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   「Dicey Beauty」

 穏やかな風が吹く。涼しげで、気持ちがいい。
 昨日、島を出たばかりで、気候はまだ安定しているのか、航海は順調だ。
 鍛錬の合間に休憩をと、後甲板のラウンジの外壁にもたれるように腰を降ろして、空を見上げる。
 白い綿を刷毛で散らしたようなうろこ雲が、天の高みに流れることなく居座っていた。
 明日は雨か。いや、グランドラインには今までの天気の常識は通用しない。
 天候のことは、あの有能な航海士に任せておけば問題はない。
 どうせ、雨だろうが、雪だろうが、明日も鍛錬はするのだから。
 涼しい風に乗って、甘い匂いが運ばれてきた。どこか懐かしい、あの女の匂い。
 かつかつと小気味良い靴音と共に、黒髪をなびかせて女が俺に近づいてきた。
 ふわりと微笑む女の雰囲気にいつも感じる、郷愁にも似たこの気持ちは何だろうか。
「お疲れ様。休憩中ね?」
「ああ」
 目の前で屈み、俺の耳元で囁く。懐かしい匂いが、鼻をくすぐる。
「今夜、見張りなの。待ってるから、誰にも言わずに会いにきてくれる?」
 怪訝そうな顔で見上げると、くすりと笑う。夜の誘いに事前の約束など、今までしたことはない。
 紅い唇が俺の頬に柔らかく触れる。汗臭えだろうに、気にもしていない。
 柔らかい手を胸板から腹に滑らせてくる。真昼間から何してんだ、こいつは。
 夜まで我慢できないほど、溜まってんのか。
 腹巻の中に手を突っ込まれ、思わず女の背中に手を回し、抱きしめようとした。
 腕に力を込めようとした途端に、女の手は身体と一緒にするりと離れていく。
「それ、あげるわ。また後で」
 抱え込むような俺の腕の形を気にも留めずに、背を向けて去っていく。
 気を殺がれて、腕を下ろし、息を吐いた。
 ふっと、その場に女の匂いを感じた。香りだけ残して、何をあげるって?
 身動ぐと、腹に違和感。腹巻をまさぐれば、指先に当たる硬いもの。
 掴み出すと、手の中には小さなサイコロがひとつ。
 さて、どういう意味だ。また、あいつお得意の謎かけか?
 ひとつっきりじゃ、チンチロリンも丁半博打もできやしねえ。きっと、考えても無駄なんだろう。
 ただ、そのサイコロにも女の匂いが残っていて、ぴくりと反応する鼻に自嘲して、ポケットに突っ込んだ。
 充分に休んだため、また鍛錬をと立ち上がると、女とは違う陽気な靴音が近づいてくる。
「ロッビンちゃ〜ん! 今日のおやつは、貴女にぴったりの…って、お前かよ!」
 うるせえのが来たな。
「野郎の分は、ラウンジだ。早く行かねえと、ルフィに取られるぜ?」
「わかった…だがな、よりによって、あの女と俺を間違えるんじゃねえよ」
「ああ? だってなあ…」
 眉をしかめて、俺に鼻先を近づける。必死そうにくんくんと、嗅いでいるようだ。
「やっぱりだ。お前の悪臭に混じって、ルマルの香りが残ってる」
「ルマル?」
「“Le Male”だ。ロビンちゃんがつけてるオードトワレ。平たく言やあ香水だ。彼女、ここに居たろ?」
「ああ、さっきまでな」
 ヤニ塗れのくせに、よくもまあ嗅ぎ分けられるもんだ。ふうっと、呆れるように息を吐く。
「強いから、わかりやすいんだ。その名の通り、男性用だが、ロビンちゃんには良く似合ってる」
「…あいつは、女の典型だろ」
 言うと、可笑しそうに、コックは煙を吐き出しながら笑った。
「まあな。でも中性的な魅力もある。セクシーでミステリアスだ。お前ごときとデキてるのがマイナスだがな」
 ぎくりとした。愉快そうに、眉毛が動く。
「気づかないとでも思ってたのか? ルフィですら知ってるぞ」
 血の気が引いたような音がした気がする。バレバレかよ、情けねえ。
 しかも、このぐる眉に指摘されるとは。
「ひでえ顔してんなよ。まあ、俺だって双方合意なら反対しねえさ。勿体ねえけどな。ただ…」
 空のどこかに視線を彷徨わせて、説教くさい口調で言った。
「お前には、ロビンちゃんは荷が重いんじゃないか。彼女は…どうやらファム・ファタルだぜ?」
「ファムファ…? 何だ、そりゃ」
「致命的な女だよ」
 不吉な言葉を口にして、鼻歌交じりに立ち去るコックの背中をぼんやりと眺めていた。


 今日はやたらと他の奴らが早く部屋に退いた。女は既に見張り台の上に居る。
 コックの言葉から、今夜はヤるというのが、どうも他の奴らに見透かされているようで気分が悪い。
 このまま約束を蹴って…約束自体、女が一方的にしたものだが、男部屋で寝ようかとも思った。
 だが、昼間の女の態度が気になった。初めての誘いと、謎かけのように渡されたサイコロ。
 何より、間近で嗅いだ女の匂いに、俺自身が欲情していた。ポケットの中のサイコロを握る。
 酒瓶を持ち、ラウンジを出る。見上げた夜空には、もう雲はなかった。
 暗闇の中、月と星だけが輝いている。波がさざめくだけで、他には何も聞こえない。
 見張り台を見上げても、かがんでいるのか、あの黒髪は見えない。
 腹巻に酒瓶を突っ込んで、見張り台に上がるためのロープに手をかけた。
「いらっしゃい」
 女は座っていて、にこりと笑いながら俺を迎え入れた。
 夜の闇を月光で紡いだような黒髪が、風に揺れる。また、あの懐かしい匂いが立ち込める。
 髪よりも、深い闇と強い光を湛えた女の眼に、どこかへ流されそうな感覚。抗うように隣に腰かけた。
