純丘曜彰教授博士の哲学講義室 - 分析哲学

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【生成文法 generative grammar】
 チョムスキー(言語学)(『構文論的構造』1966)
 回帰的文法規則によって、新たな文を無限に作り出すことができる自然言語のモデル。すなわち、文から、名詞句と動詞句とに分岐させ、以下、この分岐を繰り返すことによって、すべての文の構造を得ることができる。
 これは、意味論と音韻論とを結びつけるとともに、深層構造として諸言語に共通なものであるために、このモデルに対応する、言語の種類を越えた言語能力の先天的普遍性を支持する点で大きな影響を及ぼした。

【パラダイム】【専門母型 disciplinary matrix 】
 クーン(『科学革命の構造』、「パラダイム再論」)
 ある科学者共同体が、そして彼等だけが共有している事項のすべて。個々の観察や理論はこれに依存し、通常科学 normal scienceでは、この中でのパズル解きとして行われ、教科書へと結集する。しかし、パラダイムは時代によって異なり、それぞれの時代の観察や理論は、他の時代に包括されることのない共約不可能性 incommensurabilityがあり、意味論的解釈によって変換されてしまっていて、そのままでは比較不可能である。それゆえ、パラダイム転換は、特殊科学として、連続性なく、革命的に起こる。
 しかし、パラダイムは、狭義には、具体的な科学的業績、から、広義には、ある学派に特徴的な信念と先入観の集合、にまで多様な意味を持つ。そこで、後者の広義のものを「専門母型」と呼び換える。それは、記号的一般化、モデル、見本例などからなる。その見本例が、前者の狭義のパラダイムにあたる。

【概念図式 conceptual schema 】
 デヴィッドソン(「概念図式のまさしき発想について」1970)
 概念図式とは、経験のデータに形式を与えるカテゴリーの体系であり、複数の図式間では翻訳可能性がなく、現実性すらこの図式に依存し相対的である。しかしながら、複数の図式間に完全な断絶があるならば、断絶そのものもテスト不可能であり、また、部分的な断絶にすぎないないならば、信念や意味を温存できるように解釈規則の方を補うがゆえに、断絶は存在しなくなる。いずれにしても、概念図式と、概念図式を相対化する共通内容としての実在という2元論こそ、経験主義の第3にして最後のドグマであり、これを放棄することによって、我々は対象との直接的関係を回復できるのである。

【ゲティア問題】
 ゲティア(「正当化された真なる信念は知識か?」)
 知識とは、正当化された真なる信念 justified true beliefと、伝統的に定義されてきたが、しかし、この3条件を満たす連言型と選言型の反例がある。連言型とは、たとえば、「社長が採用する人はコインを持っている」という知識に関して、甲は、社長が乙を採用するつもりだと言ったのを聞き、乙がコインを持っているのを見たという根拠から、このことを信じ、実際にも真であったが、しかし、実際は、社長が採用したのは甲であり、たまたま甲もコインを持っていた、というような場合である。また、選言型とは、たとえば、「乙は車を持っているか、または、バルセロナに住んでいる」という知識に関して、甲は、乙は車を持っていると聞いたという根拠から、このことを信じ、実際にも真であったが、しかし、実際は、乙が車を持っているというのはまちがいであり、たまたま乙はバルセロナに住んでいた、というような場合である。

【可能世界 possible world】
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 必然、および可能を含む様相論理におけるモデル理論。すなわち、まず、複数の可能世界が設定され、そして、ある命題pが必然的であるとは、これらの世界すべてでpが成立つことであり、また、可能的であるとは、少なくともそのひとつの世界でpが成立つことであると規定される。