ONEPIECEエロパロ保管庫 - 9/139-167(ルフィ×ロビン)
彼が他の女性と入った時、私の足元が崩れ落ちるような、そんな感覚を味わった。
そして彼が私の傍にずっといてくれても・・・・・・。
いつでも手を伸ばして寄り添うことができる存在であっても・・・・・・。
―彼は自分の意思で、私の手から、身体から、自由に離れる権利と意思を持てる。
一心同体ではなく、一個の別とした存在であり固体。
・・・・・・長く時にいても彼はやはり他人。
私の手の隙間から抜け出してしまう存在。

その事実を自覚した時、私はその場に座り込んだ。
屈みこんだまま、指でまぶたを押さえた。
熱くなったまぶたを押さえた瞬間に、熱い水滴が流れた。
私は慌ててハンカチで拭いとった。

今日の予定はもうすべてキャンセル。
何をする気にもなれない。
読んだ本の続きも気にならない。
早くこの島から出たい。
・・・・・・でも、まだ出ることはできない。
次の島のログが溜まるまで今日を除いてあと二日ある。

私はハンカチを仕舞うと、そのままホテルに戻った。
大衆食堂には、『彼』を除いた仲間が相変わらず楽しく騒いで食事を摂っている。
彼らに笑みを作ってあげ、私は自分の割り当てられた部屋に戻った。

部屋に戻ると、急激な孤独が襲い掛かった。
そして深い裏切りを思い出した。
私の呼吸は荒くなり、喉が詰まりそうになった。
口を押さえ、部屋の備え付けの洗面所の前で足を引っ掛け跪いた。
排水溝に口を近づけ、押さえた口を開いた・・・・・・が、吐しゃ物は出なかった。
代わりに出たのは嗚咽。
必死に声を出さないようにしたのは・・・・・・知った現実に対する意地だったと思う。
・・・・・・何の意地?何に対する?
・・・・・・・・・・・・誰に対する?

ひとしりき漏らした嗚咽と、溢れてくる涙を出して、私は服を脱いでシャワーを浴びた。
注がれるぬるま湯が、頭に救った忌々しい現実を洗い流してくれるとは期待していないが。
・・・・・・そして、私がシャワーから上がっても、それを待ってくれる人いないという現実も。

―急に世界が、自分だけになってしまったような気がした。







          ―『私の中の中心』(ルフィ×ロビン)―




レースのカーテンから漏れる日で、目を覚ますと、隣のシングルベットに航海士さんがいた。
明らかに具合悪そうに、まるで借金に頭を悩ますように憂鬱みたいだった。
しかし昨日の事を思い出せば、借金よりお酒が原因であることが明白だった。

「大丈夫?」

「・・・・・・あんまり。・・・・・・飲みすぎるとこうなるって判ってるのに・・・・・・。あーもう・・・・・・。」

「頭痛いんでしょう?お水入れてくるわ。」

ホテルの人に頼んで、水とコップをもらいにいこう。
私がそう判断して部屋を出ようとすると、航海士さんが声をかけてきた。

「・・・・・・そういえばルフィは?どうだったの?」

心臓が止まりそうになった。

「・・・・・・何が?」

「ん〜、なんかあんまり覚えてないんだけど・・・・・・アイツいなくなっちゃってたでしょ?・・・・・・それでロビンが探しに行ってくれてたんじゃなかったっけ?」

「・・・・・・。」

「・・・・・・あれ?違う?」

「・・・・・・そんなことないわ。確かに探したんだけど・・・・・・『見つからなくて』。彼のことだから心配いらないって思って・・・・・・そのまま戻ってきたわ。あの剣士さんじゃないんだし・・・・・・。」

「あはは!そりゃそうね!・・・・・・ってて、頭いたぁ〜。」

「ごめんなさい、すぐ持ってくるわ。」

「ありがと〜・・・・・・。」

モフ、という音が後ろで聞こえたが、おそらく彼女がベッドに倒れた音だろう。
私はそのまま部屋を出て、船医さんのいる部屋に寄った。
寝ぼけ眼のまま、彼は頭痛薬をくれた。
水にとかして飲むといいらしい。
私は礼を言って部屋を後にした。
・・・・・・そして向かい側にある部屋を注視した。
向かいの部屋に『彼』に割り当てられた部屋がある。
普段なら、部屋を訪ねて挨拶でもするのだが・・・・・・素通りした。
早く水と薬を彼女に届けなくてはいけない。
足早にその場から離れた。

仲間達が昨夜派手に飲み食いした食堂は、いまは朝食をとる宿泊客を数名居座らせているだけだった。
バーカウンターでグラスを磨いているバーテンから水とコップを強請ると、下心丸出しのにこやかな態度でコルク栓の付いた水の瓶と、タンブラータイプのグラスを寄越した。

「よぉ!ロビン!」

その声に、思わず瓶もグラスも落としそうになった。
私は動揺し凍りついた顔を、無理矢理作り笑顔に変えた。
この真意を読み取らせないポーカーフェイスは、20年以上の裏社会で得た武器だ。

「・・・・・・おはよう、ルフィ。今帰ってきたの?」

『今帰ってきた』、そう言われた途端、彼は視線を外して『え〜・・・・・・あ〜・・・・・・』と、質問に答えかねる中途半端な言葉を発した。
明らかにバツが悪い態度だった。

「・・・・・・うん、今。」

散々迷わせた挙句の答えがそれだった。

「そう。・・・・・・どこに行ってたの?」

私の核心を付く二段階目のセリフに、彼はまたしても動揺した。
やましい事がなければ、動揺せずに言えばいいのに・・・・・・。

「え〜と・・・・・・外で飯食ってた。」

「ここで食事してたのに?」

また彼は、あーうー言いながら言い訳を考えてる。
正直な話、こんな彼を見たくなかった。
彼のこんな態度は、私が昨日見た事が真実だと言っているようなものだ。

「・・・・・・知らない女性に声掛けられて、一緒に出て行ったんでしょ?」

「・・・・・・!」

その表情は図星。
そして途端に表情を曇らせた。
・・・・・・私は止まらなくなっていた。
これ以上彼に言うべきじゃないのに・・・・・・止まらない。
憤りが、私の思考を支配して口を閉じるのを止めさせない。
「・・・・・・楽しかったの?私以外の女性を抱いて・・・・・・。」

