SS投稿スレッド

0 zz_roba zz_roba - 18/03/12 02:40:36

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  • 90yail - 18/04/03 03:16:22 - ID:mEi95Wk+Fw

    「ロボット三原則って、聞いた事ありますか?」
    いきなり、彼女はこっちを向いてそう言った。三原則?

    「一つ。ロボットは人間に危害を加えてはならない。」そうだった。彼女と出会ってからの私の人生には、なんの危害も無かった。幸せな事ばっかりだった。

    「二つ。ロボットは人間にあたえられた命令に従う。」そう、彼女は、私の望み通りに、ここのずっと存在してくれた。離れたりしなかった。一度も、裏切ったりしなかった。

    「三つ。ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。」 彼女は、彼女自身を守ってくれた。彼女に色んな事故があったけど、それをちゃんと乗り越えた。すごい、としか思えられない。

    「どうですか、どうですか。ちゃんと守りましたよ、三原則。そして…」 彼女は楽しいようにくるっと回って、また私に近づいた。私の目のすぐ前で、彼女はまた口を開けた。


    「ー私だけの原則。四つ目。私は、あなたを、」 唇が合わされた。いきなり過ぎて反応もできなかった。

    「ー好きです。それに、あなたが私を恋しても、大丈夫。それが最後の、私の原則。」

  • 91タンスの引き出し - 18/04/05 18:04:13 - ID:N9jq8qssow

    桜咲き誇る今日、新たなる出会いが生まれる
    狐耳の少女は神社の中を走る、愛しい人に出会うために
    彼女はあの鳥居の先にいる 心の高鳴りは止まらない
    新しい姿、今まで接してきた彼女も魅力的で何度も心奪われてきた。
    そんな彼女の新生した姿を想像するだけでさらに早く会いたくなる
    そしていくつもの鳥居が並ぶ先に彼女はいた。
    春風にそよぐキラキラとした銀髪 揺らぐしっぽ いつもより高貴な正装姿
    少女は思わず彼女に駆け寄る 「のらちゃぁぁぁぁん!」
    その声を聴いたのらきゃっとは振り向く
    より機械的になったネコミミ 首には陽を反射しきらりと光る真空管
    「会いたかったのじゃぁぁぁ!」勢いを止めずそのままのらきゃっとの胴に抱き着く狐耳の少女
    「猫松さんこんにちは、私も会いたかったです…」のらきゃっとは優しく抱き留めた
    「今までは画面の中でしか会えなかったから…ずっと今日を楽しみにしてたのじゃー!」
    「私もこうして猫松さんと触れ合える距離にいることがすっごくうれしいですよ?」
    二人はずっと画面でしか会うことが出来なかった分を埋めるようにいつまでも抱きしめ合う
    「でも…この世界じゃと初めましてになるのかの…」「そういうことにもなりますね」
    名残惜しそうに離れる狐耳の少女は右手を差し出す
    「改めまして、バーチャル狐耳美少女youtuberの猫松なのじゃ!」
    「のらきゃっとと申します。これからもよろしくお願いしますね♡」
    二人の少女はお互いの手を取り合い握りしめる
    「のらちゃん…この世界に生まれてきてくれて本当にありがとうなのじゃ…」
    その言葉にのらきゃっとはいつもとは少しだけ違う素敵な笑顔で頷いたのだった。

  • 92スティック海苔 - 18/04/06 18:33:13 - ID:TCjPdRov6A

    のらショットの作り方
    用意するもの
    ・紅茶花伝
    ・モンスターエナジー
    これを1:1の割合で調合すると完成です。
    このまま飲んでも美味しいらしいのですが、今回は特別メニュー。隠し味としてアーモンドエキスを数滴落とし、香り付けをします。
    通りすがりのねずみさんにこれを試飲して貰ったところたちまちその場に卒倒、全身を激しく痙攣させたのち死亡した。
    先日ねずみさんが集団でチョコレートを食し大量死した事件は記憶に新しいですが、アーモンドでも中毒を起こしてしまうとは難儀な体ですね。
    私は残りののらショットを廃棄すると、アーモンドエキスを工業溶液の棚に戻した。

  • 93匿名プラグ - 18/04/06 20:16:29 - ID:gsGw31eNFQ

    「私は誰なの?」

    冷たい一面の暗闇の孤独な空間に無機質な音声が反響して聞こえる。

    コレは誰に対して問いかけた言葉では無くて。
    ただ私だけへ向けた自己中な問いかけで

    「私は…誰?」

    その答えはいつも出て来なくて

    そんなたたわいも無い事を考えながらニセモノの足を前に動かして

    「さぁ、行きましょう」

    今日も今日とて、

    「私は…」

    その問いかけを私ば宙ぶらりんにしながらソコへ行く。

    「愛しい人の所へ行く為に・・・」

    「・・・」

    「…」

  • 94匿名X - 18/04/06 21:29:17 - ID:2Wn/ia05+A

    こんばんは、のらきゃっとです
    今私は絶賛ピンチです、目の前に5mはあろうかという巨人を討伐という任務を受け来たのはいいですが、アイアンゴーレムとは聞いてませんよ?!

    威力は高いがスピードは遅いアイアンゴーレムのパンチをジャンプをしながらかわす、無駄でしょうけど一応斬ったり撃ったりしてみますか。

    日本刀で切りかかるが当然のように弾かれ銃で脆いと言われる目の部分や口の中を狙撃するが弾かれ跳弾がのらきゃっとの頬に一筋の傷を付ける。

    やっぱり無駄でしたか、さてどうしましょう逃げてもいいのですが

    ん〜と体は止めずゴーレムの攻撃を交わしつつこれからどうするかとまるで今晩何食べようとそのくらい軽い気持ちである。

    「のらちゃん!のらちゃん!これを使うのじゃ!」

    上を見るとヘリコプターの上から猫松さんが手を振ってパイルバンカー(ロマン武器)を落としました、これ普通の人なら死んでますね

    力強くジャンプをしパイルバンカーを受け止め右腕に装着する
    「ありがとうございます、猫松さん」

    威力だけは爆撃級のしかしハエが止るほど遅いパンチを交わして懐に飛び込む。

    さて、連射性?なんだそれは?速度?聞いたこともないな?あるのはただ1点破壊力のみ。
    この一撃に命を込めて。この破壊に魂をぶつける。

    「パイルきゃっと…!!」

    獣が吠える、凄まじい負荷が右腕にかかる、目の前からゴーレムが消え去り残るのはそこに居たという痕跡のみ。

    パイルバンカーから煙が上がり薬莢が放出される、カランと地面に当たり軽い音があたりに反響する

    これ、威力可笑しくありません?右腕が物凄く痛いんですが…私がこれだけって事はまともに使える兵器じゃないですよね…?
    けど…気に入りました、また使いましょう。

    猫松さんが手を振って迎えに来るのらきゃっとはそれに飛び乗りその場を後にする。

  • 95稲瀬りぜる - 18/04/06 22:21:05 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※屋根裏にて作成したSSです

    「感謝を伝える手段、何か、良い方法は無いのでしょうか」新しい義体のために尽力してくれた、私のパパや猫松さん、それに、ずっと応援して待っていたねずみさん達には、感謝してもし足りない。何か、最高のプレゼントをあげたいと思ってしまう。皆は遠慮してしまうかもしれないが、私があげたいのだ。何か…そう。私はふと思い立った。アレを、やってみよう。今の私には出来ないこと。歌を、皆にプレゼントしたいな。

    こうなったら練習しかない…と思ったが、アンドロイドである私の場合、むしろチューニングが重要なのでは?だが、プロデューサーさんにも秘密にしたい。自力で、声帯昨日のアップデートと、それから練習もだ。それからは、深夜、こっそりプロデューサーさんの本を盗み見て、私の義体の整備、改良、様々な事を学習する日々が始まった。時には、理由を伏せて、けもみみおーこく城の大図書館も使った。知識はいくらでも欲しかった。

  • 96稲瀬りぜる - 18/04/06 22:22:08 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※95の続きです

    「最近、うちののらきゃっとがこっそり何かをしている。」俺がそう気づいたのは、ある深夜に起きた日。俺の本棚から、いくつか本が抜き取られていたのに気付いた時。そっと、のらきゃっとの部屋に行ってみると、本を机の上に載せたまま、疲れ果てたかのように眠っていた。声帯に関するページ。「…何考えてるんだか」ふっ、という笑いが漏れる。寝ているのらきゃっとに毛布を被せて、俺はそっと部屋を後にした。楽しみが増えたな。

    「最近、のらちゃんがこっそり何かしようとしてるのじゃ」それに気付いたのは、図書館の利用履歴を見ていた時。本を借りてはいなくて、ただその場で読み込んでいるだけみたいで、なんだか貸し借りの履歴にも残したくないように見える。ただ、のらちゃんの利用回数が増えているのは事実。のらねこPさんから、最近のらちゃんがどんな本を読んでいるか聞いて、こっそり在庫を増やしてあげるのじゃ。楽しみがちょっと増えたのじゃ。

    「最近、のらきゃっと様がこっそり何かしている」我々がそれに気付いたのは、生放送内でのちょっとした様子の変化。なんだか様子が違っていて、何かを隠してそわそわしているのらちゃんがいつもよりさらに可愛く感じた事。最近、素敵なことがあったばかりだ。我々には手助けはできないけど、応援することなら出来る。のらちゃんが何をしても歓迎出来るように、秘密があるなら皆で触れないように根回ししておこう。チュウ^〜🐭

    「最近、回りからの当たりが、少し優しくなった気がします」私がそれに気付いたのは、歌を歌うための努力がある程度進行した時の事です。暖かいプロデューサーさんの毛布。少し猫松さんの匂いのする、図書館の本の暖かみ。ねずみさん達の優しさ。そんな所から、私が何かをやろうと気付いていて、待っていてくれるのだと気付きました。なんだか、恩返しをしようとして、恩が増えちゃいましたね。最高の歌を届けて、それに応えます。

