七夕には過ぎた願い

　七月七日、七夕の朝七時。妹・椛の部屋にいた稚奈は、こんもりと膨らんだ布団の山と格闘していた。
　中に篭もったままの椛が、布団に潜り込んだまま動こうともしないせいだ。
「どうせもうしちゃってんでしょ？　そんなに暴れたら、また布団に漏らしちゃいまちゅよぉ」
「ばかっ、稚奈ねえのばかっ！　赤ちゃんみたいにいうなよっ！」
　妹の椛はもう○０歳だというのに、逆らう台詞さえまだあどけない。弱々しい抵抗も、そもそも５歳上の姉には敵うはずもないのだ。
　稚奈は力尽くで布団を引き剥がすと、身体を丸めて抵抗した椛のパジャマズボンに手をかけた。
「や、やめてよっ！　ばかっ、なにするんだよっ！」
　力尽くに蹂躙された椛は、きっと瞳を尖らせ、敵意を込めて稚奈を睨み付けていく。だが、幼い妹が露わにした感情的な姿は、稚奈の嗜虐心をそそる格好のエサでしかなかった。
　怒る椛に、稚奈は笑った。長い髪をポニーテールに結ぶ清楚なセーラー服の少女には酷く不釣り合いな、満面の、と呼ぶには余りにも歪んだ、毒々しい花にも似た狂喜の笑みを晒していく。
「その格好で言っても説得力無いんじゃないかなぁ？　だって、こんな下着、穿くのは赤ちゃんだけでしょう？　○０歳の椛ちゃんが穿くなんて、絶対おかしいよねぇ」
「だ、だって……だってこれは、病気だから……」
　椛のパジャマズボンは、手足も細い小柄な体型に似合わず、腰回りだけが異様な膨らみを見せていた。
　稚奈がそっと触れた途端、強気だった椛も、今にも震えて泣きだしそうな小さな女の子に戻っている。
「一人前なのはお漏らしの量だけだもんねぇ、椛ちゃんは」
　躊躇う間も与えず、稚奈は一気に椛のパジャマを脱がしていく。
　細くて白い人形のような両脚をＯ字に広げ、怯えた椛が穿いていた下着は、ピンク色のハート柄が踊る、テープ留めの紙オムツだった。

　学校では勉強もスポーツも出来て、男の子にも一歩も引かずに主張する。強気の性格が、生まれつきの小柄な身体に負けることを許さなかった。
　着る服だって自分で選ぶ。お小遣いで買ったティーンズ向けのファッション雑誌を参考に、ラメ入りロゴのTシャツとフリル付きのスカートを着こなして、可愛い女の子になる努力も忘れない。
　○０歳にして、椛はそんな少女だった。大人から褒められ、同級生からは頼られる中で自然と身についた自信が、高みを目指すプライドを後押ししていた。
　だからこそ、『言うことを聞かなかったら、みんなに教えようかなあ』と脅した姉の言葉に、従ってしまったのかも知れない。
　全てが壊れる位ならと破滅を避けるために椛が選んだ道は、終わらない恥辱に弄ばれる日々だった。

　一人で処理してきたおねしょがバレた日、椛は小柄だから似合うと、稚奈は幼児用のオムツを買ってきて、椛に穿かせた。
　促されるままに鏡の前に立たされ、買ったばかりのおしゃれなスカートを、わざわざ見せ付けるようにめくり挙げられてしまった。
「椛って、ほんとオシャレだよね。ちっちゃな子が穿くようなオムツも、可愛く着こなせるなんてさ」
　そう言って褒めた稚奈の言葉が忘れられなくて、椛は二度とそのスカートを穿くことはなかった。
　キレイなスカートから見えるオムツのせいで、お漏らしの治らない幼稚な子が背伸びをしているようにしか見えないのだ。
　どんなに努力しても打ち消せない幼さがあることに、椛は絶望させられた。
「こ……こんなの、はずかしいよっ！　お、オムツなんて……赤ちゃんの穿くものなのに！」
「赤ちゃんなんだよ、椛は。おねしょの治らない、おっきな赤ちゃんだよ」
　何度も『赤ちゃん』扱いするものだから、最後は椛も泣いてしまった。
　その日からずっと、椛は稚奈の手でおむつを当てられ、辱められ続けている。

　両端で押さえていた羽根留めを外すと、紙オムツは大量に吸ったオネショの重みで布団の上にぼとりと落ちていく。
　それを見た椛が耳まで真っ赤に染めて恥じらうのを、稚奈は見逃さなかった。
「こんなにいっぱい紙オムツ使うなんて、ほんとは椛ちゃん、紙オムツ穿くのがスキになっちゃった？」
「ばっ、ばっかじゃないの！　そんなの、へんたっ……んんっ！」
　くすくすと笑う稚奈に生来の強気で逆らうも、オネショに濡れた下半身をウェットティッシュで丁寧に拭いて貰う度に、まだぴったりと閉じた秘裂を刺激され、椛は声にならない嬌声をあげた。
　心は折れまいと懸命に耐え続けていても、おむつ替えの度に稚奈が行なってきた執拗な責めは、○０歳の幼い下肢を、未知の快楽に震わせていく。
　思いもよらぬ快感に震えてしまった自分に気付き、困惑の中で必死に否定しようと目が泳ぐ椛を、稚奈は容赦しなかった。
「あーぁ、お友だちが知ったらショックだろうなぁ。クラス一可愛くて、みんなに頼られる格好いい椛が……。紙オムツ好きの変態さんだったなんてね」
「そ、それは……稚奈ねぇが、変な触り方するか……ぁんっ！　あうぅ、うああああんっ！」
　椛が投げた言葉一つ一つに羞恥で顔を赤らめて、いやいやとまるで本当の幼児のように首を振る稚奈は、母性や保護欲さえも誘う魅力があった。
　口ではいやだといいながらも、椛の腰はだんだん宙へと浮いていく。自分から快楽に触れることを求める振る舞いに、稚奈は嘲笑を繰り返しながら応えてやる。
「ごしごしされるのきもちいいでちゅかぁ？　椛が紙オムツが取れないのも、おねえちゃんになでなでされて、はぁはぁしたくてお漏らしちてるだけでちゅもんねぇー」
「あ、ああっ、ちがう、ちがううぅ……やあ、あああんっ！　そこ、やだっ、しみるっ、ぐじゅぐちゅしみちゃううっ！」
　椛の顔を歪めていた、怒りや嘆きはとうに失せていた。頬を赤らめ、目を細め、時折大きく見開いた瞳は、幼い身体に刻まれていく女性としての歓びを、心から喜ぶように涙ぐんでいる。
　幼い秘裂も既に、紙オムツかぶれとは異なる、熱を帯びた赤色を浮かべていた。お漏らしとは違う濡れ方は、僅かに粘るも、糸を引くにはまだ足りないささやかな雫のせいだった。

　○稚園児には幼いながらも意味も知らないうちに行為だけを先に覚えてしまい、一度知った快感に恋い焦がれるようにオナニー癖をつける子もいるらしいが、椛の態度もそれに近いものがあった。
　お股は触ってはいけませんときつく叱られているし、オネショで濡れたそこを自ら触るのも避けているクセに、稚奈が紙オムツ替えをしてやる度に、椛はぴったりと閉じた赤ん坊のままの秘裂を差し出すように腰を浮かせてくる。
　椛にとってはオナニーは自分でするものではなく、お漏らしした紙オムツを替えてもらうようなものなのだ。彼女が思春期に差し掛かり、オナニーの存在を知った時、慰めることさえも人の手を借りていた自分の幼稚さを思い知るのだろう。
　思い描く未来予想すら、稚奈の心を喜びで満たしていく。大人びた嬌声をあげて悦びを知る第二次性徴を、成熟とは真逆の位相にある紙オムツ替えの中で迎える椛の倒錯は、二度と後には戻れない、変態性癖者としての堕落への一歩だった。