「ありがとう、来てくれて。誰かに、何か言われた?」
「いや…」
「そう、よかったわ。最初に言いたかったのよ」
 首に腕が絡まり、頬に落ちる唇の感触。
 昼間かわされた手を、今どうすればいいのか、無様にもわからなかった。
「お誕生日おめでとう」
「…は?」
「11月11日、誕生日でしょう? ふたりきりで、お祝いしたかったの。駄目かしら?」
「もう…そんな日になったのか」
 気にも留めていなかった。女の笑顔に面映い気持ちになり、笑い返そうとしたが上手くいかない。
 無意識にポケットに手を入れて、硬い感触に思い出した。
「これをくれたのは、どういう意味だ?」
 女の眼の前にサイコロを突きつける。眼の光が、何かを探すように揺れた。
「解釈は好きにしてくれて構わないのよ。私の自己満足だもの」
「そうやって、俺に考えさせようとするな。サイコロなんか賭け事にしか使ったことはねえ」
 いつもそうだ。こいつは俺を試すように、何かを問いかける。
 答え、腕の中に閉じ込めようとしても、また新たな謎を用意して、掌からするりと抜け出す。
 幸福な眩暈を、味わわされ、また願わずにはいられなくさせる。
 この女が、やがて淡く儚く消えるものだからこそ、そう感じるのかもしれないなどと、俺に思わせて。
「ええ、だから賭け事よ」
「ひとつきりで何ができる?」
「できることは少ないわね。だからサイコロもダイスも複数形なのよ。単数形の言い方を?」
「サイコロは、賽…か?」
「そう。そして“dice”は単数では“die”ね。死ぬことと同じ綴りなの」
 恐ろしい寒気と、女が消えるかもしれないという不安が、ない交ぜになって俺に襲いかかる。
 死ぬことを、俺に与えたということは、つまり。
「俺を殺す気か?」
「違うわ。私の死の決定権をあなたにあげたの。あなたに命を賭けているということ」
 探し物を見つけたように、光は俺の目に縫いつけられたように定まった。
「今更かとは思うけど、きっちり伝えておきたかったの。だから、自己満足」
 寒気と不安が薄れていく。それでも泣きたくなるような必死な感情。
「…そんなものを誕生日に貰ったのは、初めてだな」
「これはこれ。プレゼントは他に用意してるわ。安心して」
 横にあった、緑色の巾着袋を手渡される。中身を取り出すと、同じ緑色の陶器のボトル。
「ロイヤルサルート。少なくとも、私が知っている中で、最も祝いの場に相応しいお酒」
 飲んだことはないが、名前だけは知っている。それなりに高かった気がする。
 にこにこと笑う女の顔に、こっちまでつられそうになり、急いで開封してちびりと嘗めた。
 口に広がる華やかな香りと、柔らかい口当たり、旨い。
「お前も飲むか?」
「あなたにあげたものよ」
「なら、飲ませろ」
 ボトルの口を向けて渡す。しばらく考え、やがて女は苦笑して気づく。
「仕様がない剣士さんだわ」
 酒を含んで、俺に唇を重ねる。注がれる待ちかねた甘露を味わって、舌を女の口の中に侵入させる。
 くちくちと水音をさせて互いの舌を舐め合う。
 嚥下していない酒の味が、女の口を通しただけで甘く感じられた。
「ん…ふっ…んっ…」 
 女がこくん、と喉を鳴らして甘い酒と唾液を飲み込む。
 唇は離さぬまま、女の身体を引き寄せると、俺の背に腕を回して、しなだれかかる。
 舌と舌が離れがたいように絡まるのを解きながら唇を離し、荒い息を吐く。
 目の前すぐ近くに、ぬばたまの光。
 その黒に、まるで最後の憧憬を託すように、さらりと揺れる髪の毛に唇を滑らせる。
「ぅん…お酒、危ないから…待って」
 転がってた巾着袋に、ボトルを包む。てろてろとした袋は意外と丈夫そうだ。
「ベルベットって、柔らかくて触り心地がいいわね。なんだか安心するわ」
 口づけの余韻が残った熱っぽい声音に、巾着を撫でると、確かにしっとりと心地いい。だが。
「お前の肌の触り心地に比べたら、大したことはねえな」
 口の端を吊り上げて、シャツの裾から手を入れて、腹を撫でる。
 滑らかで艶のある肌は、俺の掌を吸いつかせる。上に進ませれば、指先に、ぽよんとした感触。
 下着をつけていなかった。そのまま形を確かめるようにさする。
 たぷたぷと手に余る重みに逆らわず捏ねれば、眉を悩ましげに顰めるその姿に。
 ここに確かに居る女が、消えてしまう予感を拭い去ってほしいと願う。
 シャツの上からでも丸わかりの硬くしこった乳首をきゅっと摘むと、女の身体がぴくりと痙攣する。
「やっ…ん」
 くにくにと摘みながら、少し強めに引っぱると、女は篭った声を上げ、身体を震わせる。
「んっ…あっ! あんっ…ちょ…っと待っ…」
 俺の手の上から自分の手を重ね、動きを止めようとする。
「何だよ、してほしいんだろ?」
 俺の傍に。俺の生活に。この女はなくてはならない。だから拒むな。
 女は頬を朱く染めて俯いた。その様子に、訝しげに女を見やれば、微かに囁いた。
「…今日は、剣士さんの誕生日だから…ね?」
 ふたりの隙間に手を差し入れて、既に勃起していた俺の輪郭をなぞるようにズボンの上から撫でる。
 女は、あっけなく反応する俺の前に跪き、俺のズボンに手をかけた。
 するりと下着も同時に下ろされて、昂ったものが女の目の前に飛び出した。
 ぼんやりと様子を見ていると、俺の陰茎にゆっくりと両手が添えられる。
 女は焦らすように指で輪郭を辿るだけで、熱心に触ってこない。
 陰茎に女の熱い視線は感じても、感触がないことに、放っておかれた気分になる。
