115 :名無しさん@ピンキー:2015/03/04(水) 20:51:31.39 ID:eXbG28sO
自分では話広がらないので職人お待ちしてます:
おむつスタンプ。
本来なら、保育所で乳児たちのおむつが取り違えられないよう、彼らの母親が名前を入れるために使うもの。
その用途が椿の琴線に触れる。
(ピンポイント過ぎるよ……)
高鳴る気持ちを抑えながら商品を通販で注文する。通販サイトには、スタンプの印面を指定する入力フォームがあった。フォームに名前を入れれば、他でもない彼女のためのスタンプが作られる。
入力例には実在しない乳児の名前がひらがなで示されている。
「"みしま つばき" と……」
椿もそれにならった。
もう乳児たちの一員だ。
想像が進む。品物が届いたら、部屋にあるおむつ全部に名前を入れよう。そして、一枚を中学校へ持参し、誰もいないうちに廊下の隅へそっと置いてみよう。
他の生徒が、廊下に放られたおむつを見たら何と思うだろう。もとより中学校という施設には場違いなもの。そのうえ、おむつにでかでかと、
"みしま つばき"
なる名前が印されていたとしたら、生徒の驚きは推し量れない。
都立珠ノ杜中学から初めて輩出された演技派俳優として椿の校内人気はもちろん、一般からの人気も上々だ。
噂になっちゃうかも。
しかしそれは、椿にとって願ってもないこと。
119 :名無しさん@ピンキー:2015/03/08(日) 03:47:59.17 ID:6pnDLU7X
躊躇いがなかったと言えば嘘になる。たとえ偽物の煙だったとしても、火元を疑う噂好きたちはきっと騒ぐはずだ。
一途に仕事に打ち込んでいても、足下をすくいたがる人種はいる。芸能人にゴシップはつきものだ。
(もしかしたらこれで、わたしの芸能生活……だけじゃないんだ。演技のおしごとだけじゃなくて、人生もきっと……おむつ穿くのが好きだって、バレただけで。わたしの全部が、終わっちゃうんだ……)
最悪の想像を考えただけで、椿の背筋に悪寒が走る。総毛立つ恐怖で、胸の奥まで締め付けられるように苦しい。
なのに、口元から漏れた溜め息は熱くて、呼吸も犬みたいに荒く切なくなるばかり。
両手で胸元を抑え込んでも、椿の心も浅ましい衝動に押し流されてゆく。
『みしまさん、今度の役は赤ちゃん役ですかあ? お名前入り紙おむつまで用意してるなんて、さすがプロだよねえ』
『ほら、穿かせてあげるから演技してよ。おっきな赤ちゃんが、名前入りのおむつのお尻でハイハイしてるとこ』
『椿ちゃん、俳優より赤ちゃんの方がお似合いじゃない? だって、椿ちゃんのお顔がそう言ってるもん。「わたしはおむつで赤ちゃんにされちゃうのがすきな、へんたいさんです」ってさ――』
「ううっ……」
白昼の悪夢にすら抗えず、無力感と恥辱に呑まれた椿の目尻にもじわりと熱いものが込み上げてくる。
演技力でも誤魔化しきれなかった激情は、薬局で初めて紙おむつを手にした時の感覚によく似ていた。
(あかちゃんに……されちゃうんだ。わたし、おむつの取れない、乳児みたいな赤ちゃんにされちゃうんだ……)
ぐずぐずと鼻を鳴らしながら、ネットで見つけた名前入り紙おむつの画像をパソコンの画面いっぱいに映してみた。
可愛らしいうさぎのキャラクターが描かれた紙おむつは、椿にとってもお気に入りの柄だった。
(赤ちゃんと、いっしょのおむつ……。あんな幼稚な絵柄の、穿けるなんて、赤ちゃんだけだから……)
おむつパッケージの山が積み上げられた部屋の隅には、いつもカーテンで隠した姿見が置かれている。
椿は席を立ち、姿見の前に立つと、カーテンを乱暴に引き下ろした。
自分の姿を見るために――想像と現実を、重ね合わせるために。
「フロントプリントにも、バックにも、おなまえスタンプ入れるんだ……あは、ははっ……。わたしも、赤ちゃんに、なっちゃうんだ……」
鏡の向こうで、情けない泣き笑いの顔を見せた制服少女が、スカートをたくし上げて自分の真実を晒していた。
がくがくと震えた両脚で穿いていたのは、クロッチ部分に『おしっこお知らせサイン』を浮かべ、3回にも渡るおもらしですっかり膨らんでいた、テープタイプの紙おむつ。
トイレにも行かず我慢しきれずに、哺乳瓶を口から離さずに、両手両脚でハイハイをしながら。
名優の業を磨いた幼児化願望のごっこ遊びは、最後は必ず叶うことのない残酷な現実にしか辿り着けなかった。
(だから、わたしは……)
破滅に到る願いだとしても、叶わぬまま呪われるよりはずっと良い。
"みしま つばき"はそう思ってしまったのだ。
だって、鏡に映ったおんなのこは、どう見ても年相応の少女になんかには見えなくて。
「ちぃ、でたぁ……。ふぁ、ああぁぁっ……」
お尻を床にぺたんとつけて、甘えた声を吐きながら、呆けた赤ら顔でまたおむつを濡らしているから。
すっかり小さくなった膀胱から溢れだしたせせらぎで、緩みきった尿道までもが開放感に震えてゆく。
その甘美な喜悦にか細い声で嬉し泣きをこぼしながら、椿は学校に穿いてゆくおむつのことを考えていた……。