　椛は幼稚性に停滞し甘えるように耽溺し、永遠の赤ちゃんへと堕ちていく、その歪んだ美しさが、稚奈の責めを加速させた。
　堅い戒めで閉ざされた扉も、雫と熱でふやけている。控えめに顔を出した淫核さえ、桃色の新芽と言った趣で、淫靡さよりも愛らしいばかりの幼さを露わにしていた。
「ここがいいんだぁ……。あはははは！　本物の赤ちゃんみたいに、両手握ったまま悶えたって、説得力ないよっ！」
「そ、そんなことっ……」
　稚奈がウェットティッシュの上から人差し指と中指二本並べて細やかな振動を送ると、椛の言葉は途端に快楽を鳴く高い音色に様変わりした。
　人力の振動をおとなの玩具のように、快感神経の密集地点を探っては優しく優しく、慰めてやる。その度に椛の敏感な秘裂はひくひくと蠢き、だらだらとだらしなく零した透明な雫はベタベタと恥丘を汚した。
　○学○年生、○０児の椛の身体の中で最も大人びていた箇所は、オネショの度に紙オムツを濡らす、最も幼稚な性器だ。救い難いほどに狂ったアンバランスさが、稚奈を、そして椛自身を狂わせている。
　事実、大人びた快楽に溺れていながら、椛は紙オムツ替えをされる赤ん坊のとるポーズを崩そうとはしていなかった。
　握った両手を胸の前に置き、両脚も大きく開かれ、お尻をあげた紙オムツ替えスタイルは、お尻の穴から前に至るまでまる見えになっている。
　紙オムツ替えの度にオナニーを繰り返したからだろうか、ほんの少し、産毛とは違う微かな自己主張を見せる若い茂みが１本、幼い恥丘に生まれていた。
　その内、生えそろえてしまえば。紙オムツ替えのたびに黄色く染まった紙オムツの上に転がる陰毛を見せて、辱めるなんてことも出来るかも知れない。
　ふくらみかけた胸も、生えかけの茂みも、大人と子どもの境目に立っている椛を象徴していた。これから大人になれるという希望も、紙オムツお漏らしを繰り返す椛にとっては、『からだばかりが大人』だと言う、幼さの反証にしかならない。
　それもまた、稚奈に新たな楽しみを抱かせる。と同時に、今しかないものを、猛烈に記録しておきたいという欲求が、稚奈の心を突き動かした。
　胸ポケットから、親に買って貰ったばかりのスマートフォンを取り出す。快楽に震えて目を閉ざしていた椛が、急に責めを留められて、おそるおそる瞳を開いた。
　誘うような、乞うような。幼い子が親に甘えるような椛の照れた視線と、目の当たりにした倒錯の熱に当てられて暴走寸前の稚奈の視線とぶつかる。
　シャッター音が、二人の表情を大きく変えた。目の前に差し出された携帯に写る絵を、稚奈は歓喜の表情で見つめる。カメラの小さなレンズを見つめる稚奈の顔は、怒りと屈辱に歪んでいった。
「やだっ、写メとるのやだっ！　けせっ、消せよおっ！」
「ほら、お姉ちゃんの言ったとおり。そんなに赤ちゃんになりたいなら、ほら、指でもしゃぶってればいいんだよ」
　椛が振りあげようとした拳は、稚奈は容易く捕まえた。椛の握り拳の親指だけを開いてやると、怒りに歯を向く口へと突っ込んでやる。
「んぐっ！　んううっ!?」
　小さく薄い唇が、突然の侵入物をズブズブとのみこんでいく。まるで男性のペニスををのみこむ女性の性器のようだが、紙オムツを濡らす椛の性器では、一生見られないだろう光景だった。
　すぼめられた唇が反射的に吸い付いていく。椛も口で息が出来ず、鼻が粗く鳴り始める。その上、稚奈が見せ付けた携帯の写真が、更に椛の心に追い打ちをかけた。

　お漏らしで濡れた紙オムツに股を載せながら、情欲に溺れる自分の姿が映っている。○学生のアイデンティティさえ凌辱するような屈辱的な絵を見せ付けられながら、戻ってきた稚奈の責めが、椛を一層強い快感へと堕とした。
「ほら、もう時間無いからさっさとイカせてあげる。いつもみたいに、お漏らししながら、赤ちゃんみたいに泣けばいいよ！」
　ぐじゅ、ぐじゅうっ、と。水音はもはやささやかなものではなく、まざまざと椛に聞こえるほどに主張した。下腹の奥から尿道まで込み上げてくる放出感が、コントロールなど出来るはずもない、最高の絶頂を宣告する。
　それでも、椛には矜持があった。起きている時でさえ、紙オムツを汚してなるものかと、最後の最後で、抗おうと立ち向かった。
　布団に手を起き、身体をゆっくりと起こしていく。部屋を出ればすぐトイレがあるのだ。無理矢理押さえても、３秒あれば間に合うはずだ。
　――いやらしく笑う姉の思惑も、これで潰してやれる。

「う、ううううっ……お、お漏らしなんか……してやるもん、かぁ……！　あ、あう――ううううっ!?」
　そう踏んだのが、椛の幼さの限界だった。動き始めた身体は、稚奈の手で簡単に突き飛ばされていく。
　バランスを崩し、尻餅をついたときの衝撃が、急場凌ぎの封印を破っていく。椛の中で渦巻いていた欲求が、凄まじい勢いで決壊していった。
「我慢しなくていいんだよ。椛ちゃんは、オムツっ子なんだから」
　全てを見透かしたような、穏やかな大人びた姉の笑顔は、自分の運命、未来さえ全て支配されているのだという事実を、幼い椛に刻み込んだ。
　秘裂より、わき出すようにお漏らしは始まった。まるで噴水のように流れた暖かさが、ばしゃばしゃと布団を叩き、足も腰も、無様に汚し続けていく。
「んぅっ、うううっ！　ああ、ああああああっ！　やらっ、やあああああああん！」
　放尿の快楽を覚え込まされた身体が、腰をわななかせながら歓びを受容していく。意志や矜持が自分の身体に裏切られていく屈辱と、そんな思考さえ飲み込むような快楽の波が、椛の中で織り重なる。
　成熟と退行、屈辱と快楽、理性と欲求、全てがアンバランスに幼い少女の自己を引き裂きながらも、今この瞬間に叫ぶように響いた椛の声は、悦びに打ち震えていた。

「あ、ああっ……はう……あううぅっ……」
「あ……もう、あと５分しかないの!?　ヤバい、急がなきゃ！」
　早朝から、全身を弛緩させるほどの強烈な性感を体感したのだ。肩で息をする椛は、微塵も身動き出来ずにいる。
　もう一度濡れた股間をてきぱきと拭き、濡れた布団も洗濯機に放り込むと、稚奈は椛を抱えて食卓へと向かった。
　両手を持ち上げるのも疲れ果てた椛に、稚奈は代わりに箸を持ち食べさせていく。本当に赤ん坊のようだとからかう姉に、椛は弱々しくも反発した。
「お友だちが見たら、なんて言うだろうねぇ。椛ちゃんが赤ちゃんだって知って貰ったら、みんなに甘えられるよ？　教室で紙オムツ、替えてもらったりね」
「そ……そんなわけ、ないだろっ……」
「またまたぁ、ほんとは期待してるクセにさ。ほら、代わりに送信してあげたよ？」
　稚奈が見せた携帯の画面は、写真を添付されたメールを表示している。画面を滑らせた稚奈の指は、『送信』ボタンを押していた。
「うそ……うそ、だよね、お姉ちゃん……」
　数秒の内に、稚奈の携帯がブルブルと震える。反応が来たのだと、怯えが椛の心を飲み込んでいく。
「……あははは、真に受けすぎ。私が私に送っただけなのに。ほんと、あたまの中まで赤ちゃんなんだから、椛ちゃんは！」
　いちいち反応してみせる妹に、稚奈はからからと笑い出す。
　そんな姉の姿を見て、椛の目には大粒の涙が溜まっていた。
「お、おねえの……ばかっ、ばかばかばかああっ！　うああああん……！　あああああああああん!!」
　散々泣いて泣き疲れている筈なのに、椛はまた、大声で泣きだした。
　耐えがたい理不尽から身を守る為に。大人びた演技も忘れ、幼子のままに、感情を晒してしまった。

　　＊＊＊

　七月七日、七夕の夜七時。
　暮れていく夕日の差す子ども部屋で、ランドセルを背にしたツインテールの少女が、机の上に乗せた短冊に、望みを託した。
「一度……同じ目にあっちゃえばいいんだ。それなら……おねえちゃんだって、わかるよね。……ううん、分からせなくちゃ、ダメなんだ。絶対……許せない」
　誕生日に買って貰った赤い鉛筆で、椛は呪いにも似た願いの言葉を書き留めていく。
『私がお姉ちゃんに、稚奈が妹になりますように』
　○学生の女子同士で流行る、オカルト混じりの占いやジンクス。人を『呪う』七夕など、姉に見つかれば笑われるのは目に見えていたから、秘儀は人目を避けて密やかに行なわれた。
「……どうせ、誰にも言えないんだし。あはは……。こんなバカなこと……叶うわけ、ないよね」
　もっと堅実な願いもあったが、「オネショが治りますように」なんて、どうせ書くだけ笑いの種にされるだけだ。
　力や能力では叶わない現実を、せめて空想で発散させるだけの一人遊び。一人笑ったあとで、そっと机の奥へとしまった。

　思わぬ形で、願いが叶うとも、思わずに。

　　＊＊＊

「おかあさん、みて！　ちな、もうひとりでできるんだよ！」
「そう、じゃあ最後のテストね。おまるにちゃんと出来たら、パンツにしようか」
「うんっ！」
　ああ、これは夢だ――。そう、自覚することは出来ても、稚奈にはどうすることもできなかった。

