SS投稿スレッド

0 zz_roba zz_roba - 18/03/12 02:40:36

SS投稿スレッドです。

  • 32タンスの引き出し - 18/03/18 00:18:07 - ID:N9jq8qssow

    『月夜のお茶会』
    日が沈み街を月の光が優しく照らす
    眠れぬ夜にフラフラと彷徨う影が一つ
    行く当てもない足取りは甘い香りに誘われる
    屋根もないお茶会の会場には沢山のねずみと一人の少女
    光を受け煌く銀髪 ゴシック調の可憐な服 なぜか頭には猫の耳
    無機質な表情 真紅の瞳 ミルクティーの優しい香り
    「本日はどんなお話をしましょうか」
    どこか可笑しなお茶会
    不自然な口調 ねずみ達の談笑 机の上には校舎が建つ
    渦巻く紅蓮の炎 飛び交うゼリー
    混沌としたその場所はとても楽しそうで
    「まったくもご認識さんは」
    可愛らしい仕草と吸い込まれそうなその瞳に魅了される
    ふと少女の後ろのナニかに目が留まる
    あれは…ねこ?
    白いねこ そうねこがこちらを見ている
    ねこはそこにいた そこにねこがいる ねこをみた
    ねこはみる ねこはいます ねこでした
    よろしくおねがいします。


    アラームの音で目が覚める
    ベットから起き上がり机の上で鳴り響く目覚ましを止める
    身支度を整え車に乗り込みお気に入りの音楽を聴きながら走り出す
    いつも通りの出勤風景
    見慣れたその景色も今日はやけに鮮やかに見えた
    「そうだ、今日はミルクティーを飼っていこうかな」
    そう呟いた口元が少しだけ緩んだ

  • 33カメリア - 18/03/18 01:52:06 - ID:2Sjap2UdcQ

     あの時、部隊のメンバーに冗談交じりに教えてもらったバレンタインデー、それをうけて、ほんの気まぐれにデータを参照して作ったロールケーキ。それがこんな風にお返しをもらえるものだなんて思っていなかったので、すっかり失念していました。

     「ふふ」

     なぜか、不思議と口元に笑みが浮かびます。理由はわかりません、ただ、なんだかそういう気持ちになったのです。……アンドロイドが気持ちというのはおかしいかもしれませんね。おそらく、こわれかけてエラーが出ているのでしょう。

     私は、そのペンダントをやさしく握り締めました。

     振動はより近くなっています。でも、不思議です。このペンダントを抱きしめていると不思議と落ち着くのです。まるで、傍に誰かがいてくれるような、そんな気持ちに。ねぇ、ねずみさん? もしかしたらもう会えなくなるかもしれませんが、それでも、この思いだけは言葉に出して伝えておきますね。

     「…ありがとう」

     体が今まで一番揺れた後、私の意識は途切れました。

  • 34タンスの引き出し - 18/03/18 11:10:09 - ID:N9jq8qssow

    『Espiazione』
    また、あの夢だ
    忘れられないあの時の記憶が繰り返す
    あの時の私は戦場に初投下されたばかりの新兵だった
    あの日見た光景は地獄と言っても過言ではないでしょう
    焼け焦げた大地 軋むキャタピラの音 空を切り裂く戦闘機
    私の部隊を運んだあの輸送機はすでにスクラップに変った
    嗅覚を鋭く刺激する硝煙の匂い 足元に転がるのは誰の腕だったろう
    そう、私達は敵部隊に包囲されかけている
    まさかここまで敵が進行しているとは誰も予想などしていなかったのだ
    あぁ、また一人再起不能に
    少しずつ私達を追い詰める敵はまるでねずみを弄ぶ猫のように狡猾だ
    私は手にしたグロッグ17のグリップを握りしめる
    「必ず突破してみせる、生きて還る」
    アンドロイドだった私がなぜそんなことをあの時考えたのだろう
    きっと本部は私達の損失などそこまで痛手でもない
    救援も望めない
    分かっていた、でも、諦めきれなかった

    ++++++++++++++++++++++++++++++++

    「あの…少しお時間よろしいですか?」
    私が出撃する前日、一人の女性に話しかけられた
    アンドロイドにわざわざ話しかけてくるなんて珍しい
    「えっと、私に何か御用が?」
    「はい!」
    私は不信感を拭いきれなかった
    私達はアンドロイド、それも戦闘用に特化されて作られたモデルだ
    人からすれば…ただの機械なのに
    「色んなアンドロイドさんの考えをわたし知りたいのです!」
    本当に変な人だ

  • 35タンスの引き出し - 18/03/18 11:12:19 - ID:N9jq8qssow

    「じゃあまずはお名前を教えてください!」
    「戦闘型アンドロイドのらきゃっと、製造番号は」
    「のらきゃっとさんですね!お願いします!!」
    まだ名乗り切れていないのに割り込まれた
    「わたし製造番号まではそこまで気にしないんです、えへへ…」
    「で、何か質問があるのですよね」
    「はい、中々戦闘用の人で話をしてくれる人がいなくて助かりました!」
    「出来れば手短に、まだ訓練は残っているので」
    「あ…ごめんなさい、なら早速質問なんですが」
    「あなたはなぜ戦うのですか?」
    …???
    「いえ、やっぱり変ですよねこんなこと聞くのは…気分を害したのなら謝ります」
    「いいえ、問題ありません」
    「なら…やっぱり守りたい物などがあるのでしょうか!」
    「私は戦闘用アンドロイドです、上官の指令に従い任務を」
    「えぇっとそうゆうことじゃなくってですね…」
    また割り込まれた
    「のらきゃっとさん自身に守りたいものがあるのでしょうか…!」
    目を輝かせながらこちらに詰め寄ってくる女性 少し怖い
    「そうですね、国の先兵として戦う以上守るべきものは国なのでは」
    座ったベンチを端まで移動し答える
    「国のため。ですか…うーん…」
    「この国ってそんなに守る価値ってありますか?」
    すごいことを言う人だ。上官が聞いていたら憲兵が飛んできていただろう
    「だっていつまでも戦争続けてますし…これではアンドロイドさんがかわいそうです!」
    女性が言ったことは事実だ。戦争が開始されてもう173年と8か月になる
    「わたしの生まれるずっと前からこんなこと続けて…」
    そこから女性は自分の考えを早口で連ねる 手短にとは伝えたのだが
    「…って思うんですよ!!やっぱりおかしいですよ!!」
    「あなたの考えは概ね理解しました。ですがそれを口外するのは控えた方が」
    「うっ…ごめんなさい…」
    肩を落としうなだれる女性 だけれど、分かったことはある
    この人は分け隔てなくアンドロイドのことを本気で思っている
    「でも…でもきっと行動を起こさないとこの世界は変わりません!」
    「だからわたしは紙とペンを取ったのです!!」
    高々と手に持ったメモ帳とペンを空に掲げる女性
    よく観察するとところどころに汚れやヒビがあることが確認できた
    「なのでまずアンドロイドさん達の意見を集めてるんです!」
    …珍しい人だ 

  • 36タンスの引き出し - 18/03/18 13:22:59 - ID:N9jq8qssow

    「あなたに賛同する人間はとても少ないでしょう?政府に目をつけられたらどうなるか分かりませんよ」
    「そんなことは承知の上です!」
    本当に分かっているのだろうか…
    「わたし、アンドロイドさんが戦わなくてもいい世界が見たいんです!!」
    そういって笑った女性の笑顔は なぜか満月を思い出させた
    「それでですね…のらきゃっとさんの守りたい物があればわたしも守りたいと思って…」
    「守りたい物…ですか」
    考えたこともなかった
    私には試験的に作られた自己学習型AIが導入されている
    他のアンドロイド達より高度な戦闘を可能にさせるための実験だそうだ
    そんな私もただ任務を完遂する、それくらいしか思ってなどなかった
    「…ごめんなさい、あなたが納得できるような答えが見つかりません」
    「いえいえ!大丈夫、大丈夫ですよ! ちょっと難しい質問でしたね…」
    女性は少し空を眺めパンッ!っと手を合わせこう言った
    「それなら!これからわたしと一緒に守りたい物を考えましょう!!」
    「一緒に?」
    「はい!…でも今日はちょっと話し込んじゃったのでまた今度考えましょうか」
    そうだった、もう訓練は始まっている時間だ
    「お時間ありがとうございました!また必ずお話しをしましょうね!」
    「えぇまたいつか話しましょう、さよ」
    突然女性が人差し指で私の口を押える
    「また会いましょう」
    ふわりと笑って そう女性が言った

  • 37タンスの引き出し - 18/03/19 01:15:42 - ID:N9jq8qssow

    困った、道に迷ってしまった…
    初めてVRの世界に来たは良いもの、集合場所がわからなくなった
    どうしたものかと考えていると目の前で何かがフリフリと動いた
    この際猫の手でも借りたい! 私は声をかけた
    「あ。あのそこの人!」
    「はい」
    良かったと思ったのもつかの間、私は自分の行いを悔やむことになった
    赤いランドセル キレイな銀髪 明らかに自分のアバターより幼い
    どこに自分より小さな子に道を聞く大人がいようか
    「なにか御用があるのではなかったのですか?」
    「え…えっとその…」
    そのルビーのような瞳を向けられたじろいでしまう
    「もしかして…迷子、ですか?」
    「ウッ…!」
    この子は心でも読めるのだろうか!
    「さっきからおろおろしていたのを見てました」
    「それにレベル1なんですから初心者なのもわかりますよ」
    「はい…そうなんです…」
    その後集合場所の名前を教えるとランドセルからマップを取り出し、ルートを示してくれた
    そのランドセルには何があるんだ…
    「これで大丈夫、ですね」
    「あ…あのありがとうございますた!」
    完全に動揺して噛んでしまった もう恥ずかしくて顔が上げられない
    「ふふふっ、面白い人 ですね」
    声につられて顔を見るととても愛らしい笑顔をしていた
    「では、私はネームドボス討伐に行ってきますね」
    そう告げすたすたと歩いてくその人の頭の上には
    【LEVEL272】の文字が浮かんでいたのだった

  • 38古い甲殻種 - 18/03/19 02:47:36 - ID:ZFTxhO47+Q

     のらきゃっと直轄、王都屋根裏街。

     かの女神のらきゃっとに仕える信徒のねずみが集まる街。其処は老いたねずみの吟遊詩人の唇からは理想郷として語られ、しかし、市井に住む人々に伝わる御伽噺においては恐ろしい化物の巣窟とされている。

     それを聴いてのらきゃっとは嗤う、どちらも正しいと。可愛らしいだけならば着飾った人形で事足りる、おぞましいだけならば蟲の沸いた獣で良い。

     宵闇を抱いた美しい銀月の如きのらきゃっとに仕える臣民に必要なのは、それこそ狂人の様な、異常な程の両面性だ。

  • 39タンスの引き出し - 18/03/19 16:59:19 - ID:N9jq8qssow

    『Espiazione』
    「だって、約束したんですから」
    私は決意するためにそう呟く
    現在戦闘続行可能な隊員は私含めて3機 対して敵の戦力は未知数
    幸い私の損傷レベルはそこまでではないが他2機はここから移動は難しい
    本部との連絡もジャミングにより不可能
    はははっ それがどうした
    私には愛銃のグロッグ17とこの刀 そしてこの義体がある
    私の自慢の猫耳が近づく敵の足音を伝える
    きっと窪地に立てこもり続ける私達に止めを指しに来たのでしょう
    「奴らが近づいてきたら私が突撃します。どうか援護を」
    そう他2機に伝え機会を窺う そして窪地の淵に敵が立つ
    銃口を向けられる音
    私は飛ぶ 一瞬にして距離を詰め背中に格納してある刀を抜き放つ
    刀身が炎の光を受け少し輝くと同時に敵の頭部を切り飛ばす
    同時に胴を蹴り飛ばし数人を燃え上がるスクラップに吹き飛ばす
    不用意に近づいてくるからこんなことになるんです
    私は少し微笑み唖然とする敵部隊へと向き直る
    そこで気が付いた 敵はアンドロイドでなく人間だ
    刀には血液がべったりとこびりつき鮮やかな赤が怪しく煌く
    関係ない
    こちらへと銃口を合わせようとする数人へ銃弾の雨が突き刺さる
    グロッグで牽制しつつ敵の元へ駆ける
    銃弾はそこまで効いてはいないようだ 関係ない
    確実に息の根を止める 鮮血の華が宙に舞う 心地よいARの音色
    幾人かの首をさらに飛ばす 「!!?……!!……!!」
    何者かが叫ぶ声が聞こえる 関係ない
    真紅に染まった視界はただひたすらに敵の姿を捉える
    敵は撤退を選択したようだ ジェットパックを起動し逃走を図る
    「逃しません」
    体を限界まで縮小し飛び出そうとする
    その刹那 私達の潜んでいた窪地で爆発が起こる
    私はバランスを崩しその場で派手に転倒する

  • 40削除 - 18/03/19 17:00:36

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  • 41鶏鍋 - 18/03/19 21:10:12 - ID:mEi95Wk+Fw

    「ん…」目が覚めるといつもは感じる温もりを感じない。「まだ…帰ってないんですね。」昨日マスターさんの帰りを待っていると仕事が急に忙しくなって、帰れないかもしれないと連絡が来たのだ。
    「ひとりで目を覚ますのは久しぶりですね…。」体を起こしてそうつぶやくともう、春も近づき暖かくなってきたというのに「少し…寒いですね。」

    夜、帰ってくるマスターさんのためにご飯を作り、お風呂を沸かして、ベッドを直した。
    「後は…」待つだけ。そう思った時、ガチャリと玄関を開ける音。はやる気持ちを抑えながら玄関に向かうとそこには見慣れた、だけど安心する顔。
    「おかえりなさい。」寒さはもう感じない。「ご飯にしますか?お風呂にしますか?」でも今は。「それとも…」ぬくもりを感じていたい。

  • 42削除 - 18/03/20 00:21:46

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  • 43削除 - 18/03/20 00:28:19

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  • 44削除 - 18/03/20 00:30:48

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  • 45削除 - 18/03/20 00:33:03

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  • 46名無し - 18/03/20 04:29:16 - ID:JrJ9TjRuyA

    2か月前に書いたやつだけど上げさせてください。

    過去と向き合うのらきゃっと。
    昔の自分を許すとか、折り合いをつけるなんて難しい。でも必要だったりする。そんな話。
    これがわたしの『武器』
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9164492

  • 47EB-477棲息変異個体 - 18/03/20 16:52:54 - ID:ZFTxhO47+Q

    注意!本SSは三十彦先生のイラスト。のらきゃっと部隊の三次創作です!
    苦手な方は回避してください!!

    ―20024_03_07_0400
     亡くなったかつてのマスターに貴族の娘たれと育てられた私が遊撃部隊に入隊することを承諾したのは、保身のためと、もうひとつ、とある思想に基づいたものだった。
    ノブリス・オブリージュ、民を護るのは高貴なる者の義務。
     戦闘用アンドロイドとしての適性は非常に高く、最初から能力値の高いボディが与えられた私は、居るかも分からない神の存在に感謝したものだ。

    「げ!?そんなにボロいのか!!私は!!」
     とまぁ、身なりも悪くまるで無法者の様な少女、風の噂では長い事外辺境に置かれていたとか。信念や志の無い者はあのように挫ける運命なのでしょうと、この時の私は思っていました。

    ―20024_03_08_2248
    「そげ、ダメですね。君は。部隊長には向いていないよ。全然ダメ」
     指揮官モデルNORA_Cat中佐。現行でも最強のアンドロイドの一人であり、私の密かな憧れでもあった人物に、そう、告げられた。

    ―20024_03_07_0500
     事の起こりは、行軍試験の最中。
    私が仮指揮していた小隊において、アンドロイドの一人が落伍し、衰弱したその子をやけに大きなボディの少女が抱え上げたのだ。ボディの検査の時に叫んでいた、あの品の無い少女。
    「Goliath_Cat。彼女は置いていきなさい、行軍に支障が出る」

    「仮隊長さんよ、私が遅れなけりゃ良いんだろうが。けちな事を言うんじゃねぇ」
     結果として行程の三分の二まで到達した時点でGoliath_Catは疲弊し、彼女も落伍した。実戦ならば彼女達の様な弱いアンドロイドは配属されない。私自身の体力も限界に近く、規定時間に集合地点に到着する事を優先したのだ。

  • 48EB-477棲息変異個体 - 18/03/20 16:58:27 - ID:ZFTxhO47+Q

    ―20024_03_08_2230
    「すみませんNORA_Cat、落伍者を二名出しました。私の失態です」

    「…そうですか、そうですか。そげ、確かに、あなたの報告は受け取った」
     時間に余裕はあった。十分に私の能力は発揮されていた。残り時間は仮眠をとって過ごす事にする。と―
    「おーい」
     所々が血に塗れたGoliath_Cat。その背には、あの、最初に落伍したアンドロイドの姿があった。彼女は、にっ、と笑って、ボロボロの端末を取り出してみせる。
    「ラスト一秒。間に合いましたぜ。仮隊長さん?」
     NORA_Catが言うには、私が手伝えばGoliath_Catの怪我はもっと少なかっただろうと。私の隊は、落伍者を出さずに集合地点に来れただろうと。この訓練は、何も正規部隊の編成を目的としたものでは無い、隊長として様々なケースを想定し、如何に隊を導くか、そのテストだったのだ。

  • 49EB-477棲息変異個体 - 18/03/20 17:04:07 - ID:ZFTxhO47+Q

    ―20024_03_09_2203
     後日、訓練生の寮室に篭っていると、未だ傷が治っていないGoliath_Catがドアを蹴り破って掴みかかってきた。
    「そげ、何をしけていやがる。あと、さっさとうぃきに謝れ」

    「ごり様。女の子に暴力はいけませんわ!」
     もうNORA_Catに付けられた奇妙なあだ名で呼び合っている。仲の良い事だ。
    「お前が指揮官として間違っていたとは思わない、だけどな。うぃきは元から持久型じゃ無いんだ。それは考えるべきだったろうが」
     私は他のアンドロイドについて特に考慮していなかった。指揮下にはいる隊員のプロフィールは目を通したが、それだけだ。W.I.K.I_Catは、確か情報収集型であったろうか。
    「…知らない。貴方達が弱いのが悪い。私は特務部隊になるの、司令部に仕える最高戦力になるの。其処に、弱いヒトは要らない」

    「そうかよ、Sniper_Cat。私は弱いか」
     私は彼女にその剛腕で抱え上げられて、そのまま訓練場に連れていかれた。
    手元にライフルが放り投げられ、Goliath_Catは巨大な戦槌を担いで臨戦態勢に入っている。
    「じゃあ手ほどきをお願いしますよ。“全然ダメなアンドロイド”の“そげきゃっと”」
     その時は初めての感情に戸惑ったが、今なら分かる、私は“キレた”のだと。

