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『玉響の逢瀬』

港に立ちこめた濃い朝霧に感謝しながら、たしぎはそっと帰鑑した。まだ夜明け前のため昼間は
何かと騒がしいこの船も、今は水を打ったように静まりかえっている。
毛布にくるまり銃にもたれ掛かるようにして寝入っている海兵を起こさないようにして跨ぎ、
息を殺して船室へと向かう。
狭い階段を下りて、そっと自室のドアを閉め終わった瞬間、ようやくたしぎは息をついた。
早朝の点呼まであと二時間もない。できるだけ仮眠を取らねば。
体中が重い。疲れ切った体にむち打って、たしぎは部屋の奥に据えられたベッドへと向かう。
ふと、壁に掛かった鏡が目に留まる。
白い首筋に赤く残る跡──
「あれほど首は止めてと言ったのに……」
そっと愛おしむようにその跡に指を重ねる。
その瞬間、体中につい先程まで重なり合っていた熱い躰の存在がまざまざと蘇った。
どろりと躰の奥からゾロの体液が流れ出す感覚がする。
未だ熱の残る躰は、少し身じろぎしただけで身震いするほどの快感を伝える。
何度絶頂を極め、何度精を受けただろう?
子宮が壊れそうな程、ゾロは私にその躰をぶつけてきた──
知らず知らず指先はパンツの上から女陰を探る。
「────ァッ…」
たしぎは大きくかぶりを振って打ち消した。
「私は何をしているんだ……?」
重い腰を引きずるように、たしぎはベッドへ倒れ込みそのまま目を瞑ってつかの間の休息を取る。
狭い船室からは見えぬ空は、既に白みかけていた。
益体もない雑用と、次から次へと送られてくる海賊たちの情報を処理しながら、たしぎは上司である
スモーカーが自分を見つめていることに気が付いた。
首筋の跡はファンデーションで隠したはず。だが昨夜のことが知れてしまったのだろうか?
スモーカーにコーヒーを手渡しながら、たしぎはそそくさと彼の視線から身を外そうとして思いっきり
転んでしまった。
「す…すみません!!」
私ったら、何をしているのだろう? いつもこうだ。きちんと物事を進めようとするほどに裏目に出る。
スモーカーは何も言わずにそんなたしぎの様子を見つめている。
「すみません……」
もう一度小さく謝りながらたしぎはスモーカーに会釈して、彼の視線を避けるように部屋を出た。
何も言わないスモーカーは全てを知っているように感じられ、たしぎはぎりりと唇を噛みしめた。

電伝虫での連絡によると、近く黒檻のヒナが来鑑するという。
ヒナさん──
たしぎは小さく笑みを洩らす。
スモーカーの同期であるヒナはたしぎの憧れである。
悪魔の実の能力者でもあるヒナの強さ、有能さは女将校の中でも群を抜いている。
強さも有能さも男に決してひけを取らない。
男社会である海軍において、女がのし上がっていく困難さはたしぎ自身、身をもって知っている。
女であるが故の弱さもヒナならきっと分かってくれることだろう。
よりによって、賞金首の海賊と恋愛しているたしぎのことを、ヒナはどう思うだろう?
我ながら愚かだと思う。救いようのない馬鹿だと思う。
だが、そんな自分を痛いくらい自覚していても、この想いだけはもう止めることは出来ない。
絶望的なこの想い──
自分の信念をもぐらつかせる恋愛を、そしてゾロの存在を憎いとまで思う。
だがもう自分は知ってしまっているのだ。あの不貞不貞しい笑みを浮かべる唇の持つ甘さも、あの
節くれ立った大きな手がもたらす快感も──無骨な男がその奥にかいま見せる優しさも──
豆が潰れきって固く瘤のようになった自分の手を見つめる。
ゾロの手も同じ、剣士の手だ。だが、彼の手はたしぎの小さな白い手とは全く違う。大きくそして力強い。
どんなに彼のように強くなりたいと欲しても、元が違うのだ。
私は、どんなに最強たらんと欲しても女──
どんなに足掻いても女でしかない──
女である私は、あの男に既に身も心も溺れている。どんなに仕事中はその存在を忘れようと思っても、
体中に刻まれたあの男の熱はそれを忘れさせてくれない。
脳裏にゾロの逞しい胸板が蘇り、またたしぎは大きくかぶりを振った。
つい数時間前まで抱かれていたというのに、もう次に出会える日のことを考えている。
会いたい──ゾロに会いたい──
今度彼に会えるのはいつなんだろう?
願わくばそこが戦場であらんことを──
手元の書類に意識を戻しながら、たしぎはまた小さく溜息をつく。
苦みのきついコーヒーを口に含むと、それは既に冷め切っていた。

