極めて容赦のない描写がメインになりますので、耐性のない方、および好きなキャラが残酷な目に遭うのがつらい方はご遠慮ください。

※(どこかで何か狂って)の続き


51 : ◆aUFTCAKqJY :04/11/05 21:00:13 ID:pmboWQbK
続き投下します


松平瞳子は冴えない顔つきだった。
お聖堂での”粛清”から、まだ数日である。
彼女は一人校舎の片隅を歩いていた。
「祥子お姉さま……」
声に出しても、虚しく響くのみだった。
ずっと敬愛して来た祥子お姉さま。
もう、あの優しくも凛としたお顔を目にする事は出来ない。
「こんな、もの……」
ぎゅっと握り締める。血に染まったリボンを。
お聖堂での処刑の後、女生徒たちはズタズタに殴り抜かれ、
体中骨折だらけで肉汁を撒き散らし、
潰れた子宮から赤いドロドロしたものをこぼしている祐巳の死体を処刑台から引き下ろして、
証拠隠滅もかねてみんなで切り分けて帰った。
三十人ほどが集っていたから、一人両手にいっぱいくらいの肉塊である。
二条乃梨子は目玉や脳味噌を、鵜沢美冬は乳房のあたりを所望した。
支倉令はもつ鍋にするといって大腸を切り取っていった。
瞳子なんとなく、砕けた頭から血まみれのリボンを取って、それで帰ったのだった。


――不意に背後に人の気配が生じた。
「かはっ」
ドン! 衝撃が走った。肋骨が折れそうになり、肺から息が漏れる。
誰かが後から瞳子の腕を捻じ曲げると、近くの温室の壁に叩き付けたのだ。

「ごきげんよう」
ぞっとするような暗い声が聞こえた。瞳子の視界に長い女の髪の毛が映る。
聞いたこともないような声だった。
「だ、誰よ!? いきなりなにすんのっ!?」
瞳子は必死で喚いた。何とか身を捩って抵抗しようとするが、まるで体が言うことを聞かない。
「誰ですか……顔ぐらい覚えていらっしゃるかしら」
そういうと、後の女は瞳子の腕をねじったまま、体を半身にして前を向かせた。
「! あんたは……――細川可南子」
「フフフ」
ニタァと女が笑った。長身、長い黒髪、いつも虚ろな瞳でぶつぶつ言っている。
同じ一年椿組の中でも変に浮いていて、友達をつくろうともしない。
顔こそ覚えてはいたが、絶対に関わり合いになりたくない。そんな女だった。

「一体何のマネですの? お離しになって!」
耳元で可南子がくすりと笑った。
「『お離しになって』ですって」
瞬間、腕関節をあらぬ方向に向けて、力いっぱいねじった。
「がっ、ぐぎゃああああああっ!!」
瞳子が絶叫する。右手首は百八十度回転して、ミシミシと変な音を立てている。
「あんたには、もっと下品な言葉使いの方がふさわしくてよ、瞳子さん♪」
「ぐっげえええええええっ!!」
楽しげに言って、可南子はさらに腕に力を込める。とても少女とは思えない怪力である。
暴れる瞳子の力が反って災いになって、今度は左の肩関節が外れた。
「ぐぎゃああああああああああっ!! げえええっ!! 痛いよおっ!!」
瞳子が涙声で絶叫した。手を離され、壁面に叩き付けられて、地べたを這う。
右手首は関節が完全に壊れて、手のひらが逆向きについている。
左肩も完全に脱臼しており、激痛が両手から脳髄に駆け上った。
「痛い、ですって」
ゆらり、と可南子が迫る。
「ぐぼおっ!!」
「これくらいが、痛い、ですって……!!」
可南子の足のつま先が瞳子の鳩尾にめり込んだ。
そのまま、二撃、三撃と蹴りを繰り出す。

「ぐぎゃ! 痛! やめっ」
「祐巳さまを嬲り殺しにしておいて、これくらいが痛い、ですって?」
なおも蹴り足は止まらない。瞳子の顔がぐちゃっと砕けた。
折れた鼻から鼻血が溢れかえって、口中を鉄のような味が満たす。
つま先が脱臼した肩関節にめり込んで、骨がひしゃげる音がした。
「ぐげええええええええええええええっ!!」
「祐巳さまを、祐巳さまを殺しておいて、痛いですってえええええっ!!」
激昂した可南子が連続で蹴り足を振り上げる。
「ぐえええええっ!! ぎゃああああっ!! ぎゃあああああああっ!!」

