ONEPIECEエロパロ保管庫 - 6/299-307(ゾロ×ロビン)
   「後ろから抱き締める」

 俺が女に興味をそそられたのは、厚顔無恥にも仲間にしてと言った後の、この船での佇まいだ。
 冷徹に見えた敵だった頃と比べて、あまりにもひっそりと息づく、たおやかな華。
 華やかであるのに、どこか控えめな、この船には似つかわしくないその姿に。
 その胸の奥で、及ばぬ知識を抱える頭で、何を思っているかなどは、理解の範疇外だ。
 だが、次第にその見事なまでの白皙を乱したいという誘惑に駆られていた。
 透明に澄んだ湖面のように、静かに穏やかに、ただそこにあるかのような美貌。
 それに石を投じ、どんな形の波紋ができるのかを確かめたい。
 子供染みた興味の持ち方だと、自らに眉を顰めながらも、視線は女を向くばかりだった。

 一旦、すると決めたことは、何が起こっても必ずやり抜いてきた。
 今回のように、興味の対象が人間だったのは初めてではあるが。
 特に膳立ても必要なく、たまたまふたりになった夜に、その身体を抱きしめただけだった。
 俺の腕に身体を絡め取られた女は、抵抗もせず、その白い肌を俺に披露した。
 やはり何かを企んでいるのかと疑ったが、俺に乱されるがままの女の嬌態に、どうでもよくなった。
 脳裏に浮かぶのは、もっと抱きたい。それしかなかった。それだけしか。

 最近になって、胸がざわりと気分悪く疼くのは、女が行為の際に抵抗の言葉を投げるようになったからか。
 いつものように背後から抱え込むように並んで座り、女の服を脱がしていく。
 最後の一枚を投げやって、華奢な身体を引き寄せた。
 隠すものもない無防備な裸体を、余すところなく後ろから抱きしめる。
 滑らかな髪にさらりと指を入れ、きめ細やかな肌を掌で撫でる。
 それだけの触れ合いにも敏感に反応する、感度のいい身体が身動いだ。
 官能を期待してか、白い肌はほんのりと薄桃色に染まっている。
 その歳にしては随分と初心な反応に、最初に感じたほど、すれてはいないのだろうと感じた。
 男慣れしている商売女を何度も抱いたことはあるが、これは男を昂らせるための演技とはまるで違う。
 握り潰せるほど細い顎に指を滑らせると、びくりと肩を竦ませた。
 そのまま輪郭を確かめるように、顔の表面をさすっていく。
 不意に女が振り返り、潤む黒い眼が俺を正面から捉えた。すべてを包み込むような深い闇色。
 その眼を見ては駄目だ。
 俺に眠るすべての感情を、女に抱く暗いものをも引きずり出す視線。
 抱かれ、喘ぎ、悦がるのは、この女であるにも拘らず。
 求めているのが俺だけだと突きつけられてしまうようだった。
 理由もない恐れを、その眼に感じてしまい、女の顔を再び前へと向ける。
 居たたまれない気分になる。
 単なる興味本位で抱きたかったなら、一度だけで終わるはずだった。だが、こんな夜は何度も続いて。
 何せ、抱く前に想像していた以上の好い身体と、真っ白な肌に痕をつける快感を覚えた後だ。
 この女の感覚を忘れることなど、なかったことになど、できる訳がなかった。
 抱くたびに、女との間にあるのが不確かな繋がりだと思えた。
 そして、こんなふうに自分を落ち着かなくさせる女を、憎らしいとさえ。