「い、いやそれ違うぞ!ロビン!」

作り笑顔はすっかり無表情になっている。
自分の声は自分で聞いてても底冷えするような冷たさを含むようになっているのもわかった。
私はルフィに近づいて、片手に瓶とグラスを抱えたまま、もう片方の手でルフィの口を塞いだ。
そして耳元で囁いた。
もう自分ではなく、他人が私の身体を支配して、彼との関係を修復不能にしているような気がする。

「言い訳は聞きたくないわ。」

ルフィの反論を聞かないように、私はすぐに彼から離れて、目的の場所に向かった。
後ろから私の名前を連呼する彼の声が聞こえる。
けれど、私を追いには来なかった。
私は彼への感情を凍結させて、航海士さんが苦しむ部屋へ入った。
二日酔いも眠気も吹き飛んだクルーは、私とルフィの間にあった出来事で戸惑っていたらしい。
特にルームメイトの航海士さんは何度も私を心配して来てくれた。
私は自分に割り当てられたホテルの部屋から一歩も外に出なかった。
・・・・・・そして部屋の外には、彼がいる。
彼女からそう聞いたし、気配でわかった。

「・・・・・・ごめんね。朝は何にも知らずに無神経な事聞いちゃって・・・・・・。」

航海士さんはベッドに腰掛けている私の横に座って、そう言った。
私は無言で首を横に振って、再び顔を伏せて指遊びしている手に視線を戻した。

「・・・・・・あーでも!アイツ信じられない!ロビンがいるのに、ホイホイ誘われて付いて行く!?フツー!」

「・・・・・・彼優しいから。」

「でも普通断るでしょ!?ロビンも一緒だったんだから!何よアイツ!ロビンの事好きじゃないわけ!?もう別れなさいよ!あんなヤツ!」

「・・・・・・本当はそのほうがいいのかもしれないわね。」

「でしょでしょ!?」

当事者の私より、事情を聞いただけの彼女のほうが次第にヒートアップしている。
本当は私もあれぐらいの態度になったほうがいいのかもしれない。
けれど・・・・・・。

「・・・・・・でも憎めないわ。彼のこと・・・・・・。」

「で、でも―」

私が突然彼女を抱きしめたから、彼女は言いかけた言葉を途切らせた。
彼女の服を掴み、自分の醜い感情や悲しみで震える感情を吐き出すように、彼女を抱きしめた。

「・・・・・・好きなのよ、ルフィのこと。嫌いになれないわ・・・・・・。」

「ロビン・・・・・・。」

抱きしめ返す彼女の腕は優しかった。
私の傍には、28年間で初めての『女の友達』がいる。
辛い時、悲しい時、楽しい時。
女性だけの感覚を共有して、笑えあえる存在。
世代は一回り以上違うけれど、秘密を持てる親密な関係。
自分の弱さを初めて晒せる同姓の相手。
そんな相手が、今私の傍にいてくれることが嬉しかった。
何よりの慰めだった。

「・・・・・・ねぇ、ロビン。・・・・・・ロビンはどうしたいの?二人の事だから、本当は私が口出ししちゃいけなかったんだけど・・・・・・。ロビンがどうしたいかだけ・・・・・・私に言わなくていいから決めたほうがいいと思う。」

「・・・・・・わからない。まだ何も決められないわ・・・・・・。こんなの初めてだから・・・・・・。ここまで本気で好きになる相手なんかいなかったし・・・・・・私の方から離れていく事が多かったから・・・・・・。わからない、どうしたらいいのか。」

彼女は私の顔を真剣な顔で見つめなおすと、優しく顔を緩ませた。

「ロビンの好きなようにしたら?恋愛に・・・・・・正しい選択肢があるのかわからないけど・・・・・・でも自分に後悔がないようにしたらいいと思うわ。」

自分がどうしたいか。
わからない・・・・・・でも、ハッキリした答えじゃなくて、ただ漠然とだけど。

「・・・・・・ルフィと、ちゃんと話すわ。納得できるかわからないけど・・・・・・。」

「・・・・・・そ。じゃあ私、部屋の外に出てるから・・・・・・。」

ベッドから離れ、航海士さんは部屋の扉を開ける。
と、部屋の外から扉が開いた瞬間に何かが転がり込んだ。

「ちょ!?何やってんのよルフィ!」

「よ、よぉ!ナミ・・・・・・」

ルフィはバツの悪そうな顔で航海士さんに挨拶をした。
そして、私のほうを見やると、すぐに視線を外して黙り込んだ。

「コイツ・・・・・・扉にへばり付いて泣いてたぞ。『誤解だ』『誤解だ』ってな。なっさけねぇ・・・・・・。」

「う、うるせぇ!」

部屋の外で壁にもたれかかった剣士さんの解説を、ルフィは顔を赤くして弁明した。
・・・・・・そういえば、うっすらと彼の目じりに涙の後や、泣きはらした後がある。

「なぁ、ウソップ。ゴカイがどうしたんだ?ルフィ食べたいのか?」

「こんな時にそんなボケはやめといたほうがいいと思うぞチョッパー。」
航海士さんは呆れた顔をしながら・・・・・・ルフィの背中を踏みつけ、ピンで虫を留めるように封じ込めた。

「うぎゃあ!?な、なにすんだよ!?」

「ロビンがアンタに話があるんですって。・・・・・・ていうかむしろアンタのちゃんとした言い分を聞きたいって事。・・・・・・私はこの部屋出て行って、アンタとロビンを二人きりにしておくから・・・・・・いい?わかってんでしょうね?」

「な、何が・・・・・・?」

「またロビンが傷つくような事してみなさい?アンタを・・・マジでブッ殺すから・・・・・・」

「お、おう・・・・・・。」

二人の会話は私に聞こえないように、という配慮をしていたみたいだったけど、見事に丸聞こえだった。
航海士さんの足はどかされ、彼女は部屋の外にいるクルーを手で払って追い出した。
最後に私を見て、真剣な顔をしていた彼女は、私とルフィを残して部屋を出て行った。
部屋には、ベッドに腰掛ける私と、入り口で膝立ちをしているルフィだけ。
重い沈黙が、どちらかが破るのを待っていた。