――十分後

瞳子はすっかり血塗れになって、地べたにいも虫のように転がっていた。
かすかに掠れた息を吐いて、胸を上下している。
全身憧れの「紅薔薇のつぼみ」のように真っ赤だが、あまり嬉しそうでない。

「私、祐巳さまに憧れていました。密かにお慕いしていたんです」
可南子はおもむろに吐露するのだった。自分の祐巳に対する思慕を。
「初めて遠めに伺ったそのときから、祐巳さまこそ清純で可憐なロサ・キネンシスの蕾と思っていました」
可南子は初めて祐巳を目にして以来、一人胸の中で思いを募らせ、祐巳を慕っていたのだという。
そして思慕の思いはつのるばかり。いつしか、祐巳こそが理想のつぼみ、理想の少女であるかのようにさえ思っていた。
可南子は例の紅薔薇祥子自殺事件の際も、あくまで祐巳を庇う立場だった。
リリアンに咲く汚れなき一輪の薔薇。誰にも散らさせてはならない純潔そのもの。
「――ですが、祐巳さまは私が家庭の事情で目を離した隙に、あなた方にお聖堂で嬲り殺しにされてしまった」
憎悪が篭った声で吐き捨てる。可南子はギロっと瞳子を見下ろした。
「許せません。あなたにはケジメをつけさせて頂きます」

「があ……はあっ……」
もはや動けない瞳子の首根っこを掴んで、可南子は温室へと引きずっていった。
瞳子の顔はブクブクに膨れ上がっており、また、全身重度の打撲で瀕死の状態だ。
もとより長身の可南子は驚くほどの怪力であり、小柄な瞳子に抗いようはなかった。

「いいざまですわ♪」
心から処刑を楽しむ。そんな表情で、可南子が息を吐いた。
うっとりと、温室の棚の上に動けない瞳子を据えて、溜息つく。
「それじゃ、とどめはこれでいきます」
可南子は握りこぶしをぐっとつくると、瞳子の両足を開いて、股を全開にさせた。
執拗な性器への蹴りで、血に塗れた下着をぐっと掴んでずらす。
「あ……ぁあ……っ」
可南子の意図を汲んだ瞳子がの潰れかけた目が恐怖に見開かれていく。
「フィストファックして、子宮をぐちゃぐちゃに潰してあげますわね♪」
可南子の拳が、瞳子のまだ幼い性器へと押し当てられた。
「や……やぁ……」
「汚らわしいメス豚に、こんなもの必要ありません。男どもにつっ突かれる前に壊して上げます」
そうにっこり微笑むと、ぐんぐんと腕に力を入れて拳を中に押し込んでいった。
「ぎゃ、ぐええええええええええええっ!!」
瞳子が絶叫する。処女膜を突き破り、拳が瞳子の秘裂を無理矢理押し広げていった。
めりめりと音がして、血飛沫が飛ぶ。可南子の拳は瞳子の性器を裂きながら、
手首の部分まで瞳子の子宮に沈み込んでいく。

「ぐぎゃあああああああああっ!! 痛いいいっ!! 痛えええええよおおおおおおおっ!!」
瞳子は目玉が飛び出さんばかりになった。あまりの激痛に、動かないはずの体が飛び跳ねる。
だが、関節を外されてはせいぜいもがくが関の山である。
「ほらほら、あと十センチ」
「ぐぼおおおおおおおおっ!! ぐうおおおおおおおおっ!! げええええええっ!!」
めりめり、と嫌な音が響く。一度耳にしたら一生忘れられない音である。
可南子の腕は既に二の腕の半ばまでめり込んでいる。
瞳子の性器からはどろどろとした赤いものが地べたへ垂れて、目に鮮やかな光景を成していた。

真っ赤な、ロサ・キネンシスの花のように――

ぐきゅごきゅ! 一段と盛大な音が響いた。瞳子の子宮が砕けた音である。

「ぐぎゃあああああああああああああああああっ!!」

瞳子の体はビクンビクンと痙攣すると、そのまま二度と動く事なかった。
肉塊となった犠牲者を可南子は満足そうに見下ろす。
「ざまですわ」
ぺっとその骸の顔に唾を吐き掛けた。指定鞄から「解体用具」を取り出していく。

