最終更新: op_eroparo 2010年11月01日(月) 02:19:47履歴
『バカな男』
ルフィたちが、アーロンパークを壊滅し、延々の宴。そのまた後。
大騒ぎの挙句、ココヤシ村を出た、これは、その夜のお話。
女部屋の扉を叩く音がした。
これからの、自分の城として暮らしやすいように、地元の大工に頼んであれこれ改装してもらったけれど、
まだ、どこかよそよそしい感じのする部屋で、私は真新しいノートに航海日誌をつけていたところだった。
ここから、何もかも新しく始める。ワクワクするのと同時に、不安も多い。
そんな、なんとも腰の座りの悪い状況で。
誰かと話してそういうのを紛らせるのも、アリかなって思うじゃない?
だから。
入ってもいいわよって言ったんだけど。
「……なにやってんの?」
いつまでたっても入ってこないもんだから、跳ね板あげて顔だけ出すと。
床にあぐらかいて、仏頂面のゾロがいた。
「よぉ」
「よぉじゃないわよ、入っていいって言ってんのに」
「男は立ち入り禁止って言われたの思い出した」
「…あんたバカなの?」
「何でだ」
「主人が入っていいって言ったら、入っていいのに決まってるじゃないの」
「そういうもんか」
「そうよ」
「じゃあ邪魔する」
へんなやつ!
冷静に考えてみたら、こいつじゃ、話相手としてはちょっと不足かも。ラウンジに行くんだったかしら。
入ったら入ったで突っ立ったまま、こっち見てるし。適当に座れば、と言うと、ああ、とソファに腰掛けて。
…………挙句だんまりよ?なんなの、一体?…き、気味悪いわね。
しょうがないから日誌、書き上げちゃったわよ。その間、じーっとこっち見てるの。見てるだけ。
あー、もう!
「あのね?あんた私に用があって来たんじゃないの?」
「…用がなきゃだめか?」
「普通そうでしょ!」
「そうか」
「そうよ!!!」
何?何なの?イライラする。こんなに歯切れの悪い男だったっけ、こいつ!いつもだったら、もっとこう…。
………う。ケンカばっかりしてたんじゃないの、私たち。…もういい、叩き出そう。
そう思った瞬間だった。
「じゃあ、やらせろ」
「…は?何をよ」
「おまえを抱かせろ、つってんだ」
…………はぁあああ?!!
なんか…もう…私、頭のどっかキレたわ。
「信じらんない!言うに事欠いてそれ?!何がどうしたら"じゃあ"そういうことになるのかキッチリご説明くださいます?!」
「落ち着け。おまえが、用がなきゃだめだって言ったんだろ」
「これが落ち着いてられるかっていうのよ!じゃあなに!後付けの用なの?!それが!よりによってそれ?!」
「いや、最初からその予定だったんだが…」
「!!!イヤッ!何それ!じゃああんたそこに座ってる間中、ずーっとそのことばっかり考えてたっていうの?イヤらしい!信じらんない!変態!スケベ!出てって出てって出てってよ!!!」
手当たり次第に物を投げつけて、近寄れないように威嚇するんだけど、全部受け止めやがるのよ、コイツ!キー!!
憎ったらしい!!…あ!投げるものなくなっちゃった!
最後に投げた本を持ったまま…………や、やだ…近寄ってくる………。
「おしまいか?」
「大声出すわよ!」
「もう出してんじゃねェか。こっちの話も聞けよ」
「命令しないでよ!」
「…じゃあ頼む。聞いてくれ」
「頼みごとは一件一万ベリーよ」
「高ェな!あー…、ツケといてくれ」
「ツケですって?何の冗談?誰に向かってもの言ってんの?」
「真剣だ。…おまえ以外に誰かいんのか?」
キョロキョロあたり見回してる。ああ、もう…!
「…言ってみなさいよ」
「おまえとやりてェんだよ」
ああ!もう!振り出しに戻ってんじゃないのよ!!本格的なバカだわこいつ!
