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「性悪女」

思えば、まだ18才になるか成らないかの頃だったと思う。
あるクチュリエールで、求められてモデルとしてワンシーズン限定の仕事をした。
メイクで、素顔を判らなくする事を条件にその仕事を受けたのは、本当に気まぐれからだったのか、
少女らしいの虚栄心がまだ心の片隅に残っていたからなのかはわからない。
ただ、その時のショーの打ち上げで、
バックステージの搬入係の若い男に云われた言葉が妙に心に残っている。
ゾロという男の胸に揺られていると、その言葉を思い出し、ちょっとした後悔の念にかられてしまうのはどういう事だろう。
自分でも可笑しいと思う。
そして、どうして、この男の腕のなかにいつも絡め取られてしまうのだろう。
すり抜けようとして、出来ない事ではないはずなのに、心の隅の一点が、その腕を待っている。

嫌な男。
私の魂を守るためにようやく完成させた、高い城壁をやすやすと越えて来る。
いっそ、船を降りてしまおうかと思う。
只の女になるのが怖い。
今更、夢に憧れを抱く少女のように口元がゆるむのが怖い。
どうかしている。
彼も只の男。
特別なわけじゃない。
好むと好まざるとに関わらず、私の肌を過ぎていった男たちの一人。
いずれ、きっと、またいなくなる。
去るのが私のほうなのか、彼の方なのかは大した問題ではない。
私たちはお互いに海賊で、そしておたずね者。
気持ちを残して離れるにしろ、思いが変わって終わりを告げるにしろ、
引き潮にさらわれて、波間に揺れながら消えていく木っ端のようなものだから。
そう、それが私の来た道だった。
船のデッキで、本を広げていながら、気が付けば、
あなたの声が聞こえるのを待っている私がいる。
文字なんか、もう見えない。
例えば、私の椅子のすぐそばで、仲間と話すあなたの声を聞く。
ただそれだけなのに、あなたの声は、私の背中を愛撫し、
私の唇は、あなたの口づけが欲しいとばかりに乾きを覚える。
声だけで、ゾクゾクとして、多分立っては居られないほど。
呼吸をすれば、息が弾んでしまいそうで、
ゆっくりと、ゆっくりと静かに息をするしかない。
あなたの匂いがする程に近づけば、
あなたの汗と息づかいが、記憶のむこうから押し寄せてきて、
本で顔を隠して、眠たいふりをするしかない。

どうして、私はこんなにも、あなたが欲しいのだろう。
その道の達人と呼ばれた男たちとも情を交わした女だと云うのに、
快楽と悦楽の果てを見て、美と醜悪の狭間の血と死臭のする恋愛ゴッコを見聞きし、
そして己もその中にあったというのに。

あなたの唇の触れた場所。
耳たぶ、首筋、背中、腰、胸、乳房、臍、
順番に、順番に、意識で辿る。
熱と、ざわめき。全身にまといつく。
今、あなたの腕に抱かれたら、そのまま溶けてしまうかもしれない。
あなたの手が、膝を割り、滑り込む。
私は膝の中程まで、愛液でぐっしょりしているのに気づき、
恥ずかしさで気が動転し、膝を閉じようと思うのに、
身体の方はあなたを求め、開かれたくてしょうがない。
私のなかを、あなたで満たし、一杯に、一杯に膨れ上がった思いが、
はじける一瞬を夢見てしまう。

これが恋というものなのか、愛欲なのか。
それは神様だけ知っていればいいのかもしれない。

「あのね、まだ若いとき、ある男の子が私に云ったのよ。
 女の人は煙草を吸うものじゃない。子供を産まないといけない身体だから、なんてね。
 他の年上のモデルたちの真似なんか似合わないって。
 その時はもう、わたし、お尋ね者よ。どうやって引き返せばいいっていうんだろうって思って、
思わず笑い転げてしまったわ。」
 「酷い女だ。おまえの事が好きだったかもしれないのにな。さぞ傷ついただろうよ。」
 「今は、悪い事をしたなって、思う。
 きっと、あの時はまだ引き返せていたのかもしれない」
あなたとの会話さえ、鬱陶しい。
今なら、まだ引き返せるのかもしれない。
失うことが、痛みとなる前に、あなたの前から消える事ができる。
私は逃げ込む闇を持っている。

でも、その理性の声を無視してしまう自分がいる。
まっすぐで、不器用なあなたの腕の中を求めている。
熱くたぎるばかりの厚く堅い胸。
太くて強い腕。
愛おしくて、しょうがない。
今夜は、どんな色の口紅で、汚してあげましょうか。

−−おわり−−
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