ススメ！シンデレラロード 大石泉編 
MAPセリフ
| 共通 | 浮かれてるように見えるかな。ふふ、だって毎日が楽しいもの | |
|---|---|---|
| みんなと並んでいたいんだ。だから、この道の先へ…！ | ||
| プログラミングは設計が大事。全体を見渡して計画的にね | ||
| 特定マス | 全て | 楽しいね。私たちには、いろんな可能性があるんだ！ |
| 全タイプ | さあ、いこう。3色の波がそろえば、無敵だから！ | |
| クール | 冷静に分析すれば、ミスなくいけるよね。私の得意分野！ | |
| キュート | 私の笑顔も誰かを笑顔にする…友だちが気づかせてくれたの | |
| パッション | 動くことが、勇気になるの。友だちを見てると、思うんだ | |
| ゴール前 | リリースは目前。バグを出さないように、詰めていこう | |
| ゴール到達 | オーバーヒートしないように。おやつでも食べながら、ね | |
| 課題失敗 | フローを一緒に見直そう。必ず、論理的に解けるはずだよ | |
| 進捗状況は順調だね。このまま、計画的に積み重ねていこう | ||
| 息抜きも大事だよ。ね、カフェラテ、一緒に飲まない？ | ||
| 進行2倍ボーナス発生時 | 上げていくのは、心のクロック数だよね。 ドキドキが倍になれば、 進める距離も、きっと倍になるはずだから…！ | |
| 生まれたての気持ちで、胸がいっぱい…。 オーバーフローしそうなぐらい。 私、もっと…もっと、先へ行きたい…！ | ||
| ふたりが、みんなが、プロデューサーがいてくれる。 あのね、手を引いて…ほしいな…なんて。 ワガママ言っちゃうような私でも、いいかな？ | ||
コミュ
第1話
| さくら 亜子 | せーのっ！ |
| 泉 | えっ？なに？ |
| さくら 亜子 | イズミンおめでとぉ〜〜〜！ いずみ、おめでとさんっ！ |
| 亜子 | あはは、サプライズ大成功っ！ |
| 泉 | お、覚えてて、くれたんだ。 あ……ありがとう。嬉しい。 |
| さくら | もぉ〜、忘れるわけないよぉ〜！ 今日はイズミンの誕生日っ！ わたしたち3人の、大切な日だもんっ♪ |
| 亜子 | はぁ〜、祝った祝った！ この先100年分は祝った気ぃするわ。 |
| さくら | ケーキ、美味しかったねぇ！えっへへー♪ |
| 泉 | あのっ、プレゼントなんだけど…… これ……け、けっこう高かったんじゃないの？ |
| 亜子 | そのへんは買い物上手の亜子ちゃんにおまかせ！ 誕生日にそんなこと気にしとったら損やで、いずみ！ さてと、こっから二次会や〜♪ってことで、いつもの……。 |
| さくら | カラオケに行こ〜！ |
| 亜子 | いやいやいや、ここはゲーセンに行く流れやろ？ カラオケはこないだ行ったばっかやん。 |
| さくら | む〜〜、カラオケがいいよぉ。 イズミンのきれいな歌、聴きたいもんっ。 |
| 泉 | ふふっ、ありがと。 |
| 亜子 | んなこと言うて、さくら、いっつも、 マイクぜんぜん放さへんやん……。 |
| 亜子 | ここはやっぱり、こないだのゲームの決着をつけな……。 ……あ、わかった！さくら、自分だけ弱いからやろ！ さては逃げる気やな〜？ |
| さくら | ち、ちがうよぉ〜。 そうだ、イズミンは？ イズミンはどこかいきたいところ、ないの？ |
| 泉 | 私は……どっちも楽しそう、かな。 まだ時間あるし、どっちも行けばいいんじゃない？ スケジュール管理なら、任せて。 |
| 亜子 | 出た出た。いずみはすぐそうやって人を優先する。 おっしゃ、くすぐったろ！うりうりうりっ！ |
