残された手記 - 銀弾の射手

あらすじ
奇妙な殺人事件を追う刑事と探偵は、その調査を進めていくうちに神話的存在に気づき、その対処方法を模索することになる。

HO1 1〜2名
警視庁捜査一課、あるいは冠城署刑事課に所属する刑事
HO2 1〜2名
冠城町内に拠点を構える探偵もしくはその協力者

HO1とHO2には何らかの密接な関係(よき情報提供者である、困ったときに頼れる存在である等)があった方がシナリオの進行がスムーズである。

KP情報
冠城町では被害者が巨大な刃物で切り付けられたような奇妙な状況で発見される連続殺人事件が発生している。
その正体は、元麻薬密売組織の構成員である霧生 仁(きりゅう ひとし)である。
彼は後述する鯨組の襲撃から逃れる際に重傷を負い、下水道に逃れ、原ショゴスと融合して力を得た。
その力を用いて、自分を追いつめた鯨組に復讐しようとしているのである。
探索者達はおのおのの理由から、この事件の犯人を突き止め、彼を打倒することになる。

【霧生 仁(きりゅう ひとし)】28歳 男性
職業 原ショゴス 元麻薬密売組織構成員
STR32 DEX7 INT11 アイデア55
CON28 APP- POW16 幸運40
SIZ14 SAN0 EDU- 知識40
HP21 MP8 回避28 DB+2d6
隠れる:80% 忍び歩き:80% 隠す:80%
回避:75%
武器 柳葉刀様偽足70% 1d8+2d6
通常の武器からは最低限のダメージしか受けない。
毎ラウンド2ポイントの耐久力回復。
   
1.捜査会議、HO1の導入
暴力団構成員連続殺人事件
ここ一カ月の間で、指定暴力団九頭竜会鯨組の構成員4名が殺害、1名が重傷を負わされるという事件が発生している。
手口はすべて同様のため、警視庁は遅まきながら暴力団構成員連続殺人事件として捜査本部を設置した。
HO1の探索者は警視庁から派遣されてきた刑事、もしくは所轄の冠城署の刑事である。

※冠城町、および九頭竜会系暴力団鯨組について
冠城町(かぶらぎちょう):日本の首都東京の中心部、600m四方の土地に四千を超える飲食店、風俗店、ホテルなどが軒を連ねるアジア有数の歓楽街である。
仕事帰りのビジネスマン、学生、観光客などが訪れる一方で、暴力団やマフィア、麻薬密売組織などが跳梁跋扈する犯罪多発地帯でもある。



九頭竜会(くずりゅうかい):東京に本拠を置き、関東にその勢力基盤を置いている指定暴力団。構成員は四千人を数え、この冠城町を支配下におさめている。

鯨組:九頭竜会の傘下団体にして、冠城町を縄張りとする任侠団体。
冠城町内に事務所を持ち、久慈という若頭が実質組織を運営している。

あなた達が広い会議室に入るとそこには所轄の刑事課長をはじめに、所轄、警視庁の中堅幹部が顔をそろえており、この事件の重大さを感じさせるように威圧感を放っていました。

いまだ捜査本部が立って間もなく捜査は初動段階にあるが、所轄署で行われる捜査会議では以下のような情報が明かされる。

NPC
【石川 誠一(いしかわ せいいち)】40歳 男性
APP9 SIZ15
警視庁捜査一課第二係長。捜査本部設置、連絡調整係を務める。
捜査会議の司会進行を務める役で、HO1の直属の上司ではないが、必要に応じて探索者達に指示を与える役にしてもよい。 

「さて、皆さんお揃いのようですし、捜査会議を始めさせていただきます」

現在の被害者は五名、いずれも指定暴力団九頭竜会鯨組の構成員であり、殺害場所はすべて冠城町内に限定されている。
被害者のうち四名が死亡、一名が重傷。
四名の死亡者はいずれも深夜から朝方にかけて殺害されており、死体は見せしめのように大通りに転がされていた。
また現状把握している被害者は鯨組構成員の五名のみであるが、発覚していない被害者が存在する可能性は否定できない。
捜査に際して捜査員が被害に遭う可能性を考慮し、防刃チョッキ(装甲3)と拳銃の携帯を許可する。

拳銃:S&W M39 初期技能値20 1d10 基本射程20m
   1R3発 装弾数8 耐久力8 故障ナンバー99
防刃チョッキ:装甲3 胴体部分しか守れないため、1d6をロールして1~3が出た場合のみ装甲を適用する。

