a. 致死がんの確率(過剰致死率)
致死がんの確率は、単位線量当量(1 Sv)あたりの致死がんが起こる確率(リスク)で表されます。自然に発生するがんによる致死に対して、放射線の被ばくによって余分に高まる致死という意味で過剰致死率ともいいます。
組織・臓器別の致死がんの確率(名目確率係数)を、全集団(公衆)と作業者についてを以下に示します。
全集団(公衆)は感受性の高い幼児をも含むため、作業者(18歳以上)よりもリスクは高くなっています。
全集団(公衆)及び作業者の組織・臓器別に見た名目確率係数組織・臓器 | 致死がんの確率(10-2Sv-1) |
全集団(公衆) | 作業者 |
胃 | 1.10 | 0.88 |
肺 | 0.85 | 0.68 |
結腸 | 0.85 | 0.68 |
骨髄(赤色骨髄) | 0.50 | 0.40 |
膀胱 | 0.30 | 0.24 |
食道 | 0.30 | 0.24 |
乳房 | 0.20 | 0.16 |
肝臓 | 0.15 | 0.12 |
卵巣 | 0.10 | 0.08 |
甲状腺 | 0.08 | 0.06 |
骨表面 | 0.05 | 0.04 |
皮膚 | 0.02 | 0.02 |
残りの組織・臓器 | 0.50 | 0.40 |
合計 | 5.00 | 4.00 |
b. 組織荷重係数
この致死がんの確率をもとに計算されたのが、放射線防護の目的で導入された組織荷重係数ω
Tです。これは実効線量を定義するために導入された荷重係数の1つです。ただし、組織荷重係数ω
Tは被ばくによる致死がんの確率だけでなく、それぞれのがんの治療できる可能性や重篤度、がんによって潜伏期が異なることなどを考慮して総合的に導き、合計が1となるように規格化し丸めた係数です。