「・・・・・・あ、あのさ。」

「・・・・・・何?」

「昨日の事は・・・・・・本当に誤解なんだって。確かに女と一緒にいたけど・・・・・・いつもロビンとするような事はしてねぇよ・・・・・・。」

「・・・・・・どうしてそれを信じられるの?わからないわ・・・・・・。」

部屋で二人っきりになってから、私はルフィの方へ顔を向けなかった。
向けられなかった。
どんな顔をしていいのか。

「でも信じてくれ!俺はロビンが嫌な気持ちになるような事はしたくねぇ!・・・・・・ロビンが悲しむような顔も見たくねぇ!」

語尾が・・・・・・わずかに震えていた。
思わず彼のほうを見ると、あの泣きはらした目じりに再び涙が浮かんでいる。
そして何度も何度も服の裾や手で拭いとって・・・・・・再びあふれ出している。

「信じてくれよ〜!」

「・・・・・・。」
たぶん今の彼の姿は、男としては情けない姿になるのかもしれない。
彼自身、今の姿をそう思っているのかもしれない。
けれど私は・・・・・・心を動かされた。
締め付けられた。
彼の話が本当だという証拠は何一つない、にもかかわらずだ。
裏切られたのは私なのに、傷ついたのは私なのに・・・・・・。

「!?・・・・・・うわぁ!?」

ハナの実の力で咲かせた手で、彼をベッドの傍へ、そして私の腕の中へと包み込んだ。

「ロビン・・・?」

涙が浮かぶ目で私を見上げる彼。
この部屋に来てから、さっきから彼はずっと等身大以下の子供だ。
悪いことをして、年上の大人にしかられている、可愛い子供。
必死に自分の誠意を格好なんか気にせず訴える彼。
この時わかった。
私は彼に適わない。

「・・・・・・謝ったって・・・・・・許さない。」

怒っていたはずなのに・・・・・・傷ついていたはずなのに・・・・・・。
私は彼を嫌いになれなかった。
泣いている彼を見て、私は『可愛い』と思ってしまった。
『愛しい』と思ってしまった。

「んんっ!?」

彼の唇を奪って、私は気づいた。
どんなに傷ついても・・・・・・私は彼が好きだ。
彼を抱きしめたまま、ベッドに押し倒して覆いかぶさった。
両手両足をベッドから咲かせた手で固定すると、神話の吸血鬼のように彼の唇をむさぼる。
この唇は、昨日は他の女と触れ合った。
そう思っただけで、私は余計に唾液を送り、見知らぬ女の痕を消したかった。
舌は彼の口内を侵入して、隅々まで嘗め回して・・・・・・そして戸惑っている彼の舌に触れた。
私は目を閉じていたので、彼がどんな顔をしていたのかわからない。
舌を絡ませ、彼の舌の腹を、舌先で舐め上げ刺激していく。
その最中に、私はおそるおそる彼の表情を上目遣いで見た。
・・・・・・目を閉じ、耐えている。
私は舌を抜き、唇を離して、身体を起こした。
彼の下半身を跨いで、彼の顔を見下ろす。
唇を涎まみれにして、息を荒くして、放心している。
ひどく扇情的な顔。
私の中の・・・・・・サディスティックな感情が顔を出してきた。

「ルフィ・・・・・・昨日の女と、今日の私・・・。どっちのキスがよかった?」

「だ、だから俺、昨日なにも・・・・・・!」

「聞かれた事だけ、答えなさい・・・・・・。・・・・・・いいわね?」

「・・・・・・!」

戸惑いから不安、そして怯えの顔に変わった彼の表情。
たまらない・・・・・・。
私の心を捕らえて離さない・・・・・・私の愛しい人。
私の中の中心にいる・・・・・・私のかわいい人。

「ロビン・・・・・・。」

「・・・・・・?」

「ロビンの方が・・・・・・いいよ。」

羞恥と恥辱に煽られて、涙を浮かべながらそう答える彼は、まるで小動物のように可愛い。
自然と笑みが浮かんで、彼の髪を、そして頬を撫でてあげた。
もっとも、その笑みが妖しいものなのは、自分でも自覚できていたが。
再び彼に覆いかぶさると、彼のシャツのボタンを外しながら、彼の首筋にキスをする。
そして自分のピンクよりルージュに近い唇から舌を突き出して、彼の浮き出る血管の筋から耳たぶへと這わせ、舐め上げた。
瞬間、彼はビクビクと奮え、熱い息を何度も漏らした。
シャツのボタンをすべて外すと、開けたシャツの中へ撫でるように手を差し込んだ。
痩せ型だが筋肉質の彼の身体は、脂肪が薄いのか実に敏感で、爪や指の腹でくすぐると、笑いこける前に性的な反応を起こす。
上下左右に、身体全体を撫で回すと、彼の押し殺した嬌声が上がった。
だがその抵抗も、乳首を撫で上げ転がすと、無駄になった。

「あ、あ!あぁ〜っ!」

彼はハッとした表情になり、そして口をきつく結んだ。
先の自分の上げた甘い声が恥ずかしくなったのだろう。
でも、それを崩落させるのが、私の快楽。
耳たぶを唇に含み、舌の上で転がす。
塩気のある甘い味に、私はうっとりしながらしゃぶった。
指は乳首の上で爪で擦り、もう片方は乳輪を指で撫で上げる。
舌が耳の中を舐めあげるころには、両手は彼の両脇を持ち上げるように摩りあげていた。
彼の両脇を撫でていた手を両方のほっぺを撫で頭を掴むと、耳を舐めていた舌を引っ込め、喉にかぶりついた。
かぶりついた―といっても、もちろん噛み切るような真似はしない。
口に含み舐め、そしてそのまま首の下の窪みや鎖骨にキスした。
今度は彼の両肩に手を置くと、私の好物が目の前にあった。
さっきから彼は声にならない声を上げ、必死に耐えている。