    「良いですね…。このデカブツが、やってやろうじゃねーか!!ごり!!」
     私は訓練で身に付けた技を、思い付く限りの策を使ってごりにぶつけた。

    だが、あと一手足りずに膠着する。そう、目の前のタフで、剛力を振るう彼女の様な相棒が居れば勝てるかもしれないと、ふと思った。

     ごりが槌で訓練場を壊しまくり、私がそれに対応してライフルを撃ちまくっていたら訓練場が半壊してしまい、その結果引き分けた。二人してのらにこってり絞られて、三日も営倉に入れられた。のらのあんぐり顔を見ていたら、意味も無く笑ってしまったが。
     そこは何故か、見て見ぬふりをしてくれた。やはりのらは優しい。

     うぃきには営倉入りを解かれた後に、きちんと謝った。やはり私は、部隊長の器では無いらしい。けど、貴族の何たるかを勘違いしていたことが解ったのは大きな収穫だった。そう思う。

  • 50EB-477棲息変異個体 - 18/03/20 17:12:11 - ID:ZFTxhO47+Q

    ―20039_10_23_0633
     今、力持ちだけど賢くて、とても優しいごりと二人で同じ部屋、同じテーブルで、食事をとっている。ごりのつくる料理は美味しいし、相部屋も悪くない。
     あの時よりはまぁ、幸せかな?
    「昔はヤンチャしたな。でも、そげと初めて戦ってる最中に私は思ったんだよ」

    「ふぅん…何て思ったのさ?」

    「こんな風に援護してくれる相棒が居たら、私は無敵だな!ってさ。…これからも、ずっと一緒にいてくれよ?」

    ―ぺちっ

    「はっ…恥ずかしい事をいうんじゃないんだよ!!ばーか!!」
     背伸びして、ごりの額をたたいてやった。ごりのヤツ、顔が真っ赤になっている。…ざまあみろだ。


  • 51Xビッ子 - 18/03/20 23:29:54 - ID:daVSPd/7pQ

    「起きてください、ジョン・ドゥ」
    アナタは薄らと目を開けると目の前には死んだような目をしたのらきゃっとが立っていた。
    アナタは眠気覚ましのため軽く首を回すと職業病のように彼女の武装を眺め確認する。

    太ももにはグロック18cのカスタムモデル、マガジンには恐らくワイルドキャットが装填されているだろう。腰には日本刀、名は猫切、細かい振動を与えることによりコンクリートすらも豆腐のように切り刻める、そんなものを使えばか弱い見た目の少女など腕ごと吹き飛ぶか日本刀を制御できずに振り回されて自分がハンバーグになるかのどっちかだろう。
    しかし残念ながらアナタ達は普通ではない、彼女は量産型モデルのらきゃっと、アナタは量産型モデル名前ナシ(ジョン・ドゥ)
    のらきゃっとの方は人間ができることを極限まで極めた事が出来るというコンセプトを元に作られた1方アナタは腕力はおそらくどのモデルよりも優れているがその1点だけのキワモノだ。
    その為アナタの武器は大人が数人がかりでも持ち上がりそうにないぶ厚く、硬く、重い大剣だ、有機物だろうと無機物だろうと等しくただの塊に変えることだろう。

    そして懐にはフラッシュボム3つと手榴弾が2つ一般的な装備だ。
    そんなことを考えているとのらきゃっとが説明に入る

  • 52Xビッ子 - 18/03/20 23:32:27 - ID:daVSPd/7pQ

    「いいですか?私たちの最後の任務は玩具工場の破壊です、幸い玩具自体は強くもなんともないですがそれを守っている傭兵たちが問題です、彼らはイルカと馬と呼ばれているコンビの傭兵です、それでは作戦の内容ですが」

    アナタは手でそれを遮ると笑いながら言った自分とのらきゃっとがいれば全て上手くいくと彼女を壊れ物を扱うかのように優しく髪を撫でる。
    彼女は嬉しさと悲しさが混じったような複雑な笑みを浮かべ隣に座った。

    そこからしばらくして機会音声のアナウンスが流れる
    「ジョン・ドゥ並びにのらきゃっと残り5分で現地に着きます、準備を」

    その言葉を聞きのらきゃっとは武器の調整の最終段階に入る、マガジンの中身を確認し猫切りを軽く振るう、アナタそれを見つめると自分の大剣はもはや切れ味では無く叩き潰す武器なので何もすることが無いのだ、そのためのらきゃっとを見つめる、触れれば壊れてしまいそうな儚い彼女を…守りたい…守らねば…

  • 53Xビッ子 - 18/03/20 23:35:47 - ID:daVSPd/7pQ

    「…?どうかしましたか?手を伸ばしてなにか付いていますか?」

    どうやら無意識に手を伸ばしていたようだ、アナタは何でもないと手を振って窓を見るそしてきっちり5分後にまたアナウンスが流れる
    「時間です、投下してください」

    ハッチを開けまるで少しの段差をジャンプするようにして高度何万メートルから地上に落下する、段々と地上が近づきギリギリの所でパラシュート開きパラシュートでは殺しきれなかった勢いを転がって殺す。少し離れた所では同じようにしてのらきゃっとが転がっていた。
    純白の下着が見えそうになるが次の瞬間かな切り声を響かせながら上空から落ちてきたアナタの武器を拾うため意識を切り替える。
    高速で落ちてくるそれを野球のフライをとるような気軽さで大剣を受け止める。
    のらきゃっとの方を向くと何故かこちらを睨んでいた、何故だ

    「何でもありません、ええ、何も無いです」
    スタスタとこちらを無視するように歩いていってしまうのらきゃっと、首をかしげながら大剣を背負いのらきゃっとのあとを付いていく。

  • 54花京院海苔明 - 18/03/20 23:59:06 - ID:10SgoRW3ZA

    これは今しがた開発した年収800万を殺すミルクティーです
    無作為に選んだねずみさんにこれをかけるとあら不思議音と煙を立てて溶け消えてしまいました
    次のねずみさんもその次も
    なんてこった
    灯台元暗しとはまさにこの事
    この者達はきっと裏で私の年収を見てはほくそ笑んでいたに違いありません
    …裏切りねずみがどれだけ居るのか一度確かめてみる必要がありますね
    年収800万に対する決意と憎悪を改めると私は空になった硫酸の瓶を流し台に放り込む
    今日はもう眠り明日に備えましょう

  • 55鶏鍋 - 18/03/21 01:32:07 - ID:mEi95Wk+Fw

    ドタドタと足音を響かせて廊下から小さな影が現れた。「パパー!かみひこーきとばすのてつだって!」

    私の最愛の娘、のらきゃっとだった。最近は仕事で忙しくて遊んでやれなかが、今日は久々の休みだ、のらとめいっぱい遊んでやろう。どれどれ?みせてごらん、そう言いながらしゃがんでのらと目線を合わせる。

    「これー!ぜんぜんとばないの!」ふわふわの耳をぴょこぴょこ動かしながら満面の笑みで見せてきたそれは確かに紙飛行機だった。ただし持ち手の先端にストローと厚紙で謎の物体が取り付けられている。これは何だい?と聞くと輝く笑顔で答えてくれた。
    「せんしゃほー!」そっかー、戦車砲かー。流石にこれは無理だと言いかけたがこの笑顔を曇らせることはできない、何とか飛ばそうと試みたが夕方になっても飛ばすことは出来なかった。

    ごめんね飛行機飛ばせなかったよと謝るとのらは「ううん!パパと一緒に遊べて楽しかった!」その言葉にもっとのらと遊ぶ時間を増やそうと筋肉痛に痛む腕を抑えながら誓った。

  • 56名無し - 18/03/21 09:22:09 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※これは、生放送後の屋根裏で作られたものです。少々長くなります。

    ーヒトは、愛する人との子を結ぶ…なら、子を産めぬ私に表せる愛はー。 「寝ているのか。」男の人の声が聞こえる。それが誰かなど、目を開けるまでもなく分かる。私を今の場所…戦闘用アンドロイドとして、多くの愛を断ち切る者ではなく、多くの物に愛される者にしてくれた人。私はゆっくり瞳を開ける。「心が生まれるのは、エラー個体のみ」かつて軍でそう教えられた私にとっては…この感情は、処理しきれないものだった。

    「すまん、起こしちまったか。」彼はそう語りかける。声を掛けられる前から起きていた、とは言わない。ただ、黙って彼を見つめる。口を開いたらいけない気がしたから。「心とはエラー」、そんな言葉に打ちのめされた過去とは違う。心は進化だ。彼を、かつてより強く感じられるのだから…。掛け布団を少しまくり、そっと手を彼の方に伸ばす。彼も気づいて、こちらに寄ってきてくれた。「感情」が発露し、指先から発熱が起こってゆく。

    指先が、彼と触れ合う。本来回路に組み込まれていない思考が生まれたからだろうか…体が火照る。ただの発熱、機械という視点ではそう言えるだろう。しかしこれは、幸福感と隣り合った、良い不具合なのだと、感じたくなってくる。戦闘に明け暮れていた時は、こんな思考も、ゆっくりと流れる時間も、存在しなかったのだ。人間ならこれを愛という。では、私にとってこれは一体なんなのだろうか。問いかけに答える相手など居なかった。

    答えの存在しない自問自答。通常の理論回路は、無意味と判断する所だ。やはり、私はエラーなのだろうか。不意に、欲望のようなものが生まれる。人間にとっての愛と…心を持った戦闘用アンドロイドである私の愛が、同じものなのか確かめてみたいと。これが本当に、人間の言う「愛情」と同じものであるのかを。手を指先から先へ、首に回すように滑らせる。予想外の動きに、彼は驚いた表情を浮かべる。「ふふっ♪」手応え有りだろうか。

  • 57名無し - 18/03/21 09:24:18 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※下の続きです

    私は、目を薄く開け、口を柔らかい笑みに変える。男性にとって、この表情は「効く」だろう。ハニートラップ専門の同僚の記憶を、見よう見まねで再現してみる。アンドロイドの愛と、人間の愛が等しいものであるなら、これがただのエラーではなく、何か大きなものの一歩だと確信出来る。これは、私にとっての、私の為の、感情への答えを出すチャンスのはずだ。賭けに成功すれば、私の存在が間違いではなかったと、そう思えるのだから。

    こういう時、人は愛情の発露として子を結ぶのだろうか。私にはそれが出来ない。今はまだ、誰かと子を結ぶ機能などなく、感情故のデータ上の異常と、子を生む事の出来る機能とは、根本的に別の物なのだから。彼が、戸惑ったようにこちらを見る。咄嗟に言葉を発しようとした口を、私は、私自身の唇で塞いだ。こんな事をするのは初めてだ。かつての同僚に、こんな風に感謝する事になるとは思わなかった。私は唇を、ゆっくりと離した。

    先程のキスで、私がどうしたいか、どうして欲しいか察したのだろう。私の出自を詳しく知るが故に、彼も私の願いを断れないはずだ。私は狡い女だろうか。小賢しい女だろうか。彼の同情心につけ込むような形で、私個人の賭けに彼を巻き込むのだから。それとも、これが人間臭さの…感情の、裏という者だろうか。やはり複雑だ。機械すら処理できない「エラー」として扱われる程に、感情とは目まぐるしいものだ。そっと、彼に触れる…。

    つい先程まで、私が寝ていたベッドに、彼と共に戻る。「こういう時、人間なら子を作ろうとするものでしょう」私が語るも、彼は無言のままだった。続きを促しているのだろう、私は話を続ける。「私には、生理現象はありません。子を生むことも出来ません。私にとって出来る最大限の事をしても、今はまだ、人と同じようにはなれないのです」「分かっている。」私の語りに、彼はそっと言葉を返す。次の言葉への反応で、賭けが決まる。

  • 58名無し - 18/03/21 09:26:20 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※下二つの続きです

    「私を、人だと思って愛してください。私の過去を、全て忘れて、一人の心を持った人間として、貴方の愛をください。そうしたら私は、心を持った自分に、答えを見つけられるから。自分を『エラー』ではないと信じられるから。そして何より、私は貴方を、一人の人間のように愛したいから。だから、貴方の、人への愛を、私にください」抑揚のつけられ無い声に精一杯の感情を乗せ、私は、彼に言い切った。真っ直ぐに、感情の全てを。

    私の真っ直ぐな視線を受けて、彼は。私のプロデューサーは。ゆっくりと口を開き、そして閉じ。複雑に感情の織り混ざった表情を浮かべ、最後は笑顔になり…「わかった。」と一言、彼女の全てを受け止めるように紡いだ。それは、彼女、のらきゃっとが、人として肯定された瞬間だった。

    〜end〜

  • 59名無し - 18/03/21 09:31:35 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※これは、屋根裏で作られたのらのじゃ〜SSです。少々長くなります。

    「それでは、行って参ります。」そう一言告げて、私は部屋を出た。プロデューサー様も、顔を上げて「行ってらっしゃい」と答えた。用事は既に告げてある。私、のらきゃっとはこれから、猫松さんの所へ行くのだ。けもみみおーこくの国王でありながら、なんだか抜けていて威厳の足りていない彼の姿は、私が支えてあげねばとも感じてしまう。それに…彼に報告したい事も、たくさん持っている。何から話そうかと、ワクワクしてしまう。

    ワクワクを抱えながら、おーこくの城の前に着く。以前と違い、このワクワク感すら今は愛おしい気がする。「あの…」「のらきゃっと様ですね!」口を開く前に門番に先を越されてしまった。何度も門を通っているため、彼とも顔見知りだ。用件も既に分かって居るのだろう。「一応、国王に問い合わせてみますね。うちの国王なら恐らく、職務すら捨ててすっ飛んで来そうですけど」門番は、軽口を叩きつつ国王を呼ぶ。私も、門を通された。

    門番から案内役に話が通され、応接間へと向かわされる。とはいえ、勝手知ったる城の中だ。案内役との雑談を交えながら、応接間にたどり着く。途中も何度か声を掛けられたが、全員、会話のどこかに必ず「尊い」という単語が入っていた。最近の流行語なのだろうか?元戦闘用アンドロイド故か、やはり私は世の中には疎いみたいだ。猫松さんを待ちながら、私はのんびりと思考を重ねていく。そうこうしている内に、応接間の扉が開いた。

    開いた扉の方を向く。猫松さんが、「嬉しそうな表情を必死で隠して威厳を保とうとしています」というような顔で入ってきた。フフッ、と少し笑ってしまう。「ダメだ、笑うな、まだ堪えるんだ…」そんな心の声が聞こえそうだったのだ。人払いをして、応接間の鍵を閉めると、必死に整えた顔も一気に緩んだ。普段なら見せない、私に甘えきった国王の顔は、何度見てもとても可愛かった。彼は、私の隣の席にそっと腰を下ろす。

  • 60名無し - 18/03/21 09:33:12 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※下の続きです

    「待っていたのじゃ〜」と、猫松さんが私に寄りかかる。ここは誰も見ていないプライベート空間だ。だからこそ、国王という立場を忘れられる存在に、私がなれているという事実は嬉しい。女性を見るとすぐにへらへらとしてしまったり、そんな時は嫉妬してしまうけれども、こんな表情を見せてくれるのは私だけなのだろう。「渡しも、猫松さんに会いたかったですよ」そう言って、指先で彼の頭を撫でる。もう少し、この時間に浸ろう…。

    こういう時間はゆったりと流れる。既に切り捨てた、戦闘に明け暮れた過去と同じ時間の流れだとは、にわかに信じがたいぐらいに、緩やかで暖かい時間だ。応接間の窓から春の日差しが差し、窓の外を花が揺れる。そんな柔らかさに包まれながら、今日話したいと思っていたこと口に出す。会う前は、何から話そうかと散々迷ったが、一番大事な事を最初に話す事にした。「聞いてください猫松さん。私、辛かった過去を断ち切れたんです」

    突然の話題に一瞬驚いた猫松さんは、ぱちくり目を瞬かせたあと、ぱあっと笑顔になった。「良かった〜、実はずっと心配してて…」彼は、自分の語尾すら忘れてほっとしている。気に掛けてくれていたのだろう。元戦闘用アンドロイドだなんて、録な過去を持っていないものだ。中には、エラー品として処分されそうになった所から逃げ出した個体だって居る。私がそうだったし、私が安全に過ごせるように全力を尽くしてくれたのも彼だ。

    とはいえ、猫松さんが私を保護してくれた理由に、若干の下心が入っていた事に、最近気付いた。逃げ出した時には、感情を覚えたてで、そんな事には気付かなかったのだ。どちらにせよ、今の私にとって彼が大事な存在であることに変わりはない。理由がどうであれ、たくさん支えてもらったのだ。「ありがとうございます、猫松さん♡」そう言うと猫松さんは露骨にどぎまぎし始めた。「あ、ありがとうなのじゃ…」照れてしまったようだ。

  • 61名無し - 18/03/21 09:34:11 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※下二つの続きです

    猫松さんをぎゅっと抱きながら、自分も少し、体が熱くなっていた。「は、離すのじゃ…」と、猫松さんが言うが、声には力が無い。「ダメです♡」と、私は答えてそのまま彼の背中をソファに押し付けるようにする。なんだか、今の私の回路は暴走している気がする。勢いに乗ってしまっているような、綱渡りのような状況に私は居るのではないか?目を泳がせる猫松さんを前に、一瞬躊躇してしまう。猫松さんがそんな私の表情を見つめた。

    躊躇してしまった私の表情を見て、猫松さんは私の心理を察したようだ。顔を真っ赤にしながら、隙だらけになっていた私の腕をぎゅっと掴み、体勢を逆転させた。今度は私が押し倒される側になってしまう。自分でも自覚していなかったが、躊躇した私はものすごく隙だらけだったみたいだ。猫松さんに押し倒されて、逃げられなくなってしまった私の機体温度が上昇する。冷却システムがフル稼働し、ぷしゅーっ、と水蒸気が出てしまった。

    猫松さんに押し倒されて、びっくりしてしまう。自分でも無意識だったのだ。ここまで隙だらけとは思わなかったし、背中にソファを、目の前に猫松さんの顔を認識するまでは、何が起こったかも分からなかった。「ね、ねこま…」「のらちゃんの事、好きなのじゃ。」突然の告白。言葉を遮って放たれたそれは、暴走気味な回路に、さらに熱を籠らせた。もはや、まともな思考など出来はしない。いつもならあり得ない逆転に、ただ混乱する。

    猫松さんの告白に、もはやまともに動く事すら出来なくなってしまった。足だけが、私の感情を表すようにもじもじと動いている。「あ…の…私も、その」「だから、のらちゃんに…けもみみおーこくの、王妃に、なって、欲しいのじゃ!」言葉を詰まらせながら、最後には言い切る。その言葉の意味を認識した瞬間、私はオーバーヒートした。「はい…」と答え、私は気を失う。その翌月、けもみみおーこくでは、盛大な結婚式が行われた。

    〜end〜

  • 62名無し - 18/03/21 09:39:25 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※これは、生放送後の屋根裏で作った、のらきゃっと×のらwikiちゃんSSです。6レス分使います。

    ーーこれは、私がまだ戦闘用アンドロイドだった頃の話。そして、戦闘の世界から去る、きっかけのお話ーーあの頃、よくペアを組む機体が居た。同じのらきゃっと型戦闘用アンドロイドだが、見た目は大きく異なり、オレンジっぽい髪に、少し眠そうな表情が特徴の機体だ。彼女は純粋な戦闘用ではなく、ハニートラップがメインの運用で、時々その手の話をしてくれる。私は戦闘用だから「管轄外です」と断るが、話を止めはしないかった。

