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『昨夜の名残』※25巻P67扉絵をご覧になってからお読みください。

一昨日から夏島に泊まっている。滞在型の、いわゆるコテージというやつに。
グランドライン有数の古さを誇る、由緒正しい(らしい)灯台のある岬に立つコテージからの眺めは、
長いこと旅してきた中でも指折りの絶景だった。
朝焼けと夕焼けの見事さは、それこそ切り取って額縁にでも入れておきたいほどだ。
こないだ寄った島で、お宝沢山発見して、普段はきつ〜〜〜〜く結ばれてるナミさんの財布の紐も、
少々ゆるくなったらしい。コテージ一つ借りるのも結構な値段だっていうのに、野郎共と女性陣、
別々に取ってくれたりなんかして。
その上三食付きで(一応キッチンもあるんだけど)、味もなかなか……たまにはこんな贅沢も、
いいかもしれない。
『丘に上がったときくらい、サンジ君はお仕事休まないとね?』
なんてお言葉まで賜ったり。
ともあれ、俺は名実ともに『休暇』を楽しんでいた。


「チョッパー!いくぞぉ〜〜〜〜〜!」
「よしこい! ルフィ!」
「ルフィ! 伸びたら反則だからね!」
皆はコテージの庭でバレーボール。健全な遊びを楽しんで、青春だねぇ。丘まで上がってバレー? 
いいや寧ろ、船の上じゃ球技は無理だから(ボールが海に落ちるからな)、丘に上がったからこそバレー、なんだよな。
俺は一人、コテージの中、ソファベッド占領して、窓からそれを眺めている。
オーナーの飼ってる、人懐っこい犬達が遊びに来てて、そいつらの相手をしながら。
参加しないのかって? 馬鹿言え、コックがバレーで突き指なんかしたら、末代までの恥じゃねえか。


窓の向こう、白いボール一つに子供みたいにはしゃぎ回る仲間達。
棒切れで引いた歪んだ線だけのコートの中、ルールもめちゃくちゃだけど……。
その中に、ロビンちゃんがいて――――……皆と同じく、丘でしかできない遊びを楽しんでいる。
「……」
ポロシャツにショートパンツ、いつもは下ろしてる髪をバレッタでアップにして。
「うなじが見えるのも、たまにゃいいねえ……」
なんて感想、まるでオヤジだな。
ふと視線を足元に落とすと、ソファベッドに小さな染み……昨夜の名残がそこにあった。


昨日は野郎共のコテージに皆集まって、夜遅くまで宴会楽しんだんだ。
そんでその後―――そのまま皆酔いつぶれて。
このソファベッドにまさしくすし詰め状態で……その、冷凍マグロみたいに皆一列に並んで寝てたその最中。
『やっ、……駄目よ、サンジ……っ、』
『大丈夫、誰も起きないよ…』
俺とロビンちゃんは隣り合って寝てたんだ。俺の反対側にはゾロ。その向こうにナミさん、チョッパー。
ロビンちゃんの反対側にはウソップ、その向こうにルフィがそれぞれいた。
すし詰め―――そう、俺の背中はゾロとぴったんこくっ付いてて、ロビンちゃんの背中も
ウソップとくっ付いてたんだ。
定員オーバーも甚だしい所だった。
その、両隣に、そして同じベッドに沢山の人が寝てる中。
『シたいんだ……凄く』
『ア・ぁ…―――……』
『入れなくても、ロビンちゃんがイクだけでもいいから……ね?』
密着してるウソップとロビンちゃんの背中の間に手を差し入れ、ロビンちゃんを抱き寄せ、
キスをして、両足で抱え込んで、そんでもって……。
『やぁ……』
ロビンちゃんは俺に必死にしがみついた。
だって俺がミニスカートの中に手を差し入れて、ショーツの上から指で何度も割目をなぞって、
じわじわと、けれど急速に熱を引き出したから……。
『駄目・駄目ぇ……皆が居るのに・ッ……!!』
『大丈夫、誰も……ホラ』
『起きちゃう…ッ!!・ア・ア…ッ』
ショーツの上から、俺の指一本。それだけでロビンちゃんは乱れ、崩れていった。
ロビンちゃんの好い所はみんな知ってる。たとえ暗闇でも、指一本でも、ショーツの上からでも。
隣に誰かが居るというあのシチュエーション。スリルと背徳感。タイミングよくウソップが、
もぞもぞと身体を動かしたり、ゾロが歯軋りし始めたりなんかして、ロビンちゃんはますます顔を紅潮させて……。
『起きたら、どうす・っ…』
起きたらどうする? そんなの、そん時だよ……。