「ろ、ロビン・・・・・・。」

息を荒くして私にすがりつくような声を出すルフィは、私しか頼れないというように弱々しい。
いつも元気で明るくて、そして強い彼のこんな姿を見れるのは、私一人でいい。

「いい声ね・・・・・・。たまらないわ・・・・・・。」

彼の甘い声をもっと聞きたいから・・・・・・私は目の前の好物―彼の乳首をしゃぶった。
瞬間、彼の身体が反応で浮き上がり、私はすかさず背中に両手をまわして抱き締めた。
唇を乳首に密着させ、唾液まみれにしてから円状に舐めあげる。
その度に、彼の身体はビクビクと反応を示した。
散々時間を掛け、両方ずつなぶり尽くした後、身体をそっと離してあげた。
途切れ途切れの荒い呼吸に、瞳は溶けたように潤んで、私を見つめる。
加虐心をそそらされるその表情に、私はため息を漏らした。

「どうしたの?もう満足しちゃったかしら?」

「・・・・・・ロビン。」

「・・・・・・それとも、こっちの方がいいのかしら?」

レザージャケットのジッパーを降ろし、胸元を開けると、彼の目に色欲的な色が現れた。
私は満足しながら、ジッパーを下まで降ろし、中のシャツのボタンを外した。
ジャケットを広げると、両方の乳房がそろって彼の目の前に躍り出た。
早く彼の身体に触れたいと、わがままを言っているみたいに。
「・・・・・・わかってるわ、ルフィ。欲しいんでしょう?これが・・・・・・。」

彼の後頭部を手で支え、持ち上げる。
そして、私は身体を屈めて、胸の谷間に彼の顔を埋めさせてあげた。

「んっ・・・・・・。」

彼の満足げな声の後、堪能するようなため息が胸をくすぐった。

「ん・・・あぁ・・・!」

胸の刺激で、私は喜びの声を漏らした。
喜びの声を聞いたせいか、ルフィは途端に私の胸を攻撃し始めた。
谷間に舌を這わせ息を吹きかけると、左の乳房に顔を埋めるように舐めあげて、乳首を口に含んだ。

「ああっ!・・・・・・そこ・・・・・・そこ・・・・・・!」

赤ん坊のように乳首を何度も吸い上げ、舌で転がす。
下から上に跳ね上げるように、そして回すように左右に。
最後は、前歯で甘噛みしてようやく離してくれた。

「ああああ!・・・ほ、本当に・・・・・・おっぱいが好きなのね・・・・・・。」

言われた本人は少し照れたような笑みを浮かべ、今度は反対側を同じように舐めあげた。
主導権を渡してあげたことで、少し余裕で出来たのだろう。
両方の乳首を陵辱される度、だらしのない声を上げて悦んでいた私は、彼が乳首から口を離した瞬間に、けだるい脱力感に襲われた。
全神経を胸に集中させすぎたのかもしれない。
けれど、彼を拘束し、彼を陵辱するという意思がなくなったわけではない。
彼の頭を離してベッドに寝かせると、私は跨っていた方向を変え、彼にお尻を突き出すように跨った。
レザーとレースのスカートを捲くると、湿り気を帯びたショーツが彼の眼前に現れた。

「フフ・・・・・・美味しそう?でもまだダメよ・・・・・・。」

私の方の眼前には、彼のジーンズを持ち上げ隠れている陰茎がある。
一番の好物で、当然彼の身体の中で一番好きなところだ。
・・・・・・でも、彼は昨日それを別の女に味見させたのだ。
そう思うと、憎たらしい。
・・・・・・お仕置きが必要だ。
ジーンズのボタンをゆっくり外し、ジッパーを山型に沿うように降ろしてあげる。
そして大きく染みになっているトランクスを降ろすと・・・・・・雄の匂いが充満する彼の猛々しい陰茎が隆起していた。

「はぁ・・・・・・あぁ・・・・・・。」

その瞬間、私はルフィに裏切られた事も、他の女に提供した事も忘れて、ただうっとりと感嘆のため息を漏らした。
雄の匂いに、本能的な雌の感覚で身体が奮え、股間から蜜があふれ出るのがわかった。
そして私の思考も、すっかりこの匂いに狂わされた。

「ルフィ!これが・・・あなたのいけないモノ?他の女にも使って、悦ばせてあげたのかしら!?」

「つ、使ってねぇよ・・・。」

「生意気ね!まだ口答えするの・・・?・・・使わないわけないじゃない!こんなイイ物・・・・・・!」

堪らず彼の陰茎に中腹にキスをした。
瞬間、陰茎が刺激で反応し、竿がしなった。
「!?きゃあ!」

尿道に溢れさせていたカウパーが、竿のしなりで顔にかかった。
ツンと彼の匂いが鼻をついて離れない。

「いけない子ね・・・・・・でも可愛いわ。」

舌を突き出し、竿に垂れ流れているカウパーを舐めあげた。
舐めあげる度に、何度も同じように竿がしなりをあげる。
そしてその度に私の顔に何度もかかったりするものだから・・・私は雄の匂いに包まれながら、その度にキスして舐めとった。

「ロビン・・・!ロビン・・・!」

彼の切ない声・・・・・・すがりたい声が私を呼ぶ。
私はそれに答えるように・・・・・・そして黙らせるように・・・・・・彼の顔に尻を乗せた。

「んぷっ!?」

「・・・・・・舐めなさい。舐めたいんでしょ?・・・・・・させてあげる。」

私が許可を出すと、彼の鼻先が臀部の間に食い込んでいるショーツの中に入れどかすと、蒸れた秘唇と肛門を外気に晒した。
ショーツの中より低い外気温度が、私の秘唇と股間に刺激となって、密を滴らせて伸縮した。

「・・・・・・!?ああっ!!」

ザラザラした舌の感触が、秘唇の表面を撫でた。
舌の先端が表面に溜まっている蜜を掬い取るように何度も舐めあげた。

「あぁう!ああん!」

彼の陰茎に顔を寄せ、必死に下半身から全身へ発せられる刺激に耐えた。
そしてその刺激に煽られるように、私は彼の陰茎をむさぼった。
顔中がカウパーでベトベトになるのも構わず、舐め上げ、キスし、そして咥えた。
舌を這わせながら、頭を上下に動かして、彼の絶頂を促す。
最低限、喉を突かないよう気を遣いながら、唾液を絡めて彼の味をむさぼる。