慌ただしい海軍の仕事は、そうそうたしぎをゾロとの思い出に浸らせてはくれない。次から次へと
雑事が舞い込む。
現在停泊中のこの島に麦わらの一味が潜んでいるとの情報──これは全くもって事実なのだが──の
ために、電伝虫はひっきりなしに鳴り、その度に海兵が走り回り、自分も処理すべき雑務に追われる。
彼等の潜む場所も船の停泊場所も掴めない。
そのことを感謝すべきなのだろうか?
この瞬間にも彼等の潜伏場所が掴めれば、スモーカーはすぐさま船を出立するだろう。
今朝方まで愛を交わしていた相手はその瞬間敵となる。
昨日、刀を研ぎに街に出たたしぎがゾロと出会ったのは偶然。だが、彼の存在を確認したことはスモーカー
に報告できない。どんなに海軍がその情報を欲しているのか知っていてもだ。
たしぎは多くの矛盾をその身に抱えていた。
海軍本部曹長である自分──悪の蔓延るこの世を平和にしたいと切望する自分──ひとりの女として男
を愛する自分──
その矛盾はたしぎのアイデンティティを崩壊させるに容易なほどのものだった。
軍人として世に平和をもたらすことが今までのたしぎの最大にして唯一の存在意義だった。
だが、ゾロに出会ってしまった。
出会った瞬間、知らず知らずのうちに恋に堕ちていた。
ローグタウンの武器屋のいっぽんマツさんの店での、彼の不敵な行動は今でも鮮やかに蘇る。
たしぎがそれと知らずに選んだ妖刀を放り投げ、利き腕を差し出した無謀な行動。だが刀は大きく弧を
描き、彼の腕めがけて落ちてきたにもかかわらず、するりとすり抜けていったのだ。
なんという強運──!
同じ剣士としてその強さに憧れた。その不遜な態度に惹かれた。
彼が海賊であると知らずに。
彼があの有名な海賊狩りのゾロであると知り、そして現在海賊であることを知った瞬間怒りが沸いた。
自分を騙したのだと思った。
だが、敵として剣を交わすごとに彼の内面を知るようになった。彼の剣は無口な彼以上に雄弁だった。
野望故海賊に身を置いているが、決して彼は悪ではなかった。
たしぎの中にあった唯一絶対の公式、海賊=悪の図は崩壊する。
海賊だが悪ではない男。既に敵と見なすことは出来なくなっていた。
海賊=悪の公式が崩れたとすれば、ゾロを好もしい異性として見る自分をもう否定できない。
そして運命の夜──。
ゾロと男と女の一線を越え、たしぎは矛盾を抱えるようになった。
愛おしくて愛おしくて憎い男。
何故、私たちは出会ってしまったのだろう──?
今この瞬間にもスモーカーが彼等の居所を割り出せば、私たちは刀を交わさなくてはならなくなるだろう。
彼は私を斬るのだろうか? 私は彼を斬るのだろうか?
この肌の上を這っていたその手で、私は斬られることになるのだろうか──
消灯前の点呼を終え、船室に戻ったたしぎは部屋の奥に気配を感じすぐさま抜刀した。
「──誰ッ?」
「──俺だ…」
「ロ…ロロノア?」
夢でも見ているのだろうか?
慌てて灯りをつけると、部屋の隅にゾロが立っていた。
半信半疑のまま近づく。
それはまさしく、6000万の賞金首、ロロノア・ゾロ──たしぎの恋人その人だった。
「何故ここに?」
「忘れ物だ──」
「え──?」
その瞬間、抱きすくめられていた。
「お前、別れ際に何か言いかけていただろ?」
「…………」
言いたくても言えずにいた言葉──
口が裂けても言えない言葉──
「二人きりの時に言葉を飲み込むな」
「…………」
「俺はどんな言葉でも受け入れるから」
「…………」
「お前が背負っている業を代わってやることは出来ねぇ……だが、共に背負うことは出来るはずだ」
ゾロの言葉を聞いているうちに、涙が溢れ出した。そんな事を言うために、わざわざ危険を冒してこの
海軍船にやって来たというのか?
一度堰を切った涙はもう止まらない。
言葉の代わりにたしぎはゾロに接吻づけた。
部屋の外で消灯時間を告げるラッパが鳴るのを遠く聞きながら、たしぎはゾロに夢中で舌を絡めた。
「たしぎ──」
こんなにも愛しい男がこの世にいたのかと思う。
無骨で不器用なくせ、誰よりも熱い。
夢中で唇を絡め合っているうちに背中に壁がぶつかった。たしぎは後ろ手に灯りのスイッチを消して、
ゾロに言った。
「──抱いて……何もかも忘れさせて──」