| 泉 | ちょっ……や、やめて……。 ……あは、あはは、あははは……！ |
| さくら | よぉーし、わたしも〜！うりうり〜！ |
| 泉 | （ふたりは――大切で、尊敬してる、私の親友。 ただの仲良しだった昔も、『ニューウェーブ』という アイドルユニットになった今も、それは変わらない。） |
| 泉 | （さくらは、かわいい。 私といつも友達でいてくれる、優しい子。 私たちのユニットの、「笑顔担当」ってとこかな。） |
| 泉 | （亜子の行動力は、さすが。 一緒にいれば、何でもできる気がしてくる。 そうやって、私たちのユニットを引っ張っていってくれてる。） |
| 泉 | （そして、私。 私は――） |
| 泉 | （ふたりがいま、アイドルが楽しいなら、 これからもずっと、アイドルをやってほしい。 それをかなえるのが、私の役目。） |
| 泉 | （ふたりはきっと、 誰かに何か……温かいモノを与えることができる人間だから。 ――私とは、違って。） |
| 数日後 | |
| 亜子 | さーて、ひさびさ、3人そろっての単独LIVEや！ 腕が鳴るわ〜。チャリンチャリンってな！ |
| 泉 | お金の話も大事だけど…… 計画は綿密に立てておかないと。 プロデューサーと打ち合わせしたいことは、たくさんあるし。 |
| さくら | あっ、声がしてるよぉ。 こっちの部屋っ！ もう始まってるのかなぁ？ |
| 泉 | あっ、さくら、きっとまだ前の人たちが…… 邪魔しちゃだめ……。 |
| ？？？ | 『…………ニューウェーブ……』 |
| 泉 | ……？ 私たちの話……？ |
| ？？？ | 『…………ニューウェーブは………… ……………………………………かいさん……』 |
| 泉 | ……かいさん……？えっ！？ |
| 亜子 泉 さくら | えーーーーっ！？ ニューウェーブ解散！？ |
第2話
| 亜子 | アタシ、絶対に嫌やで！ 戦いや戦い！ 浪速のど根性見せたるで！静岡出身やけど！ |
| さくら | やだやだ！わたしも、3人一緒じゃなきゃ嫌だよぉ〜！ |
| 泉 | 私だって、納得できない。 だから、阻止しなきゃ。 そのためには、まず、そうなった理由を考えてみよう。 |
| 亜子 | 理由…………あ！ こないだのLIVE！ さくらがダンスごまかして、へんなポーズ取っとった。 |
| 泉 | うん。あれは、かわいかった。 |
| さくら | えっへへ〜♪ |
| 亜子 | いやいや、冗談に逃げとる場合やない。 アタシら全員、理由なんて山ほどある……。 |
| 泉 | （……そう。山ほど思いあたる。 それはもちろん、さくらや亜子じゃなくて――） |
| 泉 | （私は……できてるのかな。 ふたりみたいに、私にも本当にやれてるのかな。） |
| 泉 | （歌ったり、踊ったり、そういうのじゃなくて。 お客さんのみんなを、笑顔にすること…… 「アイドルができてる」って、本当に言える……？） |
| さくら | あっ、そーだぁ！ いーこと思いついたぁ！ わたしたち、今度、おっきいLIVEやるわけでしょ？ |
| さくら | そのLIVEで、すっごく、すっごく頑張って、 「ニューウェーブすごいねぇ！解散なんてやめよぉ！」 ……って、みんなに思ってもらえればいいんじゃないかなぁ？ |
| 亜子 | ……どう思う、いずみ。 |
| 泉 | うん。かわいい意見だと思う。 |
| 亜子 | うん。アタシはアホやと思う。 けど……。 |
| 亜子 | そういや、最初にアタシらが「アイドルを目指そう」って 決めたときも、こんなノリやったな。 なんか、思い出したわ。ふふ。 |