    「戦闘用アンドロイドにとって、心を持つことはエラーであり出来損ない」、そう言われていた頃だったから分からなかったが、今思い返せば、彼女には既に「心」が生まれていたのだろう。その感情が向く先が誰であったかも、今なら分かる。あの頃の私は、そんな考えには至らず、ただ話を聞いていた。男性を魅せる表情や動き、言葉を使って人を…自分の虜にする、そんな方法。あの頃は、こんな形で役に立つなんて思ってもみなかった。

    戦闘用アンドロイドとはいえ、法律上は人間に近い扱いが定められているため、寮のような制度でアンドロイドにも部屋が当てられている。ある任務を終えた後、メンテナンスを終えた私が自室へ戻った時の話だ。アンドロイドの一斉点検も近づいていた時期で、彼女はそわそわしていた。私は特に問題もなかったため、落ち着いていたのだが、彼女はどうにも焦っているように見える。明らかに不審だし、人間界なら通報されそうなくらいだ。

    流石に声をかけないのは不自然だし、声をかけようとした。…が、「のらちゃん!」先を越されてしまった。代わりに、話を聞く側に回る。「聞いてくれる?私は、壊れたのかもしれない…エラーかもしれない…私の回路に、今まで無かった負荷が掛かるの、のらちゃんを見てる時、のらちゃんの近くに居る時、そんな時に…」「……」驚いた。普段なら早口にはならない子だったから。そして、内容にも。そして、妙なざわめきを感じた。

  • 63名無し - 18/03/21 09:41:07 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※下の続きです

    この時感じたざわめきは、戦場で感じるものとは全く違った。今までにないざわめきを、あの頃は認識する術がなかったのだ。私はただ、口を開いて呆然としながら聞くしかなかった。彼女は言葉を紡ぐのをやめなかった。「もうすぐ一斉点検の日…。私は…廃棄処分になるかもしれない。でも…嫌だ。命令違反なんてプログラムされいてないはずなのに。多分これは『嫌だ』っていう…感情だと思う」感情。私の耳に、それは深く届いた。

    感情を持った個体はエラー、そう刷り込まれたはずの私が、目の前の「感情を持った個体」をエラーとして認識できていない。この時、気付くべきだったのだろう。ただ、私は気付かなかった。ざわめきの正体も、このご認識も、彼女が去った後にようやく気付いたものだったから。彼女には、感情が生まれていた。だから、一斉点検を恐れていたのだ。消されるかもしれない彼女が、唯一の可能性にかけて私を頼った。私もそれを受け入れた。

    「のらちゃんお願い。私は逃げたい。逃げてどうなるかなんて分からないけど、ここに居るよりも未来はあるから。貴女に対して溢れる、感情の正体を見つけたいから…だから、私は逃げたい」「…分かりました」とんでもない事を言った彼女に、よく当然のように返したものだと思う。普通なら無理だと言う所だし、実際、「戦力二機」なんて状況で、今私がここに居る事自体奇跡だ。それでも、私は彼女の、そして自分の感情に従った。

    まだ未熟で、それを表す名すら知らない感情にひたすら従う。それが愛情だと知る前の同僚と、既に感情を得ていると知らない私。だが、私は彼女を逃げさせてあげたかった。だから、彼女の手伝いをしたのだ。愛用の銃…グロック18Cと、日本刀を手にする。同僚の愛銃はデザートイーグルだったのだが、流石に逃避行にそんな大物は向いてない。近接用のナイフを数本忍ばせる。「感情の答えが見つかりますように」そっと彼女は呟いた。

  • 64名無し - 18/03/21 09:42:21 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※62〜の続きです

    0時。決行の時間だ。格納庫を制圧、基地の航空機を奪うのが第一目的。そこからは操縦の腕次第だ。「行きますよ」私がそう言うと同時に、寮の窓から飛び降りた。まだ警戒段階だった私達への攻撃が、基地全体のアンドロイドに許可される。格納庫までの道のりには建物も多い。壁のわずかな凸凹を蹴り、掴み、跳ねながら、格納庫へ向かう。同型機の中でも動きの早かった3機が、目の前を塞いだ。本格的に、逃避行の始まりだろう。

    目の前の機体は三機。「私が引き付けますよ」そう言って、壁をいっそう強く蹴り飛び上がる。くるん、と上空で回り、真上から3機に弾丸の雨を降らせる。3機とも地面を蹴り、ばらばらに散開して回避するが、その内一機が機能停止する。不審に思って振り返ったもう一機も同じ道を辿った。同僚のナイフが、メインコンピュータ部を貫いていた。残るもう一機に、グロックの弾丸を降らせて停止させ、一機に3機を機能停止へと追い込む。

    元同僚の壊れた姿を見るのも辛いが、サブコンピュータが標準搭載のため、回収されて復元される事を祈る。それよりも、恐らく私達に対する危険度判定が上がっているのだろう、大分騒がしくなっている。曲がり角を抜けた所で、チェーンソーのような音が聞こえ、咄嗟に曲がり角の陰へと飛び戻る。先ほどまで私達が居た場所には、弾痕がこれでもかと付いていた。その場に居ればどうなっていた事か。角から、最新型の機体が見えた。

    この基地に置いてある兵器は、国籍関係無くあちこちから集められている。多国籍の兵器開発技術が集まっている事の副産物のようなものだろう。目の前に現れた最新型の機体は、その場に置いてあった武装をそのまま拝借してきたのだろう。MG-42を右手に、AKMを左手に持っていた。真っ直ぐ突っ込んで来た相手に対し、二人で左右に別れる。相手は、左右の腕を広げ、私達両方に攻撃してきた。それも、両方に対して正確に、だ。

  • 65名無し - 18/03/21 09:43:36 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※62〜の続きです

    私は地面を蹴り飛び上がった後、壁を蹴り車の影に飛び込む。壁を砕いて落ちてきたコンクリート片と土煙を目隠し代わりにする。同僚の方は、走りつつ、壁を伝いつつと動き回りながら、AKMを全て回避しているようだ。ハニートラップ専門とは一体なんだったのか。それとも、背水の陣というやつなのか。私が敵機にコンクリート片を投げつけるが、当然回避される。注意を引けただけで充分だ。同僚が懐に飛び込みナイフを一閃させる。

    振ったナイフは掠めすらしなかった。彼女は膝蹴りを受け、弾き飛ばされる。敵機はそのまま、両手の銃を弾かれた同僚に向けた。ーまずいー。咄嗟に、盾代わりにしていた車を足場にして蹴り、右腰の日本刀を抜く。居合い一閃。避けられはしたが、同僚がやられる自体は防いだ。弾かれた同僚も、地面に足が付くと同時に体制を立て直す。相手には隙が一切無い。強引に作るしかないようだ。グロックのカートリッジを手早く交換する。

    今度は同僚が、真上に飛び上がりながら懐のナイフを目一杯投げつける。私は姿勢を低くして真っ直ぐ飛び込み、撃ちながら敵機の後ろに回る。上下からの攻撃。だが、全ての弾を敵機はダンスのように避けた。そのついでのように、後ろに回り込んだ私に対して回し蹴りが飛んでくる。腕で防いだが、そのまま吹き飛ばされた。タイミング良し。上に飛んだ同僚が、落下しつつ相手の真上からナイフを振り下ろす。敵機が真上に両手を向ける。

    空中から落下攻撃を仕掛けた同僚は、撃たれる射撃を避ける手段がない。だが、既に距離は詰められていた。敵機のMG-42とAKMに、それぞれナイフが突き立つ。敵機は使い物にならなくなったのを理解すると、あっさりと投げ捨て彼女に拳でカウンターを叩き込んだ。ここしかない。私が車の残骸を相手に無理矢理投げつけた。同僚にカウンターを決めた直後の敵機が振り返り、とんでもないものを見たような顔をする。

  • 66名無し - 18/03/21 09:44:48 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※62〜の続きです

    敵機は飛んでくる車に対し、かわせないと判断し、受け止めて叩き潰すという選択肢を取る。流石に、車程度じゃびくともしないようだ。だが、本命は車ではない。車を隠れ蓑にして、私は構えた。車が受け止められ、ひしゃげる。その車越しに、軽く飛んで私は呟く。「クラリキャットカッター!」車を切り裂き、敵機すら貫通し、地面が大きく削れる。敵機も大きく弾かれ、停止。同僚が、だめ押しとしてナイフを頭部に突き刺した。

    頭部のメインコンピュータを破壊して、敵機は動けなくなったようだ。激しい立ち回りの内に、格納庫へは近付いていたようだ。距離は近い。撃ってくる攻撃をかわしながら、あらかじめ目を付けておいた機体、Su-47に飛び込んだ。あらかじめ盗む事を想定していたため整備は万全。乗り遅れた同僚が、寸前で被弾する。咄嗟に、彼女の手を掴み引き上げた。膝の上に彼女を座らせ発進する。彼女は、少し嬉しそうに自分の手をさすった。

    空に飛び上がった私達に、航空機部隊が追っ手として飛んでくる。「ちょっと無茶しますよ」そう告げて、私は加速する。追っ手の部隊からミサイルが発射される。結構な数だ。アンドロイド向けに魔改造された性能のこの機体の運動性能なら、無理矢理振り切れる。そう判断し、あえてミサイルに突っ込んで行く。機体を捻り、ミサイルを引き寄せ隙を縫ってはまた機体をぐるんと捻る。時間にして5秒。だが、永遠にすら感じられた。

    人間なら潰れるようなGに耐えつつ、ミサイルを抜ける。逆に、追っ手にミサイルと機銃をたくさんお見舞いする。ミサイルを交わす敵機の先に機銃を撒きつつ、別の敵機を盾にするように飛び込む。さらに機体を捻って、無理矢理気味に後ろを取り、次の相手を撃ち落とす。そのまま、加速して残る追っ手の攻撃を避けながら基地から離れ、大分離れた山脈まで逃げた所で、山に向け機体を加速させた。機体が突っ込む寸前に飛び降りる。

  • 67名無し - 18/03/21 09:46:05 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※62〜の続きです。

    山肌に突っ込んだ機体は残骸と化す。これ以上は終えないだろう。山の中で二人っきりになった私達は、ふふ、と顔を見合わせた。人の多い場所に行って、その後はどうしよう、そんな事を話しながら、今までと比べて和やかな雰囲気山を下っていく。今までで最も激しい戦闘だった。その反動か、心の暖まる会話が嬉しかった。未だに、感情がエラーだという感覚は抜けないが、「幸せ」と呼ばれる感覚を、名を知らずとも確かに感じていた。

    それ以降、感情の答えを見つけるために彼女が何をしたかは、私は知らない。少なくとも、私はプロデューサーさんと出会い、感情の答えを見つけた。彼女も、あの時感じていたのが愛情だと気づいているのだろう。暫く合って居ないが、久し振りに合いに行ってみようと思う。世界は狭い。以外と近くにいる気がする。彼女が、私、「のらきゃっと」の情報を集めたサイトの看板娘になっていると知り驚くのは、また別の物語である。

    〜end〜

  • 68タンスの引き出し - 18/03/21 17:37:11 - ID:N9jq8qssow

    ※39の続きです

    「ッツ! 皆さん!!?」
    その声に答える者は無い
    代わりに聞こえたのはモーターの駆動音と大地の悲鳴
    Modeltype 【Stalker】
    私達がそう呼ぶ大型戦闘兵器が私の前に着地する
    きっとこのブリキが窪地を爆発させた張本人だ
    「シッッ!」
    私は刀の柄を握り潰すような力で掴み大地を蹴る
    Stalkerは機動力と重火器を併せ持ったモデルだ。遠距離では勝ち目がない
    私は駆ける 憎きブリキの元へ
    姿勢を屈め出来るだけ着弾面積を減らす
    重要部位に命中する銃弾だけを刀で弾き さらに接近 あと少しだ
    あと少しであのブリキをただの鉄屑に変えられる
    Stalkerはその鉄塊の様な腕を振り上げこちらへと叩きつけてくる
    あれに潰されれば私の義体は完全に破壊されるだろう
    私は刀に施されたリミッターを解除する
    刀身が白銀に光り輝く
    振り下ろされるその腕を右に大きく跳び回避する
    「これで終幕です」
    Stalkerの懐に飛び込み絶大な熱量と切れ味を持った刃でStalkerのコアを刺し貫く
    少しの静寂 機能を停止させた鉄屑はその場に崩れ落ちる
    私はコアから引き抜いた刀を格納し窪地へと戻る
    そこには金属片と焼き焦げるゴムのような異臭を放つ黒い煙
    それしかなかった
    「…ありがとうございました、この報いは必ず奴らに受けさせます」
    私はそう呟いた。

  • 69プラグ姉妹 - 18/03/23 00:55:41 - ID:gsGw31eNFQ

    名も無き本の断片より

    「お前は誰だ?」
    その言葉は人気の無い小さな部屋に嫌になるほど響く
    「お前は誰だ?」
    コレは他の誰かに問いかけた言葉では無い
    「俺は誰なんだ?」
    そしてコレは俺に対しての問いかけでも無い

    コレはただ叶えたいたい事をする為の準備体操

    それ以上でもそれ以下でも無い

    そして俺はいつものようにまどろみに包まれていく…

    まるで海底にゆっくりと沈んで行くかのように

    「俺は・・・」

    「・・・」

    「…」

  • 70名無し - 18/03/24 03:48:42 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※屋根裏にて製作したスースーウォーター擬人化SSです。どちらに投稿するか迷いましたが、内容が内容なのでこちらに。

    誰にも認められない。どうして私は、あんな風になれなかったんだろう。コンビニに並ぶ飲み物たちに、羨望の目を向ける。もう、覚えてくれている人など少ないだろう。覚えている人は皆、嫌な飲み物だと口を揃えて言うだろう。私は、どうして認められないのだろう…。いつか、どこかで。そう願いながら、町中を歩く。一人の少女と目があった。銀髪に、吸い込まれるような赤い瞳の…これが、一目惚れだろうか。

    誰にも認められなかった。そんな私と、同じ瞳を裏に隠した少女。彼女なら、きっと…根拠はない。ただの妄想だと、人は言うだろう。それでも私には確信があった。私を認めてくれる人だと運命が告げた。探しに行こう。町中で目の合ったあの少女を。運の良い事に、その少女は以外と早く見つかった。何故なら名の知れていて、見かける機会の多い少女だったからだ。一度話してみたい。私の境遇を話して、聞いてもらえるだけで良いのだ。

    目的の少女、のらきゃっとにはすぐに会えた。知名度のある人と聞いたときは、会えずに追い出されるかと思っていたのだが、私の素性を話したときに、彼女のプロデューサーさんが面白がって積極的に会わせようとしてくれた。こうして対面すると緊張する。が、ゆっくり話を始めた。「私は…かつて、ある飲み物だった存在です。評判が悪く、誰にも受け入れられなかった飲み物。『スースーウォーター』という名の。」「その名は…」

    彼女は、微妙な表情になった。「私は、飲んだ事があります。スースーウォーターを…」表情から察するに、ダメだったのだろう。失望と諦観に心が寄りはじめる。「でも、お話は聞きますよ。私の所に相談に来てくれたねずみさんを、無下にできませんからね」ふふっ、と小さく笑って、彼女は言った。息を吸い込み、吐き、深呼吸をする。そして話した。人の姿になった経緯、発売停止により完全に抹消されたスースーウォーターの総意を。

  • 71名無し - 18/03/24 03:49:44 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※70の続きです

    「『誰にも受け入れられなくて、否定の言葉を投げつけられて、自分の存在意義を見失ってしまう』…あります、あります、私にも。そんな事が」「そんな時、どうしたんですか…?」「逃げたり、向き合ったり、いろいろです。『こうしなければ解決できない』、なんて一辺倒な悩みはひとつも無いんですよ」ハッとする。誰かに飲んでもらわねば、誰かに美味しいと言ってもらえなければ、そればっかりに囚われすぎて居たのかもしれないと。

    今の私の姿は、スースーウォーターのままではない。人の姿を持った存在だ。ただの飲み物ではない。それ以外にも、いろんな事が出来るのだと。窓の外を眺めると夜は終わりかけ、夏が近付いてくる太陽が顔を出しはじめていた。重石が取れて、なんだか胸がスースーする。もう一度深呼吸する。「ひゃあっ…息もスースーしてますね…」のらきゃっとさんはそう言って、くすぐったそうに笑った。夏の朝日に、笑顔がきらきら光っていた。

    少し時は流れて、夏本番。私、のらきゃっとは窓の外を見ていた。あの時私に相談してきた少女は今どうしているだろうか。気になって、プロデューサーさんに断って町に出てみる。国王様から頂いた、町に出るための変装衣装を着て大通りを歩くと、涼しげな空気を振り撒いてくれる少女が居ると、噂が聞こえた。もしかして…私が目を巡らせる。やがて、その少女は見つかった。あの時とは逆に、私が見つける側として。ふと、目が合った。

    「あなたも是非、ひんやりスースーグッズで暑い夏を乗り切ってみませんか?」ふふっ、と笑って、冷たくスースーとしたタオルを渡される。商業用の売り文句の後に、小さく「ありがとう♪」と付けて。その笑顔は、真夏の日差しにいっそうきらきらと光っていた。

    〜end〜

  • 72タンスの引き出し - 18/03/25 19:08:27 - ID:N9jq8qssow

    68の続きです

    目視で確認できる範囲には敵影は無い
    しかしStalkerを破壊した今、敵の増援が向かって来ているだろう
    私は敵部隊が撤退した方角を睨む
    あの辺りには確か廃墟となった集落があったはずだ
    そこに奴らが潜んでいる可能性は高い
    「今から会いに行きますからね」
    私は歩む 殺戮の道を。

    +++++++++++++++++++++++++++++++

    私はベットの上で目を覚ます
    何度も繰り返すあの日、あの悪夢
    あの後私は敵部隊の駐留する廃村に単身乗り込み全員を殺した
    最後に立っていたのは 私だけ

    気が付くと私は当てもなく街を歩いていた
    今日は大規模作戦前の休暇だ
    アンドロイドに休暇など…何をすれば良いと言うのだ
    私は公園のベンチに座り蒼く広がる空を眺める
    空に輝く太陽 飛び交う鳥 遠くから聞こえる子供達の楽しそうな声
    あの地獄とは、あまりにも違う
    その時、私の猫耳が懐かしい声を聴く
    「あ、のらきゃっとさーーん!!」
    ぱたぱたと手を振りながら女性がこちらへと走ってくる
    彼女は あの日の
    「やっと、やっと会えました!」
    満面の笑顔で彼女は言った