ゾロが服を脱がせるのももどかしく、たしぎは自ら服を脱ぎ去った。
体中には夜目にも鮮やかな赤い跡──昨晩一晩中ゾロに抱かれていた証。
最初戸惑っていたゾロも、その跡を再度辿るように接吻づけを注いだ。
「……ッん────…」
昼間もくすぶり続けた熱は容易く火がつく。
ゾロが淡く色づいた先端に唇を落とした瞬間、噛みしめていた歯の奥から甘い吐息が漏れた。
「───ッ…はぁ…………」
声を出すわけにはいかない。すぐ隣ではスモーカーが寝ている。
そしてふたり縺れ込むようにして、ベッドへ。
ぴちゃぴちゃとふたりの舌を絡め合う音が狭い船室に響く。
包み込むようにしてゾロがたしぎの乳房を揉む。
「──たしぎ……」
耳許にゾロが言葉を落とす。
深みのあるバリトンが体中を反響し、例えようもない快美感が身を貫く。
涙を溜めた瞳でゾロの瞳を見つめる。
ゾロの黒い瞳の奥に小さくたしぎが映っている。
その瞳の優しさに、再び涙が溢れ出す。
愛しい男の姿が歪む。
「───泣くな…」
押し殺したゾロの声に当惑が滲んでいた。
たしぎがどんなに鍛練を積んでも決して叶わない強い男が、たしぎの涙に揺れている。
「……ごめんなさい」
「──謝るな」
「ごめんな……」
途中で口を塞がれ、言葉は途切れた。
愛しい男の接吻づけは絶望的なほどに甘美だった。

ゾロのシャツを脱がせようとして、ふと手を止める。
今朝は存在しなかった包帯。
「この傷は──」
「ああ、酒場でちょっとな──」
真意を測るべくその瞳を見つめる。
「たいしたことない──かすり傷だ」
本当に?
今すぐ包帯を取って確認したい衝動に駆られた。
だが、これはゾロにとって日常なのだと気が付いた。
どれ程重傷であっても、それは本人にとって「かすり傷」と言うべき日常なのだ。
本当に重傷ならば、こんなに暢気に愛を交わし合っている状況ではないだろう。
それにこのゾロが致命傷を負うわけがない。それ程までに彼は神の恩寵を受けている強運の持ち主なの
だから。
それでも。愛おしい男が自分の知らないところで傷を負っているということが苦しかった。
何も出来ない自分の立場が呪わしい。
「気にすんな」
ゾロはにやりと不貞不貞しく笑い、たしぎを抱き寄せた。
そっと頭を撫でる。
「おれは死なねぇ」
世界最強の剣士──それがこの男の野望。
たしぎそっくりな亡き親友と誓った彼の夢。
この男ならその夢も叶うだろうとたしぎは思う。
鷹の目──ジュラキュール・ミホークを破り、最強の剣士となるであろうと。
たしぎはミホークがつけたという、体を大きく走る傷跡を触った。
指先で分かるほどに大きく隆起した刀傷は、それがどれ程までに深い傷であったのか物語っている。
だがこの傷をも乗り越えて、この男は行くのだろう。
野望の果てに。
その時、私はどうしているのだろう?
共に横で笑っていることがないことだけは確かだ。
たしぎはそっと傷跡に唇を押し当てた。
たしぎの後頭部に回したゾロの手に力が籠もるのを感じた。