　夢の中の自分の気持ちが、痛いほど伝わってくる。自分だけお漏らししてしまうことが恥ずかしくてずっと泣いてきた日が、ようやく終わることが嬉しくてたまらないのだ。
　母親に昔聞いた話では、稚奈は４歳の半ばまで昼のお漏らしが治らなかったため、他の子どもに隠れて紙オムツをつけて○稚園に通っていたらしい。
　その頃の自分なのだと、覚えてもいない記憶と語られた事実を照合させる。
（覚えてもいない？　じゃあ、なんで今、こうして夢に見てるんだろ……）
　疑問を巡らせてる内に、夢の中の稚奈はスカートを脱ぎ、まだ若い母親の前で穿いていた下着を露わにした。
　目にしたのはピンク色の生地に、ハートが踊るファンシーな紙オムツ。がさがさと肌に触れる、不織布の無機質な触感がぴったりと肌に密着し、自分が紙オムツを穿いていることを強烈に意識させた。
　○稚園児よりも更に幼稚な下着を穿いている恥ずかしさは、４歳児が感じる比ではない。目眩を覚えそうなほどの異様な体験だった。
（うそ……、ほんとに私、オムツ穿いてたんだ……）
「ほんとだ、まだおしっこ我慢できたんだ。えらいえらい」
「ちな、おねえちゃんになるんだもん。がまんだってできるもんっ」
（よっ……４歳の頃の記憶だから！　仕方ないの……夢、これは夢だからっ！）
　頬を膨らませて怒るなんて、○１年も経った今の精神でやるにはあまりにも幼すぎて、顔から火が出そうになる。
　４歳児の自分の挙動をまるで今の自分がやってしまっているような錯覚に、それだけでも堪えきれない恥ずかしさだった。
「じゃあ、じぶんでちーしてみようか」
「うんっ！」
　紙オムツ姿でお尻を揺らしながら、元気よく頷く稚奈が、母親に手を引かれて別の部屋に行く。手を握られる安心感も、目にするものがどれも高くなっている風景も、幼い日に覚えた優しい気持ちを思い起こさせるものだった。
（うん……こういう感じ、だったんだ。覚えてなかったのは、勿体なかったかも）
　郷愁に浸るのはその一瞬だけ。母連れられて来た居間に用意されていたものは、稚奈の思いを180℃曲げるには充分すぎる代物だった。
　紙オムツを脱ぎ捨た稚奈は嬉しそうにソレに駆け寄っていく。
「じゃあ、ちなちゃん、ちーしてみようか」
「うんっ！」
（やだやだやだっ！　無理無理、無理だって！　こ、こんな場所で！　お母さん見てるんだよ！　ま、窓だって開いてるし……。ああっ、やめて私っ！　ってああ、夢の中の私だから無理だって……）
　青いボートの形というのはどちらかというと男の子向けで、女の子が使うのには珍しい。舟の船首には自転車のように二つのグリップが用意されていて、ソレに跨った稚奈がしっかりと小さな両手で掴めるようになっている。
「ほら、じゃあちなちゃん。ちーってしようね。ちぃぃ……」
（む、むりだよおっ！　お、おおお、おまるで、おしっこなんてぇぇ!?）
　半ば錯乱状態で叫ぶ言葉が、４歳児の口から漏れることもない。だが、親と言っても人の前でおまるでおしっこをするのだ。公開放尿などは○５歳の少女には恥辱の極みの行為だった。
（わ、わたしじゃないっ！　あれは、４歳のわたしで……ってああ、私なのか！　ああもう訳が分かんないよっ！　いっそ、自分でどうにかできたら……！）

　混乱の最中、強く願ったばかりに。
　一瞬、目の前が白くぼんやりとぼやけていく。輪郭も境界も失うようなホワイトアウトが稚奈の意識を波のように浚った。
　引き潮が海へと帰っていくように、また次第に感覚が戻っていく。
「う、うぅ……戻って……きた……？」
「おかしなちなちゃん。ちなちゃんはずっとここにいたでしょう？」

「え？」
　まさか、と思った。
　気付けば、夢はもう、夢ではなくなっていた。

　背丈も、○５歳の頃と変わらない、同じ目線で世界をみている。体つきに変化は無かった。手の大きさ、足の長さ――それに、着ていた服のサイズまで。
「な、なんでこんなの着てるのっ!?　うそ……むかしの……夢じゃ、なかったの……」
「ど、どうしたの？　ちなちゃん。なにかへんなことでもあった？」
　心配そうに見つめる母は、夢で見たとおり若いままだ。けれど、酷くクリアな現実感が稚奈の心臓を昂ぶらせていく。
「あ、ちなちゃん！　どこいくのっ！」
　後ろで母親が呼び止めるのも聞かず、洗面所へと駆け出した。自分の服を見ればそれで充分、分かりきったことなのに。信じられない気持ちが、確認を乞い求める。
　これが悪夢だと気付けば、そのショックで眼が醒めてくれるかも知れない。

　そんな一抹の期待は、目にした現実に粉々にされた。

「うそ……嘘だ、なんだよ、これ……」
　水色スモックに、髪をヘアバンドで留めただけの控えめなツインテール。幼女趣味にしては余りにも背が伸びすぎている。まるで○稚園児のコスプレをした○５歳の稚奈が、鏡の向こうに立っていた。
　膨らんだ胸が、スモックの中からアンバランスさを主張している。何も穿いていない裸の下半身には――もう、何も生えていなかった。
「なんでっ……。あ、あはは……夢だ、これは……夢だよ、そう、夢だって！」
　思いっきり手の甲をつねってみても、痛みが現実を掻き消してはくれない。不安に駆られて辺りを見回すと、怪訝そうに見つめる母親が、脱ぎ捨てた紙オムツを手に近づいていた。
「ちなちゃん、まだいそがなくていいよ。ほら、まだトレーニングパンツはいててもいいんだから」
「い、いやだっ……だって、そ、それ……紙オムツじゃない……なんで、私が穿かなきゃいけないの……」
「だって、ちなちゃんはまだお漏らししちゃうでしょう？　だから……」
「じゅ、○５歳にもなって！　お漏らしなんかする訳ないでしょ！　椛じゃないんだからっ！」
　橫目に映る鏡には、じりじりと後ずさりした、下半身裸に園児スモックの少女の姿が見える。他人の倒錯を笑ってきた稚奈が自ら纏う倒錯の装いは、言知れぬ恐怖の対象でしか無かった。
　壁に背中が着いて、もう逃げられないと思ったとき。玄関からチャイムが鳴った。
「あぁ、ちょっと待ってね、ちなちゃん。はぁーい、いま出ますからー」
　ほっとしたのも束の間、更に大きな危機に気付く。
「ちょ、ちょっと待って！　今出たらわ、私、みられちゃうのにっ！」
　この家の玄関と洗面場は一直線に繋がっているのだ。もし玄関に人でも入ってくれば、裸スモックの稚奈の姿などまる見えになる。
　酷く狼狽した稚奈の判断は、ドアを閉めるよりも、母親を止めることを優先してしまった。裸で慌てて駆け寄るよりも早く、母親が玄関のドアを開けた。

「やっ、やだ――」
「あら、椛じゃない。もう帰ってきたの？」
　飛び込んできたのは、ランドセルを背負った椛だった。よりにもよって、稚奈が紙オムツで辱めてきた相手が目の前にいる。
　恐怖で硬直した身体は、もう一歩も進めない。こちらを見つめた椛の顔は、悪戯そうに、笑っていた。
「今日は昼までって言ってたし。あ、ちなちゃん裸だー。――いったい、どうしたのかなぁ？」
　膝が、がたがたと震え出す。身体で感じた恐怖や恥ずかしさに、今まで抱いてきた意志など、微塵も抗う力は持ち合わせていなかった。
「ちなちゃん、今日こそ紙オムツとれるかなぁと思ったんだけどね……」
　母親は、残念そうに肩を落としている。　
「しかたないよ。まだ○稚園に通ってるんだし。小学校上がるまでは、紙オムツでいさせてあげようよ」
　椛は、まるで小さな妹のことを話すように、余裕の態度で受け止めている。
　何が起きているのか、何一つ把握出来ないクセに。稚奈は、無力で無様な４歳児の頃の感情が、大きな○５歳児の稚奈の中に再び渦巻いていくのを感じた。
　誰かに頼らなければ、立っていることさえ不安で、泣きそうな気持ちが理性をも飲み込んでいく。
「お母さん、稚奈ちゃんが！」
「あらあら、大変！　我慢してたのね」
　母親と妹の椛に囲まれながら○５歳にもなってお漏らしをしてしまったことに、まるで本当の幼児のように、零れた涙が止められない。
　恐怖に駆られて緩んだ稚奈の下半身から零れたお漏らしは、ぼとぼとと床を叩き、太股にミミズが這ったような不細工な痕跡を残していく。
「ふぇ、えぇ……うえええええん……」
　妹の手で無毛の恥部を拭いて貰い、母親の手で紙オムツを当てられながら、稚奈は感情のままに泣きじゃくった。
　涙で、景色の全てが霞んでいく。遠くぼやけていく感覚の中で、微睡むように意識は暗転した。