――こうして、この日、マリア様のお庭で、また新たな犠牲の子羊が、生贄の祭壇に捧げられたのだった。




細川可南子は祐巳を死に追いやった中心人物、
松平瞳子をリリアン温室に嬲り殺して、とうとう仇討ちの悲願を達成したのだった。
「祐巳さまに害を及ぼすものは許さない。私は祐巳さまの仇を討って差し上げたのだ」
可南子は昏い、昏い顔でそうつぶやく。
ただ、そもそもの原因、小笠原財閥の存在にまで、彼女の狭窄な視野は達しなかった。

血塗られた出来事を飽くまで葬り去り、安穏な日々を送って少女たちを屠ってきた、
あの聖母マリアさまは、ただやはり無表情で少女たちの狂気と日常を見守っていた。
そして、これから更なる生贄が供される事も微塵も示唆しないで。

「祐巳さま、天国で薔薇の蕾を開いてください」

可南子は祐巳の全てが欲しかった。汚濁に塗れた父、
その父に靡いて人生を失ってしまった淫売、夕子先輩。

妊娠、情欲、怒り、葛藤

そんな日常的な悪夢から解放される瞬間は、まさに祐巳の天真爛漫な笑顔を、
遠くから見つめるしかなかった。なかったのだ。

だが――

黒いワゴン車が、高い校門を下ったあたりで、待ち構えていた。
何気なく通り過ぎようとした結果、彼女は数人の男――つまり敵と相い見えた。

「……何者?」
誰何の声は男たちの均整取れた行動で応えた。
「……んっ!」
前から圧迫を掛ける男ども――即ち可南子の「敵」。
可南子は身構え男たちの攻撃に対処しようとした。だが。

「後がガラ開きだぜ、お嬢ちゃん」
背中に気配が生じる、その曖昧なときに、一人の男は可南子の背中を取った。
そして、もがく彼女にクロロホルムづけの手拭が押し当てられた。

「んっ……」
目を開ける、その最初の視野に移ったのは、彼女もわずかながら面識のある人間だった。
「ごきげんよう、だったかな」
男は満足げに可南子の目の前に直立していた。鎖で封ぜられた可南子の前に。
「あんたは、柏木――」
そう、彼は柏木、柏木優だった。男、祐巳につけまわる奸族。
自らも祐巳へのストーカーによって、この男のことは把握していた。そして――
「気安く呼ぶなよ」
「がは……っ!」

柏木の拳は立ったまま身動きだにできぬ可南子の鳩尾にめりこんだ。
「瞳子を殺したのは君のようだね。分かるかい、あんなのでも小笠原の一族なんだ」
柏木は不気味な笑顔をたたえて、何か嬉々とした表情で彼女をみつけた。
美貌の男だった。その美貌は今張り付いた狂気によって青白く、不気味だった。
「内は色々な筋と付き合いのある、名門だ。面子を潰されては家が廃る」
部屋は――どこかで見たような廃屋だった。
飾り窓もなく、ひたすら暗闇に浮かぶ正方形の部屋。
独特の臭いからそれは地下室だと分かった。
「ふざけないで、あなたこそ祐巳さまを――」
可南子の目には凄まじい怒りが浮かんでいた。自分から祐巳を奪った小笠原一族。
だが、柏木はいかにも冷静沈着である。手に鋏をもっていながら。
「ひっ!」
可南子の顔の先に鋏が突きつけられた。
「君にはお仕置きが必要なんだ。僕の立場のためにね」
そういうと、鋏を胸の元に差し込んだ。
「ちょっと、なにすん……」
工具用の大鋏は、刃渡りが十センチ近くあって、鋭利である。
その鋏が可南子の制服を縦に裁断していった。
そう、可南子の上半身がむき出しになるように。

