麒麟(きりん)
イージーステージ
ノーマルステージ
EXステージ
※早くクリアすればするほど、豪華報酬になる。
ノーマルステージクリア報酬
プレミアムガチャチケット×3
スタミナ回復
コンティニューチケット
フレンドポイント2000FP
[大強化]ユニケル×2
[タグ昇華]音紫苑
[転生7_9]輪花
[ご褒美]きりん
[フェアリーチェンジ]セラフィナ
[SRメイクアップ]SPアプレンティス
[EXベース]イルナセウス
脱衣チケット×2
EXステージクリア報酬
[学生時代]あおい
[人間化素材]愛理のお菓子カゴ
ハロウィンの帽子×3
パンプキン150個
プレミアムガチャチケット×3
スタミナ回復
コンティニューチケット
フレンドポイント2000FP
[大強化]ユニケル×2
[タグ昇華]音紫苑
[転生7_9]輪花
[ご褒美]きりん
[フェアリーチェンジ]セラフィナ
[SRメイクアップ]SPアプレンティス
[EXベース]イルナセウス
脱衣チケット×2
EXステージクリア報酬
[学生時代]あおい
[人間化素材]愛理のお菓子カゴ
ハロウィンの帽子×3
パンプキン150個
ノーマルステージクリア報酬
プレミアムガチャチケット×2
スタミナ回復
コンティニューチケット
フレンドポイント2000FP
[大強化]ユニケル
[タグ昇華]音紫苑
[転生7_9]輪花
[ご褒美]きりん
[SRメイクアップ]SPアプレンティス×2
[ひよこ]イルナス
脱衣チケット
EXステージクリア報酬
[人間化素材]愛理のお菓子カゴ
ハロウィンの帽子×2
パンプキン50個
プレミアムガチャチケット×2
スタミナ回復
コンティニューチケット
フレンドポイント2000FP
[大強化]ユニケル
[タグ昇華]音紫苑
[転生7_9]輪花
[ご褒美]きりん
[SRメイクアップ]SPアプレンティス×2
[ひよこ]イルナス
脱衣チケット
EXステージクリア報酬
[人間化素材]愛理のお菓子カゴ
ハロウィンの帽子×2
パンプキン50個
・[転生1_3]輪花
・[転生3_5]輪花
・[転生5_7]輪花
・[転生7_9]輪花
・[10月ランキング]きりん
・[熱血教育者]しゅうこ
・プレミアムガチャチケット 4枚
・[泡姫]メロン 10体
・[泡姫]ピーチ 10体
・ゴールド 200000G
・フレンドポイント 40000FP
・スタミナ回復 10個
・コンティニューチケット 10枚
・脱衣チケット 2枚
・パンプキン 150個
・[転生3_5]輪花
・[転生5_7]輪花
・[転生7_9]輪花
・[10月ランキング]きりん
・[熱血教育者]しゅうこ
・プレミアムガチャチケット 4枚
・[泡姫]メロン 10体
・[泡姫]ピーチ 10体
・ゴールド 200000G
・フレンドポイント 40000FP
・スタミナ回復 10個
・コンティニューチケット 10枚
・脱衣チケット 2枚
・パンプキン 150個
・[転生1_3]輪花
・[転生3_5]輪花
・[転生5_7]輪花
・[10月ランキング]きりん
・[熱血教育者]しゅうこ
・プレミアムガチャチケット 3枚
・[泡姫]メロン 7体
・[泡姫]ピーチ 7体
・ゴールド 100000G
・フレンドポイント 20000FP
・スタミナ回復 5個
・コンティニューチケット 5枚
・脱衣チケット 2枚
・パンプキン 150個
・[転生3_5]輪花
・[転生5_7]輪花
・[10月ランキング]きりん
・[熱血教育者]しゅうこ
・プレミアムガチャチケット 3枚
・[泡姫]メロン 7体
・[泡姫]ピーチ 7体
・ゴールド 100000G
・フレンドポイント 20000FP
・スタミナ回復 5個
・コンティニューチケット 5枚
・脱衣チケット 2枚
・パンプキン 150個
・[転生1_3]輪花
・[転生3_5]輪花
・[10月ランキング]きりん
・[熱血教育者]しゅうこ
・プレミアムガチャチケット 2枚
・[泡姫]メロン 5体
・[泡姫]ピーチ 5体
・ゴールド 50000G
・フレンドポイント 10000FP
・スタミナ回復 3個
・コンティニューチケット 3枚
・脱衣チケット 2枚
・パンプキン 150個
・[転生3_5]輪花
・[10月ランキング]きりん
・[熱血教育者]しゅうこ
・プレミアムガチャチケット 2枚
・[泡姫]メロン 5体
・[泡姫]ピーチ 5体
・ゴールド 50000G
・フレンドポイント 10000FP
・スタミナ回復 3個
・コンティニューチケット 3枚
・脱衣チケット 2枚
・パンプキン 150個
・[転生1_3]輪花
・[10月ランキング]きりん
・[熱血教育者]しゅうこ
・[泡姫]メロン 3体
・[泡姫]ピーチ 3体
・プレミアムガチャチケット 1枚
・ゴールド 25000G
・フレンドポイント 7500FP
・スタミナ回復 1個
・コンティニューチケット 1枚
・脱衣チケット 1枚
・パンプキン 50個
・[10月ランキング]きりん
・[熱血教育者]しゅうこ
・[泡姫]メロン 3体
・[泡姫]ピーチ 3体
・プレミアムガチャチケット 1枚
・ゴールド 25000G
・フレンドポイント 7500FP
・スタミナ回復 1個
・コンティニューチケット 1枚
・脱衣チケット 1枚
・パンプキン 50個
・[転生1_3]輪花
・[10月ランキング]きりん
・[熱血教育者]しゅうこ
・[泡姫]メロン
・[泡姫]ピーチ
・ゴールド 25000G
・フレンドポイント 5000FP
・スタミナ回復 1個
・コンティニューチケット 1枚
・パンプキン 20個