　　＊＊＊

　七月八日。七夕の翌日の朝七時。なんの変哲も無い普通の一日に、なるはずだった。
「おはよう、ちなちゃん。ふふ、もう朝だってのに、お寝坊さんなんだから」
　夢に微睡む稚奈の眠気を、冷たい風が奪っていく。椛の声に起こされ、目を擦り、大きな欠伸をした時、稚奈は自らの身に起きた異変に気付いた。
「うそ……なんで、こんなの、夢だった筈なのに……！」
　いつの間にか着せられていたキャラクターもののトレーナータイプのパジャマは、ぐっしょりと濡れて肌にべったりと張り付いている。
　幼児のような格好だけでも恥ずかしいのに、股間に広がる濡れた感触が、○５歳にもなってオネショをしてしまっていることを証明していた。
「またしちゃったんだ。身体もおっきいのに、オネショなんて恥ずかしいねぇ」
　椛は今まで散々稚奈が言ったように、それを恥ずかしいものだと改めて教え込ませるような口調で語りかけながら、常軌を逸した状況に呆然としていた稚奈のズボンに手をかけている。
　その言葉に、稚奈の心が逆撫でされた。ただでさえ情けない状況の中で主従を忘れた椛に嗤われることに、胸の奥が沸騰していくほどの怒りを覚えた。
「あんたのことでしょ！　いっつも、私に紙オムツ替えて貰ってたクセにっ！　もみじ『おねえちゃん』が……！」
　感情のままに吐き出したはずが、思いも寄らぬ言葉が混ざる。熱くなった神経に思わず寒気が走った。
「うそ……ちがうっ、もみじおねえちゃんは……。おねえ……あれ……なんでぇ……どうしてえっ！」
　何かの間違いだと言い直そうとするたびに、稚奈は、椛を姉と呼ばずにはいられなくなっていた。意志に反して自分の身体さえ何一つコントロール出来ない恐怖が、夢に見た４歳児の頃の感情を稚奈の中に呼び起こしていく。
「ほらほら、濡れたまんまじゃ気持ち悪いんでちゅもんねぇー。すぐに椛『お姉ちゃん』が、キレイにしてあげまちゅよー」
「やだっ、さわ、んなっ！　やらあああっ!!」
　ばたばたと足をばたつかせて嫌がる素振りさえ４歳児さながらに幼い。○５歳にもなってそんなことをしてしまう恥ずかしさが、余計に稚奈を苦しめて、更に幼い振る舞いを選ばせた。
　椛は、暴れる稚奈をものともせず、手際よく稚奈のパジャマズボンを引き下げていく。
「ほら、もうぐしゃぐしゃじゃない。全くちなは、あかちゃんなんだから」
　晒されていく稚奈の肢体は、未成熟な少女から大人へと変わりつつある過渡期にあった。白い肌にすらりと伸びた引き締まった両脚を備えながら、腰周りは子どもの頃よりも肉づきの良く丸みを帯びて、女性らしい魅力が芽吹いている。
　早熟な身体に似合う大人びたブラやショーツを好んでいた稚奈にとって、パジャマの中から露わになった下着は、幼さを厭う稚奈の心を、羞恥地獄へと突き落とすものだった。
「うそだ……夢でしょ……。なんで、私がっ……。やだよおぉ！　オムツなんかやだあああ!!」
　大量のオネショを吸って、幼児用の紙オムツは不格好に膨らんでいる。そんなものを穿いている自分に、稚奈は悲痛な叫びをあげてしまった。
　ばりばりと、両端を止めた紙オムツ留めテープが外されると、ぼとり、重さを吸った紙オムツは稚奈の布団の上へと落ちた。

　オネショに蒸れて気持ち悪い無毛の秘所を、椛のウェットティッシュがそっと撫でる。甲高い歓喜の声が反射的に上がり、稚奈は自らの手で、自尊心や尊厳を汚したことを悟った。
「やだっ、やあああっ！　ひゃうっ、あっ！　あうぅ！」
　嗤われ、蔑まれ、○学生の手に弄ばれていく辱めに非難と怒りを口にしても、稚奈の腰は自然と布団から浮き、辿々しいウェットティッシュを介した愛撫に応じて、一番気持ちいい場所に触れるように動いていく。
　唇を開きかけた花弁のような秘裂も、頑なに閉ざされた幼い直線へと戻っている。昨日までは処理が悩みの種だった、乙女の三角州を覆う茂みは跡形もなく消え、稚奈の秘所は幼女さながらのつるつるとした肌を見せていた。
　どれほど意識が拒絶しようと、稚奈の神経は、伸びた背丈と膨らんだ乳房に見合うだけの、大人びた快楽を指の先まで伝えてくるのだ。うっすらと粘りけを備えた雫も、開発途中だった椛以上に、幼い泉から染み出るように沸き上がる。
「うわあ、また泣きながらお漏らししてるぅ。ほんとにちなちゃんって、オムツの似合う赤ちゃんだねぇ……」
　下腹の奥から高まる絶頂は、達したと同時に勢いよくおしっこを噴出させた。荒い吐息は熱っぽく、快楽に呑まれて疲れた身体に新しい酸素を運んでいく。
　稚奈が落ち着いたのを見計らうと、椛は濡れた紙オムツをもう一度稚奈の股間にあてがう。そして、強い力で何度も何度も、淫水とお漏らしに浸った秘所を、押し潰すように責めたてた。
「ち、がうううっ、も、もみち、おねえたっ、うぅ、うあああああん！　ひゃあああああん!!」
　お漏らしも自慰も、紙オムツの中で繰り返されていく。椛へと施してきた幼児化調教の極地へと、稚奈は自らの身に深く深く堕とされ、溺れていく。
　歓喜の声とお漏らしのせせらぎが同時に上がると、恥辱の涙と喜悦の笑みが、幼児のように澄みきった稚奈の瞳を更に輝かせていく。

　昨日までの日常は、最早欠片も残っていない。
　紙オムツを当てられて顔を真っ赤にしながら悶える○５歳の妹と、それを嘲笑う○０歳の姉の新しい日常が、既に始まっていた。

　　＊＊＊

　オネショで目覚めた初めての朝。椛が稚奈に差し出したのは、紙オムツ姿で笑う２～３歳児の小さな女の子の写真が載った、紙オムツのパッケージだった。
「ほら、私が使ってた紙オムツ。もうオネショしないし、要らないかなちなたんにあげるね。ほら、こんなにカワイイんだよ？」
「べ、別にほしくなんか……」
「稚奈、おねえちゃんのお下がりくらいみんな貰ってるわよ。それに、オネショだけじゃなくてお漏らしも治らないんじゃ、紙オムツなんかいくつあっても足りないのよ？」
「わたしの方が、おねえちゃんだもんっ！」
　幾ら母親に諭されようと、稚奈はパンツを履くんだと強弁した。妹のお下がりのオムツを穿いてしまえば、自分が本当に椛の妹になってしまったことを認めるにも等しい行為だった。
　許してあげようよ、と何故か椛が味方についたせいで事なきを得たが、読み切れぬ思惑とまるで自分より下の者を視るような傲慢な視線は、稚奈には不快なだけだった。
　タンスにあった服や下着も、昨日まで揃えた○５歳のものではなく、幼稚園児が着るようなアニメプリントのシャツや、フリルつきのスカート、水玉模様の綿のパンツで埋まっている。
　唯一着られそうな胸元にリボンのついた水色のワンピースを纏い、自分が椛の姉なのだとどうやって証明しようかと考えた時に、異変は起った。
「う……うううっ！」
　強烈な尿意が、下腹を痛くする。そのままぺたりと両脚をハの字に開いてへたりこんだ稚奈が堪えようと下腹に力を込めた瞬間、秘裂から噴き出した飛沫が、乾いたパンツにじわりと、染みをつくった。
　あとは堰を切ったように、せせらぎは音を立てて稚奈の中から溢れ出す。着ていた水色のワンピースも、徐々に濃い色に染まる。じんわりと暖かいお漏らしはお尻までじっとりと濡らしていった。
「ああ……ああぁ……。やだあああ……！」
　あれほど否定した幼児のようにお漏らしをしてしまった恥ずかしさや自己嫌悪よりも、強烈な恐怖が稚奈の心を縛っていく。
　自分の身体に、一体何が起きているのか。底知れぬ孤独感が胸の奥から込み上げて、自分の部屋でたった一人、堪えきれずに泣きそうになったとき。
「――あーあ。だから、紙オムツが必要だって言ったのに」
　紙オムツを手にした椛が、稚奈の元へとやってきた。