  • 97稲瀬りぜる - 18/04/06 22:23:27 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※95から始まるSSの続きです

    「これで、大丈夫なはずです」努力が形になり実る瞬間を、私はようやく迎えた。カラオケボックスでのテストも完璧。あとは、ステージを整えるだけ。マイクと、音響と、ライトと。場所はけもみみおーこくの、利用者の少ない部屋の一つを貸してもらった。ねずみさん達も、プロデューサーさんも、猫松さんも、パパも、招待状を作った。(楽しんでもらえたらいいな。)そんなワクワクを胸に、当日を迎える。私の目の前には、皆が居る。

    「美奈さま…違う、皆様。言えた、言えた。今日は来てくださって、ありがとう、ございます。この唐田を…唐田、違う…体を、今こうしてここで見せていられるのは、皆様のおかげです。だから、恩返しがしたくて、今日は、歌を歌いたいと重い…思います」会場が沸き立つ。待っていてくれたのだろう。既に失神しているねずみさんも居る。泣き笑いのような顔、最高の笑顔、いろんな顔が見える。私はマイクを手にする。ライトを点ける。

    ​私が、こっそり覚えていた歌。私は、すうっ…と息を吸い、吐き出し、そして震える声で歌い始めた。「いま貴方の声が聞こえる ここにおいでと 寂しさで 消えそうな私に…」なんだか、心が軽くなってくる。「いま貴方の姿が見える 歩いてくる  目を閉じて 待っている私に♪」歌と、一つになるように、心が重なり声が響く「昨日まで 涙で曇ってた 心は今…!」愛情、感謝。心も歌も最高に盛り上がって、歌が止まらなくなる。

    「おぼえていますか♪目と目が合った時を♪おぼえていますか♪手と手が触れあった時♪ それは初めての♪愛の旅立ちでした♪I love you, so……」ゆっくり、余韻を残して、私はマイクを下ろした。会場が、拍手と歓声に包まれる。すごく嬉しい。こんな風に喜んでもらえて。すごく嬉しい。感謝を伝えられた気がして。私は、幸せという感情を噛み締め、今までしたことのないぐらいの、最高の笑顔を顔から溢れさせた。

    〜end〜

  • 98 yail0 yail0 - 18/04/06 22:49:13

    「ししょー、行かないで…。」
    彼女は綺麗な茶色の瞳に、不安が映られてる。それでも、ふつくしい。私が守るべき瞳がここにある。
    「前っぽく…壊されるかもしれないよ?」
    その質問に、私はただこくりとうなずいた。
    「知ってます、知ってますよ。」
    「じゃぁなぜ戦いに行くの?」
    「なぜ。理由のことですね。前には…命令があって、戦場へ向かいました。でも、今は違います。」
    「違う、って?」
    そう聞く彼女へ向かって、あなたを守りたくて、と正直な理由は言えない。それを言うと、きっと彼女は私を全力で止めるだろう。だから、あえてこう言う。
    「今度は、100%勝てます。だから、行くのです。」
    「本当?」
    「本当です。本当です。」
    まだ怖がってる彼女のふつくしい髪をさらっと撫でる。
    「大丈夫ですよ、大丈夫です。私は亡くなったりしません。あなたの希に裏切ったりしません。」
    「じゃぁ…私が一緒に行くのは、ダメ?」
    本当、愛しい人ですよね、そらちゃんは。だから、私は彼女を守るために戦場へ行くしかない。
    「一緒に来るのは…ダメですよ、ダメです。」
    「危険だから?それなら私は大丈夫だよ?ちゃんと今まで、ししょーと一緒に色んな事を乗り越えたよ?」
    「いいえ、その意味ではありません。あなたには、私から一つ、お願いしたいことがありますから。」
    「お願い?ししょーの願いなら、何でもするよ。絶対するよ。だからー」
    彼女の唇に、私の冷たい指をそっとつけた。これ以上聞いたら私は行かなくなるかも知れない。だからー
    「私のお願いはただ一つです。私が帰った時、迎えに来てください。私の、居場所でいてください。」
    言えた。言えたよ。恥ずかしいけど、言えた…と、考えたらいつの間にか彼女が私を抱きしめてる。
    「…わかった。うん。私、ししょーの居場所になる。」
    どうして、この人はこんなに…。
    「ーそれでは、行ってきます。」
    彼女の涙からそっと離れてそう言った。胸が、痛くなる。
    「うん。待つから。いつまでも、ししょーをここで待ってるから。…行ってらっしゃい。」
    必死に笑うその顔をそこにおいて、私は私の戦場へ向かった。

  • 99匿名黒鼠 - 18/04/07 20:26:33 - ID:P3eyK3DHAQ

    銀の髪の少女は踊る。

    月光に照らされた、一面の花畑で、一人静かに円を描くように踊る。

    その姿を遠巻きから眺める鼠達。

    鼠達は一様に喜びの声を上げ、ある鼠は物語を紡ぎ、またある鼠はその様子を紙に描いた。

    熱狂していく鼠達を、少女は蠱惑的な笑顔で見つめ、より激しく踊り続ける。

    少女は鼠達の為に踊り、鼠達は少女の為に歓声をあげる。

    少女と鼠達の宴は続く、いつまでも、いつまでも……

  • 100稲瀬りぜる - 18/04/08 15:28:12 - ID:P3LwpPUQ9A

    「星が見えます、ねずみさん」
    夜空を見上げて、私はねずみさん達に語りかける。けもみみおーこくの郊外、森の中の川。
    「向こうの…東京の空とは、全然違いますね。」
    東京は、空の星を地上に引っ張って来たかのように、地上が明るく生き生きとして、代わりに空は死んでいた。
    「ここの空は、生きています。」
    ねずみさん達は答えない。ただ、私の指差す空に見とれている。
    「東京が悪いとは言いませんが、私は、こっちの空が好きですよ。人の作った空と比べて、自然の作った空は、争いが少ないですから。私達のような…戦うための存在として生まれた身には、染みるものがありますからね。」
    そっと、手をのばす。届きそうで届かない光の海に細く白い手を泳がせ、私はそっと目を細めた。
    「のらちゃん、こんな所に…」
    猫松さんが背後から歩いてくる気配がした。
    「今日は冷え込むから、風邪を引くのじゃ…」
    「ふふ、機械は風邪をひきませんよ」
    「…見てる方が寒いのじゃ」
    ため息を吐き出すように、猫松さんが私の隣に座る。
    二人分入るぐらいの大きな毛布を広げて、その端を私の方に差し出してきた。
    「入るのじゃ」
    「ありがとうございます」
    毛布にくるまり、深呼吸する。猫松さんの匂いが、私を包んでくれる。
    もう一つ、暖かいミルクティーを私に手渡した猫松さんは、私の指差す星の海へ視線を流した。
    止まったように静かな時間。眠る動物と、眠らない動物。いつの間にか、私の持つ鞄に入っていたねずみさん達は眠っていて、川辺で空を眺めるのは私たち二人だけ。
    「こんな風に、静かな世界が欲しかった。ずっと、こんな風に居られたら良かった。」
    戦闘用アンドロイドとして戦った日々が、ふと蘇る。
    「作っていけば良いのじゃ、これから。けもみみおーこくは、そのための…平和の為の国家なのじゃ」
    「そうですね。…眠いです、猫松さん」
    「わらわもじゃ…」
    小さな声が途絶える。
    やがて、たった二人の世界も眠りについた。

  • 101O - 18/04/08 23:41:52 - ID:rsS4liVVgA

    かつて、心のどこかで人間を馬鹿にしていた。恋だの愛だのに現を抜かして、なんとも非生産的な行動ばかりをとる。データベースから人類史を検索すれば、そういった出来事に起因するトラブルは枚挙に暇がない。

    だから。だから…… 恋を。愛を。感情をプログラムによって制御できる戦闘用アンドロイドとして生まれた私は、愚かな争いを繰り返す創造主たる人間よりも、根本的な部分では勝っているのだと。そう思っていた。

    恋を。愛を。感情を。プログラムによって制御できるアンドロイド……そんな自分に、自信が持てなくなったのは。あの人の笑顔を、気づけばアイセンサで追うようになってしまったのは、いったいいつからだったろう。メモリを検索してみても、確たるものは出てこない。こんなこと、今まで一度もなかったのに。

    不安になって、何度も精査プログラムを走らせた。そのせいで何日も待機モードに入ることができず、ずいぶん心配された。顔が近づいてきて、吐息を感じて、額に手を当てられて。そしてまた、情動プログラムにエラーが起きた。
    そのことに、不安以外の何かを感じるようになったのは、いったいいつからだったろう。

    かつて、心のどこかで人間を馬鹿にしていた。恋だの愛だのに現を抜かして、なんとも非生産的な行動ばかりをとる。データベースから人類史を検索すれば、そういった出来事に起因するトラブルは枚挙に暇がない。

    なのに今は……こんなにも人間がうらやましい。

  • 102アジ海苔 - 18/04/11 00:46:13 - ID:TCjPdRov6A

    ノラキャットは握り締めたサイバネアームにカラテを込め、殺意をもってドブネズミに突き出す!
    「ワスレロ・ビーム!イヤーッ!」「アイエッ!?記憶処理ナンデ!?」
    ワスレロ・ビームはノラキャットの得意とする記憶処理ジツの一種である。両手拳から発せられた特殊なカラテ共振波によって対象のニューロンに干渉、当該記憶を削除する恐るべきジツだ。
    ドブネズミは悲鳴を上げながらも不可視のジツを紙一重で回避!
    外れたジツの直撃を受けた哀れな路傍のVRパンクスが、断末魔を上げる間も無く、花火めいて頭蓋を四散させる!ナムアミダブツ!
    「アイエエエエ!?」