「おいひぃ・・・・・・はぁ・・・・・・。」

口の中に広がる味が、鼻を突きあげ、脳を痺れさせる。
そして一息ついた瞬間に、彼の舌が私を攻撃した。
舌先が秘豆に触れ、転がされると、ショックを受けたような刺激が全身を雷のように貫いた。
「もっとよ!もっと舐めて!」

私のリクエスに答えるように、ルフィは激しく舌を動かした。
溢れる蜜を全部すくい飲み干すように舌を動かし、それでも足りないのか直に口を付けてしゃぶるように口に含んで飲む。
まるで子供が母親のお乳を飲むように幼児的で熱心に。
いえ、人間というより動物の授乳に近い。
それほど彼は必死に私のいやらしい蜜を舐め上げていた。
彼に秘唇を眼前に晒すという羞恥と、それをなめさせる屈服感、そして肉欲的な快楽。
私は暴走しているのかもしれない。
今ここで愛しい彼を虐げているのは、彼に愛されていた女じゃなくて、ただの交尾が好きな女。
・・・・・・でも、なぜ?
なぜ私はここまで乱れているの?
彼に裏切られたから?
・・・・・・わからない。
私は彼の奉仕に満足しながら、いじめの対象になっている彼の陰茎を楽にしようとした。
前歯でカリ首を刺激し、口から話すと、その傘の部分を舌先でなぞるように舐め上げた。
もうすでに限界みたい。
痛々しい程に隆起して、切なげに竿が震えている。

「いいわ・・・・・・楽になりなさい・・・・・・。」

ジャケットから飛び出した乳房を掴んで突き出し、舌で涎まみれにした手で谷間に潤滑油を差す。
さらに、彼の溢れる汁を掬い取り、胸全体に塗りこんだ。
唾液と精液に満たない潤滑油でベトベトになった乳房の谷間を、ゆっくりと彼の陰茎に挟んだ。
密着した双丘の隙間から彼の陰茎の型がはみ出ている。
そのまま上下に動かすと、谷間から潤滑油があふれ出てきた。

「うああ!ろ・・・ロビン!」

悲鳴に近い彼の甘い声が刺激的に聞こえる。

「・・・ルフィ、あなただけイクのはずるいわ・・・・・・。ちゃんと私もイカせて・・・?」

ルフィは震えながら私の秘唇を再び舐め始めた。
そして、秘豆を重点的に攻めてきた。
ピンポイントの刺激に震えながら、私も胸と舌に力を入れるのを忘れない。
でも・・・・・・もう限界だった。

「ロビン!・・・・・・俺・・・!」

「いいわ!出しなさい!」

彼の熱いものが私の顔にかかるのと同時に、大きな雷が私の身体を貫いた。
全身を痙攣させ、そのまま彼の身体の上に倒れた。
彼の股間の上に顔を埋め、彼の残りの精液が私の顔へ容赦なく放出された。
その私も、秘唇からだらしなく蜜が溢れて彼の顔にかけていた。
お互いがお互いの性器から、精液を顔中に浴びて果てていた。
ようやく力が戻った私は、青臭い匂いを充満させている顔を、だらしなく汚している精液を拭い舐め取ると、再び彼の陰茎を掴み刺激を与えた。
「ろ・・・ロビン・・・・・・?」

「まだコレで終わりだと思ってないでしょ?最後の最後が残ってるんだから・・・・・・。」

私は立ち上がって、彼の目に秘唇を広げて見せてあげた。
溢れて止まることを知らないそれは、蜜を滴らせ、彼の陰茎に注がれた。
その扇情的な光景で興奮したのか、それとも命の水のように蜜が陰茎に力を与えたのか、どちらかはわからないけれど、彼のモノは再び力強さを取り戻した。

「ルフィ・・・覚えておきなさい。」

私ではない私が口を支配する。

「・・・・・・将来、また私以外の女を抱く時があった時。」

それは私の中の本性なのか、それとも闇社会で生き抜いて生まれた別人格なのか。

「あなたは自覚するわ・・・・・・そして思い出す。」

でもすべて・・・・・・本当の私。

「私よりいい女はいなかった、って。私を失った時、自覚するわ。」

自己顕示欲の強い、強引な女。
愛した男の中心に居座ろうとする女よ。

「あなたは忘れないわ・・・・・・。私を忘れない・・・・・・。」
腰を落として、秘唇を彼の光る陰茎にあてがう。
彼の頭を起こして、結合する淫靡な光景を見せつける。
膣に亀頭が包まれ、淫水の音がいやらしく奏でる。
彼の温もりが全身に伝わり、麻薬のように快楽が溢れ出して来る。
ケシの花の粉を吸い込んだ事はないが、固形に精製し愛用した人物の話を聞いた事がある。
常習するようになれば、服用した最初に得られる快楽は薬そのものではなく、自身の脳内から得られるそうだ。
つまり『行為のきっかけ』が、身体に条件反射として反応し、脳内麻薬が分泌されるという。
・・・・・・という事は、私もすでにそうなっているのかもしれない。
彼の陰茎を見て、彼の匂いを感じ、舌で味わう。
すべて性交の前段階で、私は快楽を感じている。
身体が条件反射として反応しているのだ。
彼の身体に。

・・・・・・そうだ、私も忘れない。
・・・・・・もう忘れられない、彼を。

「ルフィ・・・・・・。」

呆けた彼が私を見る。
呼びかけた私を、何用かわからずに見つめている。

「・・・・・・なに?」

「好きよ・・・・・・ずっと。」

腰を降ろした途端、大きな衝撃が全身を貫いた。
「ああああっ!!」

「うあああっ!!」

意識を失いかけた。
・・・・・・時間をかけたせい?
それとも・・・・・・ずっと彼が欲しかったから?