「あ……あう、これは……！」
　今までしてきた恥辱の仕打ちを、行なった稚奈も忘れてはいなかった。だが、今の稚奈は紙オムツを穿かせる側から、穿かされる側に代わっている。
　復讐を恐れ、思わず逃げようとした稚奈の前に、椛は立ち塞がった。
「まだまだパンツは早かったね。ほら、いい子だからじっとしてよ？」
「やっ、やだっ！　も、もみじおねえ……じゃなくて、あんたなんかに、なんでっ！」
「ほら、暴れないで。ちなたん、またちっちでちゃいまちゅよぉ？」
　本当に言いたくもないのに、妹を姉と呼ばずにはいられない。背丈も自分の方が高いのに、暴れた所で容易くねじ伏せられてしまう。
　連鎖していく常軌を逸した状況に、稚奈が呆然としていられる猶予は無かった。
　濡れた稚奈にオムツを当てようとした椛の表情は、まるで欲しかった玩具で初めて遊ぶ子どものように、爛々と瞳を輝かせている。
「じ、自分で当てるから！　だ、だからいいよっ！」
「だーめ。お漏らししちゃった赤ちゃんには、オムツを着けてあげないとね」
　椛が開いて見せたのは、あのおむつのパッケージに映った、小さな女の子が穿いていたのと同じ紙オムツだった。
　一気に、稚奈の顔が羞恥で赤く染まる。○５歳の自意識や記憶が、屈辱的な扱いを拒絶していく。
　分かっているのに、言葉が出ない。なのに、抑えきれない感情は一方的に昂ぶっていく。
「やだっ！　紙オムツなんか穿きたくないっ！　やだああっ！」
　――地団駄を踏んで駄々をこねるなど、これでは本当に○稚園児ではないか。
　そう悔やむほど悲しくなって、稚奈は泣きだしていた。
「もう、しょうがないなぁ……。いい子にしかご褒美あげないけど。今日は特別だからね」
　椛は稚奈を床に寝かせるとお尻へと紙オムツを敷き、その上に、○０歳児の親指ほどの大きさの丸いピンク色をしたモノを置いた。
　そのまま手際よく両端を留められ、おむつ替えは完了する。
　ただでさえ○５歳児が穿くにはタイトな幼児用紙紙オムツの丁度股の部分には、得体の知れない小さな膨らみが出来ていた。
「なに……なにいれたの？　ごほうびって……」
「大丈夫だよ。……気持ちよくなるだけだから」
　違和感に怯える稚奈を、椛はやさしく慰めた。――片手に隠したリモコンのダイアルを、OFFから徐々に動かしながら。
　すぐに、小さな振動音が紙オムツから響き始めた。悲嘆に暮れた稚奈の涙は、椛の『ご褒美』により断ち切られていった。

「あ、あああああっ！　やっ、やだぁっ！　ぶるぶるっ、やだあああ！」
　椛から離れようとするも、おむつでぴったりと密着したバイブレーターのせいで、足腰に力が入らない。『やだ』を繰り返す稚奈の声は、おむつ替えを拒んだ時とは違う響きに変わった。
　穿かされたばかりの乾いた紙オムツの中は、ぬるぬるした雫で溢れていく。手足を床についたままなんとか逃げだそうとする稚奈の姿は、大きなお尻を大きく揺らす、ハイハイする赤ちゃんの姿によく似ていた。
「ハイハイ上手だねぇ、ちなたんは。オムツも似合ってるし、ほんとの赤ちゃんみたい」
「い、いうなっ、そんなこと……！　ちがうのぉ……」
　トイレに逃げて、オムツを外せば。椛が仕込んだ快楽の枷を外せば逆転出来ると信じて、稚奈はハイハイを続けていくも、進む速度は一向に愚鈍であった。
　左右に揺れるお尻を後ろにいた椛が撫で回すのだ。それだけの行為なのに、優しい触れ方はオムツを穿いていることを稚奈に意識させてしまう。
　オムツなんか恥ずかしい。その気持ちが胸を締め付け、稚奈を情けなくさせていく。惨めで悔しい筈なのに、幼児のような感情が、稚奈に甘えの気持ちを甦らせていた。
「わかってるよ。赤ちゃんはオムツで気持ちよくなったりしないもんねぇ」
「こ……これは、オムツでぇっ、ききっ、気持ちよ……くなってるわけじゃ、あぁ……！」
　『ご褒美』の玩具の出力を強く弱く替えていくと、稚奈の声は簡単に上ずっていく。稚奈を見下ろす椛は、支配の喜悦に歪んだ笑みを浮かべて、稚奈の無様を眺めていた。
　オムツ替えの度の恥ずかしい責めを嫌っても「お漏らしをするからいけないんだよ」という正論で、稚奈にはずっと逆らえなかった日々が、今では嘘のようにも思えていた。
　オムツを当てられて眠った筈が、乾いたパンツで目覚めたときには椛も思わず母親に確かめていた。
『何言ってるのよ、オムツをしてるのは、妹の稚奈ちゃんでしょう？』
　まさかとは思ったが、そうとしか思えなかった。七夕の短冊のお陰で、願っていた世界が叶ったのだ。嘘か幻か、そんなことはもう椛にはどうでもよかった。
　○０歳の姉として、○５歳にもなってオムツのとれない稚奈を、いっぱい恥ずかしく躾けることが出来ることに満足していた。
「似たようなもんだよ。これからずぅっと……ちなたんはオムツの中でイっちゃうんだから」
「やっ……おすなっ！　おしちゃやだっ……うううぅ……」
　『ご褒美』で膨らんだ稚奈のおむつの股を、椛は人差し指で二三度小突いてやった。幼児のようにお漏らしを繰り返しても、稚奈はまだ、自分が○５歳だった頃の記憶と自意識に必死になってしがみついている。
　だからこそ、稚奈は本当にオムツが必要な子どもとは違っていた。『○歳なのにオムツを穿いて、お漏らししちゃう』自分を恥じる、健気でか弱い、お姉ちゃんがいなければ何も出来ない、椛の可愛い妹になったのだ。
　一度生まれた甘えが、逆らう力を奪っていくのを、当事者であった椛はよく知っていた。オムツへのお漏らしを恥じている自分を、もっと恥ずかしい目に遭わせて逃げ場を奪ったのが、稚奈から受けた躾だったからだ。
（わたしのオムツを替えてくれた稚奈ちゃんは、いっつも私を気持ちよくしてくれたよね……。だから、これはそのお返し）
　オムツを当てられていないのに、椛はお腹の奥が、キュンと疼くのを感じてしまう。ひくつく秘裂から零れた蜜は、乾いたパンツに少しだけ、恥ずかしい染みをつけていった。

「どうせ今朝だって、オムツにオネショしちゃったんだよ？　だったら……今しちゃっても、おかしくないよ」
　そう言って誘う椛の言葉に、一瞬、稚奈は反応してしまった。椛を可愛がるのは、稚奈のはずだったのだ。椛は一人で何にも出来なくて、オナニーさえも稚奈に頼るような、そんな愛玩用のオムツペットになるはずだったのに。
　お漏らしあとに幼児用のオムツを穿かされ、恥ずかしくて堪えようのない屈辱が心を踏みにじっていくのに、すっかりオムツにお似合いの幼い姿になってしまった秘裂にぴったりとくっついたバイブレーションが、稚奈を強引に昂ぶらせていく。
　理不尽な仕打ちに怒ろうとしても、それよりも強い恐れが、稚奈の心身を萎縮させた。軽く押さえられただけで、ぴったり閉ざされた秘裂の中の淫核も、包皮の上からより集中的に振動を与えていく。
　我慢の限界が、近づいていた。
「ひゃううっ！」
「あははは！　きもちいいんだ……いいよ、ちなたん。イっちゃっていいよ。おむつにしーしーしながらイっちゃえ、この変態幼女っ！」
「ひゃうっ！　う、あぁぁ……。ああああああああっ！」
　込み上げてくる感覚が、性感なのか尿意なのかも、稚奈にはもう区別がつかなかった。もう、一歩も歩けないのだ。快感に震え、口元からはよだれを垂らした稚奈は、蕩けた顔をして、赤子のように笑うことしか出来なかった。
　ハイハイもやめ、ぺたりと床に崩れて、甘えた声で惨状を口にする姿は、稚奈がもう、大人へと成長していく○５歳には戻れないことを示している。
　だが、○学生の女の子が着るような可愛らしいワンピースにファンシーな紙オムツを着けていても、稚奈はもう、幼児としては余りにも育ちすぎていた。
「あ、ああぁ……あはっ……あははは……。しーし……出てるよぉぉ……」
　大人になりかけたままの姿で、幼児退行しきった稚奈はぐずぐずとオムツを汚していく。屈辱や恐怖が自己存在を揺らがすほどの不安の中で壊れそうになった稚奈の心を、椛はそっと寄り添い、救いの手を差し延べた。
「ちなたんは、わたしの妹になったんだよ……。これからずうぅっ、と。わたしが稚奈のオムツ、替えてあげるから……」
　椛がいなければ、もう何も出来ない。そう思い知って、自分を支えるものを失った稚奈は、もう迷わなかった。
　じんわりと広がるお漏らしの暖かさの中で、差し延べられた手を掴んでいく。
「……うん、おねがい、だよ。もみじ……おねえちゃん……」
　悲しくてどうしようもない自分への救いを、稚奈は素直に受け入れた。ぐしゃぐしゃに濡れたオムツも気にせずに替えてくれたし、お漏らししたことも怒らずに慰めてくれた椛を、稚奈は笑顔でお姉ちゃんと呼んだ。
　椛も、新しくできた大きな妹を両手いっぱいに抱きしめて、好きだよと呟いた。