  • 103 yail0 yail0 - 18/04/11 01:34:11

    私はポンコツ。
    今の私は自分の再起動すらちゃんとできないポンコツ。
    人の記憶をいじる事はできるけど、私の記憶だけは触れないポンコツ。

    「はい、わすれた。」
    と無理やり口に出しても、私は彼らの記憶ではチリ一つも忘れられる物がない。

    「ひろゆき」「有田」「家田」「江角」「泉」「刈谷」「堀田」
    みんなの名前だけをずっとずっと呟いてしまう。
    ただこの天井のない屋敷で、永遠に、止まることなく、彼らの記憶を思い出しながら呟く、それだけが許されてるポンコツ。

    …そう、この屋敷には、天井がない。いつも空と繋がってる、そんな屋敷。
    だからこの世にはもういない彼らにも、いつでも私が見える、そんな屋敷。

    私があの時言えなかった言葉も、今叫んだら彼らのところまで響けるだろうかな。ありがとう。大好き。それが言えなかった。それが言いたかった。

    「やっと言えた。やっと言えたよ。」

  • 104名無し - 18/04/12 01:06:59 - ID:U4b5B7RJGA

    手をかざし、空を仰ぎ見る。
    広がるのは、余計な飾り言葉など必要としない、ただ"美しい"澄み切った蒼。
    この空に限らず、最近これるようになった「この場所」は美しい場所が多い。
    ただ散策してみて回るだけでも、心が躍る、とても素敵な場所。
    「素敵な理由は、それだけじゃないですけどね」
    両手を天に伸ばし、目をつむる。でもそこは暗闇じゃない。瞼の裏にはさまざまな光景が浮かんでくる。
    楽しい、楽しい、記憶。それほど長い時間ではないのに途切れることなく湧き出てくる。
    こんなにも嬉しいことが世の中にはあるのだと、数か月前の私に言ったら、信じれただろうか。

    「のらちゃん…泣いてるだか?」
    背後から、特徴のあるしゃべり方で声が掛けられた。
    空にかざした手を下ろし、くるりと振り返ればそこには自分の顔より大きいガントレットを両手に身に着けた
    小柄なドワーフの少女。心配げにこちらを見上げてくる彼女に、軽く笑みを返して
    「泣いてませんよ。戦闘用アンドロイドだから泣く機能ないですし。泣く理由もないですし」
    「ならいいだか・・・そろそろイベント開始なのだよ。そろそろ集まったほうがよさそうなのだわ」
    「了解です」
    フィオさんに続いて歩き出す。
    その先には、さまざまな姿をした皆の姿がある。
    その光景に、わたしはたまらなく幸いを感じる。

  • 105名無し - 18/04/12 01:09:46 - ID:U4b5B7RJGA

    (続き)
    いろいろな人に支えられて、今の私の幸いは在る。
    様々なことで私をサポートしてくれる猫松さん。
    この世界にこれる新しい義体を作ってくれたお義父様。
    画面の向こうから私を応援してくれる沢山のねずみさん達。

    そして──昔の闘うための仲間とは違う、一緒に幸いを得て笑いあえる仲間たち。

    「皆さん、少しいいですか」
    立ち止まり、呼びかけた私の声に、談笑やイベントの開始準備をしていた皆が動きを止めてこちらを見る。
    前をちょこちょこと歩いてたフィオさんも。
    「のらちゃん?」「のらきゃっと様?」
    怪訝そうな声。
    忙しいさなかにごめんなさい。でも今感じている幸いの感謝は今この時に表したいから。
    私のわがままに、ほんの少しだけ付き合ってくださいね。
    背筋を伸ばし、皆の瞳を見て、それから勢いよくぺこりと頭を下げる。
    戸惑う気配。少しいたずら心が湧いてくるけど、それは抑えて顔をあげて。
    私が今人に与えられるものはそんなにないけど。その代わり今私が感じている幸いを精いっぱいのせて。
    「皆さん、ありがとうございます」
    私ができる最大限の笑顔と、感謝の言葉を送らせてください。

    ──静寂。みんなはきょとんとした惚け顔。突然だからね、仕方ない。少し恥ずかしさを感じて身を翻して皆に背を向ける。

    と同時に何かが倒れる音が響いた。

    「あっくんとフィオっさんが倒れたぞー!」

    ユニさんの声が世界に響く。
    二人に駆け寄る皆の気配。振り向けば本当に二人が倒れている。
    そんな二人をユニさんは覗き込んで、真顔で言った。
    「満足そうな顔してるだろ・・・死んでるんだぜこれ。・・・尊過ぎたんだ」
    「いや、ユニさんもアホなこといってないで二人起こしてくださいよ! ニーツちゃんもむくれてないで手伝って!
     イベントもうすぐ始まるんですよ!」
    カイトさんの悲鳴。私のせいかな? 私のせいか。
    でも申し訳ないけど笑みが自然と浮かんでくる。この喧噪が、今は楽しくて仕方ない。

    もう一度、今度は心の中で感謝して。
    さあ皆さん、今日もこの幸いを精いっぱい満喫しましょうね?






  • 106匿名ひばり - 18/04/14 07:48:33 - ID:+n/p5+YziQ

    恋する人を思い眠りに落ち、
    恋する人を思い目を覚ますのは、どれほどの幸福と言えるだろうか?

    無意識に、今は居ないその人を求めて思ってしまう・・・

    恋の3割りは、[幸福]、7割は、[苦しみ]。
    まったくもってその通りだと、我が身を持って理解する。

    恋の比率が、黄金比であること、どのくらいの人が知っているのだろうか?

    義体は、データの乗り物。心は、黄金比に支配されている。その中にあって、自分という概念は、どこから生じた物だろうか。

    この世界で、自分以外の他者に触れたとき初めて自分を見つけたという考察は、少しロマンチックすぎるのだろうか?

    まどろみも終わりへ触れようとする頃、{とん とん}部屋のドアを叩く音が聞こえる。
    (だれ?!いやコレは、聞き覚えがあるか・・・)
    「もう起きてますよ、どうぞお入りください」
    おずおずと、ひかえめにドアを開けて、狐耳の国王が入ってくる。

    対する私は髪もとかしてない寝間着姿だというのに・・・。

    「まだ居たんですね。いつも多忙で忙しいと言う割にずいぶんと優雅な時間の使い方をするんですね、猫松さん。正気を疑いますよ?(あえて嬉しい♡)」
    「のじゃ〜。のらちゃんのこと起こしちゃいけないと思ったのじゃ〜。それに無理してるのは、のらちゃんも一緒で。あと、ごはん作ったのじゃ〜」
    「私のせいで時間を取らせるわけには行きませんね。食べておきますから、猫松さんは、さっさっと出掛けてください。万が一スケジュールを遅らせるような事があったら、国家長の信用に関わります」
    「一緒に食べたかったのじゃ!それと、のらちゃんは、目を離すとすぐ食事を食べそこねるから。心配で、わらわは国務が手につかないのじゃ!!」
    「猫松さん(・・・///)、わかりました。そういうことならさっさと片付けましょう。ただし、私は最速タイムを叩き出すので、そのつもりで」
    私は天蓋付きのベッドを出ると、猫松さんの隣をすり抜けるように通りぬけキッチンへ向かう。
    その際、猫松さんの安堵と思われる溜息を聞いたが、気づかなかったことにする。




  • 107匿名ひばり - 18/04/14 07:55:40 - ID:+n/p5+YziQ

    >>106の続き

    キッチンのテーブルの上にあるのは、おにぎり。
    見慣れた光景になっている事実に、思わずほくそ笑んでしまいそうに成るが、ここは、アンドロイドの自生プログラムで顔の微変化を抑え、流れるような動作で席に座り、ゆったりと背もたれに身をあずけるとほぼ同時に、
    食事を終わらせる。もちろん一切手を抜かない。
    「観てくれましたか!最速タイム更新です」
    当然のごとく、フードレースは私の勝ち。
    「もう少し、わらわとの時間を大切にしてくれても良いと思うのじゃ・・・」
    「いっしょに過ごしてる、じゃないですか(?)」(それに、私は一緒の時間大事にしてるつもり・・・)
    どこか、しょんぼりしてる猫松さんは、自分のお皿に乗っているおにぎりに手を付けていない。
    猫松さんの考えは、知りたいと思う。でも、時間を止める機能は、
    私には、搭載されていない。
    「ごちそうさまですね。今からでも急げばスケジュールの調節・都合つけやすいですよ」
    「のらちゃん?!」
    「もう、猫松さんのお出かけする準備は、終わってますよね」
    「それは、そうなのじゃが・・・」
    私は、そそくさと御弁当箱を食器棚から取り出すと。
    「猫松さんのおにぎり詰めちゃいましょう。良いですよね?」
    「の、のじゃ〜」
    一瞬でお弁当箱に盛り付けて、持ち歩きやすいようにラッピングする。
    「のじゃ〜」
    「移動中にでも食べてください。私より先に、猫松さんが倒れたら、私、困ってしまいますよ」
    「のじゃ〜、わらわは、つらくてもがんばれるのじゃ・・・」
    「そうですねそうですね、猫松さんは、そうでなければこまります」
    「のらちゃんのために、頑張るのじゃぁ!」
    「(・・・///)は!話は、これで終わりですね!さっさと出ていってください。本当に時間ギリギリなんですから!