「あああ・・・・・・ああぁ・・・・・・。」

声が裏返って、意図のない声が震えながら口から漏れた。
視界がぼやけゆがんだ。
それを認識した時には、頬を涙が伝った。
そして全身がマヒするような痙攣が襲った。
意識が朦朧としたとき、私の胸の間、ルフィが収まった。
そして抱いた、私を。
意識が薄く緩む口を閉じることができず、私は涎が口の端からこぼれるのを止められなかった。
背中をゆっくりとさすられた。
途端に背中を伝う快楽物質に、また全身が震えた。
下から持ち上げるルフィも、何度から身体を奮わせながら、前へと持たれる私を支えてくれた。

「大丈夫か・・・・・・ロビン。」

「・・・・・・・・・・・・えぇ。」

世界がひっくり返るかと思った。
でも、そばに彼がいた。
裏切られた彼がいた。
憎い彼がいた。
・・・・・・それでも愛しい彼がいた。
私が意識を覚醒させるまで、彼はずっと私を支えて抱きしめていてくれた。
彼を胸から離し、改めて彼を見ると、私が咲かせて拘束させた手が消えていた。
意識が飛んだ瞬間なくなったのだろう。
手足が自由になった彼は、私の涙を指でぬぐった。
そして頬を撫で、顎を掴むと、私の唇を吸った。
私は彼の肩に手を置き、素直にされるがままになった。
唇から離れた彼は、そのまま私の顎や頬を、鼻や唇で摺り寄せた。

「・・・・・・したいの?」

「うん・・・・・・。」

「・・・・・・私が上でしてあげるわよ?」

「俺がしたいんだ・・・・・・。」
頭と腰を支え、押し倒される。
視界が一気に暗くなり、彼しか見えなくなる。
私とルフィの間には、お互いの漏らす生暖かい息が混ざり合っている。

「・・・・・・犯したいの?私を・・・・・・。昨日の子みたいに・・・・・・。」

「・・・・・・関係ねぇよ。ロビンを犯したいんだ・・・・・・メチャクチャに。」

周りが暑くなる。
・・・・・・いえ、私と彼を取り巻く空気だけ。
情痴に溺れたお互いの熱で。

「・・・・・・いいわ。」

そしてその熱は、正常な思考も理性も、道徳心も倫理観も、生理的な後始末も忘れさせた。

「・・・・・・犯しなさい。」

再び唇を奪われる、両手を繋いだまま。
お預けを食らった犬が、エサを解禁されたように。
ベッドに押し付けられ、乱暴に腰を打ちつける。
もともと彼にテクニックなんてない。
毎度試行錯誤していたみたいだが、そんなものは必要ないと言ったことがある。
彼が私のために一生懸命になっているだけで充分、と。
それだけ言って、その先は言わなかった。
私は心の中でだけ、先をつぶやいた。
―それだけで、充分私の心は満たされる。
激しい動きに、私は彼の身体を抱きしめようとした。
だが汗ですべり、また彼に手首を掴まれてベッドに押し付けられた。
焼きゴテで内壁を何度もえぐられるような感覚。
だが、実際にやられたらこんなものではないだろうし、快楽など感じない。
実際に私の中に入っているのは・・・・・・彼の一部。
そう、これは快楽の拷問だ。
お互いの汗で、お互いベトベトになりながら、お互いが生み出す快楽に酔い痴れた。

「あああ・・・・・・あああ・・・・・・あああ〜!」

私は頭がおかしくなったのかと思うような嬌声をあげ、朦朧とする意識の中でも彼を見続けた。

「ロビン・・・・・・ロビン・・・・・・!」

彼は何度も私の名前を連呼する!
何度も呼ぶことで、私を求めてるの?
おかしな子ね。
・・・・・・私はここにいるわ。

「ルフィ・・・・・・ルフィ・・・・・・。」

あなたが犯しているんじゃない。
痺れる電流を何度も私の身体に流す彼は、必死な顔になって私を求める。
他人から見れば、求めるどころか既に得ているのに。
そう、愛し合い、身体を求め合っても、得られないのだ。
相手は他人だから。
別の身体だから。
一緒にはなれない。
・・・・・・だから求め続ける。

彼の必死な顔が、私の首に埋もれた。
荒い息を吹きかけ、キスを降らせ、そして耳元で囁いた。

「ロビン・・・・・・もう出る・・・・・・。」

彼の身体が、そして肉棒が振るえる、何度も。
射精をしたがっている。
私の中で。
私の膣で。
・・・・・・私の子宮に出して、受精させたがっている。
膣の中で出す事、彼はどう思っているんだろう?
どういう事態になるのかわかっているのだろうか?
・・・・・・もちろん、どうにかなってしまうのは私のほうだ。

「・・・・・・出したいの?」

・・・・・・わかってるの?

「ロビン・・・・・・出したい。ロビンの中に出したい・・・・・・!

・・・・・・・・・・・・本当にわかってるの?私・・・・・・。

「・・・・・・いいわ、出しなさい!」

私が許しを出すと、彼は私の腕ごと抱きしめて、首筋に顔を埋めたまま必死に自身を射精に導こうと腰を動かした。
電流が流される頻度が早くなり、再び意識が朦朧とした中、私はぼんやり自問した。

これでいいの?

染みひとつない天井と、窓から漏れる光のある光景から、私はルフィのほうへ向いた。
首筋から離れた彼は、ぼんやり見つめる私の唇を奪うと、私の目を見て言った。

「ロビン・・・・・・大好きだ。」

それは、魔法の言葉。
それは、詐欺の言葉。
その一言で・・・・・・だまされ・・・・・・そして許せてしまう。
それは・・・・・・悪魔の言葉。
最後の大きな衝撃の電撃が全身を貫くと、私の口はだらしなく開いて呼吸が整わなくなった。

「ああああああ!・・・・・・ルフィ!・・・・・・ルフィ!」

嬌声が止まらない。

「ロビン・・・・・・ロビン・・・・・・!」

お互いの名前を呼び、求め合って、絶頂を迎えた。
そして、体内に熱いものが流れ込んできた。
大量に熱い・・・・・・彼の想い。
内からこみ上げる奮えは、ルフィが抱きしめて抑えた。
その彼も、私の中に容赦なく流し込みながら、私の上に倒れ込んだ。
朦朧とする意識の中、力なく震える手で彼の身体を抱きしめた。
そして意識がなくなった。

