オリロンパwiki - マギカロンパ 8・9日目
275 : 1 ◆t1HVecfVyk [saga]  2013/11/24(日) 21:06:49.73 ID:0cwlDoyZ0
八日目が始まりました。

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この軟禁生活も、開始されてから既に八日目。

六日目の殺人事件、そして学級裁判。

二人の仲間が死んだことで、私達をつないでいた細い糸は途切れてしまった。

宜保さんが決めたルールも、既に何の意味もないものになってしまっていた。

そんな中でも、皆が律儀に守っていることがあった。

超高校級のカウンセラー、三菱さんのカウンセリングの時間割である。

宜保さん、円天寺さん、涌井さん、矢倉さんの四人を除いた面々は、事細かに決められた時間割に従って三菱さんのカウンセリングを受けている。

三菱さんだって辛いはずなのに……そんな表情の一つも見せずに、皆の不安を取り除こうと必死になっているのだ。

ただ、状況が状況だ。流石に、カウンセリングを患者と三菱さんの二人だけで行わせる訳にはいかない。

そんな密室で殺人事件が怒らないとも言えないからだ。

カウンセリングの会場となっているのは広いラウンジだ。

そのラウンジで、広間を挟んだところから三菱さんを見守っていたのが、矢倉君だった。

超高校級のSPとしての素質をかわれ、この現状で最も失いたくないと考えられている三菱さんの護衛を務めている……らしい。

そんな彼は、今なお、眠そうにあくびを一つしながらも三菱さんを視界の中に収めている。

マギカ「……矢倉さん、眠そうだけど」

矢倉「……三菱も、同様だ。お互いに休憩は昼の一時間と夜に三時間のみ」

矢倉「俺は見ているだけだが……あいつは四六時中相談を受け続けている」

矢倉「あいつが無理している中で……俺だけが休むことは出来ん……」

マギカ「でも、こんなに無理していたって……」

矢倉「三菱は……悔しいそうだ」

マギカ「……悔しい? なんで、三菱さんが?」

矢倉「リアナ、愛鬼、茅ヶ崎……カウンセラーであるあいつが、救えなかった三人だ」

矢倉「その手柄は……お前の元に行ったからな」

矢倉「いや、お前を責めているわけではない……」

矢倉「……もし、お前が三人を救えていなかったら、あいつにも手を差し伸べることが出来なかっただろうと言っていた」

マギカ「……そんなこと」

矢倉「……この傷が、見えるか?」

三菱さんに救えないことなんて無い、と言おうとした時だった。

矢倉さんが服をあげると、そこに深い切り傷が見えた。

矢倉「……あいつが、殺しに臨もうとした刻印、だ」

私は、声の一つも上げることが出来なかった。

矢倉「だからこそ、お前の勇気に心づけられたと、そう言っていたぞ」

矢倉「本職である自分が頑張らないといけない、と決意を新たにしたらしい」

矢倉「そんなあいつを支えたい……ただ、それだけが俺がここにいる理由だ」

矢倉「無理など、していない……」


【Info】

矢倉風善との交友度が上昇しました。


276 : 1 ◆t1HVecfVyk [saga]  2013/11/24(日) 21:10:49.86 ID:0cwlDoyZ0
昼食のためにカウンセリングを一時中断し、その後仮眠をとりに行くと言っていた矢倉さんと三菱さんの二人と別れ、私はプールへと向かっていた。