| 泉 | うん。ふふっ。よし、その作戦で行こう。今度のLIVEで、 高度なパフォーマンスを示す。そして、結果で認めさせる。 私たちはずっと、そうやってきたもの。 |
| さくら | …………？……えへへ♪ アコちゃん！イズミン！ 無敵の友情パワーで、「解散とりやめ」目指して、がんばろぉ！ |
| 亜子 泉 さくら | おーーーーっ！ |
| 泉 | ……あっ、プロデューサー！ |
| 3人が部屋になかなか来ないから迎えにきた、と告げた…… | |
| さくら | ……むぅぅ〜〜……。 |
| 亜子 | あのな、Pちゃん。 アタシら解散なんて、絶対にせぇへんからな。絶対の絶対や！ |
| [なんのこと？] | |
| 泉 | なんのことって……！ |
| 七海 | あっ、泉さんれす〜！ さくらさんと亜子さんもおそろいれすね〜。 ごめんなさい、七海たちの打ち合わせが長引いちゃって〜。 |
| 泉 | ……打ち合わせ？ |
| 七海 | 七海とマキノさんで、おいしい「海産物」のレポート番組、 出ることになったのれすよ！ |
| 亜子 | ……………………「かいさんぶつ」？ |
| マキノ | 泉は、ニューウェーブのLIVE準備で忙しいから、 今回は私と七海のふたりで、って、上の人たちと話していたのよ。 |
| 泉 | あ、あの…… その……も、もしかして……。 …………。 |
| さくら | えーっと…………………………えっへへー♪ |
| [解散なんてしないよ] | |
| さくら | よかったあああああああああ！！ |
| 亜子 | はあ〜〜〜〜〜〜！！ もうほんま、勘弁してや。 ほんま、あーーーーー。安心したぁ……。 |
| 泉 | …………。……………………。 |
| 泉 | （……本当かもしれないって。 一瞬だけ……。考えてしまった……） |
| 泉 | （そう。解散なんて、ありえない。 私たちのプロデューサーがいるんだもの。 冷静に考えれば、わかるはずだったのに。） |
| 亜子 | ……どしたん、いずみ？ なんや難しい顔して。 |
| 泉 | （それでもそんなことを考えてしまった、その理由……。 一度浮かんでしまったその疑問は、厄介なバグみたいに、 頭の中から消えてくれなくて――。） |
| 泉 | （……今日はたまたま、勘違いだった。 でも、これから先、未来はどうなのかな。 アイドルとして……私はふたりと、一緒にいていいのかな？） |
| マキノ | ……そう。自分のアイドルとしてのパフォーマンスに、 自信が持てていない、と……。 それで、私たちの意見を聞きに？ |
| 泉 | さくらや亜子と違って、私には…… アイドルとして、これといった長所がないから……。 |
| 七海 | そんなことないと思うのれす……。 なんだか泉さん、 いつかの七海みたいに迷ってる気がするのれす……。 |
| マキノ | フフ。じゃあ、いいものを送ってあげるわ。 私が特別に編集した動画。貴方たちニューウェーブの、 過去のいろいろなステージが詰まっているわ。 |
| その夜 | |
| 動画の中の さくら | 『聴いてくれて、ありがとうございまぁす！ この曲はねっ、わたしたちの、えーと、えーと…… ……なんだっけ？……えっへへー♪』 |
| 動画の中の 亜子 | 『アタシらの夢と希望と、汗と涙と、 莫大な製作費が詰まってんのやで！ CD、ぎょうさん買うたって〜！』 |
| 泉 | ふたりは、ちゃんとアイドルしてる。 お客さんたちに、笑顔を届けてる。でも……。 |
| 泉 | やっぱり……私の良い所なんてないよ。 |
| 翌日 | |
| 文香 奈緒 | 自主トレ……？ |