現実に戻ったのはそんなに時間もたたない内だった。
私は情痴の性交の痕を、ベッドの乱れと、お互いの身体で見て、後悔した。
本当はこんな事するつもりはなかったのに。
ただ、謝る彼の姿にときめいてしまって・・・・・・あぁ、それだ、そのせいだ。
顔が赤く熱くなり、顔を押さえた。
シャワー浴び、身体を冷まして彼より先に服を着る。
・・・・・・彼はまだ下半身をシーツにかけ、眠っている。
シャワーを浴びても、まだ頭が冷えない。
部屋を出ると、食堂のバーに向かった。
飲み物を飲んで、頭を冷やすべきだ。
彼との現実的な問題をどうするか、現実的な思考と常識的な判断で考えるべきだ。
階段を降りた私は、食堂の入り口をハデに開けて、入り込んできた年若い海賊の集団を目にした。
客は何事かとうろたえながら、皿を持って移動し、食事を続けた。

「探せ探せーッ!あのガキ捕まえろーッ!」

そう叫ぶ親玉らしき海賊は顔や身体にアザを作っており、傍に安物のドレスを着た年若い娘を連れている。
私は隠れて一部始終を除いていた。
配下の海賊が、騒ぎで食堂に現れたマスターを捕まえ、首根っこを掴んで親玉の前に突き出した。
親玉がすごんだ。

「おい、オヤジ!ここに『麦わらのルフィ』がいるよなぁ?オイ!」

・・・・・・え?

「あああはい!ここに泊まっておりますとも、はい・・・・・・。」

マスターが親玉を満足させる答えを言うと、その手にもった火打ち(フリントロック)式銃の銃口を顎にあてがった。

「じゃあ・・・・・・部屋を案内してくれるか?それとも呼び出したほうがいいか?好きな方を選べ!・・・・・・昨日の借りを返させてもらうぜ!」

・・・・・・『昨日』の借り?

私の脳裏に、昨日の忌々しい記憶が甦った。
でも・・・・・・まさか?
そう思った時、廊下を、そして階段をドタドタ走る音が響いた。

「ロビ〜〜〜〜〜ン!」

そしてそれは、私に抱きついた。

「行くなよぉ〜〜〜〜!俺を一人にすんなぁ〜〜〜!」

セックスをする前に懇願していたルフィが、また同じように懇願していた。
でもさっきより頑なではない私は、戸惑いつつも彼の必死の懇願を受け止めようとした。
・・・・・・でも、その下半身が長いシーツを巻いただけの姿はなんとかしたほうがいいと思うわ。

「・・・・・・そうね。」

私がそういうと、彼はまた必死に涙を拭いた。

「あ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!てめぇはっ!!」

年若い海賊の親玉は突然叫んだ!

「あ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!アイツよ、アイツ!昨日の!」

甲高い声でそう叫んだのは、親玉の横にいる娘。
そういえば、さっきからどこかで見たような気がして、そしてだんだん思い出してきたのだった。
あの娘は、たしか昨日ルフィと・・・・・・!

「・・・・・・あれ?」

泣きおさまり、私から離れると、彼は例の親玉と娘に反応した。
・・・・・・と、同時に彼の腰に巻いたシーツが落ちた。
その瞬間、私以外の全員が、口から何かを吹いた。
口に何かを含んでいた物はそれを、それ以外は唾を、盛大に吹いた。
私は慌ててシーツを広い、彼の腰に巻いてやった。
恐らく彼は慌てて私を追いかけたため、服を着る手間を惜しみ、シーツだけを腰に巻いて追いかけてきたのだ。

「・・・・・・て、てめぇいつまでもフザケやがって!昨日の借りを返してやる!」

「もうやっちゃってよ!タケシ!」

凄みを必死に取り戻しながら、親玉と横の娘がルフィに凄んだ。
「うるせぇ〜なぁ〜。お前らが昨日騙したんだろ!その横の女が『イイ物くれる』つったから行ったのに、家に行ったらお前らが襲ってきたんだろ!」

「うるせぇ!んなモンに騙されるテメェがバカなんだろうが!だいたいそんな誘いにホイホイついていくか、普通!」

「うるせぇ!欲しかったんだ!」

・・・・・・どういうこと?

「ケッ!まぁいい!昨日はさんざん追いかけまわさせてくれたんだ・・・・・・。今日は大人しく俺たちにその賞金くれてさせてもらうぜ!?」

「イ゛〜〜〜!だ!ヤなこった!」

私はルフィの視線を遮った。
わけが知りたい。

「どういうことなの?」

ルフィは戸惑いながら、答えた。

「あ・・・いや・・・あの・・・。・・・・・・綺麗な物が・・・・・・欲しくて・・・・・・女物の・・・・・・。」

「女物・・・・・・?」

「あ・・・今持ってねぇんだ・・・・・・。たしかズボンに・・・・・・。」

ルフィはそう言うと、階段を駆け上がって行った。
「待ちやがれ!・・・・・・ぐぁ!?」

息巻く海賊は、私が咲かせた手で拘束した。
・・・・・・ついでにあの娘も。
ルフィはすぐに降りてきた。
履いてきたジーンズのポケットから銀色の二つの細工を取り出した。
淡いブルーの石がはめ込まれた・・・イヤリング。

「・・・・・・これ?」

「・・・・・・お前、戻ってきてくれただろ?俺たちのところにさ。・・・・・・だから、礼ってわけじゃないんだけど・・・・・・何かあげたくてさ・・・・・・ロビンに。・・・・・・んでさ、探してたらあの女が色々声掛けてきたら、色々持ってるっつってたから・・・・・・ひとつもらってきた。・・・・・・コレ。」

私の知らない、昨日の記憶。
彼の言葉は、私が今拘束している海賊と横にいる娘が補完した。

「そう・・・・・・そういう事だったの・・・・・・。」

私は彼の差し出すイヤリングを受け取りながら、彼を見た。
そして、段々自分がさっきまで思い至ってきた思考が・・・・・・恥ずかしくなった。

「お前・・・・・・もしかして・・・・・・妬いてたのか?」

「あ・・・・・・。」

彼の私の核心を突く一言で、私の顔は沸騰したみたいに熱くなった。
・・・・・・恥ずかしい。
・・・・・・なんて恥ずかしいの、私!?
勝手に勘違いして、彼を振り回して、・・・・・・押し倒して・・・・・・襲って・・・・・・あんな恥ずかしい言葉を吐いて・・・・・・よがり狂って・・・。