プールには、きっとナミちゃんがいると思っていたからだ。

最初の事件の後、部屋から出てきてはプールと食堂にしか行かない生活を送っているみたいだけど……。

昨日は、結局私の元にも姿を見せてくれなかったから少し心配になっていたところだ。

茅ヶ崎「あ……マギカ……」

マギカ「ナミちゃん……気分転換、してるところだった?」

茅ヶ崎「ううん、大丈夫……私はもともと、人を信頼する性格じゃなかったから……」

茅ヶ崎「こういう場面には慣れているところなの……」

茅ヶ崎「クソビッチなゲロブタにカウンセリングなんか受けなくたって……」

茅ヶ崎「大丈夫、なんだから……」

マギカ「もしかして、ナミちゃん……私まで、怖かったりする?」

茅ヶ崎「怖い……? 怖くなんか、ない……」

茅ヶ崎「私は怖がってなんかいない……」

茅ヶ崎「ただ、ただ……人を信用しないだけで!」

茅ヶ崎「信用出来ないんじゃないの! 信用しないだけ……」

茅ヶ崎「アンタみたいなお人好しなおバカさんは大丈夫だけど……」

茅ヶ崎「人間なんて、何を考えているかわからないのよ!」

マギカ「でも、ナミちゃん……!」

茅ヶ崎「何度も殺されかけたアンタなら……わかってるんでしょ?」

茅ヶ崎「……人間の悪意、って奴を……ね」

茅ヶ崎「アンタには死んでほしくないから……だから!」

茅ヶ崎「私を含めて……誰も信用しないで欲しいの」

マギカ「……ナミ、ちゃん」

マギカ「それでも私は……皆を助けたくて……」

茅ヶ崎「……私だって、マギカの気持ちは分かるけど……」

茅ヶ崎「私も……いつ、マギカを殺そうとしちゃうか……分からないから」

マギカ「ナミ、ちゃん……?」

マギカ「ど、どうしたの……そんなに震えて……」

茅ヶ崎「……お願い、マギカ」

茅ヶ崎「私のことも……信じないで……」

フラフラとした足取りで、ナミちゃんはプールを後にしてしまった。

私の言葉も届かないままに……。


【Info】

茅ヶ崎ナミの通信簿項目が更新されました。

『茅ヶ崎ナミは、自分のことも信用しないで欲しい、と言っていた』

277 : 1 ◆t1HVecfVyk [saga]  2013/11/24(日) 21:20:54.22 ID:0cwlDoyZ0
もうそろそろ夜時間になるところで、宿泊棟のエレベーターホールで座り込んでいた涌井さんを見つけた。

