江莉香?(えりか)
※早くクリアすればするほど、豪華報酬になる。
プレミアムガチャチケット×3
スタミナ回復
コンティニューチケット
フレンドポイント2000FP
[大強化]ユニケル×2
[EXベース]ミリナセウス
[ご褒美]えりか [ご褒美]紫苑
[クッキングチェンジ]ルミ
[SRメイクアップ]シェフ・アプレンティス
[タグ昇華]音紫苑
[転生7_9]輪花
[寄生兵器]クリスティア
脱衣チケット×2
スタミナ回復
コンティニューチケット
フレンドポイント2000FP
[大強化]ユニケル×2
[EXベース]ミリナセウス
[クッキングチェンジ]ルミ
[SRメイクアップ]シェフ・アプレンティス
[タグ昇華]音紫苑
[転生7_9]輪花
[寄生兵器]クリスティア
脱衣チケット×2
プレミアムガチャチケット×2
スタミナ回復
コンティニューチケット
フレンドポイント2000FP
[大強化]ユニケル
[ひよこ]ミリナス
[ご褒美]えりか [ご褒美]紫苑
[SRメイクアップ]シェフ・アプレンティス×2
[タグ昇華]音紫苑
[転生7_9]輪花
[寄生兵器]クリスティア
脱衣チケット
スタミナ回復
コンティニューチケット
フレンドポイント2000FP
[大強化]ユニケル
[ひよこ]ミリナス
[SRメイクアップ]シェフ・アプレンティス×2
[タグ昇華]音紫苑
[転生7_9]輪花
[寄生兵器]クリスティア
脱衣チケット
・[転生1_3]輪花
・[転生3_5]輪花
・[転生5_7]輪花
・[転生7_9]輪花
・[8月ランキング]えりか [8月ランキング]しおん
・[料理人募集中]さなえ
・プレミアムガチャチケット 4枚
・[泡姫]メロン 10体
・[泡姫]ピーチ 10体
・ゴールド 200000G
・フレンドポイント 40000FP
・スタミナ回復 10個
・コンティニューチケット 10枚
・脱衣チケット 2枚
・[転生3_5]輪花
・[転生5_7]輪花
・[転生7_9]輪花
・
・[料理人募集中]さなえ
・プレミアムガチャチケット 4枚
・[泡姫]メロン 10体
・[泡姫]ピーチ 10体
・ゴールド 200000G
・フレンドポイント 40000FP
・スタミナ回復 10個
・コンティニューチケット 10枚
・脱衣チケット 2枚
・[転生1_3]輪花
・[転生3_5]輪花
・[転生5_7]輪花
・[8月ランキング]えりか [8月ランキング]しおん
・[料理人募集中]さなえ
・プレミアムガチャチケット 3枚
・[泡姫]メロン 7体
・[泡姫]ピーチ 7体
・ゴールド 100000G
・フレンドポイント 20000FP
・スタミナ回復 5個
・コンティニューチケット 5枚
・脱衣チケット 2枚
・[転生3_5]輪花
・[転生5_7]輪花
・
・[料理人募集中]さなえ
・プレミアムガチャチケット 3枚
・[泡姫]メロン 7体
・[泡姫]ピーチ 7体
・ゴールド 100000G
・フレンドポイント 20000FP
・スタミナ回復 5個
・コンティニューチケット 5枚
・脱衣チケット 2枚
・[転生1_3]輪花
・[転生3_5]輪花
・[8月ランキング]えりか [8月ランキング]しおん
・[料理人募集中]さなえ
・プレミアムガチャチケット 2枚
・[泡姫]メロン 5体
・[泡姫]ピーチ 5体
・ゴールド 50000G
・フレンドポイント 10000FP
・スタミナ回復 3個
・コンティニューチケット 3枚
・脱衣チケット 2枚
・[転生3_5]輪花
・
・[料理人募集中]さなえ
・プレミアムガチャチケット 2枚
・[泡姫]メロン 5体
・[泡姫]ピーチ 5体
・ゴールド 50000G
・フレンドポイント 10000FP
・スタミナ回復 3個
・コンティニューチケット 3枚
・脱衣チケット 2枚
・[転生1_3]輪花
・[8月ランキング]えりか [8月ランキング]しおん
・[料理人募集中]さなえ
・[泡姫]メロン 3体
・[泡姫]ピーチ 3体
・プレミアムガチャチケット 1枚
・ゴールド 25000G
・フレンドポイント 7500FP
・スタミナ回復 1個
・コンティニューチケット 1枚
・脱衣チケット 1枚
・
・[料理人募集中]さなえ
・[泡姫]メロン 3体
・[泡姫]ピーチ 3体
・プレミアムガチャチケット 1枚
・ゴールド 25000G
・フレンドポイント 7500FP
・スタミナ回復 1個
・コンティニューチケット 1枚
・脱衣チケット 1枚
・[転生1_3]輪花
・[8月ランキング]えりか [8月ランキング]しおん
・[料理人募集中]さなえ
・[泡姫]メロン
・[泡姫]ピーチ
・ゴールド 25000G
・フレンドポイント 5000FP
・スタミナ回復 1個
・コンティニューチケット 1枚
・
・[料理人募集中]さなえ
・[泡姫]メロン
・[泡姫]ピーチ
・ゴールド 25000G
・フレンドポイント 5000FP
・スタミナ回復 1個
・コンティニューチケット 1枚
上段 イベント限定素材
下段 通常クエスト素材
どちらでも進化可
---
---
---
---
---
---
---
---
---
---
---
---
下段 通常クエスト素材
どちらでも進化可
- 1.[はじまり]ミリ→[たまご]ミリナ
- レベル5(MAX) 必要経験値:9520
- 進化素材
---
---
---
- 2.[たまご]ミリナ→[ひよこ]ミリナス
- レベル15(MAX) 必要経験値:29896
- 進化素材
---
---
---
- 3.[ひよこ]ミリナス→[こっこ]ミリナシア
- レベル30(MAX) 必要経験値:73537
- 進化素材
---
---
---
- 4.[こっこ]ミリナシア→[EXベース]ミリナセウス