自分では話広がらないので職人お待ちしてます:
おむつスタンプ。
本来なら、保育所で乳児たちのおむつが取り違えられないよう、彼らの母親が名前を入れるために使うもの。
その用途が椿の琴線に触れる。
(ピンポイント過ぎるよ……)
高鳴る気持ちを抑えながら商品を通販で注文する。通販サイトには、スタンプの印面を指定する入力フォームがあった。フォームに名前を入れれば、他でもない彼女のためのスタンプが作られる。
入力例には実在しない乳児の名前がひらがなで示されている。
「"みしま つばき" と……」
椿もそれにならった。
もう乳児たちの一員だ。
想像が進む。品物が届いたら、部屋にあるおむつ全部に名前を入れよう。そして、一枚を中学校へ持参し、誰もいないうちに廊下の隅へそっと置いてみよう。
他の生徒が、廊下に放られたおむつを見たら何と思うだろう。もとより中学校という施設には場違いなもの。そのうえ、おむつにでかでかと、
"みしま つばき"
なる名前が印されていたとしたら、生徒の驚きは推し量れない。
都立珠ノ杜中学から初めて輩出された演技派俳優として椿の校内人気はもちろん、一般からの人気も上々だ。
噂になっちゃうかも。
しかしそれは、椿にとって願ってもないこと。
119 :名無しさん@ピンキー:2015/03/08(日) 03:47:59.17 ID:6pnDLU7X
>115
躊躇いがなかったと言えば嘘になる。たとえ偽物の煙だったとしても、火元を疑う噂好きたちはきっと騒ぐはずだ。
一途に仕事に打ち込んでいても、足下をすくいたがる人種はいる。芸能人にゴシップはつきものだ。
(もしかしたらこれで、わたしの芸能生活……だけじゃないんだ。演技のおしごとだけじゃなくて、人生もきっと……おむつ穿くのが好きだって、バレただけで。わたしの全部が、終わっちゃうんだ……)
最悪の想像を考えただけで、椿の背筋に悪寒が走る。総毛立つ恐怖で、胸の奥まで締め付けられるように苦しい。
なのに、口元から漏れた溜め息は熱くて、呼吸も犬みたいに荒く切なくなるばかり。
両手で胸元を抑え込んでも、椿の心も浅ましい衝動に押し流されてゆく。
『みしまさん、今度の役は赤ちゃん役ですかあ? お名前入り紙おむつまで用意してるなんて、さすがプロだよねえ』
『ほら、穿かせてあげるから演技してよ。おっきな赤ちゃんが、名前入りのおむつのお尻でハイハイしてるとこ』
『椿ちゃん、俳優より赤ちゃんの方がお似合いじゃない? だって、椿ちゃんのお顔がそう言ってるもん。「わたしはおむつで赤ちゃんにされちゃうのがすきな、へんたいさんです」ってさ――』
「ううっ……」
白昼の悪夢にすら抗えず、無力感と恥辱に呑まれた椿の目尻にもじわりと熱いものが込み上げてくる。
演技力でも誤魔化しきれなかった激情は、薬局で初めて紙おむつを手にした時の感覚によく似ていた。
(あかちゃんに……されちゃうんだ。わたし、おむつの取れない、乳児みたいな赤ちゃんにされちゃうんだ……)
ぐずぐずと鼻を鳴らしながら、ネットで見つけた名前入り紙おむつの画像をパソコンの画面いっぱいに映してみた。
可愛らしいうさぎのキャラクターが描かれた紙おむつは、椿にとってもお気に入りの柄だった。
(赤ちゃんと、いっしょのおむつ……。あんな幼稚な絵柄の、穿けるなんて、赤ちゃんだけだから……)
おむつパッケージの山が積み上げられた部屋の隅には、いつもカーテンで隠した姿見が置かれている。
椿は席を立ち、姿見の前に立つと、カーテンを乱暴に引き下ろした。
自分の姿を見るために――想像と現実を、重ね合わせるために。
「フロントプリントにも、バックにも、おなまえスタンプ入れるんだ……あは、ははっ……。わたしも、赤ちゃんに、なっちゃうんだ……」
鏡の向こうで、情けない泣き笑いの顔を見せた制服少女が、スカートをたくし上げて自分の真実を晒していた。
がくがくと震えた両脚で穿いていたのは、クロッチ部分に『おしっこお知らせサイン』を浮かべ、3回にも渡るおもらしですっかり膨らんでいた、テープタイプの紙おむつ。
トイレにも行かず我慢しきれずに、哺乳瓶を口から離さずに、両手両脚でハイハイをしながら。
名優の業を磨いた幼児化願望のごっこ遊びは、最後は必ず叶うことのない残酷な現実にしか辿り着けなかった。
(だから、わたしは……)
破滅に到る願いだとしても、叶わぬまま呪われるよりはずっと良い。
"みしま つばき"はそう思ってしまったのだ。
だって、鏡に映ったおんなのこは、どう見ても年相応の少女になんかには見えなくて。
「ちぃ、でたぁ……。ふぁ、ああぁぁっ……」
お尻を床にぺたんとつけて、甘えた声を吐きながら、呆けた赤ら顔でまたおむつを濡らしているから。
すっかり小さくなった膀胱から溢れだしたせせらぎで、緩みきった尿道までもが開放感に震えてゆく。
その甘美な喜悦にか細い声で嬉し泣きをこぼしながら、椿は学校に穿いてゆくおむつのことを考えていた……。
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