・[10月ランキング]きりん
・[熱血教育者]しゅうこ
・[泡姫]メロン
・[泡姫]ピーチ
・ゴールド 25000G
・フレンドポイント 5000FP
・スタミナ回復 1個
・コンティニューチケット 1枚
・パンプキン 20個
上段 イベント限定素材
下段 通常クエスト素材
どちらでも進化可
---
---
---
---
---
---
---
---
---
---
下段 通常クエスト素材
どちらでも進化可
- 1.[はじまり]イル→[たまご]イルナ
- レベル5(MAX) 必要経験値:9520
- 進化素材
---
---
---
- 2.[たまご]イルナ→[ひよこ]イルナス
- レベル15(MAX) 必要経験値:29896
- 進化素材
---
---
---
- 3.[ひよこ]イルナス→[こっこ]イルナシア
- レベル30(MAX) 必要経験値:73537
- 進化素材
- [咎人]いおり+ Lip
- [咎人]しんく+ Bust
---
---
- 4.[こっこ]イルナシア→[EXベース]イルナセウス
- レベル50(MAX) 必要経験値:205602
- 進化素材
- [咎人]まおり+ Hip
- [咎人]ゆう+ Body
---
---
- 5.[EXベース]ミリナセウス→[EX]ご褒美ドール
- レベル99(MAX) 必要経験値:974999
- 進化素材
- ご褒美ドール
- 1.[めばえ]ホロ2nd→[しんめ]ホロ2nd
- レベル5(MAX) 必要経験値:9520
- 進化素材
- [咎人]まおり
- 2.[しんめ]ホロ2nd→[つぼみ]ホロ2nd
- レベル15(MAX) 必要経験値:29896
- 進化素材
- [咎人]ゆう
- 3.[つぼみ]ホロ2nd→[開花]ホロ2nd
- レベル30(MAX) 必要経験値:73537
- 進化素材
- [咎人]いおり+
- 4.[開花]ホロ2nd→[満開]ホロ2nd
- レベル50(MAX) 必要経験値:205602
- 進化素材
- [咎人]しんく+
- 5.[満開]ホロ2nd
- レベル99(MAX) 必要経験値:974999
- 6.レイド特攻への進化
- [つぼみ]ホロ2nd→[見習いスケーター]ホロ
- 進化素材
- [熱血教育者]しゅうこ
- [開花]ホロ2nd→[一流スケーター]ホロ
- 進化素材
- [熱血教育者]しゅうこ
- [満開]ホロ2nd→[凄腕スケーター]ホロ
- 進化素材
- [熱血教育者]しゅうこ
[熱血教育者]しゅうこはイベントランキング1000位以内の報酬
ホロ2ndとあわせて進化すると次回レイド用ドールが完成するが
ホロ2ndの進化度合いによって進化後のレア度も変わってくる
ドール名 | 属性 | 進化/生成 | 進化・生成先 | 進化元 (レベル最大値) | 素材 (レベル1でOK) |
---|---|---|---|---|---|
[ご褒美]きりん | Hip | 進化 | [EX渡り人]きりん | [EXベース]エルナセウス [EXベース]ユリナセウス [EXベース]サリナセウス [EXベース]ルミナセウス [EXベース]アルナセウス [EXベース]マリナセウス [EXベース]イルナセウス | [ご褒美]きりん |
生成 | [EX渡り人]きりん | ─ | [EXベース]パルナセウス | ||
[フェアリーチェンジ]セラフィナ | Body | 生成 | [オリジナルスケーター]ヒロイン [EXスケーター]ヒロイン | ― | [オリジナル]ヒロイン [EX]ヒロイン (どちらか1体。ゲーム内ヘルプ参照) |
[SRメイクアップ]SPアプレンティス | Body | 生成 | [スケーター]ヒロイン | ─ | SRヒロイン |
[タグ昇華]音紫苑 | Body | 生成 | [転生××]○○ | ─ | ヒロインを除くR5ドール(ゲーム内ヘルプ参照) |
[転生1_3]輪花 | Body | 生成 | [転生××]○○3rd [輪廻転生××]○○3rd | ─ | 1stシーズンR5及び 1stシーズン輪廻ドール (どちらか1体。ゲーム内ヘルプ参照) |
[転生3_5]輪花 | Body | 生成 | [転生××]○○5th [輪廻転生××]○○5th | ─ | 3rdシーズンR5及び3rdシーズン転生ドール 3rdシーズン輪廻ドール (どちらか1体。ゲーム内ヘルプ参照) |
[転生5_7]輪花 | Body | 生成 | [転生××]○○7th [輪廻転生××]○○7th | ─ | 5thシーズンR5及び5thシーズン転生ドール 5thシーズン輪廻ドール (どちらか1体。ゲーム内ヘルプ参照) |
[転生7_9]輪花 | Body | 生成 | [転生××]○○9th [輪廻転生××]○○9th | ─ | 7thシーズンR5及び7thシーズン転生ドール 7thシーズン輪廻ドール (どちらか1体。ゲーム内ヘルプ参照) |
イベントエピローグ
麒麟はようやく彼女にとって大切な仲間と合流出来た。
手に手を取ってドールショップへ向かう後ろ姿を眺めながら
俺は適当な場所へ腰を掛ける。
ちょうどその時、花梨からのコールがあった。
「そっちの調子はどうだ? 」
ぶっきらぼうな台詞だが、その声はこちらを心配している。
俺は麒麟が長い呪縛から解放された事を伝えた。
「そうか、そいつは良かった……こっちも終わったよ」
それは江莉香との戦いが終わった、そう告げている。
花梨は生き延びただとすると……江莉香に勝てたのか?