| 泉 | うん。今度のLIVEに向けて。 ボーカルやダンスで、頑張るしかないって思ったから。 ……ふたりには、内緒で。 |
| 文香 | ……泉さん。 それは……。 |
| 奈緒 | いいんじゃないか？ ふたりと堂々と、並んでいたいって思うんだろ。 なら、とことんやってみればいいと思う。 |
| 泉 | うん。そうする。 よしっ……さっそく、トレーナーさんにもお願いしてくる！ |
| 奈緒 | 自分でとことんやんなきゃ、わかんないこともある。 そうやって気づいたからこそ、誇りになることも。 あたしは、そう思うんだ。 |
| 文香 | ……たしかに、そうですね。 物語とは、別の誰かに与えられるものではなく、 物語の中に見出すものですから。 |
| 数日後 | |
| さくら | あ〜っ、アコちゃん、 またストラップ、指でぐるんぐるんやってる〜。 飛んでっちゃうよぉ〜。 |
| 亜子 | いずみ……最近、付き合い悪いんとちゃう…？ ひとりでどこ行っとるんやろ……。 |
第3話
| LIVE本番まで、あと2週間―― | |
| 泉 | あー。あー。あー。 …………ふぅ……。 |
| 晶葉 | お、泉。やってるな！ 話は聞いたぞ。 この天才にも協力させろ。なあに、遠慮などするな！ |
| 晶葉 | 私の発明した、ボーカル特訓ロボだ！ まずこれで、お前の現在の歌唱力を正しく測定できるぞ。 では、このボタンをだな……よし……さあ、歌ってみろ！ |
| LIVE本番まで、あと1週間―― | |
| 泉 | いち、に、いち、に。 ……はぁ……はぁ……。 |
| 泉 | 3人でファミレス……。 行きたかったな。……ううん、だめ、いまは我慢……。 行ったら……甘えてしまうから……。 |
| 美玲 | おいッ、「ニューウェーブ解散」ってどういうことだ！？ そんなの、ウチが絶対に許さないからなッ！ |
| 泉 | …………へ？み、美玲っ！？ |
| 数分後 | |
| 美玲 | なーんだ、じゃ、ウチの勘違いだったんだな。 オマエら最近、別々にいることが多いだろ。 だから、急に仲が悪くなったのかって、びっくりしたぞ。 |
| 泉 | そりゃ、私たちだって、べつに四六時中、 一緒にいるってわけじゃ…… …………あ……うん、いるかも……。 |
| 美玲 | おい、泉。 親友は、大事にしろよな。 じゃないと……引っ掻くぞ！ |
| 泉 | うん。絶対、ニューウェーブはなくさない。 私だって、どんなときも3人でいたいもの。 だからいま、こうして、ひとりでレッスンしてるんだ。 |
| 美玲 | ……？ 3人でいるために……ひとりでいる……？ |
| LIVE本番まで、あと4日―― | |
| さくら | イズミーン。 お勉強会やろぉ！ 今日は、LIVEのレッスンもお休みだしぃ。 |
| 亜子 | あぁ〜、急にミニテストやなんて、そない殺生な……。 どないしょ！神様仏様いずみ様……！ |
| 泉 | …………ごめん。あの、今日、私、どうしても…… ひとりでやらなきゃならないことがあって……。 あとでノート、見せてあげるから。本当にごめんっ！ |
| 泉 | ……。ふぅ……。 ねえ、亜子、いまのステップ……。 |
| 泉 | ……そうだ。私、ひとりなんだ。 ふたりにすぐ甘えようとするの……私の、悪いクセ……。 あっ、トレーナーさん？よろしくおねが――。 |
| 泉 | ……じゃなくって、美波さんに茄子さんっ！？ |
| 美波 | ふふ、泉ちゃん。 今日は私がひさしぶりに、あなたの先生ですよっ！ |
| 茄子 | 私も見守っちゃいますよ〜♪ |
| 数分後 | |
| 美波 | いつも集中力が高い泉ちゃんにしてはめずらしく、 ぼーっとしがちじゃない？なにかあった？ |