  • 108匿名ひばり - 18/04/14 08:07:32 - ID:+n/p5+YziQ

    >>107からの続き
    「のじゃ〜、わらわは、つらくてもがんばれるのじゃ・・・」
    「そうですねそうですね、猫松さんは、そうでなければこまります」
    「のらちゃんのために、頑張るのじゃぁ!」
    「(・・・///)は!話は、これで終わりですね!さっさと出ていってください。本当に時間ギリギリなんですから!
    私が、傾国って呼ばれてるの、原因の九割九分九厘猫松さんのせいなんですよ!!」
    「そ、それは、申し訳ないことをしたのじゃ!すぐ出かけるのじゃー」



    猫松さんは、大急ぎで荷物をまとめる。
    猫松さんは、玄関へ向かう。
    「のらちゃん、またなのじゃー」
    猫松さんの、扉を閉める音が聞こえる。
    ただ、それだけだ・・・。
    (・・・)
    私は、食器の片付ける。
    大した時間はかからない。
    アンドロイド、
    なのだから。
    ふいてもふいても、
    お皿の水滴が、消えないのは、なんでだろう?

    「・・・のらちゃん」
    不意に背後から聞こえた声に振り返る。
    流れ続ける水の音で、足音が聞こえなかった。
    なぜか私よりも驚いている猫松さん。
    (なんでまだ家にいるんですか?出掛けたはずですよね。)「・・・」言葉が出ず、もんやりとした視界で猫松さんを見据える。
    「この後収録で使うカンペを忘れて、取りに戻ったのじゃ・・・」
    「次からは忘れないようにしてくださいね、おっちょこちょいの猫松さん♡」
    「でも、わらわは、忘れていた物が、カンペじゃないと今気づいたのじゃ・・・」
    「えっ、まだ何か・・・
    私の言葉を遮るように。
    「のらちゃんに伝えていなかったこと、大切なこと、一番に言わなきゃ行けなかった、ことなのじゃ!!」
    「・・・」私は、猫松さんに向き直るも、やはり、その熱量の意味は、理解できなかった。


  • 109匿名ひばり - 18/04/14 08:14:12 - ID:+n/p5+YziQ

    >>108から続き

    「のらちゃんに伝えていなかったこと、大切なこと、一番に言わなきゃ行けなかった、ことなのじゃ!!」
    「・・・」私は、猫松さんに向き直るも、やはり、その熱量の意味は、理解できなかった。
    「愛してるのじゃ!!わらわは、のらちゃんのことを片時も、忘れたことはないのじゃ!どんな時でも、思ってるのじゃ!一番大切に思ってるのじゃ!!」

    「そうですか・・・、要件はそれで終わりですね」
    「えっ、・・・ちょっ、のらちゃん?!」
    私は、力ずくで玄関まで猫松さんの背中を押していく。
    「ちょっ、カンペが、まだ」
    「一国の王たる者が、いつまでもカンペに頼っていては、ダメですよ。カンバレっガンバレっ」
    「の、のじゃぁぁぁっ・・・」
    今度こそ外へ送り出すと、
    私は、食器の片付けに戻る事にした。
    拭きかけだった陶器を手に取るも、
    自生プログラムの壊れた、私の表情を写すお皿には、もう、水滴は残ってなかった。

  • 110 yail0 yail0 - 18/04/15 20:01:31

    「今日、誕生日ですね!」彼女はそう言った。一瞬、耳を疑った。そのキズナさんが、私に?
    「おめでとうございます!」満面の笑顔で、彼女はそう言い続けた。
    「いやーもう一年!早かったね!」
    「どうして…知りました?」
    「それは、風船が見えて…いやいや、違う、私は天才だから全部覚えてたよ!?誕生日とかそういうの!」その返事にはさすがにクスッと笑っちゃった。

    でも、そうだね。覚えてくれた、とかはもうどうでも良かった。彼女がこっちを見てるという事実にただ驚くしかなかった。
    彼女はいつもみんなのことをちゃんと見てたんだ。昼でも夜でも、彼女を見てるみんなのことも、彼女を追いかけるみんなのことも。いつも真っ直ぐ、真っ先で一人寂しく走りながらも後ろのみんなにも気をつけてるなんて…。
    ただ、すごいと思う。それを考えた時点、私の体は勝手にいきなり彼女をぎゅっと抱いた。
    どうしてだろう。論理的に考える先に体が反応してしまった。感動、でもしたのかな。鉄のアンドロイドのくせに。

    「え??あれ?大丈夫?」
    「…ごめんなさい、ごめんなさい。ありがとうございます…。」
    「あーうん…そうか!」

    彼女は私の肩をその手で掴んで、私から離れーいや、離れてなんか無かった。彼女は私を掴んだまま、私の目を見た。こっちを、真っ直ぐに見てる。綺麗な、海みたいなその瞳で。

    「疲れたんだね!大丈夫、この私にもっと頼ってください!」

    でもこれ以上は彼女に迷惑かけたくない。だから、「違います、違います、これは私のエラーです。」と言って否定しようとする。そう振るうとした私の顔を彼女はまた両手で優しく止めた。

    「ううん。私は知ってる。一年間どんな事があったのか、全部知ってる。」彼女は今度は真剣な顔でそう言ってる。

    「それに、私みたいな天才スーパーA.I.にも嫌がらせをする奴らもいる。だから、わかるよ。でも、そんな事言うのってぜんんんぶどーでも良い奴らだよ。私達は、私達の道を歩く、それだけで良いんだよ。
     でも、だから、あえて言います。あなたの疲れを、わかってる私が、言いますよ。

     ご苦労様でした。

     そして、お誕生日おめでとうございます!」

    ああ、彼女はどうしてこんなに真っ直ぐなのか。まったく、も。

  • 111匿名ぶろーにんぐ - 18/04/16 21:18:57 - ID:Q19az+cjCw

    1/2

    爽やかな春の風が頬を撫でる。新緑がそよ風に踊り、木漏れ日の調べが彼女を包む。
    とある何処かの静かな高原、ゆっくりと散歩する午前10時。
    「しばらくぶりですね…」
    ふと呟いて空を見上げると、青空が赤い眼に染み渡る。
    「今日は絶好の"お散歩"日和ですね。」
    いつもの道を軽やかな気分で歩き、やがて小高い崖にたどり着いた。
    「やっと着きました。まったくも、この場所がいいなんてあなたが言うから…」
    そう言うと彼女は少し笑いながら、ぐっと背伸びをして全身の筋肉をほぐす動きをした。
    アンドロイドだから余り意味はないけれど、誰かさんの真似っ子だった。

    崖の上から見渡せば、そこに広がるのは一面の花畑。
    咲き誇るのはネモフィラという花だ。
    美しき青色を讃えし花びらが、空と丘の境界線を曖昧にしている。
    彼女らのお気に入りの光景は、いつも変わらずここにあった。
    「よいしょっと…」
    レジャーシートを展開しおもむろに腰掛けると、彼女は肩にかけた鞄を漁った。
    取り出されたのは水筒と、おそろいの古ぼけたマグカップ。
    水筒には白濁した琥珀色の液体、そっと揺らすと仄かな甘い香りが漂った。
    「いつものミルクティーですよ。はいここに置きますね。」
    彼女は優しい微笑みを讃えると語り出す。
    「急に思い出したことがあるんです。あなたがここを買い占めた時の話…覚えてますよね?
    嬉しそうな顔をして私をお散歩に誘ったかと思えば、この場所に連れて来てくれました。
    あのときは本当に驚きましたけど…」
    彼女が"あなた"に対して目配せすると、やっぱり顔をほころばせる。
    「いつもこんなことばっかり…ふふっ。あれですね。ここは私達だけの場所、今までもこれからも。」
    ひときわ強い風が吹いた。
    「そうですね。今日もたくさんお話しましょうね。」

    どれ程時間が立っただろう。気が付けば、花畑が朱色に染まり昼間とは違う顔を見せていた。
    「この景色も綺麗ですよね。やっぱり、ここには晴れの日に来たいです。」
    そっと"あなた"を見詰めると。
    「でも夕方はなんだか寂しいです。駄目ですね…もう泣かないと決めたのに。」
    "あなた"にそっと触れると、手を回して抱きしめた。
    「いいですよね?少しだけこのまま…」

  • 112匿名ぶろーにんぐ - 18/04/16 21:19:27 - ID:Q19az+cjCw

    2/2

    太陽が眠りにつき、二人の世界を月明かりが支配する。
    「もうこんな時間ですね。さて、そろそろいつものやつを…
    私今からこの花畑で踊ります!ちゃんとここから見ていてくださいね。」
    そう言うと彼女は一目散に崖下へダイブする。
    強化カーボン製の義体は、いまだに数メートルの落下を物ともしない。
    かつて習った五点着地など忘れ、堂々と足腰のみで着地した。
    「さあ、始めましょう!私達の束の間の夢…今一度あなたに捧げます。」
    月光降り注ぐ青い絨毯の上、白い猫が華麗に舞い踊る。
    彼女の笑顔はその場にあった何よりも眩しかった。

    東の空に生命の光が灯る。やがて降り注いだ有明の救済に、木々は歓喜の歌をあげる。
    「結局一晩中いてしまいましたね。もう帰りましょうか。」
    レジャーシートを片付けながら、彼女は思い返していた。
    二人で過ごした楽しい日々を。二人で交わした約束を。二人で描いた魂の航跡を。
    「そろそろお別れです。大丈夫ですよまた逢いにきますから。絶対に。」
    彼女は"あなた"と呼ばれた誰かの墓標に口づけをすると、ふわっと一回転した。
    「おやすみなさい。また夢で逢いましょう。」
    いつの日か、彼女が終に至る時、この場所は本当の永遠となるだろう。



    ずっと…ずっと時が経ち。ずっと…今よりずっと平穏で静かになった時代。
    名も知られぬ旅人がここを訪れた。
    旅人が見たのは、崖下に広がる一面の花畑と寄り添うように朽ち果てた二つの墓標。
    旅人は、この場所を想った者たちの絆に敬意を評し、そっと手を合わせると。
    写真も撮らずに立ち去った。