「おい」
 焦れた末の文句を遮るように、唐突な愛撫が始まった。
 女の口腔に迎え入れられ、舌が唾液を俺の陰茎に擦りつけるように丁寧に舐め上げる。
 それだけで耐えられないほどの感覚。
 茎の根元を下からぺろりと舐め上げられる。カリ首の裏側にも舌が走り、刺激する。
 先端をちろと軽く舐められ、すぐに亀頭全体が柔らかく包み込まれた。
 口の中でぬるつく舌が裏筋に沿うように動き、指の腹で根元を撫でられ、くすぐったいような快感が生じる。
 久々ということもあって、果てそうになり、くっ、と呻きを漏らした。
 女は構わず、啜るように顎を引き、唇と手で扱く。
 ぐぷぐぷと卑らしい音に合わせ、黒髪が俺の股間で揺れ動いている。
 唾液や、俺の先走りで汚れるのがもったいなく思えて、巾着についていたリボンを取る。
 覚束ない手で女の髪を纏めて結ぶと、忙しなく鈴口を舐めていた女が見上げてきた。
 眼だけで薄く笑われた気がして、視線が合った途端に、俺のものは硬さを増してしまった。
「もっと感じて」 
 それだけ言うと、女はまた咥え込んで、強く吸いついて俺に火を灯す。
 唇を窄めて激しく上下に揺さぶられ、手も指も妖しげに蠢く。淫靡な水音が絶え間なく響く。
 陰茎ごと吸い千切られるかという強い快感に、俺は絶頂へと急かされる。
「くぅっ!」
 震える手で女の頭を掴み、強く揺すって喉奥に欲望を突き上げる。
 憑かれたように俺は両手で女の頭を動かすことに熱中した。
「駄目だ…出るっ…」
「…んんっ!」
 精液が女の喉を直撃した。その量の多さに、女は口を離して眉を寄せた。
 俺の傍らで、壁に手をついて咽ながら、口の端から飲みきれない精液を零して喘ぐ。
 背中をさすってやると、女は汚れた口もそのままに涙ぐんで俺を見上げた。
「ごめんなさいね…零してしまったわ…」
「んなことで謝んな。口の周り拭けよ」
 女はタオルで口許を拭いながら、残念そうに言った。
「…せっかくの誕生日なのに、気を遣わせてしまった?」
「阿呆か、こんなのいくらでも出るだろ」
「いくらでも…って」
 俯いて肩を震わせ、笑う。俺、何か変なこと言ったか。
「まさか、これで終わりだってわけじゃないんだろ?」
 女の頭にぽんと手を置いて、俺はにやりと笑みを浮かべた。
「ふふ…あなたの好きなだけ」
 女は頬を染めて俺の身体に顔を寄せた。口づけようとすると、止められる。
「あなたの、飲みたい?」
「構わねえよ。止めてんじゃねえ」
 それでも女は巾着を拾い上げて、ひと口嚥下する。更にひと口、そのまま俺の唇に唇が戻ってくる。
 流し込まれる酒は、少しだけ先ほどよりも苦く感じたが、女の舌の裏側に舌を擦りつけると、甘い味が蘇る。
 口づけたまま、シャツをはだけさせ、背を撫でてやる。
 跳ねる身体に調子づいて、そのまま下も脱がす。汗の匂いに混じって、褪せない懐かしい匂い。
「何つった? この匂い。コックが男用だとかなんとか…」
 自分のシャツを脱ぎながら問いかけると、俺の足からズボンを抜いていた女が笑った。
「ああ、ルマル? どうしたの、急に。今まで気にしたことなどなかったじゃない」
 俺が広げた両腕の中へ身体を収め、くすくすと笑う。腕の中に閉じ込め、耳朶を食むとびくりと揺れる肢体。
「お前のことで、コックが知っていて俺が知らないことがあるのが気に喰わねえんだよ」
 低い声で囁いて、女の顎を掴んで顔を上げさせる。
「あなたに初めて抱かれた次の日に、着いた島で買ったの。それからずっとよ?」
 軽く口づけられ、少し顔を離した女は、唇の端で、ふ、と笑った。
「剣士さんに似合う香りはどれかと思って。悩んだけど、これにしたわ」
「何で俺だよ? お前がつけるんだろ」
「あら…だって私たち、もうこんなにも熔け合っているじゃない」
 仕返しとばかりに、左耳に舌を這わせられた。ピアスごと舐められて寒気が走る。
 そして納得する。なるほど、この匂いが懐かしいのは、俺にこの匂いが染みついているからか。
 女だけのものではなく、ふたりのものだからこそ、こんなにも懐かしく。
 そうだ。匂いだけではない。女の熱が。女の声が。女の肌触りが。
 抱くたびに身体に残る。染みつき離れない。
 まるで少しずつ支配されているようで。侵食されているようで。だが、それがなぜか心地よい。
「それでもまだ私が欲しい?」
「ああ?」
「このリボンは、そういう意味じゃないの? 私自身が、あなたへのプレゼント」
 俺が結んだリボンの端を掴んで笑う。
 着てるものをすべて剥いだから、こいつが身につけてるのは、髪に結んだリボンだけだ。
 頬を掌で覆って、唇を舐める。無意識に、その思いがあったのかもしれない。
「くれるのか?」
「私の全部はあげられないわ」
「なら言うな。欲しくなる」
「今日だけなら構わないのよ。ただ、あげてしまったら戻れなくなるでしょう。それが怖いの」
 死も、匂いも、熱も、身体も、俺に与えているくせに。
 今更、言葉で俺の手に入らないと断言しやがって。理解していたことなのに、期待をさせるな。
「夢はあげられない。あなただって、そうでしょう?」
「そうだな…それでも、戻れないのは今でも同じだ」
 欲しいとねだれば、この女がどんな反応を示すのかを知りたくなった。
「賽はとっくに投げられてんだろ? 命だけじゃなくて、もっと賭けてみろよ」
 床に転がっていたサイコロを掴んで、女に見せつけるように、また転がした。
「…そう。既に始まっているのね。もう後には退けないの」