「どうして私が相手しなきゃなんないわけ?溜まってんなら一人で処理すればいいじゃない」
「処理…あァ、そりゃぁ必要に応じてやっちゃいるんだが」
「っ!そんなの聞いてないわよ!"いるんだが"何よ!」
「………………………………………………………………………あー…」
……なに。
口、への字に結んで。困ったような拗ねたような顔して。…そんな顔、初めて見るわよ。
ど、同情買おうったって売るほどないからねっ。
「いや、驚かせたのは悪かった。だが……」
「…だが?」
「…………………」
話すすまないじゃないの、これじゃ。呆れて見てたら、はーっと大きな溜息。
溜息つきたいのはこっちだっていうのよ。
「言いなさいよ。どうして私が相手しなきゃなんないの?」
「…それは言えねェ」
「なんでよ!」
「言ったら負けだからだ」
「はぁ?!」
何の勝負よ、一体。…ムリヤリ乱暴働くつもりはなさそうだけど。
さっきから妙な緊張感が漂ってるのよ。
思わず身構えると、ますます溜息をついた。
「…わからねェか」
………。
…わかってるわよ。ほんとは。わかっちゃったわよ!この…バカの本音。
それで、…どうしてだか私もジリジリしてんのよ。だけど。
「まさかあんた、"目を見りゃわかる"だの、時代錯誤なこと信じてるんじゃないでしょうね?」
私そんなに優しい女じゃないわ。
「バカなんじゃない?人間同士のコミュニケーションは言語が大半以上をしめてんのよ」
知りたいわ。
「難しかったかしら?言わなきゃわかんない、って言ってんの」
聞かせてよ。
「大体何に負けるっていうのよ。誰と勝負してんの?何の勝負なの?何を言ったら負けなの?」
「あァ?…おまえ知らねぇのか。"惚れてる"って先に言っちまったほうが負けなんだぞ。………………ん?」
…!
やだ。なんで。
「あんた、バカ王でも目指してんの?言っちゃってるし。おまけにそれ微妙に違うし。"惚れたほうが負け"でしょ?」
「………………そうなのか」
「…そうよ」
顔、熱いの?
腕、引き寄せられて。抱きすくめられたら、もう、身動きできない。
「すごい音」
「うるせェ」
「あんたの心臓が、よ」
「言うな」
「いつから?」
「知るか」
顎掴まれて、乾いた唇が塞いできた。
お世辞にも上手いとは言えない。ぎゅうぎゅう押し当てるだけじゃだめよ。もっと…。
「んっ」
歯を、こじあけるようにして入ってきて。舌が…。
!?!?!?!?!
なに?なに?これ?どうして、やだ、嘘、や…………
……怖いっ……!
食い散らかされて、血みどろの肉塊だけになった自分のイメージが、頭の中に浮かび上がる。
足がガクガク震えて、止まらない。腰のあたり、支えられて、抱きしめられてるのに。
墜落しそう………!
「…お、おい?」
「っ…は…ァッ」
「嫌なのか」
「違…。ァ…は……」
息があがって、まともに顔見られない。胸に埋めて隠した。
…やだ。ちょっと…。
……濡れちゃってる……。
スリルを味わうキスだなんて、初めて…。
「嫌でも、俺ァ止まらねェぞ」
「…だから、嫌じゃ…」
「じゃあ好いのか」
「…!バカ!」
「おまえ、あんまバカバカ言うな」
「えっ?」
Tシャツの裾から手が入ってきて…。!!!やだ、ほんとに?このまま?しちゃうの?嘘!
「あっ、コラ!やだっ…」
バカ力!下から撫で上げる勢いだけで、ブラまでずり上げられちゃって…あぁっ!ヤだっ…!
「…すげぇな」
あァ!やだ!や……見…られ、ちゃっ…
「んぁあっ!」
ヤだ、ダメ!舐めないで!
さっきのキスを思い出して、ざわっと背中を何かが這い上がった。とたんに、腰のあたりが覚束なくなる。
ゾロの熱い唇が、乳首を吸って、舌先で転がしている。千切れるほど揉みしだかれるんじゃないかと思っていたのに、
予想外に優しかった。壊れ物に触れるように、そっと撫で上げて。…嘘。ちょっとじれったくなっちゃうわ。
「破裂しそうだな」
「っ…何よ、それ…」
「パチン、と」
「…ゴム風船じゃないんだから……怖い?」
この程度よ、こいつが考えることなんて。繊細なガラス細工だのなんだのなんて単語は出てこないわよね。…出てきたらそれはそれで怖いけど。
「…つぅか。おまえが怖がらないようにしてやりてェな」
口の端だけで笑う。…そういうこと、言えるのね…。
なんて思っていたら、突然の浮遊感。足が床から離れ、横抱きに抱え上げられた。
ソファにそのまま腰掛けて、私はゾロの膝の上。背中を片手で支えられた。
「あ、ちょっと…服」
「いんだよ。脱がさせろ?」
…恥ずかしい。たくし上げられてたTシャツを首から引き抜かれて。
「ん」
両手を後ろに回して、抱きしめた姿勢で、ホックと格闘してる。
首筋に熱い息。それほど苦戦はしなかったようで、ほどなくブラも脱がされた。
「痛むか?」
「え?」
左肩に巻かれた包帯を指先でなぞりながら、言う。……心配してくれてるの?