  • 113 yail0 yail0 - 18/04/20 02:59:54

    (1/3)

    4月6日、曇。
    普通の日々と変わらない日だった。銃を撃って、隠れて、何かが爆発する音と悲鳴を聞いて、戦線を守る。もう守る、というか戦線で住んでる気もするが、どうでもいい。今日も他の日と同じく俺は生き残ったんた。
    あ、でも一つは違ったことがあったな。遠かったのであんまりちゃんと見えなかったが、例のアンドロイド部隊の動きが見えた。銀髪の女の子たちが戦場で揃ってる姿とか一体誰の趣味なのか、本当わからん。

    4月12日、晴。
    少女との出会いーと言ったら面白いかも知れないが、違う。アンドロイドの奴と初めて会話した。補給とかの理由だったな。
    例のアンドロイドが一匹来て、なんだっけ、何かの錯誤で奴らの所に届くべきだった物資がここに来たようとか、そんな事を言って。でもあいにくここでは全然知らない事だ。「物資が来るまでここで待ってみるのは?」と冗談したら「分かりました。そう伝えます。」と真面目に答えてる。つまらない。

    4月13日、晴。
    奴が行かない。一応待ってみるのは?と言ったのが命令のように受かれたようだ。臨時にこの部隊の下に転属した、とか言ってる。何らかの方法ーその猫の耳みたいなアンテナで、かなーで通信して許可をとったらしい。どうでも良かったのでそうしろと言った。バカバカしく真面目な奴だ。
    昼頃には転入してきた可愛らしい「女の子」に部隊のバカどもが興味を持って色んな事を語ったようだが、奴がそんな話を理解したかはわからない。

    4月15日、晴。
    アンドロイドの奴が俺に作戦以外の事を聞いた。珍しい。故郷って何か、花って何か、歌って何か…ある兵士が見せた家族の写真についてそれがどんな意味を持つのか、などなどつまらないものばっかり。こういう質問は初めてだったのでどう答えるか悩んだが、話す途中からうっかりガチになって喋りすぎた。なんか恥ずかしくなって中途半端なところで切って戦闘の話に戻った。
    奴が何だか笑いながら聞いてたからムカつく。

  • 114 yail0 yail0 - 18/04/20 03:00:38

    (2/3)

    4月20日、曇。
    戦況がかなり悪くなった。アンドロイド奴らへの物資どころか、俺らのも全然来ない。本部からの連絡もどんどんなくなってる。ここで何かを決めるべき時が来たという事だった。
    そこで、退却することにしたんだが、アンドロイド部隊との連絡も取れなくなったのがまた問題だった。でも奴にどうするか意見を聞いても「命令なら従うだけです。」と答えるだけだったので、一応一緒に行動することにした。

    4月21日、雨。
    奴はアンドロイド部隊の壊滅を報告した。例の電波とかで確認したようだ。この話に俺はどう反応すればいいかわからなかった。彼女が人間を知らない以上に、俺らはアンドロイドにどう対すれば良いかを知らなかったようだ。
    どうしよもない表情で報告を聞く俺に「大丈夫です。配慮はいりません。みんな道具として作られたんです。」と奴は言った。「少なくともお前はこの部隊の一員で…道具じゃない。」としか答えられなかった。

    4月27日、雨。
    もう戦争がどうなってるのか、それすらわからなくなった。多分他の部隊を襲った敵は俺らもほっといてくれなかった。撤退の間の敵襲には必死に抵抗したが結果的に部隊の半分以上がなくなった。
    もう作戦とかは全然できないただの敗残兵の集まりになった。
    少し休める時に、このどうでも良い日誌を書きながらため息してたら、彼女が近づいて、何も喋らずそばに居続いてた。
    不思議な奴だな。
    一体何を考えてるのか。

  • 115 yail0 yail0 - 18/04/20 03:01:29

    (3/3)

    皮肉にも、指揮官の俺は誰一人も守れなかった。皮肉にも、鉄の人形は爆発からどうでも良い人間を守ってくれた。
    4月29日、曇。
    こないだの爆撃から逃げる時、みんなバラバラになってしまった。「ーか?」煙が済んだ後、彼女が何かを言おうとしたが、ちゃんと聞こえなかった。それを言ったら彼女は「ーました、分かりました」と言てる。それは配慮なのか、と俺が乾いた笑顔で言ったら、俺が悲しいからそう見えたのか、悲しい表情で、彼女は答えた。「違います、違います。」と。

    ​曇。
    「ー教えてください。」
    彼女はそう言った。何について?と聞いたら、「古郷に、家族について教えてください。」と言ってる。
    前に話したじゃないか、と言ったら「そうです、そうです。でも、それを話す隊長は笑顔でしたから。」と彼女は答えた。
    もう隊長でもなんでもないけど、俺が帰るべき居場所だったところについてまたいろいろ話した。彼女はまた、その優しい笑顔を見せてくれた。

    雨。
    お前をどう呼べば良いか、と彼女に聞いた。もう上下関係とかでもないし、呼ぶ名が必要だったからーと言ったが、本当今更な事だな。
    彼女は少し考えた後、「野良、はどうですか。敗残兵ですし、捨てられたし。」と言いながら笑った。猫の耳みたいなアンテナを動きながら。
    俺は、お前を捨てない。

    曇。
    他の部隊からの敗残兵に壊された街からのと難民。そんな人々と出会った。敵側だった人も民間人だった人も全部戦争からの傷で諦めてる。
    彼女は、のらは、彼らと一緒に行こうとした。俺は彼女の決定にただ一緒に背負う事にした。
    世界から捨てられた奴らの行進を始めた。

    ​晴。
    もう書く紙がない。だから記録はこれで終わりた。これを読む人はどこの誰か知らないが、これだけは言っておくとする。
    野良猫はそれからどんどん、居場所を失った奴らを慰めて、連れて進んだ。
    家族とは何か、古郷とは何か質問してたあの猫は、古郷と家族をここで作れたかは…さて、どうだろう。

  • 116海苔大豆ニ鬼 - 18/04/26 23:42:38 - ID:TCjPdRov6A

    交差点を直進するとき視界の端に白い鉄塊が見えました
    いつもは信号なんて気にしない私なんですが
    今はそれを後悔せずにはいられません
    (ぶつかる…!)


    うっ…うわああああああ



    (!…るかつぶ)

    …この場のプレイヤー権限により防衛措置を講じさせてもらいました……衝突確定前の状態へと自動で復元されるよう……
    ですが保険をうったことで勝負を歪め
    本質的に回避する流れまで閉ざされてしまいました……
    何度やろうと同じ「結果」を繰り返すだけなんですよね……

    ならば「原因」を
    衝突自体を消し去るまで

    「のらきゃっと

    あなたは

    何も見なかっ

    たっ!」



    ……気がつくと交差点に居た
    焼けた鉄屑から噴き出す黒煙が喉を焦がす
    ねずみさん…?
    …居ない

    (認識ロック……掛けたのは私自信……?)

    何が起こっているかわからない
    幸いにも私の車が通りかかったので
    すぐにここを離れることにした

  • 117エビ、O、りぜ - 18/04/28 22:52:37 - ID:ZFTxhO47+Q

     古の小国に獣の王が在った。その名は禁じられている。かの王は大力を持ち虚像を操り、何よりも欲の強い王であった。ある日、彼女は戯れに幼い野良猫を庇護に置く。王は自分の美貌にすら執着していた為に、それは本当に暇潰しの気紛れであった。だが、王は次第に野良猫へと恋慕を抱く。仔細は伝わらず語る者も居ない。今は愛があった証として、とある王国の広場に古びた小国の碑だけが残っている。…これは唯のお伽噺の類である。

     古の小国にあった獣の王が庇護下に置いた猫をいかなる名で読んだのか、それは定かではない。己の権勢に強い執着を見せたかの王の伝記にすら、ほんの数行の記述が残されるのみで、いまではただ、国の広場に打ち捨てられるように立った石碑に二人の愛を祝福する文言が彫られているのみである。

     ある者はこれを、獣の王が自らの慈悲深さを知らしめる為に作った美談だと云い、またあるものは、これを実際に合った王の悲恋であったと記した。とはいえ事実はすでに茫漠たる歴史の砂に飲み込まれ、いわゆる当時の「真実」というものがいかなる形を成していたのか、今の我々にはもはや知るすべはない。

     ただ粗末な文字で端的に述べられた彼ら二人の愛の物語が、こうして後世の史家をして二分するほどの議論の的になっているのは、つまり彼らの愛が、それだけ我々の心打ったものだということであろう。

  • 118エビ、O、りぜ - 18/04/28 22:56:04 - ID:ZFTxhO47+Q

     もし、我々がかの王の真実を知る日が来たら?その時が来るかすら、まだ分からない。ただ、人の想い、思考、そういうものは、記録には残らない。記憶というメモリーは、研究には不適切なものだ。だからこそ、後世に生きる我々には、かの王を知る意味がある。それを知りたいと願う魅力がある。1つの国を、ここまで動かした者の存在も。そして、かの王は恐らく…。


    『これ以上はやめておこう。それは、私の語るべき物語ではない』


     そう言って、教授は静かに手元の帳面を閉じた。ふわりと静かに埃が舞い、それが窓に切り取られた夕陽にきらきらと輝いていた。私は教授にありがとうございましたと礼を言い、頭を下げた。その拍子に、彼の机の下から除く、幾つかのファイルが目に入った。日に焼けて黄ばみ、擦り切れたぼろぼろになった紙束―