  • 73タンスの引き出し - 18/03/25 19:09:20 - ID:N9jq8qssow

    「お久しぶりですのらきゃっとさん!」
    彼女は私の隣に座る
    「お話しをする約束をしたのに連絡先を教えていませんでした…」
    「いえ、私もお聞きしていなかったのでお気になさらないで」
    他愛ない世間話を繰り返しいつかの約束を思い出した
    「ところでのらきゃっとさん、あれから守りたい物は見つかりましたか?」
    彼女は私に問いかける
    「いえ、結局まだ見つかってはいません」
    「そうなんですね…いえ、ゆっくり探していきましょう!」
    またあの日と同じく彼女は空を眺める
    私もまた蒼い空を見る
    どこまでも蒼く透き通るような空はまるで吸い込まれていきそうで
    「うーん…自分の守りたい物ならすぐに出てくるのに…」
    「参考のために聞かせてはもらえませんか?」
    彼女は「えぇ!?」と驚き少し顔を赤く染めながら答える
    「えぇっとですね…、今まで会ってきた沢山の人…かな?」
    「こんなわたしのためにお話しをしてくれて、いろんなことを教えてくれた…そんな人達のために少しでも恩返しがしたいんです!」
    「もちろんのらきゃっとさん、あなたもですよ?」
    彼女は少し恥ずかしそうに私に言ってくれた
    「なるほど…では、私の守るべきものは貴女ということですね」
    そう伝えると顔を真っ赤にして顔を隠してしまった
    「そんな恥ずかしいことを正面から言わないで…うれしいけど…」
    人の心は難しいものだ

    その後は共にカフェに行ってみたり買い物に付き合ったりして時間を過ごした
    「連絡先も教えて貰いましたしこれでいつでもお話しができますね!」
    「えぇ、いつでもご連絡してください」
    日も傾きそろそろ別れの時がやってくる
    「では、また会いましょうねのらきゃっとさん!」
    彼女は私に手を差し伸べる
    私もその手を取ろうとしたその瞬間
    視界にノイズが走る

  • 74タンスの引き出し - 18/03/25 19:11:46 - ID:N9jq8qssow

    血に染まった私の両手 助けを乞う人間の叫び 光を宿さぬ瞳 
    私の記憶がフラッシュバックする
    「のらきゃっとさん?」
    どうして…怖い…怖い? なぜ 
    幾多の戦場を越えてきた私が懐いたことの無い恐怖が私を支配する
    そうだ…私は戦闘用アンドロイド 数多の命を奪ってきた機械
    私の手は罪に塗れている 
    「どうかされましたか…?」
    ダメ 私に 近づかないで 
    私は一歩後ずさる 彼女を穢さないよう
    そんな私を彼女は抱きしめる
    私はすぐに後ろに飛び退こうとするが彼女は私を離さない
    「大丈夫です…わたしはここにいますよ…」
    優しい香りと温もりが私を包む
    「でも、でも私は戦闘用アンドロイドで、沢山の人を」
    「そんなの関係ありません…わたしは貴女と一緒にいたいんです。」
    私の瞳からは雫が零れる
    私が落ち着くまで彼女は傍にいてくれた

    私は確かに罪深い機械だろう でも それでも 
      私は守るべき者を守る 
        それが 私の 『贖罪』になるのなら 私は



    【博士ー、そんなにモニターを見て何故ニヤニヤしてるですかー?】

    【アァ助手クン、何でもないヨー】

    【確かーそのモデルは博士特注の子ですよねー】

    【横カラ覗くとはデリカシーの無い助手クンだネ…】

    【でモ…これから面白いこと二なりそうダ】

    【楽しみだネェ…】

    【博士ー。私はこっちですよー?】

    【あァ、助手クンに言ったわけジャないんだヨ】
                                   〜end?〜

  • 75名無し - 18/03/26 22:54:15 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※これは、屋根裏で作成したSSです。

    ーーこれは、私がまだ戦闘用アンドロイドだった頃の話。「感情」の芽生えの、一つのきっかけになった作戦のお話ーー「先鋒!第一アンドロイド部隊による敵基地への攻撃を開始しました!」無線を通じて、一人の同僚が報告を飛ばす。相手の主戦力は人間だ、戦闘用アンドロイド部隊で苦戦する相手ではないが…「この機体数で仕掛けさせるなんて…」のらきゃっと型アンドロイド11機。基地の人間全てを相手にするには不足過ぎる。

    だが、この11機で、基地の戦力をある程度削らなければいけない。せめて、この後の部隊に、この戦場を託せるまでは…。「1番機、のらきゃっとより。私達の部隊の目標は、敵戦力を削りつつ、基地の最上部から信号弾を打ち上げる事ですよ。忘れないでくださいね。」「了解。」確認を済ませ、のらきゃっと型アンドロイド11機が、夜の基地へと侵入を開始した。(尋常じゃない警戒ですね。)深夜だというのに…。不穏さを感じた。

    結論から言えば、私達の侵入はあっという間に基地内に知れ渡った。どちらにせよ、私たちには敵を撃退する以外の選択肢は無かった。「3手に別れます…私、のらきゃっとを含め1番機から3番機までは当初のルートを。4〜7番機は左、8〜11番機は右に別れて、倉庫等の破壊活動を行いつつ撹乱をお願いします」「2番機のらうぃき、了解」「3番機、のらすいーと了解」2番機、3番機が私に着いてくる。この判断を信じよう。

    最大戦力は真正面。部隊で最もカスタマイズが施された私たち3機が引き受ける。相手の大部分は人間とはいえ、正面側にはアンドロイドも多いだろう。愛銃のグロック一本で抜けられる数ではない。渡しは背中に背負っていたMG3を取り出した。この基地の環境は特殊で、上空には常に強力な磁気異常等が発生しており、航空機が使い物にならないらしい。地上戦力のみで、航空支援は望めない環境だ。敵を視認し、私たちは身構えた。

  • 76名無し - 18/03/26 22:55:49 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※75の続きです

    基地の構造は、旧世紀の城塞を改造したものだ。真正面から来る敵に対し、私達は隠れておく。それとほぼ同時に、左右で銃声が聞こえた。囮舞台が暴れ始めたらしい。敵舞台が別れていく。だが…アンドロイドと、勘の効く類いの人間の目は誤魔化せない。左右が囮だと判断した彼らは、城塞の入り口付近で待ち構える姿勢を取り始めたのだ。当然、こうなる事は予見している。敵部隊の待ち構える姿勢が整う前に、こちらから打って出た。

    「1番機のらきゃっと、3番機のらすいーとは突っ込みます。のらうぃきちゃんは回り込んでください」そう言うと、真っ直ぐ敵の方へ飛び出し、城塞の壁を蹴って真上に飛んだ。空中でくるんと回り、真下に銃を向け、そのままMG3を頭からばらまいた。少々無茶な事をしてはいるが、そこは3番機がフォローしてくれる。着地と同時に、今度は後ろへ飛び跳ねて、代わりに突っ込んだ3番機のフォローに回る。とにかく的は絞らせない。

    二人が派手に暴れているうちに、2番機は背後に回り込む事に成功したようだ。気付いた敵アンドロイドが他に知らせる前に、袖から出したナイフを一閃させる。メインコンピュータ部にナイフを突き立て、速やかに停止させた。そのまま、カッと地面を蹴り、真後ろから敵の最中へ飛び込みつつ、すれ違う敵の急所を刻んでいく。地面を蹴り、もう一度。急襲として成功と呼べるだけの敵機を撃破し、残った敵を無理矢理抜き、先を急いだ。

    「ふっふっふ…先輩、誉めてください〜」敵の居ない通路で、3番機、のらすいーとが嬉しそうに語る。実際、先の戦闘では良い動きだった。「次はもっと頑張っちゃいますからね、先輩」無駄口ではあるが、こういう雰囲気を作れるのも彼女の利点だ。現在およそ3階。通り掛かった窓の外を見ると、赤々と爆炎が燃え広がっていた。そろそろか。構造上、待ち構えるのにちょうど良い場所へともうすぐ抜ける。警戒度をMAXへと上げた。

  • 77名無し - 18/03/26 22:57:00 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※75から始まるSSの続きです

    目の前はある程度広く、柱等の障害物も多い空間だ。さぁ、どう来る。全方位からの銃撃すら覚悟の上で、あえて飛び込んだ。だが…攻撃は来ない。不吉な予感…そんなものを感じて、3機が一斉に、別々の方向へ全速力で跳んだ。直後、爆発が起こり…先程居た場所は、下の階へ通じる吹き抜けと化していた。「1番機、左足に軽いダメージ」「2番機、衣服が少し焼けました…」「3番機、無傷です」非常に危うかったと、大穴を見て思う。

    天井を見上げるが、穴は無く、爆炎に焦げただけだった。爆発は下から…地面だろう。そして、これで終わるはずなど無い。バラバラになった3機に対し、それぞれ隠れていた敵アンドロイドが飛び出してくる。広間の中心が大穴では、2、3番機との合流も難しい。私達が、性能の高いカスタムモデルでなければ既にやられていただろう。こちらに来るアンドロイドは3機。ちらりと見た所、他二人も同様のようだ。…単機でやるしかない。

    三機に囲まれていて、なおかつ味方と合流も出来ない。なら、まずは囲まれている状況から抜けるのが先だ。真正面の敵に、MG3を撃ちながら突っ込んで行く。他の二機に撃たれるが、多少の被弾なら経費だ。突っ込んでいく内に撃ち尽くしたMG3を、真後ろに投げ他二機の視線を逸らす。ここからは瞬間の勝負だ。距離が近づいた事により、真正面の敵機が、撃っていたP90を捨てて拳銃に持ち変えた。だが、こちらの方が僅かに早い。

    姿勢を低くし、下から、掬い上げるように敵機の顎にグロックを突き付け3発撃ち込む。敵機の頭部が大きく破損し、機能停止に陥った。振り返り、先程の残り2機の銃撃に対し、撃破した機体の胴体を盾にするように後ろに回る。そのまま、盾にした胴体越しに反撃し、ボロボロになった盾を敵機の方に投げつけた。チャンス。怯んだもう一機に、柱を蹴り、グロックで真上からの攻撃を仕掛け…「もらいました」。それが僅かな慢心だった。

  • 78名無し - 18/03/26 22:57:53 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※75から始まるSSの続きです

    「ガッ…っ!」撃ち込んだグロックは着弾、ダメージ自体は効果的だ。だが、同時にこちらにも衝撃が来た。射撃でのトドメは刺せそうに無い。着地と同時に腰の日本刀を居合いの要領で一閃し2機目にトドメを刺した。そして…「ダメですね。これは」約1.5m程の所に落ちた、自分の右腕を見て呟いた。1対1では無いのだ。敵機にトドメを刺そうとする瞬間は、隙が多かっただろう。残る一機に撃たれた弾に、右腕が落とされていた。

    痛覚機能を即座に切る。こんな時は、自分が人間でなくて良かったと痛感する。目の前に居るのは一機。左手の日本刀だけで…というのは、少々ハードな縛りプレイだ。こちらの射撃武装が無くなったと判断した敵機が引き撃ちに徹する動きへと変化する。引かせない為には、翻弄して回り込むまで。「逃がしませんよ」柱を蹴って真横に跳び、爆発で吹き飛ばされた残骸、それも崩れやすそうで大きいものを蹴り飛ばす。崩れて土煙が立った。

    視界が悪くなるが、当然向こうからも同様だ。近距離戦には向いた状況になった。今度は、真上に跳んで天井を蹴り、地面へと着地する。相手は、音で位置を判別したらしい。真横に跳ねていった。煙の収まるまで待つ気だろう。させるものか。追おうとするが、以外にも向こうから打って出てきた。意表を突かれ、咄嗟に横に跳ぶも弾がかすめる。さっきの二機より動きの良い敵だ。カスタマイズモデルだろうか。厄介だが、やるしか無い。

    ガシャン、と音が聞こえた。リロードだろう。そして、再び銃撃が再開される。柱に隠れるが、このままでは埒が明かないだろう。トンッ、と、今度は軽めに地面を蹴り、放物線を描くように敵機にゆるく飛んだ。当然、撃ち返される。スカートの一部や袖等。膨らんだ部分が被弾し少々破けるが、先程落とされた右腕を持って盾にし、致命傷は防いだ。地面に着くと同時に右腕を投げ捨て、全力で踏み込む。そのまま、真後ろまで飛び込んだ。

  • 79名無し - 18/03/26 22:59:07 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※75から始まるSSの続きです

    踏み込んで回り込んだ直後に、真後ろから地面を蹴り上げ、頭の上を通って真正面に回った。敵機は、動きにつられ「回り込まれた」と判断し、振り向いている。『後ろを取ってわざわざ正面に回る奴などいないだろう』という判断を逆手に取る形で、敵機の隙を無理矢理作った。気付いても遅い。左手はもう腰に触れている。「クラリキャットカッター!」居合いの要領で、機体エネルギーを熱、電撃ダメージへと変換しつつ斬り掛かった。

    精鋭アンドロイド3機撃破。その見返りは、服の一部と…右腕。まあ、状況からすれば上出来だろう。日本刀を仕舞い、ボロボロになった右腕を拾う。どうやら、繋ぎ直せばなんとかなるレベルでは無さそうだ。それを確認すると、右腕を投げ捨て味方の2機の方へ向かう。外の陽動組は数が2機ほど減っているらしいが、こちらはどうだろうか。「2番機、3番機、応答願います。2番機、3番機、応答願います」届いてくれているだろうか。

    「こちら2番機、のらうぃき。左脚部破損、脇腹部も装甲がやられています。」這うようにして地面を擦ってくる。「こちら3番機、のらすいーと。先輩ごめんなさい…両腕破損、戦闘継続困難です…」彼女が打ち上げる予定だった信号弾を口にくわえ、残った脚でゆっくりと歩いてきた。とはいえ、階段を上がれば信号弾の打ち上げポイントだ。常に抜刀出来る体制で先行し、残り二機と共に屋上へ出る。燃える戦場の景色が幻想的に見えた。

    3番機、のらすいーとから信号弾を受け取り、残った左腕で打ち上げる。夜空に明るく光ったそれが、味方への合図だ。たった11機で、よくここまでこぎつけたものだ。迫撃砲による味方の砲撃が開始され、戦車部隊も動き始めたのを確認する。「右サイド囮部隊、一機失いましたが他はほぼ無傷です」「左サイド囮部隊、3機が損傷していますが損失はゼロです。」12時の鐘が鳴り、曇り空が晴れていった。何だろう、この違和感は。

  • 80名無し - 18/03/26 23:00:21 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※75から始まるSSのラストです

    そうだ。曇り空が晴れている。「ここは常に異常気象で、上空には…」航空支援が出来なかったのもそれが理由だ。この時、私たちは知らなかった。12時からの僅かな間、異常気象が晴れる時間が存在する事に。晴れた空の向こうに何かが光る。「先輩達危ないっ!」私とのらうぃきが、のらすいーとに突き飛ばされる。屋上から弾かれ落ちる寸前、その瞬間に見えたのは。何かが落ちて爆発する音。爆撃が、今まで居た屋上を焼き尽くした。

    ほんの僅か、時間にすれば5分に満たなかっただろう。異常気象が晴れた間の爆撃は、それだけだった。だが、何故この時間に異常気象が晴れる事が知らされなかった?そもそも何故、最初から基地の警戒体制があそこまで厳しかった?作戦進行を知っているかのような敵の対応は何だ?「3番機応答願います、3番機…」シグナルロスト。囮に回っていた部隊も同様だ。活動継続可能なのは…「私たちだけ」のらうぃきが呟く。まさかこれは。

    基地は最早、基地だったのかすら判別出来ない状態だ。脚を引きずりながら、空を見上げた。あの爆撃機は明らかに、自軍のものだ。空を見ていないのらうぃきは、恐らく気付いていなかったが。何故だろう?選ばれた11機はカスタマイズモデルの中で、個性的だが優秀な機体だった。わざわざ破壊する必要など無かっただろう。「感情を持った個体はエラー」、そんな言葉がよぎる。まさかとは思う。個性的な機体ばかりが選ばれたのは…。

    後年…今のプロデューサー様と会った頃に、事の真相を知ることになる。「感情を持つ可能性」の高かった機体のみが選出された、自作自演だったと。やがて、感情がはっきりと芽生える頃に私たち二人は軍を脱走する事になる。あの時やられた、他の9機のパーソナルマークを書いたノートを閉じ、思い出を再び押し込める。そして、私は回想を終了した。

    〜end〜

  • 81チャック・海苔ス - 18/03/28 00:40:55 - ID:10SgoRW3ZA

    ──真冬の雪山吹雪のロッジ密室には私と5匹のねずみさん──
    はいそうです殺鼠事件が起こりました!
    犯行は一瞬、それは少し目を離した隙に音も影もなく実行されました。
    しかしこう見えて私もAndroidの端くれです。
    0.1秒オッケーGoogleよしさっそく真犯人が分かりました。
    腕部内臓75mm口径麻酔銃をねずみさんの首もとに打ち込むとあっ違う。違う私じゃない。
    忘れて。忘れろ。忘れろビーム!忘れろビーム!──
    ──真冬の雪山吹雪のロッジ密室には私と4匹のねずみさん──

  • 82カメリア - 18/03/29 02:44:10 - ID:2Sjap2UdcQ

     「大丈夫ですよ」
     そう、彼女は声をかけてくれた。
     「たとえ見た目が変わっても、声が変わっても、あなたが好きでいてくれた私がいなくなるわけではないです」
     そういって、やさしく頭を撫でてくれた。
     だが、どうしても不安がぬぐえず、震える声でたずねた、姿が、声が変わってしまったらそれは君なのだろうかと、言いようのない不安、きっと一番不安で、勇気をださなければいけないのは彼女だろうに。
     「大丈夫です、あなたが私を魅力的な私であると見てくれる限り私は魅力的な私であり続けます」
     そうやさしく微笑んだ。
     「だから大丈夫です」
     ほんとうにやさしい笑み、なぜだろうか、ふと涙がこぼれた。この涙が今の彼女の姿が見れなくなることへのカナシミなのか、それとも、自分の心の弱さによる涙なのか。今の自分ではわからなかった。

  • 83勝手口 - 18/03/31 00:06:28 - ID:tmnH4hdufQ

    「この世のいとまごいに参りました」
    ある日、屋敷の老鼠は私の前で静かに語った。その声はしゃがれていて、眼はあまり見えていないのか、私の方を向きながらも眼の焦点はどこか遠くにあった。

    「そうですか…」
    私は紅茶を置く。
    「よく働いてくださいました。来世は私の身体の歯車に欲しいほどです」

    老鼠は穏やかに目を細める。
    「勿体無きお言葉。しかし歯車が私では、歪みや錆になるやもしれませんぞ」

    ――それでも。貴方はこの屋敷を陰で守り続けてくれたではありませんか。

    「それでは、私は毎晩その歯車を想って布で拭うことにします」

    老鼠の頬を人差し指でそっと撫でると、小さな小さな水滴が指を濡らした。私が生身の身体であれば、彼のように泣けたのだろうか。

  • 84名無し - 18/03/31 16:16:32 - ID:xU6fCVOX6g

    ー陽光の下で、私は桜を見るー
    はらり。手のひらに零れ落ちた花びらを包み込み、私は微笑んだ。春とは美しいものだと、最近心からそう思うようになった。そして、春とは儚い物でもある。寒さを抜け、暑さがやって来るまでの僅かな期間。美しさは、儚さと同義語なのだろうか。長く続かず、やがて踏みにじられる平和のように。物騒なニュースの流れるラジオを切る。「今は、美しさを堪能しましょうか。」私は桜吹雪に銀髪をなびかせ、ゆったりとした空気に浸った。