「女が体に傷作るもんじゃねェ」
「泥棒稼業が長かったんだから、しょうがないじゃない」
「は。これからは海賊だしな。でも……ま、キレイなもんだ」
「当然でしょ」
「エラソーに。…ほっせェ腰だな」
ぷつん、とスカートのホックを外すと、ジッパーを下ろして脱がせてくる。
腰を浮かせて手伝うと、ニヤリと笑った。…や、やだ。そんなんじゃないわよ。
ムリヤリ脱がされたら傷んじゃうから…。
「あっ…」
背中から回された手が、胸を包み込んだ。乳首の下側を骨ばった指がなぞるように動いて…。
「…あ……あ……ぁ…」
「好い声だな」
「や…」
「ずっと聞いていたくなる」
「あ…ぁ、ね…もうちょっと…強く、して…」
「…こうか」
「あっ…!」
人差し指と中指の背でキュっと挟まれて、親指の腹で撫ぜまわされた。やだ…気持ち、イイ…。
「口、吸わせろよ」
「っ…待って。私に、させて」
さっきみたいなの何度もされたら、どうなっちゃうかわかんない。手出ししないでね、と釘を刺して、やんわりと吸った。
ちょっとさかむけになってるところを舐めて。柔らかく食みながら、綺麗な歯列をなぞる。熱い舌先を探せば、ここだ、と知らせるように微かに差し出してきた。うっすら開けて見ると…目が…合っちゃった。普段はちょっと見ない、優しい感じで笑ってる。ずっと見てたの?
恥ずかしくて、でも止められなくて。どうして私、こんな泣きそうな気分になるの…?
ゾロは、ずっと私の胸の先を触っていて。首から、頬から、熱くなる。夢中で舌を絡めて、熱を移しあって。息苦しさに微かに離せば、もっとしろよと強請った。
もうどれくらい、そうしてたんだろう。
ゾロの手のひらが、いつのまにか胸からお腹まで移動してて。あっと思う暇もなく、脚の間に滑り込んだ。
「……いつから濡れてた?」
「っ、バカ…」
「バカって言うな。ぐしょ濡れだぜ。教えろよ」
「…最初に…キス、されたとき…」
「へェ」
下着の上から、くにゅ、と押されて。窪む、私のそこは、もうとっくに刺激を求めてた。
「あ、ぁ、……直に…して」
「ん」
脇から指が滑り込んで、掻き分けて行く。待ち望んでいたそれを、あっけなく受け入れてしまって。
「…入っちまった」
「あっ!や…や…!」
内側を掻くように動かされて、どうしたらいいのかわからなくなる。いやらしい音まで聞こえてきて…。
ああ!そこ、ダメ!
「はんっっぅ!」
「あァ、ダメだ。舐めさせろ」
「…っえ?」
「イっちまうおまえを見てェ」
膝からソファの上に移動させられて、下着に手をかけたゾロの顔は、頬が上気して、命令口調なのに、まるで哀願するかのようだった。
こんなの、絶対他の誰にも見せたくない。
頼りない、小さな下着はあっというまに脚から抜き取られてしまって…。
あ!ヤダ!!!
そうよ、あんなキス、そこにされたら…!ああっ!
