パワプロ2022

福井新聞オンライン インタビュー2022.4.21

記事より抜粋
―選手能力(パワーなどの基本的な数値、特殊能力)はどのように決定していますか。
打率からミート、本塁打数からパワーなど、分かりやすい成績から選手データに落とし込むある程度の目安はあります。
そこにセイバーメトリクスや、直近数年の傾向などを加味して能力値や特殊能力を提案する社内ツールもあります。
最終的には「選手データを見ただけでどの選手か分かる」を目標に調整を入れていきます。
 
―シーズンでの活躍や不振による数値の上げ下げ幅の基準はありますか。
 特に、若手でブレイクした選手、タイトルホルダーの選手の上げ幅についてはどのように考慮していますか。
規定打席や規定投球回、直近数年の成績の加味などを行います。
成績によって、選手本来の能力に近い成績に安定してくる打席数(対戦打者数)といったものがあります。
セイバーメトリクスも用いますので、必ずしもぱっと見の成績に沿った査定にならないことも多いです。
また1年のみではなく、ペナントレースモードで長く遊んでいただくことも想定しているため、
短いスパンの活躍や不振にまどわされず選手本来の実力を見極めて査定することも大切にしています。
 
―制作チームはどのような体制で情報収集しているのでしょうか。
制作内に選手データグループという集団がいます。12球団にそれぞれ1人担当が就き、
球団の動向を追っています。また、プロ野球中継の試合はほぼ全試合録画し、
いつでも確認できるようにしています。詳細な成績データについては、
Japan Baseball Data(株)様にご提供いただいており、これをもとに分析しています。
 
―初期のパワプロと現在とで情報収集や選手能力の決め方で変わった点はありますか。
情報収集については、初期はインターネットもありませんでしたので、
全国のスポーツ紙を取り寄せたり、スポーツ雑誌、書籍、テレビ・ラジオ視聴、球場での観戦に頼っていました。
当時はパ・リーグの情報が少なくて困りました。今はインターネットで情報も得やすくなり、
全球団の試合放送を観ることもできますので本当にいい時代になったなと思います。
選手能力については、初期は担当2人で投打担当と守備走塁担当に分かれて12球団の選手査定をしておりました。
1996年からは1球団1人の体制にして、担当メンバーは入れ替えながら現在に至ります。
12球団の担当から上がってきた能力データは隊長に渡り、
成績の分析データをもとに球団間のバランスなどをならして調整します。
 

文春オンライン インタビュー2022.6.11

記事より抜粋
――各能力についてもゲーム内で説明がありますが、「キャッチャー」の能力の説明は、
  「投手の能力を引き出す」とあります。どんなところで評価し、ゲーム内でどんな効果があるのでしょうか。
能力詳細画面では「キャッチャーD」と表示されている能力ですね。もう少し詳しく言うと、
キャッチャーのリード能力、を表しています。これは、投手のコントロールをより引き出したり、
投球のスタミナ消費を抑えるようにリードできる、という能力です。
投手が不調時にもなるべく本来の球速を引き出したり、といった効果もあります。
もともと、キャッチャーのリードは非常に査定が難しい項目です。「コレ」といった正解のないものですし、
「リードが良い」と言われていた捕手が、翌シーズンになると「リードが悪い」と言われることもしばしばあり、
投手の成績や見る人の主観によるものも大きいと思います。
ひるがえって、松川選手は発売時点の能力では「キャッチャーF」になっていました。
ところが、いくら正捕手の田村龍弘選手が怪我をしたとはいえ、高卒ルーキーながら開幕からスタメン捕手として出場。
佐々木選手の完全試合達成を始め、リリーフ陣も含め9回まで組み立てられるリード面や、
投手のワンバウンドもしっかり後ろにそらさずに止めるキャッチング技術など、予想をはるかに超えた活躍を続けました。
結果、それが今回のアップデートでの「キャッチャーD」に繋がっています。
「D」という評価は、1軍でそれなりの試合数で試合を壊さずにリードが出来る結果を出した選手につける、「1軍レベル」の能力です。
 