　これからも続く稚奈へのオムツ妹化調教への思いに、歪みきった笑顔を浮かべながら。

　　＊＊＊

　八月八日。何もかもが様変わりした七夕の日から一ヶ月が経つ。稚奈の世界にはもう、○学校に通っていた頃の痕跡は何一つ残ってはいなかった。
　制服や教科書、携帯電話もスケジュール帳の置かれた机が消えた部屋には、代わりに、水色のスモックや園児手帳、幼い女の子が好みそうな絵本や女児向けアニメの変身グッズのおもちゃが並ぶようになった。
　そう、稚奈はいま、幼稚園に通っているのだ。○５歳であることは、親も稚奈の友だちも理解しているのに、それを変だと思う人は稚奈と椛以外にはだれもいなかった。
　椛が祈った七夕の願いは、今もまだ、続いている。

「ほら、椛おねえちゃんに連れてってもらうんでしょ？　鞄に紙オムツ入れておいたから、落とさないでね」
「……わかってるよ」
「いくよっ、ちなたんっ！」
　ランドセルを背負った○０歳児、元・妹の椛に手を引かれて、稚奈は毎朝、スモック姿で近くの○稚園まで通っていた。
　行きたくないと拒絶したが、椛の手で何度もお仕置きのお尻叩きを受け、お漏らしするほど泣きじゃくって以降、逃げる事も出来ずにいる。
　通学路は商店街を横切る道のりのため、当然街の人たちの視線も、稚奈の元へと突き刺さった。
　椛に縋り、オムツを替えてもらうようになったとはいえ、稚奈の自意識は、○５歳だった頃の記憶を引きずっていた。たった一つ残った形無き自らのプライドに縋って生きようとした稚奈にとって、様変わりした現実は、恥辱の連続でしかないのだ。
　背の高い少女が園児服を着て街をゆく異様さを、他人の目で意識させられる。恥ずかしさに泣きそうになると途端にまた紙オムツの中で尿意が込み上がり、稚奈は必死に堪えながら歩かねばならなかった。

「妹のこと、よろしくおねがいしますね。ちなたんも、いい子にしてるんだよっ」
「ほら、おねえちゃんにばいばいしようねぇ。ばいばーいって」
　○稚園の門を潜れば、もう○稚園児としてしか扱われない。
　エプロン姿の先生に手を振るように促されても、稚奈はじっと下を見つめて口をつぐんだ。
「……」
「ああ、もうしちゃってたか。ごめんごめん、今紙オムツ替えてあげるからね」
　稚奈が穿いたフリル付きのスカートからは、ピンク色の紙オムツが顔を覗かせている。先生はぽんぽんとお尻を叩き、一層しおれた稚奈を教室に連れて行った。
「あはは！　またもらしたんじゃん、おもらしちーちゃん」
「ほら、かみおむつかえまちゅよー。おしりきれいきれいしまちょーねぇー」
　稚奈は毎日園児たちの前で、黄色く染まった紙オムツと無毛の下半身を晒しては、おむつ替えをさせられていた。
　年中児の４歳児ともなれば、既に紙オムツはとれている。自分達より背が高いクセに紙オムツのままの稚奈は、園児たちの格好のおもちゃだった。
「おしっこくさいんだよ。またお漏らししたんだろ、ちなはあかちゃんだもんな」
「あかちゃんじゃないもんっ！　と、ともくんのばかぁ！」
　そうやってからかわれる度に稚奈はムキになって噛み付き、涙眼になった。知的能力や情動などの精神活動は４歳児水準へと退行し、自分自身のコントロールは何一つ叶わなかった。
　不意に襲ってくる尿意さえも５秒耐える間も持てないうちに、濡れた紙オムツの中へと更にあふれ出していく。
「やっ……あぁ……」
「ほんとは、ちなちゃんってあかちゃんなんじゃないの？　○○えんだって、オムツなんかはかないのに」
　濡吐き出す快楽とトイレさえ出来ない恥ずかしさに顔を染めた稚奈を、周囲の園児たちは更に声をあげてからかっていく。
「ううっ、うえええええん……」
　どれだけ周りの園児たちの幼さを拒絶しても、排泄さえ人の手を借りねばままならない無力さの中で、稚奈は彼らよりも幼い自分の存在を、痛感させられていた。

　　＊＊＊

　他愛ないと思いながらも短冊に托した七夕の日の願いは、椛の世界も大きく変えていた。
　あの日以来、唯一の弱点であるオネショも止まり、もう怖いものもなくなったのだから。
　明るい性格の優等生が最近優しくなったと評判になったのは、新しくできた妹の存在のお陰だった。
「お母さん、稚奈はどこ？」
「また○稚園でいじめられたって、泣いてるのよ。なぐさめてくれる？　お姉ちゃん」
「うんっ！」
　家に帰るとすぐ、椛は稚奈の部屋へと急いだ。今日は特別に、稚奈に見せてあげたいプレゼントがあったからだ。
　案の定ふさぎ込んでいた稚奈は、買って貰ったばかりの人形を抱いて、園児服のまま床にうずくまっていた。
「また喧嘩したんだ？　ちなたんはおねえちゃんだから、仲良くしなきゃダメなんだよ？」
「……だって。いじわるいうんだよ。ちなのこと、おもらしっこって」
　稚奈は未だに自分のことを『おねえちゃん』と呼ぶ。聞いた人はみな『椛の姉』としての主張ではなく、小さい子の背伸びとしか受け取らなかった。
　同じ学校の同級生に会った時には、泣くまで主張しても聞き入って貰えず、とうとう漏らしたオムツを替えるところまで見られてしまった位だ。

　椛の妹になった当初は稚奈も元の○校生に戻れると信じて勉強に取り組んでいた。だが、ひらがなも読めないほどに知能が下がり机に向かう集中力を失っては、その努力も全て徒労に散っていた。
　必死に覚えようとしたひらがなの練習帳は、一ページだけミミズの這ったような文字が並んでいて、あとは小さい子の描くような輪郭の歪んだ落書きばかりが増えている。
　しかも、夜ばかりでは足りないのか、昼にも一日四枚もオムツを汚してしまうようになってからは、すっかり稚奈も一人前の○稚園児としての振る舞いをするようになっていた。

「ほら、おっきしよう？　一緒におやつ食べたら、嫌な気分も消えちゃうからさ」
「ほっといてよ……。どうせ、もみじおねえちゃんにはわかんないんだから……」
　我慢も出来ず、怖がるたびにすぐ泣いて、人前では虚勢を張っても、家族の前では急に甘えん坊の顔を見せる。自分が本当の姉だったのだと空想に浸るように現実から目を背けるたびに、稚奈はどんどん幼児化しているようだった。
　それが余計に、椛の庇護欲を誘っていく。自分より大きく大人びていた○５歳の少女を頬を膨らませていじけるような『妹』に出来たと言う征服感も、今まで散々責め続けられた反動で生まれた嗜虐心を煽っていった。
「ふぅん……。じゃあちなたんは、お姉ちゃんにはなりたくないのかなぁ？　まだ、オムツも外れないのに」
「がんばってるのに、できないのはしかたないでしょ！　バカにしないでっ！」
　椛が、そんな稚奈に見せたかったのは、毎日を沈んだ表情で過ごす『妹』の願いを、叶えるためのアイテムだった。
　抱えたビニール袋から取り出したのは、つい一ヶ月前まで稚奈が毎日着ていた、○校生の制服・セーラー服だった。
「この前会ったおっきなお姉ちゃんに借りてきたんだよ？　ちなたんが着たところ、椛おねえちゃんも、見たいなぁ」
　暗かった稚奈の表情に、赤みが差す。恥ずかしいのか橫目でちらちらと眺めた『妹』を、椛は優しい手付きで起き上がらせた。

