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   サンジ×ロビン『お砂糖何個』

それはいつもと変らない昼下がり。
穏やかな天候と波。平和な航海。

船長さんは長鼻君と夕食の魚を釣るべく奮闘中。
航海士さんはみかんの木のお手入れ。
剣士さんは甲板でトレーニング中。
船医さんはその横でお昼寝中。

私はラウンジで読書。テーブルに本を積み上げて。

サンジさんはキッチンで、昼食の後の洗い物。

いつもと変らない、この船の日常。


「ロビンちゃん、紅茶はいかが?」
洗い物を終えたサンジさんが、キッチンから私に尋ねる。
「ええ、頂くわ」
「ダージリンにオレンジペコ、色々あるけど何がいい?」
「お任せするわ」
やがて立ち込める、素敵な香り。
私専用のマイセンのティーカップに、温かな紅茶が注がれる。
「ロビンちゃん、お砂糖何個?」
「いらないわ。紅茶はストレートが好きなの」
「そ、」

咥えタバコのまま、ソーサーにカップをセットするサンジさん。
私の好きな人。
私の恋人。

ずっと、見ていたい。

「はい、どうぞ。ロビンちゃん」
「ありがとう…あら、」
小さな音を立てながら、カップを載せたソーサーが私の前に置かれる。
銀色のスプーンの傍らに、真っ白な角砂糖。
「私、ストレートでって言ったのよ? お砂糖、いらないわ」
そう言うと、彼はとぼけたような顔をした。
「そうだっけ?」
サンジさんの手が伸びて、ソーサーの上の角砂糖を取る。
そしてそれを口に軽く咥えて。
椅子に座る私の肩に手をそっと置いて。

「…ん。」

近づいてくる。
眼を閉じた、サンジさんの顔。
その口には、角砂糖が一つ。

「…」
私も目を閉じた。
そして、軽く口をあけて。

――――キスした。

――――甘い。

サンジさんが、舌を絡ませてくる。角砂糖と共に。それに応える。
二人の舌の間で。角砂糖が。
ゆっくりと、溶けていく。
唾液と体温で。

流れ込んでくる、甘い唾液。ごくんと音を立てて、飲み込んだ。
私の唾液とサンジさんの唾液と、溶けた角砂糖。
甘い甘い、キスだった。
それはすぐさま互いの身体に吸収され、指の先、髪の先まで行きわたる。

「ん、ふぅっ…」
綺麗な手が、私の黒髪を撫で、肩へ滑り、カーディガンを自然に脱がせる。
化繊は拒むことなく私の肌からとろりと離れ、音もなく床に落ちた。
そして抱きしめる。
サンジさんが、私を。
熱っぽい、サンジさんの体。スーツ越しでも判るわ。
「ロビン、」
真剣な顔をして、耳元で喘ぐように囁かれる。
ああ、甘い。
耳に掛かるサンジさんの息が。
「シたい」
ここで。
今すぐ。
「いい?」
尋ねられて。拒む理由なんかないから、勿論頷いた。
キャミごと胸を軽くもまれると、喉の奥から跳ねるように声が飛び出した。
「あ、んっ」
「…ロビンちゃんのおっぱい、可愛い」
おっきくて、マシュマロみたいで。
いやね、まるで子供みたい。
「…おっぱい、好き?」
今度は私が尋ねた。
「大好き。勿論、ロビンちゃんのが」
そう言って、サンジさんが私の胸に顔を埋めようとしたとき。

「おーーーい!!サンジぃーーーー!!!」
甲板から、船長さんが大声でサンジさんを呼んだ。

「…クソゴムの野郎」
いいところだったのに、と、サンジさんが舌打ちする。
「ムード壊しやがって…」

「サンジぃーーー!!でっけえ魚釣ったから見てくれーー!!」
「釣ったのはこのウソップ様だああーーー!!」
「嘘言うなぁ俺が釣ったんだぞお!」
「俺様が網ですくったから俺様だ!」

甲板から聞こえる、子供の争い。
思わずふふ、と笑みがこぼれる
「…チッ、仕方ねえなあ…食えねえ魚だったらクソゴムと長ッ鼻三枚に下ろしてやる」
サンジさんが私からすっ、と離れた。
「また、後でね」
名残惜しそうな瞳で見つめられた。
「ええ、また後で。」
名残惜しいのは私も一緒だったけど、お預けは少しの間だけ。

サンジさんは軽く手を振りながら、ラウンジを後にした。

一人残った私は、甘くない紅茶を口にした。

「……」
やっぱり紅茶はストレートよね。
でも、次からお砂糖は?と聞かれたら、一つと答えなきゃ。
勿論、二人きりのときに限るけど。


お砂糖何個?
お砂糖一個。
キスで溶かして、半分こ。
                                        (END)

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