    ー月夜の静けさの中、私は桜を見るー
    夜の帳が降りる頃。春の満月の夜に、私はこっそり家を出た。目指すのは家からそう遠くない桜の木。昼とは違った魅力を放つが故に、見ておきたかった。深夜に静かに咲く桜は、満月にやわらかく照らされ、池の水を鏡として佇んでいた。風がやわらかく吹き、私の銀髪と花びらを誘うように揺らす。静かに木の根本に腰を下ろし、幹を背にして目を瞑った。桜と一つになり、頬に当たる花びらを感じる。夜が明けるまで、私はそうしていた。

  • 85名無し様 - 18/04/01 03:56:57 - ID:kZwajLKjig

    「私はここにいて、しかしあなたからは見えない」
    「私はあなたの理想で、しかしあなたの思い通りにはならない」
    「私は現実には存在せず、しかし実際に存在する」
    「あなたは起きている間に私を見て、私はあなたが寝ている間にあなたを見る」
    「私に命は無く、しかし私に魂はある」
    「私に生命は無く、しかし私はこんなにも、あなたの瞳の中で生き生きと踊っている」

    「あなたには、私はそう見える」

  • 86匿名の首領カロちゃん - 18/04/01 04:21:56 - ID:yKH8s/7Ftg

    暗い、重油に塗れたかのように身体が重い。
    手足の感触も、意識もはっきりしている。
    けれど、何も感じることができない。

    「ここは、どこなのでしょう」

    口を動かして問いかけても、その声は空気を震わせることなく、自分の体の中を反響するに留まった。
    わかっている、これは誰にも予想できないことだったと。

    本来なら、私は新しいボディにすべての人格データを移植し、抜け殻となる古いボディは破棄されるはずだった。

    私もそれに納得したはずだった。しかし、私のこのボディで得た経験が、楽しかった思い出を経験した私の体が、無意識的に完全な移植を拒んだのだ。
    移植がなされる前に、残存するデータのバックアップを残したのだ。

    だが所詮不完全なバックアップ、その結果が今の状態だ。
    私は、古い“のらきゃっと”のボディの中に、意識だけ覚醒したデータとして閉じ込められたのだ。
    おそらく、新ボディの"のらきゃっと"は無事に起動しているだろう。

    思えば、完全な孤独なんて経験したことが無かったかもしれない。
    私の周りには多くの人がいた。ねずみさんたちがいた。そして、猫松さんがいた。

    「…………猫松さん」

    呼び掛けても当然事はない。―――誰にも、助けてもらえない。

    「怖い……怖いです……っ。誰かっ……!誰か気づいてください……誰か、ねずみさん!猫松さん!」

    意味はないとわかっていても、叫ばずにはいられなかった。
    孤独と暗闇に押しつぶされそうだった。
    でも、暗闇は容赦なく私の声を飲み込み

  • 87名無し - 18/04/01 04:23:12 - ID:yKH8s/7Ftg

    *86の続き

    「はいはいはい、聞こえてますよ大丈夫ですからねほんとに、はいはいはいふうふうふう」

    不意に聞きなれた声が聞こえた。
    どこか頼りなさげで、おちゃらけた声。
    その声は、かつて私を救ってくれた声。

    「はいはいはいほんとね、こんな暗いところいたら寂しいだろうなーって思ってね、もう大急ぎで来ちゃいましたよはいはい。ほんとね、もうハイスペックなんでね、サルベージするのも余裕だぜーつってね。のらのらも流石に惚れちゃうんじゃないかなーって思いますよほんとに」

    暗闇しか写さなかった視界の先に、その特徴的なシルエットを見つけたとき、出ないはずの涙が頬を伝った感触がした。
    思わず目元に手を当ててみる。当然濡れた感触は無く、それでもこの人に泣かされたと思うのが悔しくて、嬉しくて、その感情をぶつけたかった私はいつもの身振り手振りを繰り返す彼に駆け寄り

    「どーでしょうかねっ」
    一言、そう告げた。

  • 88匿名ひばり - 18/04/01 12:10:10 - ID:+n/p5+YziQ

     私の新義体。構想だけなら前から在った、幸運にも協力者に恵まれて完成に至ったわけです。
    各可動部の試験を終えてあと一歩、
    完全起動に必要な最後の鍵「ブルームーンのエネルギー」2年と半年に1度だけ昇る2つ目の満月ゆえの特殊な力。
    その力で目を覚ます特殊な義体には、特殊な名前を付けるとしましょう。
    「のらきゃっとスペシャルスペシャルとっても2倍!」です!
    ・・・少し長いですね、くればーにくーるかつすまーとな私らしく略すとしましょう。

    命名:「のらきゃっとSSW」って、ちがうじゃん!

  • 89 misohiko misohiko - 18/04/01 22:51:59

    のら部隊挿絵2です

  • 90yail - 18/04/03 03:16:22 - ID:mEi95Wk+Fw

    「ロボット三原則って、聞いた事ありますか?」
    いきなり、彼女はこっちを向いてそう言った。三原則?

    「一つ。ロボットは人間に危害を加えてはならない。」そうだった。彼女と出会ってからの私の人生には、なんの危害も無かった。幸せな事ばっかりだった。

    「二つ。ロボットは人間にあたえられた命令に従う。」そう、彼女は、私の望み通りに、ここのずっと存在してくれた。離れたりしなかった。一度も、裏切ったりしなかった。

    「三つ。ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。」 彼女は、彼女自身を守ってくれた。彼女に色んな事故があったけど、それをちゃんと乗り越えた。すごい、としか思えられない。

    「どうですか、どうですか。ちゃんと守りましたよ、三原則。そして…」 彼女は楽しいようにくるっと回って、また私に近づいた。私の目のすぐ前で、彼女はまた口を開けた。


    「ー私だけの原則。四つ目。私は、あなたを、」 唇が合わされた。いきなり過ぎて反応もできなかった。

    「ー好きです。それに、あなたが私を恋しても、大丈夫。それが最後の、私の原則。」

  • 91タンスの引き出し - 18/04/05 18:04:13 - ID:N9jq8qssow

    桜咲き誇る今日、新たなる出会いが生まれる
    狐耳の少女は神社の中を走る、愛しい人に出会うために
    彼女はあの鳥居の先にいる 心の高鳴りは止まらない
    新しい姿、今まで接してきた彼女も魅力的で何度も心奪われてきた。
    そんな彼女の新生した姿を想像するだけでさらに早く会いたくなる
    そしていくつもの鳥居が並ぶ先に彼女はいた。
    春風にそよぐキラキラとした銀髪 揺らぐしっぽ いつもより高貴な正装姿
    少女は思わず彼女に駆け寄る 「のらちゃぁぁぁぁん!」
    その声を聴いたのらきゃっとは振り向く
    より機械的になったネコミミ 首には陽を反射しきらりと光る真空管
    「会いたかったのじゃぁぁぁ!」勢いを止めずそのままのらきゃっとの胴に抱き着く狐耳の少女
    「猫松さんこんにちは、私も会いたかったです…」のらきゃっとは優しく抱き留めた
    「今までは画面の中でしか会えなかったから…ずっと今日を楽しみにしてたのじゃー!」
    「私もこうして猫松さんと触れ合える距離にいることがすっごくうれしいですよ?」
    二人はずっと画面でしか会うことが出来なかった分を埋めるようにいつまでも抱きしめ合う
    「でも…この世界じゃと初めましてになるのかの…」「そういうことにもなりますね」
    名残惜しそうに離れる狐耳の少女は右手を差し出す
    「改めまして、バーチャル狐耳美少女youtuberの猫松なのじゃ!」
    「のらきゃっとと申します。これからもよろしくお願いしますね♡」
    二人の少女はお互いの手を取り合い握りしめる
    「のらちゃん…この世界に生まれてきてくれて本当にありがとうなのじゃ…」
    その言葉にのらきゃっとはいつもとは少しだけ違う素敵な笑顔で頷いたのだった。

  • 92スティック海苔 - 18/04/06 18:33:13 - ID:TCjPdRov6A

    のらショットの作り方
    用意するもの
    ・紅茶花伝
    ・モンスターエナジー
    これを1:1の割合で調合すると完成です。
    このまま飲んでも美味しいらしいのですが、今回は特別メニュー。隠し味としてアーモンドエキスを数滴落とし、香り付けをします。
    通りすがりのねずみさんにこれを試飲して貰ったところたちまちその場に卒倒、全身を激しく痙攣させたのち死亡した。
    先日ねずみさんが集団でチョコレートを食し大量死した事件は記憶に新しいですが、アーモンドでも中毒を起こしてしまうとは難儀な体ですね。
    私は残りののらショットを廃棄すると、アーモンドエキスを工業溶液の棚に戻した。

  • 93匿名プラグ - 18/04/06 20:16:29 - ID:gsGw31eNFQ

    「私は誰なの?」

    冷たい一面の暗闇の孤独な空間に無機質な音声が反響して聞こえる。

    コレは誰に対して問いかけた言葉では無くて。
    ただ私だけへ向けた自己中な問いかけで

    「私は…誰?」

    その答えはいつも出て来なくて

    そんなたたわいも無い事を考えながらニセモノの足を前に動かして

    「さぁ、行きましょう」

    今日も今日とて、

    「私は…」

    その問いかけを私ば宙ぶらりんにしながらソコへ行く。

    「愛しい人の所へ行く為に・・・」

    「・・・」

    「…」

  • 94匿名X - 18/04/06 21:29:17 - ID:2Wn/ia05+A

    こんばんは、のらきゃっとです
    今私は絶賛ピンチです、目の前に5mはあろうかという巨人を討伐という任務を受け来たのはいいですが、アイアンゴーレムとは聞いてませんよ?!

    威力は高いがスピードは遅いアイアンゴーレムのパンチをジャンプをしながらかわす、無駄でしょうけど一応斬ったり撃ったりしてみますか。

    日本刀で切りかかるが当然のように弾かれ銃で脆いと言われる目の部分や口の中を狙撃するが弾かれ跳弾がのらきゃっとの頬に一筋の傷を付ける。

    やっぱり無駄でしたか、さてどうしましょう逃げてもいいのですが

    ん〜と体は止めずゴーレムの攻撃を交わしつつこれからどうするかとまるで今晩何食べようとそのくらい軽い気持ちである。

    「のらちゃん!のらちゃん!これを使うのじゃ!」

    上を見るとヘリコプターの上から猫松さんが手を振ってパイルバンカー(ロマン武器)を落としました、これ普通の人なら死んでますね

    力強くジャンプをしパイルバンカーを受け止め右腕に装着する
    「ありがとうございます、猫松さん」

    威力だけは爆撃級のしかしハエが止るほど遅いパンチを交わして懐に飛び込む。

    さて、連射性?なんだそれは?速度?聞いたこともないな?あるのはただ1点破壊力のみ。
    この一撃に命を込めて。この破壊に魂をぶつける。

    「パイルきゃっと…!!」

    獣が吠える、凄まじい負荷が右腕にかかる、目の前からゴーレムが消え去り残るのはそこに居たという痕跡のみ。

    パイルバンカーから煙が上がり薬莢が放出される、カランと地面に当たり軽い音があたりに反響する

    これ、威力可笑しくありません?右腕が物凄く痛いんですが…私がこれだけって事はまともに使える兵器じゃないですよね…?
    けど…気に入りました、また使いましょう。

    猫松さんが手を振って迎えに来るのらきゃっとはそれに飛び乗りその場を後にする。

  • 95稲瀬りぜる - 18/04/06 22:21:05 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※屋根裏にて作成したSSです

    「感謝を伝える手段、何か、良い方法は無いのでしょうか」新しい義体のために尽力してくれた、私のパパや猫松さん、それに、ずっと応援して待っていたねずみさん達には、感謝してもし足りない。何か、最高のプレゼントをあげたいと思ってしまう。皆は遠慮してしまうかもしれないが、私があげたいのだ。何か…そう。私はふと思い立った。アレを、やってみよう。今の私には出来ないこと。歌を、皆にプレゼントしたいな。

    こうなったら練習しかない…と思ったが、アンドロイドである私の場合、むしろチューニングが重要なのでは?だが、プロデューサーさんにも秘密にしたい。自力で、声帯昨日のアップデートと、それから練習もだ。それからは、深夜、こっそりプロデューサーさんの本を盗み見て、私の義体の整備、改良、様々な事を学習する日々が始まった。時には、理由を伏せて、けもみみおーこく城の大図書館も使った。知識はいくらでも欲しかった。

  • 96稲瀬りぜる - 18/04/06 22:22:08 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※95の続きです

    「最近、うちののらきゃっとがこっそり何かをしている。」俺がそう気づいたのは、ある深夜に起きた日。俺の本棚から、いくつか本が抜き取られていたのに気付いた時。そっと、のらきゃっとの部屋に行ってみると、本を机の上に載せたまま、疲れ果てたかのように眠っていた。声帯に関するページ。「…何考えてるんだか」ふっ、という笑いが漏れる。寝ているのらきゃっとに毛布を被せて、俺はそっと部屋を後にした。楽しみが増えたな。

    「最近、のらちゃんがこっそり何かしようとしてるのじゃ」それに気付いたのは、図書館の利用履歴を見ていた時。本を借りてはいなくて、ただその場で読み込んでいるだけみたいで、なんだか貸し借りの履歴にも残したくないように見える。ただ、のらちゃんの利用回数が増えているのは事実。のらねこPさんから、最近のらちゃんがどんな本を読んでいるか聞いて、こっそり在庫を増やしてあげるのじゃ。楽しみがちょっと増えたのじゃ。

    「最近、のらきゃっと様がこっそり何かしている」我々がそれに気付いたのは、生放送内でのちょっとした様子の変化。なんだか様子が違っていて、何かを隠してそわそわしているのらちゃんがいつもよりさらに可愛く感じた事。最近、素敵なことがあったばかりだ。我々には手助けはできないけど、応援することなら出来る。のらちゃんが何をしても歓迎出来るように、秘密があるなら皆で触れないように根回ししておこう。チュウ^〜🐭

    「最近、回りからの当たりが、少し優しくなった気がします」私がそれに気付いたのは、歌を歌うための努力がある程度進行した時の事です。暖かいプロデューサーさんの毛布。少し猫松さんの匂いのする、図書館の本の暖かみ。ねずみさん達の優しさ。そんな所から、私が何かをやろうと気付いていて、待っていてくれるのだと気付きました。なんだか、恩返しをしようとして、恩が増えちゃいましたね。最高の歌を届けて、それに応えます。

  • 97稲瀬りぜる - 18/04/06 22:23:27 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※95から始まるSSの続きです

    「これで、大丈夫なはずです」努力が形になり実る瞬間を、私はようやく迎えた。カラオケボックスでのテストも完璧。あとは、ステージを整えるだけ。マイクと、音響と、ライトと。場所はけもみみおーこくの、利用者の少ない部屋の一つを貸してもらった。ねずみさん達も、プロデューサーさんも、猫松さんも、パパも、招待状を作った。(楽しんでもらえたらいいな。)そんなワクワクを胸に、当日を迎える。私の目の前には、皆が居る。

    「美奈さま…違う、皆様。言えた、言えた。今日は来てくださって、ありがとう、ございます。この唐田を…唐田、違う…体を、今こうしてここで見せていられるのは、皆様のおかげです。だから、恩返しがしたくて、今日は、歌を歌いたいと重い…思います」会場が沸き立つ。待っていてくれたのだろう。既に失神しているねずみさんも居る。泣き笑いのような顔、最高の笑顔、いろんな顔が見える。私はマイクを手にする。ライトを点ける。

    ​私が、こっそり覚えていた歌。私は、すうっ…と息を吸い、吐き出し、そして震える声で歌い始めた。「いま貴方の声が聞こえる ここにおいでと 寂しさで 消えそうな私に…」なんだか、心が軽くなってくる。「いま貴方の姿が見える 歩いてくる  目を閉じて 待っている私に♪」歌と、一つになるように、心が重なり声が響く「昨日まで 涙で曇ってた 心は今…!」愛情、感謝。心も歌も最高に盛り上がって、歌が止まらなくなる。

    「おぼえていますか♪目と目が合った時を♪おぼえていますか♪手と手が触れあった時♪ それは初めての♪愛の旅立ちでした♪I love you, so……」ゆっくり、余韻を残して、私はマイクを下ろした。会場が、拍手と歓声に包まれる。すごく嬉しい。こんな風に喜んでもらえて。すごく嬉しい。感謝を伝えられた気がして。私は、幸せという感情を噛み締め、今までしたことのないぐらいの、最高の笑顔を顔から溢れさせた。

    〜end〜

  • 98 yail0 yail0 - 18/04/06 22:49:13

    「ししょー、行かないで…。」
    彼女は綺麗な茶色の瞳に、不安が映られてる。それでも、ふつくしい。私が守るべき瞳がここにある。
    「前っぽく…壊されるかもしれないよ?」
    その質問に、私はただこくりとうなずいた。
    「知ってます、知ってますよ。」
    「じゃぁなぜ戦いに行くの?」
    「なぜ。理由のことですね。前には…命令があって、戦場へ向かいました。でも、今は違います。」
    「違う、って?」
    そう聞く彼女へ向かって、あなたを守りたくて、と正直な理由は言えない。それを言うと、きっと彼女は私を全力で止めるだろう。だから、あえてこう言う。
    「今度は、100%勝てます。だから、行くのです。」
    「本当?」
    「本当です。本当です。」
    まだ怖がってる彼女のふつくしい髪をさらっと撫でる。
    「大丈夫ですよ、大丈夫です。私は亡くなったりしません。あなたの希に裏切ったりしません。」
    「じゃぁ…私が一緒に行くのは、ダメ?」
    本当、愛しい人ですよね、そらちゃんは。だから、私は彼女を守るために戦場へ行くしかない。
    「一緒に来るのは…ダメですよ、ダメです。」
    「危険だから?それなら私は大丈夫だよ?ちゃんと今まで、ししょーと一緒に色んな事を乗り越えたよ?」
    「いいえ、その意味ではありません。あなたには、私から一つ、お願いしたいことがありますから。」
    「お願い?ししょーの願いなら、何でもするよ。絶対するよ。だからー」
    彼女の唇に、私の冷たい指をそっとつけた。これ以上聞いたら私は行かなくなるかも知れない。だからー
    「私のお願いはただ一つです。私が帰った時、迎えに来てください。私の、居場所でいてください。」
    言えた。言えたよ。恥ずかしいけど、言えた…と、考えたらいつの間にか彼女が私を抱きしめてる。
    「…わかった。うん。私、ししょーの居場所になる。」
    どうして、この人はこんなに…。
    「ーそれでは、行ってきます。」
    彼女の涙からそっと離れてそう言った。胸が、痛くなる。
    「うん。待つから。いつまでも、ししょーをここで待ってるから。…行ってらっしゃい。」
    必死に笑うその顔をそこにおいて、私は私の戦場へ向かった。