- レベル50(MAX) 必要経験値:205602
- 進化素材
---
---
---
- 5.[EXベース]ミリナセウス→[EX]ご褒美ドール
- レベル99(MAX) 必要経験値:974999
- 進化素材
- ご褒美ドール
1〜5の進化は8月12日12:00〜8月26日12:00の間のみ可能
ただしレベルアップは期間後でもできる
[料理人募集中]さなえはイベントランキング1000位以内の報酬
ユエとあわせて進化すると次回レイド用ドールが完成するが
ユエの進化度合いによって料理人ユエのレア度も変わってくる
ただしレベルアップは期間後でもできる
- 1.[めばえ]ユエ→[しんめ]ユエ
- レベル5(MAX) 必要経験値:9520
- 進化素材
- [破壊者]ポーラ
- 2.[しんめ]ユエ→[つぼみ]ユエ
- レベル15(MAX) 必要経験値:29896
- 進化素材
- [破壊者]ニーナ
- 3.[つぼみ]ユエ→[開花]ユエ
- レベル30(MAX) 必要経験値:73537
- 進化素材
- [破壊者]リリー+
- 4.[開花]ユエ→[満開]ユエ
- レベル50(MAX) 必要経験値:205602
- 進化素材
- [破壊者]ローラ+
- 5.[満開]ユエ
- レベル99(MAX) 必要経験値:974999
- 6.料理人への進化
- [つぼみ]ユエ→[見習い料理人]ユエ
- 進化素材
- [料理人募集中]さなえ
- [開花]ユエ→[一流料理人]ユエ
- 進化素材
- [料理人募集中]さなえ
- [満開]ユエ→[五つ星料理人]ユエ
- 進化素材
- [料理人募集中]さなえ
[料理人募集中]さなえはイベントランキング1000位以内の報酬
ユエとあわせて進化すると次回レイド用ドールが完成するが
ユエの進化度合いによって料理人ユエのレア度も変わってくる
ドール名 | 属性 | 進化/生成 | 進化・生成先 | 進化元 (レベル最大値) | 素材 (レベル1でOK) |
---|---|---|---|---|---|
[ご褒美]しおん | Bust | 進化 | [EXデストロイヤー]しおん | [EXベース]エルナセウス | [ご褒美]しおん |
[EXベース]ユリナセウス | |||||
[EXベース]サリナセウス | |||||
[EXベース]ルミナセウス | |||||
[EXベース]アルナセウス | |||||
[EXベース]マリナセウス | |||||
[EXベース]ミリナセウス | |||||
[ご褒美]しおん | Bust | 生成 | [EXデストロイヤー]しおん | ─ | [EXベース]パルナセウス/[ご褒美]しおん |
[普通の少女]りせ | Lip | 進化 | 不明 | [普通の少女]りせ | [寄生兵器]クリスティア |
[クッキングチェンジ]ルミ | Body | 生成 | [オリジナル料理人]ヒロイン [EX料理人]ヒロイン | ─ | [オリジナル]ヒロイン [EX]ヒロイン (どちらか1体。ゲーム内ヘルプ参照) |
[SRメイクアップ]シェフ・アプレンティス | Body | 生成 | [料理人]ヒロイン | ─ | SRヒロイン |
[タグ昇華]音紫苑 | Body | 生成 | [転生××]○○ | ─ | ヒロインを除くR5ドール(ゲーム内ヘルプ参照) |
[転生1_3]輪花 | Body | 生成 | [転生××]○○3rd [輪廻転生××]○○3rd | ─ | 1stシーズンR5及び 1stシーズン輪廻ドール (どちらか1体。ゲーム内ヘルプ参照) |
[転生3_5]輪花 | Body | 生成 | [転生××]○○5th [輪廻転生××]○○5th | ─ | 3rdシーズンR5及び3rdシーズン転生ドール 3rdシーズン輪廻ドール (どちらか1体。ゲーム内ヘルプ参照) |
[転生5_7]輪花 | Body | 生成 | [転生××]○○7th [輪廻転生××]○○7th | ─ | 5thシーズンR5及び5thシーズン転生ドール 5thシーズン輪廻ドール (どちらか1体。ゲーム内ヘルプ参照) |
[転生7_9]輪花 | Body | 生成 | [転生××]○○9th [輪廻転生××]○○9th | ─ | 7thシーズンR5及び7thシーズン転生ドール 7thシーズン輪廻ドール (どちらか1体。ゲーム内ヘルプ参照) |
イベントエピローグ
半ば強引に主人公と体を繋げ続けた江莉香は、
自分の体に起こるある異変に気付いた。
規則正しい明滅を繰り返すクリスタルの瞳は、
今や不規則な輝きを放っている。
何が起きているのかは解らない、
だが、フラフラと立ち上がり、
機械仕掛けの自分を見て、俺を見つめる。
何故かその目からは狂気の光が感じられなかった。
「違うの……違う! 私は……」
そこで江莉香は、いやかつて江莉香だったものは停止した。
何者かが背中を突き刺し、胸を貫いた。
その手に握られていた物は、機械仕掛けの心臓だった。
「知ってるよ、紫苑。江莉香に心を壊され、
利用されるだけ利用された犠牲者。
身も心もボロボロになりながら代役をさせられていた可哀想な子。
貴方もそうね、被害者かも知れない。けど」
「貴方はたくさん殺した。
親友の両親、そして私のお父さんとお母さん……
犠牲者だから? 操られてたから? それで許すと思う?」
そこに居たのは加賀見葉月、そして花梨だった。
「その体、もう再生さえ出来ないんでしょ?
延命し続けなきゃならない程壊れてるんだよね」
ひとこと話す毎に、葉月は握り込んだ心臓に力を込める。
その度に江莉香、いや紫苑と呼ばれた少女は痙攣を繰り返す。
「無理よ、貴方は江莉香になれない、紫苑にも戻れない。
人間にさえ戻れないガラクタ」
これは本当に俺の知ってる葉月なのか?