 正面から抱けば、恐らく淫らに喘ぎ、俺にしがみついてくるのだろう。
 それが真実であれば、女をより求めてしまうだろう自分を恐れる。
 想像と違えば、女が俺に抱いていることの思い違いに落胆するだろう自分を恐れる。
 ためらいは、最後にいつも壁となり、後ろから戯れのように抱くことしかできなくさせていた。
 服を脱がす間も抵抗などはせず、女の肌を弄っている俺の腕に指を這わせてくる。
 細い白い身体に伸しかかるように、腕に力を込めた。
 触れる豊かな胸は、呼吸するたびに上下して、その存在を感じる自らの腕が強張って。
 ごまかすように髪をかき上げ、耳の裏側を撫でさする。
「やっ…さ…触らないで」
 耳、弱いもんな。はむ、と耳朶を柔らかく噛んで、首筋に顔を埋め、唇を這わせる。
「あっ」
 肌を吸い上げれば、肩を揺らして艶かしい声。その声がもっと聞きたい。
 自分の声でかき消されるのがもったいなく思えて、いつも俺は何も言えなくなる。
 平素は、物静かで一歩退いている女だけに、裸体を晒しながら身を任せ、喘ぐ姿とのギャップがそそる。
 この女の持つすべての表情と声を知りたくなった。すべてを暴いて、自分のものとしたい。
 すべてを見せるのは、俺の前でだけ。それを想像するだけでぞくぞくとしてくる。
 たぷりと揺れる乳房に触れ、指先に当たる尖りをくいっと捻った。
「っ、やめ…」
 ぴくんと震える身体は、止めるなと言っている。
 首を前に倒したので、さらさらと黒髪が流れて首から落ちていく。
 露わになった項にちゅっ、と吸いつき、そのまま小さな蕾をくにくにと弄る。
「んんっ…あ、あっ」
 堪えきれない声が、漏れ聞こえる。官能をそそられる声だ。
 乳房を揺すりながら、さらに乳首を摘み擦り上げ、背中に吸いついた。
「いや、あ…ああ」
 こいつの弱いところは全部知っている。白い背中を、骨に沿ってぺろりと舐め上げる。
 淫らに突き出て膨らんだ乳首を、くいっと執拗に弄る。
「んん…んっ!」
 顎を仰け反らせて、髪を振り乱し、悦がった。こんなことが、好きでたまらないらしい。
 まさぐる俺の指を掴み、愛撫を止めろというように、かぶりを振った。
「…剣士さん…」
 手を止めた俺にほっとしたように、熱い吐息で俺を呼ぶ。
 それが不満で、閉じ合わされていた太腿の間に手を滑り込ませる。
「…あっ!」
 膝裏を抱え、両足を立てて開かせる。身を捩ろうとするのは、悪いが無視だ。
 我を忘れて乱れる様を見たい。細い身体を弄り尽くしたい。白い肌に自分の証を刻みつけたい。
 卑しい情欲だけに後押しされて、心が昂っていく。
 脚の付け根から、土手をさすっていく。指を進めると、湿った感触にたどり着いた。
「ああっ…あ」
 頭を左右に振り、喘ぐ。振り乱した髪が俺の頬に当たる。
 表面を掠めるように上下に擦れば、息を荒げて、俺の腕を掴む指に力を込めるんだ。
 とろりと蕩ける蜜を指に絡めながら、淫靡な花の形を辿るようになぞっていく。
 やわらかい花唇に触れながら、押し広げていき、そのまま中指と薬指を蕩けたあわいに潜らせる。
「あ…」
 するりと抵抗なく蜜壷に侵入した指に、女の身体がぶるりと震える。
 逃れようとする腰を押さえつけて、柔襞に指を擦りつけていく。
 欲情に湿った吐息をぽろぽろと零しながら、従順に俺の指を咥え続ける。
 熱い蜜が止め処なく指を伝い、滑らかに締めつける花びらに心地よさを覚える。
 びっしょりと濡れそぼり、糸を引くぬかるみが卑らしい。
 艶っぽく汗ばむ肌に、俺が与えた愛撫に感じる女を、可愛いなどと思ってしまう。
 男としては満足でもあり、ましてこの女を乱れさせているということに、喜び勇む自分がいる。
 膨れ上がった芽を親指の腹で撫で上げる。
「あ、あっ…や、やめて…あ」
 くにゅ、と敏感な部分を強めに押し潰し、揺らすように弄ぶ。
「あああっ」
 女の喘ぎが甲高くなる。指を咥えた内襞は波打ち、快感を湛えているのがわかった。
 ひくひくと動く入り口を見たくて、抗えずに指を抜いて、女の身体を俯せに前倒していく。
 腰だけ上げさせて、俺の目の前にひくりと蠢く花びらを露わにさせる。
 そのまま舌を伸ばして、溢れる蜜を舐め掬った。すげえ熱い。女の味がする。
「け、剣士さん、そんなところやめ…あ…はっ」
 気持ちよくなっている時の、悦がる声。
 こんな行為をしたいと思うことが初めてだった。勿論、するのも。
 女は買うのが当然で、相手を悦くさせてやろうという必要がなかったからだ。
 この女には、ただ、したい、という衝動に駆られ、気がつけば舐めている。
「いや、あっ、あっ」
 ぬるりと花びらをなぞり、芽を強く吸う。
「あああ…いや、いやっ!」
 刺激が強すぎたのか、女は妄りに腰を蠢かしながら、抵抗の言葉を零す。
 さらに溢れ出す愛液を、思うさま貪りながら、形のいい尻を捏ねた。
「ん…うっ」
 触れた途端、ぴくりと跳ねる腰を、すり、と撫でて、愛液の溢れる穴に、舌先を捩じ込んだ。
「あああ、あっ」
 女が刺激に喘いでいるのを見計らい、また指を襞の隙間に抉るように入れた。
