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『Happy happy Xmas!』

クリスマスの朝、私は彼の胸の中で目を覚ました。
カーテンの隙間から差し込む光はそんなに強くない。まだ早朝と呼べる時間なんだろう。
私を抱いて眠るサンジくんは、まったく起きる気配を見せず、寝息だけが聞こえる。それでも私を放そうとしないのがちょっとうれしい。
―大変だったもんね。ゆっくり寝てね。
彼の体温に包まれて、私は昨日までの出来事を振り返っていた。



12月に入ってサンジくんはとっても忙しくなり、私たちはほとんど会っていなかった。
学校には来てても、放課後はすぐにバイトに行き遅くまで働いている。
携帯の着信が待ち遠しい日々が続いていた。

「もしもし」
『んナ〜ミさ〜ん、おまたせ〜』
いつも、この言葉で会話が始まる。この時間が最近の私たちをつなぐ唯一の架け橋。
その日あったできごとを話すだけ。他愛もない会話。それでも楽しい時間はあっというまに過ぎていく。

―今日はどうしても彼と会う約束をしないといけない。そろそろ切り出さないと……
でも。
アノコトを話したら、もうこうやってしゃべってくれなくなるかもしれない。
笑顔を向けてくれなくなるかもしれない。だけど…言わなきゃ。
こんなに好きなのに――!
熱い雫がぽたりと落ちた。

『…さん、ナミさん?どうかした?急に黙り込んで』
耳元から聞こえる声にあわてて取り繕うように言葉を返す。
「ううん、なんでもないの。ごめん。少し頭痛がするから…もう、寝るわ」
ほほを手で拭いながら携帯の向こう、心配そうな彼に向かってそう言う。
『えっ大丈夫かい?カゼかな。ちゃんとあったかくして寝ないとダメだよ』
「うんありがと。ごめんね、ほんとに」
『いや、謝るのはこっちだよ。本当にごめんな、毎日こんな時間になっちまって。
でもクリスマスは1日中空けるからもうちょっとだけガマンしてね。大好きだよ、ナミさん♪』
「私も…大好きよ…」
『ありがとう。じゃあ、おやすみ』
「おやすみ」

電話を切ってそのままベッドにごろんと横になる。
私の運命は、あさって決まる。
その2日後にイブ、か。
華やかなイルミネーションと着飾った恋人たちで街が彩られるその日。
この私に聖なる夜は訪れるのかしら……


私は、数ヶ月前まで援助交際していた。それをやめさせてくれたのがサンジくんだ。
始めは同情じゃないか、と優しすぎる彼を疑ったりもした。
でも今はそんな考えを持ってたのが恥ずかしくて顔がほてってくるくらい。
彼の側で時を過ごせるのがとても幸せ。彼は最高の恋人。

…ただ、彼に拒絶されてしまうかもしれない、という不安の固まりが、私の中にはある。
私が、サンジくんにどうしても言わなきゃいけないこと。それは…
援助交際を始めた理由。
誰にも言えない、私の最大の秘密。
終業式も終わり、ついにそのときがやってきた。
いつもならサンジくんが教室に迎えにきてくれるんだけど。あえて、ここに、呼び出すことにした。
待ち合わせ場所変更のメールを入れ、彼を待つ。
これでもう後戻りはできないわ…握った両手に力が入る。
「気にしないよ」と言ってくれたあの笑顔が思い浮かぶ。うん。サンジくんを信じよう。
そのうち彼が、コートを翻しながら走ってくるのが見えた。
「ナミさーん、寒いのになんでこんなとこで待ち合わせ?なんか、こういう人が来ないとこって多いよなぁ、ナミさんて。
変わったとこ呼び出されると資料室のことを思い出すよ」
へへと笑いながら、寒さに震えながらポケットに入れてた手を差し出して「帰ろう?」と言うサンジくんに、私は意を決してゆっくり言った。
「あのね。話が…あるの」

ここの重い扉は予め鍵を開けておいた。それを押し開けて、無言で中に入る。
怪訝そうな顔をして、それでも深刻さを感じてか何も言わずについてくるサンジくん。
床が二人分の足音をきゅぴきゅぴ鳴らしている。
足が震え、冷や汗が流れる。心臓が張り裂けそう。
私は歩みを止めた。目の前には開け放たれたままの扉。ここに来るのはあのとき以来始めてだ。
サンジくんも私の隣に立ち、同じ方向を見ている。
バスケットボールがひとつ寂しげに転がり、その奥には数枚のマットが積まれている。
扉の上には『体育用具室』と書かれたプレート…
―目をつぶってここから走り去りたい!
そんな衝動を抑えて大きく深呼吸し、震える声で告白する。


私…ここでレイプされたの……それが、「初めて」だった。
まだ半年も経っていないわ。
相手は…トモダチだと思ってた男。

だから…私は、汚れてるの……黙ってて、ごめんなさい…
静かに、でもはっきりとそれだけ言って目を閉じた。
サンジくんの反応を見るのが怖かった。
電話したり、一緒に帰ったり、映画観たり…もうそんなこともできなくなるかもしれない。
これで、私の側からサンジくんがいなくなってしまうかもしれない…
そう思うとまた自然と目元が熱くなってくる。