そう思える程に冷酷な眼差しをしていた。
「違うか、人間には戻れるかもしれないね。
けどそんな事絶対に許さない、ガラクタはこのままここで朽ち果てなさい」
そう言うなり、葉月は掴んでいた機械仕掛けの心臓を握りつぶし、
そのまま強引に腕を引き抜く。
紫苑は哀しげな顔を浮かべたまま、機能を完全に停止して崩れ落ちて行く。
そうか……葉月は、彼女は……
ずっと追い続けていた敵。
両親の敵、その相手と遂に倒す事が出来た。
葉月の復讐がようやく終わったのか。
彼女は俺を振り返る事なく天を仰ぎ、しばらくその姿勢を保っていた。
頬を伝う涙が一瞬見えたのは見間違いではない。
しばらくして、大きく深呼吸をした葉月はこちらへ振り返る。
それはいつもの葉月の顔だった。
「こんな所で一人ぼっちは寂しいよ、それはとっても寂しい事だよ。
だからね、そんなルーキー君の為に来てあげたんだよ。花梨ちゃんと一緒にね」
花梨は少し照れくさそうな顔をして、一言だけ口にした。
「あたしはずっと間に合わなかった。今までずっとそうだった。
もう……そんなのはコリゴリなんだよ。
だから死にものぐるいで間に合わせた、ギリギリだったけどな」
花梨は語る。
シティの安全は他のみんなに任せて、自分はずっと江莉香を追っていたこと。
葉月もまた独自に江莉香を探していたこと。
二人にはそうする理由があった。
そこに違和感があったからだ。
それは香月まゆかの事件にまで遡る。
あの時、江莉香は姿を現した。
正確にはほんの一瞬だけ姿を変える瞬間が映されていた。
機械化リーパーをバラ撒いた事もそうだ。
結果的にこちらの組織化を促した。
いつからこの世界を終わらせる為に潜んでいたのかは解らない。
千年以上潜んでいた可能性も否めない。
普通の人間では叶わない化け物、それが江莉香だ。
だからこそ、用意周到な江莉香が
わざわざそんなミスをするとは考えられなかった。
あの時点で正体を明かし、それを致命的なミスだと誤認させる。
それが狙いなら確実に効果を発揮している。
こちらのミスリードを誘う、その可能性を疑いきれなかった。
だが疑う事にした、そうしなければならないと思った。
あの機械を江莉香だと思わせようとしている本物の存在がいる事を。
けれど、すぐに情報が手に入るとは思えない、
相手が本物なら、もっと狡猾だ。
だから、瑠璃を頼る事にした。
彼女の持つ本なら何かを引き出せる可能性がある。
嫌がる本人を連れ出し、安全だと思える場所で
その調査を開始した。
この疑問が正しいのなら、
何としても本物を暴かねばならない。
当然花梨は江莉香について調べた所で何も出ては来ない事は知っていた。
けれど、他を調べる事で見つかる事もある、
そして瑠璃が持っている図書館の本はそれが可能だ。
疑うべきは一人、あの時あの場に居た江莉香、
その江莉香が名指しでそっとしておこうと提案した人物。
紫苑だ。
紫苑は心を犠牲にした。
まともな判断も出来ない、だから仲間内でそっとしておこうと決めた。
仲間がそんな状態になっているのなら、
どんな事をしても正常に戻す努力を行った筈だ。
だが、自分達はそうしなかった。
そっとしておく事で紫苑の存在を隠してしまった。
それを提案したのは江莉香だ。
認識を変えられていたなら、もっと早くに気付く事が出来た筈だ。
あえて提案し、全員を納得させる手を使ったのは、
江莉香の存在が明らかになった場合、
変えられていた認識を辿る事でバレてしまう。
その疑いを逸らす為ではなかったのか?
花梨はその疑問を調べるべきだと確信した。
だからこそ紫苑を調べた。
そして瑠璃が紫苑に関わる本の中からその一節を見つけた。
驚くべき事に、江莉香が紫苑と入れ替わったのは、
紫苑がまだ7歳の時だった。
何も知らない紫苑は、自分が江莉香だと信じて生きていた。
その時が来る迄は、江莉香は紫苑の認識を変え、
ただお互いが入れ替わっていたに過ぎなかった。
そしてその時が来た。
当然紫苑も選ばれるべき存在だ。
あの夢を見る事になる。
そしてその夢を見た事をトリガーにして、
紫苑は2つ目が送り込んできた刺客としての自覚を得た。
江莉香が何故紫苑を選んだのか、
どんな手を使ったのかは解らない。
だが確実に鍵持ちになる人間を
見つける術を持っていたと考えられる。
紫苑はたまたま江莉香に選ばれただけだ、
自分達が選ばれていた可能性もある。
花梨はそう語った。
確かにその可能性は否めない。
だが紫苑は選ばれてしまった。
そして紫苑と江莉香は入れ替わり、あの場に立った。
最初から紫苑は江莉香としてみんなの前に居た。
だから誰も気付けなかった。
紫苑に扮した江莉香があの場に来たのは鍵持ちの中では一番最後、
あるいはその次だった筈だと花梨は言う。
だからそれまでに消えてしまった槐の存在を江莉香は知らない。
その場に居た全員に対し、
江莉香が紫苑に関わらないように伝えた事を槐は知らない。
花梨に扮してドールショップに居た江莉香は紫苑だ。
江莉香本人ではない。