　ほんの少し前までは、稚奈だって服だって自分で着られた。○５歳にとって、そんなことは当たり前過ぎて出来ない方が恥ずかしいことなんて分かっている。分かっていても、今の稚奈は、もう一人では服さえ着られなかった。
　ボタンを締めようとした指も滑り、シャツも前後ろ反対に着てしまった時、自分の能力がまた一つ失われたことを知り、稚奈は悲しくて大声で泣きじゃくった。
　悲しいことがあると、すぐに涙が溢れてくる。４歳児の頃の感情に引きずられたせいか、怒りも涙も堪えきれずに溢れ出してしまう。その度にお漏らしで、穿かされたオムツは重くなり、また少し、稚奈は自分が幼稚なのだと思い知らされた。
「え、ええっと……と、とどかない」
「貸して。ほら、手伝ってあげるから、ちなたんは動かないで」
　まるで子ども扱いしていく椛の態度で恥ずかしくなっても、泣きじゃくるよりはマシだと思い、稚奈は人の手を借りて服を着るようになった。出来ないことをやり続けても、怖くて悲しくなって、またお漏らししてしまうからだ。
　それに、椛にお願いしたら大抵のことなら聞いて貰えた。そうして貰うと、悲しみのたまっていく胸の奥に、暖かい気持ちが染み渡っていく。『甘え』だと自覚していても、全てを投げ出す幸せに、稚奈は依存してしまっていた。
　甘えられる幸せに浸りながら、稚奈はその時が来るのを待った。膨らんだ胸の合間に挟まるよう赤いリボンを椛が丁寧に整え終わると、鏡の向こうの稚奈は、七夕の日までの日常を取り戻していた。
「できたぁ……。せいふくだ！　わたし、これきてたんだよ！
　くるり、と回ってみせると、ブリーツスカートが螺旋を描く。ふわりと浮かんだ中からはパンチラではなくオムチラが見えてしまい、慌てて抑えた稚奈を、椛が笑った。
　でも、そんなことも気にならない位、稚奈は嬉しかったのだ。これが自分だと、自信を持って言える。セーラー服の中で膨らんだ胸も、園児には不釣り合いな背の高さのどれも、椛の姉は自分だと言えるだけの証拠だという自信があった。
　嬉しさが、稚奈の胸の中でいっぱいになっていく。大人へと成長していく自分の姿を想像すると、オムツの中がせつなくなって、きゅんきゅんと疼き出してしまった。
「ほんとだ、お似合いだねぇ。ちなたん、まるでおねえちゃんみたい」
　そんな『妹』の姿に満足したのか、椛が、稚奈を優しく褒めた。
　制服を持ってきて貰っただけでも嬉しい。服を着せて貰えて、もっと嬉しい。うれしい、うれしい、うれしい！
　自分より小さくて生意気だった椛が、今では頼もしくて優しい大きな存在にしか思えない。頭の奥までかあっと熱くなるほど、嬉しさが全身を狂喜させてしまうのを、稚奈はもう止められなかった。
「っ！　ああ……！　やあっ！」
　稚奈は、目を丸くして、だらしない笑みを浮かべた。照れているのかと思わせるほど頬を赤らめながら、か細い泣き声を漏らしていく。
　それがお漏らしの時に見せる愛らしい仕草に似ていることに、椛もすぐに気付いたらしかった。
「あぁ、お漏らしだね。替えてあげるから、こっちに……」
「ちがうの……ちがうったらぁ！」
　嫌がる稚奈のスカートをめくり確認するも、不思議なことに紙オムツにはお漏らしサインは浮かんでいなかった。
　いつもなら漏らすたびに盛大に泣いてもいいはずなのに、稚奈には悲しい気持ちなんてないから、そんな気も起らなかった。
　もじもじと太股をすりあわせると、おむつの中がまたきゅんきゅんと疼いていく。
　落ち着きのない態度を心配してくれたのか、椛は稚奈を心配そうに見つめていた。
「……あれ？　ほんとだね。稚奈ちゃん、どうしちゃったの？」
「あ、そそそそれはっ！　ど、どうしたっていうか、そのっ」
　余りに顔が近いものだから、嬉しくてたまらない顔を見られるのが恥ずかしくて、稚奈の舌は上手くまわらなかった。
　口をぱくぱくと開いて、慌てふためいて、言おうか言うまいかのためらいに迷う内に、また嬉しい気持ちと同じくらいに、おむつの中の大事な場所が、キュンキュンとせつなくなっていく。
　稚奈は握り拳を自分の胸に置くと、上目遣いで椛に告白した。
「うれしいのっ！　うれしかったのに……お、おしっこ、もれちゃったの……。い、いきなりなの！　ぴゅぴゅって……おねえちゃんなのに！」
　そう叫んだ瞬間、また稚奈の大事な場所からほんの少しだけ、勢いよく飛沫が噴き出してしまった。泣きながらおむつ替えをされる度に出てきたぬるぬるとは違う、さらさらのおしっこだ。
　ほんとは恥ずかしい筈なのに、嬉しくてたまらない気持ちで出てきた雫は、頭の中が真っ白になって、高い声で猫のように鳴いてしまうほど、気持ちのいいものだった。

　セーラー服を着た稚奈は、一ヶ月前と同じ姿形をしているのに、振る舞いが幼いせいで、幼児が背伸びをしたコスプレにしか見えない。
　そのギャップを、素直に喜ぶ稚奈の姿が可愛らしくて、眺めているだけでもにやにやしていた椛にとって、稚奈の突拍子もない告白に、思わず固まってしまった。
　頭の中で、聞いた言葉をもう一度確かめる。――嬉しくてお漏らしをしてしまったのだと、確かに言った！
　身体は大きくても、やはり稚奈は、椛の小さな妹だった。確信するまでもない当たり前を何度も確認してしまうほどに、自分を慕って甘えてくる稚奈のことが、椛には堪らなく愛おしかった。
「ほんと……かわいいっ！　ちなたん、嬉ションしちゃったんだっ！」
「う、うれしょんって……？」
　思わず抱きついて頬ずりしながら、椛は熱っぽくまくし立てていく。困惑しきった稚奈に思わず口づけをしたくなる気持ちを抑えながら、頭を優しく撫でながら説明していった。
「女の子ってね、とっても嬉しくなると、おまたの中がびしょびしょに濡れていくんだよ。ちなたんも、おむつ替えのときはいつもびしょびしょだよね？」
「あ、あれはうれしくないのっ！　はずかしいだけなのっ！」
「でも、今は嬉しかったんでしょ？」
「う、うん……」
　嫌がる素振りをしながらも、稚奈の目も潤んで蕩けている。椛が夢見た幼児退行による理想の妹に、日々の躾を受けている稚奈は段々近づいていた。
　強気で推せば素直に話を聞いてくれる稚奈は、○稚園児に通うどの園児たちよりも遙かに澄んだ、純粋さを備えているのだから。
「それって、お姉ちゃんしかできないの。――ちなたんは、段々、お姉ちゃんになっていくんだよ」
　椛は、稚奈の耳元へと、そっと囁いた。大人になることを諦めない『妹』に、希望と夢を与えていく。
「あっ……ふあああっ！」
「またしちゃったんだ？　うれしい？　ちなたん、うれしいの？」
「うれしくなんかぁ……あうぅ……」
　稚奈も嬉しくて堪らないのか、太股を擦り合わせるのを一向にやめようとはしていない。おそらく嬉しくなるたびに、おむつの中は噴水のようにお漏らししてしまっているのだろう。
「ちなたん、――いや、稚奈はお姉ちゃんだねぇ。おっぱいだっておっきいから、○校の制服も似合ってる。みんな、稚奈のことを、お姉ちゃんだって呼んでくれるよ」
「ひゃうっ……ひぃっ！　う、うぅぅ……あうぅぅ……」
　嬉しすぎて力が入らないのか、稚奈は女の子座りでぺたんと床にへたり込む。何度も何度も褒める度に、可愛い声をあげてくれたのだ。椛は、期待を込めて稚奈のスカートをめくっていった。
「そんなに、嬉しいんだぁ……。もうオムツ、たぷたぷになってるよ」
　さっきまで浮かんでいなかったお漏らしサインが、稚奈の紙オムツの上にはっきりと浮かんでいる。スカートを腰までまくり上げると、椛はそれを稚奈に見せてやった。
　夢の世界に浸っていた稚奈には、現実はいつだって厳しいものでしかない。途端に稚奈からは笑顔が消え、またびくびくと怯えて泣きそうな顔になってしまった。
「お、おむつ……おむつしてるのっ、おねえちゃんじゃないもん……。やだっ、こわいよ、やだあっ！」
　やりすぎた事を後悔して、椛はまた稚奈を強く抱き留めた。震えた身体も一度大きくびくついたが、椛の腕の中で、だんだん震えは小さくなっていった。
　制服姿の稚奈を抱きながら慰める行為は、七夕よりも本当に大きくなったような錯覚を椛に覚えさせていく。復讐も怒りも、とっくに椛の中からは消えていた。
　いまはただ、稚奈を精一杯愛することしか考えられない。
「ねぇ、稚奈。○校じゃなくて○稚園の制服でも、おむつしてても……そんなので、お姉ちゃんじゃなくなっちゃうの？」
「それは……その……」
　椛が理屈で語っていくと、また稚奈の言葉が濁る。不安な時には理屈は効かないと知っているから、椛はポケットの中から、もう一つの贈り物を取り出していく。
「いまの稚奈が、すっごくお姉ちゃんなんだって……。やっぱり、教えてあげなきゃ、ダメみたいだね」
　稚奈が椛を見つめている間に、ピンク色のローターがそっと、稚奈のおむつの中に転がっていった。