「こんなふうになるなんて、最初は考えもしなかったけどな」
「史上の英雄が“賽は投げられた”と言った時に越えた川も、実は小川だったそうだから…」
 ああ、そうだ。越えるだけなら簡単。越えたことにも気づかないほど。
 けれど、戻れない。戻ってはいけない。俺が、この女を求めているからこそ。
 こんなにも日々の生活の中心に女が居ることが当然だと思えるとは。
「…抱くぞ。全部寄越せ」
「剣士さ…」
「名前で呼べと、何度も言ってるだろ」
「…ゾロ」
 似合わない言葉を吐く俺と、俺の名を呼ぶ女。
 変わったのは、俺かこいつか。ふたり揃わなければ変わることもなかったか。
「ロビン」
 常に心の中では呼んでいる名前を、耳元に低く落とすと同時に抱きしめる。
「あ、ゾロ…んっ…」
 腕の中から逃さぬように、唇を合わせて熱い舌を潜りこませる。
 存分に楽しんだら、すいと唇を移動させて、普段なら隠れている耳の後ろ、髪の生え際に口づける。
 掠めるような触れ方に、背を震わせて反応するくせ、眼の光がまた揺れる。
 このまま一晩中、獣のように抱き合って過ごせればいいんだろうが。
 両腕を白い背に回し、月の光が照らすのを惜しがるように、撫で回す。
 舌を首筋に沿って舐め下ろしていき、鎖骨の形をなぞる。
 たまに、思いつきで強く吸いついて、白い肌に紅い痕を落としていく。
「いっ…あっ…」
 眉根を寄せて、唇から堪えるように吐息が漏れる。波の音に混じって、よく聞こえない。
 もっと女が感じている声が聞きたくて、身体をぐいっと引き寄せた。
 手首を掴んで、二の腕の辺りを舌先で舐め上げる。汗ばんだ乳房を、やわやわと円を描くように揉みしだく。
「ふ…んんっ」
「もっと聞かせろ」
 声を抑えようと動くもう片方の手を取って、再び硬くなっていたものを握らせる。
「お前の声、聞いただけで、またこれだ」
「あ…凄い…」
 掌で柔らかく包み込んでさすってくる。たったそれだけで、腰が動いてしまう。
 手の動きがだんだんと大きくなり、指先で濡れた先端を絡めるように弄る。
 つんと形を主張して震えている乳首を、指の腹でくすぐるように撫で、押し潰すように擦る。
 女の顔が戸惑うように俯いて、弱々しい喘ぎだけを漏らし、堪えている。
「声、出せって」
 その低く篭った声も嫌いではないが。尖りを軽く爪弾いて、引っ掻くように、ぐいっと摘んだ。
「ああっ!」
 聞きたかった声を発して、俺の膝の上で女の身体が跳ねる。
 恨めしそうに俺を見つめてきたので、つぐんだ唇に軽く口づけた。
「ずるいと…思うわ」
「お前が本気で嫌がることなら、してねえよ。手、休ませんな」
 ぬめる亀頭を軽く扱かれ、熱い昂りが膨れ上がる。
 敏感な弱点を重点的に刺激されて、女の掌の内でびくびくと震えている。
 黙ったまま柔らかい乳房に顔を埋めて、唇に乳首を含んだ。
「ふぅっ…あ、いい…」
 しゃぶりついて、舌先で弄ぶ。伝わる女の動悸が激しくなってくる。
 はぁ、と蕩ける溜め息を漏らし、女はしなだれるように身体を預けて、密着してくる。
 感じているか確かめたくて、女の湿った叢に手を伸ばす。すげえ、ぬるっとしてる。
 閉じられた腿の隙間に指を運ぶと、ぬちゅっと音がするほどの、ぬめりに出迎えられた。
 花びらに指を添わせ、柔肉を揉み込んでいくと、ぬかるみが、たぱたぱと俺の脚に落ちてくる。
 内側からは、熱い愛液がとめどなく溢れて、途切れることがない。
「あ…」
「脚、閉じるな」
 逃れようと捩る女の片腿を、抱き込むようにして開かせる。
 ぬめりに塗れて膨らんでいた芽を指で掬い上げるように触れると、女は鼻にかかったような声で悦がった。
「ひいぃんっ…んんっ…」
 声だけでなく、感じている仕種も、もっと見せてほしかった。
 俺の幹を柔らかく愛撫していた手は動かず、すっかりお預けを喰らったままだしな。
「こっち向けよ」
 見上げた女の眼が情欲を募らせている。
 俺の唇に、噛みつくように吸いついてきた。唇をぴったりと塞がれ、強引に舌を割り入れられる。
 女が普段では考えられないほど求めているということに、充血した陰茎が鈍く疼いた。
「すげえ盛りついて、卑らしい」
 唇と唇を繋ぐ糸を舌で絡め取って、そう独りごちると、蕩けるように笑みを浮かべた。
「そのほうが好きでしょう?」
 暗闇を背に告げる女が、その闇に溶けて消える予感が襲った。
 月明かりに浮かぶ輪郭を頼りに、白い女を抱き寄せる。汗ばむ身体に、ここに居ると安心して。
 両脚を開かせて、自身の根元に女の恥部を引きつけて、座らせる。
「好きに動けよ」
 焦燥するような表情の女を、面白そうに見つめる。
 接吻のごとく吸いつき合って、わななく互いに、同じ望みがあると気づく。
 柔肉と襞の間を縫って、寄り添うように昂る俺の屹立が、びくんと興奮のために震える。
 敏感な芽にも振動が伝わってるのか、ぬちぬちとした感触が強まっていく。
 女の熱につい下を向き、見えた光景はひどく淫らだった。
 まだ挿れてもいないのに、女にくるまれているような感覚に、腰を動かしそうになる。
 刺激が欲しくて、疼いた先端が熱くひくつくのを感じる。
「ああ…はあっ」
 女はやがて俺の腰に両脚を絡めて、堪えようもなく喘ぎ出した。
 濡れそぼった裂け目を押しつけ、腰をくねらせ、そそり立つ陰茎に芽を擦りつける。
 まだだ。焦れったい。もっと。そう思う自分が浅ましい。だが女も止まらない。だとしたら。俺だけでなく。