俺はストレートに聞いてみた。
「江莉香は仕留めた、正直負けるかと思ったよ。
けど、最後の最後で助けが届いた、そのお陰で倒せたんだ」
思い当たる事が1つだけある。
乃愛が麒麟を縛る呪縛を切り裂いた事。
俺はそれを花梨に伝えた。
「あたしが言うのも何だけど、あのチビは凄いよな。
ギフトは呪いを壊し、呪う相手を攻撃するんだって?
なるほど……それで江莉香は一瞬動きを止めた訳か」
聞けば、花梨と葉月は敵の罠を何とか凌いではいたが、
蓄積するダメージで追い詰められていたそうだ。
「あたし達の目にも見えるぐらいの密度で
黒い腕が絡み付いて来た時には焦ったよ」
江莉香が自らの体内に蓄積していた呪いの腕を
一気に解放して花梨達の動きを止めたらしい。
次に攻撃されれば回避は不可能、
そこまで追い詰められ、2人は死を覚悟していた。
だが、江莉香は突然苦しみだした。
機械の体はところどころ崩壊し、
花梨達を苦しめていた黒い腕は全て光に切り裂かれた。
麒麟を苦しみから救った乃愛のギフトは、
遠くに居る花梨達にも届いてたんだな。
その光は黒い腕を切り裂くだけでなく、
それを生み出した存在である江莉香をも攻撃する。
花梨と葉月はその瞬間を見逃さなかった。
朱天の鎌で亀裂の入った機械の体を両断し、
葉月がその心臓を砕いたそうだ。
「秋月櫛名も死んだよ、遺体はエデルガルトに持ち去られちまった。
何に使うのかは知らないけど、追いかける体力なんか残ってないし、
葉月も遺体を傷つけるのを嫌がったからな、あえて見逃したんだ。
これで残るは2人、瑠香の暴走を止めればこっちの勝ちだ」
ところで葉月は?
さっきから花梨だけが話している。
彼女が無事なのかどうか気に掛かる事もあり、
俺は花梨に聞いてみた。
「炊き出ししてるよ、助けた子供達と飯を食うそうだ。
……クレープじゃないから大丈夫だろ」
それについてはコメントを控える事にした。
「さて……こっちも戻るとする……ん?
瑠璃からだな、3者通話に切り替えるぞ」
機械に疎い俺は言われるがままに操作した。
見れば画面には瑠璃と花梨の顔が映っている。
「お疲れ様、花梨達には2人だけで戦いに行った事を
ちょっとだけ責めたいけど、2人が無事ならいいわ。
貴方には麒麟の件で、色々と迷惑をかけたね、お礼を言っておくわ」
自分の仕事をしただけだ。
俺と花梨は同時にそう話す。
「息の合う事で……ついさっき、本が出てきたの、江莉香の本よ。
死ねば何かの影響が消えるみたいね、だから突然出てきたの」
瑠璃の話す内容はこうだった。
機械化因子の影響か、あるいは2つ目の種の影響か、
敵に関わる人材は瑠璃がその情報を閲覧出来ないように
本として現れる事がなかった。
しかし今回、花梨と葉月によって江莉香は倒された。
その結果、情報を隠す必要がなくなたったのか、
瑠璃の前にその本が出現した。
当然、秋月櫛名の本も出現したらしい。
「それでね、まだ全部終わった訳じゃないし、
江莉香の本を調べたの、ここからが本題」
その言葉に何かがあると予感した花梨は
真剣な顔で瑠璃の言葉に耳を傾けた。
「江莉香は紫苑が7歳の時に入れ替わったのは本当だった、
それまではごく普通に江莉香として生きてる。
紫苑と入れ代わるまでは普通の子供として生きてたの。
体は既に機械化されてたみたいだけどね。
それはいいの、問題があるのは生まれた直後よ」
生まれた直後? 確か江莉香は肉体を得る為に
人として生まれて来た……あるいは誰かの肉体を乗っ取った
そういう事じゃ無かったのか?
「ある病院で江莉香は生まれたわ。
その日の夜、別の赤ん坊と取り替えられたの。
そして取り替えられた女の子は江莉香と名付けられた」
俺と花梨の表情が同時に変わった。
生まれたその日の内に取り替えられた?
……まさか……
「取り替えた看護師は……本がないの。
江莉香を取り上げた医者も、他のスタッフも。
取り替えられた赤ん坊も本がないの……最悪だわ」
最悪、その言葉の意味は理解出来た、
理解出来たが、花梨はそれを聞かずにはいられなかった。
「待てよ瑠璃、本がないって……まさか……
だってあたし達はついさっきまで……」
「ええ、2人が戦ってた相手は間違いなく江莉香よ。
取り替えられ、そう名付けられただけの。
本当ならごく普通の女の子よ」
また……本物じゃなかったって事か?
「本人は江莉香だと思ってたでしょうね、
生まれたときからそうなんだもの。
そう名付けられたんだもの」
だが、そうじゃない。
その子は江莉香じゃない。
「病院内の全てが本物に操られてた、
最初からそれが計画されていた筈よ、
肉体も持たず、精神だけでそれだけの事を
いとも簡単にやってのけるなんてね」
だったら、取り替えられた赤ん坊は、
自分を江莉香だと思っていたその子は、
いつからそう認識する事になったんだ?