「やぁっ!あァ!ア!ダメッ、ゾロっ!」
音高く啜りあげられて、頭のなかがグラグラ煮えたぎる。もう、もう、なにされてるのかわからない。
ラビアを、クリトリスを、熱い熱い舌先が、舐めて、抉って、噛みつくみたいに、吸って、吸って…。
「や、や、ァ!ア!ダメ!ゾロ!ダメ…ァアッ!!!」
…高いところから、突き落とされるような感じがした。
意識を取り戻して、目を開けると。
シャツを脱いでいるゾロの背中が見えた。包帯でぐるぐる巻きの体。そうよ、あんただって怪我人じゃないの。
ほんとうなら全治二年の。バカみたい。そんな体で、私を抱きにくるなんて。
「ぁンだよ」
偉そうな顔したって、笑っちゃうわ。あんたが私に、惚れてるんじゃない。
「バーカ」
「おまえなぁ」
ぐっと上からのしかかってきて、ちょっと考えるような顔をした。私の背中を抱き上げて。
…やだ、傷を庇ってるの?私の?
こんなの、縫合だってすませたし、新しいタトゥーの腫れが引くまで、隠してるだけのものなのに。
「しがみついてろ」
私の両腕を首に巻きつけて、真剣な顔。
「…あっ!」
脚を、大きく割られて、熱い塊が押し当てられた。入り口をヌルヌル擦ってる…。
「ヒクついてるぜ。欲しいか」
「…っ…ぁ、知らな…」
「何だよ。"言わなきゃわかんない"んだろ?」
「…バカ…ぁ」
「……そういう声で言われんなら、悪くねェな」
「え…?」
「バカってよ」
腰を抱え上げられて、ぬっっと入り込んできた。熱い熱いそれが、前後しながら、私の内側を拡げて行く。
「あっ…んぁっ…おっ…きぃっ……!」
「…狭い、な」
最奥までたどり着いたと思ったら、じっと動かない。な、なに…顔、見て…やだっ…。
思わずギュッっと目をつぶった。
「俺が動かしてねェのに、ヌメヌメ動いてる…おまえの」
「やっ…!」
指先でクリトリスをくちくち擦られて、思わず腰が揺れてしまう。ダメ、ダメ、恥ずかしい…!
見ないで、こんな顔見ないで…。
「目、開けろよ。こっち見ろ」
知らずに零れた涙を拭われて、目を開けば。見上げてくるゾロの瞳、濡れたその鏡面に、私が映りこんでいた。
情けない顔。眉根が寄って、涙落としながら、口で息して…。ああ、耳の後ろまで熱い。
ゆっくり抜き差しされて、その映像もユラユラ揺れる。ぬちゅっぬちゅっと、卑猥な音が聞こえて。
見詰め合ったまま、気が狂いそう、こんな…。
「好い顔だ…他のヤツには見せんなよ」
言うなり、強く揺さぶられた。私も、もうすっかり限界で。突き上げてくるリズムにあわせて、腰が踊る。
「あっ、ダメ、また…!」
「イけよ。イけ…」
「ぁアッ、んっ!んっ!…一緒に…っ!ゾロ…」
「…あァ」
大きな手が、腰を掴んで、最奥を抉るように突き上げてきた。意識が、奔流となって流れ出す。
激しい渦に巻き込まれ、上昇していく………もう、何も考えられない。
「ンあァァッ!イッ…っ…ゾロ、好き…好きィ…っ!!!」
「……っ……!」
私の中で、ゾロは全てを吐き出した。
髪を撫でられている感触で、目を開ける。
狭いソファの上、ゾロの脇の窪みのところに頭が預けられていて。…不思議ね。あつらえたみたいにぴったりよ。
ゾロは私の体の、熱の名残を指先で確かめるようになぞっている。ダメよ、また熱くなっちゃうから。
手を封じると、不満げな顔になった。
「ねぇ、教えてくれる?どうして私なの」
「理由がいるのかよ。面倒だな、女は」
「聞きたい」
「…おまえだからだ」
「理由になってないわ」
「そうか?」
「そうよ」
もういいだろ、と抱きしめられる。温かい体温。包帯越しの、生きている、体。
この男が、死ななくてよかった。思うと、涙が滲んでくる。
「なぁ。おまえ、さっき言ったな」
「…え?」
「好きだってよ」
「……………………バカ!!!」
ガン!と頭を拳骨で殴ると、うがっ、とうめいた。
「…ってぇ…おまえ今日だけで何回バカって言ったよ」
「バカにはバカって言うしかないじゃないのよ!」
「だからバカバカ言うな!やっちまうぞ!」
「エロ魔獣!ケダモノ!!やっ…………………ァあん!!!」
…ニヤニヤ笑ってるんじゃないわよ!もぉ!バカ!
end.