だから江莉香はずっと槐の存在を知らずに居る。
それがきっと、これからの戦いにおいて
とても重要な役割を果たすだろう。
花梨はそう言っていた。
江莉香は姿を隠していたのではなく、
ずっと紫苑として行動していた。
誰にも疑われる事が無い状態で、好きに行動出来た。
そこまで調べ上げた時、
花梨は手に持つ鎌の共鳴が弱くなって行くのを感じた。
かつて朱天に貰った鎌は、互いの無事を確認する為のものだ。
そして今は、仲間同士が共鳴しあうようになってはいるが、
特に俺との共鳴を強くする様にしてあったらしい。
それが弱くなっている。
慌てて花梨は鍵を持つ他のメンバー、
そしてギフトホルダー、仲間を経由して冴香に確認を取った。
共鳴が弱くなる理由はたった一つ。
誰かがゲートを開き、俺をどこか別の場所へ送った時だけだ。
だが、誰もゲートを開いていない。
だとすれば、それは江莉香、いや紫苑の仕業だ。
このタイミングで俺をゲートの向こうへ連れて行く。
それは決着を付ける為の行為。
最悪の事態に陥っている事に他ならない。
最悪の事態、それは瑠璃の調査によって
ある事実が発覚していたからこその事態。
紫苑の体はもうボロボロだと言う事だ。
本物の江莉香が計画していた事、
それはあの最後の戦いで全てに決着を付ける事。
身代わりとなった紫苑はその時まで使えればいい。
だから無理な改造を施した。
脳を直接かき回して完全な人形にした。
だが、計画は失敗した。
イレギュラーによって最後の瞬間は回避された。
それによって戦いが継続する事が確定してしまった。
その為に本物の江莉香は
紫苑を使い続けなければならなくなった。
壊れていく紫苑の体を修復しながら
延命させて来た。
だが、もう紫苑は必要ない。
江莉香がそう判断した可能性がある。
目的は俺を殺すこと。
あるいは隔離してしまえばいい。
その時まで紫苑が動いていれば、
それで全てが上手く行く。
無限の命を手に入れなくとも、
俺さえいなければ何とでも出来る。
それが恐らくは本物の出した答え。
花梨はそう判断した。
そして紫苑はその通りに行動した。
組織化された仲間は江莉香にとって厄介な存在だ。
俺を助けに動き出したとしたら、
普通の場所ではすぐに見つけられてしまう。
だから誰も辿り着けない場所、
誰かがゲートを開いて行く事の出来ない場所、
そこに俺を隔離する事で
仲間が俺を捜し出せないようにした。
だが、紫苑は一つ見落としていた。
いや、花梨が過去にした事を知らなかった。
俺をこの世界に誘う為に、
無限のゲートを開いた花梨だけは、
かつてこの場所にゲート開いた事がある。
花梨だけは俺に辿り着く可能性を持っていた。
ただ、俺との共鳴を頼りにどのゲートがそれに該当するか、
それを調べるのに時間がかかり過ぎれば手遅れになる。
今回間に合ったのは本当に偶然に過ぎないと語った。
そう語りながらも、花梨の表情は晴れやかだ。
思えば花梨は常に自分を責め続けていた。
芙蓉を失った時、間に合わなかった自分を何度も責めた。
朱天を失った時、自分の非力さを嘆いた。
ティアナの両親を失った時、自分の詰めの甘さに怒りさえ覚えた。
アンネリーゼの両親を失った時、
無関係な人間を巻き込んでしまった事を後悔した。
二度と誰かの命を取りこぼさないと、
絶対に間に合わせてみせると花梨は誓っていた。
だから、これは自分の為にやった事だと彼女は言う。
確かに俺を救う事はできた。
葉月も長年抱え続けてきた想いを、
両親の敵を討つことはできた。
だが、失った物は無限の命と……
「あんたが何でそういう顔をしてるのか知らない。
アタシの言う事が気休めになる事もある。
黙って聞いててくれ」
花梨は言う、紫苑の体は既に壊れていた。
自身の延命を続ける事しか出来ない程に。
新たな機能を付け加える余地はない。
そして実際に花梨が調べた結果、
紫苑の体に命を吸う機能が存在しなかった。
機械化因子は人を殺す時にエネルギーを得る。
それは確かに体液からエネルギーを得る行為だ。
そして俺と繋がり続ける事によって
延命処置を続けていた。
体液を得る行為は続けなければならないが、
体液を出す事は自殺行為だ。
そこまで言った後、花梨は俺の顔を覗き込んだ。
「あんたが何を見て、何を聞かされたのかは解らない。
けど、紫苑はもう壊れてたんだ。
何が本当で何が嘘なのか、自分でも解らないぐらいにな」
そうか……花梨と葉月がつい先刻ここに来たと思っていたが……
俺の考えに気付いたのか、花梨が更に続ける。
「ちょっとは信用してやったらどうなんだ?
あの子らはあんたの為に戦ってる。
あんたの為に組織化までした。
惚れた男が本物か偽物か、
そんなもん一発で見抜いちまう。
自分がどれだけ惚れられてるのか、少しは自覚しとけ」
その言葉にある事を確認しようとしたが、
花梨は俺の言葉を遮った。
「紫苑が木偶って呼んだあいつもそうさ。
プロトタイプだって?
どう見たってオーバースペックの
コンセプトモデルだろ?
