純丘曜彰教授博士の哲学講義室 - エリウゲナ

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スコトゥス・エリウゲナ (Johannes Scotus Eriugena c800/15-c877)
 スコットランド人としてアイルランドに生れ、840/7のフランク王国(仏)のカール禿頭王に招かれて、宮廷学校で教授にあたった。当時、この王は各地から有能な学者を集めて研究を保護奨励し、ここに、そのひとりである教育僧アルクィンを中心として、神学と古典の調和するアテネをフランスに再現しようとするカロリング・ルネッサンスと呼ばれる文化隆盛期が築かれたのである。エリウゲナはカール大帝の死以前に死去したらしいとされるが、詳細は不明である。いずれにしても、彼は、スコラ哲学の先駆者として、新プラトン主義を中世キリスト教の中に移植する役割を果した。


【『自然区分論』 De devisione naturae 865】
 スコトゥス・エリウゲナ
 自然、すなわちいっさいの存在者および非存在者は、4つに分類される。すなわち、
  (1) 創造されず、創造する 自然
  (2) 創造され、 創造する 自然
  (3) 創造され、 創造しない自然
  (4) 創造されず、創造しない自然
 〈創造されず、創造する自然〉とは、いっさいの自然の原因である神であり、
 〈創造され、創造する自然〉とは、神の中の諸物の範型イデアであり、
 〈創造され、創造しない自然〉とは、時空間の中の被造物であり、
 〈創造されず、創造しない自然〉とは、いっさいの自然の目的である神である。
 そして、自然全体は、〈創造されず、創造する神〉から出て、神の表れとなり、〈創造されず、創造しない神〉に還る円環運動をなす。
 これは、《流出説》と《類・種》などの論理概念の結合した思想であり、新プラトン主義と、スコラ論理主義の融合が認められる。