「いやっ!」
 逃れようとして、上体を起こそうとする。
 ぐいっと容赦なく芽を摘めば、苦しげな悲鳴を上げて、床に顔を擦りつけた。
 全身から力を抜き、諦めたように俺のなすがままになる。
 何が嫌なんだ、俺にこうされていることか。それとも、俺自身がか。
 きっと今の俺は、ひどい顔をしているんだろう。どす黒い感情の渦に、頭の中を支配される。
 狭い膣内を無理やり押し広げて、指を付け根まで突っ込んだ。
「ああああ…い、痛っ…ん!」
 喘いでいた口が、痛みを訴える。痛くさせたかったわけじゃない。
 焦る気持ちを堪えて、潜らせた指をじわじわと抜き挿しする。
 段々と、火照って汗が浮く背中をじっと見つめながら。
「ああ、あああぁ」
 身悶える身体を、再び抱き起こし、胸をまさぐり、乳首を弾いて嬲る。
「んん…んぅっ」
 女の全身に浮いた汗が、月明かりに妖しく光る。
 指を抜き取ると、女はぐったりと身体を俺にもたれかけさせて、荒い呼吸を繰り返した。
 もっと時間をかけて、丁寧な愛撫を施したいとも、女が心行くまで乱れる様を楽しみたいとも。
 そう思っていても、いつも余裕がなくなる。
 一刻も早く、女の中に己を突き入れたい。その欲望だけが強く湧き起こり、歯止めが利かなくなる。
 散々に、弄くった秘処に、昂りっぱなしの欲望を押し当てた。
「…あ…」
 それを感じて、頼りない声を上げる女の中に、ゆっくりと押し入っていた。
 一気に突き上げたかったが、先ほど痛がらせたのが気になった。
 だが、徐々に進んで行くにつれ、そんな気遣いは吹っ飛びそうになる。
 女の中はぐしょりと濡れて、それでいて燃えるように熱く、この上なく気持ちがいい。
 たまに痛いほど締まるが、それも最高だと思えるほどだ。
 半ばまでは我慢して、少しずつ進んだが、そこから先は一息に押し込んだ。
「いやっ! あああぁ!」
 すげ、きつい。挿れただけで、イっちまいそうになる。
 仰け反る女の細身を抱きしめて、熱を感じながら首筋に唇を落とした。
 根元まで押し込んだ腰を、ほんの少し動かすだけでも女は声を詰まらせて、啼く。
 ゆっくりと動いてやろうか。
 女を苦しめているかもしれないのは、俺であるのだろうに。
 この行為を、止めたくはない。納得するまで満足したい。こいつを、知りたい。
 理性と本能と、俺に似合わぬ感情とが、入り混じってエゴとなる。
 俺の全部でこいつを抱きたい。
 そのまま女の身体をかき抱いた。じわじわと腰を引き、ゆっくりと抽挿を始める。
「あああっ、あぁ…」
 腰を振るたびに、快感が襲い、啼き声が降る。
 その度、益々のめりこんでいく自分に気づいているくせに。
 捕らえどころのない女を、どうしようもなく抱きしめて、愛しいなどと感じてしまう。
「…もう…も…許し…」
「まだだ」
 耳朶に唇を押しつけて、囁く。
 つい口を出た言葉は、今夜、初めて発した言葉ではなかったか。
 耐えきれずに吐き出すように、浅ましくも。
 ひくひくと震える結合部も、力なく崩れそうになる身体も、離したくはない。
 できる限り優しい抜き挿しを続けていると、女の息遣いは荒いながらも、悦に入った喘ぎに変わる。
 素肌と素肌が触れ合う間を、生温い汗が伝って落ちていく。
 汗はすぐに冷えるくせ、熱は失われることはないようだ。
 身体の中心に疼く甘い痛みを意識して、動揺し、尖る乳首を捻って忘れようとする。
「んっ…い…剣士さ…」
 どんなに嫌がろうとも、必ず情交の途中で、俺を受け入れる言葉を。
 その事実が、また次も、と俺をどんどん貪欲にさせる。
 俺に身を任せて、もっととねだる女を恥知らずとは思えなかった。
 ただ嬉しくもあり、同時に傷つく。
 これが抱いて抱かれるだけの行為なのではないかと。性感さえ得られれば、それでいいのかと。
 抱かれている間は、熱の篭った喘ぎが、俺を呼ぶ声が、俺に情を感じていると思わずにはいられない。
 それなのに激しい情交が終わった後では、何事もなかったように冷めた視線を向けられる。
 初めてそれをされた時、想像以上に痛手を被った。はっきりと自分の欲に気づかされた。
 思い出すだけで胸がむかつき、頭がくらくらする。
 下半身の感覚だけに頼るように、腰を闇雲に動かした。
「剣士さん…いい…は…ん」
 ああ、まただ。その言葉だけで、こんなにも人間は幸せだと思えるものなのか。
 声を、もっと聞かせてくれ。後で、突き落とされても構わない。だから、もっと、と。
 それでも顔が見られないのは。もし、見てその瞳に、何の感情もなかった時が怖いのだと。
「剣士さんっ…ん…はぁ、ああっ!」
 ぞくぞくするほど色気のある声に、それだけで蕩けそうな心地になっていく。
 息を弾ませて、俺の腕の中で、ただの淫らな女になり、締めつけて離そうとせずに。
 全身に走る震えが、心に何かを湧き上がらせては、退いていく。
 灼けつく熱のような感触。熱くぬめって、みっちりと隙間なく締め上げる柔襞を押し開く。
 奥深くまで貫いて、意識ごと飛ばすほどに、すべてを放った。