しかも鍵持ちになったんだ。
劣化版の物量に押される事はあるだろうさ、
だからって負けると思うか?」
……確かに、彼女の強さは俺も知っている。
けど、紫苑は……
「シティ内の組織化、空中要塞アヴァロン。
あんたの知らない間にな、
みんなが連携してるんだ。
確かにシティで機械化因子が暴れた。
機械化リーパーも暴れまくってやがった。
ソルジャーも現れたよ。
けどな、ビーストだけだ。
ボーグタイプは来ちゃいない。
エデルガルトは姿さえ見せてなかった。
これだけ言えば解るか?」
俺が見た映像、そして声。
その中には真実が存在する。
そして嘘も。
「これ以上はアタシが語っても無意味だろ。
紫苑にはもう何が嘘で何が真実なのか解ってない。
けど、嘘も真実もそこにある。
あんた自身の目見たもの、耳で聞いた事、
そこには嘘と真実が混在してる。
仲間が1人ギフトに目覚めたのは間違いない。
結局はアンタが判断するだけだ」
そうだ、全ては俺が判断するしかない。
俺の表情に満足したのか、
花梨は最後にこう言った。
「戻ってやれよ。
そこであいつらに会ってやればいい。
あの笑顔を見て、どう思うのかはあんた次第だ」
ああ、シティに戻ろう。
だが、それよりももっと大きな問題がある。
無限の命はまんまと敵に奪われた。
これで決定してしまったんだ。
俺はその事実を花梨に伝えた。
「もう世界の終わりは止められない。
あの人のスペアが暴走を始めたら手の打ちようがない
あたしの見たヴィジョンが現実の物になっちまうだろうな」
花梨は表情を曇らせ、肩を落とした……かに見えた。
「あたし達の敗北は決定しちまった。
絶望的な状況、普通ならそう考える……けど、違うよな? 」
そう語る花梨に葉月が付け加える。
「そうそう、今は最悪の状況かも知れないけど、敵はまだ暴走してない。
って事はさ……まだ終わってない。
チャンスだよね、これは凄くチャンスじゃないかな」
「諦めないよ、てんちょ〜からの依頼でもあるし、やらなきゃいけない事だしね。
ルーキー君はどうするの? 」
それは、瑠香が暴走を開始する前に止める事が出来れば、
まだ世界の終わりを回避出来る可能性がある事を物語っていた。
俺の答えは決まっていた。
「だったら何も言う事はないかな」
葉月の言葉に花梨が付け加える。
「言う事はあるだろ? その為に連れて来てやったんだ、忘れてんじゃねえよ」
「おっとそうでした。えっとね、シティの中が大変なんだよね。
機械化リーパーとかはみんなでやっつけたみたいなんだけど。
ビーストが暴れまくってるの、大変でしょ?
それは何故かと言うと、敵を倒せるあたしとルーキー君が
こんなとこに居るから、あっちは今凄く大変なんだよ」
「間に合わなかったら哀しいよ、それはすっごく哀しい事だよ。
でも、間に合わせるんだよね?」
葉月の言葉に今度は花梨が付け加える。
「当たり前だろ? って事で、シティまであんたを送る。
まずは暴れ回ってる敵を何とかしてくれ。
覚悟しとけよ、何せ敵はタイプビーストだからな」
まだ1度も戦った事のない敵、
けれど、その脅威は彼女から聞かされている。
同じソルジャーの彼女から。
「結構好き放題暴れてるんだよね、みんなが頑張ってるんだけど、
被害を最小限に抑えるのが精一杯って感じ? 大変だよね、すっごく大変だよ」
いつもなら葉月は真っ先に駆けつける。
なのに、今回は妙に他人事の様に語る。
先刻も花梨は俺に何とかしてくれと言った。
だとすると……
「ああ、アタシと葉月はシティに合流しない。
このまま本物の江梨香を追う。
機械化因子の解析はもう終わってるからな、
ヤツがどこに隠れていても探し出せる」
「それにね、どうやったって殺す事になる。
だったらその仕事は2人でやるべきだよね。
他の子達にそれはさせられないよ」
解析が終わってる?
その疑問に答えてくれたのは葉月だった。
「誰かが持ち帰った紫苑の腕はね、
アヴァロン島で解析されてたんだ、凄いでしょ。
あの島もある意味隔離されてるから、
外からの信号なんて受け付けない。
なんかね、バイクの後に乗ってたその子が、
アヴァロン島に運んで欲しいって言ったそうだよ。
騙し合いはこっちの勝ちって事かな」
更に葉月が何かを話そうとしたが、
花梨がそれを制した。
「種明かしはもういい、時間がないのは解ってるよな?」
ああ、俺のせいで敵に無限に命が渡ってしまった。
時間がどれだけ残されているのかは解らない。
だが、今動かなければ確実に世界が終わってしまう。
シティ内ではビーストが暴れている。
恐らく本物の江莉香求めている結果は混乱、
あるいは時間を稼ぎだ。
暴走を開始する為にはまだ何か手順がある。
その為に時間稼ぎが必要だとしたら、
まだ俺達にも勝機がある筈だ。
その表情で俺にもう準備が
出来ている事を悟った花梨は目の前にゲートを作り出す。
そして最後にこう俺に告げた。
「用意周到な江莉香の事だ、
時間稼ぎがビーストだけ、なんて事はないだろう。
他にも手を打ってる筈だ、
あんたはそれを何とかしてくれ」
俺は黙って頷いた。
「アタシと葉月は江莉香を捕まえて倒す。
そして瑠香をぶちのめして暴走を止める。
けど、アタシ達じゃ刃が立たない可能性もある」
大丈夫だ、敵の時間稼ぎを全て処理し追えたら
すぐにそっちへ合流する。
「だったらいい、ああそれと葉月。
それをこいつに渡してやってくれ」
「おっけ〜、じゃあこれをルーキー君に。
紫苑のね、僅かに残った肉体の欠片。
他は全部機械になっちゃってたからこれしかないの。
再生出来る可能性はゼロじゃない。
記憶を遡らせる子の力と
みんなの力を合わせれば人間に戻れるかも知れない。
戻ったとしても7歳児の女の子になっちゃうけど、
あのまま死んでるよりはマシだと思うな」
最初から助ける為に?
その問いに葉月は答えない。
その裏にある心境も表情から読み取らせない。
そして葉月が紫苑を殺したのも事実だ。
俺は黙ってそれを受け取った。
もうこれで準備は整った。
急ごう、まだ世界を救う事は出来る筈だ。
半ば強引に主人公と体を繋げ続けた江莉香は、
自分の体に起こるある異変に気付いた。
規則正しい明滅を繰り返すクリスタルの瞳は、
今や不規則な輝きを放っている。
何が起きているのかは解らない、
だが、フラフラと立ち上がり、
機械仕掛けの自分を見て、俺を見つめる。
何故かその目からは狂気の光が感じられなかった。
「違うの……違う! 私は……」
そこで江莉香は、いやかつて江莉香だったものは停止した。
何者かが背中を突き刺し、胸を貫いた。
その手に握られていた物は、機械仕掛けの心臓だった。
「知ってるよ、紫苑。江莉香に心を壊され、
利用されるだけ利用された犠牲者。
身も心もボロボロになりながら代役をさせられていた可哀想な子。
貴方もそうね、被害者かも知れない。けど」
「貴方はたくさん殺した。
親友の両親、そして私のお父さんとお母さん……
犠牲者だから? 操られてたから? それで許すと思う?」
そこに居たのは加賀見葉月、そして花梨だった。
「その体、もう再生さえ出来ないんでしょ?