2.依頼、HO2の導入
ここは冠城町。アジア有数の歓楽街。
昼が夜に、夜が昼に。美徳が悪徳に、悪徳が美徳になる街。
この街はいつでも明るい。しかし闇がないと考えるのは全くの誤りだ。
辻に、三叉路に、裏路地に。
たとえネオン輝き人があふれる中心街であっても、いたるところに正気の世界と異界を分ける結節点が存在している。
たとえこの街に慣れた者であっても油断はできない。
むしろそういう者こそ、境界線をいとも簡単に踏み越えてしまうもの。
そんな狭間に生きる者が、ここにも、また二人。

HO2は冠城町に事務所を持つ探偵、情報屋、便利屋、その他対価を受け取ってある種のサービスを提供する立場の人間である。
ある日の午前中、事務所内で暇を持て余しているHO2のもとに、ある依頼人が訪れる。

NPC
【竜崎 景子(りゅうざき けいこ)】22歳 女性
APP15 SIZ11
冠城町内の高級クラブ「カリプソ」に勤務するホステス。
HO2に兄を殺した犯人の捜索を依頼をする。
 
竜崎景子はやや派手な服装をした美人である。
目星や値切りに成功すれば彼女の服装やアクセサリーがそれなりに高級なものであることに気付くだろう。
また人類学に成功すれば彼女が夜の世界に生きる人間であることがわかるかもしれない。
彼女は九頭竜会系暴力団である鯨組の構成員である実の兄(竜崎 正明 25歳)が殺害されたことを知っている。
死因も不可解で被害者が極道者であるため、警察が頼れるかどうかわからない。
だから犯人の捜査を行って欲しい、と述べる。
彼女は兄と同居していたため、非常に兄妹仲が良かった。
彼女兄の死を非常に悔しく感じておりどうしても犯人の捜査を、と探索者達に頼む。
探索者達が望むならば彼女は自身の兄について話す。
兄は高校卒業後九頭竜会系暴力団の鯨組の世話になっており、その中でも若頭の久慈という人間を非常に慕っていたという。
暴走族上がりで荒事に強く、組の中でもそういった仕事を率先してこなしていたのだという。
事件について彼女が知っていることはほとんどないが、鯨組の若頭である久慈という男の連絡先を知っている。

NPC
【久慈 昌平(くじ しょうへい)】38歳 男性
APP14 SIZ15
九頭竜会系暴力団鯨組の若頭。武闘派ではなく、交渉術と駆け引きのうまさで現在の立場に着いた。
堅気の人間に対しては比較的寛容だが、さすがに警察の人間を事務所の中に入れることはしないだろう。

HO1とHO2でそれぞれ調査を進めることも不可能ではないが、KPはこのあたりでうまく合流を図ること。

3.死体発見現場
死体発見現場は冠城町内(MAP参照)であり、いずれも大通りである。
アイデアに成功すれば以下の事に気が付く。

・大通りで襲撃した場合は、いくら深夜早朝であっても人に見られる危険性がある。
どこか別の場所で殺害してから別の場所に投棄したのではないか。
・そうであれば、その目的はおそらく見せしめのようなものではないか。

また、襲撃現場で目星の半分か、追跡に成功すると、ほんのわずか、地面に血痕が付着していることに気が付く。
これは犯人である霧生に付着した被害者の返り血である。その乾いた血液は路地裏の方へ続いており、裏路地のマンホールで途切れている。
もし探索者達がマンホールを開けるなら、暗渠の中に大量の血痕を見るだろう。
霧生はマンホール付近の路地裏で被害者を襲撃し、マンホールの中に引きずり込んで殺害。
そこから自身の持つ怪力で被害者を大通り付近にほうり投げたのである。
そのまま霧生はマンホールを通じて下水に入り、まんまと現場から逃げおおせたのである。
もし探索者がこの殺害現場を見た場合は0/1d2の正気度喪失。

4.検死結果
HO1の探索者は被害者の検死結果を聞くことが出来る。
死亡した被害者は四人。いずれも正面または背後から強烈な斬撃を受けたことによる失血でのショック死である。
中には人体がほとんど両断されている状態で発見された死体もあり、検死した医師は、人間の力ではない、と述べる。
さらに、被害者の傷口に、わずかながら粘液のようなモノが付着していた。
有機物であることは間違いないが、詳しくは鑑識の分析待ちである。
死体は驚愕の表情を浮かべており、それだけでも彼の身に降りかかった死が尋常のものではないことを確信するに足りるものである。