「あっ…ゾ、ゾロ…」
 悦がって、波打つ乳房に頭をかき抱かれた。
 顔を埋めた先にある蕾に吸いついて、尻を撫でてから谷間へと手を割り進め、膣内に指を沈める。
 しとどに蜜を潤ませる女の中心が灼けるようだと感じた。
「はぁ…あぁん…やっ、いやぁ…」
 乳首に触れる舌の動きと、襞に合わせて抜き挿す指の感触に、女が啼いている。
「ここは全然嫌がってねえよ。それどころか…指咥えて離そうとしねえな」
「いや…駄目…そんなのっ!」
 昂ぶる快感が、漏れる声を甘ったるいものにしか聞こえなくさせている。かぶりを振る女の顔は真っ赤だ。
 ぬかるみの中で指をきゅんと締めつける肉襞。まさぐれば、ざらつく内壁に到達する。
「あぁ…んっ! そんな…イっちゃ…」
 汗を飛ばし、甲高い声で啼く。指の腹で的確に感じるところを押さえつけ、昂らせていく。
 俺の動きに呼応するように激しく蠢く女の腰つきが卑らしい。
「ふぅん…ん…や、やっ、んっ…すごいっ…」
 上擦った喘ぎは、すすり啼きに近くなってきた。揺れて震える乳房のてっぺんを甘噛みする。
「んん! そこ、いいっ!」
 すぐイっちまうな、勿体ねえと、すっと指を抜いた。女の動きが止まる。
 しばらく夢でも見ているかのように、女はぼんやりとしていた。
 頬に音をたてて口づけると、女の顔が泣きそうになった。
 切なそうに眉を歪めて、震える唇を唇に寄せてくる。俺を責めない。
 優しく触れるだけの口づけを、繰り返し与えてくれる。愛しくて胸が詰まった。
 もっと俺を求めてほしいと願っただけだ。女をいたぶるつもりはなかった。
 指で味わった心地いい締めつけを、濡れそぼる最奥を、熱を持つ柔らかさを、俺自身で感じたいと。
 ずきんと脈動する欲望のせいで、思い遣れなかった女の身体を強く抱きしめる。
 互いが、もう互いでしか登りつめられない熱を抱えている。女の花びらから蜜が零れて、俺の脚に落ちる。
「ここに手、つけよ」
 逃げもせずに従う。見張り台の柵に両手をついて、俺に背を向けた。
 抱えるように、女の腰をぐいっと浮かせる。
 尻を俺の目の前に突き出して、震える脚で、俺を待つ姿。
 闇の中晒された、先ほどまで弄っていた花は、とても淫靡でとても綺麗だった。
 視姦めいた視線を感じてか、ぱくりと開いた紅色の花からは、熱く蕩けた蜜が湧き出てくる。
 女は、甘く切ない声を絞り出して、俺に懇願する。
「ね…ゾロ…来て…」
 狂おしいまでに誘う花びらに、俺自身をあてがう。ねっとりとした沼に亀頭をつぷ、と嵌めていく。
「あぁん、ん…あぁっ!」
 半ば力任せに強引に襞を分けて、捩じ込み、奥まで突き挿した。待ちかねた充足感。
 女の空洞を埋める快感。埋められた女は、俺を締めあげて悦んでいる。
 根元まで埋めた陰茎を花びらの淵まで戻し、また沈める。熱く潤む内側を擦ると、女は喘ぎ啼いた。
「はぁ…ああ…もっと…」
 乱れる女を思いのまま弄ぶ。ぬぢゅぬぢゅと淫らな水音が続く。
「すげえ音。聞こえてんのか?」
「ええ…ぁあ…あぁん!」
 愛液をかき混ぜる音や、腰を打ちつける音より、卑猥な喘ぎ声。
 女の豊満な乳房を揉みしだいて、仰け反る背の白さにかぶりつく。何かが足りないことに気づく。
「こんなのなくても、俺のだろ?」
 リボンを解いて、乳首を摘むと、自由になった髪を振り乱して汗を飛ばす。
 月光に揺らめいて、青白く浮かぶ身体と、輝き流れる黒髪を見るのが好きだ。たまらねえ。
 腰を振って、ひたすら求め合って、女が歓喜の声を上げる。
 女の中は俺の限界も促すように締まっていく。俺のものは、血が一点に集まって、イきたいと訴えている。
 腰を掴んで、突き上げを激しくする。深く最奥まで埋めこんで、抉り、突く。
 きつく絡みつく柔肉が容赦なく締めあげる。
 出口へ戻ろうとすれば、させまいと、収縮して離してくれない花唇。それどころか奥へ誘い込む。
 なんて卑猥な生き物、中で飼ってやがるんだ。
「ん、ふ…はぁあ、んっ! だめ、イっちゃ…あぁ…」
 歓喜と快感を漏らす女は、うわ言のように喘ぐだけだ。
 上下に揺れる胸を揉み捏ねて、後ろから挿れるのが、そんなに気持ちいいかよ。
 抱いているのが、卑らしく、はしたない女だとつくづく悟った。だが、それがいい。
「はっ…イけよっ…ロビンッ」
 ふたりの荒く重なり合う息遣いに、肉と肉のぶつかり合う音が響いて混じる。
 柔らかい乳房を掴んで、硬い乳首を指先で弄り、舌で肌に流れる汗を舐め取った。
 もう一方の手でべとりと濡れた恥毛を撫でて、急きたてるように突き出た突起を擦った。
「ふ…ぁあっ! はん、んっ! あああっ!」
 深く捻り込むと、頭の奥がちかちかして、全身に甘い感触が走る。女の背が、弓なりに仰け反る。
 一際強い締め上げと痙攣が同時にやってくる。
 うねり、俺のものを包み込む圧倒的な感触が、絶頂へと押し上げる。
「…っ」
 ひくつき止まらない柔肉の狭間に、弾けるように精を放つ。
 解放したのに満たされる感覚に、じっと身を預けた。互いの肌を流れる汗が体熱を奪っていく。
 その熱すら失いたくないほど、こいつのすべてがいとおしい。
 息を整えて、疲れた身体を休ませるため、並んで壁にもたれかかる。
「…こんなにも女なのにな」
 肩を抱き寄せ、頬を撫でながら、つい口を出た。首を傾げる女に弁解のように続ける。
「お前が中性的だと、クソコックが…」
「あなたが、あんなにも男として私を抱いているから、私を女だと思うのでしょう?」