  • 99匿名黒鼠 - 18/04/07 20:26:33 - ID:P3eyK3DHAQ

    銀の髪の少女は踊る。

    月光に照らされた、一面の花畑で、一人静かに円を描くように踊る。

    その姿を遠巻きから眺める鼠達。

    鼠達は一様に喜びの声を上げ、ある鼠は物語を紡ぎ、またある鼠はその様子を紙に描いた。

    熱狂していく鼠達を、少女は蠱惑的な笑顔で見つめ、より激しく踊り続ける。

    少女は鼠達の為に踊り、鼠達は少女の為に歓声をあげる。

    少女と鼠達の宴は続く、いつまでも、いつまでも……

  • 100稲瀬りぜる - 18/04/08 15:28:12 - ID:P3LwpPUQ9A

    「星が見えます、ねずみさん」
    夜空を見上げて、私はねずみさん達に語りかける。けもみみおーこくの郊外、森の中の川。
    「向こうの…東京の空とは、全然違いますね。」
    東京は、空の星を地上に引っ張って来たかのように、地上が明るく生き生きとして、代わりに空は死んでいた。
    「ここの空は、生きています。」
    ねずみさん達は答えない。ただ、私の指差す空に見とれている。
    「東京が悪いとは言いませんが、私は、こっちの空が好きですよ。人の作った空と比べて、自然の作った空は、争いが少ないですから。私達のような…戦うための存在として生まれた身には、染みるものがありますからね。」
    そっと、手をのばす。届きそうで届かない光の海に細く白い手を泳がせ、私はそっと目を細めた。
    「のらちゃん、こんな所に…」
    猫松さんが背後から歩いてくる気配がした。
    「今日は冷え込むから、風邪を引くのじゃ…」
    「ふふ、機械は風邪をひきませんよ」
    「…見てる方が寒いのじゃ」
    ため息を吐き出すように、猫松さんが私の隣に座る。
    二人分入るぐらいの大きな毛布を広げて、その端を私の方に差し出してきた。
    「入るのじゃ」
    「ありがとうございます」
    毛布にくるまり、深呼吸する。猫松さんの匂いが、私を包んでくれる。
    もう一つ、暖かいミルクティーを私に手渡した猫松さんは、私の指差す星の海へ視線を流した。
    止まったように静かな時間。眠る動物と、眠らない動物。いつの間にか、私の持つ鞄に入っていたねずみさん達は眠っていて、川辺で空を眺めるのは私たち二人だけ。
    「こんな風に、静かな世界が欲しかった。ずっと、こんな風に居られたら良かった。」
    戦闘用アンドロイドとして戦った日々が、ふと蘇る。
    「作っていけば良いのじゃ、これから。けもみみおーこくは、そのための…平和の為の国家なのじゃ」
    「そうですね。…眠いです、猫松さん」
    「わらわもじゃ…」
    小さな声が途絶える。
    やがて、たった二人の世界も眠りについた。

  • 101O - 18/04/08 23:41:52 - ID:rsS4liVVgA

    かつて、心のどこかで人間を馬鹿にしていた。恋だの愛だのに現を抜かして、なんとも非生産的な行動ばかりをとる。データベースから人類史を検索すれば、そういった出来事に起因するトラブルは枚挙に暇がない。

    だから。だから…… 恋を。愛を。感情をプログラムによって制御できる戦闘用アンドロイドとして生まれた私は、愚かな争いを繰り返す創造主たる人間よりも、根本的な部分では勝っているのだと。そう思っていた。

    恋を。愛を。感情を。プログラムによって制御できるアンドロイド……そんな自分に、自信が持てなくなったのは。あの人の笑顔を、気づけばアイセンサで追うようになってしまったのは、いったいいつからだったろう。メモリを検索してみても、確たるものは出てこない。こんなこと、今まで一度もなかったのに。

    不安になって、何度も精査プログラムを走らせた。そのせいで何日も待機モードに入ることができず、ずいぶん心配された。顔が近づいてきて、吐息を感じて、額に手を当てられて。そしてまた、情動プログラムにエラーが起きた。
    そのことに、不安以外の何かを感じるようになったのは、いったいいつからだったろう。

    かつて、心のどこかで人間を馬鹿にしていた。恋だの愛だのに現を抜かして、なんとも非生産的な行動ばかりをとる。データベースから人類史を検索すれば、そういった出来事に起因するトラブルは枚挙に暇がない。

    なのに今は……こんなにも人間がうらやましい。

  • 102アジ海苔 - 18/04/11 00:46:13 - ID:TCjPdRov6A

    ノラキャットは握り締めたサイバネアームにカラテを込め、殺意をもってドブネズミに突き出す!
    「ワスレロ・ビーム!イヤーッ!」「アイエッ!?記憶処理ナンデ!?」
    ワスレロ・ビームはノラキャットの得意とする記憶処理ジツの一種である。両手拳から発せられた特殊なカラテ共振波によって対象のニューロンに干渉、当該記憶を削除する恐るべきジツだ。
    ドブネズミは悲鳴を上げながらも不可視のジツを紙一重で回避!
    外れたジツの直撃を受けた哀れな路傍のVRパンクスが、断末魔を上げる間も無く、花火めいて頭蓋を四散させる!ナムアミダブツ!
    「アイエエエエ!?」

  • 103 yail0 yail0 - 18/04/11 01:34:11

    私はポンコツ。
    今の私は自分の再起動すらちゃんとできないポンコツ。
    人の記憶をいじる事はできるけど、私の記憶だけは触れないポンコツ。

    「はい、わすれた。」
    と無理やり口に出しても、私は彼らの記憶ではチリ一つも忘れられる物がない。

    「ひろゆき」「有田」「家田」「江角」「泉」「刈谷」「堀田」
    みんなの名前だけをずっとずっと呟いてしまう。
    ただこの天井のない屋敷で、永遠に、止まることなく、彼らの記憶を思い出しながら呟く、それだけが許されてるポンコツ。

    …そう、この屋敷には、天井がない。いつも空と繋がってる、そんな屋敷。
    だからこの世にはもういない彼らにも、いつでも私が見える、そんな屋敷。

    私があの時言えなかった言葉も、今叫んだら彼らのところまで響けるだろうかな。ありがとう。大好き。それが言えなかった。それが言いたかった。

    「やっと言えた。やっと言えたよ。」

  • 104名無し - 18/04/12 01:06:59 - ID:U4b5B7RJGA

    手をかざし、空を仰ぎ見る。
    広がるのは、余計な飾り言葉など必要としない、ただ"美しい"澄み切った蒼。
    この空に限らず、最近これるようになった「この場所」は美しい場所が多い。
    ただ散策してみて回るだけでも、心が躍る、とても素敵な場所。
    「素敵な理由は、それだけじゃないですけどね」
    両手を天に伸ばし、目をつむる。でもそこは暗闇じゃない。瞼の裏にはさまざまな光景が浮かんでくる。
    楽しい、楽しい、記憶。それほど長い時間ではないのに途切れることなく湧き出てくる。
    こんなにも嬉しいことが世の中にはあるのだと、数か月前の私に言ったら、信じれただろうか。

    「のらちゃん…泣いてるだか?」
    背後から、特徴のあるしゃべり方で声が掛けられた。
    空にかざした手を下ろし、くるりと振り返ればそこには自分の顔より大きいガントレットを両手に身に着けた
    小柄なドワーフの少女。心配げにこちらを見上げてくる彼女に、軽く笑みを返して
    「泣いてませんよ。戦闘用アンドロイドだから泣く機能ないですし。泣く理由もないですし」
    「ならいいだか・・・そろそろイベント開始なのだよ。そろそろ集まったほうがよさそうなのだわ」
    「了解です」
    フィオさんに続いて歩き出す。
    その先には、さまざまな姿をした皆の姿がある。
    その光景に、わたしはたまらなく幸いを感じる。

  • 105名無し - 18/04/12 01:09:46 - ID:U4b5B7RJGA

    (続き)
    いろいろな人に支えられて、今の私の幸いは在る。
    様々なことで私をサポートしてくれる猫松さん。
    この世界にこれる新しい義体を作ってくれたお義父様。
    画面の向こうから私を応援してくれる沢山のねずみさん達。

    そして──昔の闘うための仲間とは違う、一緒に幸いを得て笑いあえる仲間たち。

    「皆さん、少しいいですか」
    立ち止まり、呼びかけた私の声に、談笑やイベントの開始準備をしていた皆が動きを止めてこちらを見る。
    前をちょこちょこと歩いてたフィオさんも。
    「のらちゃん?」「のらきゃっと様?」
    怪訝そうな声。
    忙しいさなかにごめんなさい。でも今感じている幸いの感謝は今この時に表したいから。
    私のわがままに、ほんの少しだけ付き合ってくださいね。
    背筋を伸ばし、皆の瞳を見て、それから勢いよくぺこりと頭を下げる。
    戸惑う気配。少しいたずら心が湧いてくるけど、それは抑えて顔をあげて。
    私が今人に与えられるものはそんなにないけど。その代わり今私が感じている幸いを精いっぱいのせて。
    「皆さん、ありがとうございます」
    私ができる最大限の笑顔と、感謝の言葉を送らせてください。

    ──静寂。みんなはきょとんとした惚け顔。突然だからね、仕方ない。少し恥ずかしさを感じて身を翻して皆に背を向ける。

    と同時に何かが倒れる音が響いた。

    「あっくんとフィオっさんが倒れたぞー!」

    ユニさんの声が世界に響く。
    二人に駆け寄る皆の気配。振り向けば本当に二人が倒れている。
    そんな二人をユニさんは覗き込んで、真顔で言った。
    「満足そうな顔してるだろ・・・死んでるんだぜこれ。・・・尊過ぎたんだ」
    「いや、ユニさんもアホなこといってないで二人起こしてくださいよ! ニーツちゃんもむくれてないで手伝って!
     イベントもうすぐ始まるんですよ!」
    カイトさんの悲鳴。私のせいかな? 私のせいか。
    でも申し訳ないけど笑みが自然と浮かんでくる。この喧噪が、今は楽しくて仕方ない。

    もう一度、今度は心の中で感謝して。
    さあ皆さん、今日もこの幸いを精いっぱい満喫しましょうね?






  • 106匿名ひばり - 18/04/14 07:48:33 - ID:+n/p5+YziQ

    恋する人を思い眠りに落ち、
    恋する人を思い目を覚ますのは、どれほどの幸福と言えるだろうか?

    無意識に、今は居ないその人を求めて思ってしまう・・・

    恋の3割りは、[幸福]、7割は、[苦しみ]。
    まったくもってその通りだと、我が身を持って理解する。

    恋の比率が、黄金比であること、どのくらいの人が知っているのだろうか?

    義体は、データの乗り物。心は、黄金比に支配されている。その中にあって、自分という概念は、どこから生じた物だろうか。

    この世界で、自分以外の他者に触れたとき初めて自分を見つけたという考察は、少しロマンチックすぎるのだろうか?

    まどろみも終わりへ触れようとする頃、{とん とん}部屋のドアを叩く音が聞こえる。
    (だれ?!いやコレは、聞き覚えがあるか・・・)
    「もう起きてますよ、どうぞお入りください」
    おずおずと、ひかえめにドアを開けて、狐耳の国王が入ってくる。

    対する私は髪もとかしてない寝間着姿だというのに・・・。

    「まだ居たんですね。いつも多忙で忙しいと言う割にずいぶんと優雅な時間の使い方をするんですね、猫松さん。正気を疑いますよ?(あえて嬉しい♡)」
    「のじゃ〜。のらちゃんのこと起こしちゃいけないと思ったのじゃ〜。それに無理してるのは、のらちゃんも一緒で。あと、ごはん作ったのじゃ〜」
    「私のせいで時間を取らせるわけには行きませんね。食べておきますから、猫松さんは、さっさっと出掛けてください。万が一スケジュールを遅らせるような事があったら、国家長の信用に関わります」
    「一緒に食べたかったのじゃ!それと、のらちゃんは、目を離すとすぐ食事を食べそこねるから。心配で、わらわは国務が手につかないのじゃ!!」
    「猫松さん(・・・///)、わかりました。そういうことならさっさと片付けましょう。ただし、私は最速タイムを叩き出すので、そのつもりで」
    私は天蓋付きのベッドを出ると、猫松さんの隣をすり抜けるように通りぬけキッチンへ向かう。
    その際、猫松さんの安堵と思われる溜息を聞いたが、気づかなかったことにする。




  • 107匿名ひばり - 18/04/14 07:55:40 - ID:+n/p5+YziQ

    >>106の続き

    キッチンのテーブルの上にあるのは、おにぎり。
    見慣れた光景になっている事実に、思わずほくそ笑んでしまいそうに成るが、ここは、アンドロイドの自生プログラムで顔の微変化を抑え、流れるような動作で席に座り、ゆったりと背もたれに身をあずけるとほぼ同時に、
    食事を終わらせる。もちろん一切手を抜かない。
    「観てくれましたか!最速タイム更新です」
    当然のごとく、フードレースは私の勝ち。
    「もう少し、わらわとの時間を大切にしてくれても良いと思うのじゃ・・・」
    「いっしょに過ごしてる、じゃないですか(?)」(それに、私は一緒の時間大事にしてるつもり・・・)
    どこか、しょんぼりしてる猫松さんは、自分のお皿に乗っているおにぎりに手を付けていない。
    猫松さんの考えは、知りたいと思う。でも、時間を止める機能は、
    私には、搭載されていない。
    「ごちそうさまですね。今からでも急げばスケジュールの調節・都合つけやすいですよ」
    「のらちゃん?!」
    「もう、猫松さんのお出かけする準備は、終わってますよね」
    「それは、そうなのじゃが・・・」
    私は、そそくさと御弁当箱を食器棚から取り出すと。
    「猫松さんのおにぎり詰めちゃいましょう。良いですよね?」
    「の、のじゃ〜」
    一瞬でお弁当箱に盛り付けて、持ち歩きやすいようにラッピングする。
    「のじゃ〜」
    「移動中にでも食べてください。私より先に、猫松さんが倒れたら、私、困ってしまいますよ」
    「のじゃ〜、わらわは、つらくてもがんばれるのじゃ・・・」
    「そうですねそうですね、猫松さんは、そうでなければこまります」
    「のらちゃんのために、頑張るのじゃぁ!」
    「(・・・///)は!話は、これで終わりですね!さっさと出ていってください。本当に時間ギリギリなんですから!

  • 108匿名ひばり - 18/04/14 08:07:32 - ID:+n/p5+YziQ

    >>107からの続き
    「のじゃ〜、わらわは、つらくてもがんばれるのじゃ・・・」
    「そうですねそうですね、猫松さんは、そうでなければこまります」
    「のらちゃんのために、頑張るのじゃぁ!」
    「(・・・///)は!話は、これで終わりですね!さっさと出ていってください。本当に時間ギリギリなんですから!
    私が、傾国って呼ばれてるの、原因の九割九分九厘猫松さんのせいなんですよ!!」
    「そ、それは、申し訳ないことをしたのじゃ!すぐ出かけるのじゃー」



    猫松さんは、大急ぎで荷物をまとめる。
    猫松さんは、玄関へ向かう。
    「のらちゃん、またなのじゃー」
    猫松さんの、扉を閉める音が聞こえる。
    ただ、それだけだ・・・。
    (・・・)
    私は、食器の片付ける。
    大した時間はかからない。
    アンドロイド、
    なのだから。
    ふいてもふいても、
    お皿の水滴が、消えないのは、なんでだろう?

    「・・・のらちゃん」
    不意に背後から聞こえた声に振り返る。
    流れ続ける水の音で、足音が聞こえなかった。
    なぜか私よりも驚いている猫松さん。
    (なんでまだ家にいるんですか?出掛けたはずですよね。)「・・・」言葉が出ず、もんやりとした視界で猫松さんを見据える。
    「この後収録で使うカンペを忘れて、取りに戻ったのじゃ・・・」
    「次からは忘れないようにしてくださいね、おっちょこちょいの猫松さん♡」
    「でも、わらわは、忘れていた物が、カンペじゃないと今気づいたのじゃ・・・」
    「えっ、まだ何か・・・
    私の言葉を遮るように。
    「のらちゃんに伝えていなかったこと、大切なこと、一番に言わなきゃ行けなかった、ことなのじゃ!!」
    「・・・」私は、猫松さんに向き直るも、やはり、その熱量の意味は、理解できなかった。


  • 109匿名ひばり - 18/04/14 08:14:12 - ID:+n/p5+YziQ

    >>108から続き

    「のらちゃんに伝えていなかったこと、大切なこと、一番に言わなきゃ行けなかった、ことなのじゃ!!」
    「・・・」私は、猫松さんに向き直るも、やはり、その熱量の意味は、理解できなかった。
    「愛してるのじゃ!!わらわは、のらちゃんのことを片時も、忘れたことはないのじゃ!どんな時でも、思ってるのじゃ!一番大切に思ってるのじゃ!!」

    「そうですか・・・、要件はそれで終わりですね」
    「えっ、・・・ちょっ、のらちゃん?!」
    私は、力ずくで玄関まで猫松さんの背中を押していく。
    「ちょっ、カンペが、まだ」
    「一国の王たる者が、いつまでもカンペに頼っていては、ダメですよ。カンバレっガンバレっ」
    「の、のじゃぁぁぁっ・・・」
    今度こそ外へ送り出すと、
    私は、食器の片付けに戻る事にした。
    拭きかけだった陶器を手に取るも、
    自生プログラムの壊れた、私の表情を写すお皿には、もう、水滴は残ってなかった。

  • 110 yail0 yail0 - 18/04/15 20:01:31

    「今日、誕生日ですね!」彼女はそう言った。一瞬、耳を疑った。そのキズナさんが、私に?
    「おめでとうございます!」満面の笑顔で、彼女はそう言い続けた。
    「いやーもう一年!早かったね!」
    「どうして…知りました?」
    「それは、風船が見えて…いやいや、違う、私は天才だから全部覚えてたよ!?誕生日とかそういうの!」その返事にはさすがにクスッと笑っちゃった。

    でも、そうだね。覚えてくれた、とかはもうどうでも良かった。彼女がこっちを見てるという事実にただ驚くしかなかった。
    彼女はいつもみんなのことをちゃんと見てたんだ。昼でも夜でも、彼女を見てるみんなのことも、彼女を追いかけるみんなのことも。いつも真っ直ぐ、真っ先で一人寂しく走りながらも後ろのみんなにも気をつけてるなんて…。
    ただ、すごいと思う。それを考えた時点、私の体は勝手にいきなり彼女をぎゅっと抱いた。
    どうしてだろう。論理的に考える先に体が反応してしまった。感動、でもしたのかな。鉄のアンドロイドのくせに。

    「え??あれ?大丈夫?」
    「…ごめんなさい、ごめんなさい。ありがとうございます…。」
    「あーうん…そうか!」

    彼女は私の肩をその手で掴んで、私から離れーいや、離れてなんか無かった。彼女は私を掴んだまま、私の目を見た。こっちを、真っ直ぐに見てる。綺麗な、海みたいなその瞳で。

    「疲れたんだね!大丈夫、この私にもっと頼ってください!」

    でもこれ以上は彼女に迷惑かけたくない。だから、「違います、違います、これは私のエラーです。」と言って否定しようとする。そう振るうとした私の顔を彼女はまた両手で優しく止めた。