延命し続けなきゃならない程壊れてるんだよね」
ひとこと話す毎に、葉月は握り込んだ心臓に力を込める。
その度に江莉香、いや紫苑と呼ばれた少女は痙攣を繰り返す。
「無理よ、貴方は江莉香になれない、紫苑にも戻れない。
人間にさえ戻れないガラクタ」
これは本当に俺の知ってる葉月なのか?
そう思える程に冷酷な眼差しをしていた。
「違うか、人間には戻れるかもしれないね。
けどそんな事絶対に許さない、ガラクタはこのままここで朽ち果てなさい」
そう言うなり、葉月は掴んでいた機械仕掛けの心臓を握りつぶし、
そのまま強引に腕を引き抜く。
紫苑は哀しげな顔を浮かべたまま、機能を完全に停止して崩れ落ちて行く。
そうか……葉月は、彼女は……
ずっと追い続けていた敵。
両親の敵、その相手と遂に倒す事が出来た。
葉月の復讐がようやく終わったのか。
彼女は俺を振り返る事なく天を仰ぎ、しばらくその姿勢を保っていた。
頬を伝う涙が一瞬見えたのは見間違いではない。
しばらくして、大きく深呼吸をした葉月はこちらへ振り返る。
それはいつもの葉月の顔だった。
「こんな所で一人ぼっちは寂しいよ、それはとっても寂しい事だよ。
だからね、そんなルーキー君の為に来てあげたんだよ。花梨ちゃんと一緒にね」
花梨は少し照れくさそうな顔をして、一言だけ口にした。
「あたしはずっと間に合わなかった。今までずっとそうだった。
もう……そんなのはコリゴリなんだよ。
だから死にものぐるいで間に合わせた、ギリギリだったけどな」
花梨は語る。
シティの安全は他のみんなに任せて、自分はずっと江莉香を追っていたこと。
葉月もまた独自に江莉香を探していたこと。
二人にはそうする理由があった。
そこに違和感があったからだ。
それは香月まゆかの事件にまで遡る。
あの時、江莉香は姿を現した。
正確にはほんの一瞬だけ姿を変える瞬間が映されていた。
機械化リーパーをバラ撒いた事もそうだ。
結果的にこちらの組織化を促した。
いつからこの世界を終わらせる為に潜んでいたのかは解らない。
千年以上潜んでいた可能性も否めない。
普通の人間では叶わない化け物、それが江莉香だ。
だからこそ、用意周到な江莉香が
わざわざそんなミスをするとは考えられなかった。
あの時点で正体を明かし、それを致命的なミスだと誤認させる。
それが狙いなら確実に効果を発揮している。
こちらのミスリードを誘う、その可能性を疑いきれなかった。
だが疑う事にした、そうしなければならないと思った。
あの機械を江莉香だと思わせようとしている本物の存在がいる事を。
けれど、すぐに情報が手に入るとは思えない、
相手が本物なら、もっと狡猾だ。
だから、瑠璃を頼る事にした。
彼女の持つ本なら何かを引き出せる可能性がある。
嫌がる本人を連れ出し、安全だと思える場所で
その調査を開始した。
この疑問が正しいのなら、
何としても本物を暴かねばならない。
当然花梨は江莉香について調べた所で何も出ては来ない事は知っていた。
けれど、他を調べる事で見つかる事もある、
そして瑠璃が持っている図書館の本はそれが可能だ。
疑うべきは一人、あの時あの場に居た江莉香、
その江莉香が名指しでそっとしておこうと提案した人物。
紫苑だ。
紫苑は心を犠牲にした。
まともな判断も出来ない、だから仲間内でそっとしておこうと決めた。
仲間がそんな状態になっているのなら、
どんな事をしても正常に戻す努力を行った筈だ。
だが、自分達はそうしなかった。
そっとしておく事で紫苑の存在を隠してしまった。
それを提案したのは江莉香だ。
認識を変えられていたなら、もっと早くに気付く事が出来た筈だ。
あえて提案し、全員を納得させる手を使ったのは、
江莉香の存在が明らかになった場合、
変えられていた認識を辿る事でバレてしまう。
その疑いを逸らす為ではなかったのか?