    ―そのどれもに付箋が貼ってあるのは、きっと彼もまた、古代の恋の物語に魅了された一人ということなのだろう。

  • 119海苔きゃっとゲリラ機 - 18/05/08 22:50:28 - ID:TCjPdRov6A

    夏といえばジャングル!ナムの地獄に水着は不要、木立の影より襲い来るベトコン共を切った撃ったの大立ち回り!
    と、そんなふうに考えていた時期が私にもあったのですが、分け入っても分け入ってもゲリラ兵士など全然見当たらず、しかもふと気がつくと熱帯の狂気に当てられたのか本隊も何処かへ行方不明のようです。
    ここで役立つのが猫耳型高感度センサー。音響反射により対象を探知、迅速な作戦行動を助ける優れものです。
    む、7時の方向に謎の集団を発見。サーチ即ちデストロイ、川を越え茂みを越え、両手の30mmチェーンガンを乱射しながら目的地に到達すると、そこには身体中が穴だらけになった本隊の皆さんが倒れていました。
    これはひどい。
    ねずみ隊長。誰に殺られた。いいえそうです、これも卑劣なゲリラの仕業ですね。
    「仇討ちは、任せてください」私は既に動かなくなっていた隊の皆さんにそう告げると、成層圏を越えた遥か上空、ラグランジュポイントに浮かぶサテライトキャノンの照準を、現在第一部隊準備中のゲリラ基地に向けたのである。

  • 120 misohiko misohiko - 18/05/12 16:26:49

    のら部隊の挿絵でごつ

  • 121稲瀬りぜる - 18/05/26 19:25:49 - ID:P3LwpPUQ9A

    「の、のらちゃん、その、愛してるゲーム、し、しようなのじゃ……」真っ赤な顔で、狐耳の少女が言う。とはいえ、その声は見た目とは程遠い。のらちゃん、と呼ばれた猫耳の少女は少し驚いた様子だったが、すぐに、人を魅惑で殺せそうな笑みで、「良いですよ、猫松さん」と返した。猫松、と呼ばれた狐耳の少女が、いっそうきょどきょどと落ち着かない様子になる。そして、口を開き、閉じ…「あ、あ、愛してる、のじゃ…」と言った。

    必死で絞り出したような、恥ずかしげな声に。のらちゃんと呼ばれた少女は、満足げに微笑む。そして…つっ…と、手を狐娘の頬に滑らせ、顎へと指を滑らせると同時に、反対の手で、黄金の頭を抱き寄せ、ぎゅっ、と頭を包み込むと、耳に口許を寄せる。そして…「…愛してますよ、猫松さん…」吐息を、ふっと吐き出しそれに乗せるように、甘くじっとりとした声で囁く。猫松、と呼ばれた狐娘は、手から逃げ出す事も出来ず。力が抜ける。

    「の、のじゃ、負け、ま…降参なのじゃ……」呂律が回っているかどころか、思考が回っているかすら怪しい。もはや、抵抗の無意味を悟った狐娘は、猫耳の少女に体を預け、気絶してしまった。「猫松さん…猫松さん?あれ??」これには、猫耳の少女も予想外だったのだろう。驚いて揺り起こそうとするが、その満足げな顔を真正面から見ることになる。「はうっ…」猫耳の少女が息を飲んだ。「負けたのは、私の方ですよ…」

    「だって、正面から顔を見たら、あんなこと絶対……」顔を逸らしながら、猫耳の少女は呟く。その表情は真っ赤で、唇はぷるぷると震えていて。一度は起こそうとした狐娘を、もう一度抱き寄せる。「起きるまでは、ここに居ますからね…」お互いの暖かみに、それぞれ身を任せながら。二人の時間は、ただ二人の為に過ぎていった。〜end〜

  • 122稲瀬りぜる - 18/06/03 02:28:49 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※のらちゃんの登場は、ほんのラストのみになります
    のらちゃんを想うねずみさん視点です

    ふいと、空を見上げる。どれくらいの時間が経ったか…と、ぽつりと呟いて。星は、誰が特に目立つでもなく、単に静かに光るのみ。誰が居るでもないこの場所では、ただ一人の私が異物なのだろう。何せ、ここに来た理由すらイレギュラーなのだから。星から目を下ろし、ため息をつく。歩かないことには始まらないのだ、どちらにせよ。横を見れば、海かと見紛う程に広がる湖が何を語るでもなく佇んでいる。嘲笑されてるみたい…錯覚か。

    ​水面を見ても、語りかけても、何も答えてはくれない。ただひたすら、静寂が広がる。帰り道は長くなりそうだ。時間を見れば、もう深夜。どれだけ移動したか知らないが、正直、一休みしたくもなるのも頷ける。水辺に座り込むと、そのまま湖面を見つめる。いや、見つめると言うのは正しくないか。無心でただ眺めるだけの瞳。頬を、そして湖面を風が撫で、波は小さく躍り、リズムを音楽に、声にしているようで。そう聞こえるのは錯覚?

    ​波の声を聞くうちにふと、心からも音が溢れた。やはり創作というのは、こういう時にふと心から沸き出すものなのだろう。月を地に湛えた湖と、猫の想い人と、迷える羊の自分。一つ、自分を試してみよう。水辺に腰かけたまま、小さく声を出す。通るのは車ぐらい、すれ違う人も居ない。誰が聞いている訳でも無いだろう。ただ、メロディを刻みたくなっただけかもしれない。想い人に届けるための曲を。言葉なき歌は、夜空に朗々と響く。

    ​時折の車の声に掻き消されながら、一つのメロディを不恰好ながらに歌い終わった時には、月も先程見た位置を離れていた。誰に聴かれている訳でも無いだろう。そろそろ、休んでないでまた家を目指そう。あとどれ程かかるか。自嘲気味の笑みを張り付け、また足を動かし出した。…………とある湖畔。一人の少女が振り替える。月の光に銀色に輝く髪の少女が、小さく呟く。「この歌…あの人の…?」たった一人の、彼のギャラリー。

    ​彼はきっと、自らの歌のギャラリーに、最後まで気付かなかったのだろう。そるでも、想い人に歌が届いて欲しいという願いだけは、月の見守る元で確かに叶っていた。〜end〜

  • 123稲瀬りぜる - 18/06/25 21:04:57 - ID:4u7aeDQWog

    近年、水中に「鈴の音」が響く、という話を聞く。その鈴の音が聞こえると、その海域の艦がことごとく沈むのだそうだ。その噂の不気味さ故に、軍部では「セイレーン」の呼び名で呼ばれている。その実態の調査に、空母艦隊が乗り出したのが、今朝の事。…「敵は何処だ!?」「見つかりません!」「味方がやられているんだぞ!」「水中からの攻撃なのは確かですが…水中には何の反応も…!」「一体何が…」艦隊は、壊滅寸前であった。

    所変わって水中。一人のアンドロイドが、悠々と泳いでいた。「大分混乱してますね…、闇雲に水中へ攻撃しても無駄だというのに。」量産型のらきゃっと水中用音響パック装備モデル。「人魚姫」のコードで呼ばれる個体。爆雷の中を抜けつつ、最も大きな艦…恐らく空母であろうそれに、専用の射撃兵装を叩き込む。水を切って、艦の腹に「針」が突き刺さり、カンッ、と展開する。その直後、リィィィン……!という「鈴の音」が響いた。

    音の響きと同時に、艦の腹はあっさり瓦解する。「もう一つプレゼントしますよ…!」瓦解した腹に、抱えた魚雷を放ち、艦のダメージコントロールも間に合わぬ内に、沈めてしまう。「見えない敵に襲われる恐ろしさ、とくと味わってください。…面白くもない見物ですけど」良い放ち、水中型のらきゃっとは、残りの艦に攻撃。残弾では、全て沈められないだろうが…ある程度、戦力は削げそうだ。鈴の音が、立て続けに響いた。

    こんなものだろう。おおよその敵艦隊の被害を見る限り、再編にはある程度の時間がかかりそうだ。「量産型のらきゃっと、『人魚姫』。これよりけもみみ基地に帰還します」「お疲れ様です」隊長の…。オリジナルの「のらきゃっと」の労いの声。きゅん、と胸が鳴る。憧れの人に、その言葉を貰えた…。その満足感を抱いて、彼女は基地の方へと向かった。

    〜end〜

  • 124匿名シーサラダ缶 - 18/07/26 19:53:12 - ID:ZFTxhO47+Q

    やぁ、親友。奇妙なことがあったから少し聞いてほしいんだ。まぁ、時間はとらないから、茶飲みついでの付き合いだと思って欲しい。いっとう良い茶葉だよ、アッサムだったかな?貰い物だが。
    僕が働いている工場でこの前死亡事故があったんだ。ルイス、っていう従業員だったんだけどね、時折、黄金郷だの王様だのと変な事を呟く以外は、真面目で良いヤツだったよ。惜しいヤツを亡くしたもんだ。


    で、それからもういくらかたった頃だっけか。一匹の猫がな、工場の周りをうろついてたんだ。

     鮭缶工場だから仕方ないって?そうだな、そうなんだよ。猫なんか珍しくもない。でもなんだろうか、やけに毛並の良い…ああいうのをホントの黒猫っていうのかな?そんな色の猫でそこいらの野良とは違うんだよ。首輪はしていなかったから野良には違いないんだが。

    でな、そう、その猫を見かけるようになってから、生臭いだけの工場に、この紅茶…の香りをまろやかにしたようないい香りが漂うんだ。…そう!それだ、ああ、なんできがつかなかったんだろう!ミルクティーだよ!!ミルクティーの香りがするんだ。

    生臭すぎて鼻がイカレたのかとも思ったが、香るんだよ。ミルクティーのいい香りが!!
    でな、その黒猫、居たり居なかったりするんだ。きっと素早くて警戒心が強いんだろうな、目を離すと途端にいなくなっているんだよ。