しばらく彼は黙っていた。そしてひとつため息をつく。
それは、私には絶望を知らせる合図のように思えた。しかし。
「顔上げて。ナミさん」
思いがけなく柔らかい口調。彼を見ると、困ったような笑顔でハンカチを出し涙を拭ってくれる。
そして。

「…今までつらかったろ。もう大丈夫だから。俺が君を守るから」

私の体はサンジくんに抱きしめられていた。
その瞬間、我慢してきた気持ちが溢れ出る。何年ぶりだろう、あんなに声をあげて泣いたのは。
とどまることを知らないように、涙は彼の胸を濡らし、私の不安を洗い流していく。
サンジくんの唇が私の髪の毛に寄せられる。耳にも。おでこにも。ほほにも。
泣きじゃくる私をあやすように、たくさんのキスが降ってくる。
そして、唇にも…軽くふれると優しい瞳が泣き止んだ私を見つめる。
「帰ろっか」
笑顔でそう言うと私の手を取って歩き出した。

……今考えると、このときのサンジくんはいつもと何か違ってた。
帰り道も、ほとんど口を利かず何か考え事をしてるようだった。
それでもきつくつないだままの手は温かくて、一度も離されることはなかったけど。
その夜から連絡が取れなくなったサンジくん。
昨日までと比べても更に忙しいから、と電話もできなくなった。
でもメールは送られてくる。『あと2日だから楽しみに待ってて』という簡単なものだけど。
急につながりが薄くなった感じがして、不安になった。
でも私は彼を信じるって決めたから。
焦らない。迷わない。あと。2日。


長い長い夜が過ぎ、寒い寒い朝が来て。
クリスマス・イブ当日。しかし午後になってもサンジくんからの連絡はない。
不安を押し殺し、出かける準備を始める。シャワーを浴び、念入りに体を洗う。
バスタオルを体に巻きつけ、髪の毛をタオルでまとめると、クローゼットから出したのはまっしろなワンピース。
この日のために新調した。ノースリーブで、大きくあいた胸元はファーで飾られている。
私をいつもの何倍も女の子らしく見せてくれそうな、そんな期待を抱かせる。
姿見の前に立ち、ドレスを体に当てて微笑んでみる。
サンジくん、ドレスアップした私を見たらなんて言うかな。
あぁ、早くサンジくんに会いたい…!

そのとき、バッグの中で携帯が鳴ってるのに気づき、急いでバッグを手繰り寄せる。
逸る気持ちを抑えて電話に出ると、そこから聞こえてきたのは、いつもより少し疲れた感じのサンジくんの声。
『あ、ナミさん?連絡できなくてごめんな』
「いいわよ、だって忙しかったんでしょ?しょうがないじゃない」
『ほんとごめん。それで悪いんだけど、今晩8時にうちに来てくれないかな』
遅いと思ったけど、駅まで迎えに行くから、というサンジくんの言葉に仕方なく了承した。
『じゃあ待ってるから。またあとで』
そう言って電話が切れた。
…絶対おかしい。いくら疲れてても用件のみのことなんて今まで一度もなかったのに。
いつもと違う言動に、ここにきて不安で胸が押しつぶされそうになる。
暗に遠ざけようとしてるように感じる。例のことが原因としか思えないこのタイミング。
サンジくんを信じたい!でも、こんな気持ちじゃぁ…!
だんだん彼の言葉が信じられなくなっていってた…


電車の中はカップルと会社帰りの人たちで混雑してた。
サンジくんに早く会いたい気持ちと、少しでも遅く本当のことを聞きたい気持ちがケンカしてる。
しかし、電車は時刻表どおりに駅に着き、仕方なく、改札を出たところでサンジくんを待つ。
すぐ側では、カップルが人目もはばからずいちゃついていて、憂鬱な気分が倍増される。
ため息をついて、コートとワンピースのしわを直し、ブーツの汚れを軽くふき取る。
会いたいのに。でも会いたくない…不思議な気持ち。
彼は、どんな気持ちでいるんだろう。会いたいと、思ってくれているだろうか。
そんなとき人の流れに逆らってこっちに走ってくる人に気づく。あれは…サンジくんだ!
私のために一生懸命走ってきてくれた…
それだけで思わず顔がほころんでしまう。やっぱり会いたい気持ちの方が強かったみたい。
「ナミさん!ごめん!待たせちゃって…」
はあはあ言いながら肩で息をしてるサンジくんを見て、不安なんてどこかに飛んでいってしまった。
黒いロングコートを着てるサンジくん。乱れた髪の毛を手ぐしで直すサンジくん。
私を見て笑いかけてくれるサンジくん……好き!全部好き!!
抱きついた私に驚いて少しよろけたけど、すぐに体勢を立て直して抱きしめてくれる。