 くすり、と宥めるように笑われた。俺に理解できないことを女とコックが共有しているようで、苛立った。
「わからねえよ。何も…知らねえし」
 女の生まれた場所も、女の家族も、どう過ごしてきたかという昔のことも。
 女へ抱く感情を理解する前から、常に頭の中にあった恐れ。
「コックさんより…この船に居る誰よりも、あなたにはいろんなことを見せていると思うわ」
 理解したつもりでいる。こいつの夢も、考えも、俺に対する想いも。
 けれど、女という生き物に関しちゃ、人一倍鼻の利くコックと、何も知らずとも気にせず包み込めるルフィ。
 俺は、あいつらを見るたびに、考えまいとしても不安に陥る。
「…コックさんは私が女だから、敵だった私を、すぐに仲間として見てくれたわ」
 流木だの何だのと言いながら浮かれるコックの姿が思い出される。思い出しただけでムカつく。
「でも、あなたは仲間と認めてくれなかったから、最初から私を、ひとりの女として見ていたでしょう?」
 仲間ではない女だから抱けた。抱いたから深みに嵌った。嵌ったから抜け出せなくなった。
 少しずつ、信じ始めていることに気づいた時には、女を手放せなくなっていた。
 肩を抱く腕に力を込めて、髪を梳き、自らの愚かしさに苦笑する。
「だから致命的…か?」
「致命的?」
「それもコックだ。お前が、致命的な女だと。ファムなんたらとか言っていた」
「致命的な女…ファム・ファタル?」
 確かそんな名前だったと頷く。女は困ったように笑った。
「何なんだ、そりゃ?」
「一般的には、悪女、妖婦、魔性の女、男を滅ぼす女…」
 上げ連ねていかれる言葉の、縁起の悪さに、口がひん曲がってくのがわかる。
「…まあ、コックさんのことだから、セクシーで魅力的な女くらいの意味合いだったのではないかしら」
「てめえで言うかよ…」
 ころころと笑う女の顔に安心して、肩を引き寄せ、腕の中に閉じ込める。
「ファム・ファタルの本来の意味は、男を惚れさせて破滅させずにはおれない女。だから致命的な女」
 そして女は、俺の迷いを誘う魔性の笑みになる。揺れる眼の光が、俺を追い込む。
 俺の貪欲なまでに女を求める醜さを、嘲笑っているように。
「けれど誰にでもというわけではないの。ある特定の男とだけ惹き寄せ合うのよ。
 惚れずにはおれなくて、破滅するしか道はない。それが、ある男にとっては宿命の女」
「宿命? そんなもんがあるわきゃねえだろ」
 それは本音だ。宿命なんてものがあるとしたら、何のためにあいつは生まれた?
「勿論、運命論を信じているわけではないわ。でも…」
 見張り台の隅に転がっていたサイコロを拾って、眼を瞑り、神聖なものでもあるかのように口づける。
「稀代の天才は“神はサイコロを振らない”と言ったわ。偶然は、存在しないという意味よ」
 諦めにも似た物言いに、サイコロを掴む手を払い、顎を掴んで唇に噛みついた。
「ふざけんな。俺が世界一になった時にも、それが宿命だとでもいうつもりか、お前は!」
「そうではないわ、ただ…」
「天才様だか何だか知らねえが、俺がこの船に乗ったのは、偶然と、俺の意思、そしてルフィの意思だ」
 女の肩を痛がるほどに掴み、言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
 この女はいつも、自分や俺より、過去や過去に生きた人間を信じようとしやがる。
「俺がお前に惚れたのも、俺がお前を抱きたいのも、俺がお前と共に生きたいのも…俺だけの意思だ」
 女が泣きそうな顔になり、心苦しくなった。それでも。
「宿命なんかじゃねえ」
 手の力を抜いて、震える瞼に口づけを落とす。
 女が俺を求めてくれること、俺が求めれば応えてくれること。
 言葉が少なくても、見交わす視線の中に、確かに含まれている甘い感情や熱。
 それらの存在に、幸せを感じていた。不安は途切れなかったとしても。
「今さら、居るかもわからねえ神のせいにしてるんじゃねえよ」
 醜い欲情を悟られないように、今度は俺から酒を含んで唇を重ねた。
 ふっと眉を上げて、瞼をゆっくりと閉じていく。こくりと喉を動かして、女から吐息が漏れた。
 上手く笑えない。女を抱き寄せて、指先で胸のてっぺんに触れる。
 硬く尖った頂点を掠めて、乳輪を軽くさする。ぴたりと肩を抱き寄せ、くすぐるように撫でる。
 弱いところを避けるように触る俺に、女は焦れて、身を捩らせた。
 ふう、と溜め息を吐いて、女はねだるような視線をぶつける。
「怒らないで聞いてね…多少なら、運命も信じていい気がするのよ」
 真剣な声で囁かれた。体重をかけてくるので、女を抱いたまま、そっと背中を倒して床に寝そべった。
 髪を梳きながら、白い背中を掌で何度も撫でさする。
「私だって、あなたを好きになったことが、宿命だなんて思いたくないわ。ただ…」
「何だ?」
 つい声が強張る。手を止めると、女は俺に身体を全部乗っけて、頬をすり寄せてきた。
「こんなに求めてしまうのが、自分だけの意思だなんて、なんだか怖いの」
 顔を赤くして、眼を逸らす女に、最初からそう言えばよかったんだと、心の中で悪態をつく。
「ふん…」
 声に出して、なじろうと口を開けば、女の唇に封じられた。
 舌が絡まって、貪るように口づけられる。濡れた音が夜の闇に響き渡る。
「ふぅ…」
 ゆっくりと離された唇と、それより後に別れる舌。
 俺が残した首筋の痕が目に入り、肌の色との対比にぞくりとした。