――データの設定しづらい、ルーキー、外国人選手の能力の評価方法について具体的に教えてください。
いくつかポイントはありますが、下記のような点は注目しています。
<投手・野手共通>
・ドラフト順位
・最終球歴(高卒、大卒、大卒社会人、高卒社会人、独立Lなど)
・大学生なら所属リーグなど(六大学、東都、関西六大学、関西学生野球、その他地方など)
・成績(高校通算本塁打だったり、公式戦などの成績だったり)
・体格(体格がすべてではないですが、やはり細い選手は1年目からシーズン通して活躍は難しいかも、など)
・ニュース記事など全般(「こういう選手になりたい」や「こういう球種を練習している」などの発言を参考に)
・映像全般(試合映像はもちろん、試合前練習だったり、インタビューなども性格や考え方が分かるため)
・過去の同タイプの選手との比較、同じ年度の選手同士での比較、現プロ選手との優劣順位付けなど
・ドラフト指名意図(チームにとって欲しい選手、ということは何か理由があるはず。足りないところの穴埋めなのか、将来の主軸候補なのかなど)
・(間に合えば)キャンプや自主トレ確認(アップの短距離走で選手同士の走力を比較したり、新ポジションを練習してるかなど)〉
<投手>
・球種(例えば「スライダーを持ってる」と言われていても、縦・横・高速・カットボール・スラーブなど動画を見て変化や球速を見極めます。変化量も)
・最高球速(ただしアマチュアの最高球速は地方球場のガンなどで盛られているケースも多いので、映像でも常時どれくらいか確認)
・投球回や球数、連投など(スタミナの調整で。試合映像があればどのくらいの球数から球速が落ちているか、上ずってくるかなども)〉
<野手>
・50m走、遠投の数値(鵜呑みにはせず、映像でも確認します)
・映像などで測れれば一塁到達タイムや二塁到達などの走塁タイム〉
 

パワプロ2020

numberWEB インタビュー2020.7.8

記事より抜粋
話を聞きに行ったのはコナミデジタルエンタテインメントの森博信さん。
最新作『eBASEBALLパワフルプロ野球2020』のプロデューサーを務める、いわば“パワプロの中の人”である。
「一体どうやって決めているんですか? 贔屓とかあるんですか??」
ぶしつけながら、いきなり「能力値の決め方」をズバリ質問してみた。
「細かい数式については明かせませんが、成績から能力値へ変換するシステムは存在します。
共同通信デジタルさんにご提供頂いている成績データやセイバーメトリクスも考慮しながら、独自の基準で決定しています」
 やはり噂の査定システムは実在した! しかし、全ての能力値がシステムによって決定されているかと言えばそうではない。
「単純な数値化では怪我やチーム事情で出場機会を減らした選手が不利になってしまいます。
そこで開発チームでは、ファームを含むプロ野球全試合の映像がいつでもチェック可能な体制を作っており、
その映像を元に各球団ごとに存在する担当者が数値化を進めています」
つまり全球団に“スコアラー”が配置されているのだ。
能力値は「担当者制」と「システム」のハイブリッド体制で決められている訳だ。
新人はアマチュア時代の映像を見て。
さらに聞けば、各担当者ごとの基準のブレをなくすため、全体での査定会議を行うのはもちろんのこと、
全体を統括するバランサー的な役目を果たす人もいるとのこと。
実際に球場で試合を観戦することもあり、頭だけでなく足も使って査定されているそうだ。
なお、常に新しい人材が入ってくる開発環境で引継ぎとローテーションを実施しているため、
前述の「好きな球団を贔屓する担当者」は「いない」という結論になった。
「シミュレーションゲームとしても違和感のない能力値になるよう、
開発段階では何度も繰り返しペナントレース機能でテストを実施しています。
特に資料の少ない新人選手については、球種を正確に調査するため、
アマチュア時代の試合映像をコマ送りしてチェックすることもありますね」
実際の映像分析までして緻密に設定されているとは……。ゲームの発売後も常にチェックを欠かさず、
適宜データがアップデートされる。パワプロの選手データの裏には我々の想像を超える工夫と努力がつまっていた。
ファンが喜ぶ「OB登場」にもこだわり。
そんなパワプロが世代を超えて親しまれる要素のひとつに、過去に偉大な成績を残してきた「OB」が登場している点も挙げられる。
この査定にも確かなこだわりがあり、タイトル獲得年やキャリアハイのシーズンなど
特定の年度成績を基準に能力値を決定しているとのこと。
「当時を見ていたファンのイメージから離れないよう、
あえて複数年のイメージを織り交ぜる査定はほぼしていません」
長く活躍したレジェンドほどキャリアの中でプレイスタイルや守備位置が移り変わっていくものだが、
ゲーム内のデータを見ながら「何年の成績をモデルにしているか」を当ててみるのも通な楽しみ方かもしれない。
 
中村剛也の「恐怖の満塁男」
また、ゲーム中には「特殊能力」の上位互換である「超特殊能力」が存在しているのだが、
最新作ではライオンズの中村剛也選手にその中のひとつ「恐怖の満塁男」が設定されることも明らかになっている。
「超特殊能力は本当に強力なのでこれまで現役の選手につくことはありませんでした。
ですが中村選手にあれだけ何年も満塁で好成績を残されると……つけざるを得なかったですね」