ルフィたちが、アーロンパークを壊滅し、延々の宴。そのまた後。
大騒ぎの挙句、ココヤシ村を出た、これは、その夜のお話。
女部屋の扉を叩く音がした。
これからの、自分の城として暮らしやすいように、地元の大工に頼んであれこれ改装してもらったけれど、
まだ、どこかよそよそしい感じのする部屋で、私は真新しいノートに航海日誌をつけていたところだった。
ここから、何もかも新しく始める。ワクワクするのと同時に、不安も多い。
そんな、なんとも腰の座りの悪い状況で。
誰かと話してそういうのを紛らせるのも、アリかなって思うじゃない?
だから。
入ってもいいわよって言ったんだけど。
「……なにやってんの?」
いつまでたっても入ってこないもんだから、跳ね板あげて顔だけ出すと。
床にあぐらかいて、仏頂面のゾロがいた。
「よぉ」
「よぉじゃないわよ、入っていいって言ってんのに」
「男は立ち入り禁止って言われたの思い出した」
「…あんたバカなの?」
「何でだ」
「主人が入っていいって言ったら、入っていいのに決まってるじゃないの」
「そういうもんか」
「そうよ」
「じゃあ邪魔する」
へんなやつ!
冷静に考えてみたら、こいつじゃ、話相手としてはちょっと不足かも。ラウンジに行くんだったかしら。
入ったら入ったで突っ立ったまま、こっち見てるし。適当に座れば、と言うと、ああ、とソファに腰掛けて。
…………挙句だんまりよ?なんなの、一体?…き、気味悪いわね。
しょうがないから日誌、書き上げちゃったわよ。その間、じーっとこっち見てるの。見てるだけ。
あー、もう!
「あのね?あんた私に用があって来たんじゃないの?」
「…用がなきゃだめか?」
「普通そうでしょ!」
「そうか」
「そうよ!!!」
何?何なの?イライラする。こんなに歯切れの悪い男だったっけ、こいつ!いつもだったら、もっとこう…。
………う。ケンカばっかりしてたんじゃないの、私たち。…もういい、叩き出そう。
そう思った瞬間だった。
「じゃあ、やらせろ」
「…は?何をよ」
「おまえを抱かせろ、つってんだ」
…………はぁあああ?!!
なんか…もう…私、頭のどっかキレたわ。
「信じらんない!言うに事欠いてそれ?!何がどうしたら"じゃあ"そういうことになるのかキッチリご説明くださいます?!」
「落ち着け。おまえが、用がなきゃだめだって言ったんだろ」
「これが落ち着いてられるかっていうのよ!じゃあなに!後付けの用なの?!それが!よりによってそれ?!」
「いや、最初からその予定だったんだが…」
「!!!イヤッ!何それ!じゃああんたそこに座ってる間中、ずーっとそのことばっかり考えてたっていうの?イヤらしい!信じらんない!変態!スケベ!出てって出てって出てってよ!!!」
手当たり次第に物を投げつけて、近寄れないように威嚇するんだけど、全部受け止めやがるのよ、コイツ!キー!!
憎ったらしい!!…あ!投げるものなくなっちゃった!
最後に投げた本を持ったまま…………や、やだ…近寄ってくる………。
「おしまいか?」
「大声出すわよ!」
「もう出してんじゃねェか。こっちの話も聞けよ」
「命令しないでよ!」
「…じゃあ頼む。聞いてくれ」
「頼みごとは一件一万ベリーよ」
「高ェな!あー…、ツケといてくれ」
「ツケですって?何の冗談?誰に向かってもの言ってんの?」
「真剣だ。…おまえ以外に誰かいんのか?」
キョロキョロあたり見回してる。ああ、もう…!
「…言ってみなさいよ」
「おまえとやりてェんだよ」
ああ!もう!振り出しに戻ってんじゃないのよ!!本格的なバカだわこいつ!