俺の問いに、瑠璃は静かに答える。
「赤ん坊のままじゃ身動きが取れないから、
ある程度成長するまでは江莉香と名付けられた
ごく普通の女の子だったわ。
紫苑と入れ代わる1年前、ちょうど6歳の時よ。
生まれた病院に両親と共に呼び出され、
そこで両親は殺された、そしてその子は機械化されたの。
江莉香として自覚する為の証拠を揃えられ、
江莉香としての記憶を植え付けられた上でね」
待ってくれ、それじゃ……俺達のして来た事は。
「そう、何も終わってない。
その女の子も、紫苑もただの替え玉よ。
瑠香に近づけさせない為に時間を稼がれてた。
やられたわ……」
そこまで説明し、その後どうするかを考えている瑠璃に、
花梨が静かに聞く。
「ラビアの中で槐の存在を知らないヤツが後1人だけ居る。
赤ん坊の時に入れ替わったとしても、そいつの可能性が高い。
そいつを調べればいいんじゃないのか? 」
その問いに瑠璃は絶望的な顔をして答えた。
「ミントよ、最後に来たのはミント。
ねえ知ってる? あの子だけ本名じゃないの。
誰もあの子の名前を知らないの。
花梨は覚えてる? あの時のあの子の顔」
「……確か……昔に流行ってたって言う
ガングロメイクで髪も凄く盛ってた筈だ。
アイシャドウもきつかった。
幾つもつけまつげをして、とにかく凄い顔だったよ」
「あの子、自分でも言ってたよね。
メイクを落として髪も下ろせば自分でも誰だか解らなくなるって」
その言葉に花梨もある事に気付いた。
「ミントはシティの中に居る筈だろ?
……クソッ、顔も名前も解らないじゃないか!」
「そうよ、最初からずっとシティの中で一般人に混ざって
ごく普通の女の子として過ごしてる。
私達の敵は最初から私達の近くに居たのよ。
顔も名前も解らないから、誰も気付けない事を利用して」
……まずい、シティの中で普通に暮らしてる女の子。
すれ違っていたかも知れない、どこかで会話したかも知れない。
誰の目にも映る存在、だから誰にも見つけられない存在。
もし、俺の考えが正しければ……俺はそれを瑠璃に確認する。
「ええ、その通りよ。機械化因子さえ持ってない可能性があるの。
私達に敵意を見せず、シティのシステムに従って生きて居れば、
絶対に見つかりっこないもの」
そこに花梨が割って入る。
「機械化因子を持ってないなら、声紋は同じ筈だ。
シティのシステムならそれが出来るだろ? 」
「もうやってるわ。こっちの仲間が今、少しでも手がかりがないか、
シティ内をくまなく探してるの」
なら、時間さえかければ見つけられるんじゃないのか?
俺の言葉を瑠璃が遮る。
「時間があれば? またそこで時間を稼がれるの?
いつ瑠香が暴走を始めてもおかしくないのに? 」
だったらもっと効率を上げるしか手はない。
「私達の記憶からミントの声紋データを引っ張り出したの。
シティ内で録音された全ての音声データと照合してるわ。
でも、監視カメラやマイクの位置は向こうも知ってるかも知れない。
もし、それを計算して動いてるなら、絶対にみつかりっこないわ」
……確かにそうだ。
俺もシティ内のカメラに映らないよう行動する事は出来る。
実際にそれをやってみせた事もある。
顔も名前も解らない、そんな状態でどうやって
みんなは手がかりを探してるんだ?
「それぞれがそれぞれの方法で探してる。
鍵もギフトも使える物は何でも使って。
ソルジャーの痕跡も、イノガニックの気配も追いかけてる。
被害のあった場所、被害に遭った女の子、
たまたま被害に遭わなかった女の子、
可能性を全部潰して貰ってるの、決定打は声紋だけよ。
それさえも偽装されてたらもうお手上げ」
そうだ、元々シティは花梨の管轄内だった筈だ。
何か他にいい手がないか花梨に聞いてみる。
「…………」
妙だな、さっきから花梨の声が聞こえて来ない。
見ればモニタにもその姿は映っていない。
「……どうしたの? そう言えば花梨の姿が……
花梨、聞こえる? 葉月でもいいの、出てくれない?」
暫く待って見るが、何の応答も得られない。
「……まさか……ミントが? 」
”ん〜っと、あんまりそう気安く呼ばれると、
はいは〜いって出てきたくなっちゃうよね”
突然声が聞こえた。
聞き覚えの無い、いやもしかすると聞いた事のある声。
その声が聞こえたと同時に瑠璃の顔色が変わった。
明らかに知っている声なのか?
慌ててモニタを見る、花梨が消えた理由がそれなら、
花梨の居た場所に映ってる筈だ。
だが、そこには誰も居ない。
その代わり、画面越しに瑠璃と目が合った。
その目が何を語っているのか一瞬で理解した、
声は瑠璃の背後から聞こえたんだ。
その直後、瑠璃は突然意識を失ったように見え、
そして画面から姿を消した。
その代わりに聞こえたのはさっきの女の声だった。
「顔を見られるのは好きじゃないから、
映像は勘弁してね、え〜っとね、わたしがミント。
みんなが必死で探してたミントだよ」
探してた? みんなは今も必死で探してる。
「そうそう、誰も殺してないから安心してね。
みんなはもう会場に招待してあるから。
ちょっと空気が薄いけど大丈夫じゃないかな」
何だ? 何を言ってる? みんなを招待した?