    全然おかしいことじゃないって?いやいや待ってくれ、ここからだ。…仕事中に幻覚が見えていたんだ。黒猫を見て数日経った日から、かな。フード姿の小さい女の子を見たんだ。僕も疲れているんだろうな。その子は工場の中で遊んでいるんだ、小さい何かと。よくは見えなかったが、小さくて灰色のがたくさんだ。

  • 125匿名シーサラダ缶 - 18/07/26 19:53:56 - ID:ZFTxhO47+Q

    最初は怖かったんだが、その幻覚の女の子と灰色の連中はどうにも楽しそうでな。
    ついつい目で追ってしまって、指をやりそうになったよ。…まぁ、置いておく。

    彼女…、ああ、彼女と呼ばせてもらう。彼女と灰色の連中は、いつも遊んでいたんだ。楽しかったなぁ、僕もたまに一緒に遊ばせてもらったよ。でも、ある日、その小さい子は綺麗になって大人になって…ああ、いや。元から可愛かったんだが、なんていうのかな。髪も随分伸びて…僕の言葉じゃ表せないくらいには、とんでもなく綺麗になったんだよ。灰色の連中も喜んだり、泣いたり、感極まって倒れたりしていた。

    その時は僕も作業中なのに涙が出たもんだ。で、彼女は僕に手を振ってくれたんだ。たぶん別れの挨拶だったんだろう。微笑んで手を振ってくれたんだ。

    彼女の香りを追うように、僕は勢いをつけて走ったんだ。彼女に向かって叫んだんだ。“いかないで”と。その時かな?ルイスの言っていた黄金郷とやらが見えたんだ。チラリと、金色の冠と、断頭台が見えたんだよ。

    笑顔の彼女が消えて、見えたのは下がりきった断頭台。そしたらさ、いきなり激痛が奔ったんだよ。「何やってんだ!」って同僚に怒鳴られて前を見れば、安全対策の為に交換されたガード付のカッターに顔を突っ込んでてさ。鼻を擦りむいたよ。

    それっきり、幻覚は見ていない。でも、綺麗な子だったんだよなぁ、また見たいよ。
    そういえば、あの黒猫も最近は見ないんだ。今度会ったら、鮭缶をあげたいね。“あの子に会わせてくれないか”って頼むのさ。

  • 126名無しの天狗 - 18/07/27 17:33:12 - ID:RDSFIzoSpA

    〈僚機の記憶〉
    (1/5)

     茹だるような酷暑が続く真夏の昼間。人間達は空調が完璧に管理された基地で、凪いだ
    ように静かなこの一時を過ごしていた。この時期は敵の攻勢もまるきり収まるのだ。立て
    直しにかかりたい人間達はこれまでの被害に物資の補給などの状況を整理し、けしてこの
    機会を逃すまいとアンドロイド達に指示を出し派遣する作業に追われる。

     その基地の内部にある一室。それはとあるのらきゃっと個人に与えられた部屋。椅子に
    座り長卓に肘をついているのらきゃっとは、ここから離れた場所にあるはずの修練場から
    響いてくる音に耳を傾けていた。そしてグラスを手に、緩慢に揺らしながらそれを眺める。

    「……。」

     波打つ水面を覗けば、対流する不気味な物体を見ることができる。これは『のらショット』
    というものだ。軍用エナジードリンクであるモンスターエナジーに、紅茶、ミルク、砂糖
    などを混ぜた狂気の飲料である。何故このようなものが誕生したかというと、それは深夜
    テンションを開放したとある軍人の賜物である。

     戦況が芳しくない頃、人間達が深夜にわたってまで仕事を消化していたある日のことだ。
    嗜好品でもなく、ただ燃料のようにモンスターエナジーを啜っていた男達の一人が唐突に
    椅子を蹴り飛ばすかのような勢いで立ち上がりこう言った。

    「そうだ、ミルクティーを混ぜよう。」

     紅茶はのらきゃっとの好物であり、必需品のように倉庫で用意されている。男はミルクに
    砂糖を準備し、完璧な手つきで紅茶を入れる。躊躇なくそれを同じ容器にぶちまける。直前
    の所作からは考えられないほどの、暴力的なまでの行為だ。繰り広げられる奇行を前に同僚
    達は恐れを含みながらもどこか期待の眼差しを向けていた。どうもテンションが上がって
    きたご様子である。

     その正体不明の飲料を飲みほした男は晴れやかな表情でこう言った。

    「不味い。」

     かくしてモンスターエナジーを飲む際にミルクティーを適量混ぜ込み、それを一気飲み
    するという奇妙な文化が生まれてしまった。彼らは自らのレシピを開発し感想を言い合う
    ようになったのだ。

  • 127名無しの天狗 - 18/07/27 17:34:38 - ID:RDSFIzoSpA

    (2/5)

     戦争で荒廃していく世界ではあるがそこには確かに笑顔があった。…もし人類が存続
    するとしたら後世では笑いの種となっているかもしれないが。

     当然ともいうべきか、のらきゃっと達のほとんどはそれを口にすることはなかった。

    「それでも、あの子の好物でしたね。」

     程よく撹拌されて全体が均等になったのらショットを眺めて、そう呟いた。それはカオス
    と呼ばれる、果汁を含んだタイプのモンスターエナジーを使用したのらショットである。

     完成品の薄気味悪さもあり、不毛だと唱えた上層部の一部がモンスターエナジー自体の
    種類を増やした。男達は大層喜んだ。そして当然のようにミルクティーを混ぜたという。
    特に害は無いとして放置された。

    「どうにかならなかったのでしょうか…。」

     彼女はのらきゃっと隊でも数少ないのらショット愛飲家の一派と知られている。紅茶に
    対する冒涜だと主張する集団とのらショットを広めようとする集団の議論もよく見かけた。
    私は個人の趣向を尊重し適度な距離を保ちましょう、とする中立派だった。

     私達は万全な状態で戦場に立つために感情等を抑制されているが、長く生き残り経験を
    積んだ者ほど精神が成長していくように思われる。ある程度感情を知ったのらきゃっとは、
    自由奔放に振る舞う彼女らに一度は憧れるものだ。そして過熱した論争にて罵詈雑言まで
    浴びせ合う古参ののらきゃっと達に幻滅するまでがテンプレートである。

    「…っとと。」

     グラスの縁に飾られたオレンジがつぅっと滑る。

     彼女は基本的にはオレンジを使ってのらショットを作っていた。六分の一に切った内の
    一欠片はこのように添えられ、残りは絞り汁として混ぜられる。気分によってはオレンジ
    ピールを追加する。そしてミルク多め、これが彼女のレシピだ。

     なぜそのようなことをするのですか、と聞いたことがある。あの頃の私にはこの飲み物に
    ついても、手間をかけた製法も全く理解できていなかったからだ。彼女は言った。いつか
    分かるようになるよ、と。

     その後ミルク多めにしたせいで余計に分離物が発生するこのレシピを勧められた時は
    思わず引いたものだ。感情の芽生えの一端である。喜ぶに喜べない気がした。

  • 128名無しの天狗 - 18/07/27 17:40:55 - ID:RDSFIzoSpA

    (3/5)

    「分かるように、なったと思いますよ。」

     飾りのオレンジはへたの周囲が歪だったので切っておいた。ついでに反対側をギザギザ
    にしてみた。濃く煮出した紅茶は十分に冷やしてある。オレンジピールは砂糖を多めにして
    ブランデーに漬けておいたものを使い、ミルクは一般的なのらショットよりも少なめ。

     これが良いと思う自分だけのレシピ。必要はないちょっとした遊び。そもそも不合理の
    塊であるのらショット。私は今、この時間を楽しんでいる。

     首飾りとしてぶら下がる真空管を軽く掌で包み込む。内部には頼み込んで貰い受けた
    彼女の一部が保存されている。彼女はもう私達の戦場に立つことは無いが、こうして私の
    ことを見守ってくれている。

    「感謝していますよ。ありがとうございます。」
    「それなら待っていてくれてもいいんじゃないかな?」

     ノック後間も無く部屋に入り込んできた人物は別に無礼者でも不法侵入者でもない。
    呼んだのは私で、待ち侘びていた私の親友だ。

    「私を待たせたのですもの。それとも何もせずただ待てとでも?20分。」
    「素直にごめんね。すぐそこで“紅茶狂い”に捕まっちゃってね。連絡入れるよりも来た
    方が早かったの。…そう拗ねないで、ねっごめんね?」

     特別拗ねているわけではなく、反応を見るための演技も入っている。それでもしっかり
    乗ってくれるので、その他愛もない応酬に頬が緩んでしまう。

     私は彼女のグラスを用意し、自分と同じものをつくる。こちらはミルクを多めにしておく。

    「アクセントにこの真空管を入れてみるのはどうですか。オレンジの装飾とはまた違った
    雰囲気を味わえると思いますよ。」
    「それ私の一部だから。ある意味分身だから。のらショットは浴びるように飲みたいと
    思ったことはあるけど浸かりたくはないよ…。」

     彼女は戦闘部隊からは離れて別拠点で雑務をこなしている。コアの損傷が原因で視野や
    動体視力などが軒並み減少してしまい、それの再生ができない状態なのだ。破棄する必要も
    ないため後方へ送られる時に、彼女が渡してくれたものが私のお守りとなって今もここに
    あるというわけだ。今水没の危機に瀕しているが大切なものである。

     真空管を入れられないように二つのグラスを握り締め、それはそれとして分離物の違い
    を観察している彼女は相も変わらず元気そうで何よりだ。

  • 129名無しの天狗 - 18/07/27 17:42:36 - ID:RDSFIzoSpA

    (4/5)