 女の表情からは、何を考えているかはわからない。
 だが、唾液に塗れた唇と、細まった眼の光が、俺を捕らえているようだった。ひどく惹かれる。
 女はそっと喉仏を撫で、ゆっくりと手を下ろしていく。傷を確認するように痕に沿って手を這わせていく。
 くすぐったくも心地よくもある優しさで、触られる感覚。
 この心地よい感覚に、そのまま包み込まれていたかった。女にすべてを任せる、ある意味で贅沢な時間。
 女はするすると身体ごと下に移動していく。
 俺の股間にたどり着くと、ふたつの膨らみで陰茎を挟んで揉み出した。
 あまつさえ、胸で幹を挟んだまま、亀頭をぺろりと舐め上げた。
「うっ」
 声を漏らすと、顔を赤らめた女と目が合った。舌先で、てっぺんを舐め擦られる。
 さっきまで、お前の中に入ってたもんだろうが。なに、ためらいなく咥えてるんだよ。
 舐め咥えられた刺激より、その貪るような女の行為に恍惚とする。
「臭えだろ、お前のもついてんだ。んなこた、しなくていい」
「あなただって、自分のを口に出した後、私にキスしてくれたでしょう」
 それとこれとは違うだろうと告げようとすれば、また先端に吸いついた。
 柔らかい感触が幹を上下に揺さぶったまま、小さく窄めた唇に亀頭を覆われ、悦びにびくんと動いた。
 女を汚した気分になる。だが、まったく気にせず、ひたすら胸と口とで快感を与える姿に興奮する。
「ぅ…ロビン…」
 唸るように名を呼ぶと、束縛を解き自由にされた。くそ、半端にここで止めるのかよ。
「意地悪ぃ女」
「お互い様」
 どうやら、さっきのことをしっかり根に持っていたらしい。いじらしいとか思った俺が馬鹿だった。
 溜め息をつき、女の身体を抱き上げて、引き寄せる。並んで床に横たわり、すっと髪を撫でた。
 額に唇を落とすと、細い指を棹に絡め蠢かせて、激しく扱きたててくる。
 聖母のようで悪女のような。恐らくその両方を兼ね備えた女。
 俺の顔色を窺って、ちゅっ、と音をたてて口づけられる。
「焦らして、ごめんなさい」
「まあ、いいけどな。お前は?」
 股間に手を伸ばした。抵抗するので、もう一方で硬く尖った胸の蕾をこりこりと指で転がした。
「ん…はぁんん」
 嬌声に勢いづいて、脚を開かせる。
 頭を弱々しく振って、拒む仕種をするが、俺の胸を押し返す腕に力はない。
「ぐにゃぐにゃだな」
「あなたのものでしょ…はっ、ああぁ…」
 まあ、溢れてる中に俺のも入ってるんだろうが、そんな啼き声で言われても説得力ってものがねえ。
 密やかに充血した芽を、くちゅくちゅと音をたてながら、弄くり撫でる。
「んんん…あっ、あ…あんっ!」
 恍惚に潤んだ上ずった声を上げ、腰をぶるぶると震わせている。
「欲しいだろ、来いよ」
「っ…ええ」
 悩ましげな声と顔で、両膝を床につき、上体を起き上がらせて、俺の腰に跨る。
 ふらつく女の腰を両手で支える。甘えたような眼で見下ろしてきて、そのまま自分の指で花びらを広げた。
 もう片方の手で陰茎を掴み、愛液に塗れている花唇に呑み込ませようと、慎重に腰を下ろしてくる。
 だが、亀頭まで埋めたところで、俺の手がそこから先への進入を邪魔する。
「あぁ、いや…んっ…」
「お前が何をしたいのか、はっきり言えよ」
 満たされたいと。埋め尽くされたいと。俺だけに、お前の意思で言ってくれ。
 先端だけが感じる熱さに我慢をしながら、それ以上は進ませない。
「もう、い、挿れたい…ゾロが全部、欲しいのっ…」
 震える声で、真っ赤な頬で、潤んだ眼で見つめ、俺に懇願する。
「ん…あぁっ!」
 女が腰をくねらせ埋めようとするのを見て、俺が腕の力を抜くと、一気に根元まで呑み込まれた。
 咥え込み離そうとしない、たまらない感触に、脳裏に火花が散る。深く息を吐く。
 たぷたぷと揺れる乳房を、両手で掴んで捏ね回す。それだけで女は声を上げ、より激しく動こうとする。
 身を捩る女の狭まった膣内を抉るように、俺も腰を突き上げる。
 泣きそうな声で、卑猥な水音に吐息を荒くしながら、さらにきゅうきゅうと締めつけてくる。
 片方の手を、揉みごたえのある尻に移動させると、女が耐え切れず倒れてきた。
 構わず、腰を揺さぶると、身悶える女は俺の首にかぶりついて声にならない声で呻く。
「ああ…いやぁ…ゾ…んっ、あぁっ!」
 力なく身体をもたれかからせるくせに、蠢くのを止めない腰に、痛快な気分になる。
「お前の顔が見てえんだよ」
「駄目…ねっ、そんなの…イっちゃ…」
 一緒に起き上がり、女の身体を支えて、ゆっくり突き上げる。
 身体の芯まで痺れるような顔の女を眺め、肉襞を擦る快感を貪る。
 声が荒ぶり乱れていく様に、我を忘れて気持ちよさだけに身を委ねたくなってくる。
「好きなだけイきゃいいだろが」
 蠢く度に深く咥え込み、絡みつく肉襞は俺を歓迎しているようにしか思えない。
 抜き挿しごとに、たらりと蜜を溢れさせ、嬉しそうに根元から俺を味わっている。
「ふぁっ…はあぁっ!」
 震える女の手を指を絡めて握ってやると、腰を振りながら首筋に吸いつかれた。
 少し強めに最奥を突き上げると、じわじわと締めつけが強まっていく。
「…おい。それ以上動くな」
 女の中に突っ込んだまま、優しく、何にも代えられない熱い身体を抱きしめた。
「お前、卑らしすぎ」
「だって…」
 ふと、抱きしめた腕の中の女が幸せであればいいと、似合わねえことを思う。
 わかっている。それは、ただの増上慢だ。そして俺自身を欺く言葉。