「どうして私が相手しなきゃなんないわけ?溜まってんなら一人で処理すればいいじゃない」
「処理…あァ、そりゃぁ必要に応じてやっちゃいるんだが」
「っ!そんなの聞いてないわよ!"いるんだが"何よ!」
「………………………………………………………………………あー…」
……なに。
口、への字に結んで。困ったような拗ねたような顔して。…そんな顔、初めて見るわよ。
ど、同情買おうったって売るほどないからねっ。
「いや、驚かせたのは悪かった。だが……」
「…だが?」
「…………………」
話すすまないじゃないの、これじゃ。呆れて見てたら、はーっと大きな溜息。
溜息つきたいのはこっちだっていうのよ。
「言いなさいよ。どうして私が相手しなきゃなんないの?」
「…それは言えねェ」
「なんでよ!」
「言ったら負けだからだ」
「はぁ?!」
何の勝負よ、一体。…ムリヤリ乱暴働くつもりはなさそうだけど。
さっきから妙な緊張感が漂ってるのよ。
思わず身構えると、ますます溜息をついた。
「…わからねェか」
………。
…わかってるわよ。ほんとは。わかっちゃったわよ!この…バカの本音。
それで、…どうしてだか私もジリジリしてんのよ。だけど。
「まさかあんた、"目を見りゃわかる"だの、時代錯誤なこと信じてるんじゃないでしょうね?」
私そんなに優しい女じゃないわ。
「バカなんじゃない?人間同士のコミュニケーションは言語が大半以上をしめてんのよ」
知りたいわ。
「難しかったかしら?言わなきゃわかんない、って言ってんの」
聞かせてよ。
「大体何に負けるっていうのよ。誰と勝負してんの?何の勝負なの?何を言ったら負けなの?」
「あァ?…おまえ知らねぇのか。"惚れてる"って先に言っちまったほうが負けなんだぞ。………………ん?」
…!
やだ。なんで。
「あんた、バカ王でも目指してんの?言っちゃってるし。おまけにそれ微妙に違うし。"惚れたほうが負け"でしょ?」
「………………そうなのか」
「…そうよ」
顔、熱いの?
腕、引き寄せられて。抱きすくめられたら、もう、身動きできない。
「すごい音」
「うるせェ」
「あんたの心臓が、よ」
「言うな」
「いつから?」
「知るか」
顎掴まれて、乾いた唇が塞いできた。
お世辞にも上手いとは言えない。ぎゅうぎゅう押し当てるだけじゃだめよ。もっと…。
「んっ」
歯を、こじあけるようにして入ってきて。舌が…。
!?!?!?!?!
なに?なに?これ?どうして、やだ、嘘、や…………
……怖いっ……!
食い散らかされて、血みどろの肉塊だけになった自分のイメージが、頭の中に浮かび上がる。
足がガクガク震えて、止まらない。腰のあたり、支えられて、抱きしめられてるのに。
墜落しそう………!
「…お、おい?」
「っ…は…ァッ」
「嫌なのか」
「違…。ァ…は……」
息があがって、まともに顔見られない。胸に埋めて隠した。
…やだ。ちょっと…。
……濡れちゃってる……。
スリルを味わうキスだなんて、初めて…。
「嫌でも、俺ァ止まらねェぞ」
「…だから、嫌じゃ…」
「じゃあ好いのか」
「…!バカ!」
「おまえ、あんまバカバカ言うな」
「えっ?」
Tシャツの裾から手が入ってきて…。!!!やだ、ほんとに?このまま?しちゃうの?嘘!
「あっ、コラ!やだっ…」
バカ力!下から撫で上げる勢いだけで、ブラまでずり上げられちゃって…あぁっ!ヤだっ…!
「…すげぇな」
あァ!やだ!や……見…られ、ちゃっ…
「んぁあっ!」
ヤだ、ダメ!舐めないで!
さっきのキスを思い出して、ざわっと背中を何かが這い上がった。とたんに、腰のあたりが覚束なくなる。
ゾロの熱い唇が、乳首を吸って、舌先で転がしている。千切れるほど揉みしだかれるんじゃないかと思っていたのに、
予想外に優しかった。壊れ物に触れるように、そっと撫で上げて。…嘘。ちょっとじれったくなっちゃうわ。
「破裂しそうだな」
「っ…何よ、それ…」
「パチン、と」
「…ゴム風船じゃないんだから……怖い?」
この程度よ、こいつが考えることなんて。繊細なガラス細工だのなんだのなんて単語は出てこないわよね。…出てきたらそれはそれで怖いけど。
「…つぅか。おまえが怖がらないようにしてやりてェな」
口の端だけで笑う。…そういうこと、言えるのね…。
なんて思っていたら、突然の浮遊感。足が床から離れ、横抱きに抱え上げられた。
ソファにそのまま腰掛けて、私はゾロの膝の上。背中を片手で支えられた。
「あ、ちょっと…服」
「いんだよ。脱がさせろ?」
…恥ずかしい。たくし上げられてたTシャツを首から引き抜かれて。
「ん」
両手を後ろに回して、抱きしめた姿勢で、ホックと格闘してる。
首筋に熱い息。それほど苦戦はしなかったようで、ほどなくブラも脱がされた。
「痛むか?」
「え?」
左肩に巻かれた包帯を指先でなぞりながら、言う。……心配してくれてるの?