花梨はその疑問を調べるべきだと確信した。
だからこそ紫苑を調べた。
そして瑠璃が紫苑に関わる本の中からその一節を見つけた。
驚くべき事に、江莉香が紫苑と入れ替わったのは、
紫苑がまだ7歳の時だった。
何も知らない紫苑は、自分が江莉香だと信じて生きていた。
その時が来る迄は、江莉香は紫苑の認識を変え、
ただお互いが入れ替わっていたに過ぎなかった。
そしてその時が来た。
当然紫苑も選ばれるべき存在だ。
あの夢を見る事になる。
そしてその夢を見た事をトリガーにして、
紫苑は2つ目が送り込んできた刺客としての自覚を得た。
江莉香が何故紫苑を選んだのか、
どんな手を使ったのかは解らない。
だが確実に鍵持ちになる人間を
見つける術を持っていたと考えられる。
紫苑はたまたま江莉香に選ばれただけだ、
自分達が選ばれていた可能性もある。
花梨はそう語った。
確かにその可能性は否めない。
だが紫苑は選ばれてしまった。
そして紫苑と江莉香は入れ替わり、あの場に立った。
最初から紫苑は江莉香としてみんなの前に居た。
だから誰も気付けなかった。
紫苑に扮した江莉香があの場に来たのは鍵持ちの中では一番最後、
あるいはその次だった筈だと花梨は言う。
だからそれまでに消えてしまった槐の存在を江莉香は知らない。
その場に居た全員に対し、
江莉香が紫苑に関わらないように伝えた事を槐は知らない。
花梨に扮してドールショップに居た江莉香は紫苑だ。
江莉香本人ではない。
だから江莉香はずっと槐の存在を知らずに居る。
それがきっと、これからの戦いにおいて
とても重要な役割を果たすだろう。
花梨はそう言っていた。
江莉香は姿を隠していたのではなく、
ずっと紫苑として行動していた。
誰にも疑われる事が無い状態で、好きに行動出来た。
そこまで調べ上げた時、
花梨は手に持つ鎌の共鳴が弱くなって行くのを感じた。
かつて朱天に貰った鎌は、互いの無事を確認する為のものだ。
そして今は、仲間同士が共鳴しあうようになってはいるが、
特に俺との共鳴を強くする様にしてあったらしい。
それが弱くなっている。
慌てて花梨は鍵を持つ他のメンバー、
そしてギフトホルダー、仲間を経由して冴香に確認を取った。
共鳴が弱くなる理由はたった一つ。
誰かがゲートを開き、俺をどこか別の場所へ送った時だけだ。
だが、誰もゲートを開いていない。
だとすれば、それは江莉香、いや紫苑の仕業だ。
このタイミングで俺をゲートの向こうへ連れて行く。
それは決着を付ける為の行為。
最悪の事態に陥っている事に他ならない。
最悪の事態、それは瑠璃の調査によって
ある事実が発覚していたからこその事態。
紫苑の体はもうボロボロだと言う事だ。
本物の江莉香が計画していた事、
それはあの最後の戦いで全てに決着を付ける事。
身代わりとなった紫苑はその時まで使えればいい。
だから無理な改造を施した。
脳を直接かき回して完全な人形にした。
だが、計画は失敗した。
イレギュラーによって最後の瞬間は回避された。
それによって戦いが継続する事が確定してしまった。
その為に本物の江莉香は
紫苑を使い続けなければならなくなった。
壊れていく紫苑の体を修復しながら
延命させて来た。
だが、もう紫苑は必要ない。
江莉香がそう判断した可能性がある。
目的は俺を殺すこと。
あるいは隔離してしまえばいい。
その時まで紫苑が動いていれば、
それで全てが上手く行く。
無限の命を手に入れなくとも、
俺さえいなければ何とでも出来る。
それが恐らくは本物の出した答え。
花梨はそう判断した。
そして紫苑はその通りに行動した。
組織化された仲間は江莉香にとって厄介な存在だ。
俺を助けに動き出したとしたら、
普通の場所ではすぐに見つけられてしまう。
だから誰も辿り着けない場所、
誰かがゲートを開いて行く事の出来ない場所、
そこに俺を隔離する事で
仲間が俺を捜し出せないようにした。
だが、紫苑は一つ見落としていた。
いや、花梨が過去にした事を知らなかった。
俺をこの世界に誘う為に、
無限のゲートを開いた花梨だけは、
かつてこの場所にゲート開いた事がある。
花梨だけは俺に辿り着く可能性を持っていた。
ただ、俺との共鳴を頼りにどのゲートがそれに該当するか、
それを調べるのに時間がかかり過ぎれば手遅れになる。
今回間に合ったのは本当に偶然に過ぎないと語った。
そう語りながらも、花梨の表情は晴れやかだ。
思えば花梨は常に自分を責め続けていた。
芙蓉を失った時、間に合わなかった自分を何度も責めた。
朱天を失った時、自分の非力さを嘆いた。
ティアナの両親を失った時、自分の詰めの甘さに怒りさえ覚えた。
アンネリーゼの両親を失った時、
無関係な人間を巻き込んでしまった事を後悔した。
二度と誰かの命を取りこぼさないと、
絶対に間に合わせてみせると花梨は誓っていた。
だから、これは自分の為にやった事だと彼女は言う。
確かに俺を救う事はできた。
葉月も長年抱え続けてきた想いを、
両親の敵を討つことはできた。
だが、失った物は無限の命と……
「あんたが何でそういう顔をしてるのか知らない。
アタシの言う事が気休めになる事もある。
黙って聞いててくれ」
花梨は言う、紫苑の体は既に壊れていた。
自身の延命を続ける事しか出来ない程に。
新たな機能を付け加える余地はない。
そして実際に花梨が調べた結果、
紫苑の体に命を吸う機能が存在しなかった。
機械化因子は人を殺す時にエネルギーを得る。
それは確かに体液からエネルギーを得る行為だ。
そして俺と繋がり続ける事によって
延命処置を続けていた。
体液を得る行為は続けなければならないが、
体液を出す事は自殺行為だ。
そこまで言った後、花梨は俺の顔を覗き込んだ。
「あんたが何を見て、何を聞かされたのかは解らない。
けど、紫苑はもう壊れてたんだ。
何が本当で何が嘘なのか、自分でも解らないぐらいにな」
そうか……花梨と葉月がつい先刻ここに来たと思っていたが……
俺の考えに気付いたのか、花梨が更に続ける。
「ちょっとは信用してやったらどうなんだ?
あの子らはあんたの為に戦ってる。
あんたの為に組織化までした。
惚れた男が本物か偽物か、
そんなもん一発で見抜いちまう。
自分がどれだけ惚れられてるのか、少しは自覚しとけ」
その言葉にある事を確認しようとしたが、
花梨は俺の言葉を遮った。
「紫苑が木偶って呼んだあいつもそうさ。
プロトタイプだって?
どう見たってオーバースペックの
コンセプトモデルだろ?