この話を聞いた探索者は0/1の正気度喪失。
この話を聞いた上で異様な死体を見た探索者は0/1d2の正気度喪失。

「こんなの人間の所業じゃないよ」

5.暴力団事務所
鯨組の事務所は冠城町の風俗街エリアにある。
比較的小奇麗なビルのワンフロアを占有しており、名前を知らなければまるで旅行代理店の店舗か何かと勘違いしそうな雰囲気である。
適切なアポイントを取ったうえで事務所を訪れれば、若衆が丁寧に事務所に通してくれるだろう。
鯨組の構成員は150名程度だが、三次団体四次団体に所属している人間もおり、全員事務所を拠点に活動しているわけでは無い。
この事務所にいるのはせいぜい30人程度だろう。
応接室には久慈が控えており、事件についての情報を提供してくれるだろう。
久慈は体格の良いカリスマ性のある人間であるが、それほど威圧的ではない。
堅気の人間に対しては比較的ざっくばらんに話してくれるだろう。
しかし構成員を殺害されているため、犯人に対して激しい憤りを感じている。

久慈によれば、この一カ月で殺された構成員は四名、重傷を負った組員が一名。
いずれも18歳〜30歳の若い組員である。
生存した組員は現在精神に異常をきたして都立竹沢病院の病室503に入院している。名前は市村康平、年齢は23歳。
久慈は一連の犯行が怨恨によるものとみており、ごく最近襲撃を掛けた麻薬密売組織が関与しているのではないかと考えている。
件の麻薬密売組織は新型の錠剤型麻薬を街に蔓延させ、鯨組の縄張りを犯していたため、鯨組によって襲撃され消滅した。
しかしその際“掃除屋”と呼ばれる幹部を取り逃がしており、その人間が今回の事件の犯人ではないかと久慈は考えている。
鯨組でも“掃除屋”を追っているが、杳として行方は知れない。
また目撃者がいないのも不自然である、と久慈は言う。

それから、二日ほど前にも同じようなことを聞きに来た男がいた、と話す。
探偵を名乗る、やけにぎらついた目をした三十代前半ぐらいの男性だという。
この男は探索者達と同じ立場にいる人物で、宮藤一(くどうはじめ)という名前である。

NPC
【宮藤 一(くどう はじめ)】32歳 男性
APP9 SIZ12
個人的な理由により一連の事件の犯人を追っている人物。
シナリオ内では犯人に殺害されるが、探索者達に重要な情報と犯人を倒す手段を残す。

6.市村の病室
五人目の被害者である市村康平は、都立竹沢病院の503病室に入院している。
彼は原ショゴスと融合した霧生に襲撃された際のショックで精神的に混乱しているが、なんとか話はできる状態である。

NPC
【市村 康平(いちむら こうへい)】23歳 男性
APP8 SIZ16
鯨組若衆にしてかなり体格の良い筋肉質の男性。霧生の襲撃によって心身ともに大きなダメージを負う。
彼から秩序だった話を聞くには精神分析ロールが必要になるだろう。

市村は探索者に以下のようなことを話す。
襲撃当日、市村は縄張り内の店舗にみかじめ料の徴収に出かけていた。
そして路地裏の近くを通りかかったときに、人のモノとは思えない力で路地裏に引きずり込まれたのである。
その相手は顔に入れ墨を入れた男(当然、霧生である)だった。
腕っぷしの強い市村は、その男に異様なものを感じ、振りかぶってこぶしを見舞おうとしたが、
そのこぶしはなんと男の身体に吸い込まれるように取り込まれてしまった。
そのまま男の身体は不定形に変化し、市村を取り込もうとした。
彼は右腕をへし折られ、死を覚悟したが、周囲に響く悲鳴を上げたため、
その不定形の存在は市村を解放し、近くのマンホールへするりと入って逃げて行った。
そのまま市村は気を失い、気づけば病院にいたのだという。
そこまで話すと市村は恐怖のあまり熱病にかかったように震えはじめる。
この話を聞いた探索者達は0/1d2の正気度を喪失する。