「女が体に傷作るもんじゃねェ」
「泥棒稼業が長かったんだから、しょうがないじゃない」
「は。これからは海賊だしな。でも……ま、キレイなもんだ」
「当然でしょ」
「エラソーに。…ほっせェ腰だな」
ぷつん、とスカートのホックを外すと、ジッパーを下ろして脱がせてくる。
腰を浮かせて手伝うと、ニヤリと笑った。…や、やだ。そんなんじゃないわよ。
ムリヤリ脱がされたら傷んじゃうから…。
「あっ…」
背中から回された手が、胸を包み込んだ。乳首の下側を骨ばった指がなぞるように動いて…。
「…あ……あ……ぁ…」
「好い声だな」
「や…」
「ずっと聞いていたくなる」
「あ…ぁ、ね…もうちょっと…強く、して…」
「…こうか」
「あっ…!」
人差し指と中指の背でキュっと挟まれて、親指の腹で撫ぜまわされた。やだ…気持ち、イイ…。
「口、吸わせろよ」
「っ…待って。私に、させて」
さっきみたいなの何度もされたら、どうなっちゃうかわかんない。手出ししないでね、と釘を刺して、やんわりと吸った。
ちょっとさかむけになってるところを舐めて。柔らかく食みながら、綺麗な歯列をなぞる。熱い舌先を探せば、ここだ、と知らせるように微かに差し出してきた。うっすら開けて見ると…目が…合っちゃった。普段はちょっと見ない、優しい感じで笑ってる。ずっと見てたの?
恥ずかしくて、でも止められなくて。どうして私、こんな泣きそうな気分になるの…?
ゾロは、ずっと私の胸の先を触っていて。首から、頬から、熱くなる。夢中で舌を絡めて、熱を移しあって。息苦しさに微かに離せば、もっとしろよと強請った。
もうどれくらい、そうしてたんだろう。
ゾロの手のひらが、いつのまにか胸からお腹まで移動してて。あっと思う暇もなく、脚の間に滑り込んだ。
「……いつから濡れてた?」
「っ、バカ…」
「バカって言うな。ぐしょ濡れだぜ。教えろよ」
「…最初に…キス、されたとき…」
「へェ」
下着の上から、くにゅ、と押されて。窪む、私のそこは、もうとっくに刺激を求めてた。
「あ、ぁ、……直に…して」
「ん」
脇から指が滑り込んで、掻き分けて行く。待ち望んでいたそれを、あっけなく受け入れてしまって。
「…入っちまった」
「あっ!や…や…!」
内側を掻くように動かされて、どうしたらいいのかわからなくなる。いやらしい音まで聞こえてきて…。
ああ!そこ、ダメ!
「はんっっぅ!」
「あァ、ダメだ。舐めさせろ」
「…っえ?」
「イっちまうおまえを見てェ」
膝からソファの上に移動させられて、下着に手をかけたゾロの顔は、頬が上気して、命令口調なのに、まるで哀願するかのようだった。
こんなの、絶対他の誰にも見せたくない。
頼りない、小さな下着はあっというまに脚から抜き取られてしまって…。
あ!ヤダ!!!
そうよ、あんなキス、そこにされたら…!ああっ!