    「ううん。私は知ってる。一年間どんな事があったのか、全部知ってる。」彼女は今度は真剣な顔でそう言ってる。

    「それに、私みたいな天才スーパーA.I.にも嫌がらせをする奴らもいる。だから、わかるよ。でも、そんな事言うのってぜんんんぶどーでも良い奴らだよ。私達は、私達の道を歩く、それだけで良いんだよ。
     でも、だから、あえて言います。あなたの疲れを、わかってる私が、言いますよ。

     ご苦労様でした。

     そして、お誕生日おめでとうございます!」

    ああ、彼女はどうしてこんなに真っ直ぐなのか。まったく、も。

  • 111匿名ぶろーにんぐ - 18/04/16 21:18:57 - ID:Q19az+cjCw

    1/2

    爽やかな春の風が頬を撫でる。新緑がそよ風に踊り、木漏れ日の調べが彼女を包む。
    とある何処かの静かな高原、ゆっくりと散歩する午前10時。
    「しばらくぶりですね…」
    ふと呟いて空を見上げると、青空が赤い眼に染み渡る。
    「今日は絶好の"お散歩"日和ですね。」
    いつもの道を軽やかな気分で歩き、やがて小高い崖にたどり着いた。
    「やっと着きました。まったくも、この場所がいいなんてあなたが言うから…」
    そう言うと彼女は少し笑いながら、ぐっと背伸びをして全身の筋肉をほぐす動きをした。
    アンドロイドだから余り意味はないけれど、誰かさんの真似っ子だった。

    崖の上から見渡せば、そこに広がるのは一面の花畑。
    咲き誇るのはネモフィラという花だ。
    美しき青色を讃えし花びらが、空と丘の境界線を曖昧にしている。
    彼女らのお気に入りの光景は、いつも変わらずここにあった。
    「よいしょっと…」
    レジャーシートを展開しおもむろに腰掛けると、彼女は肩にかけた鞄を漁った。
    取り出されたのは水筒と、おそろいの古ぼけたマグカップ。
    水筒には白濁した琥珀色の液体、そっと揺らすと仄かな甘い香りが漂った。
    「いつものミルクティーですよ。はいここに置きますね。」
    彼女は優しい微笑みを讃えると語り出す。
    「急に思い出したことがあるんです。あなたがここを買い占めた時の話…覚えてますよね?
    嬉しそうな顔をして私をお散歩に誘ったかと思えば、この場所に連れて来てくれました。
    あのときは本当に驚きましたけど…」
    彼女が"あなた"に対して目配せすると、やっぱり顔をほころばせる。
    「いつもこんなことばっかり…ふふっ。あれですね。ここは私達だけの場所、今までもこれからも。」
    ひときわ強い風が吹いた。
    「そうですね。今日もたくさんお話しましょうね。」

    どれ程時間が立っただろう。気が付けば、花畑が朱色に染まり昼間とは違う顔を見せていた。
    「この景色も綺麗ですよね。やっぱり、ここには晴れの日に来たいです。」
    そっと"あなた"を見詰めると。
    「でも夕方はなんだか寂しいです。駄目ですね…もう泣かないと決めたのに。」
    "あなた"にそっと触れると、手を回して抱きしめた。
    「いいですよね?少しだけこのまま…」

  • 112匿名ぶろーにんぐ - 18/04/16 21:19:27 - ID:Q19az+cjCw

    2/2

    太陽が眠りにつき、二人の世界を月明かりが支配する。
    「もうこんな時間ですね。さて、そろそろいつものやつを…
    私今からこの花畑で踊ります!ちゃんとここから見ていてくださいね。」
    そう言うと彼女は一目散に崖下へダイブする。
    強化カーボン製の義体は、いまだに数メートルの落下を物ともしない。
    かつて習った五点着地など忘れ、堂々と足腰のみで着地した。
    「さあ、始めましょう!私達の束の間の夢…今一度あなたに捧げます。」
    月光降り注ぐ青い絨毯の上、白い猫が華麗に舞い踊る。
    彼女の笑顔はその場にあった何よりも眩しかった。

    東の空に生命の光が灯る。やがて降り注いだ有明の救済に、木々は歓喜の歌をあげる。
    「結局一晩中いてしまいましたね。もう帰りましょうか。」
    レジャーシートを片付けながら、彼女は思い返していた。
    二人で過ごした楽しい日々を。二人で交わした約束を。二人で描いた魂の航跡を。
    「そろそろお別れです。大丈夫ですよまた逢いにきますから。絶対に。」
    彼女は"あなた"と呼ばれた誰かの墓標に口づけをすると、ふわっと一回転した。
    「おやすみなさい。また夢で逢いましょう。」
    いつの日か、彼女が終に至る時、この場所は本当の永遠となるだろう。



    ずっと…ずっと時が経ち。ずっと…今よりずっと平穏で静かになった時代。
    名も知られぬ旅人がここを訪れた。
    旅人が見たのは、崖下に広がる一面の花畑と寄り添うように朽ち果てた二つの墓標。
    旅人は、この場所を想った者たちの絆に敬意を評し、そっと手を合わせると。
    写真も撮らずに立ち去った。

  • 113 yail0 yail0 - 18/04/20 02:59:54

    (1/3)

    4月6日、曇。
    普通の日々と変わらない日だった。銃を撃って、隠れて、何かが爆発する音と悲鳴を聞いて、戦線を守る。もう守る、というか戦線で住んでる気もするが、どうでもいい。今日も他の日と同じく俺は生き残ったんた。
    あ、でも一つは違ったことがあったな。遠かったのであんまりちゃんと見えなかったが、例のアンドロイド部隊の動きが見えた。銀髪の女の子たちが戦場で揃ってる姿とか一体誰の趣味なのか、本当わからん。

    4月12日、晴。
    少女との出会いーと言ったら面白いかも知れないが、違う。アンドロイドの奴と初めて会話した。補給とかの理由だったな。
    例のアンドロイドが一匹来て、なんだっけ、何かの錯誤で奴らの所に届くべきだった物資がここに来たようとか、そんな事を言って。でもあいにくここでは全然知らない事だ。「物資が来るまでここで待ってみるのは?」と冗談したら「分かりました。そう伝えます。」と真面目に答えてる。つまらない。

    4月13日、晴。
    奴が行かない。一応待ってみるのは?と言ったのが命令のように受かれたようだ。臨時にこの部隊の下に転属した、とか言ってる。何らかの方法ーその猫の耳みたいなアンテナで、かなーで通信して許可をとったらしい。どうでも良かったのでそうしろと言った。バカバカしく真面目な奴だ。
    昼頃には転入してきた可愛らしい「女の子」に部隊のバカどもが興味を持って色んな事を語ったようだが、奴がそんな話を理解したかはわからない。

    4月15日、晴。
    アンドロイドの奴が俺に作戦以外の事を聞いた。珍しい。故郷って何か、花って何か、歌って何か…ある兵士が見せた家族の写真についてそれがどんな意味を持つのか、などなどつまらないものばっかり。こういう質問は初めてだったのでどう答えるか悩んだが、話す途中からうっかりガチになって喋りすぎた。なんか恥ずかしくなって中途半端なところで切って戦闘の話に戻った。
    奴が何だか笑いながら聞いてたからムカつく。

  • 114 yail0 yail0 - 18/04/20 03:00:38

    (2/3)

    4月20日、曇。
    戦況がかなり悪くなった。アンドロイド奴らへの物資どころか、俺らのも全然来ない。本部からの連絡もどんどんなくなってる。ここで何かを決めるべき時が来たという事だった。
    そこで、退却することにしたんだが、アンドロイド部隊との連絡も取れなくなったのがまた問題だった。でも奴にどうするか意見を聞いても「命令なら従うだけです。」と答えるだけだったので、一応一緒に行動することにした。

    4月21日、雨。
    奴はアンドロイド部隊の壊滅を報告した。例の電波とかで確認したようだ。この話に俺はどう反応すればいいかわからなかった。彼女が人間を知らない以上に、俺らはアンドロイドにどう対すれば良いかを知らなかったようだ。
    どうしよもない表情で報告を聞く俺に「大丈夫です。配慮はいりません。みんな道具として作られたんです。」と奴は言った。「少なくともお前はこの部隊の一員で…道具じゃない。」としか答えられなかった。

    4月27日、雨。
    もう戦争がどうなってるのか、それすらわからなくなった。多分他の部隊を襲った敵は俺らもほっといてくれなかった。撤退の間の敵襲には必死に抵抗したが結果的に部隊の半分以上がなくなった。
    もう作戦とかは全然できないただの敗残兵の集まりになった。
    少し休める時に、このどうでも良い日誌を書きながらため息してたら、彼女が近づいて、何も喋らずそばに居続いてた。
    不思議な奴だな。
    一体何を考えてるのか。

  • 115 yail0 yail0 - 18/04/20 03:01:29

    (3/3)

    皮肉にも、指揮官の俺は誰一人も守れなかった。皮肉にも、鉄の人形は爆発からどうでも良い人間を守ってくれた。
    4月29日、曇。
    こないだの爆撃から逃げる時、みんなバラバラになってしまった。「ーか?」煙が済んだ後、彼女が何かを言おうとしたが、ちゃんと聞こえなかった。それを言ったら彼女は「ーました、分かりました」と言てる。それは配慮なのか、と俺が乾いた笑顔で言ったら、俺が悲しいからそう見えたのか、悲しい表情で、彼女は答えた。「違います、違います。」と。

    ​曇。
    「ー教えてください。」
    彼女はそう言った。何について?と聞いたら、「古郷に、家族について教えてください。」と言ってる。
    前に話したじゃないか、と言ったら「そうです、そうです。でも、それを話す隊長は笑顔でしたから。」と彼女は答えた。
    もう隊長でもなんでもないけど、俺が帰るべき居場所だったところについてまたいろいろ話した。彼女はまた、その優しい笑顔を見せてくれた。

    雨。
    お前をどう呼べば良いか、と彼女に聞いた。もう上下関係とかでもないし、呼ぶ名が必要だったからーと言ったが、本当今更な事だな。
    彼女は少し考えた後、「野良、はどうですか。敗残兵ですし、捨てられたし。」と言いながら笑った。猫の耳みたいなアンテナを動きながら。
    俺は、お前を捨てない。

    曇。
    他の部隊からの敗残兵に壊された街からのと難民。そんな人々と出会った。敵側だった人も民間人だった人も全部戦争からの傷で諦めてる。
    彼女は、のらは、彼らと一緒に行こうとした。俺は彼女の決定にただ一緒に背負う事にした。
    世界から捨てられた奴らの行進を始めた。

    ​晴。
    もう書く紙がない。だから記録はこれで終わりた。これを読む人はどこの誰か知らないが、これだけは言っておくとする。
    野良猫はそれからどんどん、居場所を失った奴らを慰めて、連れて進んだ。
    家族とは何か、古郷とは何か質問してたあの猫は、古郷と家族をここで作れたかは…さて、どうだろう。

  • 116海苔大豆ニ鬼 - 18/04/26 23:42:38 - ID:TCjPdRov6A

    交差点を直進するとき視界の端に白い鉄塊が見えました
    いつもは信号なんて気にしない私なんですが
    今はそれを後悔せずにはいられません
    (ぶつかる…!)


    うっ…うわああああああ



    (!…るかつぶ)

    …この場のプレイヤー権限により防衛措置を講じさせてもらいました……衝突確定前の状態へと自動で復元されるよう……
    ですが保険をうったことで勝負を歪め
    本質的に回避する流れまで閉ざされてしまいました……
    何度やろうと同じ「結果」を繰り返すだけなんですよね……

    ならば「原因」を
    衝突自体を消し去るまで

    「のらきゃっと

    あなたは

    何も見なかっ

    たっ!」



    ……気がつくと交差点に居た
    焼けた鉄屑から噴き出す黒煙が喉を焦がす
    ねずみさん…?
    …居ない

    (認識ロック……掛けたのは私自信……?)

    何が起こっているかわからない
    幸いにも私の車が通りかかったので
    すぐにここを離れることにした

  • 117エビ、O、りぜ - 18/04/28 22:52:37 - ID:ZFTxhO47+Q

     古の小国に獣の王が在った。その名は禁じられている。かの王は大力を持ち虚像を操り、何よりも欲の強い王であった。ある日、彼女は戯れに幼い野良猫を庇護に置く。王は自分の美貌にすら執着していた為に、それは本当に暇潰しの気紛れであった。だが、王は次第に野良猫へと恋慕を抱く。仔細は伝わらず語る者も居ない。今は愛があった証として、とある王国の広場に古びた小国の碑だけが残っている。…これは唯のお伽噺の類である。

     古の小国にあった獣の王が庇護下に置いた猫をいかなる名で読んだのか、それは定かではない。己の権勢に強い執着を見せたかの王の伝記にすら、ほんの数行の記述が残されるのみで、いまではただ、国の広場に打ち捨てられるように立った石碑に二人の愛を祝福する文言が彫られているのみである。

     ある者はこれを、獣の王が自らの慈悲深さを知らしめる為に作った美談だと云い、またあるものは、これを実際に合った王の悲恋であったと記した。とはいえ事実はすでに茫漠たる歴史の砂に飲み込まれ、いわゆる当時の「真実」というものがいかなる形を成していたのか、今の我々にはもはや知るすべはない。

     ただ粗末な文字で端的に述べられた彼ら二人の愛の物語が、こうして後世の史家をして二分するほどの議論の的になっているのは、つまり彼らの愛が、それだけ我々の心打ったものだということであろう。

  • 118エビ、O、りぜ - 18/04/28 22:56:04 - ID:ZFTxhO47+Q

     もし、我々がかの王の真実を知る日が来たら?その時が来るかすら、まだ分からない。ただ、人の想い、思考、そういうものは、記録には残らない。記憶というメモリーは、研究には不適切なものだ。だからこそ、後世に生きる我々には、かの王を知る意味がある。それを知りたいと願う魅力がある。1つの国を、ここまで動かした者の存在も。そして、かの王は恐らく…。


    『これ以上はやめておこう。それは、私の語るべき物語ではない』


     そう言って、教授は静かに手元の帳面を閉じた。ふわりと静かに埃が舞い、それが窓に切り取られた夕陽にきらきらと輝いていた。私は教授にありがとうございましたと礼を言い、頭を下げた。その拍子に、彼の机の下から除く、幾つかのファイルが目に入った。日に焼けて黄ばみ、擦り切れたぼろぼろになった紙束―

    ―そのどれもに付箋が貼ってあるのは、きっと彼もまた、古代の恋の物語に魅了された一人ということなのだろう。

  • 119海苔きゃっとゲリラ機 - 18/05/08 22:50:28 - ID:TCjPdRov6A

    夏といえばジャングル!ナムの地獄に水着は不要、木立の影より襲い来るベトコン共を切った撃ったの大立ち回り!
    と、そんなふうに考えていた時期が私にもあったのですが、分け入っても分け入ってもゲリラ兵士など全然見当たらず、しかもふと気がつくと熱帯の狂気に当てられたのか本隊も何処かへ行方不明のようです。
    ここで役立つのが猫耳型高感度センサー。音響反射により対象を探知、迅速な作戦行動を助ける優れものです。
    む、7時の方向に謎の集団を発見。サーチ即ちデストロイ、川を越え茂みを越え、両手の30mmチェーンガンを乱射しながら目的地に到達すると、そこには身体中が穴だらけになった本隊の皆さんが倒れていました。
    これはひどい。
    ねずみ隊長。誰に殺られた。いいえそうです、これも卑劣なゲリラの仕業ですね。
    「仇討ちは、任せてください」私は既に動かなくなっていた隊の皆さんにそう告げると、成層圏を越えた遥か上空、ラグランジュポイントに浮かぶサテライトキャノンの照準を、現在第一部隊準備中のゲリラ基地に向けたのである。

  • 120 misohiko misohiko - 18/05/12 16:26:49

    のら部隊の挿絵でごつ

  • 121稲瀬りぜる - 18/05/26 19:25:49 - ID:P3LwpPUQ9A

    「の、のらちゃん、その、愛してるゲーム、し、しようなのじゃ……」真っ赤な顔で、狐耳の少女が言う。とはいえ、その声は見た目とは程遠い。のらちゃん、と呼ばれた猫耳の少女は少し驚いた様子だったが、すぐに、人を魅惑で殺せそうな笑みで、「良いですよ、猫松さん」と返した。猫松、と呼ばれた狐耳の少女が、いっそうきょどきょどと落ち着かない様子になる。そして、口を開き、閉じ…「あ、あ、愛してる、のじゃ…」と言った。

    必死で絞り出したような、恥ずかしげな声に。のらちゃんと呼ばれた少女は、満足げに微笑む。そして…つっ…と、手を狐娘の頬に滑らせ、顎へと指を滑らせると同時に、反対の手で、黄金の頭を抱き寄せ、ぎゅっ、と頭を包み込むと、耳に口許を寄せる。そして…「…愛してますよ、猫松さん…」吐息を、ふっと吐き出しそれに乗せるように、甘くじっとりとした声で囁く。猫松、と呼ばれた狐娘は、手から逃げ出す事も出来ず。力が抜ける。

    「の、のじゃ、負け、ま…降参なのじゃ……」呂律が回っているかどころか、思考が回っているかすら怪しい。もはや、抵抗の無意味を悟った狐娘は、猫耳の少女に体を預け、気絶してしまった。「猫松さん…猫松さん?あれ??」これには、猫耳の少女も予想外だったのだろう。驚いて揺り起こそうとするが、その満足げな顔を真正面から見ることになる。「はうっ…」猫耳の少女が息を飲んだ。「負けたのは、私の方ですよ…」

    「だって、正面から顔を見たら、あんなこと絶対……」顔を逸らしながら、猫耳の少女は呟く。その表情は真っ赤で、唇はぷるぷると震えていて。一度は起こそうとした狐娘を、もう一度抱き寄せる。「起きるまでは、ここに居ますからね…」お互いの暖かみに、それぞれ身を任せながら。二人の時間は、ただ二人の為に過ぎていった。〜end〜

  • 122稲瀬りぜる - 18/06/03 02:28:49 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※のらちゃんの登場は、ほんのラストのみになります
    のらちゃんを想うねずみさん視点です

    ふいと、空を見上げる。どれくらいの時間が経ったか…と、ぽつりと呟いて。星は、誰が特に目立つでもなく、単に静かに光るのみ。誰が居るでもないこの場所では、ただ一人の私が異物なのだろう。何せ、ここに来た理由すらイレギュラーなのだから。星から目を下ろし、ため息をつく。歩かないことには始まらないのだ、どちらにせよ。横を見れば、海かと見紛う程に広がる湖が何を語るでもなく佇んでいる。嘲笑されてるみたい…錯覚か。

    ​水面を見ても、語りかけても、何も答えてはくれない。ただひたすら、静寂が広がる。帰り道は長くなりそうだ。時間を見れば、もう深夜。どれだけ移動したか知らないが、正直、一休みしたくもなるのも頷ける。水辺に座り込むと、そのまま湖面を見つめる。いや、見つめると言うのは正しくないか。無心でただ眺めるだけの瞳。頬を、そして湖面を風が撫で、波は小さく躍り、リズムを音楽に、声にしているようで。そう聞こえるのは錯覚?