KPはとにかく対峙している相手が人ではないことを強調し、PLたちの不安を煽ること。

7.新たな犠牲者
探索者が調査に行き詰ったタイミングでこのイベントを起こす。
探索者達が夜の街を歩いていると、ある路地裏から二発の銃声とくぐもった悲鳴を聞く。
探索者達がその路地裏を覗いてみると、身体がほとんど両断されて死亡した男(のちの警察の身元調査によって宮藤であると判明する)と、
どろりとした不定形の怪物(霧生)がマンホールの中に入って行くのを見る。
その怪物を目撃した探索者は0/1d6の正気度を喪失する。

まず鼻に届いたのは腐臭。ついで目に入ってきた異形。
それは軟泥のような灰色の不定形。
しかし命なき物質とは明らかに異なり、不規則に、不気味に躍動していることが見て取れる。
目、口、手足。その他人間のパーツが名状しがたい位置に生成され、移動し、うごめいているのが薄暗がりでも分かってしまう。
目と目が合う。その瞳は明らかな知性を宿している。
人間より二回りほど大きなその物体は、その異形の瞳で探索者達を視認すると、その肉体を引きずり、マンホールの隙間からずるりと地下道へと逃げて行った。
この冒涜的な生命と邂逅した探索者達は0/1d6の正気度を喪失する。

死体は男性のもので、三十代前半の人間だということがわかる。
死体は強烈な斬撃によってほとんど両断されている。
探索者が被害者の所持品を漁ると身分が判明する。
また、所持品を漁らず現場を保全した場合でも、警察によって身分が判明する。
そして後日HO1の探索者達は、宮藤の自宅を調査するように命じられる。

8.宮藤の自室
宮藤の自宅は都内にあるマンションの一室である。
マンションは一般的なワンルームで、宮藤は最近ここに越してきたようである。
実は宮藤は長年の探索行により精神を病んでおり、神話的事象に激しく執着、
それをこの地上から排除せんと狂気的とも言える熱心さで活動している。
マンションには書架とテーブル以外に変わったところは無い。
書架:オカルト関係の本、奇妙な装丁の多種にわたる言語の本、
その翻訳された文書などの雑多な書物が並べられている。図書館ロールに成功することで、
宮藤の日記を入手できる。もし日記や手記の類をさがすと宣言するならば、自動成功で見つかってもよい。
もし探索者がどうしても魔術書の類を探そうとするならば、
クトゥルフ神話技能に成功することで、『ナト史』(下記参照)を発見させてもよい。

『ナト史』(英語版の写本)
ナトの球体と呼ばれるアーティファクト、ヘルメス・トリスメギストスと呼ばれる魔術師たちの教えについて、ナトと呼ばれる遠い地について書かれている。
正気度喪失1d4/1d8 クトゥルフ神話に+8% 研究し理解するために平均38週間/ななめ読みに18時間
《黄金の蜂蜜酒の製法》《神格との接触/シュブ=ニグラス》《古き印》《ビヤーキーの召喚/従属》

KP情報
宮藤は探索者達の先輩にあたるような存在で、数々の神話的事象に関わるうちに偏執的にそれを追うようになった。
日記中に出てくる「あの少女」というのも彼の探索行の中での出来事である。

『宮藤の手記』
(一か月前)
消えない、幻覚が。あの少女の顔が、救えなかったあの娘の顔が、今も夢に出る。
私は逃れられないのだ。この運命から。関わり続けなければならないのだ、この不条理と。
消さなければならない。排除しなければならない。怪物も、神も、狂信者どもも、全部、全部だ。
(二週間前)
この街は汚い街だ。汚濁と華美がないまぜになった混沌の街。
しかしこういう場所にも例外なく、やはり怪物が潜んでいた。俺は見ているぞ。
俺は眠らない。殺してやる。必ず、必ず。
(一週間前)
あの怪物を殺すには手段が必要だ。銃は手に入れた。弾丸もある。
しかしそれだけでは不十分だ。幸い魔術師のつてがある。彼女に手段を都合してもらうとしよう。
(昨日)
手段は確保した。場所も特定した。後は銃に毒塵を入れた弾丸を装填して、ヤツにブチ込んでやるだけだ。

机の上や引き出しの中には一見何もないが、アイデアの一倍、隠すの二倍に成功すると引き出しが二重底であることに気が付く。
引き出しの中には、冠城町の地図、拳銃弾5発、住所を書いたメモがある。

地図:冠城町内の高級クラブ「カリプソ」の近くに印が付いている。
今までの探索がうまく行っていれば、犯人はおそらくこの地下に潜んでいることに、探索者達は気が付くだろう。