| 泉 | …………美波先生には、かなわないな。 うん。つい、考えごとしちゃうことが多くて。 私……アイドルに相応しいのかなって。 |
| 泉 | ニューウェーブが……ふたりがアイドルとして活躍するのを、 私がいま、足を引っ張ってるなら…… なんとかしなきゃって、思うんです。 |
| 茄子 | 謙虚なのは、泉ちゃんのいいところですけど。 少し謙虚すぎるのは、よくないかもしれませんよ。 |
| 泉 | 謙虚すぎる……？ |
| 美波 | 身近な人はもちろん、ファンや、もっと多くの人たちが、 泉ちゃんを待ってる……私は、そう思うの。 もちろん私だって、そのひとりよ？ |
| 茄子 | あ、ズルい！ もちろん私もですよ、泉ちゃん♪ |
| 美波 | 「なら、もっとたくさんレッスンを」 泉ちゃんなら、そんな風に考えるかな。でも…… もうちょっとエゴイスティックになってもいいんじゃない？ |
| 美波 | 自分の心の奥を、もう一度、しっかりと見つめて。 泉ちゃんが本当に叶えたいことはなあに？ ふふ、美波先生からの宿題ですよ♪ |
| 亜子 | ……はぁ。 いずみって、ああいうとこあるよね。 黙ってひとりだけ自主トレなんて……バレバレなのに。 |
| 亜子 | ……やっぱり、悩んでるんかな。 「3人でアイドルやろう」って、アタシやさくらが言いだしたのを 自分のためだって……。それで自分を責めて、遠慮ばっかり……。 |
| 亜子 | …………。 あ〜〜〜〜、もう！ なんで伝わらへんかな！アホかいな！ |
| 亜子 | アイドルやるのは、アタシらのためや！ アタシらが、いずみと一緒にいたいんや！ ……いまだって、この先だって、ずっとや！そういう意味よっ！ |
| さくら | …………。 |
| 亜子 | あ、しもた。 さくらおったわ。 ごめんな、いきなり怒って。 |
| さくら | …………。 |
| 亜子 | な、なにニコニコしとんの？ |
| さくら | あのね、きっと、イズミンも、つらいだろうなぁって思うから。 |
| さくら | だから、わたしは、ニコニコしてようかなぁって！ 帰ってきたイズミンに、笑顔でおかえりって言いたいから！ |
| 亜子 | …………。 ……いずみ。あのアホ。はよ帰ってき。 さくらのやらかいほっぺが、つってまうがな……。 |
| 泉 | ……私の……本当に叶えたいこと……。 美波さんの言ってた……私の心の奥の、本当の望み……。 |
| 泉 | ……明日は、休日か。 朝から、レッスンかな。 独り……で……。 |
第4話
| -河川敷- | |
| 泉 | …………。 サボっちゃった。 ……自分から、始めたことなのにね。……悪い子だな、私。 |
| 泉 | …………。 ……お姉ちゃんは、どうしたらいいのかな。 今のお姉ちゃん、おかしいって思う……？ |
| かな子 | ……わ、わわっ……！ |
| 泉 | ええっ！？か、かな子さんっ！？ ……おっと……あ、危なっ……！ |
| かな子 | ……ふぅ……よ、よかったぁ〜！せっかく焼いたマドレーヌ、 ひっくり返しちゃうとこだったよ〜。 ねえ、泉ちゃん。いま、誰としゃべってたの？ |
| 泉 | あ、ええと、その…… ……ひ、ひとりごとを……。 そ、そんなことより、なんでここにかな子さんが？ |
| かな子 | 泉ちゃんが考えごとするときは、ここって決まってるもんね。 はい、差し入れ！疲れてるときは、甘いものが一番だよ♪ |
| 泉 | ありがとうございます。いただきます。 かな子さんって、すごいな……。 誰かが落ち込んでると、笑顔でお菓子をくれて……。 |