しかも鍵持ちになったんだ。
劣化版の物量に押される事はあるだろうさ、
だからって負けると思うか?」
……確かに、彼女の強さは俺も知っている。
けど、紫苑は……
「シティ内の組織化、空中要塞アヴァロン。
あんたの知らない間にな、
みんなが連携してるんだ。
確かにシティで機械化因子が暴れた。
機械化リーパーも暴れまくってやがった。
ソルジャーも現れたよ。
けどな、ビーストだけだ。
ボーグタイプは来ちゃいない。
エデルガルトは姿さえ見せてなかった。
これだけ言えば解るか?」
俺が見た映像、そして声。
その中には真実が存在する。
そして嘘も。
「これ以上はアタシが語っても無意味だろ。
紫苑にはもう何が嘘で何が真実なのか解ってない。
けど、嘘も真実もそこにある。
あんた自身の目見たもの、耳で聞いた事、
そこには嘘と真実が混在してる。
仲間が1人ギフトに目覚めたのは間違いない。
結局はアンタが判断するだけだ」
そうだ、全ては俺が判断するしかない。
俺の表情に満足したのか、
花梨は最後にこう言った。
「戻ってやれよ。
そこであいつらに会ってやればいい。
あの笑顔を見て、どう思うのかはあんた次第だ」
ああ、シティに戻ろう。
だが、それよりももっと大きな問題がある。
無限の命はまんまと敵に奪われた。
これで決定してしまったんだ。
俺はその事実を花梨に伝えた。
「もう世界の終わりは止められない。
あの人のスペアが暴走を始めたら手の打ちようがない
あたしの見たヴィジョンが現実の物になっちまうだろうな」
花梨は表情を曇らせ、肩を落とした……かに見えた。
「あたし達の敗北は決定しちまった。
絶望的な状況、普通ならそう考える……けど、違うよな? 」
そう語る花梨に葉月が付け加える。
「そうそう、今は最悪の状況かも知れないけど、敵はまだ暴走してない。
って事はさ……まだ終わってない。
チャンスだよね、これは凄くチャンスじゃないかな」
「諦めないよ、てんちょ〜からの依頼でもあるし、やらなきゃいけない事だしね。
ルーキー君はどうするの? 」
それは、瑠香が暴走を開始する前に止める事が出来れば、
まだ世界の終わりを回避出来る可能性がある事を物語っていた。
俺の答えは決まっていた。
「だったら何も言う事はないかな」
葉月の言葉に花梨が付け加える。
「言う事はあるだろ? その為に連れて来てやったんだ、忘れてんじゃねえよ」
「おっとそうでした。えっとね、シティの中が大変なんだよね。
機械化リーパーとかはみんなでやっつけたみたいなんだけど。
ビーストが暴れまくってるの、大変でしょ?
それは何故かと言うと、敵を倒せるあたしとルーキー君が
こんなとこに居るから、あっちは今凄く大変なんだよ」
「間に合わなかったら哀しいよ、それはすっごく哀しい事だよ。
でも、間に合わせるんだよね?」
葉月の言葉に今度は花梨が付け加える。
「当たり前だろ? って事で、シティまであんたを送る。
まずは暴れ回ってる敵を何とかしてくれ。
覚悟しとけよ、何せ敵はタイプビーストだからな」
まだ1度も戦った事のない敵、
けれど、その脅威は彼女から聞かされている。
同じソルジャーの彼女から。
「結構好き放題暴れてるんだよね、みんなが頑張ってるんだけど、
被害を最小限に抑えるのが精一杯って感じ? 大変だよね、すっごく大変だよ」
いつもなら葉月は真っ先に駆けつける。
なのに、今回は妙に他人事の様に語る。
先刻も花梨は俺に何とかしてくれと言った。
だとすると……
「ああ、アタシと葉月はシティに合流しない。
このまま本物の江梨香を追う。
機械化因子の解析はもう終わってるからな、
ヤツがどこに隠れていても探し出せる」
「それにね、どうやったって殺す事になる。
だったらその仕事は2人でやるべきだよね。
他の子達にそれはさせられないよ」
解析が終わってる?
その疑問に答えてくれたのは葉月だった。
「誰かが持ち帰った紫苑の腕はね、
アヴァロン島で解析されてたんだ、凄いでしょ。
あの島もある意味隔離されてるから、
外からの信号なんて受け付けない。
なんかね、バイクの後に乗ってたその子が、
アヴァロン島に運んで欲しいって言ったそうだよ。
騙し合いはこっちの勝ちって事かな」
更に葉月が何かを話そうとしたが、
花梨がそれを制した。
「種明かしはもういい、時間がないのは解ってるよな?」
ああ、俺のせいで敵に無限に命が渡ってしまった。
時間がどれだけ残されているのかは解らない。
だが、今動かなければ確実に世界が終わってしまう。
シティ内ではビーストが暴れている。
恐らく本物の江莉香求めている結果は混乱、
あるいは時間を稼ぎだ。
暴走を開始する為にはまだ何か手順がある。
その為に時間稼ぎが必要だとしたら、
まだ俺達にも勝機がある筈だ。
その表情で俺にもう準備が
出来ている事を悟った花梨は目の前にゲートを作り出す。
そして最後にこう俺に告げた。
「用意周到な江莉香の事だ、
時間稼ぎがビーストだけ、なんて事はないだろう。
他にも手を打ってる筈だ、
あんたはそれを何とかしてくれ」
俺は黙って頷いた。
「アタシと葉月は江莉香を捕まえて倒す。
そして瑠香をぶちのめして暴走を止める。
けど、アタシ達じゃ刃が立たない可能性もある」
大丈夫だ、敵の時間稼ぎを全て処理し追えたら
すぐにそっちへ合流する。
「だったらいい、ああそれと葉月。
それをこいつに渡してやってくれ」
「おっけ〜、じゃあこれをルーキー君に。
紫苑のね、僅かに残った肉体の欠片。
他は全部機械になっちゃってたからこれしかないの。
再生出来る可能性はゼロじゃない。
記憶を遡らせる子の力と
みんなの力を合わせれば人間に戻れるかも知れない。
戻ったとしても7歳児の女の子になっちゃうけど、
あのまま死んでるよりはマシだと思うな」
最初から助ける為に?
その問いに葉月は答えない。
その裏にある心境も表情から読み取らせない。
そして葉月が紫苑を殺したのも事実だ。
俺は黙ってそれを受け取った。
もうこれで準備は整った。
急ごう、まだ世界を救う事は出来る筈だ。
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