拳銃弾:この銃弾の弾芯にヘルメス・トリスメギストスの毒塵(ルールブックp280参照)が仕込まれており、
その毒塵を体内に打ち込むことによって地球外の生命体に4d6のダメージを与えることが出来る。
また投擲でこの塵を浴びせることによって、2d6のダメージ(失敗でも1ダメージ)を与えることが出来る。
弾丸の種類は9mm×19mm弾で、HO1が貸与されている銃で発射可能である。
これはのちに発生する対霧生の戦いでの非常に有効な武器となる。

メモ:都内にあるマンションの場所と「ケイ」という名前が記されている。

9.魔女の影
宮藤のメモにあった住所は都内のマンションで、そこには一人の女性が住んでいる。
NPC
【ケイ】29歳 女性
APP16 SIZ14
宮藤にヘルメス・トリスメギストスの毒塵を与えた女性。魔術師ではあるが危険人物ではない。
普段は作家として生計を立てているミステリアスな女性である。

彼女は宮藤の知己であり、困ったときに助言などをしていた。今回は霧生に対抗する武器を与えた。
もし探索者達が事情を話せば、ケイは自分が宮藤との知己であること、彼が何らかの怪物と戦おうとしていたことを話す。
さらに彼に与えたものが「ヘルメス・トリスメギストスの毒塵」というアーティファクトであること、
地球外の怪物に効果的な攻撃手段であることを教えてくれる。
さらに、必要であれば粉の残り(三回分)を与えてくれる。
「宮藤さん……そう、死んでしまったのね」

10.下水道の決戦
宮藤の部屋から地図を手に入れた探索者はマンホールの下にある霧生の隠れ家に到達することが出来る。

澱んだ空気、メタンガスの臭い。
陽の光もネオンも届かぬ暗渠の中。
華美な街の地下に、確実に存在する闇の中に、あなた達は降りて行きます。

ここで霧生による隠れるロールを行う、成功した場合には、探索者達は直ちに霧生を発見することはできない。

霧生の隠れ家周辺はメタンとヘドロの臭いがする下水道の中である。
そこは比較的広い空間になっており、中央に流れる下水の脇に、人二人が並んで歩けるほどの歩道が整備されている。
探索者達が周辺に目星、あるいはアイデアロールを振ると、人が過ごしていたような痕跡と、ネズミなどの小動物の骨を発見することが出来る。
探索者達が現場を調べていると、霧生が偽足による奇襲を行ってくる。
探索者達に回避あるいは幸運を振らせるのを忘れない事。
(彼の攻撃は探索者達には致命的なので、彼らが攻撃を受けた場合でもKPはダメージをある程度加減してやるべきだろう)
霧生が隠れるロールに失敗している場合は、霧生がその場にいる。
「……客とは珍しい」
そして霧生が変貌を遂げた後、戦闘になる。

その男は確かに人間の形をしていたが、徐々にその姿を崩していった。
顔のパーツはその配置を変え、手足の代わりに奇妙な偽足が身体から伸びる。
肉体の肌色は灰色、次いで胸の悪くなるような暗褐色に変わっていく。
やがて軟泥のような不定形に変貌し、その身体をいっぱいに広げてこちらに迫ってくる。
偽足の一つは長大な刀身を持った刃物のように変化した。
人ではないもの。しかしかつて人であったもの。
あり得べからざる変異を目撃した探索者達は1/1d10の正気度を喪失する。

11.エンディング
霧生を倒すとその死体は悪臭を放つ半液状の物質となる。
その後の処理は探索者達に任されている。
写真を撮ってありのままを報告するもよし、あり得べからざる出来事として胸の中にしまうもよし、である。
どちらにせよ、他人を納得させるには写真等の物的証拠が必要となってくるだろう。
ともあれ無事に生還した探索者達は日常に戻ることが出来る。
この街の地下に得体の知れない何かがまだ存在する可能性を感じながら、ではあるが。

世間がどう思うかは置いておいて、あなた達は一連の事件を収束させました。
しかしあなた達は直観的に理解してしまうでしょう。
常識的な世界にはありえない、人間の尊厳を冒涜するような存在が、この街にはまだ存在しているだろう、ということに。
今回打倒した存在が、氷山のほんの一角であるという事に。
それでもあなた達は自らの正気を恃み、これからも生きていくのでしょう。
狂気的な真実という広大な海に浮かぶ、理性という小舟の上で。

報酬
霧生 仁の打倒 1d10
パーティーメンバーの死亡 -1d6