体中に注がれるゾロの接吻づけを受け、手の甲で押さえた口元から漏れる甘い吐息が、いつしか喘ぎに
変わっていくのを必死に押さえた。
「……ぅ…ぐッ……」
それでも漏れる甘い声を抑えようと唇を噛みしめる。
ゾロはたしぎの足を肩に担ぎ、もう溢れんばかりに潤った蜜壺に接吻づける。
「…………は!」
舌を差し込まれただけで、全身が戦慄く。とろけるような快美感に目眩する。
「──ロロノア、ぁ……」
ゾロの唇が、既に顔を覗かせている蕾を吸い上げ、尖らせた舌先でつつく。
躰の奥から、後から後から止め処もなく蜜が溢れ出す。
ゾロのもたらす熱が躰を犯していく。理性が崩れ、ただの恋する女、好きな男に抱かれる一人の女に
たしぎを変える。
「…………あ──あぁ………」
漏れそうになる声を、ゾロが唇を重ねて塞いだ。
「外に聞こえるぞ?」
「──ロロノア…」
「ゾロと呼べよ」
ゾロは目を細めて優しく微笑む。
そしてそっと額に接吻づけた。
「──たしぎ」
愛おしい男が名前を呼ぶ。
もう一度接吻づけを交わし合い、そしてゾロはそっとたしぎの奥に身を沈めた。
「──────はぁ、あ、あ!!」
熱い固まりが身を貫く。
初めて情を交わしたときはあんなに辛かったのに、もう何も抵抗を感じないほどにあっさりと受け止める。
ただそこにあるのは溶けるような快美感だけ。
「熱い──たしぎ」
「ロロノア……」
「お前の中は熱い…たしぎ。お前そっくりだ──」
「ぁ、ぁ、ぁ、ロ…ロロノア……!」
片足を肩に担いだゾロが抽送を繰り返すとぐちゅぐちゅと粘液が絡み合う音と共に快感の波が高鳴る。
担ぎ上げていた足を下ろし、たしぎの躰を抱き上げる。
繋がったまま腰だけ引き寄せる。
たしぎは後ろ手に躰を支えながら、腰元から沸き上がる快感を享受する。
ゾロ──ゾロ──!
打ち付ける腰があまりに激しくて、たしぎは思わず躰を起こしてゾロの胸に縋る。
胡座を掻いたゾロに跨るように貫かれながら、たしぎは再び唇を乞い求めた。
男根の当たる部分が変わったため、急速に快感が高まる。
ぶるっと身を震わせながら、たしぎは切なそうに啜り泣く。
「──────!!」
声にならない激しい息づかいと共に、たしぎは絶頂を迎えた。
だがゾロはそのまま激しく腰を突き上げる。
髪を振り乱して呼吸をあらげるたしぎを今度は跪かせて、後ろから突いた。
躰を打ち据える音と荒い息づかいと粘液の絡まる音。
狂ったようにたしぎはシーツを握り締めて身を捩る。
「たしぎ──たしぎ!!」
ゾロが低い声で名前を呼ぶ。
だがその声も苦しげになり、彼の限界が近いことを知らせていた。
三たびたしぎが躰を仰け反らせた後、ゾロは再度たしぎを抱き締め接吻づけした。
そしてたしぎの足を腰に巻いて、接吻づけながら身を落とした。
「ゾロ──」
「やっと名前で呼んだな」
にやりと頬を歪ませて笑う。
再び溢れ出したたしぎの涙を指先で拭う。
たしぎはゾロの傷跡に抱き付いた。
ゾロはそっとたしぎの耳許に囁く。
「──いくぞ…」
腰の動きが早くなる。
高鳴る快美感に意識が遠くなる。
「あ、あ………!」
「たしぎ──!」
「ゾロ──!」
頭の中が真っ白になり、束の間の幸福にたしぎはそっと微笑んだ。
目が覚めるとゾロの姿はそこにはなかった。
昨夜の出来事は夢だったのか? と思ったが、躰の奥から再び溢れた体液がそれが現実のものだと
たしぎに伝えた。
苦労して身を起こすと、サイドテーブルの上に置かれた一枚の紙が目に留まった。
そこにはただひとこと記されていた。

”愛している”

絶望的な恋の唯一の光明──。
たしぎはゾロに言えずにいたその言葉を、代わりに貰ったことに気が付いた。
今度出会った場所が例え戦場であっても、私はこの言葉をゾロに返そう。
たしぎは紙に接吻づけながら、そう心に誓った。
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