「やぁっ!あァ!ア!ダメッ、ゾロっ!」
音高く啜りあげられて、頭のなかがグラグラ煮えたぎる。もう、もう、なにされてるのかわからない。
ラビアを、クリトリスを、熱い熱い舌先が、舐めて、抉って、噛みつくみたいに、吸って、吸って…。
「や、や、ァ!ア!ダメ!ゾロ!ダメ…ァアッ!!!」
…高いところから、突き落とされるような感じがした。
意識を取り戻して、目を開けると。
シャツを脱いでいるゾロの背中が見えた。包帯でぐるぐる巻きの体。そうよ、あんただって怪我人じゃないの。
ほんとうなら全治二年の。バカみたい。そんな体で、私を抱きにくるなんて。
「ぁンだよ」
偉そうな顔したって、笑っちゃうわ。あんたが私に、惚れてるんじゃない。
「バーカ」
「おまえなぁ」
ぐっと上からのしかかってきて、ちょっと考えるような顔をした。私の背中を抱き上げて。
…やだ、傷を庇ってるの?私の?
こんなの、縫合だってすませたし、新しいタトゥーの腫れが引くまで、隠してるだけのものなのに。
「しがみついてろ」
私の両腕を首に巻きつけて、真剣な顔。
「…あっ!」
脚を、大きく割られて、熱い塊が押し当てられた。入り口をヌルヌル擦ってる…。
「ヒクついてるぜ。欲しいか」
「…っ…ぁ、知らな…」
「何だよ。"言わなきゃわかんない"んだろ?」
「…バカ…ぁ」
「……そういう声で言われんなら、悪くねェな」
「え…?」
「バカってよ」
腰を抱え上げられて、ぬっっと入り込んできた。熱い熱いそれが、前後しながら、私の内側を拡げて行く。
「あっ…んぁっ…おっ…きぃっ……!」
「…狭い、な」
最奥までたどり着いたと思ったら、じっと動かない。な、なに…顔、見て…やだっ…。
思わずギュッっと目をつぶった。
「俺が動かしてねェのに、ヌメヌメ動いてる…おまえの」
「やっ…!」
指先でクリトリスをくちくち擦られて、思わず腰が揺れてしまう。ダメ、ダメ、恥ずかしい…!
見ないで、こんな顔見ないで…。
「目、開けろよ。こっち見ろ」
知らずに零れた涙を拭われて、目を開けば。見上げてくるゾロの瞳、濡れたその鏡面に、私が映りこんでいた。
情けない顔。眉根が寄って、涙落としながら、口で息して…。ああ、耳の後ろまで熱い。
ゆっくり抜き差しされて、その映像もユラユラ揺れる。ぬちゅっぬちゅっと、卑猥な音が聞こえて。
見詰め合ったまま、気が狂いそう、こんな…。
「好い顔だ…他のヤツには見せんなよ」
言うなり、強く揺さぶられた。私も、もうすっかり限界で。突き上げてくるリズムにあわせて、腰が踊る。
「あっ、ダメ、また…!」
「イけよ。イけ…」
「ぁアッ、んっ!んっ!…一緒に…っ!ゾロ…」
「…あァ」
大きな手が、腰を掴んで、最奥を抉るように突き上げてきた。意識が、奔流となって流れ出す。
激しい渦に巻き込まれ、上昇していく………もう、何も考えられない。
「ンあァァッ!イッ…っ…ゾロ、好き…好きィ…っ!!!」
「……っ……!」
私の中で、ゾロは全てを吐き出した。
髪を撫でられている感触で、目を開ける。
狭いソファの上、ゾロの脇の窪みのところに頭が預けられていて。…不思議ね。あつらえたみたいにぴったりよ。
ゾロは私の体の、熱の名残を指先で確かめるようになぞっている。ダメよ、また熱くなっちゃうから。
手を封じると、不満げな顔になった。
「ねぇ、教えてくれる?どうして私なの」
「理由がいるのかよ。面倒だな、女は」
「聞きたい」
「…おまえだからだ」
「理由になってないわ」
「そうか?」
「そうよ」
もういいだろ、と抱きしめられる。温かい体温。包帯越しの、生きている、体。
この男が、死ななくてよかった。思うと、涙が滲んでくる。
「なぁ。おまえ、さっき言ったな」
「…え?」
「好きだってよ」
「……………………バカ!!!」
ガン!と頭を拳骨で殴ると、うがっ、とうめいた。
「…ってぇ…おまえ今日だけで何回バカって言ったよ」
「バカにはバカって言うしかないじゃないのよ!」
「だからバカバカ言うな!やっちまうぞ!」
「エロ魔獣!ケダモノ!!やっ…………………ァあん!!!」
…ニヤニヤ笑ってるんじゃないわよ!もぉ!バカ!
end.
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