「イメージと離れないように」
今回、特に印象的だったのは、森さんが「イメージと離れないように」と繰り返し口にしていたことだ。
成績やデータという客観的かつ絶対的な評価基準がありながら、ファンの間で蓄積された主観的な「イメージ」から乖離しないよう、
担当者が絶妙なバランス感覚で日々その最適解を探っている。

 

パワプロ2020/プロスピ2021

oricon news インタビュー2021.5.12

記事より抜粋
━━そもそも『パワプロ』誕生はどのような経緯で誕生したのですか?
豊原浩司(家庭用『パワフルプロ野球』シリーズ リードプランナー)制作が始まったのは1993年の初め頃でした。
当時の家庭用野球ゲームは、わりと平面的だったので、もう少し立体的にすることで、
より戦略性をあげようという狙いで開発することになりました。
 
━━選手の詳細な“能力値”をゼロから作るにあたり、開発チームはどのような体制で情報を収集されたのですか?
豊原当時は本当に人数が少なくて、プログラマー3人にデザイナー2人だけというチームでした。
プログラム担当のひとりがバッティングとピッチング、もうひとりが走塁と守備の能力というふうに分けて開発しました。
当時はまだインターネットがない時代でしたから、地上波の野球中継やスポーツニュース、
各地から取り寄せたスポーツ新聞、野球雑誌、選手名鑑、レコードブックなど主に紙媒体に頼っていましたね。
あと、実際、球場に行って、一軍、二軍の試合も観戦していました。
 
━━今は「データ野球」が声高に叫ばれ、選手のさまざまな能力を分析する「セイバーメトリックス」を筆頭に、
  一般の人もかなり細かいデータを見ることができます。現在はどのような形で“能力値”を作っているのですか?
松井徹哉(家庭用『パワフルプロ野球』シリーズ プロデューサー)現在は「Japan Baseball Data」から選手の成績データを取得し、
そこから我々のほうで値を変換し、活用しています。加えて、各球団に担当をつけています。
ただそれだと、担当ごとに個人差が出たりする可能性もあるので、各球団担当から上がってくる情報を集約し、
最後にバランスをとる統括がいます。例えば、同じ3割バッターであっても、どういうピッチャーと対戦しての3割なのか、
球場の広さはどのくらいなのか。そういったものを総合して、最終的に同じ成績でも差別化しています。
 
━━驚くのは、まだ公式戦に登板したことのない新人選手や新外国人選手もいることです。“能力値”はどのように決めているのですか?
山口剛(『プロ野球スピリッツ』シリーズ プロデューサー)約30年の歴史の中で、アマチュア時代の成績から、
プロになったらどのくらいの成績になるかというデータがだいぶ蓄積されていますので、
それを活かして、これまでの成績や映像を見ながら予測データを作っています。
アマチュア時代に実績を残していても、(開発時点では)まだプロの球を受けてたわけではないので、
数値を極端に高くつけないよう配慮しています。新人はミートや守備力など技術が必要なところはあまり高くつけられないですが、
肩の力、足の速さなど身体能力を生かせる部分ではそのまま数値化することが多いですね。
 
━━成績から機械的に算出される部分にだけでなく、開発チームの人情査定もあるのですか?
  特にベテラン選手の能力の衰えなどは難しい部分かと思いますが…。
松井シビアに成績を反映していますので、人情査定はほぼありません。
ゲームにはシミュレーションの要素も含まれているので、人情味を入れすぎると、
現実とかけ離れたことになってしまい、納得していただけませんからね。ただ開幕予想データについては、
人情査定というか、予測や期待値が反映されています。
後半になればなるほどアップデートで事実に基づいたデータになっていきます。
 
━━実際にプロ野球選手が試合前日に『パワプロ』をやってイメージし、翌日試合に挑むなんて話も聞いたことがあります。
  これはまさにデータが精緻かつ、リアルタイムだからこそ。初期の野球ゲームからは考えられない進化です。
  開発チームとして今後、『パワプロ』『プロスピ』をどのように進化させていきたいと考えていますか?
松井『パワプロ』で野球に触れて野球選手になったという人も生まれているように、野球を知ってもらったり、
 野球ファンじゃない人が遊べるアイテムとして、未来を描き続け、拡散していきたいです。
山口『プロスピ』は、プロ野球の世界に浸りたい人に向けて、リアル野球をどれだけ再現できているかが永遠のテーマです。
 まだまだまだまだ再現しきれていないところがありますが、究極はプロ野球選手が納得のシミュレーションゲームを目指したいですね。
 