 お前が俺を必要としていないなら、俺のことなど気にせず、お前だけが幸せになればいい。
 心の中で呟いて、逃げ込みたくない逃げ道を作る。
 乱れる髪を弄って、考えを振り払う。腰の動きを止めた女の柔肉だけが灼けつくようにひくついている。
「熱いな、すげえ気持ちいい」
「…もっ、と…して…イかせ、て…」
 息遣いだけで囁くので、女を仰向けにそっと倒していく。
 両足を肩に担ぎ、抉るように奥まで深く貫いた。
「あああぁっ!」
 切なげに身体をくねらせる女の眦から、すうっと涙が伝い、俺の腕を力なく撫でてくる。
 女を思う様、感じさせているという事実に、もっと追い立ててやりたいと激しい動きになる。
 女の唇からは、歓喜の吐息だけが漏れる。
「あぅ…いい…ふぅん…あぁ」
 足が硬直して、背中が仰け反る。女が達しようとするのがわかる。
「あぁ、あっ、あっ…あああぁん!」
 叫んで、女の身体がびくんと跳ねて、ふるると痙攣する。
 弛緩した後も、包み込む肉襞は、絶え間なくひくついている。
「ふっ…」
 肉襞のうねりに負けないよう、堪えて深く突き、抉り挿れると、甘く啼く。
「あっ…んっ、んっ…はぁっ!」
 女が床をひっかいて悶えている。その腰を引き、痛いほど最奥に突き上げた。
「んんっ…んんっ、あ、もぅっ…あ…あああぁっ!」
 一際高く啼き、髪を振り乱して、しなやかに反り返る。
 捩じ込むように打ちこみ続け、堪えていた熱いものを放つ。足を下ろして、女の身体を強く抱きしめた。
 繋がったまま、抱き返してくる力ない腕。それでも確かな女との触れ合いに、ふっと口角が上がる。
 何よりも満ち足りた時間に、しばらく肌を寄せたままでいた。
 上体を起こして、伸ばした脚に女をぺたりと座らせる。呼吸の落ち着いた俺と、くたりとしている女。
 自分の身体も支えられないようで、俺に身体ごと預けてくる。
 髪を梳き、顔を覗き込むと、紅潮する頬と、眉毛が下がった蕩けた眼で見つめられた。
 これのどこが、中性的だってんだ、クソコック。まあ、こんな顔、見せやしないけどな。
 首を傾げて弱い力で背中を抱いてきたので、強く抱き返す。口づけると、幸せそうな顔で笑う。
「体力ねえな、お前」
「…あなたの体力と比べられては、困ってしまうわ」
 ことん、と肩に頭を乗せてきた。
「…コックさんに、感謝しなくてはね」
 頬をすり寄せ、聞き捨てならないことを囁く。むっとして、鋭く見つめれば、笑って続ける。
「あなたに、忠告という名の謎かけを用意して、私を求めようとさせてくれたから」
 言われてみれば、そうかもしれない。コックの言葉を聞かなければ、今夜、ここまで迷うことはなかった。
 極上の酒を持った、極上の女に酔いすぎるなと。忠告じゃねえ、警告を。
「あなたのために、わざわざ…いい人ね」
「これは、お前のためだろ」
「…どうかしら?」
 あの男の考えてることなんか知るか。だが、これを狙っていたのだとしたら。
「…お前が明日、足腰立たなくても、奴も気にしねえよな?」
 熱い耳朶をちろりと舐めると、どうしてそうなるのよ、と呆れたように息を吐く。
 もともと俺は、この女を目の前にして、後に退くことを考えるほど柔じゃねえはずだ。
 逃げ道を用意するのはやめた。やはり女に必要とされたいと、こんなにも願っているから。
 いつまでも離したくない、離さない。そう思ってしまうのも。
 こんなに何度も抱いているのに、いつも焦れて、不安になるのも。
「愛しているからだ」
「え?」
「あ?」
 何、驚いてんだ。そういうことだろ。サイコロを引っ掴んで、薄く笑って口づける。
「俺も、お前に命を賭けているらしいぜ?」
 続けて女に口づける。一か八かの命の賭け合いも、こいつとなら悪くない。
「安心するんだな。お前が破滅を招こうとしたら、俺が落とし前をきっちりつけてやる」
「どんな目が出るか、わからないわよ?」
 なぜ、こいつは素直に受け入れないのか。しばし考え、思い至った。
 至った途端に、女の眼に動く光は、揺れなくなった。
「何が出ようと、全部抱え込んでやれるくらいに、俺に強くなれって言いてえんだろ?」
 どうなんだ、それも違うのか。目で問えば、艶然とした顔で。
「愛しているわ、ゾロ」
 なんだよ、そりゃあ答えじゃねえだろ。それとも、それが答えなのか。
 理解してえんだ、理解したつもりでいるんだ。どうしてこうも煩悶させる。
 また祝いの酒を含んで口づけられる。
「改めて、お誕生日おめでとう」
 俺の指に挟んだサイコロがころころと転がっていく。
 それを目で追うのをやめて、何度目かわからない抱擁を、きついほど女に与える。

 まあ、あれだ。どうやら目出度いらしい今夜くらい、出目のことなど気にしてられねえ。
 酔って溺れて過ごすことを、見逃してやってくれ。
 俺の腕の中で、幸せそうに啼くのは、ちっとも考えてることが読めねえ、極上の女。
 俺はこれからも、こいつに翻弄されては、惑い、それでも求め続けてしまうんだろう。
 飽きないのは、俺が女を愛しているからだ。
 迷わされても構わないのは、俺が女に愛されているからだ。
 結局、それ以外に確かな答えはないんだろう。後は、出た目の赴くままだ。
 まったく予測できねえ、俺にとってはサイコロみてえな致命的な女。

 俺だけの、危なっかしい、いい女。


   ―終―
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