそれぞれが50%の確率で仮眠を取っている。戦闘に参加する場合でも最低1Rはかかるだろう。
探索者達が入ったことに彼らが気付けば、即座に戦闘となる。余裕のある敵は備え付けられた電話で増援を呼ぶかもしれない。

脱出はどのような方法でもよい。警報装置が鳴るのに構わず地上の玄関から出てもよいし、グールが掘った穴に戻ってもいい。
この場所でおこなわれていた実験は蛟竜一家秘中の秘であり、たとえ侵入者があったとしても、犯罪として表ざたにはならない。
探索者達が侵入中に気付かれたかどうかに関わらず追手がかかるが、それについては次項で述べる。

14.追う者、追われる者
日計興業ビルを脱出した探索者を追うのは津島と牙の隊員である。
正面玄関から逃走した場合には時間帯に関わらず、エントランスに駆け付けた警備員1人と、地下1階に残存していた敵との戦闘になる。
オーガーが開けた穴から逃げる場合は、オーガーの妨害もあるため、津島と牙の隊員1人が70%の確率で探索者達の近くまでやってくる。
その場合、素早くその場を離脱するために〈DEX*5〉、物陰に潜むことで〈隠れる〉*2、汚水に身を沈めてやり過ごすことで〈CON*3+POW*3〉などの対処に成功しなかった探索者は、追手との戦闘に巻き込まれる。
もちろん、彼らを待ち構えて打ち負かしても問題ない。どの場合でも、津島と隊員はコンバットナイフと拳銃を所持していて、それらを使用するかもしれない。
ちなみに津島も隊員も情報的には組織の末端であり、旧木曜会や蛇人間のことについてはまったく知らないため、生け捕りにして尋問しても、大した成果なく終わるだろう。

・砕けた楯
津島丈治が戦闘不能に陥った場合、よほどミンチのようになっていなければ、絶命する直前にでも彼と話す機会がある。
粗暴な彼はシールド結成によって居場所を得たが、それも政治的な理由によって解散させられてしまった。
失意の彼は上官を殴って自衛隊を追われ、PMCに所属して海外で戦闘任務をこなすも心は満たされなかった。
今ではヤクザの使い走りにまで身を落とし、今のような末路もクズには似合いである、というようなことを語る。
「人を効率よく殺すことができるだけの人間なんて、何処に行っても毒にしかならなかった」と自嘲気味に話すかもしれない。
探索者は彼をまともな社会から逃げていただけの不適合者だと糾弾してもいいし、何か爪弾き者の悲哀を感じ取って多少の同情をくれてやってもいいだろう。
津島の処遇は探索者に任せられる。放っておけばそのまま死ぬか、グールの餌になるか、警察に逮捕されるかというところである。
今回の追跡劇で津島を倒さなかった場合、このシーンはまた別の機会に持ち越される。

日計興業ビルへの侵入で、探索者達が蛟竜一家と当局とが内通している事実を示す資料を掴んだ場合、それは九頭竜会内で蛟竜一家の立場を失墜させるのに十分すぎる証拠となる。
HO2の依頼は9割がた達成されたということだ。あとはこれを依頼主の久慈に、ある程度まとまった形で提出すればよい。
しかしHO1の探索者はまだ厄介なウィルスに感染したままであり、事件は完全に一件落着とは言えない。
キーパーは適切なタイミングで探索者達に、水地がアタッシュケースのようなものを抱えて車でどこかへ向かっていると伝える。
別行動中のリンドウによってか、あるいは鯨組の組員によって久慈経由で伝えるのである。
キーパーはアタッシュケースの中身についてほのめかし、その中にはきっと抗ウィルス薬が入っているだろうという期待を、探索者達に持たせるのがよい。
水地が向かうのは、蛟竜一家のフロント企業(日計興業とはまた別)が所有する小型タンカーである。
資料が盗み出され、身の危険を感じた彼は、海上かもしくは海外でほとぼりを冷ますつもりなのだ。
向かう先は東京湾に面したふ頭である。この車に乗っているのは水地だけだが、もう一台津島が運転する車がそれに追従するように走っている。
探索者達は鯨組に人員を出すよう要請することもできるが、証拠の精査ができていない、あるいは運悪く木曜会の息が掛かった警察車両に妨害される、などによってふ頭に素早く到達できない。
水地の車は必ず先にふ頭に到着する。探索者達がその行き先を予測し、素早くそこへ行くためには、〈運転〉か〈ナビゲート〉に成功する必要がある。
失敗しても水地を取りのがしてしまうわけではないが、津島に先を越される。
なおこの時までに津島が行動不能になる、もしくは死んでいた場合、牙の隊員2名がそれに代わる。
リンドウが付いていくかどうかは、探索者達と行動を共にしていたか、探索者達が彼女にどのような指示を与えるかによる。