「あー良かった、来てくれて。連絡しなかったから怒ってるかと思ってた」
耳元でこっそり教えてくれたのは彼の気持ち。
「怒ってはないけど…すごく不安だったわ。あのことを、言ったその日からだったし。サンジくんが離れていっちゃうかもしれないって」
「あー全然そんなつもりじゃなかったんだけど。でも不安にさせてごめん」
そう言っておでこにキス。これだけで嬉しくなってしまう。
「今日は、いっぱい甘えさせてくれる?」
「もーちろん♪邪魔するヤツがいたら俺が三枚にオロしてやるよ」


彼の部屋で、彼の作った料理を食べて、シャンパンを飲んだ。
おいしくて、楽しくて、嬉しくて。最高の時間。
でも聞きたいことがある。…聞いてみようかな。何か言われたらアルコールのせいにして。
「ねえサンジくん。今日電話くれたとき、なんかおかしくなかった?」
「えっ、そう、かな」
「ほら、やっぱりおかしい。なんか私に隠してなぁい?」
シャンパングラスをくるくる回し、上目遣いに彼を見つめる。
うっ、と言葉につまったサンジくんは「怒んない?」と聞いてくる。
「怒んないわよ。たぶん」
そのたぶんが怖いよなと苦笑して、彼は話し始めた。
「君が俺に話してくれたこと、あるだろ?あれ、すごくうれしかったんだ。あ、変な意味じゃなくてね。
女の子にとってあれほどつらいことはないと思う。なのにそれを話してくれたってことは、俺のこと信用してくれてるんだなーって思った。
でも、だからこそ許せなかったんだ、君を傷つけたヤツがそれでものうのうと学校に来てるっていうのが」
そこまで言ってシャンパンを一口飲む。
「正直に言うよ。俺、気づいてたよ。君は…レイプされたことがあるって」

「なん、で?いつから?」体が硬直し、声が震える。
「初めてナミさんを抱いたとき、君の言ってた事からなんとなく。だけどもちろん確信なんてなかったよ。
でもこの間君が言ってくれて、自分の想像が間違ってなかったことを知ったら、とたんに怒りがこみ上げてきて…」

サンジくんが言ったのはこうだ。
私といるのを見なくなってやっぱり半年くらいだったから、なんかあると思ってまずはロビンに会いに行ったらしい。
ロビンは最初はいやがったけど、説得されて自分の知ってることを全部話した。
当然、相手の名前も出て、サンジくんはソイツにも会いに行った。
そして…
「私のためにアイツをぶん殴ってきた、ってこと…」
片づけをしながらサンジくんが答える。
「ああ。でも、別に肩持つわけじゃないけど、すごく反省してたよ2人とも。
特にロビンちゃんは嫉妬にかられて発した一言が、こんなことになるとは思ってなかったって、許してほしいって泣いてた。
あのバカの方は、会いにきた理由話したら、神妙な顔で悪かったって言ってたし……だからって許せることじゃねーけど。
…勝手なことして本当にごめん。でもけじめっていうか、少しでも早く君を呪縛から解き放ってあげたかったんだ」
「呪縛?」
「うん、そう。君は自分のこと『汚れてる』って言ったろ?それは違うよって、俺の手で示してあげたかった」
そう言ってキッチンから出てきたサンジくんの手には、花束。

「メリークリスマス、ナミさん。これ、受け取ってくれるかい」
それは紅いバラの花束。でも中に、葉っぱのついた小さく白い花がいくつか見える。
「これが理由その2。白いのは、君の大好きなみかんの…その花。これを探してたんだ」
結構大変だったよ、とやさしく笑う。
「でね、みかんの花言葉って知ってる?」
「知らないわ。みかんにもそんなのあるの?」
小さなグリーンのカードが差し出される。そこには金色の文字でこう書かれてあった。
 『純潔・清純』
その言葉にどきりとする。私の失ってしまったもの…
「俺は君のために持ってきた花で、君に思いを伝えたかったんだ。
君は、汚れてなんかないし、何も失くしてなんかないよ。ナミさん」
私を受け入れようとしてくれてるサンジくんの思いに涙があふれる。
「でも、俺からの一番のプレゼントはそのカードの最後の言葉」
黙ってサンジくんを見つめる。
 『花嫁の幸せ』
確かに、輝くようにそう書いてあった。
「まだガキだから、約束しかあげられないけど。いつか、って思ってるから俺」
顔を赤らめながらサンジくんが私の手を取る。
手のひらに乗った小さなジュエリーボックス。その中には小さなリングが光ってた。

「俺にとっては、今ここにいる君がすべてだ。だから…」



「俺が君を幸せにするよ、か…」
右手の薬指に光るリングを見ながらそうつぶやく。
残念ながら左手の薬指には少し大きいリングを見て、サンジくん、すごくがっかりしてた。
せっかくあそこまで決めてたのにね。
…でも、ほんとに嬉しかった。ゆうべのことは一生忘れない。絶対に。
まだ先は長いからいつまでも待ってるわ。左手にリングが輝く日を。

そして、朝日が射す中、となりで眠る大好きな人にキスをする。
「サンジくん、愛してるわ……」
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