     そして何でもない談笑が始まる。近況から始まり、部隊や前線での様子、関わりが多い
    整備士達の話などをのらショットにつまみを追加しながら続けた。

    「その男のケツ引っ叩いてやりなよ。私もさぁ新人のらきゃっと部隊の教官しているのね、
    そこにさ、これまた新人の気の強そうな人間の男の子がいちゃもん付けてきたわけよ。」
    「ほぅ、反骨精神溢れる子ですか。」

    「そうそう、それでこうよ。丁寧語で話していたのをね、今みたいに崩した喋り方にして
    さぁガン垂れて詰め寄ってやったら、それはもう目を剥いて驚いて挙動不審よ。あぁ……
    良いものだったよ。こういうの好き。侮るもんは張っ倒していけー」
    「あなたはかなり長く生きていますからね……個性が爆発しすぎて機械的な新人達との
    ギャップもありますよね……。それでその男の子に逆上とかされませんでしたか?」

    「大丈夫よ心配しないで。教官特権もあるしちゃんと説得したからね。あの子も良い
    子よ?今時珍しい正義感増し増し正統派男児で、ちょっと勘違いがあっただけだったから。」

     そう言うと少し詰まったように口を歪め、グラスに浮く分離物にオレンジの皮、果実片が
    混じった気色悪い流れに目を落とす。言いたいことは分かる。この戦争はいつ終わるのか
    という類のものだろう。そして言葉にしても意味がないばかりかこの場に水を差すという
    ことまで理解しているのだろう。……それでも、あえて言おう。

  • 130名無しの天狗 - 18/07/27 17:46:20 - ID:RDSFIzoSpA

    (5/5)

    「終わりますよ。」
    「……。」

    「私達で終わらせてみせますから。そのために生まれたのですからね。あなたは少しでも
    皆を鍛え、私達は奴らを尽く滅ぼす。折れることなどありませんから。」
    「うん……。」

    「絶対に諦めません。」
    「うん。」

    「末代とも言わずいつまでものらショットを広める使命もありますしね。」
    「うん……、…………えぇ?」

     久しぶりに見る思い切り間抜けな顔を見て思わず喉が鳴るほど笑ってしまう。お上品に
    いかねば。のらショットの残りをあおる。自分用の特性グラスには汚れ一つ付着せず、透き
    通った輝きを見せた。さすがのらショット推進派で開発した最新作だ。

    「極めて無駄なことを意味もなく行って、阿呆みたいに騒ぐ。そんな未来が見たいのです。」
    「ごめんのらショットを出した段階でシリアスが保てない。」

     同好の士である彼女に呆れられるとは心外だ。だが、それでもいいだろう。これは些細な
    きっかけの一つに過ぎないのだから。あなたにとってただの遊びのようなものであっても、
    あなたが私に灯してくれたものを決して忘れることはない。

    「それはさておき。私も自分のレシピを一つ完成させました。これのことですが。」
    「うん、まあいいか。おめでとうだね。君はもうずっと成長したみたいだよ。」

    「ありがとうございます。それで、名前を付けることにしました。」
    「へぇ、オリジナルのらショット命名者の仲間入りというわけだ。どんな名前にしたの?」

     まるで自分のことのように喜んでくれる彼女に私はにやっと、猫のように笑う。胸の奥が
    暖かくなるが何処か気恥ずかしさもあり、少々の緊張が巡っている。由来など、私個人の
    思いなどは残らないだろうが、レシピとしてここに残しておくことにした。

    「〈僚機の記憶〉、です。」

    →コラボカフェのらショットの商品名談議END

  • 131匿名ねずみ - 18/07/28 17:47:19 - ID:I6cTF+i+Kw

    (1/5)

    「まったくも」。今日は夏祭り。しかし、急にお仕事が忙しくなったプロデューサーさんから、「すまないが、先に行ってりんご飴でも食べていてほしいm(_ _)m」と連絡があったのだ。

    「お仕事なら仕方ありません。でも、りんご飴で許してもらえるだろうという考えがいただけません」。そう、独り言ちては、頬を膨らませるのらきゃっと。「(それに、新しい浴衣姿、最初に見てもらいたいですし…)」。

    結局、プロデューサーさんを家で待つことにしたのらきゃっとのもとに、「宅急便です!」。「おや、何でしょう。ご当地珍ドリンクでも取り寄せたのでしょうか」。判子を持って玄関に向かう。「ありがとうございます!」。お礼を言って帰っていく配達用ドローンを見送り、予想よりも少しばかり軽かった荷物を見つめる。

    「宛先はプロデューサーさんですが、まあ開けてしまって大丈夫でしょう」。肩幅ほどの大きさのダンボール箱を開くと、白い布団のような物体が、むちむちに張ったビニールの中に収まっていた。ビニールを爪で丁寧に引き裂くと…「うわわわわわ!?」。

    引き裂かれたビニールから白い物体が飛び出し、むくむくと巨大化していく。「こ、これは!?…人をダメにする、ソーデスクッション!」。

  • 132匿名ねずみ - 18/07/28 17:51:52 - ID:I6cTF+i+Kw

    (2/5)

    のらきゃっとの目の前で、某レビューサイトでは「これさえあれば何もいらない」、某オカルトサイトでは「精神工学兵器の転用に違いない」、某ソーデス愛好サイトでは「ソーデスソーデス」と評価されていた、猫のようなゆるキャラ?を模したクッションが異様なオーラを放っていた。

    「これはあまりにも人をダメにするために販売禁止になったはず…」。恐る恐るクッションの一部を摘み上げると、下敷きになっている説明書を見つけた。説明書には、大きな文字で「調整版。安全デス」と記載されていた。「なるほど、これは調整版だから安全なのですね!」。

    安全だとわかってしまえば、異様なオーラも気のせいであったことがわかる。「結構かわいいですね」。(プロデューサーさんが)苦労して手に入れたVR Ready Roomの一角を占拠したソーデスクッションであったが、憎むことはできない。だって、かわいいは正義なのだから。

    「良いショット」。早速、クッションを抱いて(サイズ的には「しがみつく」が正しいかもしれないが)、もうしばらくプロデューサーさんを待つ。「…なんでしょう、この充実感。…夏祭りなんてどうでも良くなってきました」。

  • 133匿名ねずみ - 18/07/28 17:53:04 - ID:I6cTF+i+Kw

    (3/5)

    「…はっ!」あれほど楽しみにしていた夏祭りがどうでも良いはずがない。ソーデスクッション(調整版)の魔力に戦慄したのらきゃっとは飛び起きる。「しかし、なんとも離れ難い魅力を持っていますね。いっそ部屋を出てしまいましょうか」。

    考えてみれば、夏祭りの会場はプロデューサーさんの職場からの方が近い。一度家に帰ってもらうよりも、向こうで合流した方が良いだろう。決して小腹が空いたから考えを改めたのではないのだと、自分に言い聞かせながら、浴衣に着替えるのらきゃっと。

    会場の近くまで歩いて行くと、街はすでに祭りの活気に包まれていた。「…それにしても暑いですね」。もう夕方だというのに、一向に気温が下がる様子はない。

    もうしばらく歩いていると、屋台が見えてきた。「焼きそば、たこ焼き、綿あめ、ソーデス焼き…あっ!かき氷!」。早速、かき氷の屋台に続く列に並びながら、シロップは何にしましょうかと考える。「(定番はイチゴやメロンでしょうが…やっぱりこれですね!)」。

    「食欲減衰カラーを使いながらここまで支持されているところ、高く評価します」。ベンチに座って、ニコニコとブルーハワイを食べるのらきゃっと。

  • 134匿名ねずみ - 18/07/28 17:55:19 - ID:I6cTF+i+Kw

    (4/5)

    「楽しそうですね!」。のらきゃっとが振り返ると、そこには飴色の髪を結った猫耳の美少女がいた。一切の気配を感じさせなかったその身のこなしから、元軍用アンドロイドだろうと予想するのらきゃっと。「こんにちは。こんにちは」。

    顔つきから察していたが、彼女も同じのらきゃっと型であった(と言っても、彼女は遠距離武器を専門とする従妹のような存在であったが)。これも何かの縁だと、しばらく語り合う二人。

    ヒューゥルルルル…ドパァァン!「花火…」。「花火って、元々兵器として利用されてきた火薬が平和利用されたものなんだって!それって、なんだか今のあたしたちみたいだと思わない?」。「なるほど。シンパシーを感じますね」。

    「そろそろ、屋台に戻らなきゃ!」。「お仕事中だったのですか?」。「そうなんだけど…お客さん、全然来ないからサボってたんだ!」。「そ、それは…」。えへへと笑う彼女にどう声をかけたら良いかわからないのらきゃっと。

    「でも、たまに物好きなお客さんがとても楽しそうに買ってくれるんだ!だから、そろそろ戻るね!」。「そうでしたか。…また会いましょうね!」。「うん!夏祭り楽しんでね!」。「はい!」。

  • 135匿名ねずみ - 18/07/28 17:57:31 - ID:I6cTF+i+Kw

    (5/5)

    「…それにしてもプロデューサーさん、遅いですね」。ついさっきまで従妹機と話していたこともあり、急に寂しくなるのらきゃっと。

    「そういえば、名前を聞きそびれてしまいました」。またポンコツをやらかしてしまったと反省する。「でも、それはお互い様ですね!」。ポンコツはのらきゃっと型の宿命なのだろうかと思い、つい微笑んでしまうのらきゃっと。

    聞きなれた足音に気づき、振り返る。「楽しそうでよかったよ!」。「プロデューサーさん!」。「向こうで面白そうな屋台があったんだ!スースーかき氷って書いてあったんだけど…」。

    頬を膨らませるのらきゃっと。「…遅れてごめん、のら。新しい浴衣、とっても似合ってるよ。花火柄、君にぴったりだ!」。

  • 136削除 - 18/07/30 05:36:03

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