| 泉 | 私たちも、たくさんお世話になったっけ……。 あのときの、かな子さんのくれた味。 私、覚えてる。きっと、さくらも、亜子も。 |
| 泉 | 私のまわりって……なんだか、そういう人ばっかりなの。 ひとつひとつ言葉にはしないくせに…… とっても、あったかい人ばっかり……。 |
| かな子 | ふふっ。私なんて、たいしたことないけど…… きっとそれはね、泉ちゃん自身がそういう人だからだよ。 |
| かな子 | ……あれ？ わぁ、今日はなんだか、素敵なヘッドホン！ |
| 泉 | うん。 これ、さくらと亜子からの、誕生日プレゼントなんだ。 体が包み込まれるみたいに、温かい音がするの。 |
| かな子 | いいなぁ……ね、なんの動画みてるの？ あ……ニューウェーブのLIVE？ |
| 泉 | 研究用に、マキノさんが編集したのをもらったんだ。 マキノさん、私に何を伝えたかったのかなって思って……。 いま、もう1回、見なおしてみたの。 |
| かな子 | ……マキノさんの動画には、何が映ってたのかな。 |
| 泉 | 私が、たくさん映ってた。 |
| 泉 | 最初に見てたときは、全然気づかなかったの。 私が、さくらと亜子ばかりを、見てたから。 ……でも、本当に映ってたのは、笑ってる私。 |
| 泉 | おかしいよね。ぜんぜん、知らなかったの。 アイドルのときの、私。 こんなに、ステージで笑ってるんだなって……。 |
| かな子 | さくらちゃんや亜子ちゃんと3人でいるときの泉ちゃんは、いつでも楽しそうに笑ってるよ。 |
| 泉 | ……ずっと、思ってたんだ。 ステージの上でも私は……ふたりや、ファンのみんな、 プロデューサーから、もらってばっかりだって……！ |
| 泉 | それじゃダメ。 ふたりみたいに、もっとほかの誰かに、 笑顔を届けられるようにならなきゃ……。 |
| 泉 | そうじゃなきゃ、いつか私が、 ふたりの足を引っ張って……一緒に、いられなくなる。 |
| かな子 | それを、ふたりには相談した？ |
| 泉 | ううん……。 だって……そんなの、言えるわけない。 |
| 泉 | だって私は、自分の目的に、ふたりを巻き込んじゃったから。 優しいふたりを、これ以上私ひとりのワガママに、 付き合わせられないよ。 |
| 泉 | いまのふたりは、アイドルを楽しんでる。 だから、ふたりにはアイドルを続けてほしい。 その足を引っ張ってしまうなら、今度こそ私は……！ |
| かな子 | 泉ちゃん……。 |
| 泉 | でも……でもね。 マキノさんの映像の私……なんだか、「アイドル」みたいだった。 もしかしたら、もしかしたら、私……。 |
| 泉 | ねえ……かな子さん。 私、ワガママ言ってもいいのかな？ 私……もう少しだけ、自分を信じても、いいのかな？ |
| かな子 | うん……うん！もちろん！ いっぱい、ワガママ言おう！ 我慢をしないのが、笑顔のコツだよ！ |
| 事務所 | |
| 泉 | ……はぁ、はぁ……。はぁ、はぁ……。 |
| さくら | あっ！ イズミンだぁ〜〜〜！ |
| 亜子 | …………。 |
| 泉 | ねえっ、あのっ！ |
| 泉 | ……あのね。 私、ふたりにお願いがあるの。 |
| 亜子 | …………？ |
| 泉 | 聞いて。私にとって、ふたりは…… ふたりは、すごく、特別。 私に出会ってくれたときから、ふたりは、ずっとそうだった。 |
| 泉 | でも、誰にとっても、きっと、ふたりは特別で。 ふたりは、アイドルで。 だからわたしは、ふたりの足を引っ張りたくなかった。 |
| 泉 | 私だけ、ふたりと離れて、ひとりになっても、 自分で自分を、もっとなんとかしなきゃって。 |