「ちょっと、何すんの! 止めなさい!」
可南子が途端悲鳴をあげる。
下劣極まりない男に、異常性欲者の、柏木を前にして。
「お前はな、これから僕に壊されるんだよ」
「…………!」
可南子はようやく悟ってきた。自らが置かれている状況を。
「い、いやぁぁ!」
服ははだけ、ブラジャーを切り取る。可南子の裸身は明らかになる。
その柔肌に金属の冷たい感触が当てられた。
「ふうっ……んん!」
鋏の冷たい間隔が、可南子の胸を走る。そして挟みは最後に固定された。
「ま、まさか……」
「そのまさかだよ」
挟みは乳首を焦点にとらえ、押し付けられた。
「いや、やめて……」
蒼白になる可南子と対照に、柏木は美貌に明るい気色を浮かべる。
「まずは――乳首を切り取ってやるよ!」
瞬間、大鋏がしゃきんと音を立てて踊った。
「あぐ、ぎゃ!!」
肉が切れる音がした。造作もなく、可南子の左の乳首は鋏によって切り取られた。

「あぐう……ぐぎゃ!!」
「おいおい、こんなので済みはずはないぜ」
そういうと、柏木は再び鋏をかまえる。そしてつぎも「しゃきん」。
「あぐううう!! あああ……」
鮮血がわずかに飛び散った。
同時に、切断された右胸の乳首は床に落ちた。
「ぐぎゃああああああああああっ!!」
悲鳴が轟いた。
「アアァ! あああ……」
涙をとうとうと流す。可南子は女性として一番大事な所を失ったのである。
「なぜ泣く? お前は男嫌いなんだろ? そんなもの持っていても意味がないぞ」
真面目な顔で顔を歪める可南子を見つめる。
「私の乳首、私の……」
ぐしゃ。
柏木は地面に落ちた乳首を踏みにじった。すぐにそれは再生不可能の肉となった。
「うう……! ああ、あ……」
「次は顔から行こうか」
挟は再び踊る。今度は鼻を挟んだ。そして。
「あぐうう! ぐぎゃあああああああっ!!」
乳首切断のショックが抜けない中、今度は可南子の優美な鼻を切り落とした。
「ぐうううっ! ああ……ぐあああああああっ!!」
ぼとりと鼻が落ちる。鼻の穴の断面があらわになり、鮮血が口元へと垂れていく。

「おいおい、そう興奮するなよ。僕は女性を崇拝してるんだぜ」
柏木に飽くまでにこやかに語り掛ける。
「お前のようなゴミは別だがな」
そして、可南子は泣き出したのだった。
「乳首、私の乳首が……」
古来の鼻削ぎの刑罰同様に、醜い顔となった可南子は、ふたつの穴を顔の真ん中にかかえ、
目から涙を流し続ける。
「陵遅刑って知ってるか? お前みたいなバカをな殺すときな、ちょっとずつ体を切断していって、
嬲り殺しにする刑罰だ。中国史の授業で覚えたぜ」
そういうと、床からより巨大な、精肉工場で見られるような大鋏を取り出した。
刃渡りは二十センチを軽く越す。
「ぐあああ、ぎゃああああっ!!」
可南子は絶望と苦痛の涙に咽び泣く。だが、鋏は可南子の膝関節の下を挟んだ。
「ぎいいいいっ!! ぐええええええっ!!」
無残な音と悲鳴がこだまする。鋏は……力強くまげられ、そして。
「ぐぎゃ、がああああああああああっ!!」
ぼとりと、可南子の足は膝から離れた。
「中々固いな」
骨や腱を断ち切った大鋏は、赤と何やら混じった色で、きらきら輝く。
可南子は吊るされ、乳首を切られ、鼻をそがれ、
右足――あの俊足でしられた、右足まで失ったのである。
「えぐ、ううっ……」
苦痛と絶望にむせび泣く、その下には大量の血液が動脈から解放されていた。
「すぐ死なれてはつまらんのだ」
柏木は可南子の膝の切断面を、包帯でぐるぐるに巻いて固定した。
「お楽しみはこれからだぜ……」

――――……。

「はぁ……ぁ……ぁ……」
柏木はうっとりと「美術品」を眺めた。
「いい格好だよ」
吊り上げられた可南子は、もはや人間の原型をあまりとどめていない。
両足は切断され、右手は手首から、左手は付け根から切断されていた。
鼻の他に耳もそぎ落とされ、敢えて視力を奪っていない可南子のみている前で、
靴の下に踏みにじっていった。乳房は片方根元から切り取られていた。

もう、声もでない。

耳や鼻を削がれた精神的ショックに加え、手足を切断された苦痛と出血で、
可南子はもはや気息奄々たる有様だった。ただ、虚ろに呟いていた。
首輪で吊るされた体は、だるまのようにただ胴体と顔を残すのみと――。
「それじゃ、止めといこうか?」
ここに来るまでたっぷり二時間を掛けて苦しめてきた。
もう飽きた彼は、止めようの「工具」を手に取った。

