浪漫王国wiki

　王国歴125年4月11日（金）、午前7時45分。王都の中央、イチノヤ駐屯地のグラウンドには、浪漫王国軍第一部隊の女性軍人たちの息遣いが静かに響いていた。彼女たちは黒のジャージーに赤いラインを走らせた戦闘訓練服を身にまとい、筋力トレーニングの開始を待っていた。

　先頭に立つのは、指導役の緑山ひかり中佐。黒い軍服の上には、裏地が緑色の黒マントが軽く揺れていた。彼女は軍の第三部隊を率いるだけでなく、かつて赤坂りんごと同じ浪漫大学の門をくぐった友でもあった。

　「準備はいい？」ひかりは隊員たちを見渡しながら、自然な口調で問いかける。

　「はい！」第一部隊の面々は気合いの入った声をそろえ、ランニングが始まった。

　グラウンドを20周。地面を蹴るたびに筋力が試される。りんごもまた、隊の最前線で走りながら、「ペースを崩さないように！」と指示を飛ばす。

　ひかりは彼女の隣を走りながら、「変わらないわね。学生の頃も、走るのは速かった。」と冗談めかして言った。

　「あなたこそ。昔から、こういう場面では頼れる存在だったわ。」りんごは息を整えながら微笑んだ。

　午前のトレーニングが終わると、隊員たちは福利厚生棟で昼食をとった。メニューはプロテインを含んだチキンの料理。筋力強化には最適な栄養が組み込まれていた。

　「しっかり食べて、午後のウェイトトレーニングに備えましょう。」ひかりが軽くフォークを持ち上げると、隊員たちは頷きながら食事を進めた。

　午後、トレーニング場は力強い掛け声に包まれた。ウェイトトレーニングが始まり、隊員たちはそれぞれの重量に挑戦していた。

　ひかりは個々の姿勢を確認しながら、「ただ持ち上げるのではなく、身体の動きを意識して。力を適切に伝えるのが重要。」と指導する。

　りんごはバーベルを持ち上げながら、隣の隊員たちに「無理しないで、徐々に重量を増やしていくわよ。」とアドバイスを送る。

　午後5時30分、トレーニングは終了した。ひかりはマントを整えながら、「いい鍛錬だったわね。またいつでも協力するわ。」と静かに言った。

　りんごは疲労を感じながらも、心地よい充実感を抱いていた。「ありがとう。今日は助かったわ。」

　春の夕陽が駐屯地の建物を赤く染める中、第一部隊の隊員たちは新たな鍛錬の成果を胸に刻んでいた。その日の空気は、赤と緑の絆が交差する特別なものとなっていた。

　鍛え上げられた身体と磨かれた精神が、これからの戦場に向けて静かに強さを宿していく—それは、春の夜風とともに確かなものとなっていたのだった。

　王国歴125年4月11日（金）、午後6時20分。イチノヤ駐屯地の広場に停まるのは、第一部隊専用のマイクロバス「ホワイトエッグ3000」。その白い車体に隊員たちがゆっくりと乗り込んだ。


　赤坂りんご隊長は、先に乗り込んだ副隊長の桃田さくらや書記の赤井すもも、総務担当の田辺ひろこをちらりと見た。皆、額に滲んだ汗を拭いながら疲労の色を浮かべていた。それも当然だった。朝から夕方まで、駐屯地での厳しい筋力トレーニング。ランニング20周、午後のウェイトトレーニング—身体を酷使した一日。


　「今日もよくやったわね。」りんごがそう言いながら席に座ると、さくらが苦笑しながら「ええ、本当に。足がもう笑いそうです…。」と応じる。

　すももは窓にもたれながら、「でも、今日のトレーニング、確実に成果がありましたね。第三部隊長の緑山ひかり中佐の指導、すごく的確でした。」と静かに言った。

　「ひかりは、昔から鍛えることに真剣だったからね。」りんごは赤い裏地の黒マントを軽く整えながら、外の景色へと目をやる。バスの窓から見える夕暮れの街並みが、刻々と変わる光の色をまとっていた。


　バスはイチノヤ駐屯地を離れ、北東へと走り続けた。車内は、心地よい沈黙と、ときどき交わされる静かな会話に包まれる。

　「今日の夕食、何が出るんでしょうね。」ひろこがぽつりと呟くと、さくらが「さすが総務担当、もう食堂のメニューが気になるのね。」とクスリと笑った。

　果物寮が近づいてくる。外の街灯がバスの窓に淡い光を映し、隊員たちの瞳に映り込んでいた。

　午後7時過ぎ、果物寮前にバスが停車。隊員たちはゆっくりと車外へ降り、深く息をついた。

　「さて、帰ったらまずはシャワーね。」りんごがそう言うと、皆が大きく頷いた。

　クタクタに疲れたが、それ以上に充実した訓練だった。筋肉は痛むかもしれないが、部隊としての絆は強くなった。

　この一日は、彼女たちの戦う力をさらに高めるものとなった。そして、その実りは、これからの戦場で確かに発揮されていく—春の夜風が静かに吹き抜ける果物寮の前で、彼女たちはそれを感じていたのだった。