15.クライマックス
ふ頭の船着き場には、錨を上げた小型タンカーが待機している。ふ頭に到着した水地は、タンカーの30m前に車を停めて船に乗り込もうとする。
探索者達が津島に先を越されていなければ、その現場に居合わせるということになる。
その場合の位置関係は、タンカー、水地、探索者達、津島というものになる。津島に先を越されてしまっていた場合は、水地と探索者との間に津島が割り込む形になる。
水地がタンカーに乗り込もうとすると、タンカーからチャイナドレスに身を包んだ30歳ぐらいの妖艶な女性が降りてくる。
彼女が水地に向かって手をかざすと、彼の足もとが黒い沼のようになり、その脚を絡め取ってしまう。
抗ウィルス薬の入ったアタッシュケースは、近くの地面に投げ出されるが、水地自身は生きながらこの怪物に貪り食われることになる。
この怪物は無形の落とし子であり、ドレスの女性(正体は蛇人間)に操られている。落とし子の出現にあたっては、以下の描写を参考にすること。

突如としてタールのように粘性のある物体が、水地の足元に出現した。
それはまるで意志を持っているかのように彼の下半身に絡みつき、まるで水地を締め上げるように蠕動する。
恐怖による悲鳴が辺りに響くが、黒い何かは犠牲者を放そうとしない。
怪物は獲物を生きたまま齧りとり、飲みこもうとしているのだ。
この恐ろしげな粘性の怪物と、それによる犠牲者を目撃した探索者達は、1/1d10の正気度を喪失する。

【ツァトゥグァの無形の落とし子】
STR18 DEX16 INT10 アイデア50
CON10 APP- POW10 幸運50
SIZ24 SAN- EDU- 知識-
HP17 MP10 回避32 DB+2d6
武器 鞭 90% 1d6あるいは〈組み付き〉
   触肢 60% 2d6あるいは〈組み付き〉 1d3回
   打突 20% 2d6
   噛みつき 30% 特殊
装甲 物理的な武器からは、たとえ魔力を付与されていても影響を受けない。呪文、火、化学薬品などは影響を与える。

噛み付き攻撃は特殊で、最初のラウンドに1ポイントのダメージを与え、次のラウンドには2ポイント、その次には3ポイントという風に増えていく。
水地が受けているのはこの噛みつき攻撃で、救いださなければ5ラウンドで絶命する。

【蛇人間】
STR8 DEX14 INT18 アイデア50
CON10 APP15(擬態時) POW16 幸運50
SIZ12 SAN- EDU- 知識-
HP11 MP16 回避28 DB0
武器 噛みつき 35% 1d8+毒
装甲 1ポイントのウロコ
呪文 ツァトゥグァの無業の落とし子の召喚/従属

旧木曜会と結託して暗躍する蛇人間の一個体。今回は水地の失策をいち早く嗅ぎつけて先回りし、自分たちに累が及ぶ前に彼を処分しようとしている。
無形の落とし子出現時は、その操作に集中しているため回避以外の行動を取らない。
少しでもダメージを受けると擬態が解け、蛇人間の姿が露わになる(0/1d6の正気度喪失)

探索者がアタッシュケースを回収しようとすると、無形の落とし子は水地を飲みこんだまま攻撃してくる。
しかし必ずしもこの怪物を打倒する必要はない。DEXによる抵抗ロールなどで、素早くアタッシュケースだけ奪って逃げることもできる。
もちろん、先に蛇人間を倒してしまってもよい。その場合無形の落とし子は、水地を無残に握りつぶした後、溶けるようにしてどこかに消える。
しかしケースを奪って逃げるにせよ、蛇人間を倒すにせよ、探索者達は落とし子の攻撃を凌ぐ必要がある。
もし89式小銃を手に入れていれば、怪物の射程外から蛇人間を狙撃することもできるが、津島が生きていれば、間違いなく彼の妨害に遭うだろう。
津島は水地を助けるよりも、探索者達と命のやり取りをすることに固執する。
戦闘が終了した時、おそらく水地の死体は残らないだろう。津島をこの場所で打倒した場合は、『砕けた楯』の項目を参考にすること。
蛇人間と津島を打倒してアタッシュケースを回収する。あるいはアタッシュケースだけ回収して安全圏まで逃走すれば、探索者達は追跡の目的を達成できる。

16.結末
探索者達が久慈に渡した報告書や資料などは九頭竜会内で共有され、蛟竜一家の地位は失墜する。
その内容がリンドウに伝わっていれば、彼女と彼女が所属する公安調査庁の仕事によって、旧木曜会のメンバーも少なくないダメージを受け、冠城町浄化キャンペーンもそれほど不自然さのないものに変わる。
しかし蛇人間の脅威は完全には去っておらず、それらを一掃するまでには、勇気ある人間の粘り強い取り組みが必要になるだろう。
ともあれHO2の探索者は依頼を完遂し、(まだ受け取っていなかった場合は)報酬を受け取ることができる。
抗ウィルス薬を手に入れていれば、それを投与することでHO1の精神症状も消失して完治する。
そのほか、探索者全員に報酬として2d6正気度ポイントが与えられる。
HO1の探索者は望むのならば、1d6カ月続く記憶喪失の症状を、ルールブックのp95に則って治療することができる。治療が終了すれば、記憶は完全に元通りになる。

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