| 泉 | でも、ね。 ひとりになった私って…… やっぱり、何かがおかしくて……何かがヘンで……。 |
| 泉 | ひとりでレッスンしてても…… …………つまらないの。 ふたりと一緒にレッスンするのが、私、楽しい。 |
| 泉 | 私、放課後は、ふたりと一緒にショッピングしたい。 一緒に、クレープ食べたい。一緒に、お勉強会したい。 一緒に、ゲームしたい。そして何より、一緒に……。 |
| 泉 | ワガママだって、わかってる。 迷惑かけちゃうって、わかってる。でも、それでも…… お願い。ふたりと一緒に、アイドルやってたいの！ |
| 亜子 | ……………………はぁ。 |
| 亜子 | いきなり入ってきて、まくしたてたと思ったら…… 最初からずぅ〜〜〜〜〜〜っと言ってるやん。 ニューウェーブを守るでって。アホちゃうか。 |
| 泉 | え……？ えっと……。 |
| 亜子 | そもそもな、勘違いしたらアカンでいずみ。 いずみは、アタシらと一緒にいたい言うたけどやな……。 |
| 亜子 | さくらもアタシらと一緒にいたくて、 もちろん、アタシもふたりと一緒にいたい。それだけやん？ 足を引っ張るだのなんだの、なに言うてんの？ |
| 亜子 | そんな、いまさら、なんも変わらん当たり前の どうでもええ話しとる前に…… ……もっと、言うことあるんやないの？ |
| 泉 | …………。 …………。 |
| さくら | …………。 |
| 泉 | あの…… ずっと、ひとりでこそこそ自主トレしてて…… 内緒にしてて、ごめんなさい。 |
| 亜子 | アホか。 バレバレ言うとんねん。 謝るのは、そこやないやろ。 |
| 泉 | もうっ、アホアホ言わないでっ！ ……えっと……。 |
| 泉 | ……さ……寂しくさせちゃって…… ……ごめんなさい……？ |
| さくら | えっへへ〜〜♪ おかえり、イズミンっ！ |
| 亜子 | よろしい！よくできました！ それじゃあ、寂しかった大石さんには、 亜子ちゃんからご褒美に、元気の出るハグを一発――。 |
| 泉 | ちょ、ちょっと、亜子…… く、苦しいったら……。 |
| さくら | んも〜〜〜〜〜！ ふたりでずるい〜〜〜〜！ わたしも〜〜〜！ぎゅ〜〜〜〜っ！ |
| LIVE本番まで、あと1日―― | |
第5話
| LIVE当日 | |
| 奈緒 | おっ、みんないるな。おっしゃ、間に合いそうだっ！ |
| かな子 | 奈緒ちゃん、文香さん！ よかった〜！私たちも、いま集まったところだよ。 |
| 奈緒 | なんだかんだで、もう当日かぁ……。 ……アイツらも、「間に合った」、かな？ |
| 美玲 | 最初の、「解散」の聞き間違いは…… なんていうか……不運だったな……。 |
| 茄子 | うふふ。そうとは限りませんよ〜。 何が不運で、何が幸運かは、 ひとつの出来事だけを見ていてもわからないものです〜。 |
| 晶葉 | メカにトラブルはつきものだ。 それがきっかけで、より強固な機構が誕生することもある。 |
| 文香 | 泉さんの物語は、今日、誕生したのでしょうか？ |
| 奈緒 | それはきっと、見ればわかるさ。 あたしたちも、観客席で、なっ！ |
| 七海 | きっと大丈夫れす！ 七海の勘が、そう告げているので！！ |
| 亜子 | ……楽しいな。 |
| 泉 | ……うん。楽しいね。ふふっ。 |
| さくら | ……楽しいねぇ！ アコちゃん！イズミン！！ |
 | |
| かな子 | ずっと親友だった3人が、そろってアイドルデビューして、 そろってステージに立つ……。 そんな物語があるとするなら、それはきっと、奇跡だって――。 |