「今、頭の中が???ってなってるよね。
みんなそうだったよ、何でわたしが? みたいな。
でも、理解はして貰えたと思ってるんだ。
わたしの勝手な思い込みかも知れないけど」
顔は映像に映ってない、けど首から下は
無造作に画面に映っている。
着崩した制服……やっぱりシティに居た誰かなんだな。
「疑ってるよね、すっごく怪しいよね。
また偽物かもしれないって思っちゃうよね。
何せわたしはほら、生身の体だし、
どこにも江莉香っぽさがないでしょ?」
映像で見る限り、空いた襟元から見え隠れする胸は
明らかに呼吸している動きだ。
機械化した江莉香は呼吸さえしていなかった。
「それに、すっごい美少女なんだよね、
この顔も嫌いじゃないし、スタイルもいいし。
あなた好みの体じゃないかな」
シティ内に集められている少女達は基本的に美少女だ。
個人の好みで違いはあるが、それだけで特定出来ない。
俺が出会った少女達の中から江莉香を特定しようとしている間、
その考えを全く無視するように、映像の向こうに居る少女は話を続けた。
「かつてはそう、2つ目は詰めが甘かったの。
最後まで追い詰めてたのに、いつも逆転されちゃった。
わざわざ別の種にまで来たんだよね、
ここでそんな事出来ないでしょ?」
「だから絶対に勝てると解るまで出てこない事にしてたんだ。
この意味わかる? 」
今はもう、隠れる必要がない。
絶対に勝てると解ってるから……そういう事なのか?
「そう、もう始まっちゃった。
エデルガルトが瑠香を暴走させたんだ。
ああ、櫛名は返して貰ったよ。
あの子、瑠香に吸収されたがってたから」
暴走が……始まった?
「エデルガルトもそう、死にたがってたでしょ?
瑠香に吸収されたら死んだも同然。
可愛い部下の願いを叶えてあげるなんて、
優しい上司だよね、わたしって」
待て、暴走が始まったのなら、
花梨に聞かされていた状態になる筈だ。
……ハッタリじゃないのか?
「今、わたしが嘘付いてるとか思ったでしょ?
残念だけど、本当なんだよね。
ま、そうは言っても暴走が始まっただけで、
この地球を飲み込んでから一気に膨れあがるから
ちょっとだけね、時間はかかるんだ」
時間がかかる?
もしそうなら、何か手を打てば
「もしかすると希望を持ってるみたいだから教えてあげるけど、
瑠香がこの星を飲み込むまであと30分。
あと30分しかないんだよ。
ねえ、たったそれだけの時間で何とかできる?
わたしは出来ないと思うな」
たった30分でも時間があるなら……
きっと何か手がある筈だ。
「そこで諦めるぐらいならわたしも楽なんだけど、
最後まで諦めないんだよね?
だから招待してあげる、そこにゲートを開いたから
わたしが待ってる場所までおいでよ」
その言葉が終わると同時に、
ゲートが俺の目の前に開く。
だが、おいそれと行く訳にはいかない。
この少女が偽物の可能性だってある。
「よいしょっと、わたしも場所を移動したよ。
え〜っと見えるかな? あそこに居る人達。
先に招待してあげたんだよね」
モニタ越しに何かが映し出される。
そこに映っていたのは……
「そう、ドールショップのみんな、
それと、ラビアのお友達。
その全員があそこにいるよ。
誰一人わたしに気付かなかったんだよね、
それはそれでショックな気もするけど、
正体を明かしてから捕まえたんだし問題ないよね」
ズームされていないので詳細までは解らない。
だが、見覚えのある顔がそこに並んでいる。
捕まえられたのは間違いない。
「捕まえるのに苦労したんだ。
みんな抵抗して来るし、逃げようとするしね。
でも、誰もわたしにダメージを負わせられなかった。
この意味わかる? わかるよね?」
誰もダメージを与えられない。
……何かの制約を設けているのか?
「考えるのは勝手だけどいいの?
あと28分しかないよ。
そうそう、もう1つ見せてあげる。
そこに映されてる物を見て、
私の招待を受けるのかどうか考えればいいよ」
ミント、いや本物の江莉香はそう言って、
端末を横にスライドさせた。
映されているのは……地球?
だが、あの巨大な黒点のようなものは何だ?
「あの黒いのが瑠香だよ。
どんどん地球を砕いて行ってるでしょ。
シティからはまだ見えないと思うけど、
もうすぐそこもなくなっちゃうんだ。
早く来ないと死んじゃうよ。
ここで一緒に見ようよ、地球が消える瞬間を」
地球を見下ろす場所。
みんなが捕まっているクレーター。
そうか……その場所は。
「そうだよ、ようやくわかった?
会場はここ、月なの。
わたしのティーパーティーにようこそ、
ドールマスター、それとも愚者かな?
あなたをここに招待してあげる。
誰もわたしを殺せない、もう誰も瑠香を止められない。
今更何をしても無駄だけど、あなたはここに来るよね?
私に捕まった大切な女の子達を助ける為に、違う?」
考える余地はない、今行かなきゃみんなを助けられない。
相手が偽物か本物か、それを確かめる術がない以上、
俺はこの誘いに乗らなきゃならない。
「考えは決まったみたいだね。
じゃあわたしはここで待ってる。
せっかくの紅茶も冷めちゃうから、
なるべく早く来て欲しいな」
ゆっくりティパーティをするつもりは毛頭ない。
ゲートを越えてすぐに江莉香を攻撃して、
どうすればこれを止められるのか聞き出すしかない。
「あなたは誰も助けられない。
あなたはわたしを殺す事も出来ない。
それでも最後まで諦められないなんて可哀想。
わたしがあなたを死なせてあげる、
4つ目に帰してあげるわ」
人類滅亡まで残り27分。
何としてでもこの暴走を止め、全てを終わらせる。
これが最後の戦いだ。
俺はみんなを助ける為に、
そして江莉香を倒す為に
ゲートへ飛び込んだ。
麒麟はようやく彼女にとって大切な仲間と合流出来た。
手に手を取ってドールショップへ向かう後ろ姿を眺めながら
俺は適当な場所へ腰を掛ける。
ちょうどその時、花梨からのコールがあった。
「そっちの調子はどうだ? 」
ぶっきらぼうな台詞だが、その声はこちらを心配している。
俺は麒麟が長い呪縛から解放された事を伝えた。
「そうか、そいつは良かった……こっちも終わったよ」
それは江莉香との戦いが終わった、そう告げている。
花梨は生き延びただとすると……江莉香に勝てたのか?