涌井さんはいつも円天寺さんと一緒にいるから、今日も一緒にいるのかと思ったけど……。

どうやら、円扇さんが起こしてしまった事件の波紋は、幼馴染である二人の間にも溝を生んでいたらしい。

涌井「……マギカ様、でしたか」

涌井「私に何か御用でしょうか?」

涌井さんの反応は、普段よりも少しだけ遅い。

彼女も、きっと……円天寺さんや他のみんなと一緒……。

恐らく、他の皆に対して警戒心を抱いているのであろう。

……だからこそ、他の皆に対して気配りを怠らなかった彼女でさえ、他の皆に対する疑念が消せていない。

私に対しても、警戒心を抱いている、ということで間違いないのだろう。

マギカ「円天寺さん……とは、一緒じゃないの?」

涌井「えっと……ですね……」

涌井「申し訳ありません……実は少々ございまして……」

涌井「プライバシーの関係上、お話はできませんが……」

涌井「私は……コロシアイに参加しようとしてしまったのです……」

マギカ「涌井さんも、なんだ……」

涌井「……“も”とは?」

マギカ「……涌井さんだけじゃないよ。皆、それぞれ行動を起こしてしまっていた……」

マギカ「だからこそ、皆、円扇さんの処刑を自分に置き換えちゃってるのかもしれない……」

マギカ「三菱さんは罪の意識をバネにしてカウンセリングに……」

マギカ「ナミちゃんは、自分のことも信用しないで欲しいって言っていた……」

マギカ「リアナちゃんだって、部屋にこもりきっているし……」

マギカ「きっと、辛いのは涌井さんだけじゃ……」

涌井「ですが、私が殺そうとしたのは……!」

涌井「……美菜輝様、なのですよ!」

涌井「私には、もう……美菜輝様に顔向けすることが……」

マギカ「そんなことないよ!」

マギカ「円天寺さんは、きっとそんなことじゃ……」

マギカ「涌井さんのことを……嫌いになんかならないはずだよ!」

涌井「そういう……ものなのでしょうか?」

マギカ「私は、リアナちゃんやナミちゃん、愛鬼ちゃんに殺されかけたって……」

マギカ「三人のことを嫌いになってなんていないもん!」

マギカ「だから、涌井さんも円天寺さんと話し合ってみてよ……」

涌井「……そう、ですね」

涌井「……私も、もう一度美菜輝様と向き合ってみます……」

涌井「ありがとうございました……マギカ様」

はにかんだように照れながら、涌井さんは自室へと戻っていった。


【Info】

涌井留峰との交友度が上昇しました。

279 : 1 ◆t1HVecfVyk [saga]  2013/11/24(日) 21:25:57.13 ID:0cwlDoyZ0
九日目が開始しました。

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まだ朝ごはんを食べる時間になる前に、私は朝の気分を入れ替えるためにテーマパークの入口を歩きまわることにした。

朝ごはんを食べる気分にならないわけではないけど……でも、私だって陰惨な気持ちになっているのは否定できなかった。

そこに、ストン、ストン……と何かが壁に打ち付けられる音が鳴り響く。

どうやら、蜜岡さんが弓道を行っているところみたいだった。

蜜岡「……マギカちゃん、よねぇ?」

蜜岡「……私は気配で誰がいるのか分かっちゃうのよねぇ……」

マギカ「……蜜岡、さん」

マギカ「……どうして、一昨日の裁判ではあんなことを……?」

蜜岡「私が心中をしようとしたことかしらぁ?」

蜜岡「……そうね、マギカちゃんは優しい人だから……」

蜜岡「一緒に死にたい、そう思うのはおかしいことじゃないと思うんだけどぉ……」

いやいや、十分おかしいと思うんだけど。

蜜岡「それにねぇ……私、いじめられっ子だったのよ……」

蜜岡「そんな私を気に配ってくれた人って、大事にしたくなるでしょぉ?」

蜜岡「だから、死んでも一緒にいたいって、思っただけなんだけどなぁ……」

マギカ「……そう言ってくれるのは嬉しいけど……」

マギカ「どうせだったら、一緒に生き残ろうよ!」

マギカ「一緒に外にでて、カラオケ行って、ボウリング行って……!」

蜜岡「もちろん、ふたりきりで……よねぇ?」

マギカ「ちょっとこわいけど……二人きりでも、いいよ」

マギカ「だから、一緒に外に出ようよ!」

蜜岡「そう……ね。もう、心中しようなんて言わないわぁ……」

蜜岡「心中をしようとは、ねぇ……」

蜜岡「これからは……一緒に生き残る手段を考えるわぁ……」

蜜岡「マギカちゃんと、ねぇ?」

どことなく怖い発言に聞こえる錯覚を受けながらも、蜜岡さんはそう言ってくれた。

これからは、心中をしようとはしない、と。

そう約束してくれたんだ。


【Info】

蜜岡美緒との交友度が上昇しました。

スキル『援護射撃』を獲得しました。
『援護射撃』:裁判中のノンストップ議論で誤った解答をした際、一度だけ仲間の誰かがフォローをしてくれる。

282 : 1 ◆t1HVecfVyk [saga]  2013/11/24(日) 21:41:42.30 ID:0cwlDoyZ0
お昼休みの直前、三菱さんの様子が気になった私は、カウンセリングルームに向かった。