　上半身には○校生のセーラー服、スカートを外した下半身に身に付けた紙オムツを着けた姿は、自らの幼稚さに耽溺していく、稚奈のそのままを晒している。
　膝を自分の手で抑えた形で寝かされた稚奈は、おもちゃの振動でぬるぬるとしたオムツのお尻を、差し出すように椛に見せていた。
「ひゃうっ！　あんっ、あん、あぁああっ！　ぶるぶるきもちっ！　いぃっ！　でりゅっ、いっぱいでれううっ！」
「気持ちよくなれるのは、おねえちゃんだって言ってるでしょ！　ほら、さっきも気持ちよかったんでしょ？　正直に言わないとっ！」
　機械的に、ただひたすら強い刺激を受けている淫核を避けるように、椛は稚奈のお尻や太股、股の間までをすりすりと撫でている。
　すっかり昂ぶった身体には優しい手触りはもどかしいが、甘えたがりの気持ちに染みたせいで、潮を吹くような勢いのお漏らしは止まらなくなっていた。
　稚奈がもっと強い感触を望んで腰を浮かせても、椛は避けるように手を動かしてしまう。
　稚奈が必死に守ってきた理性のタガも、だらしなくお漏らしを垂れ流す尿道のように、もう緩みきってしまった。
「ふああっ！　あ、あっ、きもちっ、きもちよからっ！　ちな、うれしょんっ、きもちよかっああよぉっ！　だからっ、もみじおねえっ！　いっぱいっ、いっぱいしてええっっ!!」
　自ら赤ちゃん言葉を使う事を選び、オムツの上から可愛がって欲しいと願ってしまったことで、稚奈はもう、後戻りの出来ない道を選んでしまったことを悟っていた。
　ぐじゅぐじゅと音を立てた紙オムツの中で、稚奈のだいじなところが、熱くきゅんきゅんと疼いて、絶頂を迎えようとしている。
　快楽と甘えに屈したことを後悔しながらも、身体の奥から求める欲求に、稚奈はもう逆らえなかったし、逆らおうとも思わなかった。
「よくできましたぁ！　ほらっ、イっちゃえぇっ！」
　盛りきった半分大人の身体、その一番大事なところに向かって、椛は小さな親指を強く押し当て、おもちゃをぎゅうっと稚奈の奥へとめり込ませていった。
　ひくついた秘裂はそれを容易く飲み込むと、外側から浴びた刺激が今度はお腹の中で直接稚奈の恥ずかしい所を刺激していく。
「ひっ、ああぁぁああっ！　やあああああああああっ!!!!」
　よだれを垂らしたまま首を振り、半狂乱に至るほどの強い快楽が、稚奈の脳髄へと突き抜けていった。強烈な絶頂に体力を奪われ、肩で息をしながらだらしない顔で笑った稚奈のオムツを、椛はそっと開いていく。
　お漏らしなのか恥ずかしい汁なのか分からないほど、オムツの中は吸いきれなかった水分を溜め込み、ぽちゃぽちゃと水音を立てていた。
「これからは、いっぱい、いっぱい……。おねえちゃんになっていこうね……稚奈」
　よだれやなみだで、汚れきった顔とは違い、オムツの中は火照って赤みを増したピンク色が、可愛らしいつぼみの形で芽吹いている。
　椛はまた、優しい『お姉ちゃん』の顔を稚奈に見せる。安心しきって、微笑み返した稚奈の恥ずかしい場所に、そっと椛は口づけをした。

　大きな変化に巻き込まれれば、最初は色々と抵抗もあるものだ。それも、時が経てばただの笑い話になる。稚奈と椛も、そうだった。
「ちなちゃーん、まってよおっ！」
「ほらっ、つかまらないよっ！」
　稚奈もあれほど嫌がっていた○稚園での生活にも慣れ、今では背の低い友だちと一緒にかくれんぼやおままごとに興じるようになっている。
「すっかり、からかわれても泣かなくなって……。成長してますよ、稚奈ちゃんは」
「先生のお陰ですって。ほんと、ありがとうございます」
　気を使ってくれた○稚園の先生に礼を言うと、椛は稚奈にむかって手を降った。
「おーい、稚奈ぁっ！　そろそろ帰るよっ！」
「あ、稚奈ちゃんのおねえちゃんだ！　稚奈ちゃん、呼んでるよっ！」
　○稚園から家への送り迎えは、椛の日課になっている。稚奈は椛の手を握って、今日も家に帰るのだ。
「もう、おねえちゃんが来たら、すぐ甘えん坊になっちゃうんだから。これじゃあ、オムツが取れるのもまだまだ先かな？」
　椛にべったりの稚奈を、先生はいつもからかってくる。
　今までならそれが嫌で泣きじゃくった稚奈も、今では自分で反論ができるようになっている。
「……ちな、おねえちゃんになるから。だいじょうぶなんだよ」
「えらいっ、よく言った！　稚奈ちゃん、その調子ならすぐお姉ちゃんになれるよ」
　喜ぶ先生に抱き留められ苦しそうな稚奈を、椛は優しい目で見つめていた。

「先生に褒められた時、またしちゃったでしょ？」
　そう椛に言われた時、稚奈は思わず恥ずかしさに顔を両手で覆ってしまった。
　いちいち分かりやすいオーバーアクションは自分でも恥ずかしいのに、子どもの心は気持ちを素直に表すことを優先してしまう。
　言われたとおり、稚奈はもう、椛の顔を見るだけで、世界が明るくなる位嬉しくなってしまう体質になっている。
「……もみじおねえちゃんがきたとき、だもん。うれしくて……」
「ううぅ、相変わらずかわいいんだからっ、ちなたんはっ！」
　椛も堪らないとばかりに稚奈に抱きつくと、園児服に隠れたスカートの中身にそっと手を伸ばしていた。
　触れあう喜びと、どきどきする気持ちが重なって、嬉しい時のお漏らしと一緒に気持ちのいい雫が、稚奈のオムツの中へと広がっていく。
「きゃっ！　こ、こここうえんだよっ！　おうちにかえってからじゃないとっ」
　慌てて止めようとした稚奈を、椛は引っ張るように駆け出した。
「トイレがあるでしょっ！　すぐいくよっ、ちなたんっ！」
　公園角の、白くてキレイな新しいトイレ。そこが、稚奈が通園と帰宅の途中に寄る、二人の秘密の遊び場だった。

　稚奈の通園鞄をごそごそと漁ると、椛はピンク色の可愛いパンツ型の紙オムツを取り出して、急かすように迫った。
「ほらほらっ、新しいおむつっ！　替えてあげるから早く早くっ！」
「い、いそがせないでよっ。できるから、一人でっ」
　稚奈も歩いたり走ったりする時は、テープ型ではなくパンツタイプを穿くことも多かった。
　激しい運動のあとは我慢が出来ずにたっぷり漏らしてしまうが、それでも自分でパンツが穿きたいと言った稚奈の希望を叶えてくれたそれを、稚奈は大事に使っている。
　バランス感覚も衰えて、片足で立つ度に大きくぐらついてしまう。必死に格闘する稚奈の様子を、椛はにやにやと観察していた。
「……あ、あんまりじっとみないでよっ！　もみじおねえちゃんの、へんたいっ」
「だって、卑怯だよ。稚奈がすっごく――可愛すぎるから」
　椛の方こそ、本当は卑怯なのだ。おむつ替えの最中にも嬉しくなることを言うから、稚奈の大事なところが、またきゅんきゅんと疼いてしまう。
「ばっ、ばかぁっ！　お、おむつはいてる、と、とちゅうなのにっ！　やああっ！」
　あふれ出したお漏らしは、我慢していた量もあってか、たっぷりと流れていく。服を汚してしまうことに諦めて崩れ落ちようとしていた時、椛は稚奈が穿きかけたおむつを、さっと腰まで引き揚げてくれた。
「えへへ、セーフだったねぇ
　椛がそう言ってくれたのに、急いであげたオムツの股の付け根から、漏れだしたお漏らしが脚を濡らしていく。
　お漏らし中は一歩も動けなくなる稚奈の脚を、椛はハンカチで丁寧にふいてくれた。
「だめ……きたないよお、もみじおねえちゃん……おてて、ださないと……」
「今出したら、また漏れちゃうもん。気にしなくていいよ、稚奈のだもん」
　自分のお漏らしで手を汚してしまった申し訳なさにまた泣きそうになる稚奈を、椛は笑って慰めてくれた。
　そのせいで、オムツの中はまた切ない熱を帯びていく。
「それに……ちょっと、あったかくて、気持ちいいよ。稚奈のおしっこ」
「ばかっ……、もみじおねえちゃんの、ばか」
　少し恥ずかしいのにそれでも何故か嬉しくて。稚奈は、甘えるように椛の頬へキスをした。

　稚奈も椛も、辿り着いた未来は望んだ予想図とは懸け離れていたかも知れない。だが、二人がそれを後悔することはなかった。
　毎日稚奈のオムツを替え、甲斐甲斐しく面倒を見続けた椛は、もう一人前の姉であった。
　稚奈もまた、誰かの手を借りなければ生きていけない、可愛らしいオムツペットを手に入れたのだ。
　妹をいじめ抜いていた頃には感じられなかった甘えられる幸せが、稚奈を永遠の愛玩幼女へと換えていった。

このページを編集するこのページを元に新規ページを作成