 後ろから抱きしめたまま、柔らかい髪を撫でる。
 それだけで満たされた気持ちになり、無言でその行為を続ける。
 また不意に女は振り返って、俺の目を見据え、口を開いた。
「好きだから…こういうことするのよね?」
 この感情を、それと認めていいものかと逡巡する。
 好きだから? 女が? セックスが? ただ、抱きしめることが? 或いは、そのすべてが?
 いや、答えはもう出ている。
 気重な溜め息をつき、逃げられないことを悟る。
 顔を近づけて、ゆっくりと口づけられた。答えようと開いた唇から、柔らかい舌が入り込んでくる。
 しばしの旨みを味わい、離れると、女の眼は冷めた輝きに光っていた。
 その眼と見つめ合う資格は、俺にはない。
 いつものように女を正面に向け、背中からすべてをくるむように抱きしめる。
「好き…なんだろう、俺は」
 俺は。お前が、どうなのかとは聞けない。その返事も期待していない。
 いつものように女は自分に楽なように座り直し、俺の腕に白い細い掌を乗せる。
 黙り、何も言わずに、何がしたいのかも告げない女に。本気で、好きだと告げてよかったのだろうか。
 頬をすり寄せ、軽く唇を寄せた。
 痛々しいほどの静寂は、また俺をじわじわと苛んでいく。
 この触れ合いに、どうか示しを。俺の望みは静けさに溶けていく。
 左耳のピアスがぶつかる音に、俺ひとりが身体を竦ませ、時が流れる。

 俺に興味がないような女の表情を見ないように。
 欲しくて、いとおしくて、堪えきれない感情が表れる俺の顔を見せないように。
 何より、腕の中に女のすべてを抱え込めるように。

 明日もまた、俺は女を。後ろから抱きしめる。


   ―終―