俺はストレートに聞いてみた。
「江莉香は仕留めた、正直負けるかと思ったよ。
けど、最後の最後で助けが届いた、そのお陰で倒せたんだ」
思い当たる事が1つだけある。
乃愛が麒麟を縛る呪縛を切り裂いた事。
俺はそれを花梨に伝えた。
「あたしが言うのも何だけど、あのチビは凄いよな。
ギフトは呪いを壊し、呪う相手を攻撃するんだって?
なるほど……それで江莉香は一瞬動きを止めた訳か」
聞けば、花梨と葉月は敵の罠を何とか凌いではいたが、
蓄積するダメージで追い詰められていたそうだ。
「あたし達の目にも見えるぐらいの密度で
黒い腕が絡み付いて来た時には焦ったよ」
江莉香が自らの体内に蓄積していた呪いの腕を
一気に解放して花梨達の動きを止めたらしい。
次に攻撃されれば回避は不可能、
そこまで追い詰められ、2人は死を覚悟していた。
だが、江莉香は突然苦しみだした。
機械の体はところどころ崩壊し、
花梨達を苦しめていた黒い腕は全て光に切り裂かれた。
麒麟を苦しみから救った乃愛のギフトは、
遠くに居る花梨達にも届いてたんだな。
その光は黒い腕を切り裂くだけでなく、
それを生み出した存在である江莉香をも攻撃する。
花梨と葉月はその瞬間を見逃さなかった。
朱天の鎌で亀裂の入った機械の体を両断し、
葉月がその心臓を砕いたそうだ。
「秋月櫛名も死んだよ、遺体はエデルガルトに持ち去られちまった。
何に使うのかは知らないけど、追いかける体力なんか残ってないし、
葉月も遺体を傷つけるのを嫌がったからな、あえて見逃したんだ。
これで残るは2人、瑠香の暴走を止めればこっちの勝ちだ」
ところで葉月は?
さっきから花梨だけが話している。
彼女が無事なのかどうか気に掛かる事もあり、
俺は花梨に聞いてみた。
「炊き出ししてるよ、助けた子供達と飯を食うそうだ。
……クレープじゃないから大丈夫だろ」
それについてはコメントを控える事にした。
「さて……こっちも戻るとする……ん?
瑠璃からだな、3者通話に切り替えるぞ」
機械に疎い俺は言われるがままに操作した。
見れば画面には瑠璃と花梨の顔が映っている。
「お疲れ様、花梨達には2人だけで戦いに行った事を
ちょっとだけ責めたいけど、2人が無事ならいいわ。
貴方には麒麟の件で、色々と迷惑をかけたね、お礼を言っておくわ」
自分の仕事をしただけだ。
俺と花梨は同時にそう話す。
「息の合う事で……ついさっき、本が出てきたの、江莉香の本よ。
死ねば何かの影響が消えるみたいね、だから突然出てきたの」
瑠璃の話す内容はこうだった。
機械化因子の影響か、あるいは2つ目の種の影響か、
敵に関わる人材は瑠璃がその情報を閲覧出来ないように
本として現れる事がなかった。
しかし今回、花梨と葉月によって江莉香は倒された。
その結果、情報を隠す必要がなくなたったのか、
瑠璃の前にその本が出現した。
当然、秋月櫛名の本も出現したらしい。
「それでね、まだ全部終わった訳じゃないし、
江莉香の本を調べたの、ここからが本題」
その言葉に何かがあると予感した花梨は
真剣な顔で瑠璃の言葉に耳を傾けた。
「江莉香は紫苑が7歳の時に入れ替わったのは本当だった、
それまではごく普通に江莉香として生きてる。
紫苑と入れ代わるまでは普通の子供として生きてたの。
体は既に機械化されてたみたいだけどね。
それはいいの、問題があるのは生まれた直後よ」
生まれた直後? 確か江莉香は肉体を得る為に
人として生まれて来た……あるいは誰かの肉体を乗っ取った
そういう事じゃ無かったのか?
「ある病院で江莉香は生まれたわ。
その日の夜、別の赤ん坊と取り替えられたの。
そして取り替えられた女の子は江莉香と名付けられた」
俺と花梨の表情が同時に変わった。
生まれたその日の内に取り替えられた?
……まさか……
「取り替えた看護師は……本がないの。
江莉香を取り上げた医者も、他のスタッフも。
取り替えられた赤ん坊も本がないの……最悪だわ」
最悪、その言葉の意味は理解出来た、
理解出来たが、花梨はそれを聞かずにはいられなかった。
「待てよ瑠璃、本がないって……まさか……
だってあたし達はついさっきまで……」
「ええ、2人が戦ってた相手は間違いなく江莉香よ。
取り替えられ、そう名付けられただけの。
本当ならごく普通の女の子よ」
また……本物じゃなかったって事か?
「本人は江莉香だと思ってたでしょうね、
生まれたときからそうなんだもの。
そう名付けられたんだもの」
だが、そうじゃない。
その子は江莉香じゃない。
「病院内の全てが本物に操られてた、
最初からそれが計画されていた筈よ、
肉体も持たず、精神だけでそれだけの事を
いとも簡単にやってのけるなんてね」
だったら、取り替えられた赤ん坊は、
自分を江莉香だと思っていたその子は、
いつからそう認識する事になったんだ?