この時間は、カウンセリングルームとなっているラウンジには破魔耶君がいるはずだ。

この時間の担当は、破魔耶君のはずだからだ。

……破魔耶君とふたりきり……ではないものの、心配になるのは仕方がない、と思う。

三菱「……破魔耶君は、大丈夫みたい……ね」

破魔耶「……三菱さんのが凄いよ」

破魔耶「やっぱり……! ボクが間違っていたんだね……」

破魔耶「三菱さんが外に出るのも……きっと世界にとってはいいことなんだよね!」

破魔耶「三菱さんが外に出たくなったらボクに言ってね?」

破魔耶「喜んでボクが犠牲になるから!」

三菱「嘘を言っちゃいけないわ……」

三菱「それならどうしてあなたは、そんなに震えているのかしら?」

破魔耶「……え?」

三菱「人間誰しも、死にたくないもの……」

三菱「無理してまでそのキャラを貫くてもいいのよ?」

破魔耶「……それでも、ボクは希望のためなら、なんでもするよ」

破魔耶「ボクにとっての希望に、三菱さんやマギカさんが加わっただけでね……」

マギカ「え、私も、なの?」

三菱「マギカさん! あなたは、大丈夫そうね……」

破魔耶「こんなボクに優しくしてくれる二人には……うん、死んでほしくないかな」

破魔耶「だから、出たくなったらボクに一言告げてよね!」

破魔耶「……って、三菱、さん?」

マギカ「ちょ、ちょっと! だ、大丈夫……じゃ、ないよね!」

マギカ「は、破魔耶君! 愛鬼ちゃん呼んできてっ!」

破魔耶「う、うん!」

【Info】

破魔耶麗司との交友度が上昇しました。

スキル:『ラッキー・ハプニング』を獲得しました。
『ラッキー・ハプニング』:動機発表後の自由行動回数が特定回数増加する。

カウンセリングによって、破魔耶麗司のクロ判定値が下がりました。


三菱乍が過労によって倒れました。


287 : 1 ◆t1HVecfVyk [saga]  2013/11/24(日) 22:01:00.72 ID:0cwlDoyZ0

三菱さんが倒れてしまったことを円天寺さんに伝えたところ、彼女は表情を青ざめさせてラウンジへと走りだした。

三菱さんの元には矢倉君と、愛鬼ちゃんがいる。

破魔耶君は愛鬼ちゃんの言われるがまま、ドラッグストアとラウンジの間を何往復もしている。

どうやら、あんな破魔耶君であっても、三菱さんを助けようとする思いは持っているようだった。

愛鬼「……もう、大丈夫よ」

愛鬼「私を気にかけてくれたこいつを……ここで死なせるわけには行かないから……」

破魔耶「そう……だね! ボクを気にかけてくれている彼女を……」

破魔耶「死なせる訳にはいかない、ものね」

円天寺「……どうして、皆さん、手を取り合えるのですか……?」

円天寺「……こんな状態になってまで、どうして……」

愛鬼ちゃんと破魔耶君の連携プレーを見ながら、円天寺さんは立ち尽くしていた。

被害者意識を強く持って、上手くコミュニケーションを取ることが出来ない愛鬼ちゃん。

希望のためならなんでもすると言ってのけ、学級裁判を乱しまくった破魔耶君。

その二人が、手を取り合って三菱さんの看病をしている。

そんな状態に、衝撃を覚えているようだった。

円天寺「どうして、皆さん……」

マギカ「……円天寺さん、あなたがちゃんとしてなくってどうするのさ!」

円天寺「……私は、私は皆さんを……」

……皮膚と皮膚がぶつかり合う、かすれて乾いた音が部屋に鳴り響く。

愛鬼「ま、マギカっ!?」

破魔耶「どうしたの、いきなり……ほら、深呼吸深呼吸!」

円天寺「な、なんですか……?」

マギカ「いつまでそんなこと言ってんのさ!」

マギカ「円天寺さんが皆を信用しないでどうするの?」

マギカ「……皆を疑っている人に、人がついてくるわけないじゃん!」

私の心からの思いだった。

宜保さんは皆を一応は信用しているみたいだったけど……涌井さんと円天寺さんはお互いのことすらも疑い合っていた。

そんな彼女の話に……誰がついてくるというのか……。

だから、私は彼女に目を覚ましてもらいたかった。

円天寺「……少し、考えさせて下さい」

頬を抑えながら退室する円天寺さんに……一抹の不安を覚えながらも。

きっと彼女は立ち直ってくれる、私はそう信じることにした。

この後、バタバタしながらも九日目は瞬く間に過ぎていった。

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九日目が終了しました。



10日目


【元スレ】
【安価】安価ンロンパ:安価で行うオリジナルダンガンロンパ【ダンガンロンパ】2