プロスピ2021

full-countインタビュー2021.07.08

記事より抜粋
成績から自動的に選手データを算出できればいいのですが、
データの少ない2軍選手や新戦力ではそういうわけにもいきません。
また守備成績や足の速さ、肩の強さなどは現時点では成績に表れないところでもありますので
他選手との比較や映像をコマ送りして秒数を測るなどしています。

ルーキーや新外国人選手であれば、NPBでプレーした場合にどういった成績を残すかを予想しながら査定します。
アマチュア選手だと試合映像が少なかったり、選手によってはなかったりすることや、
必ずしも前評判の高い選手が活躍するとも限らないため、
過去に活躍した選手の傾向やドラフト順位なども踏まえながら査定していきます。

また、基本的に『1年間シーズンを戦った時に残すであろう成績』を基準に査定していますが、
今年1年だけではなく翌年以降も踏まえて調整をします。1年だけ突出した成績を残した時は、
翌年以降も安定してその成績を残すかどうか慎重に判断します。
主にBABIPや被BABIPを参考にしていますね。

見かけの成績だけではなくセイバーメトリクスなども駆使した社内ツールなども使って査定をしています。

平野投手も同様で、投球内容や球種なども含めてNPB時代を大いに参考にしつつ
MLB時代のアレンジも入れるような調整をしています

――選手からの要望は実際に査定に反映されるのでしょうか?
「成績に基づいて査定をつけていますので難しいところはあるのですが、
多少は考慮すべきというところもありますので、指摘を受けたら試合の映像を見返します。
他の選手とのバランスもありますが、場合によって見直すこともあります」

 

プロスピ2019

full-countインタビュー2019.10.22

記事より抜粋
――プロ野球選手の中でも、自身のパワプロでの能力を気にする方もいます。
どのようにして能力は決まっていくのでしょうか?
山口剛プロデューサー(以下、山)「我々も何の根拠もなくデータをつけるわけにはいきません。
まずは、実際の公式記録をベースにさせていただいています。その上に各球団毎に専用の担当者が付いています。
“番記者”的なものですね。その人が一旦、このシーズン中の担当チームのデータはこうです、というのを作っていきます」
森博信プロデューサー(以下、森)「公式記録を参考に作っていく作業になるので、12球団全部を1人でというのは難しい。
ですので、1人の方に1球団の全ての選手をチェックしてもらってやってもらう形です」

――試合の映像もチェックして?
山「そうですね。実際にスタジアムに行って観戦したりもします」
森「1軍と2軍の試合映像は録画しておいて、いつでもチェックできるようにして、見ていたりもします」

――球種の決め方も同様ですか?
山「球種もそうです。あとは、明らかにこれはカットボールだろうという軌道をしていても、
選手が『スライダーです』という場合は、そういう特殊な球種を再現したりもします。
単純に公式記録だけでは作り切れないところはありますので、
記録と担当者の見た印象などを擦り合わせた結果、ああいった能力になっています」
森「ファンの人たちの印象で、この選手ってこうだよねというイメージもありますよね。
そういうものもうまく能力、特殊能力で反映できるように、常々チェックはしています」

――昔に比べると、投手の球種も進化している。
山「実際に投げられた方がいるのであれば、それは再現しないといけないと思っています。
例えば、過去の例で言えば、(巨人の)菅野投手のワンシームとか」
森「シーズン中に能力のアップデートをするようになり、シーズン中に持ち球が変わる選手がいたりもしますね」

――『パワーヒッター』や『アベレージヒッター』に代表される特殊能力はどうやって作られるんでしょうか?
森「特殊能力も、まずは公式記録を参考にします。
それこそ盗塁のように公式記録を参考にするところもあれば、
先ほど言ったようにみんなが感じている印象とかで反映することもあります。実際の試合の映像を見て、
その選手がクイックが上手い、上手くないとか、そういうところも含めて能力に反映しているところもあります」
山「時事ネタのようなものも結構あります。昔は松坂投手が西武にいたときには『力配分』という特殊能力が誕生しました。
抑えなければならない打者や場面であれば、全力で投げてくるという能力を時事ネタとして採用したりとかもありますね」

――ということは、世の流行にもかなり分析されていますか?
山「そうですね、世の中の反応みたいなものは常に気にしています」
森「流行った用語をそのまま特殊能力名にしたりとか。『レーザービーム』、『ささやき戦術』、『バズーカ』などはそうですね」

――昨年ブームとなった『甲斐キャノン』はまだないですね?
山「今年、甲斐選手の能力として肩とかは凄く上がっています。
ですが、特殊能力として固有名称がつくようなものに関しては、相当年数の実績のデータをふまえて検討するようにしています」












 
 
 

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