| かな子 | みんなは、そう言うかもしれない。でも私は、 もしかしたら、ちょっと違うのかもって思うんだ。 偶然とか、奇跡にしては……なんだか、まぶしすぎるんだもん。 |
| かな子 | 笑ったり。 すれ違ったり。けんかしたり。 なかなおりしたり。また、笑ったり……。 |
| かな子 | これって、言葉にしたら、何だろうね。 ねえ、いま私が見てる、この景色って、なんていうのかな。 |
| 文香 | それはきっと、誰もがいつか通り過ぎた場所。 あるいは、誰もがいつか夢見る場所。 どこにもない、けれど、どこにでもある場所です。 |
| マキノ | これが、アイドルユニット「ニューウェーブ」。 あの人が選びたくて、選んだ3人、ということか。 たしかに、奇跡などではなく……フフ。度し難い人ね。 |
| 奈緒 | 絆は変わらないまま、それでもやっぱり形は変わり続ける。 アイドルって、ユニットって、きっとそういうもんだよな。 |
| 奈緒 | でもきっと……だからこそ。 この輝きは、この先3人が歩く道をずっと、照らし続けるさ。 |
| 文香 | はい。 一冊の書との出会いが、その後の人生を導き続けるように。 |
| アンコールの歓声は、いつまでも鳴りやまなかった…… | |
| 泉 | ……もしもし？……え、観てたって？ プロデューサーに映像……繋いでもらって……。 そっか。 |
| 泉 | ……そうだよ。 お姉ちゃんたちは、3人でずっと…… ……なによ、もう。ありがとう。 |
| 翌日 | |
| 亜子 | 打ち上げやーーーーっ！ |
| さくら | わぁ〜い！ |
| 亜子 | 昨日は、歌って踊って……はー、えらい体力つこたわ……。 しゃー！ファミレスで、お得に食いまくるでーーー！ |
| さくら | え〜〜。 雑貨屋さんがいいよぉ〜。 |
| 亜子 | ……また無駄づかいする気マンマンなやつがおる……。 |
| さくら | おそろいのストラップ、また買おうよぉ！ LIVE、だいせーこーの記念にっ！ それから、ニューウェーブ解散じゃなかった記念っ！えへへ♪ |
| 泉 | （さくらは、かわいい。 誰かのために笑顔でいようと、いつでも頑張ってるから。 だから、私は、さくらが大好き。） |
| 亜子 | ……う〜ん……それもええけど……。 やっぱ、形に残らないものが、いちばんの記念ちゃう？ な、な？いまアタシ、ええこと言うた？ |
| 泉 | （亜子の行動力は、はちゃめちゃで。 いつも、私をぐいぐい引っ張っていくよね。 私自身も気づいてなかった、私の一番行きたいところに。） |
| 亜子 | なあなあ、いずみ。 いずみは、どっちがええの？ ファミレスやんな？ |
| さくら | 雑貨屋さんだよねぇ。 |
| 泉 | （そして、私。 私は――） |
| 泉 | そうだね。 ……電器屋さん、はどうかな？ |
| さくら 亜子 | 電器屋さんーー！？ |
| 泉 | 意外と楽しいんだよ、電器屋さん。 かわいい小物もあるし。 パワーだって感じるよ。最新のCPUとか。 |
| さくら 亜子 | …………。 …………。 |
| 泉 | （そんなふたりと、並んで歩いている私。 少し考えすぎで、心配性な、ふたりの仲間。 ああ、やっと胸を張れる――） |
| 亜子 | ちょ、ちょっと待って〜な！ ……よっしゃ、捕まえたるで！ 覚悟せぇよ！いくで、さくら！ |
| さくら | えっへへ〜、イズミン、離さないもんねーっ！ ぜったい、ぜぇ〜〜ったいっ！ |
| 泉 | 私は、アイドルの大石泉。 そして、私たちがニューウェーブ。 |
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