俺の問いに、瑠璃は静かに答える。
「赤ん坊のままじゃ身動きが取れないから、
ある程度成長するまでは江莉香と名付けられた
ごく普通の女の子だったわ。
紫苑と入れ代わる1年前、ちょうど6歳の時よ。
生まれた病院に両親と共に呼び出され、
そこで両親は殺された、そしてその子は機械化されたの。
江莉香として自覚する為の証拠を揃えられ、
江莉香としての記憶を植え付けられた上でね」
待ってくれ、それじゃ……俺達のして来た事は。
「そう、何も終わってない。
その女の子も、紫苑もただの替え玉よ。
瑠香に近づけさせない為に時間を稼がれてた。
やられたわ……」
そこまで説明し、その後どうするかを考えている瑠璃に、
花梨が静かに聞く。
「ラビアの中で槐の存在を知らないヤツが後1人だけ居る。
赤ん坊の時に入れ替わったとしても、そいつの可能性が高い。
そいつを調べればいいんじゃないのか? 」
その問いに瑠璃は絶望的な顔をして答えた。
「ミントよ、最後に来たのはミント。
ねえ知ってる? あの子だけ本名じゃないの。
誰もあの子の名前を知らないの。
花梨は覚えてる? あの時のあの子の顔」
「……確か……昔に流行ってたって言う
ガングロメイクで髪も凄く盛ってた筈だ。
アイシャドウもきつかった。
幾つもつけまつげをして、とにかく凄い顔だったよ」
「あの子、自分でも言ってたよね。
メイクを落として髪も下ろせば自分でも誰だか解らなくなるって」
その言葉に花梨もある事に気付いた。
「ミントはシティの中に居る筈だろ?
……クソッ、顔も名前も解らないじゃないか!」
「そうよ、最初からずっとシティの中で一般人に混ざって
ごく普通の女の子として過ごしてる。
私達の敵は最初から私達の近くに居たのよ。
顔も名前も解らないから、誰も気付けない事を利用して」
……まずい、シティの中で普通に暮らしてる女の子。
すれ違っていたかも知れない、どこかで会話したかも知れない。
誰の目にも映る存在、だから誰にも見つけられない存在。
もし、俺の考えが正しければ……俺はそれを瑠璃に確認する。
「ええ、その通りよ。機械化因子さえ持ってない可能性があるの。
私達に敵意を見せず、シティのシステムに従って生きて居れば、
絶対に見つかりっこないもの」
そこに花梨が割って入る。
「機械化因子を持ってないなら、声紋は同じ筈だ。
シティのシステムならそれが出来るだろ? 」
「もうやってるわ。こっちの仲間が今、少しでも手がかりがないか、
シティ内をくまなく探してるの」
なら、時間さえかければ見つけられるんじゃないのか?
俺の言葉を瑠璃が遮る。
「時間があれば? またそこで時間を稼がれるの?
いつ瑠香が暴走を始めてもおかしくないのに? 」
だったらもっと効率を上げるしか手はない。
「私達の記憶からミントの声紋データを引っ張り出したの。
シティ内で録音された全ての音声データと照合してるわ。
でも、監視カメラやマイクの位置は向こうも知ってるかも知れない。
もし、それを計算して動いてるなら、絶対にみつかりっこないわ」
……確かにそうだ。
俺もシティ内のカメラに映らないよう行動する事は出来る。
実際にそれをやってみせた事もある。
顔も名前も解らない、そんな状態でどうやって
みんなは手がかりを探してるんだ?
「それぞれがそれぞれの方法で探してる。
鍵もギフトも使える物は何でも使って。
ソルジャーの痕跡も、イノガニックの気配も追いかけてる。
被害のあった場所、被害に遭った女の子、
たまたま被害に遭わなかった女の子、
可能性を全部潰して貰ってるの、決定打は声紋だけよ。
それさえも偽装されてたらもうお手上げ」
そうだ、元々シティは花梨の管轄内だった筈だ。
何か他にいい手がないか花梨に聞いてみる。
「…………」
妙だな、さっきから花梨の声が聞こえて来ない。
見ればモニタにもその姿は映っていない。
「……どうしたの? そう言えば花梨の姿が……
花梨、聞こえる? 葉月でもいいの、出てくれない?」
暫く待って見るが、何の応答も得られない。
「……まさか……ミントが? 」
”ん〜っと、あんまりそう気安く呼ばれると、
はいは〜いって出てきたくなっちゃうよね”
突然声が聞こえた。
聞き覚えの無い、いやもしかすると聞いた事のある声。
その声が聞こえたと同時に瑠璃の顔色が変わった。
明らかに知っている声なのか?
慌ててモニタを見る、花梨が消えた理由がそれなら、
花梨の居た場所に映ってる筈だ。
だが、そこには誰も居ない。
その代わり、画面越しに瑠璃と目が合った。
その目が何を語っているのか一瞬で理解した、
声は瑠璃の背後から聞こえたんだ。
その直後、瑠璃は突然意識を失ったように見え、
そして画面から姿を消した。
その代わりに聞こえたのはさっきの女の声だった。
「顔を見られるのは好きじゃないから、
映像は勘弁してね、え〜っとね、わたしがミント。
みんなが必死で探してたミントだよ」
探してた? みんなは今も必死で探してる。
「そうそう、誰も殺してないから安心してね。
みんなはもう会場に招待してあるから。
ちょっと空気が薄いけど大丈夫じゃないかな」
何だ? 何を言ってる? みんなを招待した?