「ルフィ・・・・・・。」

そんな私の思いが顔に出たのか、ルフィが背伸びをして頭を撫でてくれた。

「気にすんな♪」

気にするわ・・・・・・とても。

「ごめんなさい・・・・・・。」

私が一番言いたかった言葉が言えたとき、あふれ出て止められなかった涙がこぼれた。
そして抱きしめた。
・・・・・・そして、キスをした。
「んんっ!?」

昨日から何度私は泣いたんだろう。
そして今日は何度キスを?
もう忘れてしまった。
それほど、私の心を掻き乱す一日だった。
私たちは、宿泊客、従業員、そして海賊たちの視線が注がれる中・・・・・・熱くて長いキスをした。

お互いが唇から離れると、あの情事のような甘い息が漏れた。

「び、びっくりしたぞ・・・おめぇ・・・。」

「フフ・・・・・・お詫びよ。そしてお礼・・・・・・。」

「まだ足んねぇぞ!」

「フフ・・・・・・そうね♪」

顔を赤くして、彼はまた私を求めた。
そんな彼が可愛い♪

「て、てめぇらフザけんなぁ〜〜〜!」

うるさい雑音は止める。

「・・・・・・これ以上邪魔はしないで・・・・・・。クラッチ!」

食堂に海賊とあの若い娘の悲鳴がこだました。
「んで・・・・・・また元の鞘ってこと?」

昼間の喧騒があった食堂のバーで、私は航海士さんと一緒にグラスを傾ける。
バーテンダーはコックさんが勤めている。
彼曰く、「ナミさんとロビンちゃんに色目を使うエロバーテンダーに、グラスを注がせる資格はありません」と言っていた。
そのバーテンダーは顔を絆創膏を付け顔を腫らしてウェイターをしている。
今朝はお水をくれたし、悪い人ではないのだけれど。
そして今日もまた、サニー号のクルーはここで宴会をしている。

「そういう事・・・・・・。私の早とちりね・・・・・・。」

「そんな事ないって!普通、二人で部屋に入った時点でアウトって考えるわよ!疑われるような事するアイツがアホなのよ!」

「フフ・・・・・・そうかもね。」

私がそう笑ってグラスのカクテルを飲んだ時、彼女は面白くなさそうな顔をした。

「どうしたの・・・・・・?」

「ん〜ん・・・別に・・・。よく許したなぁ〜って思って。・・・それに、本当にセックスしたかどうか、わからないでしょ?」

言われて思わず顔をしかめた。

「いやな事言うわね。・・・・・・あの海賊の女の子の様子から見ても、そんな事なかったと思うわ。」

「さぁ〜〜、どうかしら?海賊が襲い掛かってくる前だったら?」

うんざりして彼女を睨むと、彼女のいらずらしているような顔が緩んで、不承不承に申し訳ないという顔をした。

「ごめんごめん・・・・・・冗談よ・・・・・・。あれだけ騒いでたのに仲直りしてたから・・・・・・ただのイジワルよ!」

私はその答えに声を漏らさず笑った。
そして、こう呟いた。
「そうね・・・・・・。一つだけ、彼がしてないって思った理由があるわ。」

「え・・・・・・なにそれ?聞いていい?」

グラスを置いて、私は航海士さんの耳元に口を寄せ、コックさんに聞こえないように答えた。

「・・・・・・・・・・・・精液の量よ。」

耳元から離れて再びグラスを取った。

「ろ、ロビン〜・・・・・・。」

「フフ・・・・・・。」

私の答えに顔を真っ赤にして抗議する航海士さんに、私はグラスを傾けながら笑った。

「顔がイチゴ色・・・・・・。そんなナミさんも素敵だーっ♪」

彼女から視線を外して、私はルフィを探した。
骨付き肉をかぶりながら、長鼻の作ったでたらめな歌に声援を送っている。
・・・・・・と、横から見知らぬ女がルフィに話しかけてきた。
・・・・・・彼に密着して。

「ねぇ〜、あなたって『麦わらのルフィ』でしょ!?3億ベリーの!」

「おう!俺がルフィだ!」

「素敵♪ねぇ、一緒に飲みに行かない?ここから抜け出して・・・・・・二人だけで・・・♪」

「・・・あー、わりぃんだけどさ。俺その・・・好きな女いるし・・・。」

「いいじゃん!私だって結構いいわよ?行こうよぉ〜♪」

「いやぁ〜そのぉ〜・・・・・・。」

もう見ていられない。
自分でも自覚できないぐらい早く、その女の隣に移動していた。

「!?だ、誰!?」

「お、ロビン!」

ルフィの声を無視して、私はこのやけに露出度の高い服を着た女を一瞥した。
そして微笑んだ。
・・・・・・底冷えするような笑みで。

「こんばんわ。3億の海賊の『いい人』になりたいの?」

「へ!?あ・・・いや・・・その・・・。」

「だったら、まずはそれに相応しくないといけないわ・・・・・・。」

彼女の後ろをゆっくりまわり、肩から背中、腰を煽るように撫でた。

「好みの身体・・・・・・好みのテクニック・・・・・・そして。」

最後はたっぷりと間をとり、彼女の耳元で囁いた。

「・・・・・・殺しのね。」

離してあげたら、彼女は奮え涙ぐんでいた。

「・・・・・・わ、私・・・・・・たぶん無理そうです・・・・・・特に最後・・・・・・。ご、ごめんなさぁ〜〜い!」

彼女は泣きながら食堂のドアを開け、出て行った。
・・・・・・スッキリした。

「おまえ〜・・・・・・イジワルだなぁ〜。あそこまで言わなくてもいいじゃんか!」

誰のせいだと思ってるの、この子は・・・・・・。
私が呆れた顔をすると、ルフィはまた言った。

「・・・・・・お前、また妬いてたのか?」

・・・・・・また言われた。
そしてまた顔が赤くなって、自覚した。
私ははにかんだ顔で、彼の額を指で突いた。

「・・・・・・バカ。」


――Fin――