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83.勝手口 - 18/03/31 00:06:28 - ID:tmnH4hdufQ
「この世のいとまごいに参りました」
ある日、屋敷の老鼠は私の前で静かに語った。その声はしゃがれていて、眼はあまり見えていないのか、私の方を向きながらも眼の焦点はどこか遠くにあった。
「そうですか…」
私は紅茶を置く。
「よく働いてくださいました。来世は私の身体の歯車に欲しいほどです」
老鼠は穏やかに目を細める。
「勿体無きお言葉。しかし歯車が私では、歪みや錆になるやもしれませんぞ」
――それでも。貴方はこの屋敷を陰で守り続けてくれたではありませんか。
「それでは、私は毎晩その歯車を想って布で拭うことにします」
老鼠の頬を人差し指でそっと撫でると、小さな小さな水滴が指を濡らした。私が生身の身体であれば、彼のように泣けたのだろうか。
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