「今、頭の中が???ってなってるよね。
みんなそうだったよ、何でわたしが? みたいな。
でも、理解はして貰えたと思ってるんだ。
わたしの勝手な思い込みかも知れないけど」
顔は映像に映ってない、けど首から下は
無造作に画面に映っている。
着崩した制服……やっぱりシティに居た誰かなんだな。
「疑ってるよね、すっごく怪しいよね。
また偽物かもしれないって思っちゃうよね。
何せわたしはほら、生身の体だし、
どこにも江莉香っぽさがないでしょ?」
映像で見る限り、空いた襟元から見え隠れする胸は
明らかに呼吸している動きだ。
機械化した江莉香は呼吸さえしていなかった。
「それに、すっごい美少女なんだよね、
この顔も嫌いじゃないし、スタイルもいいし。
あなた好みの体じゃないかな」
シティ内に集められている少女達は基本的に美少女だ。
個人の好みで違いはあるが、それだけで特定出来ない。
俺が出会った少女達の中から江莉香を特定しようとしている間、
その考えを全く無視するように、映像の向こうに居る少女は話を続けた。
「かつてはそう、2つ目は詰めが甘かったの。
最後まで追い詰めてたのに、いつも逆転されちゃった。
わざわざ別の種にまで来たんだよね、
ここでそんな事出来ないでしょ?」
「だから絶対に勝てると解るまで出てこない事にしてたんだ。
この意味わかる? 」
今はもう、隠れる必要がない。
絶対に勝てると解ってるから……そういう事なのか?
「そう、もう始まっちゃった。
エデルガルトが瑠香を暴走させたんだ。
ああ、櫛名は返して貰ったよ。
あの子、瑠香に吸収されたがってたから」
暴走が……始まった?
「エデルガルトもそう、死にたがってたでしょ?
瑠香に吸収されたら死んだも同然。
可愛い部下の願いを叶えてあげるなんて、
優しい上司だよね、わたしって」
待て、暴走が始まったのなら、
花梨に聞かされていた状態になる筈だ。
……ハッタリじゃないのか?
「今、わたしが嘘付いてるとか思ったでしょ?
残念だけど、本当なんだよね。
ま、そうは言っても暴走が始まっただけで、
この地球を飲み込んでから一気に膨れあがるから
ちょっとだけね、時間はかかるんだ」
時間がかかる?
もしそうなら、何か手を打てば
「もしかすると希望を持ってるみたいだから教えてあげるけど、
瑠香がこの星を飲み込むまであと30分。
あと30分しかないんだよ。
ねえ、たったそれだけの時間で何とかできる?
わたしは出来ないと思うな」
たった30分でも時間があるなら……
きっと何か手がある筈だ。
「そこで諦めるぐらいならわたしも楽なんだけど、
最後まで諦めないんだよね?
だから招待してあげる、そこにゲートを開いたから
わたしが待ってる場所までおいでよ」
その言葉が終わると同時に、
ゲートが俺の目の前に開く。
だが、おいそれと行く訳にはいかない。
この少女が偽物の可能性だってある。
「よいしょっと、わたしも場所を移動したよ。
え〜っと見えるかな? あそこに居る人達。
先に招待してあげたんだよね」
モニタ越しに何かが映し出される。
そこに映っていたのは……
「そう、ドールショップのみんな、
それと、ラビアのお友達。
その全員があそこにいるよ。
誰一人わたしに気付かなかったんだよね、
それはそれでショックな気もするけど、
正体を明かしてから捕まえたんだし問題ないよね」
ズームされていないので詳細までは解らない。
だが、見覚えのある顔がそこに並んでいる。
捕まえられたのは間違いない。
「捕まえるのに苦労したんだ。
みんな抵抗して来るし、逃げようとするしね。
でも、誰もわたしにダメージを負わせられなかった。
この意味わかる? わかるよね?」
誰もダメージを与えられない。
……何かの制約を設けているのか?
「考えるのは勝手だけどいいの?
あと28分しかないよ。
そうそう、もう1つ見せてあげる。
そこに映されてる物を見て、
私の招待を受けるのかどうか考えればいいよ」
ミント、いや本物の江莉香はそう言って、
端末を横にスライドさせた。
映されているのは……地球?
だが、あの巨大な黒点のようなものは何だ?
「あの黒いのが瑠香だよ。
どんどん地球を砕いて行ってるでしょ。
シティからはまだ見えないと思うけど、
もうすぐそこもなくなっちゃうんだ。
早く来ないと死んじゃうよ。
ここで一緒に見ようよ、地球が消える瞬間を」
地球を見下ろす場所。
みんなが捕まっているクレーター。
そうか……その場所は。
「そうだよ、ようやくわかった?
会場はここ、月なの。
わたしのティーパーティーにようこそ、
ドールマスター、それとも愚者かな?
あなたをここに招待してあげる。
誰もわたしを殺せない、もう誰も瑠香を止められない。
今更何をしても無駄だけど、あなたはここに来るよね?
私に捕まった大切な女の子達を助ける為に、違う?」
考える余地はない、今行かなきゃみんなを助けられない。
相手が偽物か本物か、それを確かめる術がない以上、
俺はこの誘いに乗らなきゃならない。
「考えは決まったみたいだね。
じゃあわたしはここで待ってる。
せっかくの紅茶も冷めちゃうから、
なるべく早く来て欲しいな」
ゆっくりティパーティをするつもりは毛頭ない。
ゲートを越えてすぐに江莉香を攻撃して、
どうすればこれを止められるのか聞き出すしかない。
「あなたは誰も助けられない。
あなたはわたしを殺す事も出来ない。
それでも最後まで諦められないなんて可哀想。
わたしがあなたを死なせてあげる、
4つ目に帰してあげるわ」
人類滅亡まで残り27分。
何としてでもこの暴走を止め、全てを終わらせる。
これが最後の戦いだ。
俺はみんなを助ける為に、
そして江莉香を倒す為に
ゲートへ飛び込んだ。
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