一度高まり始めた彼女の中の熱は、頂点を極めないと冷めることはない。
俺が、そうしたんだ。
ロビンちゃんの身体を。
そんな風に、エッチな身体に―――しちまったんだ…。
『イヤ・駄目・嫌……嫌ぁ―――……ッ!!』
ロビンちゃんの身体が一瞬、硬直した。
じゅわぁ・ッ、と音がして、勢いよくショーツから滲み出た熱いもので俺の手が見る見る濡れ……
ロビンちゃんはイッた。
『あ・あぁ……』
大きくため息をつき、脱力。
熱い液体は彼女の太ももを、膝を濡らし、シーツに染みを作った。
『はい、お仕舞』
ぺろ、と舌出して濡れた指を舐めると、しょっぱくてちょっぴり酸味がした。
『意地悪……』
ロビンちゃんはちょっと涙目になって、……やりすぎましたか、俺。
『御免、でも、……シたかったんだ。』
おでこにちゅ、とキスした。
だって、ロビンちゃんの寝顔、凄く可愛かったから。
小さく開いた口も、お酒でほんのり赤い頬も、みんな……可愛かったんだ。
だから……シたんだよ。
ロビンちゃんはちょっぴりご機嫌を損ねたご様子で、夜が明けて、もしかしなくても俺は避けられていた。
いつもなら本を読んでる彼女が皆とバレーに興じてるのも、俺を避けてる証拠。
「……悪いことしたかなぁ……やっぱ」
昨日の名残は、ソファベッドにしっかり染み付いていた。
小さな染み。ロビンちゃんの、絶頂の名残。
今日は、昨夜みたいなことはやめよう。うん、やめよう。泣かせちまったし、機嫌損ねちまったしね。
みんなが寝静まった後、こっそりコテージ抜け出して、あの古い灯台の下でしようか。
ポットとカップを持ち出して、コトの後に二人で綺麗な朝焼けを見ながらモーニングコーヒーなんて、どうだろう?
綺麗なものが好きな彼女は、きっと喜んでくれるだろう?
昨夜泣かせちまった穴埋めは、きっちりしないと……な?


窓の外、無邪気に遊ぶロビンちゃんを見ながら、あれこれ考えをめぐらせた。



その夜、俺はロビンちゃんを連れ出した。
渋る彼女に平謝りに謝って、皆の寝静まった後、やっとの思いでコテージを抜け出した。
俺の手には小さなバスケット。中にはアルコールランプと二人分のコーヒーカップ。
とっておきのコーヒー豆と、小さなミルを始めとするコーヒー用の道具一式。
そして灯台の下、照らし出される綺麗な海を眺めながら、サンジ特製・仲直りのコーヒーを飲んだ。
「「ゆーびきーりげーんまーん、嘘ついたらはーり千本、のーます……」」
小指を絡ませ指切りをして、もうあんなことはしません、と誓約した。
「もう、絶対に?」
「絶対、しません。はい」
地面につくほど頭を下げ、ロビンちゃんに謝って誓った。
「……約束よ、サンジさん?」
「ん、約束する」
「もういいわ、頭を上げて頂戴、サンジさん」
言われるとおりに頭を上げると、優しく微笑むロビンちゃんの顔があった。
土のついた俺の額を手で拭い、ちゅ、と小さなキスをくれた。
「仲直りと約束のキス」
「じゃ、仲直りと約束のエッチ、しよう?」
「!!……サンジさんのエッチ……」
「あれ? 今頃気付いた?」
俺の言葉に、ロビンちゃんは頬を赤く染めた。
それでも、俺が伸ばした手を拒むことはなかった。
俺は優しく彼女を抱きしめた。
                    (END)

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