放射性試料を置かない場合でも、放射線検出器を作動させるとある程度の計数が得られ、また、計数率形の針が振れます。これが
自然計数(バックグラウンド計数)と呼ばれるものです。
測定試料の計数率が自然計数率に比べて極めて大きい場合には、統計的に自然計数率は無視できます。しかし、
測定試料の計数率が自然計数率に近いか、あるいは、それ以下の場合、有意な測定値を得るためには以下の努力が必要になります。
- 遮蔽などにより自然計数を下げる。
- 長時間測定により総計数を稼ぎ、測定精度を上げる。
- 速系系の動作の安定性を高める。
- 試料量を大きくする。
- 計数効率を高める。
なお、自然計数に寄与するものとして、以下の要因があります。
- 測定系を構成する材質中の放射性元素
- 環境(建屋、土壌、空気中)に存在する天然放射性元素(特に40K、U系列、Th系列)
- 核実験等に伴うフォールアウト(特に、137Cs、90Sr-90Y)
- 宇宙線(特に、μ粒子の寄与が大きい)
- 電子回路からの要因(ノイズ、偶発同時計数)
反同時計数回路
測定試料の放射能を測定するための主検出器と、その周囲におかれた補助検出器で構成し、同時計数回路とは逆に、両検出器から同時に出力パルスが出てきた場合には、計数しないようにし、主検出器だけからの出力パルスを検出します。すると、自然計数の成分であるμ粒子には両検出器が応答するので、計数されません。したがって、
主検出器の宇宙線バックグラウンドを低くできます。
また、HPGe半導体検出器により微弱放射性試料を測定する場合、補助検出器としてシンチレーション検出器を用います。半導体検出器で検出されるコンプトン電子の信号とコンプトン散乱γ線による補助検出器からの信号は反同時計数回路により、除去できるので、
主検出器によるコンプトン・スペクトルが抑制できます。
一方、全吸収ピークに寄与するγ線は主検出器内で全絵ネルg−を失うので副検出器では検出器できません。この結果、全吸収ピークが明確になり、定性・定量が容易になります。