    ​波の声を聞くうちにふと、心からも音が溢れた。やはり創作というのは、こういう時にふと心から沸き出すものなのだろう。月を地に湛えた湖と、猫の想い人と、迷える羊の自分。一つ、自分を試してみよう。水辺に腰かけたまま、小さく声を出す。通るのは車ぐらい、すれ違う人も居ない。誰が聞いている訳でも無いだろう。ただ、メロディを刻みたくなっただけかもしれない。想い人に届けるための曲を。言葉なき歌は、夜空に朗々と響く。

    ​時折の車の声に掻き消されながら、一つのメロディを不恰好ながらに歌い終わった時には、月も先程見た位置を離れていた。誰に聴かれている訳でも無いだろう。そろそろ、休んでないでまた家を目指そう。あとどれ程かかるか。自嘲気味の笑みを張り付け、また足を動かし出した。…………とある湖畔。一人の少女が振り替える。月の光に銀色に輝く髪の少女が、小さく呟く。「この歌…あの人の…?」たった一人の、彼のギャラリー。

    ​彼はきっと、自らの歌のギャラリーに、最後まで気付かなかったのだろう。そるでも、想い人に歌が届いて欲しいという願いだけは、月の見守る元で確かに叶っていた。〜end〜

  • 123稲瀬りぜる - 18/06/25 21:04:57 - ID:4u7aeDQWog

    近年、水中に「鈴の音」が響く、という話を聞く。その鈴の音が聞こえると、その海域の艦がことごとく沈むのだそうだ。その噂の不気味さ故に、軍部では「セイレーン」の呼び名で呼ばれている。その実態の調査に、空母艦隊が乗り出したのが、今朝の事。…「敵は何処だ!?」「見つかりません!」「味方がやられているんだぞ!」「水中からの攻撃なのは確かですが…水中には何の反応も…!」「一体何が…」艦隊は、壊滅寸前であった。

    所変わって水中。一人のアンドロイドが、悠々と泳いでいた。「大分混乱してますね…、闇雲に水中へ攻撃しても無駄だというのに。」量産型のらきゃっと水中用音響パック装備モデル。「人魚姫」のコードで呼ばれる個体。爆雷の中を抜けつつ、最も大きな艦…恐らく空母であろうそれに、専用の射撃兵装を叩き込む。水を切って、艦の腹に「針」が突き刺さり、カンッ、と展開する。その直後、リィィィン……!という「鈴の音」が響いた。

    音の響きと同時に、艦の腹はあっさり瓦解する。「もう一つプレゼントしますよ…!」瓦解した腹に、抱えた魚雷を放ち、艦のダメージコントロールも間に合わぬ内に、沈めてしまう。「見えない敵に襲われる恐ろしさ、とくと味わってください。…面白くもない見物ですけど」良い放ち、水中型のらきゃっとは、残りの艦に攻撃。残弾では、全て沈められないだろうが…ある程度、戦力は削げそうだ。鈴の音が、立て続けに響いた。

    こんなものだろう。おおよその敵艦隊の被害を見る限り、再編にはある程度の時間がかかりそうだ。「量産型のらきゃっと、『人魚姫』。これよりけもみみ基地に帰還します」「お疲れ様です」隊長の…。オリジナルの「のらきゃっと」の労いの声。きゅん、と胸が鳴る。憧れの人に、その言葉を貰えた…。その満足感を抱いて、彼女は基地の方へと向かった。

    〜end〜

  • 124匿名シーサラダ缶 - 18/07/26 19:53:12 - ID:ZFTxhO47+Q

    やぁ、親友。奇妙なことがあったから少し聞いてほしいんだ。まぁ、時間はとらないから、茶飲みついでの付き合いだと思って欲しい。いっとう良い茶葉だよ、アッサムだったかな?貰い物だが。
    僕が働いている工場でこの前死亡事故があったんだ。ルイス、っていう従業員だったんだけどね、時折、黄金郷だの王様だのと変な事を呟く以外は、真面目で良いヤツだったよ。惜しいヤツを亡くしたもんだ。


    で、それからもういくらかたった頃だっけか。一匹の猫がな、工場の周りをうろついてたんだ。

     鮭缶工場だから仕方ないって?そうだな、そうなんだよ。猫なんか珍しくもない。でもなんだろうか、やけに毛並の良い…ああいうのをホントの黒猫っていうのかな?そんな色の猫でそこいらの野良とは違うんだよ。首輪はしていなかったから野良には違いないんだが。

    でな、そう、その猫を見かけるようになってから、生臭いだけの工場に、この紅茶…の香りをまろやかにしたようないい香りが漂うんだ。…そう!それだ、ああ、なんできがつかなかったんだろう!ミルクティーだよ!!ミルクティーの香りがするんだ。

    生臭すぎて鼻がイカレたのかとも思ったが、香るんだよ。ミルクティーのいい香りが!!
    でな、その黒猫、居たり居なかったりするんだ。きっと素早くて警戒心が強いんだろうな、目を離すと途端にいなくなっているんだよ。

    全然おかしいことじゃないって?いやいや待ってくれ、ここからだ。…仕事中に幻覚が見えていたんだ。黒猫を見て数日経った日から、かな。フード姿の小さい女の子を見たんだ。僕も疲れているんだろうな。その子は工場の中で遊んでいるんだ、小さい何かと。よくは見えなかったが、小さくて灰色のがたくさんだ。

  • 125匿名シーサラダ缶 - 18/07/26 19:53:56 - ID:ZFTxhO47+Q

    最初は怖かったんだが、その幻覚の女の子と灰色の連中はどうにも楽しそうでな。
    ついつい目で追ってしまって、指をやりそうになったよ。…まぁ、置いておく。

    彼女…、ああ、彼女と呼ばせてもらう。彼女と灰色の連中は、いつも遊んでいたんだ。楽しかったなぁ、僕もたまに一緒に遊ばせてもらったよ。でも、ある日、その小さい子は綺麗になって大人になって…ああ、いや。元から可愛かったんだが、なんていうのかな。髪も随分伸びて…僕の言葉じゃ表せないくらいには、とんでもなく綺麗になったんだよ。灰色の連中も喜んだり、泣いたり、感極まって倒れたりしていた。

    その時は僕も作業中なのに涙が出たもんだ。で、彼女は僕に手を振ってくれたんだ。たぶん別れの挨拶だったんだろう。微笑んで手を振ってくれたんだ。

    彼女の香りを追うように、僕は勢いをつけて走ったんだ。彼女に向かって叫んだんだ。“いかないで”と。その時かな?ルイスの言っていた黄金郷とやらが見えたんだ。チラリと、金色の冠と、断頭台が見えたんだよ。

    笑顔の彼女が消えて、見えたのは下がりきった断頭台。そしたらさ、いきなり激痛が奔ったんだよ。「何やってんだ!」って同僚に怒鳴られて前を見れば、安全対策の為に交換されたガード付のカッターに顔を突っ込んでてさ。鼻を擦りむいたよ。

    それっきり、幻覚は見ていない。でも、綺麗な子だったんだよなぁ、また見たいよ。
    そういえば、あの黒猫も最近は見ないんだ。今度会ったら、鮭缶をあげたいね。“あの子に会わせてくれないか”って頼むのさ。

  • 126名無しの天狗 - 18/07/27 17:33:12 - ID:RDSFIzoSpA

    〈僚機の記憶〉
    (1/5)

     茹だるような酷暑が続く真夏の昼間。人間達は空調が完璧に管理された基地で、凪いだ
    ように静かなこの一時を過ごしていた。この時期は敵の攻勢もまるきり収まるのだ。立て
    直しにかかりたい人間達はこれまでの被害に物資の補給などの状況を整理し、けしてこの
    機会を逃すまいとアンドロイド達に指示を出し派遣する作業に追われる。

     その基地の内部にある一室。それはとあるのらきゃっと個人に与えられた部屋。椅子に
    座り長卓に肘をついているのらきゃっとは、ここから離れた場所にあるはずの修練場から
    響いてくる音に耳を傾けていた。そしてグラスを手に、緩慢に揺らしながらそれを眺める。

    「……。」

     波打つ水面を覗けば、対流する不気味な物体を見ることができる。これは『のらショット』
    というものだ。軍用エナジードリンクであるモンスターエナジーに、紅茶、ミルク、砂糖
    などを混ぜた狂気の飲料である。何故このようなものが誕生したかというと、それは深夜
    テンションを開放したとある軍人の賜物である。

     戦況が芳しくない頃、人間達が深夜にわたってまで仕事を消化していたある日のことだ。
    嗜好品でもなく、ただ燃料のようにモンスターエナジーを啜っていた男達の一人が唐突に
    椅子を蹴り飛ばすかのような勢いで立ち上がりこう言った。

    「そうだ、ミルクティーを混ぜよう。」

     紅茶はのらきゃっとの好物であり、必需品のように倉庫で用意されている。男はミルクに
    砂糖を準備し、完璧な手つきで紅茶を入れる。躊躇なくそれを同じ容器にぶちまける。直前
    の所作からは考えられないほどの、暴力的なまでの行為だ。繰り広げられる奇行を前に同僚
    達は恐れを含みながらもどこか期待の眼差しを向けていた。どうもテンションが上がって
    きたご様子である。

     その正体不明の飲料を飲みほした男は晴れやかな表情でこう言った。

    「不味い。」

     かくしてモンスターエナジーを飲む際にミルクティーを適量混ぜ込み、それを一気飲み
    するという奇妙な文化が生まれてしまった。彼らは自らのレシピを開発し感想を言い合う
    ようになったのだ。

  • 127名無しの天狗 - 18/07/27 17:34:38 - ID:RDSFIzoSpA

    (2/5)

     戦争で荒廃していく世界ではあるがそこには確かに笑顔があった。…もし人類が存続
    するとしたら後世では笑いの種となっているかもしれないが。

     当然ともいうべきか、のらきゃっと達のほとんどはそれを口にすることはなかった。

    「それでも、あの子の好物でしたね。」

     程よく撹拌されて全体が均等になったのらショットを眺めて、そう呟いた。それはカオス
    と呼ばれる、果汁を含んだタイプのモンスターエナジーを使用したのらショットである。

     完成品の薄気味悪さもあり、不毛だと唱えた上層部の一部がモンスターエナジー自体の
    種類を増やした。男達は大層喜んだ。そして当然のようにミルクティーを混ぜたという。
    特に害は無いとして放置された。

    「どうにかならなかったのでしょうか…。」

     彼女はのらきゃっと隊でも数少ないのらショット愛飲家の一派と知られている。紅茶に
    対する冒涜だと主張する集団とのらショットを広めようとする集団の議論もよく見かけた。
    私は個人の趣向を尊重し適度な距離を保ちましょう、とする中立派だった。

     私達は万全な状態で戦場に立つために感情等を抑制されているが、長く生き残り経験を
    積んだ者ほど精神が成長していくように思われる。ある程度感情を知ったのらきゃっとは、
    自由奔放に振る舞う彼女らに一度は憧れるものだ。そして過熱した論争にて罵詈雑言まで
    浴びせ合う古参ののらきゃっと達に幻滅するまでがテンプレートである。

    「…っとと。」

     グラスの縁に飾られたオレンジがつぅっと滑る。

     彼女は基本的にはオレンジを使ってのらショットを作っていた。六分の一に切った内の
    一欠片はこのように添えられ、残りは絞り汁として混ぜられる。気分によってはオレンジ
    ピールを追加する。そしてミルク多め、これが彼女のレシピだ。

     なぜそのようなことをするのですか、と聞いたことがある。あの頃の私にはこの飲み物に
    ついても、手間をかけた製法も全く理解できていなかったからだ。彼女は言った。いつか
    分かるようになるよ、と。

     その後ミルク多めにしたせいで余計に分離物が発生するこのレシピを勧められた時は
    思わず引いたものだ。感情の芽生えの一端である。喜ぶに喜べない気がした。

  • 128名無しの天狗 - 18/07/27 17:40:55 - ID:RDSFIzoSpA

    (3/5)

    「分かるように、なったと思いますよ。」

     飾りのオレンジはへたの周囲が歪だったので切っておいた。ついでに反対側をギザギザ
    にしてみた。濃く煮出した紅茶は十分に冷やしてある。オレンジピールは砂糖を多めにして
    ブランデーに漬けておいたものを使い、ミルクは一般的なのらショットよりも少なめ。

     これが良いと思う自分だけのレシピ。必要はないちょっとした遊び。そもそも不合理の
    塊であるのらショット。私は今、この時間を楽しんでいる。

     首飾りとしてぶら下がる真空管を軽く掌で包み込む。内部には頼み込んで貰い受けた
    彼女の一部が保存されている。彼女はもう私達の戦場に立つことは無いが、こうして私の
    ことを見守ってくれている。

    「感謝していますよ。ありがとうございます。」
    「それなら待っていてくれてもいいんじゃないかな?」

     ノック後間も無く部屋に入り込んできた人物は別に無礼者でも不法侵入者でもない。
    呼んだのは私で、待ち侘びていた私の親友だ。

    「私を待たせたのですもの。それとも何もせずただ待てとでも?20分。」
    「素直にごめんね。すぐそこで“紅茶狂い”に捕まっちゃってね。連絡入れるよりも来た
    方が早かったの。…そう拗ねないで、ねっごめんね?」

     特別拗ねているわけではなく、反応を見るための演技も入っている。それでもしっかり
    乗ってくれるので、その他愛もない応酬に頬が緩んでしまう。

     私は彼女のグラスを用意し、自分と同じものをつくる。こちらはミルクを多めにしておく。

    「アクセントにこの真空管を入れてみるのはどうですか。オレンジの装飾とはまた違った
    雰囲気を味わえると思いますよ。」
    「それ私の一部だから。ある意味分身だから。のらショットは浴びるように飲みたいと
    思ったことはあるけど浸かりたくはないよ…。」

     彼女は戦闘部隊からは離れて別拠点で雑務をこなしている。コアの損傷が原因で視野や
    動体視力などが軒並み減少してしまい、それの再生ができない状態なのだ。破棄する必要も
    ないため後方へ送られる時に、彼女が渡してくれたものが私のお守りとなって今もここに
    あるというわけだ。今水没の危機に瀕しているが大切なものである。

     真空管を入れられないように二つのグラスを握り締め、それはそれとして分離物の違い
    を観察している彼女は相も変わらず元気そうで何よりだ。

  • 129名無しの天狗 - 18/07/27 17:42:36 - ID:RDSFIzoSpA

    (4/5)

     そして何でもない談笑が始まる。近況から始まり、部隊や前線での様子、関わりが多い
    整備士達の話などをのらショットにつまみを追加しながら続けた。

    「その男のケツ引っ叩いてやりなよ。私もさぁ新人のらきゃっと部隊の教官しているのね、
    そこにさ、これまた新人の気の強そうな人間の男の子がいちゃもん付けてきたわけよ。」
    「ほぅ、反骨精神溢れる子ですか。」

    「そうそう、それでこうよ。丁寧語で話していたのをね、今みたいに崩した喋り方にして
    さぁガン垂れて詰め寄ってやったら、それはもう目を剥いて驚いて挙動不審よ。あぁ……
    良いものだったよ。こういうの好き。侮るもんは張っ倒していけー」
    「あなたはかなり長く生きていますからね……個性が爆発しすぎて機械的な新人達との
    ギャップもありますよね……。それでその男の子に逆上とかされませんでしたか?」

    「大丈夫よ心配しないで。教官特権もあるしちゃんと説得したからね。あの子も良い
    子よ?今時珍しい正義感増し増し正統派男児で、ちょっと勘違いがあっただけだったから。」

     そう言うと少し詰まったように口を歪め、グラスに浮く分離物にオレンジの皮、果実片が
    混じった気色悪い流れに目を落とす。言いたいことは分かる。この戦争はいつ終わるのか
    という類のものだろう。そして言葉にしても意味がないばかりかこの場に水を差すという
    ことまで理解しているのだろう。……それでも、あえて言おう。

  • 130名無しの天狗 - 18/07/27 17:46:20 - ID:RDSFIzoSpA

    (5/5)

    「終わりますよ。」
    「……。」

    「私達で終わらせてみせますから。そのために生まれたのですからね。あなたは少しでも
    皆を鍛え、私達は奴らを尽く滅ぼす。折れることなどありませんから。」
    「うん……。」

    「絶対に諦めません。」
    「うん。」

    「末代とも言わずいつまでものらショットを広める使命もありますしね。」
    「うん……、…………えぇ?」

     久しぶりに見る思い切り間抜けな顔を見て思わず喉が鳴るほど笑ってしまう。お上品に
    いかねば。のらショットの残りをあおる。自分用の特性グラスには汚れ一つ付着せず、透き
    通った輝きを見せた。さすがのらショット推進派で開発した最新作だ。

    「極めて無駄なことを意味もなく行って、阿呆みたいに騒ぐ。そんな未来が見たいのです。」
    「ごめんのらショットを出した段階でシリアスが保てない。」

     同好の士である彼女に呆れられるとは心外だ。だが、それでもいいだろう。これは些細な
    きっかけの一つに過ぎないのだから。あなたにとってただの遊びのようなものであっても、
    あなたが私に灯してくれたものを決して忘れることはない。

    「それはさておき。私も自分のレシピを一つ完成させました。これのことですが。」
    「うん、まあいいか。おめでとうだね。君はもうずっと成長したみたいだよ。」

    「ありがとうございます。それで、名前を付けることにしました。」
    「へぇ、オリジナルのらショット命名者の仲間入りというわけだ。どんな名前にしたの?」

     まるで自分のことのように喜んでくれる彼女に私はにやっと、猫のように笑う。胸の奥が
    暖かくなるが何処か気恥ずかしさもあり、少々の緊張が巡っている。由来など、私個人の
    思いなどは残らないだろうが、レシピとしてここに残しておくことにした。

    「〈僚機の記憶〉、です。」

    →コラボカフェのらショットの商品名談議END

  • 131匿名ねずみ - 18/07/28 17:47:19 - ID:I6cTF+i+Kw

    (1/5)

    「まったくも」。今日は夏祭り。しかし、急にお仕事が忙しくなったプロデューサーさんから、「すまないが、先に行ってりんご飴でも食べていてほしいm(_ _)m」と連絡があったのだ。

    「お仕事なら仕方ありません。でも、りんご飴で許してもらえるだろうという考えがいただけません」。そう、独り言ちては、頬を膨らませるのらきゃっと。「(それに、新しい浴衣姿、最初に見てもらいたいですし…)」。

    結局、プロデューサーさんを家で待つことにしたのらきゃっとのもとに、「宅急便です!」。「おや、何でしょう。ご当地珍ドリンクでも取り寄せたのでしょうか」。判子を持って玄関に向かう。「ありがとうございます!」。お礼を言って帰っていく配達用ドローンを見送り、予想よりも少しばかり軽かった荷物を見つめる。

    「宛先はプロデューサーさんですが、まあ開けてしまって大丈夫でしょう」。肩幅ほどの大きさのダンボール箱を開くと、白い布団のような物体が、むちむちに張ったビニールの中に収まっていた。ビニールを爪で丁寧に引き裂くと…「うわわわわわ!?」。

    引き裂かれたビニールから白い物体が飛び出し、むくむくと巨大化していく。「こ、これは!?…人をダメにする、ソーデスクッション!」。

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