「おとぅさん……お父さん、ごめん…なさ……」
何やらうわ言のようにいう可南子の腹に刃の切っ先が突っ込んでいった。
可南子はビクンと一度痙攣して顔を上げ、そしてごばあっと血を吐いて、そして動かなくなった。


「一仕事終わったかな」
美貌の柏木は、満足げにその肉塊を見やると、意気揚々、地下室を後にした。
武蔵野にある、廃屋の一室を。扉を開けた、瞬間。
「え……」
彼は見た。自分の腹につき立てられた出刃包丁を。
「天誅、ですかね……」
目の前に暗い顔のおかっぱがあった。
「な……ぜ……」
なぜ、おまえが。
「なぜって、当たり前じゃないですか」
乃梨子は、二条乃梨子はつぶやいた。
「佐藤聖っていう人を轢き殺したのはあなたでしょう?」
乃梨子はたんたんと呟き続ける。両手を鮮血で真っ赤に濡らして。
「私、調べました。志摩子さんが、ああなった真実を。
彼女ね、もう変わり果ててました。繁華街でたらい回しにされ、薬漬けになって、
もう私のことも分からないの。――ねえ、だからくたばって」
乃梨子の手の中で包丁がこねくり回された。
「げぼお……!」
内臓を致命的に破壊された柏木は、どばっと血を吐く。
そして、そのまま崩れていく。
「可南子さん、あなたとは、本当は友達になれた気がするの。
瞳子も。そして、本当だったら祐巳さまも……。でも、どこかで何かが」
そう、自嘲気味に回った。肉の切り分けとなった可南子に向かって。
「どうして何ですかね、でも、もういいや……」
乃梨子はそう最後に呟いて、血塗られた切っ先を見つめた。そして――。

血の底に、全ては沈んだ。



「志摩子さん!!」
乃梨子は叫んだ、力の限り。
ようやく突き止めた、志摩子のいる病院で。
「志摩子さん、会いたかった……」
涙で視界が塞がる。涙は滔滔と流れてとまることがない。
最愛の人を前にして――

「志摩子さんは――私――もう離さないから」

虚ろに呟く。その前で。
かつて愛した人の骸がただただベッドに座っていた。

「ねえ、志摩子さん、今度またどこか遊びに行こうよ。
まだ志摩子さんと行ってないお寺とか、いっぱいあるんだよ」


――――……

「志摩子さん、私言ったじゃない。卒業するまでくっついて離れないって」

――――……

「だから……目を覚ましてよ、ねえ――」

乃梨子はうつぶせになっていた。ベッドの片隅、あの人の膝の上で。
シーツは次第に濡れそぼっていく。

「…………」

志摩子はあくまで何も発しなかった。
清純な、誰もが愛らしく見た顔は、すっかりやつれ果てていた。
生気がなかった。
その腕には注射痕が無数にあった。殆ど、無理矢理刺された……。

「脳をやられている。もう手の施しようが――」

嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、

「志摩子さん、ねえ、シスターになるんでしょ。こんな所で、こんな……」


シーツの染みはどんどん広がっていく。だがその上の「ヒト」は、もはや何の言葉も発せられない。
それだけでなく、志摩子の――志摩子だった抜け殻は、多くの男たちによって蹂躙されてきた。

聖を失った悲しみ、犯され、陵辱され続け、壊れてしまった心は、
いつのまにか薬に頼るようになった。
初めは無理矢理うたれた注射も、最後は自分の意思でうっていた。
ついには意思というものは消え去った。あとには残骸だけが残った。

――誰よりも清純で敬虔なクリスチャンであった彼女の面影は、
もはや色褪せた過去の記憶の中にしかなかった。

「ふふ……あはは……」
乃梨子は笑った、会心の笑みだった。何かを思いついた顔だった。

(そうだ、私も志摩子さんと同じところに行けばいいんだ。そうすれば、自由でいられる)

包丁を取り出した。元は自害のために用意した。

「待ってて、志摩子さん、私すぐそっちへいくから」

乃梨子は、志摩子だった人の手首を取ると、包丁の刃を走らせた。
鮮血だけが、二人の最後の絆を示していた。

(終わり)
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